移行法人(一般法人)が提出する書類
行政庁から公益目的支出計画の実施完了の確認を受けていない特例民法法人のことを移行法人と呼びます(一般社団法人および一般財団法人に関する法律、公益社団法人および公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う法律の整備等に関する法律第45条。以下整備法と略す)。特例民法法人とは公益法人制度改革以前の、従来の社団法人・財団法人ことで、これらは平成25年11月末までに現行制度下の移行認定申請を行う必要があり、申請を行わなかった法人は解散したものと見なされています。
公益目的支出計画とは、寄付などで得た従来制度下で貯蓄した財産を公益目的のために支出する計画書を作成することです。移行法人はこの公益目的支出計画実施報告書等を、各事業年度終了後の3ヶ月以内に所管の行政庁に提出しなければなりません。
今回の記事では公益目的支出計画実施報告書等に必要な書類を詳細に見ていきます。
目次
公益目的支出計画実施報告書の提出
移行法人は、行政庁から公益目的支出計画の実施完了の確認を受けるまで、公益目的の実施状況を明らかにする書類を提出する必要があります。これが公益目的支出計画実施報告書と呼ばれています。
公益目的支出計画実施報告書は毎事業年度終了時の3ヶ月以内に提出しなければなりません(整備法127条)。このほか、一般社団法人と一般財団法人は事業年度ごとの計算書類(貸借対照表、損益計算書)や、事業報告書と附属明細書の作成を求められます(一般社団法人および一般財団法人に関する法律第123条。以下一般法)。
公益目的支出計画実施報告書作成後、監事による監査を受け、理事会の承認を得なければなりません。
提出書類の種類
公益目的支出計画実施報告書等として提出する書類は、かがみ文書(書類の表紙)、法人の基本情報を記載した別紙1、公益目的支出計画実施報告書である別紙2、その他の添付書類からなります。以下、それぞれを見ていきます。
かがみ文書
書類の表紙となるかがみ文書では、提出日、提出先の行政庁名、提出法人名、事業年度を記載します。
- かがみ文書の記載事項
提出日 |
和暦で提出年月日を記載する |
提出先行政庁 |
提出先である行政庁名を正しく記載する |
提出法人 |
法人の名称と代表者の氏名を記載し、押印をする |
事業年度 |
公益目的支出計画実施報告書にかかる事業年度を記載する |
(参照:公益法人information)
事業年度の書き方は、たとえば、「一般社団法人および一般財団法人に関する法律および公益社団法人および公益財団法人の認定に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の第127条3項の規定により、別紙のとおり平成30年度(2018年4月1日から2019年3月31日まで)の公益目的支出計画実施報告書を提出する」と記載します。
別紙1(法人の基本情報)
法人の基本情報では、法人の名称ほか主事務所の住所と連絡先(メールアドレス、ホームページアドレス含むが無くても可)、代表者の氏名、事業年度、担当者名、法人事業の概要を記載します。なお、事業の概要は100文字以内で収まるようにまとめる必要があります。
別紙2(公益目的支出計画実施報告書)
公益目的支出計画実施報告書での記載事項は、「公益目的支出計画の概要」「実施事業の状況」「特定寄附の状況」「実施事業会計で共通に区分された収益と費用」となります。
「公益目的支出計画の概要」では公益目的財産額、前事業年度末日の公益目的収支差額、公益目的財産残額、公益目的支出の額が計画と異なる場合の理由、公益目的支出計画の状況(計画上の完了見込み、前事業年度の実績、公益目的支出の額・実施事業収入の額、計画、公益目的収支差額・公益目的財産残額)を記載することになります。
公益目的財産額 |
確定後の公益目的財産額を記載する |
|
前事業年度末日の公益目的収支差額 |
前事業年度の公益目的支出計画実施報告書に記載されている額を記載する。移行認可後、最初の事業年度の場合は0とする |
|
公益目的財産残額 |
「公益目的財産額」-(「前事業年度末日の公益目的収支差額」+「当該事業年度の公益目的支出の額」-「当該事業年度の実施事業収入の額」)で算出される額を記載する |
|
公益目的支出の額が計画と異なる場合の理由 |
公益目的支出計画について、当初計画と実績が異なっている場合に、その状況と理由、完了予定への影響があるかどうかを記載する |
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公益目的支出計画の状況 |
計画上の完了見込み |
最新の公益目的支出計画に記載した完了予定年月日を記載する |
前事業年度の実績 |
前事業年度の公益目的支出計画実施報告書に記載されている額を記載する |
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公益目的支出の額・実施事業収入の額 |
各事業の公益目的支出の額の合計額と実施事業収入の額の合計額を記載する |
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計画 |
最新の公益目的支出計画に記載した計画上の金額を記載する |
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公益目的収支差額・公益目的財産残額 |
「前事業年度末日の公益目的収支差額」+(「公益目的支出の額」-「実施事業収入の額」)で算出される公益目的収支差額と、「公益目的財産残額」=「公益目的財産額 」-「当該事業年度末日の公益目的収支差額」で算出される公益目的財産残額を記載する |
(参照:公益法人information)
「実施事業の状況」では、事業の概要と実施事業資産の状況等を記載します。
事業の概要は、事業番号・事業の内容、公益目的計画の記載事項、事業の実施状況、公益目的支出の額、計画額と実績額の相違となります。実施事業資産の状況等は、番号・資産の名称と算定日の時価、前事業年度末日の帳簿価額、当該事業年度末日の帳簿価額、使用の状況から構成されます。
- 事業の概要
事業の概要 |
事業番号・事業の内容 |
移行認可または変更認可を受けたときの公益目的支出計画と同じ内容を記載する |
公益目的計画の記載事項(事業の概要) |
最新の公益目的支出計画に記載した内容を記載する |
|
事業の実施状況 |
「事業の概要」に記載した情報に対応する形で具体的に記載しする |
|
公益目的支出の額 |
損益計算書に基づいて計算したものを記載する |
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計画額と実績額の相違 |
公益目的財産額の確定の手続または変更認可を受けた公益目的支出計画に記載した公益目的支出の額、または実施事業収入の額が実績額と異なっている場合はその内容と理由を記載する |
・実施事業資産の状況
実施事業資産の状況等 |
番号・資産の名称と算定日の時価 |
公益目的財産額の確定の手続として、移行の登記後に行政庁に提出した様式に記載した各資産については、別表に記載したのと同じ内容を記載する |
前事業年度末日の帳簿価額 |
前事業年度の公益目的支出計画実施報告書に記載されている額を記載する |
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当該事業年度末日の帳簿価額 |
事業年度の貸借対照表に記載されている帳簿価額、または算定の基礎となっている各資産の帳簿価額を記載する |
|
使用の状況 |
事業年度における各資産の使用の状況について記載する |
(参照:公益法人information)
「特定寄附の状況」では、特定寄附の相手方の情報を記載します。すなわち、事業番号・事業の内容、変更認可時の公益目的計画の記載事項、寄附の実施状況、公益目的支出の額、計画額と実績額の相違となります。
事業の概要 |
事業番号・事業の内容 |
移行認可または変更認可を受けたときの公益目的支出計画と同じ内容を記載する |
公益目的計画の記載事項(事業の概要) |
最新の公益目的支出計画に記載した内容を記載する |
|
寄附の実施状況 |
特定寄附の実施状況について、なるべく具体的に記載する |
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公益目的支出の額 |
損益計算書における実施事業等の費用の額を記載する |
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計画額と実績額の相違 |
公益目的財産額の確定の手続または変更認可を受けた公益目的支出計画に記載した公益目的支出の額、または実施事業収入の額が実績額と異なっている場合はその内容と理由を記載する |
その他添付書類
前述の書類ほか、次の添付書類を付けて公益目的支出計画実施報告書の書類が全て揃います。
添付書類とは、①当該事業年度の貸借対照表及び附属明細書、②当該事業年度の損益計算書および附属明細書、③当該事業年度の事業報告および附属明細書、④当該事業年度の監査報告または会計監査報告、⑤当該事業年度の公益目的支出計画実施報告書に関する監査報告書、⑥会員等の位置づけおよび会費に関する細則、⑦事業・組織体系図、⑧その他許認可等を証明する書類になります。
- 添付書類一覧
① |
事業年度の貸借対照表および附属明細書 |
② |
事業年度の損益計算書および附属明細書 |
③ |
事業年度の事業報告および附属明細書 |
④ |
事業年度の監査報告または会計監査報告 |
⑤ |
事業年度の公益目的支出計画実施報告書に関する監査報告書 |
⑥ |
会員等の位置づけおよび会費に関する細則 |
⑦ |
事業・組織体系図 |
⑧ |
その他許認可等を証明する書類 |
(参照:公益法人information)
公益目的支出計画実施報告書の監査と報告義務
なお、法人は公益目的支出計画実施報告書を作成後、監事による監査を受ける必要があります。さらに理事会の承認を受け、社員総会(または評議員会)に報告しなければなりません。
また、移行法人は、公益目的支出計画実施報告書を定時社員総会(または定時評議員会開催の2週間前の日から5年間、主たる事務所に備え置く必要があります(※理事会設置一般社団法人の場合。理事会非設置一般社団法人の場合は1週間となる)。さらに閲覧の請求があったときは、正当な理由なしに拒むことができません(整備法127条)。