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国内8割超の小規模事業者、経常利益で過去最高水準に達するも生産性で伸び悩み

中小企業庁は8月、中小企業および小規模事業者の経営実態に関する報告書「小規模企業白書」を公表しました。白書によると、中小企業・小規模事業者の景況感は改善傾向にあるものの、売上高や生産性はここ4、5年伸び悩んでいることがわかりました。

その原因として大手企業と中小企業の取引不均衡などが主に挙げられ、取引適正化に向けたガイドラインづくりなどが進められています。

このほか経営者の高齢化や人手不足が深刻化し、事業継承が年々困難になっていると指摘されました。

さまざまな課題が見えてきた今年の小規模企業白書。本記事では、白書をもとに小規模企業の経営実態を詳細に見ていきます。

減少傾向にある小規模事業者

小規模企業白書は、国内企業のうち85.1%にあたる約326万の小規模事業者の動向に関する年次報告書で、今年で3回目となります。

小規模事業者とは、製造業では20人以下、卸売業・サービス業・小売業などでは5人以下の従業員からなる企業を指します。

・ 中小企業と小規模事業者の違い

  中小企業 小規模事業者
業種 資本金 従業員 従業員
製造業 3億円以下 300人以下 20人以下
卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下 5人以下
小売業 5000万円以下 50人以下 5人以下

・ 国内企業の規模別内訳

企業の種類 企業数 従業員数
大企業 約1.1万者 1433万人
中小企業 中規模企業 55.7万者 2234万人
小規模企業 325.2万者 1127万人
380.9万者 3361万人

(小規模企業白書より作成)

経常利益は過去最高、売上高は伸び悩み

経常利益の推移をみると、大企業・中小企業ともに2009年のリーマンショック時には落ち込むも、以降は上昇基調にあり、昨年の大企業は10兆円、中小企業は5.3兆円と過去最高水準に達したと白書は述べました。

また業況判断DIの推移を見ても、09年以降は大企業・中小企業・小規模企業のすべてで数値の改善が見られます。

一方、売上高の推移をみると、13年以降は大企業・中小企業ともに横ばいとなっています。労働生産性の推移では、大企業は09年以降、上昇傾向にあるものの、中小・小規模企業では00年以降横ばいで、伸び悩んでいることが明らかとなりました。

大企業と中小企業とで格差が拡大している現状について、白書は政府主導で取引適正化に向けた取り組みを行っているとし、不適正な原価の切り下げなどの違反行為事例を66事例から141事例に増やしたり、下請け代金の支払いを可能な限り現金で行うよう要請するなど、ルールの明確化や厳格な運用を図っているとされます。

また、今後は取引実態を把握するため、下請けGメンと呼ばれる取引調査員による訪問調査を年間2000件以上に強化し、下請け中小企業へのヒアリングを行うことで適正取引に向けた取り組みに活かすとしました。

・売上高の推移

・労働生産性の推移

(参照:2017年版小規模企業白書より)

小規模企業、15年で約100万減る

企業数については、全体的に減少傾向で、2009年から2014年の6年間で39万者減少しました。小規模企業に限ると、1999年の423万者から2014年には325万者にまで落ち込んでいます。

2009年~2014年における存続企業の規模の変化をみると、「規模拡大」企業は7.2万者、「規模維持」企業は299.8万者、「規模縮小」企業は9.3万者となります。

・企業数の推移

  小規模企業 中規模企業
1999年 423万者 61万者
2001年 410万者 59万者
2004年 378万者 55万者
2006年 366万者 53万者
2009年 367万者 54万者
2012年 334万者 51万者
2014年 325万者 56万者

(小規模企業白書より作成)

中小企業の人手不足感強まる

人手不足は大企業と比べて中小企業のほうが深刻化していると白書で指摘されました。有効求人倍率は高いものの、特に規模の小さい中小企業で従業員数が減少しています。

小規模企業の雇用者減少、大企業は増加

従業員規模別に雇用者数の推移をみると、500人以上企業は02年以降右肩あがりに上昇しており、2016年時点で1628万人となりました。一方、1~29人の小規模企業では、97年以降、緩やかな減少傾向が続いており、2016年時点では1514万人となります。

このほか、100~499人企業では緩やかな上昇傾向で、30~99人企業では、横ばい状態が続いています。

・ 従業員規模別雇用者の推移

事務、清掃以外はすべてで人手不足

また職種別に有効求人数と求職者数の差を見ると、「事務職」「運搬・清掃・包装職」以外のすべて(管理、専門・技術、販売、サービス、保安、生産工程、輸送・機械・運転、建設・採掘、介護)で人手不足となっていることが明らかとなりました。

・ 職種別に見る人手不足状況

起業・創業の国際比較

欧米に比べると開業率が低いと指摘される日本。白書は、日本には起業に無関心な人の割合は高いが、起業を目指す人が起業する割合も高いと述べました。

開業率では英仏と2倍以上の開き

先進欧米諸国と日本の開業率を比較すると、2015年時点でフランス12.4%、イギリス14.3%、アメリカ9.3%(2011年時点)、ドイツ7.3%(2014年時点)、日本5.2%となります。

・ 開業率の国際比較

アメリカ 9.3%
イギリス 14.3%
ドイツ 4.3%
フランス 12.4%
日本 5.2%

起業関心層の起業率は高い

一方、起業に興味を持った人が、起業準備および起業に至る割合は、アメリカ20%、イギリス13%、ドイツ15%、フランス9%なのに対し、日本19%と国際的に見ても高い割合となります。

・ 起業関心層が起業準備、起業に至る割合の国際比較

アメリカ 20%
イギリス 13%
ドイツ 15%
フランス 9%
日本 19%

(小規模企業白書より作成)

小規模企業の今後

白書は、小規模起業の存在意義について、

「地域経済を支える重要な存在であり、また、商圏や業種も多種多様である。小規模企業は経営資源が限られ、販路開拓や人材の確保等に課題を感じている」

とし、大企業との違いを述べました。また、人手不足については

「小規模企業では、女性やシニア等が活躍できる職場環境を整備し、柔軟な働き方を受け入れることで、人材の定着に成功している」

と評価。今後については

「小規模企業ならではの柔軟性を生かして人材を活用し、経営方針を明確にして自社の強みを活かし、持続可能な発展を遂げ、成長につなげていくことが重要である」

と述べました。

国内企業の8割、9割を占めるとされる中小企業。中小企業における生産性および給与水準の向上が日本全体の経済力向上につながります。

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