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一般社団法人の給料は安い?高い?

一般社団法人は、法人の種類の一つです。もちろん、そこで働く従業員は給与が発生します。株式会社と比較すると少し耳慣れない感がある一般社団法人になりますが、今回の記事では、一般社団法人の給与についてその決定方法や、役職別の給与額などを紹介します。一般的な会社員や公務員と比較、メリット・デメリットなども併せて解説するので、参考にしてみてください。

1 一般社団法人と収入事情

一般社団法人と収入事情

法律的に人格を認められている法人は、営利法人と非営利法人に分けられます。一般社団法人は非営利法人であり、“非営利性の徹底”もしくは“共益的活動が目的”の法人になります。非営利法人の種類には、一般社団法人のほか、一般財団法人や公益社団法人や公益財団法人、NPO法人(特定非営利活動法人)、社会福祉法人や学校法人などがあります。

非営利法人と聞くと、ボランティア団体を想像して、そこで働く職員やスタッフは給与が出ないと思われる方もいます。しかし実際には、一般社団法人で働く職員やスタッフには給与を得ています。

また、一般社団法人に係わる『職員』『社員』『会員』『理事』など、一般的に理解されている株式会社の運用に関わる名称とはその内容が異なってきます。まずは、一般社団法人とは何かから理解し、その組織運営に係わる人たちの役割を確認してみましょう。

1-1 一般社団法人と『職員』『社員』『理事』

一般社団法人と聞くと、“公益性”が無ければならず、できる事業が限られているといったイメージもありますが、実際とは異なります。

2008年12月に『一般社団法人および一般財団法人に関する法律』が施行され、その結果、一般社団法人の設立は「公益性が無く設立ができる」「事業内容の制限がなく、営利事業も実施できる」など柔軟に行えるようになりました。

これらの理由から、同窓会や町内会などが組織としての人格を所有するためや、営利法人とは異なるアプローチで事業を行うための一般社団法人の設立が多くなっていました。一方で、2018年の税制改正によってそれまでは可能だった相続税対策として一般社団法人を設立する動きは減少しています。

●2019年の一般社団法人の設立状況

最も一般的で数が多い法人は、営利法人である株式会社になります。実は、一般社団法人は近年でこの株式会社や合同会社に次ぐ3番目に設立が多い法人となっています。2019年に設立された一般社団法人は6,083社になります*。

6,083社の新規設立で、最も多いのはサービス業(設立数4,795社/構成率78.8%)になります。次いで金融・保険業(同上517社/8.5%)、情報通信業(同上386社/6.3%)、不動産業(同上202社/3.3%)となっています。それ以外にも運輸業や製造業や卸売業や小売業など複数の産業を営む一般社団法人が設立されています。

また、法人に占める一般社団法人の構成率は2019年時点で4.6%となっています。法人全体として最も数が多い株式会社は減少傾向、その次に多い合同会社が増加傾向です。その中で一般社団法人は4.5%~4.8%で横ばいが続いています*。

≪2015年移行の株式会社/合同会社/一般社団法人の構成率≫ (単位:%)

2015 2016 2017 2018 2019
株式会社 72.1 71.4 69.6 68.1 67.6
合同会社 17.3 18.2 20.3 22.4 23.2
一般社団法人 4.5 4.7 4.8 4.7 4.6

*参照:株式会社東京商工リサーチサイト『2019年「一般社団法人」の新設法人調査』より

●一般社団法人の非営利性

一般社団法人が属する非営利法人とは、社員や役員など法人の所有者が金銭的利益を得ることを目的に会社を設立・所有してはいないことを意味します。具体的には、社会的公益性などその法人が属する社会に対して公益に資することが目的の団体になります。

ただし、非営利法人であっても事業から利益をえることは禁止されていません。また、事業に従事してくれる従業員に給与を支払いすることも問題ありません。

ここでいう、会社の所有者が金銭的利益を得ることを目的としてはいないということは、その法人が得た利益はその事業のために利用することが義務付けられています。つまり、株式会社などのように利益を会社の所有者である株主などに還元することは禁じされています。

●一般社団法人の社員と職員

一般社団法人の社員は、株式会社の社員とはその役割が異なります。一般的に使用される『社員』は、会社に勤務する正規社員や従業員を意味します。一方で、一般社団法人の社員は、その法人の構成員を言います。

一般社団法人においての最高意思決定機関は、社員総会になります。社員は、一般社団法人の意思決定運営に係わり、議案提出や議決への参加を行います。つまり、株式会社で言う“株主”に似た立場になります。

・一般社団法人は社員に“給与”を支払できません。

一般社団法人の社員は、株式会社の株主に似た存在になります。一般社団法人の社員も株式会社の株主も、労働力を提供しているわけではありません。そのため、労働力の対価である給与は受け取りません。

株式会社の株主は、その会社の事業で得た利益を配当金などの形で分配を受けられます。そのため、株主は給与が無くてもその法人に係わる対価を得られます。一方で、非営利法人である一般社団法人では利益の分配を行えません。

そのため、一般社団法人の社員がその法人運営に係わる対価として給与や報酬を支払いできません。

・一般社団法人は職員に“給与”は支払いできます

一般社団法人に就職し、業務に従事する人を『職員』や『従業員』と呼びます。この一般社団法人の職員が、株式会社でいう“社員”と似ています。

一般社団法人の職員は、労働力を提供しているためその対価として“給与”を受け取ります。ここでいう給与とは、基本給に加えて残業手当や賞与を含みます。つまり、規定を設ける必要はありますが、年2回のいわゆるボーナスを支払いすることができます。また、雇用保険や労災保険などの社会保険の一般社団法人に加入義務が発生します。

●一般社団法人の理事

一般社団法人には、『理事』という役職があります。理事を簡単に説明しようとすると、株式会社の取締役に似ています。

一般社団法人の理事には、業務執行権限と代表権限があります。

業務執行権限とは、その法人がやろうとする事業における事業計画の実行や人材や資金などの管理や調達など法人全体の業務を遂行する権限を言います。つまり、業務執行権限があれば、その法人の事業活動や法人運営を実施できます。

また、代表権限は社外に対して法人を代表として取引や業務を実施する権限を言います。一般社団法人では、各理事がこの代表権があります。また、代表権限を1人の理事に限定もできます。なお、理事会を設置している一般社団法人では代表権限は理解で選定された代表理事のみが有する権限になります。理事会で選定されなかった理事については、代表権限を持ちません。

一般社団法人の設立において、前述の社員が2名ならびに理事が1名以上必要です。

・一般社団法人の理事会

一般社団法人は、社員総会に代わる意思決定機関である『理事会』を設置できます。理事会の設置は任意になり、設置しない一般社団法人もあります。

理事会を設置している一般社団法人では、社員総会での決議事項は以下の2点に限定されます。

≪理事会設置≫

  • ✓法律で定められた事項
  • ✓定款で定められた事項

理事会を設置していない一般社団法人では、その法人に係る事項を全ての事項が社員総会決議事項になります。つまり、一般社団法人で理事会を設置すれば、最高意思決定機関である社員総会と同程度の決定権を有することになります。

一般社団法人の規模が大きくなると社員の数が増えていきます。その結果、社員総会の開催が難しくなる、ないしは開催に掛かるコストが増大していきます。この社員総会の規模が大きくなったタイミングで、理事会を設置して社員総会の開催自体を減らして負担を抑えることができます。

この理事会を構成するのが理事になります。理事会を設置するためには、理事が3名以上と監事が1名以上必要になります。一般社団法人の理事の役割は、株式会社の取締役に似ており、理事会は株式会社で言う取締役会になります。

理事会での議決権を持って、その一般社団法人の運営を進めていくのが理事になります。また、監事は理事の職務執行の監査を実施する権限を有しています。理事の不正やその恐れがある場合には理事会での報告を行います。

そのため、理事会を設置している一般社団法人では業務執行の意思決定を理事会で実施して、その業務遂行を理事が実施していきます。

・一般社団法人は理事に報酬を支払いします

一般社団法人の理事には、給与ではなく“報酬”を支払いします。給与も報酬も実質的には変わりませんが、雇用契約を結んで労働を行った対価が給与になります。一方で、雇用契約を結ばずに労働やサービスの対価として支払いするものを報酬と言います。

なお、一般社団法人の社員は理事になれます。そのため、一般社団法人の事業や運営に係わり続ける社員は理事の職を兼任するのが一般的です。株式会社で言えば、その法人を立ち上げたオーナー株主が、代表取締役としてその法人の事業や運営を取り仕切るのと似ています。

どちらの場合も、“社員”や“株主”には給与や報酬は発生しませんが、“理事”や“取締役”に対しては報酬が発生します。

前述のとおり、社員に給与や報酬を支払いすることは一般社団法人ではできません。そのため、業務執行を理事の立場で実施することで収入を得られます。また、社員は理事だけでなく、雇用契約を法人と結んで職員となることも可能です。その場合には、職員に対して労働の対価として給与の支払いができます。

また、前述の理事会設置に必要となる監事も報酬を支払いできます。これは株式会社で言う監査役に報酬を支払いできるのと同様です。

一方で、支払ができるというだけで理事ならびに監事に報酬を支払いしなければいけないわけではありません。規定を定めることで無報酬とすることも可能です。

1-2 給与と賞与と報酬のそれぞれの決定方法

給与と賞与と報酬のそれぞれの決定方法

一般社団法人で職員に支払いされる給与や賞与、理事や監事に支払いされる報酬の支払い金額の決定方法は定められています。特に、詳細は後述しますが、理事などに支払いする報酬は定款に定めなければなりません。そのため、想定していたものと齟齬が発生しないよう、充分に考慮してその支払い金額を決める必要があります。

●職員の給与

給与とは、雇用主(法人と個人事業主)と労働者の間で締結した労働契約=雇用契約書に基づいて、労働力を提供した労働者に雇用主が支払う対価になります。一般的には、雇用契約書は労働条件通知書を兼ねています。

労働条件通知書とは、労働者が仕事をする上で重要かつ必要な情報を明示して、雇用主と労働者がその条件を双方守るための書面です。労働条件通知には、勤務場所や勤務時間や年間の有給取得日数などとあわせて賃金についても記載があります。

この労働条件表に記載された賃金の条件に沿って支払いされるのが、給与になります。給与には、所定労働時間を勤務することで発生する基本給や技能給や住宅手当などの他に所定労働時間以外の労働の対価である残業手当や休日出勤手当などが含まれます。

労働者を雇用する場合には、労働基準法の遵守が求められます。そのため、一般社団法人でも株式会社でも雇用契約に基づく労働者への給与などの対応で遵守すべき事項は同じになります。そのうえで、給与規定や賃金規定を定めて職員の給与支給額を決定していきます。

そのため、一般社団法人の職員の給与支払いも、給与支払いの5原則も適用になります。5原則は以下になります。

  • ✓通貨払い…現物支給ではなく、現金で支給を行う
  • ✓直接払い…労働者自身への直接支給または本人名義の金融機関口座に振り込む
  • ✓全額払い…分割支払いではなく、全額を一括で支給を行う
  • ✓毎月払い…毎月1回以上支給を行う
  • ✓一定期日払い…予め定められた期日に支給を行う

また、一般社団法人も株式会社やその他の法人同様に給与にかかる所得税の源泉徴収を行う義務があります。給与支給月の翌月10日までに徴収した所得税を管轄する税務署に納付する義務があります。

・給与条件の決め方

一般社団法人の職員も、会社に雇われて働いて給与をもらっているという意味で“サラリーマン”です。サラリーマンであるため、一般社団法人の理念や社会的意義に賛同して働いている人も多くいますが、それでも労働条件が他の企業と比較してあまりに悪い場合には転職されてしまう可能性が高くなります。

そのため、一般社団法人の労働条件や給与の決め方は、他の一般的な企業同様に取り組む事業内容、必要なスキルや求める年齢層から決まる採用難度によって給与や福利厚生に差を設けていくことになります。

●職員への賞与

賞与とは、毎月の給与とは別に支払いされ、一般的には“ボーナス”や“特別手当”と言われ、夏(6月)と冬(12月)の年2回支払われます。賞与は、給与と異なり、雇用者である事業者が必ず払わなければならないものではありません。

賞与は、その事業者の稼いだ利益を源泉に支払いされます。そのため、新型コロナウィルスの感染予防で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによって経営が悪化した業界の企業は賞与が無い、もしくは賞与額が減額する企業が増えています。

例えば、22年3月期の連結純損失が1,000億円の赤字となる全日本空輸(ANA)は夏冬のボーナス支払いをせず、一律10万円の特別金を支給することを決めています*。
*JIJI.COM『全日空、社員に特別金10万円 来年1月支給』より

給与は、会社の利益に関わらずその労働条件を変更しない限り、支払をする義務が雇用主(事業者)にはあります。しかし、事業赤字が続いてしまっているなど、賞与を支払いできないとその事業者が判断すれば、賞与は払う義務はありません。

これは、一般社団法人も同様です。一般社団法人は事業で利益を上げることを主たる目的としてはいません。しかし、事業から利益を上げてはいけない、もしくは儲けてはいけないわけではありません。一般社団法人のサービスが評価された結果利益が増えていくのであれば、事業拡大やサービスの発展にその利益は利用できます。また、利益の一部を賞与として職員に還元することもできます。

一般社団法人は非営利法人であり、その法人設立の目的は公益性に基づくものです。しかし、営利法人も非営利法人もお客様からサービスの対価としてお金を受け取るという点は同じです。そのため、利益が上がるということは“お客様のニーズに応えている”証明であり、お客様のニーズに応えるためには実際にお客様にサービスを届ける職員の頑張りが必要です。その頑張りに、金銭面で応える一つの方法が賞与になります。

・賞与規定

賞与の支払方法やその金額算出方法などは、給与規定に規定しておきます。もし、賞与規定に『年2回、合計4ヶ月分の給与分相当額を支払いする』という規定がある場合には、支払をする義務が雇用者には発生します。

そのため、一般的な賞与規定は以下のように支払対象者と算出基準を定めます。

≪賞与規定例≫

第〇条(賞与)
1 賞与対象者
賞与支給対象者は、賞与支給月の月末に在職従業員を対象とします。
2 賞与支給額
賞与支給額は、社会情勢や会社全体ならびに各事業の業績、従業員評価や個人成績など会社が定める評価方法を考慮して決定するものとします。

規定例のように対象者を定めて、かつ賞与支給金額を大きな意味での経済動向や会社や所属事業の利益状況や個人に対する評価に応じて事業者側が賞与を決定できるようにします。

●理事などへの報酬

理事の報酬は、理事自身が決定できず、以下の2つの方法で決定します

  • ✓定款に定められた事項
  • ✓社員総会決議

一般的には、社員総会決議が多く採用されています。定款で報酬金額まで決定してしまうと、実際の中長期的な運用に齟齬が出てきます。しかし、定款の変更は手続きが多く必要になってしまうため、推奨できません。

社員総会で決議する際には、複数の理事に対してそれぞれの支払金額を決議は不要で、理事全員の報酬総額を決議します。そのうえで、各理事の個別の報酬は、理事会決議事項となります。

理事会は個別の報酬を決定できますが、その合計である総額を決定はできません。これは、定款などで理事会にその報酬額の決定全てを一任するといった規定を設けたとしても実施できません。

なお、一般社団法人の理事の報酬において留意すべきなのは『高額な報酬』です。非営利型には、『個人または法人に特別の利益を与えるもしくは決定することがない』という規定があります。

そのため、理事の報酬が高額になることで“特定の個人に特別な利益を与える”という判断になる可能性があります。この報酬が高額であるかは、明確な定めはありません。これは実施する事業性や法人の規模や社会的責任の重さなど複数の要因で報酬が決定するためです。

同業種で同規模など参考になる一般社団法人の理事と比較することや、報酬根拠を説明できる状態で税務署に相談するなどして報酬は確認することを推奨します。

なお、定款に理事の報酬について記載しようとする場合は、以下のようになります。

〇条 理事への報酬
理事に対する報酬や賞与など業執行における対価は、社員総会の決議事項とします。

・監事の報酬と留意点

監事の報酬も、理事の報酬の決定方法と同じになり、『定款』もしくは『社員総会決議』で決定します。

ただし、理事の報酬と一緒に決議はできません。監事は、監査機能であるため独自性が求められます。そのため、理事の報酬などととりまとめて決議されることは認められていない点に注意が必要です。

2 一般社団法人職員の給料を営利法人職員や公務員と比較

一般社団法人職員の給料を営利法人職員や公務員と比較

一般社団職員で働く職員は、雇用契約を雇用主である一般社団法人と結んで、働いて給与を得ています。これは、株式会社など民間企業で働く会社員と同じです。一方で、国や自治体で働く公務員は、雇用契約はなく任命権者による任命によって勤務し給与を得ています。

専門的な説明は省きますが、大きな括りで、働いて給与を得ている点では公務員も同じと言えます。

一方で、前述の3つにはそれぞれ異なる点もあります。そこで、一般社団法人の職員と前述の営利法人で働く職員や公務員を比較して、一般社団法人の職員になるメリットとデメリットを解説します。

2-1 営利法人の職員との比較

営利法人には、株式会社や合同会社などがあります。営利法人は、事業活動などで得た利益を株主などの構成員に分配することを目的にしています。そのため、株式会社などの営利法人では、利益追求の組織運営が行われます。

営利法人には、株式会社や合同会社の他に合名会社や合資会社があります。前述のとおり、法人のうち約7割が株式会社であり、2割が合同会社であるため、日本にある法人の9割以上が営利法人になります。

一方で、一般社団法人は前述のとおり事業で利益を得ることも可能であり、また非営利でなければいけないわけでもありません。そのため、実質的に株式会社と同じ考え方や働き方になる一般社団法人もあります。一般社団法人だから一概に決めつけることはできません。その法人の設立者や運営者の考えによって、その内側は大きく異なってきます。

・営利法人との給与面の比較

毎年国税庁は、民間給与実態統計調査を実施しています。公表されている最新のデータは『2020年(令和2年度)民間給与実態統計調査結果』になります。

この資料によると、株式会社の年間平均給与は454万円になります。一方で、一般社団法人が含まれるその他法人の年間平均給与は408万円となり、約7%株式会社より低い年間平均給与が低いことになります。

また、賞与も株式会社77万円に対して、その他法人は55万円となっています。賞与においては約29%低い状況になっています。

株式会社の給与や賞与が高くなっている理由については、以下のように資本金1億円以上の法人で働く給与所得者は1,599万人おり、株式会社に属する給与所得者の39.5%を占めています。

≪給与所得者数と年間平均給与比較≫

個人 株式会社 その他法人
資本金 2千万円未満 2千万~5千万円 5千万~1億円 1億~10億円 10億円以上 合計
給与所得者数* 283 1,209 659 577 673 926 4,044 1,601
年間平均給与** 2,499 3,716 4,044 4,128 4,542 6,076 4,543 4,088

*給与所得者数の単位は、万人になります。
**年間平均給与の単位は、千円になります。

平均給与を比較すると、株式会社の中でも資本金が大きい企業ほど、給与が高くなっています。このことは一般社団法人でも当てはまります。そのため、本来給与を比較するのであれば、同規模や同業種で比較するほうがより正確になります。

民間給与実態統計調査では、業種別の給与なども掲載されているため、比較したい特定の一般社団法人があれば、様々な角度から比較できます。

・営利法人との違い

社団法人は自治体や業界を代表する企業が、立ち上げや運営に関わっている場合もあります。また、一般社団法人の中にはサービス提供を会員のみに実施する会員制を設けている法人もいます。この会員が自治体や大手企業の場合などもあります。

例えば、一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)はトヨタ自動車や本田技研工業や日産自動車など多くの日本自動車メーカーがその運営に携わっています。また、みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行のメガバンクを含めた全国の銀行が会員になっている一般社団法人全国銀行協会(JBA)などです。また、一般社団法人地方公務員共済組合協議会のように、各自治体の共済組合が会員になっている組織もあります。

これらが代表する、会員が自治体や大企業である一般社団法人では給与や賞与や福利厚生が大企業なみのところもあります。また、会員が大企業でなかったとしても、業界や団体を会員に持ち、長い間事業を継続してきた一般社団法人も多くあります。その点で、比較的経営が安定しているという点も一般社団法人の特徴と言えます。

また、一般社団法人は公益性の高い事業を行う法人が多くあります。社会や困った人の役に立てるというやりがいや意義の大きい仕事ができる点は、一般社団法人で働く大きなメリットであり特徴と言えます。

もちろん、株式会社など営利法人が実施する事業も多くは社会や人々の生活に役立っています。それは、社会や人々の生活に役立たないサービスや商品は、自由競争の中で淘汰される、つまり商売にならず利益にならないので無くなっていくためです。

しかし、一方で営利法人は利益を求めなければならず、社会や人々の役に立つものの事業とするには規模が小さい、もしくは儲からないとして事業化されないものもあります。これらの営利法人では手が届かないニーズに応えるのが公益性を目的とする一般社団法人の大きな役割になります。

・一般社団法人の自由度

一般社団法人は資本金がない点や、利益を分配できない点はありますが、事業でいうと自由度が高い特徴があります。

そのため、働く上での一般社団法人と営利法人の差はほとんどなくなってきている点は留意が必要です。株式会社でやろうとする事業は、一般社団法人でもできるからです。

  • ✓一般社団法人は利益を上げてはいけない
  • ✓一般社団法人は残業がない
  • ✓一般社団法人は潰れない

これらは、誤った認識になります。一般社団法人でも事業で利益をあげることができますし、残業もあります。一般社団法人も国や地方公共団体から補助金をもらうことはありますが、原則事業に使用する資金は自ら用立てる必要があります。運営がうまく行かないことや資金がショートする状況が続けば廃業や倒産する可能性もあります。

2-2 公務員との比較

民間企業は、株式会社などの営利企業と混合されて使用される場合もあります。しかし、民間企業とは、国や行政機関や独立行政法人などの公的な機関ではない、法人ならびに個人事業主を言います。

具体的には、民間企業は原則自ら資金を調達して、事業活動を行っていきます。そのため、社員が資金を集めて設立する一般社団法人は民間企業に属します。一般社団法人も事業によって収益・利益を得てその法人と事業を持続させていく必要があります。

一方で民間企業ではない国や地方自治体などの公的機関は、私たちが支払う税金によってその活動は賄われています。国や地方自治体は、赤字額が大幅に悪化した状態などを示す財政破綻の状態になっても、その組織が廃業や倒産することはありません。

●公務員との違い

公務員は、地方公務員と国家公務員という二つの種類に分けられます。どちらの公務員になるとしても、公務員試験を合格しなければなりません。

一方で、国や地方公共団体から委託を受けて仕事をすることやガスや電気など日常生活に密接に関わる仕事をする場合でも民間企業に就職する場合には公務員試験は不要です。民間企業に属する一般社団法人も、業種や職種によっては必要な応募資格などはあるものの公務員資格は必要ありません。

・給与の比較

公務員の給与は、安定していることで知られています。前述のとおり、雇われている先である国や地方公共団体は無くならないことが大きな要因です。知名度の高い企業が倒産や廃業していく現在の経済情勢を考えると、安定した給与や潰れない組織に雇用されていることは大きな魅力と言えます。

公務員は前述のとおり、国家公務員と地方公務員がいます。内閣官房内閣人事局が発表している『国家公務員の給与(令和3年版)』によると、国家公務員が59万人(うち一般職が29万人で特別職が30万人)、地方公務員が276万人になります。

前述の国家公務員の給与には、給与の構成例(43.2歳)が記載されています。それによると、月給は408,868円(通勤手当や、超過勤務手当は除く)となっています。内訳は以下になります。

棒給(一般的な基本給) 327,564円
地域手当・広域移動手当 43,534円
管理職手当 12,530円
扶養手当 9,613円
住居手当 6,427円
担任赴任手当など 9,200円
合計 408,868円

また、一般職員のボーナスは、『年間4.45月分が年2回に分けて支給される』事になります。このボーナス4.45月分は期末手当(2.55月分)と勤勉手当(1.9月分)に分けられており、勤勉手当は人事評価の結果に基づいて支給されることになっています。単純に上記基本給とボーナスを合わせて年収換算すると672万円(408,868円×16.45ヶ月)になります。

厚生労働省の毎月勤労統計調査には、民間企業における『令和3年夏季賞与』のデータがあります。民間企業の年収は同年代で5~29人の事業所に勤める人で265,204円~500人以上の規模の会社で636,176円になっています。

公務員賞与は4.45ヶ月になるので、前述の408,868円の4.45ヶ月の半分が夏季賞与だと計算すると909,731円が賞与になります。民間の大企業と比較しても30万円近い差があることになります。

また、初任給代表例(令和3年4月1日現在)も以下のようになっています。

学歴 給・号棒 月額
総合職 大卒程度 2級1号棒 232,840円
一般職 大卒程度 1級25号棒 225,840円
高卒程度 1級5号棒 187,920円

同じく、厚生労働省の『令和2年賃金構造基本統計調査』一般社団法人を含める民間企業の初任給はおおよそ大学卒で22万6千円、専門学校卒で20万7千円、高卒で17万7千円となっています。日本の給与において民間企業と公務員で初任給については大きな差がないことが分かります。

新型コロナウィルス感染防止で民間のボーナスは1人あたりの支給額が3年連続の前年割れ(*日本総研『2021年末賞与の見通し―新型コロナの影響で一人当たり支給額が3年連続の前年割れに-』)などと言われていることを鑑みると、公務員の給与はやはり安定していると言えます。

国家公務員と地方公務員で差異はあるものの公務員の給与は安定的かつ一般的な民間企業より高いと言えます。

●準公務員

準公務員は、公務員ではないが公共性や公益性がある事業を行う企業や組織に働く人を言います。別名でみなし公務員とも言います。準公務員は、公務員とは異なりますので国や地方公共団体で働いていません。株式会社や一般社団法人など民間企業に雇用されています。

具体的な準公務員としては、郵便局やガス会社、旧国鉄、国立大学などで働く人を言います。日本銀行や年金基金などで働く人も、公務員ではなく準公務員になります。

その設立条件に公益性が求められる公益社団法人だけでなく、一般社団法人も公益性や公共性から準公務員に該当する職員がいます。

準公務員は公務員に近く、営利を追求するよりも社会や地域とそこで生活する人たちの暮らしなどのなくてはならない事業活動に携わることができるやりがいがあります。また、生活を支えるサービスや事業であるため、中長期的に継続する仕事が多い点も特徴になります。

そして、給与体系や福利厚生なども公務員に準じた法人も多くなっています。残業も一般的な民間企業よりも少なく、仕事とプライベートのバランスがとりやすくなっています。一方で、公務員ではないため、公務員試験などは必要ないという利点もあります。

2-3 公益社団法人やNPO法人との違い

公益社団法人やNPO法人との違い

公益社団法人とは、公益事業を行うことをその法人設立の目的としている社団法人になります。公益事業とは不特定多数の人にとっての利益になる事業をいいます。

公益社団法人は、内閣総理大臣または都道府県知事にその公益性の認定があって、公益社団法人になることができます。そのため、その公益性が社会的に認められた法人でなければ公益社団法人になることができません。

一方で、一般社団法人は公益事業以外でも自由に事業ができ、それゆえに内閣総理大臣や都道府県知事の認定もなく、行政庁管理監督もありません。

一般社団法人と公益社団法人は、その法人における許認可があるのかないのかと言うことができます。許可が必要であるということは、それだけ縛りがあるとも言えます。そのため、公益社団法人に勤める職員は一般社団法人の職員より公益社団法人を続けるための制限が厳しいと言えます。

厳しいのですが、公益社団法人では優遇制度を活用できます。具体的な優遇制度としてはみなし寄付金制度*が活用でき、公益事業で得た収益は非課税となります。また、一定の源泉所得税や消費税は非課税となります。

*みなし寄付金制度とは、公益社団法人が実施する収益事業で得た資産を公益目的事業に支出する場合には、その支出は収益事業によって行われる寄付金として取り扱われて税率が下がります。

・NPO法人

NPO法人は、特定非営利活動法人です。法人の活動の目的が非営利であり、都道府県などの所轄庁が認定すれば設立ができます。公益社団法人とその目的などが重複する面はありますが、公益社団法人と比較すると設立と運営が簡単なメリットがあります。

前述の公益社団法人と比較すると、税制優遇措置などが公益社団法人のほうが大きくなります。また、社会的な信用度では規制がより厳しい公益社団法人の社会的信用度が高くなっています。

一方、一般社団法人と比較すると公益性のある事業を行わなければならない点や許認可を得ている点でNPO法人は一般社団法人より社会的信用度が高くなります。社会的信用度が高いということは、事業に結びつけることで競争力になる点や税制の優遇を受けられるメリットがあります。

そのメリットがあるということで、NPO法人で働くということは一般社団法人よりアピール点が明確です。同じ公益性がある事業を実施しているなら、やはり許認可を受けている方が社会的認知も職員の自負も変わってきます。

3 一般社団法人で働くメリット・デメリット

一般社団法人で働くメリット・デメリット

一般社団法人は、営利を目的としている一般社団法人と営利を目的としない非営利の一般社団法人に分かれます。営利を目的としない場合には、非営利型になります。非営利型の一般社団法人は、“非営利の徹底”と“共益的活動を目的とする”の2つの目的のどちらかに該当することになります。

一般社団法人と言っても様々な種類があります。しかし、もともと社団法人は非営利性や共益的活動を目的にした組織でした。そのため、一般社団法人に社会が期待されていることは公益性や共益的活動であり、多くの一般社団法人は公益性や共益的活動をもって法人運営をしています。

そのような公益性が高い一般社団法人で働くメリットとデメリットについてまとめます。

一般社団法人で働くメリットをまとめると、『安定』と『やりがい』に繋がっていきます。安定した組織や給与体系で、やりがいをもって仕事に取り組みたい人には一般社団法人で働くことはメリットが大きくなります。

一般社団法人で働くメリット・デメリット

3-1 安定

安定とは、一般社団法人はその事業として収益が安定している場合が多くなります。それは、国や地方自治体からの補助や会員からの会費などが継続的に入ってくる仕組みが作りやすい点や、社会的な必ず必要なニーズに合致した事業を行っていることによる”消えにくい事業ニーズ“という点で安定性があります。

法人として収入が安定していて、事業ニーズも安定しているため、法人として中長期的な安定感が出てきます。法人の安定感は、職員の給与や福利厚生などの待遇の安定感に繋がります

また、事業ニーズが安定しているため、職員の数も必要な人員数を確保できます。必要人数の確保により、従業員一人一人の負担が軽減され、残業が少なくなり、ライフワークバランスを取りやすいメリットも生まれてきます。

3-2 やりがい

仕事を続ける上で必要になるのは、仕事自体が持つ“やりがい”です。仕事にやりがいがなければ、給与が高くても福利厚生が良くても続けにくいものです。

公益性の高い一般社団法人の仕事は、日常生活をするためになくてはならない仕事が大半です。そのため、人の生活に役立てていることを実感しやすい仕事です。

また、一般社団法人は10人から30人程度の小規模または中規模の法人が多く、1人でできることや任せられることが多くなります。そのため、『自分がやっている仕事が直接人の役に立っている』という実感できる機会が多い環境です。

3-3 評価が反映されにくい

一般社団法人の仕事は、社内や社外の競合他社と業績を競うような仕事は多くありません。そのため、自分の仕事を淡々と日々実施していくことになります。営業成績や売上など客観的な数値で評価をされにくい環境と言えます。

競争の激しい会社では仕事上の成績が給与や賞与や昇進に繋がっていく企業も多くあります。このような会社では競争のプレッシャーが過度になる点や残業時間が増える点などのマイナスな面はあるものの、『自分の力を試してみたい』と言う人や『競争環境で自身の働く力を成長させていきたい』と言う人にはプラス面も多くあります。

3-4 転職が難しい

安定した環境の中で働き続けることに慣れてしまうと、競争環境で事業を続ける一般企業とのギャップが生まれることもあります。多くの一般企業は、競争環境でどのように事業を継続・成長させていくかということがポイントになります。

ただし、一般社団法人で働く人でも一般企業に転職して成功する人や自身で株式会社などの営利法人を立ち上げて成功させている人もいます。一般社団法人の中で、どのように働くかと言うことが重要です。

4 まとめ

まとめ

一般社団法人に職員として働くことをポイントにおいて、一般社団法人の機能別の給与、営利法人や公務員との比較、一般社団法人で働くメリット・デメリットを紹介しました。

社会の中で競争が激しくなっていくと、その反動として公益性や公共性を求める声も大きくなります。そのような中では、一般社団法人で働くことがより価値が高くなる可能性があります。

また、多種多様な価値観を認めていく現代では、多種多様な事業に適応できる一般社団法人には活躍の機会が増えるでしょう。

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