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NPO法人を設立するメリット・デメリット、手順、費用を一挙解説!

基本的に会社(法人)は、利益を得る目的で設立・運営されます。しかし中には、社会的な課題を解決する目的で法人を設立する方もいます。貧困や差別など、依然として国内でも社会的に解決すべき課題は多々ありますが、こうした課題を営利目的の法人が解決するのは難しい側面があります。そんな社会的な課題を解決する手段として、NPO法人の設立がしばしば活用されています。NPO法人を設立・運営することで、社会的な課題を解決しやすくなります。実際にこの記事の読者の方にも、NPO法人の設立を検討している方はいるかと思います。そこで今回の記事では、NPO法人を設立するメリット・デメリットや手順、費用などをくわしく解説します。「NPO法人を設立したいけど、メリット・デメリットやかかる費用などが分からない」という方は必見です。

NPO法人とは

そもそもNPO法人とは、一体どのような組織なのでしょうか?熟知している方はいるでしょうが、いまいちよく知らないという方もいると思います。NPO法人の設立にあたっては、NPOの意味やNGOとの違いなどは最低限知っておいた方が良いでしょう。そこでこの章では、NPO法人について最低限知っておくべき基礎知識をおさらいします。

 

NPO法人の定義

NPOとは、「Non Profit Organization」の略称であり、日本語に訳すと非営利組織という意味になります。非営利組織は、利益を組織のメンバー間で分け合うことを目的とせずに運営する組織です。つまりNPO法人とは、利益の獲得を目的とせずに運営する法人を意味します。

なおNPO法人と活動趣旨が正反対といえるのが、営利法人です。営利法人とは、社員や出資者の間で利益を分配する目的で事業を営む法人を意味します。株式会社や有限会社、合同会社などが該当します。事業を急成長させて大金持ちになりたいとか、人よりも経済的余裕のある暮らしがしたい、といった目的で経営するのが営利法人であるといえます。

つまりNPO法人は利益の獲得を目的とする民間企業とは違い、社会全体の利益を増やすことを目的に活動を行います。具体的には、ボランティアや環境保全、人権保護などを始めとした社会貢献に資する事業を行います。

私たち消費者はさまざまなニーズを持っています。そんなニーズの中には、営利企業や政府、地方自治体では対処しにくいものもあります。たとえば環境保全を考えると、営利企業にとっては木々を切り倒して商業施設を建てた方が、より多くの利益を得ることができます。そのため、市民に森林を守って欲しいというニーズがあっても、中々営利企業には対処してもらえません。一方でNPO法人は営利の獲得を目的としないため、こうした環境保護などの問題に取り組むことが可能です。私たちの住む社会全体の利益を考えると、NPO法人の存在は非常に重要なのです。なおNPOの活動は、法人化しなくても行うことが可能です。法人化せずに非営利の活動を行う場合は、一般的に「NPO団体」と呼ばれます。

多くの儲けを得て悠々自適に暮らしたり、社会的な地位を得る目的で会社を立ち上げるのも悪くはありません。ですが民間企業では行えない社会貢献を果たせるNPO法人を立ち上げるのも、自己実現や賞賛を得られる点でとてもやりがいがあります。会社設立を検討している方は、株式会社や合同会社のみならず、NPO法人の設立も選択肢に入れると良いでしょう。

 

NPOとNGOの違い

NGOとしばしば意味を混同されがちな組織に、「NGO」があります。NPOとNGOは一文字違いであるため、ほとんど同じ組織だと思われることがありますが、厳密には異なる組織の概念です。

NGOとは、「Non Government Organization」の略であり、日本語に訳すと「非政府組織」となります。特定の国にとどまらず活動する組織を意味し、貧困や飢餓といった国際的な問題に対して、国境や民族の違いに関係なく取り組みます。具体的には、国際赤十字や国境なき医師団などがNGOに該当します。

国連ではNGOの定義を正式に定義しており、この定義に当てはまったNGOは、国連の期間である経済社会理事会への参加資格が認められています。国連では、しばしば利害関係を巡って国家間での対立が生じやすいです。そんな中でNGOは、第三者の立場から各国の対立を抑制する役割を担っています。国連が認めた(参加資格がある)NGOは、現在約3,000~4,000あると言われています。ここ数十年で加盟団体が増えているため、今後も増していくと予想されます。

以上で述べたNGOの概要を理解すれば、NPOとの違いも明確になると思います。端的に述べると、NPOとNGOの違いはその活動範囲にあります。NPOは主に国内で社会貢献の活動を行う団体を指すのが一般的です、一方でNGOと言った場合は、国境を越えて国際的な問題に取り組む団体を意味するケースが多いです。地域活性化や里山の保全などはNPO、発展途上国の貧困問題はNGOとイメージすると違いが分かりやすいと思います。

NPOとNGOには上記のように違いがあるため、意味を混同せず使い分けるようにしましょう。間違って相手に伝えてしまうと、思わぬ誤解を与える場合もあるので注意しなくてはいけません。何かしらの社会貢献事業を行いたい場合は、NPOとNGOのどちらを設立すべきかをあらかじめ明確にするのが大事です。

 

NPO法人が行える業種

NPO法人を設立する際には、必ず注意すべき点が1つあります。その注意点とは、NPO法人の活動分野には制限がある点です。法律で指定された20分野以外の事業では、法人格を得た上でNPOの活動を行うことが許されないので注意しましょう。

NPO法人が行える20業種は下記になります。法改正により行える業種の数が増えたため、会社設立を検討する方にとっては追い風となっています。

  • 保険、医療または福祉の増進活動
  • 社会教育の推進活動
  • まちづくりの推進活動
  • 観光の振興活動
  • 農山漁村または中山間地域の振興活動
  • 学術、文化、芸術、スポーツの振興活動
  • 環境の保全活動
  • 災害救援活動
  • 地域安全活動
  • 人権擁護または平和の推進活動
  • 国際協力活動
  • 男女共同参画社会の形成促進活動
  • 子供の健全育成を図る活動
  • 情報化社会の発展活動
  • 科学技術の振興活動
  • 経済活動の活性化を図る活動
  • 職業能力の開発もしくは雇用機会の拡充を支援する活動
  • 消費者保護の活動
  • 前各号に挙げた活動を行う団体の運営もしくは活動に関する連絡、助言または援助活動
  • 前各号に挙げた活動に準ずる活動として都道府県または指定都市の条例で定める活動

上記20業種に該当すれば、1つのNPO法人で行える事業に制限はありません。つまり1つのNPO法人を設立した上で、複数の業種で事業を展開することが可能となっています。

なお、業種(事業内容)の追加や変更を行う際には、定款の変更手続きを実施し、所轄の都道府県や市町村等からの認証を得なくてはいけません。NPO法人の活動を行う上で、事業内容を変更したくなった際には忘れずに手続きを行いましょう。

 

NPO法人は利益を出してはいけないの?

最初にお伝えしたように、NPO法人は「利益の獲得を目的としない法人」です。では果たして、NPO法人は事業運営によって利益を出してはいけないのでしょうか?原価20円のジュースを販売する際に、20円で販売する必要があるのでしょうか?

結論から伝えると、利益を得ること自体は問題ありません。あくまで営利事業を行う旨を目的としたり、利益を社員の間で分け合うことが禁止されているだけです。そのため、事務所の家賃や通信費、交通費といった事業運営に必要な費用を利益でまかなうことは認められます。また社会貢献を目的とした本業以外に利益を得るための事業を行い、その事業で得た利益を本業に回すのも一つの手です。

NPO法人といえども、事業の運営には事業所の家賃をはじめとしてさまざまな費用がかかります。そのため、全く利益を得ないとなると、事業運営の資金繰りが立ち行かなくなり、社会貢献の事業を続けられなくなります。もしくは事業を継続するために、個々のメンバーがお金を出し合う形を取らざるを得なくなります。そのような事態を防ぐためにも、NPO法人を運営する場合でも最低限の利益は確保する必要があります。

ちなみに、NPO法人が収益を得る事業を行った場合、法人税の課税が行われる可能性があるため注意が必要です。

NPO法人を設立するメリット・デメリット

NPO法人の設立を検討する方の中には、メリットとデメリットが一番きになるという方もいると思います。株式会社や合同会社とは異なる法人の形態であるため、NPO法人設立のメリット・デメリットはいまいちイメージしにくい部分もあるでしょう。

そこでこの章では、NPO法人を設立するメリットとデメリットについて、それぞれ4つずつご説明します。

 

メリット①:株式会社よりも設立費用を安く抑えられる

NPO法人を設立する最大のメリットは、株式会社よりも設立費用を安く抑えられる点です。

株式会社を設立する場合には、定款の認証や設立登記といった手続きが必要となります。定款認証の手続きでは、認証手数料52,000円と収入印紙代40,000円(電子定款の場合は不要)が発生します。一方で設立登記では、原則150,000 円の費用がかかります。つまり株式会社の設立では、最低でも200,000円前後の費用が発生するのです。なお上記以外にも、印鑑の作成や会社の登記簿謄本の発行日などが必要となる場合もあります。

このように株式会社の設立には、多額の費用がかかります。設立当初は十分な資金力がないケースも多いため、設立費用の捻出に苦戦する人も少なくありません。また設立費用以外にも、資本金も必要となるため、経営者にはとても大きな負担がかかります。

一方でNPO法人の設立では、登録免許税が必要となりません。また、資本金については0円からの設立が可能となっています。株式会社の設立と比べて圧倒的に安く費用を済ませることができるため、経営者の負担は大きく軽減されます。会社設立の費用を安くした上で事業を始めることができる点は、NPO法人を設立する大きなメリットです。

しかし安くなるとはいえ、完全0円で設立できるケースはほぼないので注意が必要です。法人用の印鑑や登記手続きを行う際に生じる通信費など、最低限の費用は発生します。NPO法人を設立する際も、株式会社を設立する場合と同様に、あらかじめ設立にどのくらいの費用がかかるかを試算しておくのをオススメします。

 

メリット②: 税制面で優遇される

NPO法人の設立では、税制面での優遇も大きなメリットとなります。株式会社などの営利法人を経営する場合、稼いだ所得に対して法人税や消費税が課税されます。また領収書を作成した際は、印紙税と呼ばれる税金が課せられることもあります。

一方でNPO法人の場合は、税制面での優遇措置を受けることができます。たとえば法人税については、法人税法上NPO法人は公益法人と見なされるため、非営利活動で得た所得について課税されることはありません。ただし収益事業を行なって得た所得には課税されるので注意です。なお法人住民税の均等割については、原則支払い義務が発生します。

次に消費税についてですが、一部の取引を除いて営利法人と同様に納税義務が発生します。しかしNPO法人を設立してから2期の間は、消費税の納税義務が免除される上に、それ以降も課税売上高が年1,000万円以下であれば同様に免除されます。したがって、小さい規模でNPOの活動を行う限り、消費税の納税義務は発生しないと考えられます。

最後に印紙税についてですが、印紙税法においてNPO法人の事業に関わる領収書については免税されます。ただし一方で、契約書に添付する収入印紙については、通常どおり課税されるので注意しましょう。

また認定もしくは特例認定NPO法人の場合は、寄付した人物にも税制面の優遇措置があります。具体的には、所得税や住民税に関して免除などの措置を受けることが可能です。

以上のように、全てとまではいかないものの、NPO法人を設立すると税制面で大きな優遇措置を受けられます。手元により多くの利益を残し、その利益を社会貢献の事業に回せる点は、社会起業家の方にとっては追い風となるでしょう。

 

メリット③:法人として大きな事業を行える

個人でNPO活動を行う場合と比べると、法人化することでより大きなスケールでNPOの活動事業を行えるようになる点もメリットの一つです。

個人でNPO活動を行う場合、ものすごくお金を持っているケースを除いて、資金力の面で行えることに限りがあります。また、どれほど優秀な人であっても一人でできることには限度があるため、事業のスケールは大きくなりにくいでしょう。また個人で社会貢献活動をしていると、どうしても胡散臭いなどと思われる可能性はぬぐいきれず、協力して欲しい場面で協力を得られなくなる恐れがあります。

一方でNPO法人として社会貢献事業を行えば、さまざまな理由から大きなスケールで事業を行いやすくなります。たとえば地方自治体ではNPO法人を支援する目的で、事業の運営に役立つ補助金や助成金の制度を設けています。こうした制度を利用することで、大きなスケールで事業を行えるようになります。

また法人化することで、人を雇用した上でNPOの活動を行いやすくなります。一人では行える範囲に限りがありますが、二人、三人と人数が増えることで、行える範囲が大きくなっていきます。数百人~数千人規模のNPO法人にもなれば、大きな目標も達成しやすくなるでしょう。

そして法人化することで、個人的に活動する場合と比べて信頼性が高くなります。法人としての信頼性が増すことで、他のNPO法人や地方自治体、営利法人からの協力を獲得しやすくなるでしょう。さまざまな人や機関から協力してもらえるようになることも、NPO法人を設立する魅力の一つだと言えます。

以上のように、法人化することは事業のスケールアップに大きく寄与します。ある程度大きなことを成し遂げたいのであれば、法人化した上でNPO活動を遂行するのをオススメします。

 

メリット④:社会的信用を得られる

最後に紹介するメリットは、社会的信用を得やすい点です。日本においてNPO法人は、社会貢献の活動を公に行う組織であると認識されています。そのため、個人事業主と比較した場合はもちろんのこと、株式会社や合同会社、社団法人や財団法人などと比べても大きな社会的な信用力を得やすいです。

社会貢献を行う活動を行なっている点のみならず、法人の設立条件が厳しいという点でも、高い信用力を獲得しやすいです。後述しますがNPO法人の設立には最低10人のメンバーが必要となる上に、設立手続きに平均で半年程度かかり、活動範囲にも厳格な決まりがあります。「設立の条件が難しいのに立派に事業を行なっているから、このNPO法人は信頼しても良いだろう」と思ってもらえる可能性が高くなるかもしれません。設立自体が難しいことから、NPO法人に限定した補助金制度があったりと、その信用力はとても高いです。

つまりNPO法人という名称を名乗るだけで、事業運営のさまざまな場面で有利となるわけです。本格的に社会貢献の活動を行いたい方にとっては、この点は強い追い風となるメリットでしょう。

以上の4つが、NPO法人を設立することで得られるメリットになります。上記でお伝えしたようにNPO法人の設立には多様なメリットがある一方で、あらかじめ知っておくべきデメリットも存在します。NPO法人を設立する際には、メリットとデメリットの双方を考慮する必要があります。次項からはデメリットを4点ご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

デメリット①: NPO法人の設立には時間がかかる

NPO法人設立における一つ目のデメリットは、法人設立に時間がかかる点です。

株式会社や合同会社といった営利法人を設立する場合は、定款作成や設立登記などの手続きのみで済むため、通常1週間から2週間ほどで手続きを完了させることが可能です。一方でNPO法人の設立には、最低でも3ヶ月から半年程度の時間がかかります。

各手続きでどの程度の時間がかかるのかを具体的に説明します。まず所轄庁に提出する書類作成については、およそ14日から一ヶ月程度もの時間がかかります。加えて、住民票の請求や定款の作成といった手続きには、合計で1ヶ月半~2ヶ月程度の時間がかかります。こうした書類の作成・提出を終えると、申請書類の縦覧(一般市民に書類が公開されること)や審査が待っています。ケースバイケースですが、縦覧は2ヶ月間、審査には最大2ヶ月程度の時間がかかると言われています。

所轄庁での審査に無事とおったら、いよいよ登記申請を行います。登記申請が受理されるまでには最大で1週間前後の時間がかかると言われています。以上の手続きを全て合計すると、3ヶ月から半年前後となるわけです。ただし上記のケースはあくまで一般的なものです、場合によっては審査に時間がかかり、1年近くNPO法人の設立に時間がかかることもあります。

NPO法人の設立には多大な時間がかかるため、社会貢献の活動を行おう!と思ってすぐにできるものではありません。法人化した上でNPOの活動を行いたい場合は、早めに行動を開始する必要があるので注意しましょう。

 

デメリット②: 行える業種に制限がある

先ほどご紹介したとおり、事業として行える業種が限定されている点も、NPO法人を設立する上では無視できないデメリットとなるでしょう。

株式会社や合同会社を経営する場合、法律に反していない限り、基本的にはどんな事業でも行うことが可能です。一部許認可や免許が必要となる事業分野もあるものの、手続きさえ済ませれば事業を始めることが可能になります。

一方でNPO法人を設立する場合、「主たる活動内容」が先ほどお伝えした20業種に該当しない場合、基本的に法人を設立して事業を行うことができません。つまり経営者が行いたい事業内容が法律上の範囲に該当しなければ、法人化して活動することは許されないわけです。

社会にとって役立つ事業であっても、法律上定められた20業種に当てはまらなければNPO法人は設立できません。繰り返しになりますが、NPO法人を設立する際には業種について十分注意を払いましょう。

 

デメリット③: 社員が10人以上必要

NPO法人を設立する上で考慮すべき3つ目のデメリットは、設立時に社員が最低でも10人以上いる必要がある点です。なおNPO法人の社員は営利法人でいうところの従業員とは異なり、NPO法人の事業運営に参加する「正会員」の意味合いが強いです。また10人の中から、3名以上の理事と1名以上の監事を置く必要があります。

以上のとおりNPO法人の設立では、株式会社とは異なりある程度の人数が必要となります。頼りにできる人脈をあまり多く持っていない人にとっては、この点は手痛いデメリットとなるかもしれません。

ただし、NPO法人における社員の条件は比較的ゆるいです。外国人居住者や未成年でも社員として認められる上に、通常の社員であれば配偶者や子供といった親族でもなることが可能です。つまり家族をNPO法人の社員にできるため、実際には10人集めることは、人によってはそこまで難しくありません。

とはいえ、NPO法人の運営活動を本格的に行う上では、ある程度事業に関心があったり、職務の遂行能力がある人物を社員にした方が良いです。親族を社員にするのは最終手段として考え、極力事業運営のことを考えた上で社員を招き入れることをオススメします。NPO法人では、総会で1人1票ずつ議決権が認められています。ですので無造作に社員を増やすと、事業運営に関わる重要な議題を決定する際に支障をきたす恐れがあるので注意しましょう。

 

デメリット④: 正確な情報を外部に広く公開しなくてはいけない

最後にご紹介するデメリットは、正確な情報を規則に則って作成し、その情報を外部に広く公開しなくてはいけない点です。

まずNPO法人に限らず全ての法人に言えますが、法人化することでより複雑な会計処理が求められるようになります。特にNPO法人に関しては、収益事業とそれ以外の事業を区別した上で会計する必要が出てきたりと、会計処理が煩雑となります。よって会計の専門知識を持っている点はもちろん、NPOの会計にも精通している専門家の助力を得るのがベストです。地方自治体からNPO法人に対して監査を行うケースもありますので、会計書類は正確に作成しましょう。

またNPO法人の場合には、作成した資料について広く一般に公開する必要があります。収支計算書や貸借対照表に加えて、事業報告書や財産目録、役員名簿、正社員名簿といったものも情報公開義務の対象となっています。

つまり誰でも閲覧できる状態となるため、誰が見てもおかしい部分がない資料を作成・提出する必要があります。自社の社員で資料作成を行うのが不安なのであれば、税理士や会計士に依頼するのも一つの手です。

一点注意していただきたいのが、誰でも自社の情報を知れるというのは、業績の悪化などのマイナス面も知られてしまう点です。営利企業であれば、一部の大企業を除いて、業績などの情報を非公開にすることができるため、マイナスな情報を知られずにすみます。一方でNPO法人の場合はマイナス面も見られてしまうため、自社の評価が下がってしまうリスクがあります。NPO法人を設立する時には、自社の情報をほとんど隠すことができない点について、必ず考慮した上で設立可否を決定するのをオススメします。

以上がNPO法人を設立する上で考慮すべき4つのデメリットです。

NPO法人設立の方法・手順

株式会社や合同会社の設立方法は比較的知られているものの、NPO法人の設立方法や手順は意外と知られていません。通常の営利法人とは異なり、NPO法人の設立方法や手順は大きく異なるため、事前に確認しておく必要があります。NPO法人設立の手続きは、下記6つのステップで行います。

  • 活動内容の明確化
  • 設立発起人会の開催
  • 設立総会の開催
  • 設立認証の申請
  • NPO法人の設立登記
  • NPO法人設立後の諸手続き

この章では、NPO法人を設立する各ステップについて具体的に解説します。

 

活動内容を明確化する

NPO法人の設立で一番はじめにすべきなのは、活動内容の明確化です。何回もお伝えしましたが、NPO法人として活動するには法律で定められた20業種のいずれかに、行いたい事業が該当する必要があります。したがって、自分自身の行いたい事業が20業種のどれに該当するかを確認する必要があります。

自身の行いたい事業内容が20業種に該当していれば問題ありません。しかし場合によっては、20業種のいずれにも該当しないケースもあります。そうした場合には、選択肢が2つ考えられます。

一つ目は、NPO法人の設立を優先し、比較的自分が行いたいことに近い業種で事業を行う方法です。設立要件を満たすためNPO法人として活動できるようにはなりますが、本当に行いたい内容を行えない点がデメリットになります。二つ目の選択肢は、NPO法人の設立を諦めて、株式会社などの設立条件が緩い法人で事業を行う方法です。NPO法人としては活動できないものの、本当に自分がやりたいことを行えます。

どちらの方法が良いかは経営者次第ですが、慎重に検討することが求められます。一番良くないのは、あまり深く検討せずに見切り発車で事業内容を決めてしまうケースです。最初は良いかもしれませんが、後から事業の方向性が定まらなくなり、NPO法人を設立したこと自体を後悔するおそれがあります。後から後悔しても、それまでに費やした時間や費用は戻ってこないので注意しなくてはいけません。

3-2 設立発起人会を開催する

活動内容を明確化したら、いよいよ本格的にNPO法人の設立手続きに入ります。まず行うべきなのは、設立発起人会を開くことです。発起人とは、NPO法人を設立する人物を意味します。つまり設立発起人会とは、NPO法人を設立する人たちが集まって開く会合を意味します。

具体的に設立発起人会では、NPO法人設立の概要や活動の目的、法人の名称と代表者、NPO法人への入会金や年会費といった、NPO法人を運営する上で重要な事項について話し合いにより決定します。

設立発起人会で決定した事項については、のちのち定款や事業計画書などの作成時に活用します。したがって、一目見て話し合って決めた内容がわかるように、書類などにまとめておくことがオススメです。

 

設立総会を開催する

設立発起人会で重要事項を決定したら、NPOの社員(発起人)全員で設立総会を開催します。設立総会は、設立発起人会で話し合った内容について、正式に決定する目的で開催します。なお設立総会で決定した内容は、議事録に必ずまとめなくてはいけません。というのも、次のステップで行う設立認証の申請の際に、意思決定について記された議事録が必要となるからです。のちのちの手続きも踏まえ、議事録は忘れずに作成するようにしましょう。

 

所轄庁に設立認証の申請を行う

NPO法人設立のために次に行うべきは、所轄庁(都道府県や市区町村)へ設立認証の申請手続きを行うことです。株式会社や合同会社にはない手続きなので、NPO法人を設立する場合には十分注意しましょう。

なお設立認証の申請手続きに際しては、主に以下の書類を提出する必要があります。

  • 設立認証申請書
  • 定款(会社のルールであり、法人の目的や名称などを記したもの)
  • 役員名簿(各役員の報酬についても明記する)
  • 各役員の就任承諾及び宣誓書(法律で定められた欠格事項に当たらないことを誓約したもの)の謄本
  • 各役員の住所もしくは居所を証明する書類(主に住民票など)
  • 社員のうち10名以上の使命および住所もしくは居所を示す書類
  • 確認書(暴力団体や宗教団体には該当しないことを確認するもの)
  • 設立趣意書
  • 設立当初の事業年度及び次の事業年度の事業計画書
  • 設立当初の事業年度及び次の事業年度の活動予算書

設立認証を認めるかどうかは、原則3ヶ月以内に知らされます。認証されれば次のステップに進めますし、不認証となった場合でも指摘された部分を修正した上で再度認証申請を行うことができます。

なお認証申請を行うと、所轄庁は規則に基づいて「申請年月日」や「NPO法人の名称」、「代表者氏名」などの情報を一ヶ月間にわたって公開します。

 

会社設立の登記を実施する

設立認証の手続きを終えたら、営利企業と同様に会社の設立登記を実施します。なおNPO法人の設立登記に関しては、設立が認証された際に届く「認証書」が届いてから2週間以内に実施する必要があります。なお手続きを行う場所は、管轄の法務局となります。NPO法人の設立登記には限られた時間しか与えられないので注意しなくてはいけません。

限られた時間内で設立登記をスムーズに進める上でオススメなのが、設立認証について所轄庁が審査をしている時期に、設立登記の準備を進める方法です。設立認証の審査には、2ヶ月前後もの時間がかかります。その時間に何もしないのはもったいないため、前もって設立登記に向けて準備を進めるのがベストでしょう。

なおNPO法人の設立登記に向けて、事前に準備した方が良い主なものは下記になります。

  • NPO法人の印鑑
  • NPO法人設立時の財産目録
  • NPO法人の印鑑届出
  • 定款
  • 宣誓書
  • 認証書
  • 登記申請書
  • 理事の就任承諾書

なお、主たる事務所に加えて他の事務所を持つ場合には注意が必要です。具体的には、その事務所(他の事務所)と主たる事務所の法務局の管轄地域がことなる場合に、他の事務所の所在地でも設立登記の手続きが必要となります。

 

NPO法人設立後の諸手続きを済ませる

設立登記までの手続きにより、とりあえずNPO法人の設立は完了します。しかしNPO法人で実際に事業活動を行うには、設立後にいくつか行うべき手続きがあります。

具体的には、都道府県税事務所や市町村の税金担当の窓口に、法人設立の届出書を提出します。なおその際には、基本的に登記事項証明書や財産目録が必要となります。また、給料が発生する社員を雇用する場合には、各機関にそれぞれ以下の書類を提出する必要があります。

  • 税務署:給与支払事務所等の開設届出書
  • 年金事務所:新規適用届、被保険者資格取得届、異動届など
  • 労働基準監督署:保険関係成立届、適用事業報告書、概算保険料申告書
  • 公共職業安定所:保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届

NPO法人設立後に必要な手続きは、基本的に上記で完了となります。ただし、収益事業を運営する場合には、収益事業開始届出書と法人設立届出書を税務署にも提出する必要があります。設立してしばらく経ってから収益事業を行うようになった場合は、その時点で上記届出を実施する必要があります。

他にも、認定特定非営利活動法人になる場合などには、追加で手続きが必要となります。NPO法人を設立したら、置かれている状況に合わせてどのような手続きが必要となるかしっかりと確認しましょう。

NPO法人設立にかかる費用

法人を設立する際、起業家の方が最も気になる事柄の一つといえば、設立にかかる費用でしょう。事業を始めたばかりの頃は十分な資金を持っていないことが多いため、なるべく法人設立の手続きにお金はかけたくないですよね。

株式会社の設立では、基本的に20万円前後もの多大な費用がかかります。多少安く済ませられる合同会社であっても、ある程度の費用がかかるため負担は軽くありません。では一体、NPO法人の設立ではどの程度の費用がかかるのでしょうか?非営利企業であるため、株式会社や合同会社とは必要となる費用は大きく異なります。

この章では、NPO法人設立で必要となる費用についてわかりやすくご説明します。

登記手続きには一切費用がかからない

まず知って欲しいのが、NPO法人の設立では登記手続きに一切費用がかからないという点です。株式会社の場合、登録免許税として登記の際に15万円もの費用がかかります。つまり株式会社を設立する場合と比べると、最低でも15万円も設立費用を安くすることができるのです。

 

NPO法人の設立で必要な費用はどのくらい?

では一体、NPO法人の設立で必要となる費用は一体どのくらいなのでしょうか?

前項でお伝えしたように、登記手続きでは一切費用がかかりません。加えて、定款認証の手数料もかからない上に、最低資本金の制度もないので資本金を準備せずとも設立が可能です。つまり純粋に法人を設立するだけであり、かつ全ての手続きを自分自身で行うのであれば、実質0円でNPO法人を設立することができます。

ただし他の法人(株式会社など)と同様に、事業を運営するにあたっては法人の実印や役員の住民票、登記簿謄本、印鑑証明の取得が必要となります。NPO法人を設立する際には、これらの費用が発生する点に注意が必要です。

なお付随的に発生するこれらの費用は、具体的に以下の金額となります。

  • 法人の実印作成→5,000円~3万円程度
  • 会社の印鑑証明→1通数百円
  • 登記簿謄本の取り寄せ→1通数百円
  • 住民票の請求→1通300円(地域次第では変動)
  • 上記の習得に要する通信費や交通費→数百円~5,000円程度

つまりNPO法人の設立にあたっては、最低でも5,000円から数万円程度の費用がかかります。大した金額ではないものの、念のため確認しておきましょう。

 

現実的には行政書士にNPO法人設立を依頼するケースが多い

上記でお伝えしたように、自力でNPO法人を設立すればほとんど費用をかけずに済みます。しかし費用は安いものの、NPO法人の設立には多大な手間がかかります。設立認証や定款や事業計画書の作成、設立登記など、膨大な資料作成や手続きにおよそ数ヶ月の間時間と労力を費やさなくてはいけません。とくにNPO法人の場合、株式会社や合同会社と比べて手続きの数が多いため、起業家にとってはより負担が大きくなります。

限りある時間と労力を新しく始める事業に集中的に使いたい経営者にとっては、設立に時間と労力を奪われるのはあまり好ましいことではありません。そのため実際にNPO法人を設立する際には、法律の専門家である行政書士にNPO法人設立の手続きを依頼するケースが多いです。

行政書士とは、法律に関する国家資格の一つであり、特に書類作成の手続きに特化した業務を行います。具体的には公的機関に提出する書類作成や作成した提出手続きの代理などの手続きを行います。NPO法人の設立も行政書士の得意分野であり、設立認証や設立登記といった面倒な手続きを代行してくれます。

また会社経営や組織運営に関する経験が豊富な行政書士も数多く存在しており、そうした行政書士に依頼すれば、NPO法人の運営について助言を得ることもできるでしょう。

以上のようにメリットが大きいため、NPO法人を設立する際には行政書士に助力を得るのがオススメです。たしかに費用はかかりますが、費用以上に得られるメリットは大きいでしょう。

行政書士にNPO法人設立をサポートしてもらう場合の費用

行政書士に依頼すれば、面倒なNPO法人の手続きを大幅に任せることができ、経営者自身の負担を大幅に減らすことができます。しかし専門家に依頼する以上、ある程度の費用は発生してしまいます。ではいったい、行政書士にNPO法人設立の手続きを依頼した場合にはどのくらいの費用がかかるでしょうか?

結論から言うと、協力を得る行政書士事務所によって必要となる費用は異なります。安いところだと10万円程度で業務を請け負ってくれますが、高いところだと30万円前後もの費用がかかります。基本的には費用が多くかかる行政書士の方がサポートは充実していますが、安いところでもサポートが充実しているところもあります。ですので、まずは無料相談などの仕組みを利用し、行政書士の質を見極めてから実際に業務を依頼するのがベストです。

つまり行政書士にNPO法人設立の手続きを依頼すると、10万円~30万円程度の費用がかかります。こう聞くと、「結局は株式会社を設立するのと同じくらい費用がかかるのではないか」と思う人もいるでしょう。しかし株式会社の設立で行政書士に依頼すれば、同じくらいの費用が追加で発生します。裏を返せば行政書士からの豊富なサポートを得ても、株式会社を自力で設立する場合の費用と同じくらいなのです。

よほど資金力に不安がない限り、多少の費用は惜しまずに行政書士にNPO法人設立の手続きを依頼した方が良いでしょう。

まとめ

今回の記事では、NPO法人を設立するメリット・デメリットや、必要な手続きや費用についてご紹介しました。説明が長くなってしまいましたので、最後に今回お伝えした内容を要約してお伝えします。

そもそもNPO法人とは、利益を従業員の間で分け与えることを目的とせずに運営する法人を意味します。その具体的な活動内容には、医療や福祉、環境保全、災害救援、科学技術の振興などさまざまあります。なおNGOが国境をまたいで大々的に事業に取り組む一方で、NPOは主に国内で活動する組織を意味します。

NPOを設立すると、株式会社よりも設立費用が安い、税制面で優遇を受けられる、法人として大きな事業を行える、社会的信用を得やすいといったメリットを得られます。しかしながら、法人設立に時間がかかる点や、行える業種に制限がある点、社員が10人以上必要である点、正確な情報を外部に広く公開する必要がある点など、無視できないデメリットも多く存在します。NPO法人を設立する際には、メリットのみならずこうしたデメリットにも目を向けなくてはいけません。

NPO法人を設立する際は、まず活動内容を明確化し、設立発起人会や設立総会を開催する必要があります。総会によりNPO法人の方向性を決めたら、設立認証というNPO法人に独自の手続きを実施します。そして通常の法人と同様に、会社設立の登記を行えば、NPO法人の設立は完了です。なおNPO法人設立後にもいくつか行うべき手続きがあるので忘れないようにしましょう。

NPO法人の設立では登記手続きや定款認証にも費用がかかりません。そのため、基本的には数千円から数万円程度の費用で設立することが可能です。ただしNPO法人の設立手続きは煩雑で難しいため、現実的には行政書士に依頼するケースが多いです。行政書士に依頼すると、合計で10万円から30万円程度の費用がかかります。

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