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一般社団法人が決算公告を行う方法と手順は?

一般社団法人が株式会社等のように決算公告の義務があることをご存じでしょうか。決算公告と聞くと、何やら難しい行為や手続などと考えてしまいそうですが、決算書を規定の方法でおおやけに開示すればいいので、実際はそれほど難しくありません。

ただし、決算公告は決して困難な手続等を必要とするものではないですが、一定の手間やコストがかかるほか法律に従った方法で履行しなければなりません。

そこで今回の記事では、一般社団法人の設立を目指す方などが気になる、この決算公告の内容を説明し実際に行う方法、手順や注意点などを説明します。一般社団法人の決算公告の内容、定款との関係および手続、決算公告の具体的な方法、決算公告をするまでの流れや注意点などを把握したい方はぜひ参考にしてください。

1 一般社団法人の決算公告とは

一般社団法人の決算公告とは

まず、一般社団法人の決算公告の内容や特徴について確認していきましょう。

1-1 公告および決算公告の概要

公告とは何か、また、決算公告はどんなことなのか、について説明します。

①公告とは

公告とは、法律に基づき特定の事項について広く社会・一般に知らせることです。そのため公告の種類や内容(決算、解散、合併等)は関係する法律によって異なり、その目的、効果、方法なども変わってきます。

公告の目的は、幅広い利害関係者や不特定の者に対して権利行使等の機会を付与するために行われるケースのほか、特定の事項について広く社会に公示するために行われるケースが多いです。

公告の法的効果については、各公告の元となっている法令により異なります。たとえば、公告が実施された後に一定期間内の特定手続が実施されない場合に権利を喪失するなどの不利益が確定する効果などが多いです。また、不知による援用(知らないことを理由に相手の主張を拒否すること)が行えないという効果もあります。

なお、公告の方法としては、官報、新聞への掲載、裁判所等の掲示板への掲示などがあり、法律や公告の種類などによって多少異なってきます。

②決算公告とは

決算公告とは、株式会社や一般社団法人などの組織がその各事業年度の財務状態や経営成績をまとめた計算書類である決算書を「公告」として開示することです。

この決算公告は、株主や債権者等の利害関係者に対して会社や一般社団法人などがその決算書を公告することを通じて、その内容を周知させ、不測の事態の回避や取引の安全を確保することを目的に義務付けられています。そのため、決算公告を実施しない場合は違法です。

なお、株式会社の場合は「会社法第440条」で、一般社団法人は「一般社団法人および一般財団法人に関する法律第128条(略:「一般法人法」)」によりその決算公告が規定されています。従って、一般社団法人の決算公告の内容については後者の法律に従うことになるわけです。

いつから公告(開示)するのか、決算書の対象(貸借対照表や損益計算書等)が何になるのか、どのような方法で開示するのか、などについては株式会社と一般社団法人とでは多少異なる部分もあるため、同じものとして扱わないように注意しなければなりません。

1-2 一般社団法人の決算公告の主な特徴

一般社団法人の決算公告を規定する法律は、一般法人法第128条の「貸借対照表等の公告」になります。その概要は以下の通りです。

(貸借対照表等の公告)
第1項 定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大規模一般法人にあっては貸借対照表および損益計算書)を公告する義務がある
*大規模一般社団法人とは貸借対照表の負債の合計額が200億円以上の一般社団法人のことです。

第2項 公告方法が官報または時事に関する日刊紙である場合には、前項に規定する貸借対照表の要旨で足りる
*上記の媒体で公告する場合、貸借対照表の要旨での掲載が認められています。

第3項 電磁的方法である場合には、貸借対照表の内容を定時社員総会の終結後5年を経過する日まで継続して開示しなければならない。この場合は、前項の要旨は適用されない
*詳しくは後述します。

2 一般社団法人が決算公告を行う方法とは

一般社団法人が決算公告を行う方法とは

ここでは一般社団法人が決算公告をどのように行うかについて具体的に説明しましょう。なお、以降の「法人」は一般社団法人を指します。

2-1 決算公告の内容や実施するまでの手続

決算公告を行うためには、その内容や実施するまでの手続を把握しておく必要があるため、ここではそれらの点について説明しましょう。

①計算書類の承認

一般法人法によると、一般社団法人は定時社員総会において財務・業績等に関する計算書類を提出し総会の承認を受けなければならないとされています。従って、定時社員総会で承認されなければ、その計算書類は決算公告として開示できません

通常、一般社団法人が法務省令に従って計算書類等を適正に作成し監事や会計監査人の監査を受けていれば、定時社員総会でその計算書類が否認されたり、異議を唱えられたりするケースは少ないでしょう。

②決算公告の時期

なお、決算公告をいつ行うか、いつまでに行うかなどの期限については明確な規定がなく、単に「定時社員総会の終結後遅滞なく」と示されているだけに過ぎません。

具体的に「1カ月以内」などの期日が規定されていないため判断が難しいですが、「終結後遅滞なく」とあることから、総会の終了日からできるだけ早い時期に行うのが望ましいです。

もちろん「定時社員総会の終結後」となっているため、次の定時社員総会までに行わない場合は、履行しなかったものと認識され違反の対象になる恐れが生じます。

なお、決算公告の方法(媒体)により、準備等から開示されるまでの時間が異なるため注意したほうがよいでしょう。たとえば、官報の場合、申込んでからの掲載までの期間は2~3週間ほどかかるため、開示させたい時期についてはその所要期間を踏まえて検討する必要があります。

③一般社団法人の種類による計算書類の内容

決算公告の計算書類の取扱について、「大規模一般社団法人」と「それ以外の一般社団法人」とでは内容が異なってきます。

大規模一般社団法人は貸借対照表および損益計算書が対象となりますが、「それ以外の一般社団法人」は貸借対照表だけです。具体的な違いなどは、以下の「官報」の掲載例で確認してみましょう。

1)「大規模一般社団法人(負債総額200億円以上)」の計算書類

・官報で掲載する決算公告の場合、貸借対照表は「要旨を公告することで足りる」と規定されているだけで、資産・負債・純資産(正味財産)に区分した後の記載科目に関する規定はありません。

また、損益計算書は「収益(費用)または利益(損失)について適当な部または項目に区分」するという規定になりますが、掲載科目は任意の記載です。なお、大規模法人の場合は、損益計算書の要旨の掲載も必要です。

・貸借対照表の要旨の例(公益法人会計基準の例)

(令和○年○○月○○日現在)             (単位:千円)
資産の部 負債の部
流動資産
固定資産
○○○
○○○
流動負債
固定負債
○○○
○○○
負債合計 ○○○
基金等
剰余金
○○○
○○○
純資産合計 ○○○
資産合計 ○○○ 負債・純資産合計 ○○○

・損益計算書の要旨(公益法人会計基準の例)

自 令和○年○○月○○日
至 令和○年○○月○○日
(単位:千円)

科目 金額
事業収入
事業経費
事業余剰金
事業外損益
経常剰余金
税引前当期剰余金
法人税等
当期剰余金
前期繰越利益
当期未処分利益
○○○
○○○
○○○
○○○
○○○
○○○
○○○
○○○
○○○
○○○

2)「大規模一般社団法人以外の一般社団法人(負債総額200億円未満)」の計算書類

官報で掲載する決算公告の場合、貸借対照表は「要旨を公告することで足りる」と規定されているだけで、資産・負債・純資産(正味財産)に区分した後の記載科目に関する規定はありません。従って、掲載科目は任意で記載することになります。

貸借対照表の要旨の例(企業会計基準の例)

(令和○年○○月○○日現在)             (単位:千円)
科目 金額
資産の部 流動資産
固定資産
資産合計
負債の部 流動負債
固定負債
負債合計
負債および純資産 社員資本
基金
利益剰余金
その他利益剰余金
(うち当期純利益)
純資産合計
負債・純資産合計

一般社団法人の会計は、「一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計の慣行」に基づくことが要求されますが、特定の会計基準を適用する規定はありません。そのため法人自身がどの会計基準を採用するか、判断し選択します。

一般社団法人に通常適用される会計基準は、「企業会計基準」と「公益法人会計基準」の2つです。企業会計基準は、株式会社などの営利法人で適用される会計基準で、公益法人会計基準は非営利法人である公益法人で適用される会計基準になります。

一般社団法人の決算公告においては、その法人が採用している会計基準に合わせた内容で作成することになるのです。

④一般社団法人の決算公告における計算書類の区分と要旨について

一般社団法人の決算公告の施行に必要な事項は一般法人法施行規則で定められています。計算書類の貸借対照表は同法施行規則30条、損益計算書は32条で規定されており、その主な内容は以下の通りです。

●貸借対照表

1)貸借対照表は、次に掲げる部に区分して表示することが義務付けられています。この場合は、第三号に掲げる部に関して、純資産を示す適当な名称を付けることが可能です。

一 資産
二 負債
三 純資産

2)前項各号に掲げる部については、適当な項目に細分できます。この場合では、当該各項目に関して、資産、負債または純資産を示す適当な名称を付けることが義務付けられています。

なお、一般社団法人の基金等については第31条で規定されます。基金(法第131条に規定する基金)の総額および代替基金(法第144条第1項の規定により計上された金額)は、貸借対照表の純資産の部に計上しなければなりません。

また、基金の返還にかかる債務の額は、貸借対照表の負債の部に計上できないことになっています。

●損益計算書

損益計算書は、収益或いは費用または利益或いは損失に関して、適当な部または項目に区分して表示することが義務付けられています。

以上の内容を含め、貸借対照表に関しては資産・負債・純資産(正味財産)を区分する以外は、「適当な項目に細分することができる」ということになっているだけで、必ず「細分しなければならない」と考える必要はありません。

また、損益計算書に関しては「収益若しくは費用または利益若しくは損失について」適当な項目に区分できていればOKということになります。なお、細分化の法律規定がない要旨の公告に関しても同じ扱いです。

各法人が作成した貸借対照表および損益計算書に基づき「適当な項目」が記載されていれば、妥当と認識されます。

●要旨について

要旨の公告に関して、法施行規則50条で以下の金額の表示単位の規定があることは把握しておきましょう。

第1項 百万円単位または十億円単位をもって表示するものとする
第2項前項の規定にかかわらず、財産または損益の状態を的確に判断することができなくなるおそれがある場合には、要旨にかかる事項の金額は、適切な単位をもって表示しなければならない

⑤公益法人会計基準と企業会計基準について

法人が公益法人会計基準を採用している場合では、掲載科目を検討する上で公益法人会計基準第2の2を参考にして、貸借対照表から適宜科目を抜粋し、要旨として掲載するケースが多く見られます。

1)公益法人会計基準

・貸借対照表の区分
貸借対照表は、資産の部、負債の部および正味財産の部に分けて、更に資産の部を流動資産および固定資産に、負債の部を流動負債および固定負債に、正味財産の部を指定正味財産および一般正味財産に区分しなければなりません。

なお、正味財産の部には、指定正味財産および一般正味財産の各々に関して、基本財産への充当額および特定資産への充当額を内書きとして記載する必要があります。

2)企業会計基準

企業会計基準を採用している法人は、掲載科目を検討する上で会社計算規則を参考に貸借対照表から適宜科目を抜粋し、要旨として掲載するケースが多いです。

2-2 決算公告を行う具体的な方法

決算公告を行う具体的な方法

一般社団法人の決算公告の方法は一般法人法第331条で規定されています。公告方法としては、以下の方法のいずれかを定めることが可能です。

第1項
一 官報に掲載する方法

二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法

三 電子公告(公告方法のうち、電磁的方法で不特定多数の者が公告内容の情報が受けられる状態に置く措置であって法務省令で定めた方法)

四 前三号に掲げるもの以外に、不特定多数の者が公告内容の情報を認識できるきる状態に置く措置として法務省令で定める方法(=主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法)

第2項
一般社団法人等が前項第三号に掲げる方法を公告方法とすると定款で定めた場合、その定款には、電子公告を公告方法と記せばそれでOKです。この場合に、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告ができない場合の公告方法として、官報または日刊新聞紙のいずれかを定めることができます。

なお、公告方法は定款に記載しておかねばなりません。また、公告方法を変更したい場合は必ずその旨を登記する必要があります。

決算公告を行う具体的な方法

①官報

官報は、法律や政令等の制定や改正といった政府情報や、破産や相続等の裁判情報が掲載される新聞のような公的伝達手段で、内閣府が発行するものです。なお、官報に関する内容の編集、印刷およびインターネット配信は国立印刷局が実施します。

法律で義務付けられる法定公告の最も代表的な方法の1つが官報で、株式会社や一般社団法人の決算公告に利用されることも多いです。具体的な官報による決算公告とは、官報の紙面に一般社団法人の決算書を掲載することを指します。

官報の決算公告に対する掲載料金は日刊新聞紙などに比べ安価で7万円台といった金額からの利用が可能です。また、定款に記載する公告方法が官報の場合、貸借対照表等の公告は要旨でよいとされています。

つまり、掲載する決算書の内容が簡素になる上に掲載スペースが小さくて済むというメリットもあるわけです。電子公告による決算公告では、定時社員総会の終了日後5年を経過する日までの間、継続して開示し続ける必要があるほか要旨での掲載は認められていません(貸借対照表等の全文掲載)。

官報の公告はこのような条件を課せられず比較的に安価で利用できるのです。なお、官報への公告依頼は各都道府県の官報販売所または官報公告等取次店(東京都に13法人)へ行います。

②日刊新聞紙

法で定められた「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」とは、全国紙などの毎日発刊される一般紙で決算公告を行う方法を指します。この日刊新聞紙には、読売新聞や毎日新聞などの全国紙のほか、中日新聞、西日本新聞等のブロック紙、岩手日報や静岡新聞等の地方紙なども対象になり得えます。

ただし、この日刊新聞紙にはスポーツ新聞や業界紙等の専門紙や日刊ではない月刊新聞・週刊新聞等は含まれません。なお、日本経済新聞は経済の専門紙と言えますが、公告方法として利用する株式会社(大企業等)も多いです。

実際に専門紙の利用が可能か否かは、新聞社が決算公告を扱っているか否かの実態面から判断できますが、直接問い合わせて確認した方がよいでしょう。毎日発刊される日刊新聞紙での決算公告は、その一般社団法人の利害関係者に情報を広く伝達できるほか、業界関係者や一般人に法人名を認知してもらえ信頼度の向上にも有効です。

ただし、官報よりも掲載料が高くなるというデメリットもあります。そのためか一般社団法人で日刊新聞紙を利用するケースはあまり見られません。

③電子公告

電子公告とは、会社等がこれまで官報や日刊新聞紙に掲載する方法で実施していた決算、合併、解散、資本減少等の公告を、インターネット上のホームページに掲載する方法のことを指します。

電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律(平成16年法律第87号)が平成17年2月1日から施行され、官報や日刊新聞紙への掲載による公告方法に加えて、会社や一般社団法人等がインターネットを利用して公告できるようになったのです。

利害関係者にとっては、インターネットを利用して該当先のホームページへ簡単にアクセスでき、必要な公告情報を入手できるというメリットが得られます。

公告する一般社団法人のメリットとしては、官報や日刊新聞紙で必要となる掲載料が不要となるほか、それらに関する手続等の手間もかかりません。ただし、電子公告関しては以下のような法規定(第332条 電子公告の公告期間)があります。

特に注意すべきは、「定時社員総会の終結の日後5年を経過する日」まで電子公告を継続する必要がある点です。つまり、一般社団法人は定時社員総会の終結日の後5年間はホームページに決算公告を掲載しておかねばなりません。

なお、電子公告を採用する場合、電子公告調査機関の調査を受けることが義務付けられていますが、決算公告はその義務の対象外です(「決算公告に関する特例」)。つまり、一般社団法人等もその調査を受ける必要がありません。

ただし、電子公告で決算公告をする場合、要旨による公告は不可とされ必ず全文を掲載する必要があります。なお、一般社団法人の公告方法を官報または日刊新聞紙による方法としている場合でも、決算公告だけをインターネット上のホームページへ掲載することも可能です(一般法人法第128条第3項、第条)。

この場合には、貸借対照表等が掲載されるホームページのURLを登記しなければなりません。以下に一般社団法人がホームページに決算公告を掲載する場合のページ内容を紹介しましょう。

●サイト上の電子公告のページの構成例

1)設立登記公告
一般社団法人○○○は、一般社団法人および一般財団法人に関する法律(平成十八年六月二日法律第四十八号)(平成二十年十二月一日施行)に基づき登記を完了したので、法律三百三十一条第三項(電子公告)に従い公告する。

1.名称  ○○○
2.主たる事務所  東京都中央区銀座一丁目○○番○○号 ○○ビル○階
3.代表理事  ○○○○
4.主たる事務所の連絡先  03-○○○○-○○○○
5.登記番号  ○○○○-○○○○○○○○
6.公告アドレス  http://○○・・・・
7.登記完了日  令和○年○月○日

2)決算公告
2020年度貸借対照表(PDF)

*貸借対照表の掲載例

科目 当年度 前年度 増減
Ⅰ 資産の部
1 流動資産
現金預金
売掛金
未収入金
製品
仕掛品
・・・・
貸倒引当金
流動資産合計
2 固定資産
建物
構築物
器具備品
・・・・
固定資産合計
資産合計
Ⅱ 負債の部
1 流動負債
預り金
未払金
・・・
流動負債合計
2 固定負債
預り保証金
退職給付引当金
役員退職慰労引当金
・・・・
固定負債合計
負債合計
Ⅲ 正味財産の部
一般正味財産
正味財産合計
負債および正味財産合計

④主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法

この方法は、主たる事務所に掲示板等を置いてその掲示板等に決算公告をその開始後1年を経過する日まで掲載する方法です。この「主たる事務所」とは、その一般社団法人の事務所の中で全事業を統括する中心的な事務所を指します。

なお、一般法人法4条においては、一般社団法人の住所は、主たる事務所の所在地にあるものと規定されています。主たる事務所の所在地の記載は、定款の絶対的記載事項で登記事項であるため、定款に記載した所在地の事務所が「主たる事務所」にあたると見るのが妥当です。

また、設置の方法としては公衆が見やすい場所に設置して容易に閲覧できる状態なっていることが求められます。その「容易に閲覧」できるためには、事務所の入口付近の掲示板などに掲示することが望ましいです。

主たる事務所がマンションや民家などの場合は適当な場所を確保しにくいですが、その事務所の構造や掲示場所へのアクセスの容易性などを考慮して決定する必要があります。

以上のような設置上の制約は多少あるものの、決算公告の方法の中では最も費用がかからず、手間も少ない点は法人にとって魅力です。そのため小規模な法人ではこの方法を採用するケースが多く見られます。

ただし、利害関係者などは決算公告の情報を把握するために当該事務所へ訪れる必要があり、望まれる方法とは言えません。法的には問題のない方法であっても利害関係者からの評価の低い不親切な方法として受けとめられかねない場合は不利益が生じないか注意が必要です。

3 一般社団法人の決算広告の手順

一般社団法人の決算広告の手順

一般社団法人が決算公告を行う際の流れについて説明しましょう。その手順のポイントは以下の通りです。

一般社団法人の決算広告の手順

  • ・公告方法の決定
  • ・公告方法の定款への記載と登記
  • ・計算書類に関する定時社員総会での承認
  • ・決算公告方法の実施

3-1 公告方法の決定

公告は法的な義務であり、その内容は定款に記載しなければなりません。具体的には、法人設立に伴って登記する際に定款を提出することになるため、その定款に決算公告の方法を記載しておく必要があるのです。

決算公告の方法は前に確認した通り、官報、日刊新聞紙、電子公告、主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法(以下、「主たる事務所」)の4つです。どの方法を選択するかはその法人の状況や方針(手間・費用・効果等に対する考え)などを踏まえて、その法人に適した方法を選択します。

①掲載費用を抑え、かつ楽に公告したい場合

決算公告の掲載費用をできるだけ低く抑え簡単に済ませたい場合は、官報、電子公告、主たる事務所の3つが候補です。

ただし、電子公告の場合はホームページを設置していることが条件になります。ホームページをその法人で作成・設置していない場合はそのための手間や費用がかかる点の考慮が必要です。

主たる事務所での掲載費用は発生しないですが、利害関係者が公告内容を確認する負担が大きくなるため、当該法人への評価や信頼度が低くなり得るほか、法人の認知度アップなどの効果が期待できません。

しかし、法人の利害関係者が限定された地域に存在してその数も少数である場合などにおいては、そうした影響を心配する必要はないでしょう。従って、そうした微妙な不利益が生じる可能性がない法人にとっては最も楽で費用のかからない有効な方法と言えるはずです。

官報は7万円台~という比較的お手頃価格の掲載料金であるため、費用負担はあまり大きくありません。また、官報に掲載する場合、決算書類は要旨で良いため作成の手間も小さく済みます。

官報は一般の個人が購読するケースは少ないため、決算公告による当該法人の知名度アップは期待しにくいですが、官報への掲載は一定の信頼度の確保には有効です。

②決算公告を法人の知名度・信頼度のアップに利用したい場合

その法人の将来の発展や事業の拡大に向けて知名度や信頼度のアップを図りたい場合は、日刊新聞紙、電子公告の利用が役立ちます。

近年、株式会社などにおいてはコーポレートサイトを設置して自社およびその事業についての情報発信が積極的に行われるほか、マーケティング(市場調査や集客等)に活用するケースが一般的になってきました。

また、投資家保護や利害関係者との良好な関係構築・維持などを目的として、自社の財務・業績データを開示するケースも多く見られるようになっています。こうした状況の中で自社のホームページ上で決算公告する会社も多く、一般社団法人においても増えてきました。

法人の場合、営利目的を主体とした事業活動を行う株式会社などと異なり、ホームページの活用は利害関係者への情報提供や交流などを目的に利用されるケースが多いですが、そうした目的の一環として決算公告をホームページ上に掲載する法人が増加しているのです。

日刊新聞紙への掲載は会社や法人の知名度・信頼度のアップに貢献します。法人の顧客や利害関係者がどの程度日刊新聞紙を愛読しているかで知名度アップの効果は変わってきますが、読者が多ければ高い効果も期待できるはずです。逆に購読者が少なければ効果は低く利用する価値は低くなります。

たとえば、製造業や工業製品などに関連する事業等に取組む法人の場合、「日刊工業新聞」への掲載はその法人の知名度アップに役立つはずです。特定エリアで活動する法人ならその地域のブロック新聞・地方紙への掲載も有効でしょう。

ただし、費用は最も多くかかることから、実際に法人が決算公告に日刊新聞紙を利用するケースはあまり見られません。

3-2 公告方法の定款への記載と登記

公告方法は定款作成時に記載する必要があります。また、後日、方法を変更する場合も登記が必要です(定款の変更において、公告方法は登記事項です)。以下に定款へ公告方法を記載する際のポイントを説明しましょう。

①公告方法の定款への記載

定款への公告方法の記載は、官報、日刊新聞紙、電子公告、主たる事務所の4つの方法のうちいずれかを定めればそれでOKです。具体的には以下のように記します。

●官報
「第○条 当法人の公告は、官報に掲載する方法により行う。」

●日刊新聞紙
「第○条 当法人の公告は、○○県において発行される○○新聞に掲載する方法により行う。」

●電子公告
「第○条 当法人の公告は、電子公告により行う。たたし、事故その他やむ得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合は、官報に掲載する方法により行う。」

*定款には、電子公告を公告方法とする旨を定めればそれでOKですが、その場合において、「事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法」として、官報または日刊新聞紙のいずれかを定められます。

●主たる事務所
「第○条 当法人の公告は、当法人の主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法により行う。」

②4つの方法を定款に定める際の注意点

1)複数の方法の利用の記載は可能

上記のように4つの方法のいずれかを定款に定めればよいですが、「官報および○○県で発行される○○新聞」のように重畳的な利用の定めもできます。つまり、2つ以上の公告方法を定めることも可能ですが、その場合その全方法で公告しなければなりません。

2)選択的な利用の記載は不可

一方、「官報または電子公告」のようにどちらを選択的に定める記載は相応しくないとされています(定款から確定的に判断できないため)。加えて、「貸借対照表の公告は電子公告、その他は官報」というように、公告対象事項を任意に細かく分けて、各事項に関する各公告方法を定めることも適切でないと見られています。

3)貸借対照表等の提供だけ電子公告によることも可能

官報または日刊新聞紙の方法を定款で定める場合には、貸借対照表等の公告に代えて、電磁的方法により継続的して不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置(ホームページへの掲載・開示)をとることは可能です。

具体的には以下のような記載になります。
「第○条 当法人の公告は、官報に掲載する方法により行う。ただし、貸借対照表にかかる情報の提供はインターネットを使用する方法により行う」

なお、電子公告の場合や貸借対照表等にかかる情報の提供についてインターネットを使用する場合、そのURLを登記簿に記載しなければなりません。しかし、定款への記載については「電子公告の方法により行う」「貸借対照表にかかる情報の提供はインターネットを使用する方法により行う」などの内容でOKです。

③日刊新聞紙について

公告方法として日刊新聞紙を定款で定める場合、1種または数種の新聞を特定するか、特定可能となるように記載するか、が求められます。また、その発行地も特定することが要求されているのです。なお、日刊新聞紙は地方紙でも夕刊紙でも利用できます。

④電子公告について

公告方法を電子公告とする旨を定款で定める場合、定款では「当法人の公告は、電子公告により行う。」と記載すればOKです。

ただし、その他やむを得ない理由により電子公告による公告ができない場合に備えて、官報または日刊新聞紙への掲載方法を予備的公告方法として定めます。

なお、先述の通り、電子公告するホームページのURLまで定款に記載する必要はないです。しかし、公告方法として電子公告を定めた場合、このURLは定款の絶対的記載事項でないものの、登記しなければなりません(同法301条2項15号イ、同法施行規則87条1項2号)。

⑤主たる事務所について

この方法では、定款には「当法人の公告は、当法人の主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法により行う。」などと記載しておけばOKです。小規模の一般社団法人の多くがこの方法を採用しています。

3-3 計算書類に関する定時社員総会での承認

決算公告の情報・資料となる計算書類の定時社員総会での承認について説明しましょう。

①計算書類の会計基準

決算公告の基礎資料となる計算書類について、一般社団法人が適用すべき会計基準は特に義務づけられておらず、一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計の慣行によることが要請されているだけです(法人法施行規則第21条)。

この「一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計の慣行」に何が該当するかについては、主に「公益法人会計」と「企業会計」の2種類が考えられます。

●一般社団法人が「公益法人会計」を採用した場合の計算書類およびその附属明細書
⇒1)計算書類:貸借対照表、損益計算書(正味財産増減計算書)
2)附属明細書

●一般社団法人が「企業会計」を採用した場合の計算書類およびその附属明細書
⇒1)計算書類:貸借対照表、損益計算書
2)附属明細書

②計算書類の定時社員総会での承認

一般社団法人は、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表等を公告しなければなりません。従って。各年度の定時社員総会においてその年度の計算書類の承認を受ける必要があるわけです。

定時社員総会での議案として、「第○号議案 第○期(令和○年○月○日から令和○年○月○日まで)計算書類承認の件」の内容で提案し承認を受けます。監事や会計監査人の監査を受け問題がなければ、多くの場合その議案は承認されるはずです。

3-4 定款へ記載した公告方法の実施

計算書類が定時社員総会で承認され総会が終結した後、速やかに所定の公告方法で決算公告を行いますが、その4つの方法を実施するための手続等は以下のようになっています。

①官報

官報で決算公告を行うには、最寄りの官報販売所へ申込むのが一般的です。東京都では「東京都官報販売所」などがあります。販売所のサイトではホームページ上での申込み(WEB申込)が可能であるため便利です。

「原稿作成フォーム」などのツールも用意されているため、官報へ貸借対照表等を掲載する手続にかかる作業の負担も小さく済むでしょう。

なお、一般社団法人の場合、大規模一般社団法人(負債総額200億円以上)であるかそうでないか、により決算公告に掲載する内容が異なってくるため注意してください。

②日刊新聞紙

日刊新聞紙は費用が最もかかるため利用する一般社団法人はほとんど見られないですが、申込みは希望する新聞社へ行います。利用する場合はその目的、必要性や効果を十分に考慮して決定すべきです。

日刊新聞紙の場合、掲載する貸借対照表等は要旨でよく、掲載期間の定めもありません。全国紙の費用設定は一般的に高めですが、日刊工業新聞は比較的費用が低く設定されているため、特に製造業関連の事業においては利用価値の高い媒体と言えるでしょう。

③電子公告

公告方法を「電子公告」とした一般社団法人は、登記簿に記載したアドレス(URL)のページに貸借対照表等を掲載しなくてはなりません。従って、利害関係者などが登記簿に記載したこのURLにアクセスすると、貸借対照表等の情報が掲載されページへ移動できる必要があります。

なお、一般的に多く見られる法人のサイトでは、法定公告や決算公告の情報が掲載されているページがあり、そのページに貸借対照表等の情報(決算公告情報の一覧)が掲載されるケースが多いです。

その一覧から該当年度の貸借対照表等にアクセスできる構成が一般的で、法人にはそうしたページ設計が求められます。該当年度の貸借対照表等にたどり着くまでのクリック数が多くならないように注意しましょう。

④主たる事務所

主たる事務所での公告は、登記簿に記載した事業所で掲載するのが適当であり、どの事務所でもよいというわけではありません。

また、公衆の見やすい場所での掲示となるため、上記事務所であっても公衆が入って来れない、見ることができない場所に掲示するのは要件を満足しないことになります。

規模の大きな法人なら事務所の入り口付近に掲示板などを設置して掲示するのが一般的です。しかし、規模の小さい法人の場合、掲示板の設置が困難であることも多く公衆が入って来れる入り口付近あたりのスペース(ドア等)に掲示することになるでしょう。

4 一般社団法人が決算公告を行う際の注意点

一般社団法人が決算公告を行う際の注意点

一般社団法人が決算公告を行う際に特に注意しておきたい点を3つ紹介しておきます。

一般社団法人が決算公告を行う際の注意点

4-1 決算公告しない場合は罰則の対象となる

一般社団法人も決算公告を行うように法律で定められており、決算公告しない或いは不正の公告をする場合は罰則が適用されます。

決算公告しない場合、一般法人法第342条第1項第2号の「この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、または不正の公告若しくは通知をしたとき」に該当し、「百万円以下の過料に処する」の対象となるわけです。

実際のところ決算公告を怠った場合でも処罰を必ず受けるとは限らないですが、処罰を受けない可能性があるからと言って法律を守らないことはその法人の信頼性を損なってしまいます。

そのため罰則を受ける、受けないの可能性からではなく、法を順守する法人の立場から所定の公告に努めましょう。

4-2 決算公告する期限は設定しておく

決算公告は「定時社員総会の終結後遅滞なく」行うことになっているだけで、「いつ行うか」についての規定がありません。そのため事前に決算公告する期日を設定しておき、公告し忘れないようにするべきです。

決算公告する期日を事前に設定する場合、1)決算の確定⇒2)定時社員総会の開催の上承認を受ける⇒定款に記載された方法で決算公告をする、の流れから特に2)の点で検討するとよいでしょう。

具体的には、定時社員総会の終了の期日に、定款に記載の公告方法で必要となる掲載にかかる日数(申込んでから掲載されるまでの日数)を加えて、決算公告の開始の予定期日とすればよいのです。

たとえば、公告方法の掲載にかかる所要日数が3週間なら少し余裕を見て「定時社員総会の終了日から30日後」を予定日の候補にします。このように事前に公告日を設定して確実に決算公告できるようにスケジュール化しましょう。

4-3 各一般社団法人にあった公告方法を採用する

決算公告の方法は4つあり、各々違った特徴があるため、その点を考慮し各法人にあった公告方法を採用するべきです。

4つの方法においては、掲載する手間、掲載までの時間やコストが異なり、法人にかかる負担も違ってきます。そのためその法人の状況等にマッチしない方法を選択すると余計な負担を背負うことになりかねません。

小規模な法人ほど事業活動にかかる資源は脆弱であるため、法的な義務とは言え決算書類を掲載するだけの決算公告に余分な費用や労力をかけるのは適切とは言えないはずです。

もちろん資金や人員等に余裕があり、特定の媒体を利用する意義や目的があれば、費用の高い媒体の選択も妥当な判断になります。しかし、そうした考えがなしになんとなく選んで必要のない手間とコストを背負い込むことだけは避けましょう。

5 まとめ

まとめ

一般社団法人においても決算公告は法定公告の1つであり、実施しないと罰則が適用されます。決算公告を実施する上では、適した公告方法を選択する、公告の予定日を決めて適正な方法で実行する、ことが重要です。

決算公告の方法は、官報、日刊工業新聞、電子公告と主たる事務所での掲載、の4つがありますが、各方法の特徴を把握した上で選択することが望まれます。効果も考慮し余計な手間やコストをかけないように各法人にあった方法を選びましょう。

また、決算公告は定時社員総会の終了後遅滞なく行うことが要請されていますが、明確な法定期限の設定がないため各法人で予定期日を定めて忘れずに実施することが大切です。

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