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【事業開始時に必須!】個人事業主と法人の違いとは〜法人形態の全種類解説〜

起業を考えるとき、会社設立か個人事業かという選択肢がありますが、2006年5月の会社法施行を機に、国は、起業家育成にあたり、法人設立を推進することでその機運を高めてきた経緯があります。このため、会社法上の会社を中心とした法人の設立が増加しています。中でも、会社法で創設された「合同会社」に対する注目度が高く、設立数の伸び率は株式会社を凌ぐ勢いとなっています。

そこで今回は個人事業主と法人の詳細説明とそれぞれのメリットデメリット、さらに違いについて説明します。株式会社等の営利法人に限らず、起業家の事業目的と取組姿勢によっては公益法人やNPO法人の設立を目指す場合も想定し、法人の種類別の組織特性や、設立に当たっての留意事項をまとめました。また事業を開始する時点と、事業を開始してから事業形態の変更をする目安についても紹介しますので、起業をお考えの方はぜひご参考下さい。

個人事業主について

日本には企業数が約382万あり、そのうちの半分は個人事業主になっています。また個人事業主のもとで働く従業員の数は約620万人と日本で働く就業者の約12%が個人事業主の事業で働いている事となります。つまり日本で事業を行う経営者の半数はそれぞれの理由から個人事業主を選択している事になります。また就業は個人事業主より圧倒的に法人で働く就業者のほうが多いという事が分かります。

 

個人事業主とは

個人ないし法人ではなく継続的に事業をしている人を個人事業主と言います。家族や従業員を雇用していても法人でなければ個人事業主になります。また個人事業主は税務署に個人事業主としての開業届出を行っています。

・事業名

個人事業主の場合の事業を行う名称を屋号(やごう)と言います。例えば〇〇商店や△△病院などです。このような企業名である場合は、その企業は個人事業主であるという事を表しています。一方法人は「株式会社〇〇」などのように法人形態名称がつく事が必須になっています。

・フリーランスとの違い

個人事業主は継続的に事業をしている点でフリーランスと異なります。フリーランスは仕事毎に契約と業務を行う人を指します。そのためフリーランスを行う人の中には個人事業主で行っている人も法人で行っている人もいます。

 

個人事業主のメリット

①開業が簡単

個人事業主の開業においては届け出が法人に比べて圧倒的に簡単です。個人事業主の届け出は事業開始日から1か月以内に税務署に提出する『個人事業の開業・廃業等届出書』という通称開業届を提出するだけです。開業届出をだす目的は、確定申告時に様々な節税効果を見込める青色申告を行うためです。仮に個人事業主で開業届出を提出していなかったとしても罰則も不利益もありません。

②費用が抑えられる

代表的な部分では設立費用がかかりません。また簡易申告ができる経理機能も人件費や税理士などに依頼する手数料を抑える事が可能です。また資本金も不要です。

 

1-3 個人事業主のデメリット

①信用が低い

特に開業時の個人事業主の企業の信用度は低くなります。誰でも簡単に設立できるため、本当に事業を行っているかが分かりづらく、融資が受けにくいという問題が発生します。また信用度が低いことで人材が集まりにくいという問題も発生します。

②個人負担が無限

個人事業の場合、事業用に使用する資産であっても契約や登記が屋号で行う事ができないため、個人で契約や登記をしなくてはなりません。つまり事業で生じたすべての負債を支払う義務が個人に発生します。法人であれば有限責任で済むため、個人事業主の大きなデメリットになります。

法人について

日本の企業のうちおよそ半分は法人であり、法人の中で資本金や従業員数などで事業規模をみて大企業は1万1千社で、残り約160万社の中小企業があります。

 

法人とは

目的を持ち事業を継続的に実施している“法人格”を認められた組織が法人です。法人格を持つことで契約や登記の主体になる事ができる権利や義務などの能力を持ちます。そして、この権利能力のことを「法人格」といいます。具体的に法人格を持つ事で法人名「株式会社〇〇」などの会社名を使用する事が出来て、会社名義で取引を行う事ができます。

民法が定める法人の成立要件は、「学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律(民法)その他の法律の定めるところによる(民法第33条第2項」)として、法定要件を満たすことで法人を設立することができる旨規定しています。

法人の設立とは、「法人格」という新たな人格を備えた組織を生み出すということにほかなりません。この法人格とは、目的を達成する為に行うあらゆる法的判断・決定を下す「権利能力」を備えることであるといえます。この点について、民法は、「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。(同法第34条)として、法人の権利能力及び行為能力は、定款等に記載された範囲を超えることができない旨規定しています。

このように、法人とは、公益法人、営利法人、非営利法人という種類を問わず、その設立目的が民法をはじめとした関係法令に適合したものであることを前提とし、その上で、その権利能力等は、定款等に記載された適法な事業目的の範囲内において有するものであると言えます。

また、法人は、独立行政法人や特殊法人からなる『公法人』と営利法人と非営利法人からなる『私法人』に分かれます。私法人は更に株式会社、合同会社、合資会社、合名会社からなる利益を目的とした「営利法人」と、一般社団法人、一般財団法人、NPO法人などの営利を目的としない「非営利法人」の二つに分かれます。

 

営利法人・非営利法人の概要

法人区分には、事業活動の目的によって、営利法人・非営利法人があり、その他として、かつて中間法人という捉え方がありました。それぞれの概念は以下の通りです。

・営利法人

営利法人で言う「営利」とは、事業活動によって利益を追求し、獲得した利益を構成員に分配することを指します。したがって、法人が事業目的に経済的利益の獲得を含むかどうかに関係なく、あくまでも剰余金又は残余財産といった経済的利益を構成員に分配するか否かによって、営利法人か非営利法人かを区別することになります。

会社法上の会社は営利法人とされます。旧商法では、営利法人について明文規定がありましたが、会社法ではこの規定がなくっている為、立法上の解釈が営利性判断の基準となります。立法上の解釈とは、会社法上、会社の株主・社員には、利益配当請求権及び残余財産分配請求権が認められていることから、あえて「営利を目的とする」という言葉を使用する意味はないという立場です。

・非営利法人

営利を目的としない法人をいいます。設立方法として「許可」、「認可」、「認証」、「準則主義」という多様な種類があります。非営利法人の特徴は、構成員がその団体に対する持分を有していないため、利益の分配がないという点です。ただし、団体の経済基盤を確立するための収益事業を行うことはできますので、利益を目的とすることと収益事業を営むこととは別物である点に注意が必要です。

非営利法人の形態として、「公益法人(社団・財団)」、「特定非営利活動法人(通称:NPO法人)」、「認定特定非営利活動法人(通称:認定NPO法人)」、「社会福祉法人」、「一般社団法人」、「一般財団法人」、「宗教法人」などがあります。

・その他

非営利ではあるものの、積極的に公益を図るとまではいえない法人について、2001年に中間法人法が制定され、新たな法人格として中間法人が認められましたが、2006年の公益法人制度改革関連法の制定を機に中間法人法は廃止されました。制度としては一般社団法人制度に吸収された形で、現在は、中間法人という法人形態はなく、法人の性格を表す言葉として認識されています。

この性格を有する法人の特徴は、それぞれ特別法に設立根拠をもった団体であることです。代表例として、農業協同組合(農業協同組合法)、消費生活協同組合(消費生活協同組合法)、中小企業等協同組合(中小企業等協同組合法)、労働組合(労働組合法)などがあります。

 

法人のメリット

①信用力が上がる

事業活動においてついてまわる重要事項が信用力です。法人の開設には資金が必要でかつ企業の目的である定款を作成するなどの体裁が整えられます。また法人の維持にも毎年約30万円のコストが発生するのに加えて、毎年事業活動を表す複式簿記の損益計算書や貸借対照表を作成しており事業活動の情況が分かります。法人である事は開設から現状までの目的や活動が分かる仕組みになっており、だからこそ社会的な信用力が上がります。

②事業規模が大きくなると節税効果が得られる

個人事業主は収入から費用を引いた所得に所得税がかかります。一方法人は税引き前利益に対して法人税がかかります。細かい計算は割愛しますがこの所得が700万を超過すると、法人として法人税を納税したほうが節税になります(但し900万円を越えない場合総合的には大きな差にはなりません)。また経費として計上できる幅が広がるなどの面も節税につながります。

 

法人のデメリット

デメリットについてはメリットの裏返しになりますが、法人の開設届出ならびに維持には専門の行政書士や司法書士ならびに税理士を使う必要があるほど複雑な点です。
複雑なだけではなく、上記の専門家への費用などをあわせると開設ならびに維持費用はばかになりません。

法人の種類

法人の形態としては、会社法に基づく営利法人と、非営利法人に大別されることは述べましたが、その種類となるとさらに幅が広がります。以下、営利法人と非営利法人に分けて、その種類と内容について整理します。

なお、会社法の施行を機に有限会社法が廃止され、会社法施行時点で存在した有限会社は、「特例有限会社」として「有限会社」という商号を使用する義務を負いつつ、法律上の性格は株式会社として存続しています(会社法整備法第2条第1項・第3条)。ここでは、特例有限会社を除く4つの会社形態について、その仕組みと特徴を解説します。

 

営利法人の詳細

会社法で規定された4種類の会社について、設立方法や機関設計、利益処分等について詳細に解説します。なお、これ以降、会社法の条文を記載する際は、単に「法第〇条」としますので。

株式会社・合同会社

項目 株式会社 合同会社(LLC)
根拠となる法令 会社法 会社法
法人の性格 営利法人 営利法人
目的とする事業 定款に記載した事業による営利の追求 定款に記載した事業による営利の追求
設立方法 公証人役場による定款認証を経て登記して設立「準則主義」(注1) 定款作成・登記して設立(定款の認証は不要)「準則主義」(注1)
設立の為の要件 資本の提供 社員(出資者)1人以上
最低資本金/出資金 1円以上 1円以上
資本金等の公開 任意(上場・非上場) なし(株式ではなく出資金のため)
議決権の態様 出資比率によります 定款で自由に決めることができます
法人の所有と経営 所有と経営は分離(所有:株主、経営業務執行は株主総会で選任された取締役) 所有と経営は一致(社員が業務執行権と会社代表権を有する)
最高意思決定機関 株主総会 社員総会
役員等設置態様 取締役1人以上必置(機関設計によって、監査役、会計参与等の設置が可能) 法定された機関はなく、社員自らが意思決定を行うが、定款で設置を規定することは可能です
代表権の付与 取締役(代表取締役) 社員(代表社員)
役員等の任期 株式譲渡制限(注2)のある会社は最長10年(それ以外は2年) 社員の任期制限はありません
出資者責任 (注3) 間接有限責任 間接有限責任
自己持分の取得 取得できます(法第155条で取得できる場合を限定列挙しています) 持分会社(注4)は自己持分を取得できません(法第587条第1項)
会計監査人監査 大会社(注5)及び委員会等設置会社(注5)は必置(法第328条、327条第5項) 設置不要
決算公告 必要 不要
持分譲渡 原則自由(但し、定款で譲渡制限を設けることは可能) 社員全員の同意が必要(法第585条)
資本金等の管理 資本金の額を増減させるときは、株主総会の議決が必要で、増額については「普通議決」、減額は特別議決とあわせ債権者保護手続きが必要です 資本金、資本剰余金、利益剰余金は社員ごとに計上されます。資本金の額を減少させるときは、債権者保護手続きが必要です
剰余金の処分 株主に対し剰余金の配当をすることができる(法第453条) 利益の配当を社員から請求でき(法第621条第1項)、請求方法・回数等を定款で定めることができる
税制面の扱い 全所得課税 全所得課税
設立費用等 20万円~24万円程度 6万円~10万円程度

(注1)準則主義

法律に定める一定の組織・要件を具備したときに、許可や認可を待たずに当然に法人の設立を認めることを言います。なお、この場合は、組織内容を公示するための登記又は登録が必要とされます。

(注2)株式譲渡制限

株式会社は、「譲渡による株式の取得について会社の承認を得ること」を定款で定めることができます。このような株式を譲渡制限株式と呼び、この定めのある会社を「公開会社でない株式会社(非公開会社ともいう)」と呼びます。なお、公開会社・非公開会社というのは、株式の上場・非上場とは違った概念ですので注意が必要です。

(注3)出資者責任

出資者の責任は、「有限責任」と「無限責任」に区分することができます。有限責任とは、会社が倒産した際に出資額を限度として責任を負う(間接有限責任)ことを言い、株式会社と合同会社は有限責任です。倒産した会社に負債が残ったとしても、自分の出資額以上の責任を追及されることはありません。一方、後述する「合資会社」や「合名会社」のような無限責任社員で構成する会社は、会社の財産で支払いきれない債務は、社員に支払い義務が残り、債権者は直接社員に対して債務の履行を請求することができます(直接無限責任)。

(注4)持分会社

株式会社においては、意思決定や利益の配分が出資比率に応じて行われますが、持分会社は基本的には社員の総意をもって決定する事項が多い点に特徴があります。会社の形態としては、不特定多数の株主を募る株式会社と違い、信頼関係を持ち合う少人数の社員が集まって自ら事業を行うタイプの会社であり、社員の地位は「持分」で表されます。

(注5)大会社

最終事業年度に係る貸借対照表の資本金の額が5億円以上、または、負債の部の合計額が200億円以上(たとえ資本金の額が5億円未満でも)である株式会社を言います(法第2条第6号)。

合資会社・合名会社

項目 合資会社 合名会社
根拠となる法令 会社法 会社法
法人の性格 営利法人 営利法人
目的とする事業 定款に記載した事業による営利の追求 定款に記載した事業による営利の追求
設立方法 定款作成(認証不要)・登記で設立「準則主義」(注.1) 定款作成(認証不要)・登記で設立「準則主義」
設立の為の要件 社員2人(有限責任社員1人、無限責任社員1人)以上。設立時点で出資の全額が履行されていなくても可。 社員1人以上。 出資の履行については、合資会社と同様。
最低資本金/出資金 金銭の場合(注.6)は1円以上 金銭の場合(注.6)は1円以上
資本金等の公開 なし(株式ではなく出資金のため)
議決権の態様 定款で自由に決めることができます
法人の所有と経営 所有と経営は一致(社員が業務執行権と会社代表権を有する)
最高意思決定機関 無限責任社員が決定権・執行権を持ちます。有限責任社員は単なる出資者です。 各社員が業務執行権及び代表権を有るため、意思決定は全社員の過半数で決められます。なお、業務の執行については、定款で特定の社員を指定することができます。
役員等設置態様 法定された機関はなく、社員自らが意思決定を行いますが、定款で設置を定めることが可能です
代表権の付与 無限責任社員(代表社員) 社員(代表社員)
役員等の任期 社員の任期制限はありません 同左
出資者責任(注3) 直接有限責任及び直接無限責任 直接無限責任
自己持分の取得 持分会社(注4)は自己持分を取得できません(法第587条第1項) 持分会社(注4)は自己持分を取得できません(法第587条第1項)
会計監査人監査 大会社(注5)及び委員会等設置会社(注5)は必置(法第328条、327条第5項) 設置不要
決算公告 不要
持分譲渡 《原則》他の社員全員の承諾がなければ持分を他人に譲渡できません(法第585条第1項)が、《例外》として、業務執行役員でない有限責任社員は、業務執行社員全員の承諾があれば、その持分を他人に譲渡することができます(同条第2項)
資本金等の管理 資本金、資本剰余金、利益剰余金は社員ごとに計上されます。資本金の額を減少させるときは、債権者保護手続きが必要です
剰余金の処分 利益の配当を社員から請求でき(法第621条第1項)、請求方法・回数等を定款で定めることができる
税制面の扱い 全所得課税
設立費用等 6万円~10万円程度
社員の加入 持分会社に新たに社員が加入する場合、必ず定款の変更が必要です。
社員の退社 (注7) 社員自らの意思でする「任意退社」と、会社法で規定された事由による「法定退社(当然退社)」があります。
税制面の扱い 全所得課税

(注6)出資の目的

合同会社の有限責任社員と合資会社における有限責任社員は、その出資の目的は金銭または現物に限られますが、合名会社及び合資会社の無限責任社員は、金銭や現物だけでなく、労務や信用を出資の目的とすることができます。これは、債権者にとっては、有限責任社員は出資の額の限度までしか責任を追及できないため、確実に回収できる金銭等に限られるのに対し、無限責任社員は、その性格上会社の保証人であり人的担保ともいえる存在だからです

(注7)社員の退社

〔任意退社〕:定款で別の定めをしない限り、社員は事業年度終了時において退社することができます。この場合、退社する社員は6カ月前までに会社に予告をしなければなりません(法第606条第1項)。
また、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社できるという例外規定も設けられています(同条第3項)。

〔法定退社〕:社員は、第606条(任意退社)、法第609条第1項(持分の差押権者による退社)、第642条第2項(持分会社の継続に同意しなかった社員)、第845条(持分会社の設立無効又は取消判決)のほか、次の事由が生じたときは当然に退社します(法第607条第1項)

①定款で定めた事由の発生、② 総社員の同意、③ 死亡、④ 合併、⑤ 破産手続開始の決
定、⑥ 解散、⑦ 後見開始の審判を受けたこと、⑧ 除名。

なお、⑤~⑦の事由については、その全部又は一部について退社しない旨を定款で定めることができます(同条第2項)。これは、社員間の信頼関係の問題として、定款自治の範囲で選択することを認めているためです。③の社員の死亡で注意すべきは、その相続人は当然にはその地位を相続しないということです。ただし、社員死亡にあたり、その持分を相続する旨を定款で定めることは認められており、ここでも定款自治の範囲が広いことが分かります。

 

非営利法人

次に、非営利法人について見てみましょう。「公益法人(社団・財団)」、「特定非営利活動法人(通称:NPO法人)」、「認定特定非営利活動法人(通称:認定NPO法人)」、「社会福祉法人」、「一般社団法人」、「一般財団法人」、「宗教法人」などがありますが、公益法人とそれ以外の法人について整理してみます。

3-2-1 公益(社団・財団)法人と一般(社団・財団)法人との比較

根拠法令をはじめ事業や設立方法などについて、公益と一般を比較して相違点や特徴を紹介します。

法人区分 公益社団法人
公益財団法人
一般社団法人 一般財団法人
根拠法 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
名称 法人の名称の中に、公益社団法人又は公益財団法人の文字を用いなければなりません 法人の名称の中に、一般社団法人又は一般財団法人の文字を用いなければなりません。
目的 事業 事業の種類((公益認定法別表に掲げる事業(注8))及び実施方法が公益認定基準を満たす法人 目的・事業に制約はなく、公益事業、収益事業、共益事業等を行うことができます。
設立方法 公益認定等委員会等の合議制委員会の諮問結果に基づき、内閣総理大臣又は都道府県知事が認定します。 公証人役場による定款の認証を受けたのち、登記して設立となる「準則主義」によります。 なお、一般法人設立後直ちに公益認定を申請することを前提とするならば、公益認定基準を満たした定款としなければなりません(事業の種類が公益認定法別表に掲載されたものであることなど)。
設立要件 一般法人と同様 社員2名以上 拠出財産300万円以上
議決権 社団法人は1社員1票 財団法人は1評議員1票 1社員1票 1評議員1票
意思決定機関 一般法人と同様 社員総会 評議員会
役員 理事3人以上
監事1人以上
財団は評議員3人以上
原則として会計監査人が必要(一定規模以下は不要)(注10)
理事3人以上
監事不設置も可。大規模法人(注9)は会計監査人必要
ただし、非営利でない場合は理事1人以上
理事3人以上
監事1人以上
評議員3人以上
大規模法人(注9)は会計監査人必要
代表権 代表理事 理事 理事
剰余金 収益事業は課税 公益目的事業は非課税 剰余金の分配はできない。
税制取扱 収益事業は課税 公益目的事業は非課税 非営利型は収益事業に課税されます。非営利型以外の法人は全所得に課税されます。
設立費用 無料 11万円程度
その他 公益財団の財産拠出は一般財団と同様    

(注8)公益認定法別表に掲げる事業

  事業の内容
1 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
2 文化および芸術の振興を目的とする事業
3 障害者若しくは生活困窮者又は、事故・災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
4 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
5 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
6 公衆衛生の向上を目的とする事業
7 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
8 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
9 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
10 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
11 事故または災害の防止を目的とする事業
12 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
13 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
14 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
15 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
16 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
17 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
18 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
19 地域社会の健全な発展を目的とする事業
20 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
21 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
22 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
23 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

(注9)大規模法人

一般社団法人並びに一般財団法人で、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した合計額が200億円以上である法人を大規模一般社団(財団)法人と言い、会計監査人を置かなければなりません。この水準未満の一般社団法人は、定款の定めによって会計監査人を置くことができます。

(注10)公益法人の会計監査人

公益社団法人及び公益財団法人は、原則として会計監査人を置かなければなりませんが、政令で定める基準に達していない場合は不要です。この場合の政令で定める基準とは、損益計算書の収益の部に計上した額の合計額が1000億円に達しない場合、費用及び損失の部に計上した額の合計額が1000億円に達しない場合及び貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が50億円に達しない場合は、会計監査人は不要です。

公益法人と一般法人の機関設計

法人格の比較表で概要を紹介しましたが、それぞれの機関設計について紹介します。なお、一般法人の場合で、文中に「法〇条」とあるものは「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)」を、公益法人の場合で、文中に「公法〇条」とあるものは「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」を表しますのでご留意ください。

  社団法人 財団法人
一般法人 《一般社団法人の機関設計》

-法定及び任意設置事項-
1 一般社団法人は、社員総会と一人又は二人以上の理事を置かなければなりません(法第35条及び60条第1項)。

2 一般社団法人は、定款の定めによって、理事会、監事又は会計監査人を置くことができます(法第60条第2項)。

3 理事会設置一般社団法人及び会計監査人設置一般社団法人は、監事を置かなければなりません(法第61条)

4 大規模一般社団法人(注9)は、会計監査人を置かなければなりません(法第62条)。

以上から、以下のような組み合わせが可能です。

〇大規模一般社団法人の場合
・社員総会+理事+監事+会計監査人
・社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

〇大規模以外の一般社団法人
・社員総会+理事+監事+会計監査人
・社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人
・社員総会+理事
・社員総会+理事+監事
・社員総会+理事+理事会+監事
一般社団法人の場合、法人規模に応じてかなり自由度の高い機関設計が可能だと言えます。

《一般財団法人の機関設計》

-法定及び任意設置事項-
1 一般財団法人は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければなりません(法第170条第1項)。

2 定款の定めによって、会計監査人を置くことができます(同条第2項)

3 大規模一般財団法人(注9)は、会計監査人を置かなければなりません(法第171条) 以上から、以下のような組み合わせが可能です。

〇大規模一般財団法人の場合
・評議員+評議員会+理事+理事会+監事+会計監査人

〇大規模以外の一般財団法人
・評議員+評議員会+理事+理事会+監事+会計監査人
・評議員+評議員会+理事+理事会+監事

一般社団法人と比較すると、機関設計の自由度が低い(=ガバナンス強化)ことがわかります。財団法人の場合、法人格の対象が財産自体であるため、より厳格な管理体制が求められるといえます。

公益法人 《公益社団法人の機関設計》

一般社団法人が公益認定を受けるには、公益法人認定法の基準に適合(公益認定基準)しなければなりません。その基準(法定事項)は以下の通りです。

1 理事会を置いていること(公法第5条第14号ハ)。
2 会計監査人を置いていること。ただし、政令で定める基準に達していない場合はその限りではありません(同条第12号)。・・・(注9)参照

以上から、以下のような組み合わせが可能です。

〔政令基準に達している公益社団法人〕
・社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

〔政令基準に達しない公益社団法人〕
・社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人
・社員総会+理事+理事会+監事

《公益財団法人の機関設計》

公益社団法人同様に公益法人認定基準があります。
1 会計監査人を置いていること。ただし、政令で定める基準に達していない場合はその限りではありません(公法第5条第12号)。・・・(注9)参照

以上から、以下のような組み合わせが可能です。

〔政令基準に達している公益財団法人〕
・評議員+評議員会+理事+理事会+監事+会計監査人 0

〔政令基準に達しない公益財団法人〕
・評議員+評議員会+理事+理事会+監事+会計監査人
・評議員+評議員会+理事+理事会+監事

社団・財団法人の各機関の権限と役割

社団法人及び財団法人における社員総会及び理事会並びに財団法人における評議員会の権限と役割について見ておきましょう。

機関名 権限と役割
社員総会 1 理事会を設置していない一般社団法人の社員総会は、「一般法人法」が規定する事項及び一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議することができます(法第35条第1項)

2 公益社団法人には、理事会を設置しなければなりません(必置規定:公法第5条第14号ハ)。

3 社員総会の専決事項 「一般法人法」が社員総会の決議を必要としている事項については、社員総会以外の機関が決定することはできません。たとえ定款で定めたとしても、その規定は無効となります(法第35条第4項)。専決事項は以下の通りです。
〇理事、監事、会計監査人の選・解任
〇定款変更
〇事業の全部譲渡
〇解散・合併の承認等

理事会 1 理事会の構成:理事会は全ての理事で構成されます(法第90条第1項)。一般社団法人場合は、理事会を設置するか否かは任意ですが、公益社団法人は理事会を設置しなければなりません(公法第5条第14号ハ)。また、理事会設置一般社団法人においては、理事は3名以上必要です。

2 理事会の権限:理事会は、社員総会の専決事項以外の業務執行の決定権限を有しています(法第90条第2項第1号)。
《業務執行に関する決議事項》
〇重要な財産の処分、譲受け
〇多額の借財
〇重要な使用人の選任・解任
〇従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更、廃止
〇内部統制整備に関する事項
《理事の職務の執行の監督》
〇理事会設置一般社団法人では、代表理事または代表理事以外の理事であって、理事会の決議によって理事会設置一般社団法人の業務を執行する理事として選任された者が業務を執行します(法第91条第1項)。理事会は、これらの業務を執行する代表理事等の職務の執行を監督しなければなりません。
《代表理事の選定及び解職》
理事会は、代表理事の選定及び解職の権限を有します。

評議員会 1 評議員会の構成:評議員会は全ての評議員で構成されます(法第178条第1項)。また、一般財団法人及び公益財団法人の必置機関です(法第170条第1項)。評議員は3名以上でなければなりません(法第173条第3項)。

2 評議員会の権限:評議員会は、「一般法人法」に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議することができます(法第178条第2項)。その他の事項については、理事会が意思決定を行います。 《評議員会の専決事項》
〇理事・監事・会計監査人の選解任、定款変更、事業の全部譲渡、解散、合併の承認等

NPO法人と社会福祉法人

次に、通称NPO法人と呼ばれる「特定非営利活動法人」及び「認定特定非営利活動法人」と、社会福祉法人について紹介します。

法人区分

特定非営利活動法人
(NPO法人)

認定特定非営利活動法人
(認定NPO法人)
社会福祉法人
根拠法令 特定非営利活動促進法(NPO法) 社会福祉法
目的・事業 特定非営利活動促進法別表(注11)に掲載された20事業 社会福祉事業
設立方法 所轄庁の認証後に登記して設立 NPO法人のうち要件を満たしている法人を所轄庁が認定 所轄庁の認可後に登記して設立
設立要件 社員10人以上(常時10人) 一定規模以上の資産 (注12)
議決権 1社員1票 理事会
意思決定機関 社員総会 理事会
役員 理事3人以上
監事1人以上
理事6人以上
監事2人以上
原則として理事の2倍を超える評議員
代表権 理事 理事
剰余金の扱い 剰余金の分配はできない 剰余金の分配はできない
税制面 収益事業は課税 収益事業は課税 寄付金の税額控除、みなし寄付金等が適用される 収益事業は課税 寄付金の税額控除、みなし寄付基金等が適用される
設立費用 無料 無料

(注11)特定非営利活動促進法別表

  1. 保険、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11. 国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展の図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県または指定都市の条例で定める活動

(注12)社会福祉法人の一定規模以上の資産

社会福祉法人の設立に必要な資産には、基本財産とその他財産、公益事業用財産(公益を目的とする事業を行う場合に限る。)及び収益事業用財産(その収益を社会福祉事業若しくは公益事業の経営に充てることを目的とする事業を行う場合に限る。)があります。

基本財産とは、社会福祉事業を行うために必要な土地・建物等の資産をいい、一部の特例を除き法人の所有でなければなりません。建物については、国庫補助金、独立行政法人福祉医療機構からの融資など建設に際して活用できる制度があります。

その他財産とは、施設の運営に必要な資産で、法人の設立に際しては、施設の年間事業費の12分の1(介護保険法上の事業等を主として行う法人を設立する場合にあっては、12分の2)以上に相当する額を、現金、預金等で準備しておく必要があります。

公益事業用財産とは、公益事業(公益を目的とする事業であって、社会福祉事業以外の事業を言います。なお、社会通念上は公益性が認められるものであっても、社会福祉と全く関係のないものを行うことは認められません。)の用に供する財産であり、他の財産と区分して管理する必要があります。

収益事業用財産とは、収益事業(法人が行う社会福祉事業又は公益事業の財源に充てる為、一定の計画の下に収益を得ることを目的として反復継続して行われる事業)の用に供する財産であり、他の財産と明確に分離して管理する必要があります。

社会福祉法人の必置機関の権限と役割

  理事会(必置機関) 評議員会(必置機関)
役割と位置付け 業務執行の決定機関
《担当事項》
〇社会福祉法人の業務執行の決定
〇理事の職務の執行の監督
〇理事長の選定及び解職
運営に係る重要事項の決議機関
《担当事項》
社会福祉法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議することができる(法第45条の8第2項)
決議事項 1 評議員会の日時及び場所並びに議題・議案の決定

2 理事長及び業務執行理事の選定及び解職

3 重要な財産の処分及び譲受け

4 多額の借財

5 重要な役割の職員の選任及び解任

6 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

7 コンプライアンス体制の整備

8 競業及び利益相反取引の承認

9 計算書類及び事業報告等の承認

10 理事会による役員、会計監査人の責任の一部免除

11 その他の重要な業務執行の決定

1 理事・監事・会計監査人の選任

2 〃           解任

3 理事・監事の報酬等の決議

4 理事等の責任の免除

5 役員報酬等基準の承認

6 計算書類の承認

7 定款の変更

8 解散の決議

9 合併の承認

10 社会福祉充実計画の承認

11 その他定款で定めた事項

人気・おすすめの法人形態

各種法人について解説してきましたが、おすすめの法人形態についてご紹介します。基本的なところでは、営利か非営利か、また、非営利の場合は公益法人を目指すのか否かによって選ぶべき法人形態は異なります。

 

営利法人なら合同会社

営利目的の事業を立ち上げ、法人化するなら合同会社がおすすめです。合同会社の特徴は3-1-1で株式会社との比較で解説済みですが、もう少し深掘りしてみましょう。実はいま、起業家が会社設立に当たって合同会社を選ぶケースが増えています。

会社の各年度の設立数を見てみると、株式会社では、2008年度の86,222件から、2017年度が91,379件と一定の伸び率が確認できます。この間の各年度においては、2009年度から2012年度にかけては80,000件程度で落ち着いていたのですが、2013年度に81,899件となって以降毎年度3,000件程度が増加し、2016年度に初めて単年度の設立数9万件台(90,405件)を記録しています。(法務省 商業・法人登記年次表2017年より)。

一方で、「合同会社」の各年度における設立数は、同じ資料によれば、2009年度の5,413件から2017年度は27,270件と約5倍に達しています。特に、2016年度は前年度より3,500件程度一気に設立件数が増加し、合同会社による起業がトレンドとなっていることを裏付けています。
また、近年の傾向として、有名な会社が株式会社から合同会社へ組織変更するケースも徐々に増え始めており、このような事象もまた、合同会社人気を底上げしているかもしれません。

《著名な合同会社》

  1. アップルジャパン合同会社(資本金:54億8000万円)
  2. 合同会社西友(2009年9月に株式会社から組織変更、資本金1億円)
  3. 日本ケロッグ合同会社(資本金10億円)
  4. アマゾン・ジャパン(2016年5月に株式会社から組織変更)

合同会社活用のポイント

  有利な点 摘要
経営に関する意思決定を迅速に行うことが可能。 株主総会や取締役会の決議が必要ないため、経営にかかる意思決定が速い。また、株主意見を反映しなければならないようなこともなく、経営の自由度が高い。
  会社運営の管理コストが低い。 株主総会や取締役会の開催費用、会計監査人の設置が不要。決算公告も不要で費用がかからない。
役員の任期がないため、役員の変更登記も不要であり、事務手続きも費用も少なくすむ。
  利益配分を出資比率に拘束されず自由に決めることができる。 定款で定めておけば、社員の利益配分を自由に行うことができる。
  大会社規制が及ばない 取締役会や監査役会、会計監査人、委員会等設置など、会社の形態や規模に応じた機関を設置する必要がない。また、会社危機の折は、破産更生法ではなく民事再生法の対象となるため、経営者の意向に沿った再建も一定程度担保できる。
  設立費用が安価 6万円~10万円で、株式会社の半分程度。

 

  有利な点 摘要
  金融商品取引所への上場ができないため、資金調達手段が制限される。 出資金は株式ではないため上場できない。
事業を行う上で、許認可が必要な場合、制限を受ける可能性がある。 許認可の取得において、株式会社であることや、取締役会設置会社である株式会社といった要件が付されるケースがある。
自治体やそれに準ずるような公共的組織との取引に当たって制約を受ける場合がある。 取引に際し、当該会社の機関決定にあたって、取締役会の決定を要件とするような案件がある可能性が高い。
合同会社という商号の知名度は依然として低いため、新規の取引等で敬遠される可能性が高い。 企業の信用度と言う意味では、様々な規制のある株式会社のほうが、経営の透明性と信頼性が高いのが実態。

このように、合同会社は起業家にとってはかなり魅力的な法人形態といえます。不利な点にあげた事項は、業種や事業特性によって該当する可能性がありますので、立ち上げようとしている事業を取り巻く環境や業界の慣習等について事前に調査をしておくことが必要です。

 

非営利法人なら一般(社団・財団)法人

非営利法人については、3-2非営利法人で主に公益法人と一般法人について解説しましたが、これらの非営利法人については、2008年12月1日施行の通称:公益法人改革三法施行により、一般社団法人と一般財団法人は、設立要件が株式会社等と同等となり、容易に設立できるようになりました。

従来の公益法人制度では、公益性と非営利性の2つが備わっている社団・財団に対して、主務官庁が設立を許可して法人格を与えるものでした。公益性がなければ法人格が認められませんから、法人格が認められた社団法人・財団法人は全て公益法人と呼ばれていました。新制度においては、法人格の取得と公益性判断とを分離し、当該の団体が非営利であれば、公益性の有無とは無関係に一般法人法の下で法人格が認められることになったのです。

この場合、主務官庁など監督官庁の関与はなく、定款を作成して設立登記を行なえば法人設立が可能となる「準則主義(注1)」が採られました。これにより、非営利であれば「同好会」や「同窓会」、「ボランティア団体」なども比較的容易に法人化することが可能になったのです。

したがって、営利を目的とせず、何らかの自己実現や公益性を備えた事業を始めようとするならば、まずは一般社団法人・一般財団法人を設立し、次に公益認定を受けるという手段も見えてきます。しかし、公益法人やNPO法人は、税制上の優遇措置が受けられるため認定要件が厳しくなっています。将来の公益認定を想定している場合は、一般(社団・財団)法人の設立時から、公益法人の要件を念頭に置き、事前に準備しておくことが肝要です。

個人事業主と法人の違い

個人事業主は開業や毎年の収支報告が簡単で、一方法人は複雑な手続きや費用が掛かるものの信用度が高く節税効果が得られます。今回は設立と税金面での違いの詳細を説明していきます。

 

設立面

①開業届出/法人設立届出書

独立や開業をするとき、個人事業主と株式会社とで同じ開業・設立を届出するのに提出書類の内容が大きく異なってきます。

  • 個人事業主の場合 …開業届出1枚に記載するのみで、添付書類は不要です。
  • 株式会社の場合  …法人設立届出は1枚に記載するだけですが、以下の添付書類が必要になります。

・定款のコピー、設立時貸借対照表、登記事項証明書、株主名簿

つまり法人の設立までには少なくとも届出を行うまでに定款と貸借対照表と登記を済ませておく必要があり、さらに源泉所得税関係や消費税関係の届出書やその他必要に応じて様々な書類の提出が必要です。また設立に際して収入印紙や認証・謄本手数等々で株式会社では約24万円かかりますが、個人事業主は費用が発生しません。

 

税金面

①所得税と法人税

個人事業主では収入から費用を引いた所得に税率がかかります。法人の場合は損益計算書でいう税引前利益に税率がかかります。
個人事業主で695万円から800万円の所得か、900万円以上の所得がある場合は法人税のほうが節税できます。

【税率比較表】

所得(法人税の場合税引き前利益) 所得税 税率 法人税 税率
195万円以下 5% 15%
195万~330万円 10%
330万~695万円 20%
695万~800万円 23%
800万~900万円 23.9%
900万~1,800万円 33%
1,800万~4,000万円 40%
4,000万円~ 45%

②消費税

個人事業主と資本金1,000万円未満の法人は消費税が設立から2年間は消費税の納付義務が免除されます。さらに年間収入や売上が1,000万円を超えない場合は設立して2年たった後も消費税を納付する必要はありません。つまり年間収入が1,000万円をこえた2年後の期から初めて消費税の納付義務が発生します。

③費用計上の範囲

個人事業主が経費とすることができるものは全て法人でも可能です。そのうえで法人の場合、本人や家族従業員への給与と退職金が経費にできます。また保険料も個人事業主の場合生命保険料は所得控除の対象で12万円が上限なのに対して、法人の場合は上限なく経費になるなどが代表例になります。

個人事業主と法人の選ぶ目安

独立・開業時点と“成りあがり”検討時点の二つのタイミングで個人事業主にするか法人にするかの選択ポイントを整理します。なお、成りあがりとは個人事業主が法人に組織形態を変更する事を言います。全体を通しての軸は“規模”と“信用力”になります。

 

事業開始時点での事業形態の選び方とは

①事業の種類

売上をいただくお客様が法人か個人かと継続的な取引になるか否かで分かれます。

  • 法人でかつ継続的な取引…取引が法人に限定される場合もあり、限定まではされなくても新規取引では難しくなります。
  • 法人で単発の仕事(事務所移転等)や、個人の長期の仕事(自動車の車検等)…コストや人間関係が重要になってくるため、個人事業主や法人である事は影響が少なくなります。
  • 個人の単発的な仕事(飲食店、理美容等)…法人個人を気にしていません。

②事業の見通し

事業の見通しで年間の所得が900万円以上を見込める場合は法人になる事をお勧めします。個人事業主で所得が900万円を越えた場合、所得税と法人税の税率差は10%と大きく異なってきます。また事業の拡大が見込める場合でかつ資金調達が必要な場合、個人事業主より法人であるほうが一般的には信用度が上がります。所得も少なく費用もできるだけ抑えて始めたい場合、個人事業主を選択する事をお勧めします。注意すべきは事業の見通しはあくまで見通しであり、見通しより悪くなるケースも発生します。一方、法人化すれば費用が掛かる事は間違いありません。見通しや事業計画を慎重に吟味の上で判断します

 

個人事業主から法人化する目安

事業の見通しが重要であることは、事業形態の変更(いわゆる成りあがり)を検討する場合でも同じです。所得が伸びてきて、来期の所得が900万円をこえる見込みが高い場合、法人に変更する検討目安です。

また資金調達の必要性が増えた場合も同様です。銀行などの金融機関からの借り入れはもちろんとして、増資やクラウドファンディングなどの手法も法人であるなら検討が可能です。ただし、資金調達は法人になったから調達が確実にできるというものではありません。個人事業主であっても事前に調査・相談を実施する事は可能です。出来るだけ事前に目ぼしをつける事は必要です。

さらに法人であれば事業の継承ができます。事業の永続性や引継ぎを検討した場合も一つの目安になります。

まとめ

自分の取り組もうとする事業及び将来の展開を考えたとき、世の中のトレンドや雰囲気だけで決めてしまうわけにはいきません。多様な法人形態がある中で、まずは営利か非営利かを決めることから始めましょう。個人事業主はスピーディーにかつ低コストで事業を始める際に向いており、いわゆるスモールスタートに最適です。一方、事業の永続性により信用を得る必要がある場合や、年間の所得が900万を越えるなど事業規模が一定以上になる事が見込める場合にはより高い節税効果が見込める法人を選択する事が最適です。

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