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一般社団法人の維持費はどれくらい?

法人・団体設立の選択肢として、「株式会社」「合同会社」「NPO法人」などのほか、最近は「一般社団法人」という組織が選択肢に入ることもあります。株式会社や合同会社ほど営利目的ではないが、NPO法人のように非営利・活動の幅が制限されるのは避けたいという場合、一般社団法人が候補として挙がります。

そこで当記事では、一般社団法人の概要を説明した上で、維持費やNPO法人との違い、その他疑問について詳しく解説していくので、ご参考ください。

1 そもそも一般社団法人とは?

社団法人は、組織を構成する「社員(一般の会社でいう株主に近い)」が集まり構成され、法人格が付与された組織です。一般社団法人という言葉は、最近でこそよく聞くようになりましたが、具体的に「一般社団法人とは?」と聞かれても、答えにくい部分があると思います。

まずは、一般社団法人の特徴から確認していきましょう。

1-1 一般社団法人の特徴

一般社団法人の特徴

一般社団法人の特徴は、以下の通りです。

特徴 詳細
公益性は問われない 従来の社団法人の場合、公益性が強く問われていたが、一般社団法人の場合、公益性は問われず、収益事業などを行うことも問題ない。ただし、株式会社・合同会社等と異なり、設立者に剰余金・解散後の残余財産の分配を受ける権利はなく、上記の旨を定める定款は無効になる
行政庁の許可は不要 以前の社団法人は、管轄官庁の許可が必要であり、厳しい管理もあったため、設立が非常に厳しかった。一般社団法人の場合、行政庁の許可は不要で、公証人役場・法務局で手続を行えば設立が可能。また、管轄官庁が存在しないため、行政からの監督や指導・取消しは基本的にはない。ただし、問題行為がある場合は、問題行為を取り締まる公的機関より各種指導・ペナルティを課される可能性はある。
一般社団法人と並び公益性の高い事業の候補に挙がるNPO法人の場合は、毎事業年度終了後3ヶ月以内に、所轄庁へ以下に掲げる事業報告書等の書類を提出する必要があり、怠った場合は改善命令・認証取消処分などを受ける可能性もある
信頼性が比較的高い 株式会社などの営利組織と比べ、一般社団法人は、社団法人時代の公益的な印象があり、信頼性が比較的高い。ただし、近年、一般社団法人を名乗る組織でも、好ましくない投資勧誘やセミナーなどを行う団体なども出てきている話も散見される。「一般社団法人だから無条件に信用される」ということは少なくなった
2人以上の社員(組織構成員)が必要で、1人では設立できない 株式会社・合同会社の場合最低1人で設立できるが、一般社団法人の場合は2人以上で設立する事が要される。活動資金については、社員からだけでなく、外部から募ることもできる
非営利型一般社団法人が存在する 法人税法施行令3条に規定する要件を満たす一般社団法人は、「非営利型一般社団法人」とされ、非営利事業の部分については非課税になる。営利事業については従来通り課税
公益社団法人になることも可能 公益目的事業を行い、申請を行い、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けることで、公益社団法人になることも可能。ただし、後述するが厳しい認定基準が存在し、欠格事由もある
検定・資格試験・協会などの事業に向く 検定・資格試験・協会制度などを作る上で、一般社団法人が設立されるケースもある

上記の通り、一般社団法人は設立が過去の社団法人に比べ容易です。NPO法人ほど公益性は要しないが、一定の信頼性が必要な事業に対して向くと言えます。

1-2 一般社団法人と公益社団法人の違い

一般社団法人と公益社団法人の違い

それでは、一般社団法人と公益社団法人の違いについて表にまとめると次のようになります。

違い 一般社団法人 公益社団法人
成立・公益社団法人認定の要件 設立登記を司法書士等専門家に依頼すれば、誰でも設立できる 公益法人認定法第 5 条の認定基準に適合し、公益法人認定法第 6 条の欠格要件に該当しないこと。行政庁の認定を受ける必要があり、全体として高い公益性が求められる。
実施事業 特に制限はない 制限はなく、公益目的事業を50%以上の比率で実施していれば、非公益事業の実施も可
公益法人の監督 基本的には、監督なし 行政庁による報告徴収や立入検査等で監督、運営状況によっては、勧告・命令、認定の取消しもある
公益法人として遵守すべき事項 一般社団法のみ 一般社団法に加え、下記の事項がある。
・公益目的事業比率が50%以上
・遊休財産規制
・一定の財産の公益目的事業への使用・処分
・理事等の報酬の支給基準の公表
・財産目録等の各事務所への備置き・閲覧・行政庁への提出等
税制 非営利型一般社団法人の場合は収益事業のみ課税。一般社団法人は通常通り課税。 すべての公益社団法人が公益目的事業は法人税法上の収益事業から除外され、非課税となる

以上の通り、一般社団法人は、公益社団法人と比べ、税制優遇のメリットが少ない分、厳しい規制が少ないという特徴があります。公益目的の事業も考えているが、過度な規制を受けず、柔軟に活動したいというケースにおいて、一般社団法人は向いていると言えます。

1-3 一般社団法人設立の手続

一般社団法人設立の手続

一般社団法人を設立する場合は、株式会社などに近い形で設立手続を行います。

手続 詳細
基本事項の決定 前述の通り、2名以上の社員が必要で、併せて理事を1人以上選任する。加えて、通常の法人と同じように法人名(一般社団法人○○か○○一般社団法人)、事業目的・事業年度・所在地等基本事項を決定する。
機関設計の決定 社員総会と理事は必置で、任意で監事・会計監査人・理事会を置くことが可能。理事会を設置する場合は理事が3名以上必要
決算等の広告方法の決定 株式会社などの営利法人と同じく、決算や重要事項の決定の際、公告する必要がある。
官報掲載、新聞紙掲載、インターネットでの電子公告の他、一般社団法人の場合は主たる事務所の見やすい場所に掲示する方法も選択できる
法人印の作成 法人名が決定し次第、法人印を発注
社員・理事・監事等役員の印鑑証明取得 市区町村役場(マイナンバーカードがあり、市区町村が対応している場合はコンビニエンスストアでも可能)で印鑑証明を取得。公証人役場用と法務局用で2部あるとベターだが、1部でも可。有効期限は3ヶ月以内であることに注意
定款作成 組織の規約をまとめた「定款」を作成。定款には4万円の収入印紙を貼付する必要があるが、行政書士などに電子定款認証を行ってもらうことで、印紙の貼付が不要になる。なお、Wordなどの電子ファイルにしただけでは、電子定款として認められない。税務調査で指摘されると、過怠税として4万円の3倍、12万円を支払うことになるおそれも。
加えて、通常の株式会社・合同会社などと異なり、社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える旨など、一部記載しても無効になる事項があることに加え、一般社団法人特有の記載事項があるため、専門家に定款作成を依頼するのが確実
公証人役場での定款認証 公証人役場に連絡、定款の内容に関して、公証人役場の担当者に原案をFAXかメールで送付。確認を受け、指摘通りに補正後、予約して公証人役場に持参。定款認証を受ける。定款3部、社員・理事などの設立当事者全員の印鑑証明書が各自1通ずつ必要。定款認証手数料その他で5万2千円用意。また、当日公証人役場に行けない人がいる場合は、委任状を用意する。また、電子定款認証の場合は空のCD-Rなど、別途申請者側が用意する必要があるものもあるため、事前に確認すること
登記書類作成 一般社団法人の設立に関しては、理事会設置・理事会非設置で手順が異なる。どちらのケースでも、登録免許税は6万円となっており、法務局で申請する場合は窓口で収入印紙を購入し支払う。
理事会および監事を設置しない一般社団法人の設立
の場合に必要な書類は下記の通り。
・一般社団法人設立登記申請書
・定款
・設立時社員の決議書
・設立時代表理事の互選に関する書面
・設立時代表理事・理事全員の就任承諾書を(各1通)
・設立時理事の印鑑証明書(各1通)
・公証人役場に行けず、代理人に依頼する場合は、委任状(各1通)
理事会および監事を設置する一般社団法人の設立
・一般社団法人設立登記申請書
・定款
・設立時社員の決議書
・設立時理事および設立時監事の就任承諾書(各一通)
・設立時理事および設立時監事の本人確認証明書(各一通、住民票記載事項証明書や運転免許証の裏表のコピー等)
・設立時代表理事の選定に関する書面
・設立時代表理事の就任承諾書(各1通)
・設立時代表理事の印鑑証明書
・委任状(各1通)
なお、オンラインで申請することも可能であるが、システムが複雑である。登記申請手続は、司法書士に委任することをお勧め
登記完了 オンラインの場合は登記完了時に通知があるが、書面申請の場合は、法務局に電話で確認する。
概ね提出後数日~2週間程度。
印鑑カードを取りに行き、全部事項証明書を取得(極力2通以上)取得しておく
登記完了後の手続(税務関係) 通常の株式会社などと同様、法人設立届出書を税務署に提出する(税理士に依頼可能)
また、以下の書類も提出。
・収益事業開始届出書(設立後2か月以内)
・棚卸資産の評価方法の届出書(年度末まで)
・減価償却資産の償却方法の届出書(年度末まで)
都道府県税事務所・市町村役場(東京23区の場合は区)に法人設立届出書を提出
・雇用をする場合は給与支払事務所等の開設届出書(設立後1か月以内)
登記完了後の手続(労務関係) 最寄りの公共職業安定所に下記の書類を提出。
(以下全て社会保険労務士に依頼可能)
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
労働基準監督署に下記の書類を必要に応じ提出
・保険関係成立届
・概算保険料申告書
・適用事業報告書
年金事務所に下記の書類を必要に応じて提出
・新規適用届
・被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者届(役員・従業員に扶養される配偶者、子などがいる場合)

以上で、基本的な一般社団法人の設立関係書類提出は完了となりますが、必要性・規模に応じて、他の書類を求められる可能性があります。一般社団法人の税務は極めて複雑ですので、税務に関しては税理士、人を雇用する場合は社会保険労務士に依頼し、できれば顧問になってもらうことをお勧めします。

特に、補助金・助成金などの情報は、税理士・社会保険労務士で、普段からコミュニケーションが取れている先でないと、情報をもらいにくいと言えます。助成金に関しては、人を雇うことに対して大きな給付がある一方、不正があると社会保険労務士も連帯して責任を負うことになるため、助成金申請、特にスポットでの助成金申請を敬遠する社会保険労務士も少なくありません。

助成金を単発で申請することは、社会保険労務士にとってある程度リスクがあります。逆に普段から顧問先として関与している場合は「御社の場合、このような状況で、環境整備もしてありますから、この助成金が対象になりますよね」と提案してくれるケースもあります。普段から関与して、会社の内情を知っていれば、社会保険労務士側としても受けやすくなるためです。そのため、税務・労務のために税理士・社会保険労務士と顧問契約をしておき、最初から税務・労務の部分を一任するのがいいでしょう。

1-4 一般社団法人も株式会社等と同様、収益を出すことが重要

一般社団法人は、名前の印象から、国や地方自治体などから支援があるかのように思う人もおられるかもしれませんが、実際の所は国や地方自治体からの支援は基本的にありません。ただし、民間企業と同様、補助金・助成金などの申請は可能です。持続化給付金や家賃支援給付金なども、一般社団法人は対象となりました。

しかし、平常は事業として成立するための「収益事業」を行う必要があります。収益事業に関しては、公序良俗に反しない限り、特に事業の内容制限が行われる事はありません。株式会社など営利法人と同様、ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提、企業が経営破綻・消滅せず継続して事業を行うこと)が重要ですので、組織が自立できるだけの収益事業を行っていく必要があります。

社団法人というと、「公の利益」という側面に視点が集まりがちですが、いくら社会のためになる活動を行っていても、組織として安定・継続した事業やサービス提供を行えなければ、意味がありません。そのため、一般社団法人を検討する段階でも、「収益性・継続性」のある事業を持てるかという観点は重視する必要があります。

1-5 一般社団法人を資産管理法人として活用するケースも

一般社団法人を資産管理法人として活用するケースも

近年、一般社団法人を資産家のプライベートカンパニーとして活用するケースも増え始めています。一般社団法人を活用するスキームについては、実務に通じた税理士に相談いただくことが重要ですので、当記事では詳細を省きますが、一般社団法人の活用で、下記のようなメリットが期待できます。

・賃貸物件などを複数保有している場合は、一族で一般社団法人を設立し、賃貸物件を法人に売却、役員が賃貸収入を受け取る
・所有者が一般社団法人となり、一般社団法人には持株の概念がないため、相続税の課税対象から外れ、相続税の課税対象外となる(不動産の移転方法等、ぜひ税理士と綿密に協議した上で行うことをお勧めします。また、今後の制度変更で変わる可能性もあります)

ただし、この手法に関して、一般社団法人の制度趣旨と離れる部分があるということは否定できず、今後対策が行われる可能性もありますので、重ね重ね、税理士と協議し、「法律に乗っ取った、正当な節税」を意識すること、制度変更がされた場合の出口戦略なども含めて考慮しておく必要があります。

2 一般社団法人にかかる維持費は?

一般社団法人にかかる維持費に関しては、結論から言うと通常の会社とさほど変わりません。年間のランニングコストなど、想定される一般的なパターンを見ていきます。

2-1 一般社団法人設立時の費用

一般社団法人の設立に関しては、前の部分でも述べた事項も含みますが、概ね専門家報酬と実費を念頭に置く必要があります。

手続 費用
公証人役場での定款認証費用 約52,000円
法務局での一般社団法人登記費用 60,000円
専門家報酬(司法書士の登記・行政書士の定款作成・電子署名・認証代行など) 70,000円~150,000円(ただし、専門家に依頼することで、定款を電子化してくれるため、実質は上記の金額の4万円引きとなる)
印鑑作成費用 約20,000円
その他雑費 約5,000円前後
合計(概算) 約207,000円~約287,000円

各種諸費用のブレもあるため、概ね設立にかかる費用としては、約20万円~約30万円を考えておくと良いでしょう。

2-2 一般社団法人設立後の年間運用コスト

一般社団法人設立後の年間運用コスト

会社設立後にかかる費用として、税理士報酬・社会保険労務士報酬(人を雇用する場合)や、法人市民税(法人税・均等割)の費用がかかります。

人を雇用し、社会保険労務士を顧問にする場合は、報酬の幅が大きく異なりますので、税理士報酬や税金など、最低限の費用を支払うケースを想定します。

手続 費用
税理士報酬 年間40万円程度(一般社団法人の場合、安価なケースから決算が複雑なケースまで幅が広く、年間30万~70万程度かかる場合も)
法人市民税 東京都の場合、赤字でも均等割で最低7万円、黒字の場合は利益に応じて更に課税。自治体により異なる

以上のように、利益が出ない、活動の諸費用や役員報酬を入れないという前提でも、概ね年間40万円~80万円近く費用がかかることは念頭に置く必要があります。

必要費用や税金に加え、実際に一般社団法人として運営していくことになると、役員報酬、活動費用、事務所の賃貸費用などで、数百万円単位の金額を見込む必要があります。仮に、役員2名の報酬が月20万円、活動費用として年間200万円、事務所は諸経費込みで月10万円のオフィスを借りたとします。(報酬にかかる雑費や社会保険労務士の報酬などは計算に入れていません)

名目 費用
役員報酬(月20万円×12ヶ月) 2名 年間480万円
活動費用 年間200万円
事務所代 年間120万円
税理士費用 年間40万円
法人市民税など(若干利益が出て、10万円と想定) 約10万
合計 年間850万円

このように、少なめの役員報酬で活動費・事務所を抑える計算でも、年間で850万円近くの費用がかかる計算となります。会社設立費用も含めると約900万円近く見ておく必要があります。よく、一般社団法人の運営費用で「税金がどれくらいかかる」、というケースは計算されています。それに加え、一般社団法人として組織を運用していく以上、税金以外の費用も必然的にかかることは踏まえておく必要があります。

実際の一般社団法人の運用の場では、他の企業・社団法人と事務所を同一にする、役員報酬を抑える、税理士費用を初期は抑えてもらうなどで、上記の想定よりも少なくなるケースは想定できます。それでも、基本的に年間数百万円のランニングコストがかかり、株式会社など一般の会社を設立する場合と、費用はさして変わらないということを理解しておく必要があります。

3 一般社団法人に関する知識

3-1 公的分野で活躍する一般社団法人

一般社団法人が設立、公益法人などから移転されるケースは様々です。一見公的なイメージの強い組織などでも、事業の特性や組織運営の観点から、公益社団法人ではなく、一般社団法人という選択をしている一般社団法人が複数あります。具体例をピックアップします。

組織名 業務内容
一般社団法人 日本自動車連盟(JAF) 自動車事故に対するロードサービスや、会員への福利厚生を提供
一般社団法人 全国有線音楽放送協会 有線放送の運営団体で組織され、日本有線大賞の運営を行う
一般社団法人日本クラウドソーシング検定協会 クラウドソーシング事業者を主体に組織され、WEBライティング技能検定などの検定試験を行う
一般社団法人 日本考古学協会 日本学術会議の指定する団体で、考古学・埋蔵文化財発掘などの学術調査を行う
一般社団法人日本女性薬剤師会 公益法人である日本薬剤師会とは関連のない別組織であるが、女性薬剤師の職能向上に関する事業を行う
一般社団法人中古二輪自動車流通協会 中古バイクを取り扱う事業者間で2013年に設立され、中古バイクに関する自主規制や各種啓発活動を行う
一般社団法人 日本暗号資産取引業協会 暗号資産(仮想通貨)を扱う国内の事業者による自主規制団体。
一般社団法人 全国銀行協会 全国の金融機関業務に関する相談を受け付けるとともに、振り込め詐欺口座の停止など金融犯罪対策、でんさいネットによる電子債権記録、各種学校への出張講座など金融に関する各種啓発活動、金融機関に対する延滞や破産などのデータベース構築など、非常に幅広い分野で活動を行う
一般社団法人関西経済同友会 経済同友会は、公益社団法人の形態を取る東京の経済同友会の他、秋田・山形・神奈川・大阪・金沢・京都・神戸・岡山など、一般社団法人の形態を取る組織も複数存在する
一般社団法人 大阪府医師会 医師会も、都道府県・市町村単位では一般社団法人の形態を取る組織が多い。本部である日本医師会は公益社団法人だが、一般社団法人品川区医師会など、市区町村単位の医師会、一般社団法人大阪府医師会のように、都道府県単位の医師会で、公益社団法人ではなく、一般社団法人の形態を取る組織も多い
一般社団法人 兵庫県薬剤師会 薬剤師会については、東京都は公益社団法人の形態を取っているが、兵庫県・愛知県・島根県など、一般社団法人の形態の薬剤師会も多い
一般社団法人 全国保育士養成協議会 保育士試験を行う団体。各種資格試験を行う団体には、公益社団法人だけでなく、一般社団法人の組織も多い
一般社団法人日本損害保険代理業協会 全国の日本損害保険協会代理業協会は、本部組織も含め大半が一般社団法人として運営されている
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 メンタルヘルスを中心としたカウンセリングに関する資格試験を行う協会
一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関 東日本大震災や水害、雪害の他にも、コロナなどの疾病で債務の返済が難しくなった際に、債務者が一定の資金や資産・華美でない自宅などを残し、返済額を削減したり、債務を免除するガイドラインを運営。更に、債務整理時に、信用情報機関に債務整理の情報を掲載しないなどのメリットも

このように、公的側面を持つ組織でも、公益社団法人ではなく一般社団法人の形態を取る組織は非常に多いです。

なぜ、公的な側面の強い組織であっても、公益社団法人認定を取得するケースと一般社団法人の形態を取るケースとが分かれるのかは、組織により事情が異なると考えられます。考えられることとして、公益社団法人の認定は非常に手間がかかるという点も大きいと言えます。

3-2 一般社団法人とNPO法人の違い

一般社団法人とNPO法人の違い

一般社団法人とよく対比され、公的な活動・公益にかかる活動を行う際に検討されるのが、NPO法人です。一般社団法人とNPO法人の特徴を比較します。

一般社団法人とNPO法人の違い

特徴 一般社団法人 NPO法人
設立の手続 2名以上が集まり、手順に沿って行えば、多くのケースで誰でも設立できる 10人以上の人数が必要で、管轄官庁の認証が必要
設立期間 株式会社などと同様、手続全体では2~3週間前後 数ヶ月前後がかかる
設立時の手数料 実費として公証人役場での定款認証手数料が5万2千円・法務局への登録免許税が6万円かかるほか、専門家報酬が10~20万円前後かかる 実費に関してはかからないが、登録手続が複雑。専門家報酬が10万円~20万円前後かかる
管轄官庁 特になし 内閣総理大臣(内閣府)もしくは都道府県
信頼性 詳しい人からみるとNPO法人より劣るが、一般の人にとってはそこまで違いがわからない 認証の厳しさゆえに、信頼性は高い
税金 基本的には事業全体に課税されるが、場合によっては収益事業と非収益事業を区分、収益事業への課税になるケースもある 収益事業に課税され、非収益事業は対象外となる
税金の税率 株式会社など一般の法人と同様 収益事業に関しては、一般の法人と同様
管轄官庁への報告義務 なし 毎年管轄官庁への報告義務があり、報告を怠ると指導・立入検査・認証取り消しの可能性も
適用業種・分野や条件 一般社団法人の場合は業種制限がない 前提として、法で定める12分野のいずれかの活動に該当する活動であることが必要。
・保健、医療または福祉の増進を図る活動
・社会教育の推進を図る活動
・まちづくりの推進を図る活動
・文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動
・環境保全を図る活動
・災害救援活動
・地域安全活動
・人権の擁護または平和の推進を図る活動
・国際協力の活動
・男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
・子どもの健全育成を図る活動
以上の活動を行う団体の運営または活動に関する連絡、助言または援助の活動
上記の活動に該当する上で、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする活動であること
各種助成金・補助金・給付金 原則は一般企業と同様 原則一般企業と同様で、NPO法人に向けた特別な助成金があるケースも
営利性 営利活動も問題なく認められる 営利を目的としないことが原則だが、「利益をあげてはいけない」というわけではない。また、利益をあげても法人の構成員(役員、会員など)に分配をしないというのが原則だが、職員に給与を支払う分には問題ない
課題 一般社団法人が、本来の制度趣旨とは異なる方式で使われるケースもある NPO法人の制度開始後、時間が経過し、活動ができなくなったNPO、休眠NPOが増えたり、NPOが本来の目的と異なる趣旨で運用されているケースもある。また、毎年の報告義務が煩雑で、法人にとって負担感が大きい

一般の人の視点から見ると、一般社団法人・公益社団法人・NPO法人それぞれが「通常の会社組織よりは公的な活動をしているのだろうな」というイメージを持たれますが、より公益的な活動の側面が強いのは、NPO法人と言えます。

3-3 一般社団法人に関する疑問あれこれ

一般社団法人は、通常の会社などと異なる点が複数あります。一般社団法人に関する疑問に関してまとめます。

Q:一般社団法人の社員には法人もなれる?

A:一般社団法人の社員には、法人もなることが可能です。なお、支店・営業所など「法人の一部組織」が一般社団法人の社員になることはできません。

Q:一般社団法人設立時には、2人以上の社員が必要になるが、もし途中で会員が抜け、会員が1人だけになったらどうなる?

A:社員が1人だけになった場合でも、一般社団法人は存続し、社員を追加し2人以上にしなければならないという規定はありません。ただし、社員が0人になった場合は、そもそも事業の運営ができませんので、新しい社員が加わらない限りは、一般社団法人は解散することとなります。

Q:一般社団法人の場合、通常の営利法人と異なり、定款(法人の決まり事)に書いても無効となる事項があるそうだが、具体的にはどういう内容?

A:①一般社団法人の社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定め、②法の規定により社員総会の決議を必要とする事項について、理事、理事会その他の社員総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定め、③社員総会において決議をする事項の全部につき社員が議決権を行使することができない旨の定款の定め

一般社団法人で、定款によって特定の社員に余ったお金や解散後の残った財産をさしあげますよ、と定めておくことは認められません。

また、一般社団法人の組織の外部からのコントロールを防ぐために、社員総会で決める重要な事項を、理事や理事会など、社員全体・社員全体の会ではない集まりでは決めてはいけませんということも定めています。そして、社員は1社員ごとに1議決権があるのが原則ですので、社員総会の決議事項全体に対し、「社員が議決権を行使できない」と決めておくのは、社員の存在の軽視でありますので、認められません。

このように、定款で重要なことを上の方だけで決められるようにしておくのはいけない、というのが、「定款に記載(記録)しても効力を有しない」とされる条項です。

Q:そもそも社員総会というのは、どういうことを決める総会?

A:各種法律に規定する事項は当然として、組織改編・解散・合併なども含めた、一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議をすることができる会です。

通常の法人でいう株主総会に近い性質をもつもので、一般社団法人にとって社員総会は重要な位置づけを持ちます。そのために、先ほど述べた社員総会に関する制限も存在します。

Q:一般社団法人の他にも、一般財団法人というのをよく聞くけど、社団法人と財団法人の違いは?

A:一般社団法人は、社員(人・法人)の集まりによる法人ですが、一般財団法人は「財産の集まりによる法人」と言えます。一般財団法人の設立には、設立時に300万円以上の財産の拠出が必要となります。個人・法人とも設立者になることが可能です。

Q:一般社団法人の名称に決まりはあるの?

A:一般社団法人は、組織名の最初か最後に必ず「一般社団法人○○」「○○一般社団法人」という、一般社団法人という言葉を入れる必要があります。当然、一般社団法人なのに、公益と一般の区別が付かない「社団法人○○」とすることは認められず、一般社団法人という名称を省略することもできません。

また、「一般社団法人または一般財団法人でない者は、その名称または商号中に、一般社団法人または一般財団法人であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない」という規定があります。加えて、「何人も、不正の目的をもって、他の一般社団法人または一般財団法人であると誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはならない」ともされており、不正利用に対しては罰則もあります。

Q:町内会や特定レクリエーションの同好会・サークルなどでも一般社団法人は設立できる?

A:可能です。団体の構成員に共通する利益を図る事業を行うことは問題ありません。

Q:一般社団法人が、存続できなくなる(解散する)のはどのような場合?

A:以下のどれかに該当した場合です。
1 定款で定めた存続期間の満了
2 定款で定めた解散の事由の発生
3 社員総会の決議
4 社員が欠け、0人の状態になり、社員の補充ができない場合
5 当該一般社団法人が消滅する合併(吸収合併)をしたとき
6 破産手続開始の決定があったとき(一般社団法人であっても、当然通常の会社と同じく、債務を返済できずに破産手続を行う、第三者から破産申し立てをされ、受理された場合などは、破産します)
7 解散命令または解散の訴えによる解散を命ずる裁判があったとき

加えて、現在一部で、休眠法人の問題(開設後そのままになっている、休眠法人が不正な目的で売買されている)というケースもあります。そのため、長期間変更の登記がされていない、休眠一般社団法人(具体的には、一般社団法人の各種登記が最後にあった日から5年を経過したもの)は、法人制度の濫用・悪用の弊害を防ぐため、一定の手続の下で解散したとみなされ、その旨の登記がされることとされています。

実際は、5年を経過しただけで強制的に解散扱いとなるわけではなく、法務局より活動実態の確認があり、確認に対し適切な応答をしないなどの場合に限って、法務局の職権で解散登記が行われる事はありますが、5年間登記手続をしていないからといって、強制的に解散ということはないので、その点は念頭に置く必要があります。

Q:一般社団法人に関しては、「機関設計」というのがあるそうだが、具体的には?

A:通常の会社にせよ、社団法人・財団法人にせよ、法人をどのような形で運営するのかを決める機関を、どのような形態で決めますか、というのが法人の機関設計です。

一般社団法人の場合は、5つの形式があります。
1 社員総会+理事
2 社員総会+理事+監事
3 社員総会+理事+監事+会計監査人
4 社員総会+理事+理事会+監事
5 社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

以上のような5つのパターンの機関設計が選択できますが、小規模な一般社団法人の場合は、1の社員総会+理事という形式が一般的です。

組織が大きくなればなるほど、監事・会計監査人の選任など、監査を行う体制を作り、組織が特定の人物・組織により支配されることのないよう、機関設計を厳密に行う必要性が生じます。

Q:一般社団法人の理事会で決定できることには、どのような事項がある?

A:一般社団法人の理事会はすべての理事で行われる事が前提で、法人の業務執行の決定、理事の職務の執行の監督、代表理事の選定および解職等、組織に関して重要な事項を決定します。

Q:一般社団法人の理事・監事の任期は?

A:株式会社など通常の営利法人は、理事などの任期を2年から10年まで、定款で自由に設定できますが、一般社団法人の理事・監事の任期は下記の通りです。

理事:選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会(定時評議員会)の終結の時まで(定款または社員総会の決議によって、その任期を短縮することが可能)

監事:選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会(定時評議員会)の終結の時まで(定款によって、その任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会(定時評議員会)の終結の時までとすることを限度として短縮することが可能)

このように、任期は理事が2年、監事が4年で、任期を定款で短くすることは可能でも、長くすることはできないため、任期満了後の理事・監事の重任届を忘れずに行う必要があります。

Q:一般社団法人によっては「基金」が存在するところもあるが、「基金」はどういう位置づけ?

A:基金とは、一般社団法人に対して、個人や法人から「運営経費にしてください」と拠出された財産です。社団法人と拠出した人の間の合意が存在する場合は、返還義務(金銭以外の物・土地などの財産については、拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)を負うものとされます。

基金は、会計上は外部負債に該当します。基金の拠出が大きいから、一般社団法人での社員の地位や、議決権の多さとはとは結び付きません。一般社団法人は、社員が基金の拠出者となることも、ならないことも、どちらも可能で、基金の拠出の有無で社員の地位の位置づけが変わることはありません。

基金制度は、剰余金の分配を目的としないという一般社団法人の基本的性格を維持しつつ、その活動の原資となる資金を調達し、その財産的基礎の維持を図るための制度です。一般社団法人および一般財団法人に関する法律では、基金制度の採用は義務付けられておらず、基金制度を採用するかどうかは、一般社団法人の定款自治によることとなります。

また、基金として集めた金銭等の使途に法令上の制限はなく、一般社団法人の活動の原資として自由に活用することができます(なお、一般財団法人には基金の制度は設けられていません)。

3-4 なぜ一般社団法人という組織ができたのか

なぜ一般社団法人という組織ができたのか

ここまで一般社団法人に関して説明をしてきましたが、そもそもなぜ「一般社団法人」は設立されたのでしょうか。元々は、一般社団法人・公益社団法人などの区別はなく、社団法人は全て「社団法人」というくくりで展開されていました。

しかし、社団法人は設立のための要件が厳しく、「社団法人は登記だけで一般社団法人として設立できる」「公益目的を持つ社団法人については、委員会等で認定し、公益社団法人とする」という方向で、公益法人制度改革が進められました。

つまり、これまで社団法人を設立しようとすると、「法人を設立する時点で管轄官庁の許可が必要」かつ「管轄官庁が、社団法人に公益性があるかを判断する必要」がありました。

公益法人制度改革では「社団法人に関し、必ずどこかの官庁が管轄するのは、基本的にはやめにしよう」「公益にかかる法人だけ、公益社団法人として認定するか」を有識者会議で決めよう」という方向付けがされました。

その結果、「一般社団法人は設立が登記だけで簡単」「公益社団法人は税制優遇があるが、公益性があるかについてはっきりした基準を作り、基準に当てはまる団体を公益社団法人とする」という形で、棲み分けがされるようになりました。

そのため、一般社団法人に関しては、官の側が一般社団法人の自主性・自立性を信頼しているという側面があり、一般社団法人自身がそのことを理解して運営していく必要があります。

なお、公益社団法人として認定を受ける基準は、下記の通り明確化されています。
・公益目的事業を行うことが主たる目的か(実態が即しているか)
・公益目的事業にかかる収入が、実施に要する適正費用を超えることはないか
・公益目的事業費率が100分の50、つまり過半数を超える見込みか(この条件があるため、公益要素がある団体でも、あえて一般社団法人を選択しているケースも少なくないと推察します)
・有給財産額が一定額を超えない見込みか
・同一親族等が理事または監事の3分の1以下か(理事による私物化の防止)
・認定取消し等の場合、公益目的で取得した財産の残額相当を類似の事業を目的とする他の公益法人に贈与する旨を定款で定めているか
・その他各種事項

加えて、欠格事由として、下記のケースでは認定を受けられません。
・暴力団員等反社会的勢力が支配(実質支配)している法人
・滞納処分終了後3年を経過しない法人
・認定取消し後5年を経過しない法人等
・その他各種欠格事項

公益社団法人は、認定の厳しさの反面、一般社団法人よも高い信頼を得られる一方、各種守るべき決まり事や報告事項が多いため、社団法人の活動内容によっては、あえて公益社団法人認定を受けなくても、一般社団法人で問題ないということで、著名な団体でも一般社団法人を選ぶケースが少なくありません。

4 まとめ

この記事では、一般社団法人の運営コストに加え、一般社団法人とはそもそも何かという点、一般社団法人と公益社団法人の比較、一般社団法人の成り立ちや公益法人制度改革、社団法人と混同されがちな財団法人との違いなど、様々な周辺事項を解説してきました。

一般社団法人は、著名団体が多い関係で、通常の営利法人より信頼性・公益性が高そうと思われやすい反面、一般社団法人にかかる様々な課題も顕在化しており、今後一般社団法人・特定社団法人のあり方が見直される可能性も皆無ではありません。

一般社団法人は、「民間を信頼して運営を任せよう」という国の意思が強くあるため、一般社団法人で問題が発生すると、今後一般社団法人に対する規制強化に対する動きが出る可能性もあります。

また、経済面では、認定を受けない限り民間企業と同等の税金・ランニングコストがかかります。一般社団法人だからといって低コストで運営できる、税制が営利事業に対しても優遇されるということはないので、その点も念頭に置くことが大切です。

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