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起業するならどれ?株式会社、一般社団法人、合同会社、NPO法人の特徴と設立手順を紹介

起業に関して、法人格を考えるときによくある悩みは、「どのような法人格が自身の起業に適しているのだろう」ということです。現在主流の法人格は4種類あります。「株式会社」「一般社団法人」「合同会社」「NPO法人」です。今回は、そんな法人格について、それぞれの特徴、メリット、デメリットを紹介し、読者の方が最適な手段を選ぶことができるよう詳しく解説します。起業するときの法人形態で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

法人格の違いと特徴、メリット・デメリットとは何か

起業を検討している方にとって、自分の事業に適した法人格を選ぶ作業は重要です。例えば、ベンチャーとして出資を受けて事業を拡大したい場合に、設立費用が安いからと株式会社ではなく合同会社を選んでしまうと、ベンチャーキャピタルの出資時に、株式会社に変更する必要が生じます。NPO法人の場合は年1回の都道府県に対する事業報告の義務があり、提出がなされないと、休眠NPOと見なされ、NPOの認証が取り消しとなる事例が実際に発生しています。

このように、各法人格には、メリットだけではなく、デメリット・注意点も多くあるため、各形態の特徴・メリット・デメリットについて説明します。

 

株式会社とは?

株式会社は知名度が高く、一般的な法人の形態です。実務上最も利用される法人の形態といえるでしょう。株式会社は合同会社と対比され、「株式会社と合同会社、どちらがよいのか」と問われることも多くあります。両者の違いは以下の通りです。

①株式会社は、人がお金を出し合って(もしくは一人で)設立するものであり、有限責任という特徴がある

株式会社は、株主からお金を出資してもらい、(もしくは、経営者自身がお金を出資して)設立します。株式会社や、後で述べる合同会社についても、特徴的なのは「出資をした人は、その出資をした範囲においてのみ責任を負う(=有限責任)」ということです。

もし、個人事業主や、合名会社、合資会社(当記事では取り扱いません)という形態の場合は、「無限責任」といい、出資した額にかかわらず全部の債務において返済する責任を追うことになります。

ただし、実務上、株式会社がお金を金融機関から借りるときに、代表取締役などの経営者が、「連帯保証」を求められることが多くあります。会社でお金を返せなくなった場合、「経営者などの連帯保証人が返してください」という取り決めです。

このような例外はありますが、原則は、株主は出資額以上の範囲内で責任を負う、つまり出資したお金が帰ってこない以上のデメリットはないということです。

②公証人役場での定款の認証が必要

株式会社、合同会社ともに「定款」という、会社の決まりごと、取り扱う業務などを記した書類を作成する必要があります。株式会社の場合は、各主要都市にある「公証人役場」という、主に裁判官、検察官のOBなどの方が「公証人」として勤務する場所で「定款の認証」を受ける必要があります。「公証人」の定款確認を受け、問題がないとお墨付きをもらう手続きが必要なのです。(ちなみに、合同会社は定款認証の必要はありませんが、定款を作成し、専門家に電子定款を作成してもらうか、4万円の印紙を貼り付ける必要はあります)

なお、平成30年11月30日から、株式会社では、株式の50%を超える株式を保有する個人、(いない場合には25%を超える株式を保有する個人、さらにそれもいない場合は事業活動に支配的な影響力を有する個人、代表取締役、一般社団法人、一般財団法人では、事業活動に支配的な影響力を有する個人、そのような者がいない場合には、代表理事が、実質的支配者として、暴力団員やその関係者、国際テロリストとの関わりがないことを宣言することが必要となりました。万一、関わりがあったり、宣言を拒否した場合、定款認証が受けられません。

③株主総会が、会社の意思決定機関であり、株主と経営の意思決定権者が分離している

株式会社の主な特徴は、株主と経営者が分離しているということです。合同会社の場合、株式会社でいうところの株主を「社員」といいますが、社員の中から、「業務執行社員」「代表社員」という経営陣を決めることになります。一方、株式会社であれば、株主と業務執行者は完全に切り離されています。そして経営者は、株主総会にて決定されるため、経営陣が必ずしも株主であるとは限りません。

④決算公告が必要

株式会社の場合、官報という国の発行する日刊紙や、新聞への掲載、インターネットへの掲示など所定の方法で、毎事業年度ごとに決算を公に知らせることが義務とされています。合同会社の場合は、決算公告の必要はありません。

⑤出資者への利益配分

株式会社の場合、利益を配当等の形で配分する場合は、出資額に応じて配分されます。なお、合同会社の場合は、出資割合を問わず、社員(つまり株式会社でいう株主)の合意があれば、出資割合に関係なく自由に配分できます。

⑥株式の譲渡

株式の譲渡は、原則は自由ですが、定款で「譲渡制限」をかけることができます。(合同会社の場合は、社員全員の同意が必要)譲渡制限をかけることにより、株主となる人を会社の側から決めることができ、株主総会で議決権を持たせたい人に株式を保有させることができます。

⑦任期の存在

株式会社の場合、取締役の就任期間について2年~10年の任期を決めることになります。任期が過ぎると、同じ人を再任することもできますし、別の人を任命することも可能です。
また、就任期間が過ぎた場合は、同じ役員の場合であっても、法務局に司法書士か自社を通して役員の変更登記を申請しなければなりません。

下記の法務局のサイトにもあるように、役員の変更登記をしないまま、最後の登記から12年が経過すると、休眠整理作業の対象となります。その後も手続きがされない場合、会社に対し解散の登記がなされることになるため、取締役の任期完了後の役員変更登記は忘れないようにしてください。

株式会社に関する特徴的な部分の説明は以上ですが、特に、ベンチャーなどでベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けることを考えている方は、株式会社を選択すると良いでしょう。

 

一般社団法人とは?

次に、一般社団法人について説明します。一般社団法人の歴史は新しく、平成20年施行の法律により、一般社団法人が利用できるようになりました。以前は社団法人というものがありましたが、これが「一般社団法人」と「公益社団法人」の二種類に別れました。「公益社団法人」は強い公益性が求められ、「公益認定法」という法律に規定された要件を備える必要がある一方、「一般社団法人」は、公益社団法人に比べ、設立が容易となっています。

 

他にも、一般社団法人について様々な特徴があるため、ご説明します。

① 非営利団体であることが求められる

一般社団法人は、株式会社、合同会社と異なり、非営利(利益を挙げてはいけないというわけではないですし、給料を支払うことは問題ないが、余った利益を構成員で分配してはいけない)な団体であることが求められます。

②一般社団法人の設立はローコストだが、社員が2人以上必要

一般社団法人の設立については、資本金は必要なく、設立費用も株式会社に比べ少額で、登録免許税は、合同会社と同じ6万円です。設立に必要な社員数は2名以上です。

③法人税は一般の株式会社と同様

一般社団法人は、原則、株式会社と同様、普通法人として課税がされます。例外として、一般社団法人の中で、「非営利性が徹底されている法人」の場合、会費収入など、収益事業でない部分からの収入は非課税となります。(なお、収益事業となるか、そうでないかの部分の判断など税金面については、税理士に相談し、判断をしてもらうと良いでしょう)

④一般社団法人はどのような場合に用いられるのか?

ここまで説明を読まれた方の中には、「同じ非営利団体であるNPO法人とどう違うのだろう?」という印象を持たれた方もいらっしゃると思います。そこで、よくある事例を並べてみましょう。

  • 協会が認定資格を付与するための一般社団法人設立
  • 自治会などを一般社団法人化
  • 業界団体を一般社団法人化
  • 学会を一般社団法人化

このような、公益性の高い目的で一般社団法人が設立されることが多いのが現状です。起業して収益を挙げていくものとは方向性として異なるため、起業の手段として一般社団法人を利用することは、さほど多くないでしょう。

 

合同会社とは?

起業するとき、株式会社と合同会社がよく天秤にかけられる傾向があります。合同会社の特徴は以下の通りです。

①合同会社は出資者のことを「社員」と呼ぶ

「社員」というと、「会社に務める人」というイメージがわきますが、合同会社の場合、出資をする人のことを「社員」と呼びます。さらに、社員の中で業務を執り行う人を「業務執行社員」として定款で定めます。(定めない場合は、社員全員が業務執行社員扱いとなる)

株式会社と異なり、出資をしていない人は、業務執行に関わることができません。そのため、「出資者の中で選任された人=合同会社の業務を執行する人」となるのです。

②株式会社と共通の点も多い

合同会社は、株式会社と共通する点も多いです。例えば、出資者の責任は有限責任であること、一人だけで設立できること、収益を挙げることを目的とすることなどは、株式会社と共通です。

③業務執行者の任期がないこと、公証人役場での定款認証が不要、決算公告が不要であることなど株式会社と異なる点も

合同会社の特徴として、一部の手続きが不要であることが挙げられます。詳しくは、メリット、デメリットの点でも触れますが、業務執行者の任期を定める必要がなく、決算公告を行う必要もありません。そのため、資産管理会社を設立する際に、合同会社が選択される傾向もあります。

 

NPO法人とは?

NPO法人は、特定非営利活動促進法に基づき、平成10年に設立ができるようになりました。
NPO法人といえば、「社会貢献」「非営利団体」というイメージがまず浮かぶ人が多いかと思います。同じく非営利の一般社団法人と異なる点として特徴的なのが、「20種の特定非営利活動のどれかに該当し、不特定かつ多数のものの利益に寄与することが要される」という点です。この20種についての詳細は、内閣府のNPOのホームページに記載されています。

総括すると、地域や生活、観光、文化、災害支援、人権擁護、国際協力、情報化社会の発展や各種平等、保護を図る目的などのボランティア団体を想定していると言えましょう。

NPO法人は、公益性の高い分野であるため、都道府県に対し、毎年の活動報告が求められます。報告を怠ると取り消しになる事例もあるため、注意が必要です。

また、NPO法人が解散する場合、残余財産を、株式会社や合同会社のように構成員で分配することはできません。残余財産の帰属先(譲渡先)は、NPO法人、国又は地方公共団体、公益財団法人又は公益社団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人から選定しなければならないという規定があるため、その点も留意したほうがよいでしょう。

法人格を考えるうえで、どんな人がどんな法人格に向いているのか?

起業時に法人格を検討する上で、どんな人がどんな法人格に向いているのかを、それぞれ検証していきましょう。

 

株式会社が向く人

株式会社は、起業を考える人の多くにおすすめできる法人格です。
特に、株式会社として上場をしたい、ベンチャーキャピタルからの出資を受けたい、会社の売却も含めたEXIT(出口戦略)も考えている場合などは、株式会社を選択すると良いでしょう。

また、株式の新規発行による増資も、株式会社では可能ですが、合同会社ではできませんので、会社のしっかりした成長を考えている人は、株式会社を選ぶことが必須です。(なお、合同会社を株式会社を変えることもできますが、手続きの手間や費用が発生しますので、最初から株式会社を選ぶのが無難です)

株式会社は知名度が一番高いため、取引相手にとって「わかりやすい」というのもメリットです。以前は、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社が存在しました。2006年の会社法により、有限会社の制度は廃止され、現在も「有限会社」という名前の付く会社は多くありますが、実務上は「みなし株式会社」として扱われます。有限会社のままにしている会社が少なくないのは、変更の手間、手続費用がかかるという点と、「有限会社である」ということは十数年を超える、ある程度の期間経営されてきた、「歴史を持つ会社」であるというイメージを相手に持ってもらえるからで

す。

また、株式会社より合同会社の方が設立費用が安く、早く設立はできますが、合同会社の知名度は意外と低く、特に年配の方の場合、「合同会社?」という疑問をもったような印象で受け取られることもあります。

法人の設立手順で詳しく解説しますが、株式会社は、2つの設立方法があります。「発起設立」という、発起人(起業する人)が株主となり、経営者となるパターンと「募集設立」という、発起人以外の出資者も株主となるパターンです。以上、様々な点を踏まえ、多くの起業する方に適しているのは、株式会社と言えましょう。

 

一般社団法人が向く人

一般社団法人は、公益性の高さ、非営利という側面が強いのが特徴です。よって、「通常の起業手段としてはあまりなじまない」というのが、率直なところです。

ただし、資格・技能の団体や教育を行う、いわゆる「資格ビジネス」において、一般社団法人が設立されることはよくあります。また、海外とのビジネス、交流の窓口となるビジネスで、株式会社ではなく一般社団法人を設立する事例もあります。公益性の高いビジネスを考える場合は、一つの選択肢として抑えておいてもよいでしょう。

 

合同会社が向く人

合同会社のメリットは、公証人の定款認証が不要(ただし、定款自体は作成しないといけない)であるため、株式会社に比べ、早く、安く作れることです。また、株式会社の登録免許税は15万円以上(平成31年および令和元年現在)、合同会社の登録免許税は6万円以上かかります。また、株式会社設立時に必要な定款認証の費用が、定款認証代約5万2千円、定款認証を行う行政書士の報酬もしくは、自分で行う場合は紙ベースの定款の認証手数料4万円がかかります。(行政書士・会社設立サービスに依頼したほうが安くあがる場合が多い)

このように、登録免許税が安く、公証人の定款認証費用もかからないため、費用面では安いですが、イメージや会社の拡張性では、株式会社に劣ります。

経営者と株主が一体であること、決算公告の義務がないことから、例えば個人資産管理会社(作家、スポーツ選手、フリーランス)が税金対策のために設立する用途や、専門的なスキルを持つ人が集まり、企業として受託することで信頼度を高めるということには向くかもしれません。ただ、一般的な起業であれば、株式会社の方が適しているといえましょう。

 

NPO法人が向く人

NPO法人を起業の選択肢として考えるのは、かなり限定されたケースになるかと思います。強いていうなら、社会の課題解決のための社会起業ですが、設立の煩雑さや、毎年の活動報告の義務、報告を怠ると取り消しになる場合もあります。前述の「20種の特定非営利活動のどれかに該当し、不特定かつ多数のものの利益に寄与」する事業で、NPOであることが補助金、助成金が出るなど特別なメリットがない限りは、起業を考える上で、NPO法人を選択する必然性は低いといえましょう。

それぞれの法人の設立手順とは?

ここまでは、株式会社、一般社団法人、合同会社、NPO法人の特徴・概要や起業という観点から、どの選択肢がふさわしいかをご説明しました。この章では、それぞれの法人を設立する手続きについて流れを説明いたします。

なお、事前に申しあげておきたいのは、どの法人の設立手続きも、煩雑で時間がかかるということです。費用はかかりますが、自分でやるよりも専門家に依頼した方がスムーズです。特に、株式会社の場合は、専門家に依頼したほうが、電子定款認証などの活用で、費用がかえって安く付く場合もあります。会社設立の手続きを自分で行い、会社の経営やビジネスの発展にはつながらない書類作りの仕事をするより、自身が起業する分野の種まきに活かしたほうがずっとスムーズに事業を拡大することができるでしょう。

 

株式会社の設立手順

個人が起業する場合、実務上は「発起手続」という、発起人が一人、もしくは中心となって行うパターンが一般的ですので、発起設立を前提とした手順から見ていきましょう。

① 発起人の決定と発起人会の開催、発起人会の議事録・発起人設立事項決定書の作成

一人の場合を除いて、設立メンバーとなる発起人を決める必要があります。
発起人というのは、会社の様々な事項を決める、会社における中心人物でなります。(一人でも、複数でも可)あわせて、会社のためのお金を出す人でもあります。

発起人が決まったら、発起人会を開催します。(発起人が一人の場合は、発起人設立事項決定書をつくるだけでよい)
発起人会の議事録や、発起人設立事項決定書の書面で、

  • 設立年月日
  • 設立時取締役の氏名
  • 取締役の中から、設立時代表取締役の住所氏名
  • 本店所在地(定款上は、都道府県及び市区町村までの記載でよい)
  • 議事録・発起人設立事項決定書の日付記入と、発起人全員の記名押印

などを定めます。

② 商号の決定と同一商号の調査

商号、いわゆる会社名を決めるときは、発起人の思いだけでなく、商号に使える文字や、他社の商号と同一や著しく類似がないかなど注意する必要があります。
まず会社名の中には株式会社という表記を文末か文頭につけないといけません。「株式会社高田コーポレーション」とか「山田株式会社」という形です。次に、商号の中には、支店、支部、支社など法人の部門を表す言葉を入れてはいけません。

また、特定業種にのみ使用できる語句があります。銀行、保険、共済など、他にも業種の許認可を取得していないと使用できない社名があるため、専門家に確認するのが無難です。公序良俗に反する語句の利用や、同一住所に同一商号の会社を登記することもできません。

社名の商号については細かいルールがあります。アルファベットや、1,2,3などのアラビア数字は利用可能です。記号については、「・」「&」、「‘」「,」「-」「.」が認められておりますが、商号の頭や末尾には利用できません。例えば、「Yoshikawa.」と、末尾に「.」が来る社名は認められないのです。また、IT系によくありそうな「@(アットマーク)」や「!」「?」「()かっこ」などの記号も、社名には認められません。

あわせて重要なのが、「同一商号がないか、きちんと調査を行う」ということです。他社、特に著名な会社と同一の商号や著しく類似した商号を利用することは、不正競争防止法にて禁止されています。場合によっては、他社から「うちと紛らわしい名前でビジネスをしないでくれ、と営業差止請求がなされるおそれもあります。他社が商標登録をしている場合、同一、類似の商号を使うことが商標権の侵害に当たります。

同一や類似商号がないかは、インターネット、法務局で調べられる他、より厳密に確認する場合は、特許・商標のプロフェッショナルである「弁理士」に相談することをおすすめします。

③ 本店所在地・事業目的・事業年度・決算公告方法・資本金など必要事項を決める

  • 本店所在地
    まず、本店所在地を決めます。注意点としては、
    ◯店舗型業務の場合は、立地を考え、現地を確認する
    ◯自宅兼事務所とすることもできるが、下記の四点に注意
  • 家庭と仕事が切り離しにくくなる。
  • 賃貸物件に住んでいる場合、業務利用が可能か確認する必要がある。
  • 許認可が必要な業種(例えば宅建業など)のうち、住宅の一室や他の法人への間借
    りを認めない業種もあるため、自身が行う業種では、自宅兼事務所としても差し支
    えないか確認
  • バーチャルオフィスの登記は避けたほうがよい。近年バーチャルオフィスを利用
    した詐欺などがある実態から、金融機関の口座開設が断られる傾向もある。

近年はIT系の立地を重視しない業種も多いですが、許認可で自宅NGではないか、賃貸の場合業務利用可か、バーチャルオフィスを本店としないという3点は気をつけたほうが良いでしょう。

バーチャルオフィスだけではなく、シェアオフィス、コワーキングスペースが増えている近年、シェアオフィス、コワーキングスペースでは本店の登記をできる可能性もありますが、法人口座の開設については、銀行の判断がすべてです。そのため、銀行、税理士などの専門家に確認したり、シェアオフィス、コワーキングスペースを本店として登記使用する場合は、シェアオフィス、コワーキングスペースの担当者に、口座開設が問題なくできた事例があるか、口座開設を検討している銀行に、シェアオフィスなどでも大丈夫かなどを確認したほうがよいでしょう。

◯事業目的

法人を設立する際には、「事業目的」を決めなければなりません。事業目的に定めた業務のみを行うことができますので、事業目的は真剣に検討しなければいけません。なお、事業目的は、法務局に登記がされますので、外部からでも確認できます。

事業目的で気をつけることは、下記の4点です。

  • 今後行う事業も含め、想定するすべての事業を入れておく
  • 「上記に付随する各種事業」などの形で、業務そのものだけではなく、業務の周辺事業もカバーできるようにしておく
  • 事業目的は、明確にする
  • その他公序良俗に反しない、非営利事業は書かないなど。定款の確認を行うのは法務局なので、司法書士や法務局に定款の事業目的に問題がないか確認する

法務局なので、司法書士や法務局に定款の事業目的に問題がないか確認する

◯事業年度

個人事業の場合は、1月スタート、12月締めとなりますが、法人の場合は、事業年度を自由に決めることができます。大手の会社などでは、4月1日から3月31日を事業年度としているパターンが多いですが、これから法人を設立する場合は、特に個人・法人の確定申告・決算が集中する3月、4月は避けたほうがベターといえるでしょう。

また、例えば9月10日に法人を設立した場合、9月1日から翌年8月31日を事業年度にすることにより、決算までの期間を1年にできるだけ近づけるよう心がけたほうが良いです。

特に、設立から決算までの期間が短いと、設立後の営業、業務と決算業務を同時進行することとなるため、できるだけ決算までの期間を長く設定すると良いでしょう。

◯公告方法

「公告」とは、決算時に社外へ、官報、日刊新聞紙、インターネットを通し決算を公開する手続きです。年1回の報告が義務付けられており、定款でどの手法を使うか定め、記載がない場合は官報を選択した扱いとなります。

一番メジャーなのは官報の利用で、一回の広告で数万円かかります(行数により変動)。なお、インターネットにて自社の決算報告をwebサイトに掲載する場合は、登記簿(登記事項証明書)に決算公告をするURLが記載されます。

◯資本金を決め、用意する

資本金については後述しますが、資本金とは、発起人や出資者から集めたお金です。資本金をもとにビジネスをしていくことになるため、実際には1円からでも起業できますが、あまりおすすめはできません。会社の全部事項証明書(いわゆる登記簿謄本)を取得すれば資本金は確認できる上、資本金の額で会社の安定度や経営者の本気度が推察されることもあります。100万~300万(以前の有限会社の基準)、そして1,000万円を超えると税金が変わってきます。そのため最初は資本を手厚くするより、多すぎず少なすぎずの資本金で考えたほうが無難です。

許認可が必要な事業では、一定額の自己資本金額が要件となるケースがあります。(有料職業紹介事業者→500万円など)さらに、創業融資の際も、自己資本の半分から10分の1の資本金を用意できているかがポイントとなります。自身の行う事業に合わせて、資本金を用意するようにして下さい。

◯資本政策に注意

自分で資本金を全額出資する場合は、特に気にする必要はありません。しかし、外部から資本金を出してもらう場合、出資の割合によっては、出資者に会社の役員の専任、解任や報酬決定などの権限を握られることもありえます。

株主総会で決定できる重要なことと、必要な議決権については、下記のとおりです。

  • 役員の報酬決定や剰余金の配当→過半数(定款でなくせる)が出席し、出席株主の議決権の過半数
  • 役員の選任、解任→過半数(定款で3分の1まで減らせる)が出席し、出席株主の議決権の過半数

具体的な株式割合で示すと、

  • 34%以上の株式保有→株主総会の提案に拒否権
  • 51%以上の株式保有→取締役の選任、決算の承認など、実質的に会社を支配できる
  • 67%以上の株式保有→定款の変更、資本金の額の減少、新株の発行ができる

と、51%と67%が、経営者、株主にとって大きな分水嶺といえるでしょう。51%の株式を投資家が握れば、役員の決定権は投資家サイドが握り、67%以上の出資であれば、出資相手の側が、人事に加え、定款の変更、資本金の額の減少などお金の面でも決定権を握ることになります。ゆえに、起業家は外部からの資本金の出資に対しては慎重になる必要があるのです。

◯発行済株式数と発行可能株式総数

株式会社の場合は、最初の株式数(つまり発行済株式数)と、発行可能株式総数を予め決めないといけません。
一般的には、多くの会社が1株1万円で設定、発行可能株式総数は、発行済株式数の4倍が一般的ですが、自由に設定することができます。

④ 出資金の払い込み(外部の出資者に払い込んでもらう)と株主名簿の作成

資本金が決まったら、今度は自分、もしくは株主になる人から、出資者代表の個人の口座へお金を振り込みます。気をつける点が、原則は定款の認証手続きから登記申請までの間に、それぞれの出資者より入金をうけるよう、振込日には注意するということです。なお、出資者全員の同意が得られてから定款認証までの間での払込も、基本的には問題はありませんが、その場合は発起人決定書にて、出資金に関して決定したことを証明できるようにしてください。

なお、名義については出資者の名義で振り込み、かつ、自分が出資者である場合でも、自分の名前で、自分の口座へ振り込む必要があります。このコピーが出資を受けた証明書代わりとなります。法人設立が完了し、法人の口座へ振り返るまではそのままにしておきましょう。

◯株主名簿の作成と株式の譲渡制限

株主については、現在は株券を発行する必要はありませんが、株主名簿を作成し、株主の氏名、住所、株式数、株式の取得日(会社の設立日と同一にする)を記載する必要があります。また、定款で、「株式の譲渡制限」といい、会社の株式を譲渡する際に、会社の許可が必要であるということを定めておくことが重要になります。

⑤ 役員の種類と任期をきめる

◯役員の種類について

役員には、取締役、監査役、会計参与の三種類がありますが、一般的な起業では、取締役のみのケースが多いです。取締役は1人でも複数でも問題ないほか、代表取締役も2名以上置くことができますが、代表取締役はそれぞれが単独で意思決定できますので、代表取締役間のコミュニケーションが要されます。

◯役員の任期

株式会社の役員の任期は、定めのない場合2年、監査役の場合4年です。定款で定めることにより、どちらも10年に伸ばすことができます。任期が過ぎた場合、継続して役員を行う場合でも法務局への登記が必要になるため、実務上は、10年に伸ばすケースも多いです。

⑥ 印鑑の作成

法人設立に必要な印鑑は、「代表者印」(いわゆる会社実印)、「銀行印」、「角印」の三種類です。

・代表者印

法務局の登記申請書に押印し、その後も重要な取引に使う、いちばん大切な印鑑。登記申請までに用意する。縦横1~3cmの正方形に収まるサイズであること。
金銭消費貸借契約書・登記申請書・委任状。不動産売買契約書など重要な意思決定時に押す印鑑

・銀行印

銀行口座での取引印

・角印

見積書、請求書などに押印する印鑑

あわせて、所在地、法人名、代表者名を記したゴム印を同時に購入するパターンも多いです。

⑦ 発起人・役員の印鑑証明書の用意(発行から3ヶ月以内のもの)

発起人、役員の場合は1通の印鑑証明書、発起人、役員兼任の場合は2通の印鑑証明書が必要です。役員になる予定の人には、市区町村役場で早めに印鑑証明書を用意してもらうよう伝えましょう。

⑧ 定款作成

上記で決定したことを踏まえ、定款を作成します。公証人連合会では、定款のサンプルが提示されていますが、より精度の高い、事業目的にあった定款を作る場合は、税理士・行政書士に依頼するとヒアリングの内容をもとに、適した定款を作成してくれます。

⑨ 定款の認証

定款が完成したら、本店所在地の都道府県を管轄する法務局に所属する公証人に、定款認証の手続きをして貰う必要があります。

事前に定款の内容に誤字脱字がないかをFAX(さすがに今の時代ですので、電話で確認すれば、メールで対応してくれる公証人役場も多くあります)して、指摘に従い修正、その後公証人役場へ来訪の予約をし、定款認証の手続きを行います。約5万2千円の手数料に加え、紙であれば4万円の印紙代がかかります。
なお、行政書士に依頼した場合、ほとんどのパターンで電子定款認証を行ってくれますので、電子定款の場合は印紙代がかかりません。

⑩ 登記手続

定款認証が無事終了すれば、最後に登記申請手続きです。
登記申請は、司法書士のみが代行できる業務ですので、その点はご注意下さい。

株式会社の場合、下記の書類が必要です。

  • 定款
  • 登記申請書
  • 資本金の払込を証する書面(通帳の表紙・裏表紙・払込面のコピーをホッチキスで止めて、代表者印を各ページ間に押印)
  • 発起人決定書
  • 役員の就任承諾書
  • 役員の印鑑証明書
  • OCR用申請用紙もしくはCD-R(法務局でもらえる)
  • 印鑑届出書(法務局でもらえる)
  • 印鑑カード交付申請書(法務局でもらえる)

その他必要に応じ、司法書士に依頼する場合位司法書士への委任状、資本金の額の計上に関する証明書、現物出資の場合の調査報告書、現物出資財産引継書など

同時に、株式会社の場合は、最低納付額15万円か、資本金の額×0.7%のどちらか多い方を納付する必要があります。なお、登録免許税の納付は収入印紙で収めますが、消印は法務局が行いますので、絶対に申請者側で消印しないよう、お気をつけ下さい。

⑪ 登記完了と登記事項証明書・印鑑カードの取得

設立登記申請書を法務局に提出し、不備がなければ、2~7営業日ほどで登記が完了し、正式に株式会社の設立が完了します。

以上のとおり、株式会社に限らず、法人設立の手続きはとても煩雑です。多くの人は、税理士(税理士登録をしていると、同時に行政書士も登録できる)・行政書士・司法書士などの専門家に依頼します。法人設立には、定款の認証代行ができるのは行政書士、設立登記の代行ができるのは司法書士という決まりがありますが、税理士・行政書士・司法書士とも、提携している隣接士業に依頼しますので、ワンストップで行えるパターンがほとんどです。

登記が完了すれば、法務局で印鑑カード、登記事項証明書を取得できますし、司法書士に依頼していれば、司法書士から印鑑カード、登記事項証明書を送付してくれます。

なお、印鑑証明書については、大切な書類のため、悪用を防ぐためにも経営者本人が取得することをおすすめします。

 

一般社団法人の設立手順

実務上は複雑な手順になるため、専門家に依頼されることをおすすめいたします。

① 設立時の社員(2名以上)を決め、役員を専任するともに、設立時代表理事を定める

ここでの社員は、一般社団法人の構成員であり、法人で働く社員のことではありません。

② 定款を作成、あわせて印鑑作成など必要事項を行う

定款を2名以上の社員全員で作成し、全員の署名押印が必要になります。

日本公証人連合会の定款記載例

③ 公証人役場で定款認証の手続きを受ける

株式会社と同様、定款認証の手続きを公証人役場で受ける必要があります。

④ 法務局で一般社団法人の設立手続きを行う

定款認証完了後、法務局で一般社団法人の設立手続きを行います。(一般社団法人に関する法務局書類のひな形)

実務上は機関設計など検討事項が多くあり、一般社団法人の設立についても、専門家にアドバイスを受けながら手続きを進めるのが確実です。

 

合同会社の設立手順

合同会社の設立手順の特徴は、株式会社にある定款認証が存在せず、登録免許税も6万円からで済むことでしょう。

合同会社の設立については、公証人の定款認証以外は、株式会社設立に準じた流れであり、手順についても概略のみを説明します。

① 発起人の決定と発起人会の開催、発起人会の議事録・発起人設立事項決定書の作成

② 商号の決定と同一商号の調査

③ 本店所在地・事業目的・事業年度・資本金など必要事項を決める

合同会社の場合、決算公告は不要です。

④ 出資金の払い込み(外部の出資者に払い込んでもらう)と社員名簿の作成

ここでの社員は、出資者、いわゆる株式会社でいう株主の名簿です。

⑤ 役員の種類と任期をきめる

合同会社の場合、株式会社に準じる部分が極めて多いですが、役員の名称は業務執行社員、代表者の名称は代表社員、設立時の出資者の名称が設立時社員となります。

⑥ 印鑑の作成

法務局に登記申請を行うまでに、作成が完了している必要があります。

⑦ 業務執行社員・代表社員の印鑑証明書の用意(発行から3ヶ月以内のもの)

業務執行社員は1通、代表者印は2通の印鑑証明が必要になります。

⑧ 定款作成

合同会社の場合、定款の公証人役場での認証は不要ですが、定款自体の作成は必要です。
また、専門家に依頼し、電子定款として署名を受けていない紙の定款の場合、印紙代が4万円かかります。結果として、自分で行っても、専門家に依頼してもさほど費用は変わらないケースが多くあります。

⑨ 登記手続

合同会社については、定款の認証は不要ですが、法人の設立登記手続自体は必要です。
こちらも司法書士に依頼するか、法務局の窓口で確認するようにして下さい。
申請が通れば、合同会社の登記手続きは完了となります。

ただ、合同会社の場合、公証人の定款認証による確認というプロセスを経ないことから、時々定款の内容に問題があり、却下されるというケースもあると聞きます。やはり、合同会社の設立に関しても、専門家に依頼するのが確実でしょう。

 

NPO法人の設立手順

NPO法人の設立手順は、他の形態と比べて異なるポイントが多くあります。

① NPO法人化への事前準備

NPO法人については、10人以上の社員が必要です。その上で代表者を定める必要や、各種書類を準備する必要があり、また、後述の書類の内容に関し、相談、作成準備を行う必要があります。

② 申請書類の作成・提出

下記の書類を用意する必要があります。

  • 定款
  • 役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
  • 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
  • 役員の住所又は居所を証する書面
  • 社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
  • 認証要件に適合することを確認したことを示す書面
  • 設立趣旨書
  • 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
  • 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
  • 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

これらは、NPOを所轄する官庁に都道府県(自治体によっては、都道府県より認証事務を委託されているところもあります)を経由して提出する必要があります。

③ 公告及び書類の縦覧

所轄庁は、法人名や活動、一部書類を受理した日から1ヶ月間、公衆の縦覧に供します。

④ 設立の認証・不認証の決定

申請書受理から3ヶ月以内に、認証・不認証が決定され、書面で通知されます。

⑤ 設立認証後、2週間以内に登記を行う

認証が降りた場合、2週間以内に登記を行う必要があります。また、認証後6ヶ月経っても手続きがされない場合は、認証を取り消されることがあります。また、法人格取得後毎年、管轄官庁への報告義務が課され、他の法人と同様、税金の納付義務が生じます。税金については、税理士・税務署に確認してください。

資本金の決め方

資本金は、会社設立時に払い込んだお金のことを言います。すでに会社を設立したという方は、会社設立時に、発起人の口座に資本金となるものを振り込んだ覚えがあると思います。その資金が、会社の資本金になります。資本金は、誰からから借りたお金ではなく、誰にも返済する必要がありません。

資本金は基本的に変動しないものです。利益はその期ごとに違いますが、資本金は基本的に手を付けません。しかし、払い戻して事業のために使うことは可能です。以前は、払い戻しができる期間について制限がありましたが、現在は会社設立後であればいつでも資本金を払い戻すことができます。そのため、現在の制度のもとでは、実質として、資本金という概念は会社の設立登記を行う時点でどれくらいの資金が集まったのかということくらいしか意味を持たなくなってきています。

資本金は、経営を継続させていくためのお金です。例えば、売り上げが不調でもテナント料や光熱費などの固定費は払わなければなりません。資本金は、スタートアップ時や、売り上げが上がらないときに経営のための資金として使うことができます。つまり、資本金が多ければ、会社に何かあっても資本金から支払うことができます。このような事情があるため、資本金は会社の体力とも言われています。ただ、設立後に資本金を引き出せるところに注意が必要です。

銀行が、融資を判断するときの材料にもなります。資本金があるということは、将来的に返済を見込める根拠となり得るためです。融資の金額は自己資金の何倍まで、という決め方をしていることがあります。資本金があまりにも少ない会社だと、融資を考えた時に貸してくれる先がかなり絞られてしまうでしょう。実質的に、お金を貸してくれる銀行が極端に少ないという可能性があります。

ただし、近年の金融機関は、「会社がどれくらいの資本金を持っているのか」よりも、「会社にどれくらいの自己資金があるか」に注目しています。資本金よりも自己資金に注目していると言ってもいいでしょう。

金融機関としては資本金の他、自己資金についても興味を持って見ています。金融機関としては、きちんと返済ができるかどうかということを気にしているわけで、会社設立時の資本金よりも現在いくら資金があるのかということを知りたいわけです。そこで、銀行の残高証明書を出してほしいと言われたりします。

日本政策金融公庫の創業融資制度等、金融機関からの借り入れを行う場合、自己資金が必要です。自己資金は、誰にも返す必要がないお金であり、一般的に融資金額は自己資金額に比例して増えます。多額の融資を受けたい場合は、それに合わせて自己資金も用意しなければならないということです。もし融資を受けたいのであれば、自己資金をきちんと用意して、融資の申請を通すようにしてください。資本金があればいいというものではなく、銀行の融資の場合は資本金も大事ですが、自己資金が今いくらあるのかということが重視されていることも留意しておきましょう。

 

資本金が大きいメリット

資本金は、設立時に発起人の口座に振り込まれます。実際にはどのような金額にしようかと悩む人も多いのではないでしょうか。まずは、資本金が大きいことのメリットを紹介します。

・社会的な信用が大きい

取引をしようという相手が会社の信用度合いを測るため、資本金を活用することがあります。資本金の大きさは、根本的な社会的信用の大きさを測る目安になります。

・許認可の要件を満たす

会社法では、資本金1円でも会社を設立できると定められていますが、事業を営むにあたり許認可が必要な分野については、許認可の許可要件に資本金が定められていることがあります。もし、許可要件に資本金が満たないと許認可を取得することができず、結果として希望する内容の事業ができない可能性があります。許認可が必要な事業を営む予定がある場合は特に注意をしてください。

・経営が安定化しやすい

資本金が大きいと経営が安定化しやすくなります。営業活動が軌道に乗っていない時期でも会社を育てることに注力することができます。

 

資本金が大きいデメリット

資本金を大きくする際は、その資金調達で困る場合があります。金融機関が資本金にするために資金を貸してくれることはないため、資本金に借り入れたお金を充てることは原則できません。

資本金の元手は、多くの場合、自己資金もしくは家族・知人からの援助となります。資本金が多ければ多いほど、調達も手間がかかります。調達の手間で大変なことにならないようにするためには、基本的に自分で負担できる範囲で資本金を拠出したほうがいいでしょう。そのためにはある程度貯蓄してから会社を設立する必要があります。

 

資本金が小さいメリット

・消費税の免税措置を受けることができる

資本金が小さいと節税面で有利になる場合があります。資本金が1000万円よりも小さい企業については、消費税免税が適用されます。ただし、この免税措置は基本的に設立1期目までで、なおかつ条件を満たしたとしても延長できるのは設立2期目までなので、資本金を少なくしておけばずっと免税措置が適用されるというわけではありません。

 

具体的には、1期目に資本金が1000万円未満、かつ特定期間の課税売上高が1000万円未満の場合、特定期間の給与支払額の合計が1000万円未満の場合と、設立一期目が7か月未満だった場合です。資本金1000万円未満と、これらのうちから一つの条件を満たす場合、最大2期目まで消費税の免税措置を受けます。平成23年度の税制改正で要件が厳しく変更された点なので、注意してください。

・資本金調達の手間が少ない

資本金を少なくしておけば、その分調達の手間は減ります。設立時に多額の資本金を用意するのは手間がかかり、難しくなります。資本金の調達方法としては、自分で貯金する他、株を売って株主から出資してもらう方法もあります。

 

資本金が小さいデメリット

対外的な信用力が低く、会社の体力が弱いとみられてしまうことがあります。

資本金の金額を決めるときのポイント

平均的には、資本金として準備される金額は300万円程度と言われています。先に紹介したように、許認可の要件となるケースについては、要件通りの資本金を準備する必要がありますが、そうではない場合については3か月間、利益が全くでなくても会社が存続できる金額を用意するようにしてください。

・当面の運転資金として用意する場合(300万円以上)

平均すると資本金は300万円程度ですが、利益が全く出なくても会社が存続できる金額というのは、業種によってかなり差があるものと思われます。自社にとって、どれくらいの金額が必要なのかをよく検討しましょう。

・取引先から信頼を得たい場合(競合他社と資本金の金額を合わせる)

基本的に取引相手は資本金=会社の体力と考えているため、取引相手からすれば、資本金が少ない企業については信用力が低いので取引したくないと考えます。信用力をつけるためにも、ある程度の自己資本を用意することは重要です。その際には、自社がこれから参入する業界の、競合他社についてどれくらいの資本金を用意しているのか調査しましょう。信用力を付けるためには、競合他社や業界の平均的な資産の相場に合わせていくことが大事です。

資本金の金額で関するよくある質問

・資本金は取り崩すことができる?

会社を設立した後は、資本金を取り崩すことが可能です。ただし、社長個人のお金として取り崩すことはできません。あくまでも、会社の経営のために取り崩すことは可能ということです。念のため、会社設立時の資本金を証明するために、払込証明書を作成しておきましょう。

・資本金はバランスシートのどこに入る?

バランスシートとは、財務諸表のうち貸借対照表のことを言います。貸借対照表では、資産、資本、負債が表示されます。資産が左側の借方、資本と負債は右側の貸方に表示されます。資産と、資本の違いとは何かということですが、資産には資本と負債を使って調達したものが表示されます。したがって、資本と負債を足したものが資産になります。

一方、資本とは自分で調達した資金のことと、利益剰余金を足し合わせたものを言います。資本金について、基本的に変動はありませんが、利益剰余金については毎期間増えていくものです。資本金は、バランスシートの資本の部で計算されることになります。

ところで、金融機関で与信の審査を受けるときに資本の金額がチェックされる件についてご紹介しましたが、金融機関は自己資金についても見ています。会社設立時の資本金とは別に、自己資金を貯めておくというのも重要です。

・資本金に銀行から借り入れた資金を入れていい?

多額の資本金を一気に準備するのが難しいため、銀行から借り入れて資本金に充ててもいいか、という疑問ですが、資本金は銀行から借りた資金を算入することができません。バランスシートでは「負債」の欄は別に設けられています。銀行からの借り入れを資本金として使うことはできないということを覚えておきましょう。

一方で、役員からの借入金を資本金に振り替えることはできます。この方法はデット・エクイティ・スワップと呼ばれるもので、通常、借入金を資本金にはできないところを例外的に振り替えるという処理です。原則として、銀行を始めカードローンなど、借りたお金は資本金にはできないと覚えておいてください。ところで、借りたお金は資本金にできませんが、出資されたお金は資本金にできます。

つまり、株を売って株主から資金調達をすることは可能ということです。出資された資金を資本金に振り替えることはできます。株主から出資を受ける場合は、単に出資してもらうだけではなく、議決権を相手に渡してしまうことになるので、資本金のうちどれくらいを株主から調達するのかというところはよく検討したほうが良いでしょう。もし、資本金のほとんどを株主から出資してもらったお金でまかなおうとすると、自分が社長であったとしても議決権は株主がほとんど持ってしまうことになります。会社のガバナンスとしてよく検討しましょう。

・借入金で会社を設立したい場合はどうしたらいい?

借入金を資本金にすることはできませんので、資本金を1円にして計算します。借入金は借入金と表示した上で、バランスシートに載せます。

・資本金1円だと問題がある?

資本金1円でも、会社を設立することはできます。しかし、実際に会社を運営していくうえで、金融機関からの信用や、取引相手からの信用に影響することは否めません。

まとめ

各法人格の特徴や資本金を決める際の軸となる考え方についてご紹介しました。起業をするなら株式会社を選ぶと設立時間、費用は他の方法に比べかかりますが、社会的なイメージや事業の拡張性などを考えると、株式会社のメリットは大きいと言えます。法人設立を検討している方はぜひこの記事を参考に、ご自身に最も合った法人形態を選び、適切な資本金を準備してみてください。

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