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社団法人は天下りの温床?元国家公務員を採用する際に気を付けたいポイント

社団法人を含む公益法人において、国家公務員を採用する際には天下りにならないように注意しなければいけません。

“天下り“とは元々日本の宗教である神道で使われていました。神道で使われていた天下りの意味は、神様が天界から人間が暮らす地上に降りてくることでした。そこから派生して、現在使用される天下りは、国家公務員が退職後に在職時の府省と関連する公益社団法人など民間企業に再就職することを意味します。

そもそも民間企業や公益遮断法人が、国家公務員の採用をすること自体は違法ではありません。しかし、再就職等規制に該当すると違反行為になってしまいます。そのため、国家公務員を採用する際には、再就職等規制を理解する必要があります。

今回は、社団法人など公益法人が公務員を採用する際に必ず理解しておかなければならない「天下り」や、再就職等規制と違反や対策などについて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

1 公益法人と天下り

公益法人と天下り

現代において、天下りとはマイナスなイメージを持っている言葉になります。国家公務員として働いていた人が国家公務員の職を辞めて転職する以外の意味が込められており、下の者の意向や都合を考えない、組織が介在した上からの一方的な押し付けが天下りとして認知されています。

なお、“上から一方的な押し付け“には、組織にとってリターンがなければ発生しません。天下りは、国家公務員を送り出す省庁などと受け入れる法人の両者の関係においてお互いにメリットが生まれる形を作り出しています。そのお互いのメリットが第3者から見た場合には、不正である場合に、国家公務員の転職が問題になります。

1−1 天下りとその問題点

天下りは、官庁の国家公務員が退職して関係性の深い営利法人や非営利法人などに再就職することです。天下りは、一人で複数回行われることもあり、そのような場合を「渡り」と言います。

天下りと聞くと「悪いこと」という世間一般のイメージがあります。漠然としたイメージではなく、正しく構造を知ることが必要です。

⚫︎天下りの構造

そもそもキャリア官僚などの国家公務員が天下りするのには、“早期退職慣行”があります。国家公務員は、慣行として50歳前後で退職するという、退職する年齢としては早期なタイミングの慣行があります。

国家公務員は、入庁後には基本的には年功序列に役職などに就いていきます。そのため、40歳前後の年齢になると課長職になります。まず、このタイミングで課長職に昇進できなかった人材などが一定数退職していきます。歳を重ねるごとに、役職のポストに対して出世競争が続いていき、出世競争から漏れた人材が退職していくことになります。

結果、役職のポストにつけない国家公務員の方が多くなるため、多くの国家公務員が早期退職を選択していくことになります。

この早期退職した国家公務員は、まだ10年〜20年程度働ける期間もあり、多くの人が次の仕事を探すことになります。

早期に退職する職員に対しては、省庁によるあっせんで民間企業や公益法人などの特殊法人などに再就職する動きが取られていました。その結果、天下り先の法人では天下り用のポストを適時用意する動きを取り、省庁と天下り先の企業が連携して天下りのシステムを構築していました。

一時期において、天下りは職員にとって転勤と同様の認識になっており、あっせんされた職員が断ることも罪悪感も抱かないまでに天下りのシステムは組織に浸透していました。

前述の通り、国家公務員が退職後に転職することに違法性はありません。しかし、渡りのように複数回の転職を繰り返す一般的な雇用や勤労を目的以外の癒着や不正の温床となる転職が問題となります。

⚫︎天下りの具体的な問題点

天下りが問題になるのは、官庁が持っている権限の不正な行使にあります。官庁には、許認可権限や予算権限などの多くの権限を持っています。その権限を不正に利用して、天下り先の企業へ不正な利益提供をすることが問題になっていきます。

天下りにおける具体的な問題点は以下の2点になります。

  1. ①官民の癒着
  2. ②税金の無駄使い

⚫︎官民の癒着

天下りが行われる背景には、受け入れ法人側に官庁との“不正なつながり“を構築する意図があります。この“不正なつながり“が、癒着に該当します。

癒着とは、立場が異なっている利害が共通する複数の者が結びつくことを言います。また、その結びつく者同士は、本来距離を置くことが望ましい者同士になるため、批判的な意味合いが加わります。

例えば、管理監督する官庁と管理下にある法人が本来距離を置くことが望ましい者同士といえます。その両者が、退職した国家公務員の再雇用の受け皿となり、その代わりに管理監督上の便宜を受ける様な構図の天下りが官民の癒着として問題になります。

⚫︎税金の無駄遣い

税金の無駄遣いという点を具体的にいうと、予算権限を持った官庁から天下りを受ける法人は、優先して受注を受けることができてしまいます。

本来、競走の元に適正価格で発注すべき官庁からの仕事が、便宜を図った価格で発注されることになります。そうなると、官庁が発注する代金は税金になりますので、不適切な価格は税金の無駄遣いになります。

また、将来の再就職先を確保するために法人の新設や必要性がなくなった組織や法人の廃止を先伸ばすことや助成金などで生きながらえさせる動きを取ることも税金の無駄遣いになります。さらに、天下りを繰り返すことで複数回の退職金を受け取るような事例もあります。

⚫︎天下りがなくならない理由

天下りは法律で禁止されています。しかし、完全に無くなってはいません。日本国憲法では『職業選択の自由』が保障されています(日本国憲法第22条)。

また、国家公務員は早期退職者が多く、働くことが可能な年齢で国家公務員を退職することになります。国家試験を合格する高い能力と国家公務員としての経験を積んだ人材が、40~50代という働き盛りの年齢で転職しようとする場合には天下りという官民の癒着がなくても民間企業にとってプラスの採用になるケースが多くあります。

具体的には、規則や細則や業界に対する深い専門知識を持つ元国家公務員が自社の業務や申請内容を作成・チェックする立場で働いてくれることは受け入れ法人側には明確なメリットです。

その上で、さらに困った時に官庁や現職の国家公務員とのパイプを持っている退職した国家公務員は困った事態になった時にいないよりいた方が大きなメリットになるのが実際のところです。

天下りではないものの、大企業の役職者が退職して取引先だった企業が転職を受け入れるのと同じなのかもしれません。

国家公務員からすると、再就職の仕組みである天下りがあることは当然という意見もありました。例えば、国家公務員の給与はキャリア官僚となったとしてもそこまで高くない上、休日の返上や深夜まで働くなど激務であるため、組織の新陳代謝のために早期退職を迫られるなどの理由があります。

1−2 公益社団法人と天下り

公益社団法人は、『公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律』に基づく法人になります。公益社団法人は、公益事業を行います。

公益事業は、広く社会の利益になる事業を言います。そのため、公益社団法人は自社や設立者の利益を追求する株式会社などの営利法人とは異なる特典を受けます。

公益社団法人が受けられる特典の具体的内容として最も具体的なメリットは税務上の優遇措置があります。公益目的の事業における収益は非課税になります。つまり、公益事業で大きな利益が出ても納税する必要がなく、その利益を公益事業に活用することができます。

株式会社などの営利法人では、法人税・法人事業税・法人住民税が課せられ、利益の約37%を納税することになります。そのため、公益事業で得た利益が非課税となる公益社団法人のメリットは大きいと言えます。

⚫︎公益社団法人は民間組織

広く社会の利益となる事業を行う公益社団法人は、国や自治体が管理する組織ではなく、民間企業になります。そのため、公益社団法人で働く職員なども公務員ではありません。

民間企業である公益社団法人は、会費や寄付などによって収入を得て、その収入から自社で働く職員の給与を支払していきます。公益社団法人の組織を支えるためには寄付に寄るところが大きくなっています。

実際に公益法人への寄付金は年間約3,769億円にも上ります*。この寄付を支えているのは、寄付を実施した個人や法人への税控除があります。具体的には公益法人への寄付額に応じて個人は所得税が法人は法人税の控除を受けることができます。

*内閣府公益認定等委員会事務局『民間が支える社会を目指して〜「民による公益」を担う公益法人〜』より

⚫︎公益社団法人と省庁

公益社団法人になるための条件の1つに、公益社団法人になろうとする法人が『公益認定』を取得することが挙げられます。

公益認定を審査するのは、その活動範囲によって内閣府(許可者:内閣総理大臣)もしくは都道府県(許可者:都道府県知事)になります。

また、公益認定は永久的な認定ではありません。欠格事由に該当する場合や正当な理由がない状況下で監督官庁からの指示事項に従わない状況が継続する場合などは強制的に公益認定が取消されます。

公益社団法人である場合には、公益認定があるからこそ、公益事業が非課税にできて、かつ寄付する分が非課税になる点で寄付を集めやすくなるという大きなメリットがあります。

また公益社団法人であるメリットとして、公益認定を受けているという社会的信用度が高くなる点も実際の法人運用における採用や取引先の選定などでプラスに働いていきます。また、社会的信用度が採用にも有効に働き、優秀な人材などの採用につながります。

公益事業を行うだけなら、公益認定は不要です。しかし、公益社団法人のメリットを享受するためには、公益認定が必要です。公益認定を継続するために公益社団法人が省庁と繋がりを持っておきたいと思うのは当然と言えます。

1−3 過去の公益法人での天下り事例

過去、2010年の鳩山政権時代に、事業仕分けの中で公益法人と天下りに大きくフォーカス*されました。

⚫︎73公益法人のうち72法人に国家公務員OBが再就職していた

2008年当時の公益法人は73社ありましたが、そのうち72法人に国家公務員のOBが役職者として再就職していた事実がありました。しかも、その再就職した国家公務員の人数は2,300人以上で、1法人あたり30人以上の国家公務員OBが再就職していた計算になります。

72法人の中の17法人では、全職員の中で国家公務員OBが30%以上であった事実もあります。

一方、72の国家公務員OBを受け入れていた法人に対して、1法人約20億円の補助金や委託費が支払われており、総額1,450億円の財政支出があったことになります。

明確な天下りの構造が常態化していたことが明確です。

⚫︎天下りの具体的規模

72法人の中で、国家公務員OBが最も多かったのは国土交通省が所管する『社団法人中部建設協会』になり、233人の国家公務員OBが在籍していました。また、中部建設協会に対する財政支出は96億44百万円ありました。

また、最も国による財政支出を受けていたのは法務省が所管する『民事法務協会』になり、法務局の登記簿作成の業務委託によって174億円を受け取っていました。この金額は、同法人の年間収入の84%と大半を占めました。民事法務協会は、144人の国家公務員OBが再就職していました。

国からではなく、厚生労働省が所管する独立法人の雇用・能力開発機構から約294億円を受け取っていた雇用振興協会(国家公務員OB数153人)もありました。

*朝日新聞デジタル『仕分け候補の72公益法人、天下り2300人』より

2 国家公務員の再就職等規制

国家公務員の再就職等規制

前述のように公益社団法人へ天下りが常態化して、それにより多くの税金が公益社団法人に渡っていたことを受けて、天下りに対して多くの批判が集まりました。

国家公務員に対する国民からの信頼を得るために、天下りを規制するために制定されたのが『国家公務員の再就職等規制(再就職規制)』になります。

2−1 再就職等規制とは

天下りへの国民の厳しい批判を受けて、国家公務員に対して再就職に関する規制が設けられました。

天下りを規制するために国として大きく以下の3つの対策を実施しています。

  1. ①行為規制
  2. ②再就職情報の内閣一元管理
  3. ③退職管理基本方針の決定

このうち、行為規制に該当するのが、再就職等規制になります。(再就職等規制の詳細は次章にて説明します。)

⚫︎再就職情報の内閣一元管理

再就職情報の内閣一元管理とは、国家公務員の再就職情報を届出する義務とし、その届出された再就職情報を内閣が閣議と公表する一連の流れを言います。

管理職職員*であった国家公務員が再就職する場合には、元国家公務員には国家公務員をやめてから2年間の再就職情報の内閣総理大臣(内閣官房内閣人事局)への届出が義務化されています。かつ、行政執行法人以外の独立行政法人などの常勤の役員などに再就職する場合には事前の届出が必要となります。なお、自営業やフリーランスなどの自由業**となった場合についても届出が必要です。(再就職日から1ヶ月以内を目安に届出を行う必要があります)

また、国家公務員として在職中に再就職の内定などの約束がある場合には、速やかに職員の採用、昇任、休職、免職、懲戒等の人権を持つ者(任命権者)へ届出をする義務があります。(約束をした日から原則1週間以内を目安に届出を行う必要があります)

内閣へ集められた国家公務員の再就職情報は、管理職職員の経験がある元職員に関しては再就職情報が閣議報告されていきます。その上で、内閣は閣議報告を取りまとめて毎年度に公表を行います。

再就職情報の内閣一元管理によって、国家公務員の再就職情報が国民の目に入ることになり、官庁と再就職先の法人が秘密裏に癒着することができなくなる環境となっています。

そのため、届出が適切に実行されるように届出義務違反には罰則が定められています。現職の職員の場合には、懲戒処分の対象になります。OBの場合には10万円以下の過料の対象となります。

*国家公務員として一度でも管理職となった場合には、管理職職員としての届出の義務が発生します。

**報酬額が年間103万円を超過する見込みがあれば、届出が必要です。また、正社員以外の雇用形態(顧問・非常勤役員・パート・アルバイトなど)でも届出が必要です。

⚫︎退職管理基本方針の決定

退職管理基本方針は、職員の退職管理についての基本的な方針になります。国家公務員の退職管理を行う重要課題は、天下りのあっせんを根絶し国家公務員が定年まで勤務する環境整備と、公務員人件費の抑制促進にあります。また、これらと同時に公務員の意識改革を進めて公務員組織の活力確保を行うことを重視しています。

具体的な指針は以下に掲げる措置について定められています。

  1. ①国家公務員の再就職に関し、天下りのあっせん根絶を図るため、再就職あっせんの禁止など規制遵守、再就職に係る情報公開促進など任命権者が取るべき措置
  2. ②中高年期の職員がもつ専門知識や経験を民間などの他分野で活用し、また他分野での経験が公務員のコスト意識や現場感覚を高める観点から、任命権者が官民の人事交流などの拡充を図るために取るべき措置
  3. ③雇用と年金の接続の重要性に留意しつつ、再任用制度のさらなる活用を図るための任命権者が取るべき措置

*総務省報道資料『退職管理基本方針」より

2−2 再就職等規制の3つの規制

再就職等規制には、以下の3つの行為規制があります。行為規制に違反すると懲戒や過料、不正行為には刑罰が課されます。

<再就職等規制の3つの行為規制>

  1. ①あっせん規制(他の職員の再就職依頼・情報提供の規制)
  2. ②求職活動規制
  3. ③働きかけ規制(再就職社による働きかけの規制)

⚫︎あっせん規制(他の職員の再就職依頼・情報提供の規制)

現役の国家公務員が公益法人などの法人や組織へ、他の国家公務員や既に退職した元国家公務員の再就職を依頼する行為や、再就職を即すことを目的にして国家公務員や元国家公務員の情報を提供することが禁止されています。

特定の人物に対して再就職を依頼することはもちろん禁止行為ですが、公益法人などに対して再就職として受け入れできる人数や役職や給与などの待遇面などを情報提供を依頼も違反となります。

<企業や団体に対する具体的な禁止行為>

  • ・組織による再就職の要求や依頼
  • ・現役職員や退職職員についての情報提供(氏名や職歴、人物照会への回答など)
  • ・待遇に関する情報提供依頼(職務内容と待遇などの求人情報の照会)

⚫︎求職活動規制(現職職員による利害関係企業などへの求職活動規制)

利害関係がある公益法人などへの職員の求職活動への規制になります。現役国家公務員の職務に関わる契約や処分を行う対象である公益法人などは利害関係のある法人となります。これらの利害関係のある法人へ求職活動を行うことが禁止されています。

具体的には、再就職を目的に自身の職歴などの情報を利害関係のある法人などへ提供することは違反です。また、再就職における職務内容や待遇面などの情報を問い合わせすることも違反になります。また、再就職をするといった約束を行うことも違反となります。

<求職規制における具体的な禁止行為>

  • ・個人的な再就職の要求や約束
  • ・自己情報提供(氏名や職歴の提供)
  • ・待遇に関する情報提供依頼(職務内容と待遇などの求人情報の照会)

⚫︎働きかけ規制(再就職社による働きかけの規制)

既に民間の法人に就職した元国家公務員が、元の職場である省庁やその職員に対しての働きかけを原則退職後2年間規制します。また、自身が国家公務員時代に実施した契約や処分への働きかけは退職後の経過期間に関わらず無期限に禁止となります。

ここで規制となる働きかけは再就職先の法人との契約や処分などに対しての便宜を図る行為を指します。

<OBによる働きかけの具体的な禁止行為>

  • ・契約を有利に行うよう要求
  • ・許認可への承認するよう要求
  • ・処分の軽減するよう要求

なお、規制違反の働きかけを受けた職員は届出を行う義務があるため、働きかけを行なうと省庁内で情報連携がなされる仕組みになっています。

⚫︎規制の監視

再就職等の規制を遵守しているかの監視が必要です。再就職等規制違反行為を監視している組織が、再就職等監視委員会になります。

再就職等監視委員会は、国家公務員の再就職等規制に対して監視などを実施する第三者機関になっています。再就職等監視委員会では、再就職等規制違反に関する情報収集を行なっており、国家公務員の規制違反行為などに関する情報を違反情報窓口で受け付けています。

規制違反行為の情報は、事実関係の把握につながる情報や参考となる資料など幅広く受け付けられています。提供された情報をもとに違反行為を認定するケースも発生しています。

再就職等監視委員会では、以下の取り組みによって情報提供者の保護などを行っています。

①秘密の厳守

提供情報は適切に処理され、情報提供者の情報は秘密になります。情報提供者の情報は、個人情報の保護に関する法律と国家公務員法によって職員の守秘義務が発生します。

特に、提供情報の特質上で情報提供された組織や調査先から情報提供者が特定されることがないよう細心の取り扱いを実施しています。

②匿名での情報提供でも良い

匿名であっても情報提供が可能です。自分の組織の調査などのきっかけとなるような情報提供になる場合もあり、万が一にも情報提供した事実が周囲に知られたくないといった情報提供者の事情を優先します。

ただし、違反行為の認定をして行く調査やプロセスの中で具体的な情報(いつ、どこで、誰が、誰に対して、どのように、何をしたのかという5W1Hなど)などの確認が必要になるケースが大半です。その際に、追加ヒアリングなどの必要性が出てくるため、可能な限り連絡が取れる手段は残しておくことが求められます。

③結果を連携

情報提供時に連絡先を記載しておくと、情報提供を元に実施した調査の結果の連携を受けることができます。

調査結果を連携することは、情報提供者が自分の所属する組織の情報提供などを行った場合には再就職等規制に該当しない行為だったのかどうかを知ることで組織の正当性などを適切に把握することができます。

再就職等監視委員会への連絡方法は、内閣府ホームページの再就職等監視委員会「違反情報受付窓口」で確認できます。

2−3 再就職等規制の具体例

再就職等規制の具体例については、内閣府の再就職等監視委員会のホームページに記載されています。3つの規制行為についての具体例が以下の通りになります。

⚫︎あっせん規制(他の職員の再就職依頼・情報提供の規制)

①他の職員の再就職依頼行為、情報の提供行為(国家公務員法第106条の2)

国家公務員が営利企業や公益法人など(以下では「利害関係企業など」と呼びます)に以下のような発言をすることは禁止されています。

<具体例>

  • ・そちらの法人に再就職を推薦したい職員がいます。
  • ・推薦する職員の履歴書を送りますので、ご検討ください。

②情報の提供行為(同法106条の2)

国家公務員を退職した人物の再就職に関連することを認識した上で、他省職員へ、退職職員の履歴書など再就職に必要な情報提供などを行いました。その後情報提供を受けた他省職員が利害関係企業などに対して退職職員の再就職に必要な情報提供を行なうことは禁止されています。

この場合には、最初に退職職員の情報を他省職員へ連携した職員と連携を受けて利害関係企業などに情報提供をした他省職員の双方が禁止行為を行なったことになります。

③情報の提供依頼行為(同法106条の2)

国家公務員が利害関係企業などに役職者の退職などでポストが空席になるかどうかの情報を取得することを目的に情報提供を依頼する以下のような発言や行為は禁止されています。

これは、空いたポストに次の国家公務員の退職者をあっせんすることにつながる可能性が大きいためです。

<具体例>

  • ・⚪︎⚪︎さん(元職員)は、もうすぐ退任するそうですね。
  • ・退職した元職員の⚪︎⚪︎さんの次の方は決まりましたか。

④情報の提供依頼行為、情報の提供行為(同法106条の2)

退職する職員が再就職できる可能性のあるポストについて利害関係企業などに問い合わせ・情報提供を依頼する行為、並びに再就職する可能性のある職員についての氏名やその評価などの情報を営利法人などに提供する行為は禁止されています。

<具体例>

  • ・◻︎◻︎(ポスト)についての今後の採用予定はありますか。退職する予定がある⚪︎⚪︎さんの履歴書をお送りさせていただきます。

⚫︎求職活動規制(現職職員による利害関係企業などへの求職活動規制)

①再就職の約束行為(国家公務員法第106条の3)

現職の国家公務員は、利害関係企業などが実施した再就職の誘いを受けてその誘いに対して応じる旨の意思表示を禁止します。なお、現職の国家公務員の再就職の承諾の意思表示は、利害関係企業側でどう受け取っているかによって意思表示が推認されます。

<具体例>

  • ・国家公務員が在職中の状態でありながら、該当職員と利害関係企業側で採用手続きが進行していることが調査によって明らかになりました。その調査結果を受けて、現職中の職員によって再就職の誘いに応じる意思表示がなされたものと推認されます。
  • ・「⚪︎⚪︎さん(任期付職員*)の任期終了後は、当社で働きませんか。」という誘いに対して、⚪︎⚪︎さんが承諾の意思表示を示す。

②自己の情報提供行為と再就職要求行為(同法第106条の3)

現職の国家公務員が自身の退職予定などの情報を利害関係企業などへ伝えることで、利害関係企業などからの再就職の誘いを誘発する行為は禁止されています。

<具体例>

  • ・(利害関係企業などに対して)来年には私は定年退職になります。
  • ・(同)この仕事が私の職員として実施する最後の仕事になります。

*任期付職員は、部分休業を取得する職員の業務の代替などの即戦力として任期をつけて採用される職員をいいます。

⚫︎働きかけ規制(再就職社による働きかけの規制)

再就職した元国家公務員が、元の働いていた省庁などの職場へ自身並びに現在の雇用先についての有利な条件や処分の軽減などを要求する行為が禁止されています。

<具体例>

再就職した元国家公務員が現役の国家公務員へ以下のような要求をすることは禁じされています。

  • ・(再就職先である)当社に予定されている処分を軽くしていただくことができないですか。
  • ・まだ公示されていない入札の情報について優先的に教えてください。

⚫︎実際の違反事例の概要

実際の違反事案は以下のようなものがあります。

  • ・財務省の補佐級職員による、法人に対して在職職員に関わる情報提供を実施した。(平成20年から平成21年1月ごろ)
  • ・内閣府大臣官房人事課長自身が法人の幹部職員と直接打ち合わせを行い、在職職員の退職時期などの情報提供を行なった上で、該当法人役職に就けるよう直接依頼した。(平成24年の違反事案)
  • ・金融庁室長級役職者がOB国家公務員を介して、在職職員の退職後の天下りを目的に、在職職員の退職情報や在職職員の略歴書の提供や再就職意思の伝達などの情報提供をした。(平成28年の違反事案)

これらは国家公務員法106条に違反する行為となっています。

3 違反調査と対策

違反調査と対策

公益法人や一般法人などが、退職した国家公務員を採用・雇用することは問題ありません。求められるのは、再就職等規制を遵守することです。万が一、法令に違反すると違反法人が公表されるなどのペナルティが発生します。

天下りは癒着によって税金の無駄遣いが発生することの多い事案になるため国民の関心が強く、天下りをしていたことが判明すると社会的信頼を大きく損なうことになります。

公益社団法人などは前述のとおり、寄付などに収益の大きな部分を賄っているため、信頼を失うことはその寄付を得られない大きな要因になるため、特に注意が必要です。

3−1 違反調査

再就職等規制に違反した行為を疑われると、疑いがある国家公務員の任命権者による調査が最初におこなわれます。その上で、必要性に応じて再就職等監視委員会と任命権者の共同調査や再就職等監視委員会自らが調査を実施します。(国家公務員法第106条の16〜20など)

任命権者もしくは再就職等監視委員会による調査によって再就職等規制に対しての違反の事実が認められた場合には、違反した国家公務員は懲戒処分などの措置が取られます。

もし、任命権者が調査結果によって該当国家公務員の行為が懲戒処分の措置が適当であるのにもかかわらず懲戒処分の措置を取らない場合もあります。このような任命権者が適切な措置を行わない場合には、再就職等監視委員会が任命権者に対して懲戒処分などの措置を行うことを勧告できます。(国家公務員法第106条の21)

⚫︎再就職等監視委員会の調査権限

再就職等監視委員会には、国家公務員法第18条の3ならびに第110条などによって以下のような調査権限があります。再就職等規制に違反した疑いがあり、再就職等監視委員会が調査を開始した場合には法人はその調査依頼に従わなければなりません。

<再就職等監視委員会の調査項目>

調査項目 詳細 罰則
証人喚問 調査において必要性が認められる場合には、証人や参考人として喚問(呼び出して問いただす)ができます。 証人喚問の求めに対して正当な理由なく応じない者、また証人喚問において虚偽の陳述を行った者は3年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。また、これらの行為を企て、命令、故意の容認、唆し、あるいは幇助者は同様の処罰の対象となります。
書類提出 調査において必要性が認められる場合には、調査事項に関連することが認められる書類やその写しについて提出を要求できます。 書類提出要求に対して正当な理由なく応じない者、また提出書類に対して虚偽の事項を記載した者は3年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。
調査対象となった者への質問 調査において必要性が認められる場合には、調査対象となる国家公務員もしくは元国家公務員本人に対して出頭ならびに質問ができます。 罰則は設定されていません。
立入検査 調査において必要性が認められる場合には、調査対象の国家公務員や元国家公務員の勤務地(国家公務員として勤務地を含む)への立ち入りを行い、帳簿書類やその他の必要性が認められる物件などを検査し、関係者への質問ができます。 立入検査の拒否、妨害、忌避、または質問に応じないもしくは虚偽の陳述を行った者は3年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。また、これらの行為を企て、命令、故意の容認、唆し、あるいは幇助者は同様の処罰の対象となります。(調査対象である国家公務員もしくは元国家公務員はこの対象ではありません。)

3−2 違反のペナルティと影響

再就職等監視委員会などによって再就職等規制に対して違反が認定されると、事案概要の公表が行われます。

再就職等規制違反が認定された場合、事実概要の公表が行われ、採用自体の取りやめや違反に関係した法人名が公表されることもあります。

社会に広く利益となる事業を行う目的の公益法人などが、“天下り“や“癒着“といったことに関与していたという事実は大きくその透明性を傷つけることとなります。また、社会規範や制度を守っていく公益法人のガバナンスに疑問を持たれることになります。

⚫︎公益法人に求められる透明性やガバナンス

公益法人には、一般的な法人と比較して、より強い透明性やガバナンスが求められます*。

公益認定法では、民間の団体が自発的に実施する公益事業が公益の増進にとって重要であるとしています。そのため、公益事業を適切に実施する公益法人を公益認定する制度を設けています。また、公益認定により公益事業を適切に実施するための措置などを定めています。これは公益法人を国民全体で支援しようとする表れになります。

これらの措置によって、公益法人は税法上の優遇や国民からの寄付を広く受けることができるようになっています。この措置に重要とされているのは、“社会的な信用確保“とされています。

社会的な信用確保のために、公益法人は国民全体に向けた積極的な説明・情報開示による透明性確保や、公益法人のガバナンスの確保が求められています。

その中でもガバナンスが確保できていることは以下の3つの要素から成り立っています。

  1. ①法令遵守を前提として、自らに適切な規範を定めた上で、明らかにした上で守ること
  2. ②規範を守ることも前提として、職員全員がそれぞれの役割を適切に担ってかつ法人の内外に対しての説明責任を十分に果たすこと
  3. ③不祥事の予防・発見・事後対応が仕組みとして確立されていること

これらのことから、天下りなど国民から関心の高い事項で、国民の信頼を裏切る行為は該当法人だけでなく公益法人など全体の信頼を揺るがすことだとも言えます。

*令和2年9月公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議

公益法人のガバナンスの更なる強化等のために(中間とりまとめ)」より

⚫︎再就職等規制違反行為等に対する罰則

再就職等規制に違反した場合には、罰則が定められています。

<再就職等規制違反行為に対する罰則>

対象者 要求 罰則内容
再就職あっせん規制違反 現役職員 ①職務において不正な行為を実施するあるいは実施したこと、あるいは実施すべき行為をしない/しなかったことの見返りとして、利害関係企業などへ自身の再就職もしくは他の職員や元職員の再就職を要求するあるいは約束する場合
②職務について、他の職員へ職務上で不正な行為を実施するよう要求、あるいは実施すべき行為をしないように要求や依頼などをする/したことに対する見返りとして自身の再就職もしくは他の職員や元職員の再就職を要求するあるいは約束する場合
③上記②の再就職の要求や依頼などを行った情報を知りながら職務上不正な行為を行った、あるいは実施すべき行為をしなかった場
3年以下の懲役(国家公務員法第112条)
求職活動規制違反
働きかけ規制違反 OB職員 ➃国家公務員法第106条の第1〜4項に対する違反する働きかけを実施した(ただし、下記⑤を除く) 10万円以下の過料(法第113条第1号)
⑤不正な行為の実施、あるいは実施すべき行為をしないように働きかけを行った場合 1年以下の懲役または50万円以下の罰金(法第109条第14〜17号)
現役職員 働きかけを受けて職務上で不正な行為の実施、あるいは実施すべき行為をしなかった場合

3−3 違反防止対策〜官民人材交流センターとは〜

公益法人が国家公務員や元国家公務員を採用しようとするメリットは大きいです。特に、自社を管轄する省庁の元職員などは専門的な知識を十分に持っており、その知識を自社のガバナンスや事業運営に活用することは大きなメリットになります。

そのため、国家公務員のスペシャリストや幹部級の即戦力を採用したい、と願う公益法人や株式会社などは多くいます。

しかし、今まで解説してきた通り適切な知識などを持たずに国家公務員や元国家公務員に対して採用や勧誘などを実施すると再就職等規制の禁止行為を誘発する恐れがあります。

公益法人が再就職等規制に従って国家公務員の採用や勧誘を行うために利用できるのが官民人材交流センターです。

⚫︎官民人材交流センターとは

官民人材交流センターは、『国家公務員の再就職の支援及び官民の人材交流の支援を行う』内閣府の機関です。官民人材センターでは求人・求職者情報提供事業として「官民ジョブサイト」を運営しています。利用については、無償で利用ができます。

官民ジョブサイトは、45歳以上のシニア層の国家公務員に特化した求人・求職者の情報を確認できます。国家公務員に向けた求人情報の掲載による求人募集や求職者に対してスカウトを行うことができます。

スカウト機能は、経験業務や資格/所属府省名/官職クラス/在職か離職か/年齢/使用可能言語/希望収入や勤務地/自己PRなどを確認した上で、求職者にお知らせができます。

もちろん、内閣府の機関になりますので、官民ジョブサイトで実施できることは再就職等規制の禁止行為を誘発するような恐れはありません。募集行為やスカウト内容については、事前に官民人材交流センターのスタッフが事前チェックを行います。

⚫︎官民ジョブサイトの特徴

官民ジョブは国家公務員の中堅・シニア層(45歳以上)に特化した求人サイトであるのが最大の特徴です。19省庁約2,000人の多様な人材が登録されています。

また、海外への赴任経験者が登録者の中で3割いるため、海外進出や海外からの労働力を確保しようとする民間企業にとって活用したい人材も多くいます。

さらに、税理士や社会保険労務士などの各国家資格保有者も多くいます。その上で、企業にとって有益な高い専門知識や経験を持つ国家公務員に対しての求人募集やスカウトを活用できて、全て無料である点も大きな特徴と言えます。

⚫︎国家公務員の再就職ニーズ

公益法人や民間企業で再就職した国家公務員が応えられるニーズは高い専門知識を持つ即戦力だからできることが多くあります。具体例は以下の通りです。

<国家公務員採用で応えられるニーズ>

  1. ①経理や財務や税務部門など企業会計に知見がある人の採用
  2. ②特許や知的財産制度に知見がある
  3. ③会社法や労働法などの法令に詳しく、コンプライアンス体制の構築ができる
  4. ④危機管理や災害や防災対策などに役立つ知見がある
  5. ⑤補助金や助成金などの申請や許認可申請などの行政機関とのやりとりに知見がある など

4 まとめ

国家公務員の再就職

高い知識や経験がある国家公務員の再就職は公益法人を含める民間企業にとって有益です。しかし、やり方や考え方を誤るとその知識や経験の活用方法が誤ったものになり、官民の癒着などにつながる恐れがあります。

かつて省庁の早期退職者の再就職先として公益法人はいわゆる“天下り先“として機能していた過去があります。

この過去を反省して、国民の信頼を取り戻すためには再就職等規制の禁止行為の理解と遵守はもちろん、ガバナンスを強化して法令遵守の姿勢や態度を示し続ける必要があります。

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