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投資会社を設立する方法・手順を一挙解説

個人投資家は、利益が出れば出るほど所得税が高くなるというジレンマに悩むことがあります。このような個人投資家の方は投資会社を設立することで節税できるケースも多くあるため、投資会社の設立方法などを理解することは税金対策の上で非常に有効です。この記事では、個人投資家が投資会社を設立する目安とメリット・デメリット、投資会社を設立する手順やその費用のほか、会社設立時に加入するべき社会保険についても分かりやすく解説しますので、ご参考ください。

投資会社とは

投資会社は株などの金融商品や不動産などを運用して利益を追求する会社です。しかし、株式会社などを法律で規定している会社法には投資会社という会社形態は存在せず、厳密な定義が難しい言葉といえます。また、投資会社という言葉にはいろいろな意味があり、人によって思い描くイメージが異なることもあります。まずは、投資会社としてイメージされることの多い投資ファンドや投資法人、持株会社などについて言葉の意味を確認してみましょう。

・投資ファンド

投資ファンドとは、金融機関や機関投資家などの複数の投資家から資金を集め、その集めた資金をファンド(基金)として投資・運用し、得られた収益を投資家に分配する仕組みです。一時期話題になった「モノ言う株主」は投資ファンドの中でもアクティビストファンドに分類され、一定以上の株式を購入した後に積極的に議決権を行使することで企業価値を高めます。その後、株価が上昇した後に売却して利益を得るという仕組みです。ファンドには様々な種類があり、中には証券会社などが自社の資産を運用するためにその子会社にファンドを組成させる場合もあります。日本の投資ファンドは主に投資信託や投資事業組合などの形態で組成され、資産の運用管理を行います。

・投資法人

投資法人とは、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づいて設立される法人です。株式会社の株式に該当する投資口を発行することで投資家から資金を募り、株式などの有価証券や不動産に投資して運用します。ただし、投資法人自ら資産を運用することは法律で禁じられているため、投資信託委託業者である信託銀行などを通して運用し、運用益は投資法人を通じて投資家に分配される仕組みです。よく知られている投資法人にはREIT(不動産投資信託)などが挙げられます。

・持株会社

持株会社は他の会社の株式を保有する会社です。しかし、その目的は他の会社を支配することで、持株会社を設立すると意思決定の迅速化や事業リスクの分散、M&A戦略が広がるなどのメリットが生まれます。投資ファンドとは異なり投資による利益追求よりも経営支配を大きな目的としているため俗に言う投資会社とは異なる存在です。「○○ホールディングス」という持株会社の社名は誰もが一度は聞いたことがあると思いますが、純粋持株会社と呼ばれる会社は自ら製造や販売などの営業活動を行わず、株式を保有している子会社からの配当が主な売上となります。また、この持株会社は会社法に規定される株式会社の形態で運営されるのが一般的です。

投資会社としてイメージされる会社などに共通することは何かに投資をすることです。そして、上記のうち投資ファンドと投資法人は収益を上げることを目的として投資を行っており、個人投資家が行っている株式投資や不動産投資などと目的は共通しています。しかし、投資ファンドや投資法人と個人投資家との大きな違いは法律の規定などに基づき機関投資家として運営されていることです。個人投資家がこのような会社などを設立するのは資金面などのハードルが高く容易にできることではありません。それでも、会社法の規定に基づく会社形態ならば投資を事業とする会社の設立が比較的容易です。そのため、この記事では会社法の規定に基づく会社形態での投資会社設立について説明します。現在の会社法では以下の4つの形態の会社を設立することができます。

・株式会社

株式会社は株主が出資の範囲で責任を負う有限責任の会社形態です。株主は会社の債務を直接弁済する義務がなく、出資の範囲内で責任を負います。会社の経営は会社の委任を受けた取締役が行い、利益が出た場合は配当などの形で株主に還元される仕組みです。

・合同会社

合同会社も出資者が出資の範囲で責任を負う有限責任の会社形態ですが、出資者と経営者が同じ点で株式会社と異なります。出資者は社員と呼ばれ経営にも携わるため、比較的経営の自由度が高い会社形態です。

・合名会社

合名会社は出資者全員が無限責任を負う会社形態です。合名会社でも社員と呼ばれる出資者が経営を担いますが、会社の債務について全てを弁済しなければならない無限責任社員としての責任を負う点で株式会社や合同会社と異なります。

・合資会社

合資会社は一部の出資者が無限責任を負う会社形態です。合資会社では無限責任の出資者である無限責任社員と有限責任の出資者である有限責任社員が存在します。無限責任社員は合名会社の社員と同様に会社の債務について全てを弁済しなければならない責任を負いますが、有限責任社員は出資の範囲での責任に留まる点で合名会社とは異なる仕組みです。合資会社でも出資者である無限責任社員と有限責任社員の双方が経営にあたります。

合同会社と合名会社、合資会社は出資者と経営者が同じである持分会社と呼ばれ、会社の所有と経営が分離されている株式会社とは基本的な構造の異なる点が大きな特徴です。現在、会社を設立する場合は有限責任である株式会社と合同会社での設立形態が大半を占めています。

個人投資家が投資会社を設立する目安とメリット・デメリット

個人投資家は株式会社などの形態で投資会社を設立することができますが、会社設立にはメリットやデメリットが存在します。また、会社設立による節税などのメリットを活かすためにはその目安となる所得なども把握することが重要です。まずは、個人投資家や投資会社にかかる税金を確認し、個人投資家が投資会社を設立するメリット・デメリット及びその目安についても説明します。

 

個人投資家と投資会社にかかる税金

個人投資家が投資会社を設立する大きな目的は節税を図るためです。この目的を達成するためには個人投資家として負担する所得税と会社として負担する法人税などを比較して、投資会社を設立すると税金が安くなるなどのメリットがなければ意味がありません。まずは、個人投資家にかかる所得税と投資会社にかかる法人税について詳細を確認してみましょう。

①個人投資家にかかる所得税

個人投資家は投資を行う金融商品などにより課税される税金が異なります。代表的な投資対象である株式やFX、仮想通貨などに課される税金は以下の通りです。

・株式

株式では、株式の売買などで譲渡益が出た場合と配当などを受け取った場合に税金がかかります。株式の譲渡益については申告分離課税制度が適用され、給与所得などの他の所得とは合算せずに「譲渡所得」として所得税額の計算をするのが原則です。証券会社などを通して行う上場株式の譲渡益は以下のような計算式で所得税が計算されます。

株式の譲渡益=売却金額-必要経費(取得金額+委託手数料等)
所得税額=株式の譲渡益×20.315%(所得税15% 復興特別所得税0.315% 住民税5%)

上場株式の配当を受け取った場合も配当所得として20.315%の所得税が課されます。なお、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で取引をしている場合は上記の税金が源泉徴収されているため確定申告は原則不要です。それ以外の特定口座や一般口座で取引を行っている場合は確定申告が必要となります。また、上場株式の売買において譲渡損が発生した場合はその年に発生した配当所得と通算することも可能です。それでも譲渡損が残る場合は確定申告をすることで譲渡損の繰り越しを行うことが可能で、その後3年以内に発生した譲渡益から差し引くことも可能です。

・FX

FXでは為替変動による為替差益と保有している為替間の金利差によるスワップポイントという利益が発生します。この利益に対しては株式と同様に申告分離課税が適用されますが、金融商品取引業者などと行うFX取引は「先物取引に係る雑所得」として所得税を計算するのが株式とは異なる点です。そのため、FXで発生した所得は他の取引所先物取引等と損益通算することも可能です。FXの雑所得に関する所得税の計算は以下の通りです。

収入(為替差益+スワップポイント)-必要経費(FX取引に要した費用)=FXに係る雑所得
所得税額=FXに係る雑所得×20.315%(所得税15% 復興特別所得税0.315% 住民税5%)

FXで損失が発生した場合も確定申告を行うことで損失繰り越しが可能で、翌期以降3年以内に発生した利益から繰り越した損失を差し引くことができます。なお、FX取引で生計を立てている個人投資家の方は先物取引に係る事業所得となりますが、所得税法上は先物取引に係る雑所得と同じ扱いになるため申告分離課税が適用されます。

・仮想通貨

最近はビットコインやリップルなどの仮想通貨で利益を上げる個人投資家も多く存在します。仮想通貨では売買に伴う売却益だけでなく、仮想通貨を利用して商品などを購入した際にも利益が発生することもあるので注意が必要です。また、マイニングにより仮想通貨を獲得した場合も同様に利益が発生したとみなされます。これらの利益は事業として仮想通貨の取引を行っている場合は事業所得、それ以外の場合は原則雑所得として所得税を課されるのが基本です。事業所得となる場合は収入金額から必要経費を引いた金額、雑所得も収入金額から必要とした経費を差し引いた金額を他の所得に合算し所得税額を求めます。

②投資会社にかかる法人税

個人投資家と同様に、投資会社も利益が発生した場合は法人税が課されます。それぞれの金融商品にかかる法人税は個人投資家の場合と大きく異なるので注意が必要です。

・株式

投資会社では株式を売買した際の譲渡益に対して法人税が課されます。しかし、投資会社では株式の譲渡益を収益として合計し、必要経費を差し引いた利益に対して法人税率をかけて法人税額を計算する方式です。個人投資家は他の所得と合算せず一定の税率が課される申告分離課税制度が適用されていますが、会社は他の収益と合算して法人税の計算が行われる点で大きく異なります。また、投資会社が受け取る配当金は、法人税が課税された後の利益から支払われる配当金のため、法人税の二重課税を防止する観点から税金計算の際は収益から除外できる益金不算入が認められています。

・FX

投資会社がFX取引を行い、為替差益やスワップポイントなどの収益が発生した場合は株式と同様に他の収益と合算して税金を計算するのが原則です。しかし、法人としてFX取引を行う場合は期末時点で決済されていないポジションについても為替差損益を認識しなければなりません。個人投資家として取引を行う場合は未決済のポジションについて損益を認識する必要はありませんが、法人税法では期末時点の外国通貨の換算をする場合はその時点の評価額を用いる必要があるのです。そのため、投資会社としてFX取引を行うと、為替変動によって期末の業績が大きく変動する可能性もあります。

・仮想通貨

投資会社として行う仮想通貨の取引でも個人投資家と同様に以下のケースで利益が発生します。売買に伴う売却益や商品などを購入するときの決済レートによる利益、マイニングにより獲得した利益などが主なものです。投資会社で発生した仮想通貨の取引に伴う利益も株式やFXなどと同様に他の収益と合算して法人税額の計算を行います。

上記のように、主な金融商品の取引においては個人投資家と投資会社で税金の扱いが全く異なります。

 

投資会社を設立するメリット

個人投資家が投資会社を設立する一番のメリットは節税ができることです。それ以外にも多くのメリットもあるので、詳しく確認していきましょう。

①一定の所得になると所得税よりも法人税率が低い

個人投資家は所得税法に基づき税金を計算しますが、投資会社は法人税法に基づいて計算します。所得の金額が増えると法人税は所得税よりも税率が低くなる仕組みのため、投資会社を設立することは大きなメリットです。下表は投資会社に適用される法人税率の表です。

(出典:国税庁ウェブサイト

平成30年4月以降の税率は資本金1億円以下の中小法人で年800万円以下の部分が19%(平成31年3月31日までに開始した事業年度は15%)で、それ以外は23.2%の税率が一様に適用されます。一方、所得税は下表の税率が所得に応じて適用されます。

(出典:国税庁ウェブサイト

所得税では、平成27年以降は上記の税率が適用されており、所得金額が4,000万円を超えた場合の税率は45%です。単純に税率だけを比較すると年900万円を超える所得になると所得税率は33%となり法人税率を超えます。もちろん、投資会社には法人税以外に都道府県や市区町村などの地方税、事業税などが課され、個人投資家にも所得税以外に住民税が課されるため単純に比較することはできません。しかし、これらの税率の違いが一定の所得に達すると法人税の方が安くなる仕組みです。

②社会保険料を経費にできる

投資会社を設立すると会社が負担する社会保険料を会社の経費にすることが可能です。会社を設立すると社会保険に強制的に加入する仕組みとなっているので、従業員の社会保険料だけでなく経営者などの役員に対する保険料も会社の経費として計上することができます。

個人投資家の場合、個人で支払った社会保険料を確定申告時に社会保険料控除として計算しますが、会社は会社が負担する保険料の半額を会社の経費として、残りの個人負担分を社会保険料控除で計算する仕組みです。そのため、厚生年金にも加入できる上に個人としての保険料負担も安くなるというメリットのある仕組みです。

③生命保険料を経費にすることができる

投資会社を設立すると一部の生命保険料も経費にすることができます。法人が契約者となり、被保険者を役員や従業員とする生命保険が対象です。個人投資家が生命保険料を支払った場合は生命保険料控除として所得控除になるので、旧生命保険契約で5万円、新生命保険契約では4万円の控除にしかならないため、支払った保険料を経費にできることは会社設立の大きなメリットです。ただし、貯蓄性が高い定期生命保険などは税制改正が行われ経費にならないこともあるため、保険の加入を検討される場合は必ずその時点での税制などを確認した上で加入するようにしてください。

④個人投資家と比べると経費の範囲が広い

個人投資家は金融商品の投資に要した手数料などを必要経費として計上できますが、事業所得として申告している場合と譲渡所得や雑所得として申告している場合では必要経費の範囲が異なることもあります。しかし、投資会社を設立すると利益を獲得するために要した費用は基本的に全て経費として計上できる仕組みです。そのため、個人投資家と比べると経費にできる範囲が広いというメリットがあります。

例えば、個人投資家が事業として投資を行っている場合はセミナーなどに参加した費用と旅費や宿泊費の実費を必要経費として計上することが可能です。一方、投資会社では旅費規定を定めることでこれらの費用にプラスして出張日当や宿泊日当などを支出して経費とすることもできます。また、個人投資家が賃貸でマンションを借りて住む場合はその家賃を経費とすることはできませんが、会社が社宅として借り上げた場合は一定の家賃を役員や従業員から徴収することで支払った家賃の全額を経費にすることも可能です。

⑤役員報酬や退職金を経費にすることができる

個人投資家は本人の給料や退職金を支払っても経費にはなりませんが、投資会社を設立することで不当に高くない金額の報酬や退職金は全額会社の経費として処理することが可能です。会社から役員報酬を支給することで給与所得控除が受けられるだけでなく、退職金についても受け取る際に退職所得控除が適用されます。特に、退職所得は所得税と比較すると大きな節税効果をもたらすため、この点は投資会社を設立する大きなメリットです。

⑥家族へ給与を支給することで所得の分散が図れる

投資会社を設立することで投資家本人の役員報酬だけでなく、家族に支払う給与も経費として処理することができます。個人投資家の場合は個人事業主と同じ扱いになるため専従者給与として家族に支払う給与を経費として処理できますが、様々な制約がつきまといます。一方で、投資会社が支給する給与は勤務実態などに見合わない不相応に高額なもの以外は基本的に経費処理が認められているため、投資家本人と家族への所得分散が容易になります。

⑦赤字を9年間繰り越すことができる

個人投資家は青色申告をしている場合に限って、損失が発生すると3年間赤字を繰り越すことができます。また、株式の譲渡損失やFXで発生した雑損失も確定申告を行うことで3年間の繰り越しが可能です。一方、投資会社も青色申告をしていることが条件になりますが、発生した損失は最大で9年間繰り越すことができます。繰り越し期間を過ぎた損失はそれ以降控除できなくなる仕組みなので、個人投資家よりも長い期間にわたって損失を繰り越せることは投資会社設立のメリットです。

⑧個人投資家よりも相対的な信用度が高くなる

投資会社を設立することで個人投資家よりも相対的な信用度が高まることもメリットの一つです。会社を設立する際は必ず設立登記が必要となるため、会社があることの証明として登記簿謄本などを利用することができます。そのため、金融機関では会社名義の銀行口座を開設することもでき、備品購入などの対外的な取引においても個人より信用度が高いと判断されるため取引をスムーズに進められる点はメリットです。また、投資を事業にしていると金融機関からの借入なども必要となることがありますが、こちらについても会社形態だと信用が高いと判断される傾向にあります。

投資会社を設立するデメリット

ここまでは投資会社を設立するメリットについて説明しました。しかし、投資会社を設立するとデメリットも存在するのが実情です。ここからは、投資会社を設立するデメリットについて確認してみましょう。

①投資会社は維持するための費用が必要

投資会社を設立すると利益が出ていない状態でも支払わなければならない均等割という税金がかかります。個人投資家の場合は収入がない場合や損失が発生した場合は所得税を支払う必要が無いので、この点は投資会社を設立するデメリットです。投資会社は都道府県と市区町村のそれぞれに均等割を納付する必要があり、規模の小さい資本金1千万円以下かつ、従業者数50人以下の会社でも合計7万円を支払う必要があります。この均等割は会社業績に関わらず毎年発生するランニングコストとなるため注意が必要です。

②会社の設立や廃業に費用や手間がかかる

後ほど詳しく説明しますが、投資会社を設立するときは費用や手間がかかります。また、一度会社を設立すると廃業にも費用や手間がかかるため、この点は事業の足かせにもなり得るデメリットです。特に、設立した会社を廃業する場合は設立登記した法人格を抹消するために清算などの様々な手続きが必要となり、解散登記や清算決了登記を行うためには費用が必要となります。また、官報で行う廃業の公告にも費用は必要で、司法書士などに依頼するとさらにその報酬も必要です。今後事業を行わない廃業のために費用や手間をかけることは非常に大きな負担となります。

③社会保険の強制加入

投資会社を設立すると社会保険に強制的に加入しなければなりません。メリットとして社会保険料の会社負担分を経費として落とせることは既に説明した通りですが、利益が出ていないときにもこの負担が必ず必要となることは大きなデメリットです。また、社会保険は加入に際して「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」や「被保険者資格取得届」などの書類を作成して社会保険事務所で手続きを行う必要があります。さらに、役員報酬や従業員の給与を支払う際は被保険者負担分の保険料を源泉徴収する義務があり、給与計算や保険料の納付の際にも手間がかかるのはデメリットです。

④個人投資家よりも事務処理が煩雑

投資会社を設立すると個人投資家のときよりも決算などの事務処理が煩雑になります。例えば、個人投資家が確定申告書を提出する場合は税務署だけに提出すればそれだけで完了でしたが、会社の場合は都道府県や市区町村の地方税や事業税についても申告書を作成してから提出しなければなりません。また、日常の会計処理面においても処理が煩雑となることも多く、確定申告書の作成などが難しい場合は税理士に依頼する費用なども必要です。さらに、事業に必要な各種手続きにおいても登記簿謄本や印鑑証明書などの書類を求められることが多く、このように事務処理が煩雑になる面は投資会社を設立するデメリットです。

 

個人投資家が投資会社を設立する目安

個人投資家が投資会社の設立を判断する際には税金の違いやメリット・デメリットを把握する必要があります。そして、これらを総合的に考えた上で会社設立のメリットが大きくなる状態が投資会社を設立する目安です。しかし、これらの目安はどのような金融商品で利益を上げているかによって判断が異なることもあるので、具体的な例を挙げながら確認してみましょう。

①株式のみ取引している場合

株式のみを取引している場合は慎重な判断が必要となります。個人投資家が株式のみで利益を上げている場合は申告分離課税が適用されるため適用される税率は一律で20.315%です。このような状態で投資会社を設立すれば法人税と地方税などを合わせた実効税率は所得が400万円以下の場合でも22%前後のため、単純比較では投資会社を設立した方が税金は高くなります。

しかし、ここに投資会社を設立することで経費の範囲が広がるメリットや毎年支払わなければならない均等割などのデメリットを考慮して総合的な判断を行うことが重要です。基本的には、株式のみの取引で利益を上げている場合、所得が多くなれば法人税率は高くなるので個人投資家の方が税金は安くなるという考えですが、毎年利益が安定しない場合は投資会社を設立して長い目で節税対策を行うという方法も考えられます。また、配当金の割合が高い運用を行っている個人投資家の方は、投資会社を設立すると配当金は益金不算入となるため有利になるケースが多くなります。

②FXのみ取引している場合

個人投資家がFXのみの取引で利益を上げている場合も株式と同様に申告分離課税が適用されるため一律20.315%の税率です。そのため、投資会社を設立するよりも個人投資家として申告した方が税金は安く納まることが多くなります。万が一、損失が発生した場合は個人投資家の場合3年間しか損失を繰り越せないので、そのようなリスクに備えて9年間損失を繰り越せるように投資会社を設立するのも一つの選択肢です。しかし、投資会社の場合は未決済のポジションの含み益についても課税されるため、納税資金が足らなくなるなど別の問題が発生することもあります。これらのことを総合的に考慮して投資会社の設立を検討することが何よりも重要です。

③仮想通貨のみ取引している場合

仮想通貨のみを個人投資家が取引している場合は2つのパターンがあり、事業所得として課税されるケースと雑所得として課税されるケースがあります。事業所得として課税される場合は雑所得よりも必要経費の範囲が多少広くなりますが、双方とも最終的には他の所得と損益通算して所得税を計算する総合課税です。そのため、所得金額が大きくなればなるほど所得税が高くなるので、一定の所得に達した段階で投資会社を設立した方が税金を安く抑えられます。それぞれのケースで税金が安くなるタイミングは異なるため会社設立を考える水準は様々ですが、一般的に利益が500万円を超えた段階が会社設立を検討するタイミングです。

④複数の金融商品を取引している場合

複数の金融商品を取引している場合、個人投資家はそれぞれの所得区分に応じて税金の計算を行います。一方、投資会社は全ての利益を通算してから税金の計算を行います。そのため、申告分離課税の対象となる株式やFXの取引割合が高い個人投資家は投資会社を設立することで税金が高くなることもあるので注意が必要です。しかし、全ての金融商品を合わせた利益の額が大きくなるにつれて投資会社を設立する節税メリットは大きくなる傾向にあります。このようなケースでは個別の状況に応じた判断が必要となることから、税理士などの専門家に相談の上で慎重に検討するようにしてください。

投資会社を設立する手順

個人投資家が投資会社を設立する場合、前述の株式会社と合同会社の設立形態が最もポピュラーです。ここでは株式会社と合同会社の設立手順について説明します。

 

株式会社の設立手順

株式会社の設立は予想以上に手間がかかります。一般的な設立手順は以下の通りです。

①基本事項などを決定し定款を作成する

株式会社を設立するためには本店所在地や資本金(出資金)、事業の目的、発起人、決算月などの基本事項を決定しなければなりません。もちろん、投資会社の名前となる商号も基本事項として決めなければなりませんが、株式会社の場合は名前の前か後ろに必ず「株式会社」という文字を含めて商号をつけるルールがあります。

また、定款を作成する場合は定款の事業目的に投資を事業としていることが分かるように記載する必要があり、「株式、為替、仮想通貨の投資運用」のように記載すると金融商品の投資や運用に関わる業務を執り行うことが可能です。さらに、「前各号に付帯する一切の事業」と記載しておくことでそれらに付随する業務も執り行うことができるようになります。

②定款の認証

定款を作成した後は公証役場で定款の認証手続きが必要です。定款認証は株式会社に必要な手続きですが、合同会社や合名会社などの設立では定款の認証手続きは必要ありません。この認証手続きには定款3通(公証役場控え、会社控え、登記申請用)や株式会社発起人の印鑑証明書などの書類が必要で、事前に公証役場へ定款案を送り確認してもらうことで持ちこんだ当日に認証してもらうことも可能です。

③出資金の払い込み

定款の認証手続きを終えたら出資金を払い込みます。現金で出資金の払い込みを行う場合は発起人名義の預金通帳を用意しなければならないので注意が必要です。この段階では株式会社の設立前なので会社名義の預金通帳は作ることができません。そのため、発起人名義の預金通帳に出資金と同じ金額の現金を振り込むことで払い込みを確認します。なお、出資金は上場株式のような有価証券で払い込むことも可能です。これを現物出資と言いますが、現物出資をするためには定款にその旨を記載する必要があり、設立後には株式の名義書き換えなどの処理も必要となります。

④登記申請に必要な書類の準備

出資金の払い込みまで終わると登記申請に必要な書類を準備します。株式会社の設立登記申請書に必要事項を記載し、以下の書類を添付すると提出可能です。

  • 定款
  • 発起人の同意書
  • 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
  • 設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書
  • 印鑑証明書(代表取締役と取締役、監査役に就任する人の印鑑証明書)
  • 本人確認証明書(代表取締役と取締役、監査役に就任する人の運転免許証のコピー等)
  • 払い込みを証する書面(預金通帳の写しをつけて払い込みがあった株数や金額を記載)
  • 委任状(司法書士等を代理人とする場合に必要)

⑤登記申請と行政機関への届出

登記申請に必要な書類が準備できたら設立する会社の本店所在地を管轄する法務局の支局や出張所で登記申請手続きを行います。書類審査などで問題がなければ2週間ほどで登記手続きは完了です。一般的に、株式会社の登記申請を行う際は代表者印が必要となることから、登記申請の手続きと同時に印鑑登録も行います。登記手続きが完了したら登記簿謄本を取得できるようになるため、その後で税務署や都道府県役場、市区町村役場などに法人の設立届出書を提出します。

 

合同会社の設立手順

合同会社の設立手順は基本的に株式会社と同じ流れで定款認証だけが不要となります。詳しい合同会社設立の手順は以下の通りです。

①基本事項などを決定し定款を作成する

合同会社の基本事項となる社員や商号、事業の目的、本店所在地、資本金(出資金)、決算月などを決定します。ここでいう社員とは従業員のことではなく、合同会社の出資者となる社員のことで複数人いる場合は定款で代表社員を定めることも可能です。

商号については、株式会社と同様に社名の前か後ろに必ず「合同会社」という文字を使用しなければならないことが会社法で定められています。これらを考慮の上で基本事項を決定すると次は定款の作成です。合同会社の定款は株式会社と異なり、取締役会の設置や監査役の設置などの機関設計に関する記載は不要です。

その代わりに合同会社独特の記載事項として、代表社員や業務執行社員の選定、利益の配分について定款で定めることもできます。合同会社では原則として出資者である社員が業務を執行しますが、社員が複数いる場合は経営上の判断などでトラブルが起こることもあります。そのため、定款に業務執行社員の選定を記載することで無用なトラブルなどを未然に防ぐことが目的です。代表社員についても同様で、合同会社は社員が複数人いる場合は全員が代表者となる仕組みのため、定款で代表社員について定めることで対外的な交渉トラブルなども避けることができます。また、社員間で利益の配分に関するトラブルが起こらないように事前に利益の配分について定款に記載しておくことも可能です。

②出資金の払い込み

合同会社の設立においては定款の認証手続きが不要のため、定款の作成が完了したら出資金の払い込みを行います。合同会社も設立前に会社名義の預金通帳を用意することはできないため、社員の銀行口座(複数いる場合はいずれか社員1名の銀行口座)に出資金を振り込んで払い込みを行います。社員が複数人いる場合は誰からいくら出資されたか分からなくなる可能性もあるため、それぞれの社員の名義でそれぞれの出資金額を振り込む作業が必要です。

③登記申請に必要な書類の準備

出資金の払い込みが完了したら合同会社の設立登記申請書に必要事項を記載して、以下の添付資料も併せて用意します。

  • 定款
  • 本店所在地を決定したことを証する書面(定款で市区町村まで定めた場合は不要)
  • 代表社員を決定したことを証する書面(定款で代表社員を定めていない場合に必要)
  • 代表社員の就任承諾書(代表者を選出した場合は必要)
  • 払込みがあったことを証する書面
  • 委任状(司法書士等を代理人とする場合に必要)

④登記申請と行政機関への届出

上記の登記申請に必要な書類が完成したら、株式会社と同様に本店所在地を管轄する法務局の支局や出張所で申請手続きを行わなければなりません。また、司法書士等に委任しない場合は必ず代表社員が申請手続きを行わなければ受理されないこともあるので注意が必要です。通常、申請してから1~2週間で登記手続きは完了するので、登記簿謄本を取得して税務署や都道府県、市区町村へ設立届出書を提出します。

合同会社は定款の認証手続きが不要となるため、株式会社よりも手間がかからず登記申請までの手続きを比較的短期間で終えられるという特徴があります。

投資会社を設立する費用

投資会社として設立する株式会社と合同会社の設立手順は確認できたので、次はそれぞれの会社を設立する費用について説明します。

 

株式会社の場合

株式会社を設立する場合、主に以下のような費用がかかります。

①定款に貼付する収入印紙代

定款は印紙税に該当する文書のため、紙で定款を作成した場合は4万円の収入印紙を貼付しなければなりません。ただし、現在はパソコンなどで作成する電磁的記録(PDF)による定款も認められており、紙ではない電磁的記録の文書は印紙税の課税対象とはならないため、電磁的記録として作成された電子定款は収入印紙4万円が不要です。電子定款の作成にはハードウェアやソフトウェアなどの必要な設備に4万円以上かかることもあるので、起業家個人で電子定款を作成することは現実的ではありません。しかし、行政書士等の専門家に依頼することで手数料を取られても収入印紙代よりも安くできる場合もあるため、必要に応じて行政書士等の専門家に依頼することも選択肢の一つです。

②定款の認証手数料

公証役場で定款の認証を行う場合、公証人の認証手数料として5万円が別途必要です。

③定款の謄本手数料

定款の謄本手数料とは定款の謄本を交付してもらう際にかかる手数料です。1枚につき250円の手数料がかかるため全てで2千円前後の費用が必要です。

④株式会社の設立にかかる登録免許税

株式会社の設立登記を行う際には資本金の額の1,000分の7に相当する登録免許税が必要です。その金額が15万円に満たない場合は登記申請1件につき15万円の登録免許税がかかります。つまり、おおまかに計算して資本金おおよそ2,140万円以下の株式会社を設立する場合は15万円の登録免許税が必要で、それ以上の資本金の株式会社を設立する場合は資本金の額によって登録免許税はさらに高くなります。

①から④の費用を合計すると株式会社の設立には安く見積もっても242,000円(電子定款を利用すると202,000円)の費用が必要です。これらの他に、基本事項や定款の記載内容を決めるために複数人の出資者が集まる場合はその会場費や交通費なども必要になります。また、登記申請時には印鑑登録も行うため、代表者印を作る費用も別途必要です。司法書士等に登記申請を依頼する場合は別途司法書士の報酬なども必要になるため、株式会社設立の費用については多少の余裕をもって計算しておく必要があります。

 

合同会社の場合

合同会社を設立する場合は定款認証の手続きが不要となるため株式会社よりも安く設立することができます。主な設立費用は以下の通りです。

①定款に貼付する収入印紙代

合同会社も紙で定款を作成した場合は印紙税の対象となるため4万円の収入印紙代が必要になります。こちらも電子定款で作成した場合は印紙税の課税対象ではなくなるため収入印紙代が不要です。

②定款の謄本手数料

合同会社も定款の謄本を交付してもらう際に手数料がかかります。費用も株式会社と全く同じで、1枚につき250円の手数料がかかるため合計で約2,000円の費用が必要です。

③合同会社の設立にかかる登録免許税

合同会社の設立登記を行う際も登録免許税が必要になります。株式会社を設立する際と同様に資本金の額の1,000分の7の金額が必要ですが、6万円に満たない場合は1件の登記申請につき6万円です。つまり、資本金の額がおおよそ857万円以下の場合は6万円の登録免許税が必要で、それを超える場合は資本金の額によって登録免許税が増える仕組みです。

①から③の費用を合計すると合同会社の設立には安く見積もって102,000円(電子定款を利用すると62,000円)の費用が必要になります。この費用に基本事項や定款の記載内容を決める際に発生する費用と代表者印を作成する費用などを加えると、実際に合同会社を設立するために必要な費用となります。株式会社と比べると公証人に支払う定款の認証手数料が不要な上に登録免許税も安くなるため、合同会社は株式会社よりも安い費用で設立することが可能です。また、合同会社は株式会社に義務付けられている決算公告も行う必要が無いため、官報に掲載する費用も不要で株式会社よりもランニングコストが安くなるというメリットもあります。

会社設立時に加入するべき社会保険とは

会社設立時、条件を満たす場合には社会保険に加入しなければいけません。社会保険とは社会を構成する会社と会社勤めをする人(役員や従業員)によって、支え合うことを目的とする公的な保険です。その保障内容は病気や怪我、高齢化、失業等に渡っており、その保険金は会社と会社勤めをする人によって供出されています(一部の社会保険は会社側の負担のみで、後述します)。

社会保険の種類

社会保険は大きく2つに分類することができます。1つは医療や老後に対しての保険である「厚生年金保険、健康保険、介護保険」であり、もう1つは失業時や怪我を負った際の「労働保険」です。

社会保険に加入した人のことを「被保険者」といいます。被保険者の親族の内で、被保険者の収入を元に生活をして幾つかの要件を満たした場合には「被扶養者」となることができます。被扶養者も被保険者に組み込まれる形で社会保険に入ることができます。

会社設立時には自分自身(社長)のみが会社の構成人員である場合でも、自身への役員報酬(給料)が発生している場合には「厚生年金保険、健康保険、介護保険」に加入しなければなりません。もう一方の「労働保険」は従業員のための保険ですので、従業員を雇った時に加入をすることになります。

まずは「厚生年金保険、健康保険、介護保険」について詳しく見ていきましょう。

厚生年金保険、健康保険、介護保険

狭義では厚生年金保険、健康保険、介護保険の3つを社会保険と呼んでいます。ただ単に社会保険という場合にはこの3つの保険を指していることが通例です。

日本国では原則として、全ての国民が公的な年金保険と医療保険に加入することになっています。自営業、また会社勤めをしていない場合に加入するのは「国民年金」と「国民健康保険」で、会社勤めをする人が加入するのが「厚生年金保険」と「(社会保険の)健康保険」です。

 

厚生年金保険とは

厚生年金保険は、日本年金機構が管轄をしており、原則として報酬や給料が発生している役員及び従業員には加入の義務があります。パートやアルバイトでも従業員の4分の3以上の労働時間である場合には加入をすることになっています。

老後の生活保障制度であるこの厚生年金保険は、令和元年現在では原則65歳を年金支給開始年齢としています。かつては60歳を支給開始年齢としていましたが、徐々に年齢が引き上げられているのが実情です。保険の加入要件も加入対象者を拡大する方向で改正されています。

会社勤めをする人が加入する厚生年金保険に対して、自営業等が加入するのが国民年金、という理解が一般的ですが、実際には2つは別種のものではありません。厚生年金保険とは国民年金を土台としたもので、国民年金に上乗せをして保険料を支払っているものになります。

国民年金は全額自己負担ですが、厚生年金保険は会社負担もあるため納付口が会社と本人の2口からなり、国民年金よりも多くの保険料が支払われている、ということになります。厚生年金保険の会社負担と本人負担の割合は1:1です。

厚生年金保険料は、会社員の所得の額に応じて負担額が定まっており、健康保険料・介護保険料と合わせて納付をします。これが厚生年金保険、健康保険、介護保険がセットとして扱われる要因の1つです。

健康保険料・介護保険料の会社と本人の負担割合は厚生年金保険と同様に1:1となりますが、会社側では「子ども・子育て拠出金」という厚生年金保険に組み込まれている税金を全額負担しますので、トータルの負担割合は会社側の方が若干高くなります。

被扶養者となるためには、被保険者の収入を元に生活していることが第一条件で、更に年間の収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)、かつ被保険者と同居している場合には被保険者の収入の半分未満であることが条件となります。

被扶養者は「第3号被保険者」という扱いとなり、保険料を支払う義務は生じません。ただし、上記の被扶養者になるための条件を満たさなくなった場合には第3号被保険者の資格を無くして被扶養者から外れることになり、何らかの保険料を納付する対象となります。

厚生年金保険で貰える年金には3種類あります。1つ目は老齢厚生年金で、これは厚生年金と国民年金に合計25年以上加入していることで65歳から貰える年金です。

2つ目は障害厚生年金で、こちらは医師の初診日が厚生年金保険に加入しており、障害等級1から3級の場合に支給されるものです。3つ目は遺族厚生年金です。厚生年金と国民年金に合計25年以上加入しており、被保険者が亡くなったときに遺族が受給できるものとなります。

 

健康保険とは

社会保険の中の医療保険にあたるものがこの健康保険です。健康保険は全国健康保険協会(通称「協会けんぽ」)が管轄しています。

健康保険は医療保険ですので、病気や怪我等で医療費が発生する際に保険が適用されます。具体的には、70歳以上と小学校入学前の児童では医療費に対して保険が8割を負担し(自己負担2割)、それ以外は保険負担7割(自己負担3割)となります。被扶養者も同様の処遇です。

定期健康診断を受けることもでき、病気や怪我による長期休養時や、出産および死亡時にも保険金を受給できます。

 

介護保険とは

介護保険とは、自身が介護を要する高齢者となり要介護認定を受けたときに、または末期がん等の特定疾病に罹ったときに、各種介護サービスを受けることができる保険です。

介護保険は、社会保険加入時に40歳を迎えているか、または社会保険加入後の40歳を迎えた月に自動的に加入します。特別な手続きは必要ありません。

介護保険料は健康保険に上乗せする(または含まれる)形で天引きされることになります。そのため、給与明細上でも特別に「介護保険料」として表示されることは一般的にはありません。また、介護保険料の徴収は65歳を超えて年金の支給が始まった後でも年金から天引きされる形で続くことになります。

 

厚生年金保険、健康保険、介護保険の加入方法

これら3つの社会保険に加入するためには年金事務所宛へ加入書類の提出を必要とします。健康保険は前述のように協会けんぽの管轄となりますが、元より健康保険と厚生年金保険の加入書類は1つにまとめられていますので、会社側で提出先を分けて意識する必要はありません。

会社設立時の加入手続きとしては、まず加入義務の事実発生から5日以内に、所轄の年金事務所宛に所定の書類を提出します。

その所定の書類とは「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」、そして被扶養者がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」の3種類に、「登記簿謄本(原本)」と「法人番号が分かる書類」を添付します。

自動引落とする場合には「保険料口座振替納付(変更)申出書」も用意します。当申出書は自動引落先の金融機関に提出することになります。これらのことは日本年金機構にも詳しく記載されていますので、こちらも参照して下さい。

「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」は会社が社会保険に加入するときのみの提出となりますが、従業員を新しく雇入れた場合には、その都度「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」と、その新規雇用者に被扶養者がいる場合には「健康保険被扶養者(異動)届」を提出することになります。

労働保険(労災保険と雇用保険)

労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」の総称です。狭義の社会保険にはこの労働保険は含まれていませんが、本来はこの労働保険も含めて社会保険ということになります。

労働保険の1つである労災保険は、通勤中を含む業務中に怪我を負った場合に適用される保険です。もう1つの雇用保険は、失業した際に次の就業先が決まるまでの一定期間、失業手当を受給できるものです。

労働保険は原則として従業員のための社会保険ですので、1人でも従業員がいる場合には加入しなければいけません。それでは2つの労働保険について詳しく見ていきましょう。

 

労災保険とは

労災保険とは「労働者災害補償保険」の略称です。従業員が業務中や通勤中に事故に遭う等して怪我や後遺症を負ったり、死亡する事態となったりした場合には保険の対象となります。労災保険料は全額会社負担となり、従業員本人の負担はありません。

業務中の災害を「業務災害」、通勤中の事故等による災害を「通勤災害」と呼んで区別しています。どちらの災害であるかによって、保険を適用するための条件や手続きが異なります。

業務災害による怪我等に労災保険を適用する場合は、業務と怪我の因果関係を明らかにし、事業主の管理による業務であり業務時間中であることを詳らかにする必要があります。例えば昼休み中等、業務に携わっていない時間帯の怪我は業務災害とは認められません。

最近では、うつ病や過労による自殺も業務災害として認められるケースがあります。もし、うつ病や過労自殺による労災保険の認定を迫られた場合には、事業主として対応を迅速かつ誠実に行わないと会社の評判や信頼を落とすことに繋がる場合があります。

業務災害発生時の手続きとしてまず行うことは、事故に遭った従業員に速やかに最寄りの病院に行くことを伝えることです。そして、病院の受付にて業務災害であることを告知するようにと伝えてください。

その病院が労災指定の病院であった場合には「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を作成し、病院に提出します。労災保険を管轄する労働基準監督署へは病院によって提出されます。

労災指定ではない場合には「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」を作成して病院へ提出し、必要事項を記入して貰います。その後、必要事項記入済みの請求書を、診察料記載の領収証を添付して、労働基準監督署へ提出をします。

 

雇用保険とは

雇用保険は従業員が休業する際や、退職して失業状態となったときに適用される、労働者を守るための保険です。失業時に受給される手当のことを「失業給付」と呼びます。失業給付は原則として次の2つの条件を満たした場合に受け取ることができます。

  1. 退職日より前の2年間の内、雇用保険の加入期間が合計して1年以上であること
  2. 現在失業中であり、かつ、直ちに働く意志があること(求職活動を行うことが可能であること)

上記の条件の1つ目では雇用保険の加入期間を1年以上としていますが、失業に至った理由が会社都合である場合には「特定受給資格者」となり、このときの加入期間の条件は6カ月以上となります。

ただし、働く意志があるとしても病気療養中や怪我、出産や育児への専念により求職活動を行うことができない場合には、失業給付を受給することはできません。

雇用保険料は会社と本人がそれぞれ負担をしますが、会社の負担率の方が高めに設定されています。平成31年度(令和元年度)の一般事業の場合は、会社負担が0.6%、本人負担が0.3%の料率です。本人負担となる雇用保険料は給料から天引きをされます。

なお、雇用保険は失業時だけを対象としているのではありません。現在就業中の労働者にとっても、所定の教育訓練を受けた際に受講料の一部を負担する「教育訓練給付」や、原則として1歳未満の子息の育児のために休業をしている場合の「育児休業給付」等があります。

 

労働保険(労災保険と雇用保険)の加入方法

労働保険上、会社は「一元適用事業」と「二元適用事業」のどちらかに属することになります。二元適用事業とは自治体や自治体に関係する事業、また農林水産・建設の事業を指し、一元適用事業はそれ以外の事業のことを指します。

二元適用事業はやや特殊な事業となりますので、ここでは一元適用事業の場合の労働保険の加入方法を解説します。

前章の狭義の社会保険では、会社が社会保険に加入にする窓口は年金事務所の一箇所だけでしたが、労働保険を構成する労災保険と雇用保険では、それぞれの管轄機関ごとに加入用書類を提出します。書類提出の順番も決まっており、まずは労災保険の加入書類を管轄の労働基準監督署へ提出することになります。

労災保険の加入書に類は「労働関係設立届」、「労働保険概算保険料申告書」、「履歴事項全部証明書(写)」があります。保険関係成立日から10日以内に提出し、労働保険概算保険料申告書を用いて労働保険料を50日以内に金融機関にて納付を行います。

以後、労災保険に関しては毎年6月1日から7月10日までの間に「労働保険概算・確定保険料申告書」を作成して金融機関にて保険料を納付し、労働基準監督署へ提出することになります。労災保険では従業員が年度途中で増員しても特に行う処理はありません。

雇用保険の加入手続きは、労災保険の労働関係設立届と労働保険概算保険料申告書の処理を済ませた後に行います。

雇用保険加入時に必要な書類は「労働関係設立届(控)」、「労働保険概算保険料申告書(控)」、「雇用保険適用事業所設置届」、「雇用保険被保険者資格取得届」、「履歴事項全部証明書(原本)」、「労働者名簿」です。

これらを従業員雇入日から10日以内に、雇用保険の管轄である公共職業安定所(通称「ハローワーク」)に提出します。雇用保険では、従業員を増員するごとにその従業員の「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出することになります。

雇用保険料は、従業員本人分を毎月給料から天引きしますが、納付としては年に1回の労災保険の納付の際に労働保険料としてまとめて納付する仕組みとなっています。

まとめ

この記事では、個人投資家が投資会社を設立するメリット・デメリットや投資会社を設立する目安、設立の方法や手順、費用、会社設立時に加入するべき社会保険についても解説しました。まずは、個人投資家が課される所得税と投資会社を設立した際に課される法人税をしっかりと理解し、投資会社設立のメリット・デメリットも考慮の上で投資会社設立の判断を行うことが重要なポイントです。そして、投資会社を設立すると決めた場合は株式会社と合同会社という2つの会社形態から設立する会社を選択することが現実的な考えとなります。双方の会社形態の特徴を理解した上で、設立手続きの手間や設立に関する費用などを比較して投資会社として設立する会社の形態を決めるようにしてください。

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