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社団法人の事業報告・会計報告義務とは 方法や流れも

一般社団法人は、事業年度ごとに事業報告や会計報告の作成が法律で義務づけられています。もし、一般社団法人において事業報告などの作成を怠る、あるいは虚偽の内容で作成をすると罰則があります。

一般社団法人において毎期必ず実施しなければいけない事業報告や会計報告を作成する概要や目的、作成方法や流れなどについて解説します。

1 事業報告と会計報告

事業報告と会計報告

一般社団法人を設立したら、事業年度ごとの事業報告と会計報告の作成が必須です。しかも、ただ作成すれば良い訳ではなく、事業報告と会計報告を定時社員総会で実施しなければなりません。

一般社団法人を運営する場合には、事業報告と会計報告についての知識は必須になります。作成においてはテンプレートなども参考にしながら、初年度分を作成し、次年度からは前年度の作成テンプレートを活用して、内容や数値を実情に合わせていく形で作成します。

1−1 事業報告とは

事業報告は、毎年の事業年度を締めたタイミングでの『事業概況』や『財務状況』などを取りまとめた報告になります。事業報告とその付属明細書の作成は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」と呼ぶ)第123条に定められています。

⚫︎事業報告の目的

事業報告を作成する目的は、事業運営と経過や成果や現状などを一般社団法人の所有者である“社員“へ説明することです。社員は事業報告を受けて、今後の一般社団法人における重要事項の決定や業務運営上の適正さを確保や維持するための体制を決定していきます。

⚫︎事業報告の記載事項と基本方針

事業報告には、法人法施行規則第34条に定められた以下の2つの事項を記載しなければなりません。

  1. ①一般社団法人の状況に関する重要な事項(同法第2項第1号)
  2. ②業務の適正を確保するための体制の整備に関する事項(同法第2項第2号)

会社法施行規則上では、公開会社における株式会社には役員に関する事項なども含める必要性がありますが、一般社団法人においては該当しません。

上記の内容が含まれていることが求められますが、構成や順序構成においては各一般社団法人が決定できます。各種書類の記載は、法律で定められた記載事項は最低限の要請にすぎません。

一般社団法人の社員が状況を十分に理解し適切な判断をするのに資するために、法人の概況や法人の損益の状態を“正しく“かつ“簡潔明瞭“に示すための総意や工夫が求められます。

また、上記記載すべき事項は、それぞれの項目を分けて列挙することは必要ではありません。各種の書類のいずれかに記載してあることが求められます。その理由としては、関連事項を同じ文章にまとめることで、より社員の理解に有益な場合があるからです。

法律に求められる事項であっても、記載すべき事項がまったくない場合に記載は求められていません。ただし、記載すべき事項において記載すべき事項がないこと自体が重要な情報である場合がある点に留意が必要です。

⚫︎一般社団法人の状況に関する重要な事項とは

一般社団法人の状況に関する重要な事項については、事業年度における事業の経過及びその成果を記載します。

一般社団法人は公益事業とその他の事業など法人として実施する事業の区別をしている場合には、事業ごとに経過と成果を記載します。

事業の経過及び状況で記載する事項としては、以下のような記載内容になります。

  1. ①法人をめぐる経済環境
  2. ②事業を実施している業界の状況
  3. ③同業界の中における自社の生産や仕入れ及び販売などの状況と収益状況
  4. ④その他の重要事項(運営上の重要な契約の締結や解消、親会社や子会社に関わる事項や合併などの重要な組織再編、社員の異動や退任など、経営や組織運営や収益に影響を与える重要度に応じて記載を実施する)

⚫︎業務の適正を確保するための体制の整備に関する事項

業務の適正を確保するための体制を定めている場合には、概要及び体制の運用状況を記載しなければなりません。

業務の適正を確保するための体制として、監事を設置している一般社団法人かどうかで決定すべき事項が異なってきます。決定すべき事項は、以下のように定められています。

<監事設置一般社団法人の場合>

  決定すべき事項  
1 理事の職務執行が法令および定款に適合することを確保するための体制 共通
2 理事の職務執行に係る情報の保存及び管理に関する体制 共通
3 損失の危険の管理に関する規程その他の体制 共通
4 理事の職務執行が効率的に行われることを確保するための体制 共通
5 使用人の職務が法令及び定款に適合することを確保するための体制 共通
6 監事がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における使用人に関する事項 監査設置一般社団法人
7 上記6に該当する使用人が理事に対しての独立性に関する事項 同上
8 理事が上記6の使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項 同上
9 理事と使用人が幹事へ報告するための体制、並びにその他の監事への報告を行う体制 同上
10 上記9の報告実施者がその報告を実施したことにより不利な取り扱いをうけないことを確保するための体制 同上
11 監事の職務執行において発生する費用の前払いや償還手続きやその他の当該職務執行において発生する費用または債務処理に係る方針 同上
12 その他の監事が監査を行う実効性を確保するための体制 同上
13 理事会設置一般社団法人以外の一般社団法人で理事が2名以上いる場合には、その業務決定の適正さを確保するための体制 同上

<監査設置一般社団法人以外の一般社団法人の場合>

上記監事設置一般社団法人の場合のNo1〜5は監査設置の有無によらず共通の決定事項になります。

1 理事が社員へ報告すべき事項を報告するための体制
2 理事会設置一般社団法人以外の一般社団法人において理事が2名以上の場合には、業務決定が適正に行われることを確保する体制

⚫︎附属明細書とは

事業報告と合わせて作成が義務付けられているのが、附属明細書になります。附属明細書は、事業報告や会計報告の内容を補足するための従業事項を記載します。

附属明細書は、事業報告と会計報告のそれぞれに必要になります。しかし、実務上において別々の書類の必要はなく、合わせて作成することもできます。一方で、法人の規模などによっては事業報告と会計報告における監査の主体が異なる場合などは、付属明細書も分けて作成する方が実務に沿うことができます。

事業報告における附属明細書の内容については、「事業報告の内容を補足する重要な事項」(法人法施行規則第34条第3項)と具体的な規定はありません。そのため、あくまで補足であるため、事業報告と重複した内容の記載などは必要ありません。

1−2 会計報告とは

一般社団法人に限らず法人は、事業年度ごとに決算報告を行います。

決算報告において重要になるのは、その決算を計算する規則やルールを定めた会計基準です。会計基準は複数あり、法人の種類によって異なる会計基準に則っています。ただし、法人の種類によっては則るべき会計基準が定められているため、選択の余地がない場合もあります。

⚫︎一般社団法人の会計基準

一般社団法人が採用すべき会計基準には適用すべき会計基準はありません。そのため、公正妥当が認められる以下の3つの会計基準の中から一般社団法人の状態や先々の展開から選択を行うことができます。

  1. ①日本会計基準
  2. ②公益法人会計基準
  3. ③NPO法人会計基準

⚫︎日本会計基準とは

日本会計基準は、一般的な日本企業が採用している会計基準になります。(上場企業などの一部の大企業は国際会計基準*を採用しています。)

日本会計基準は日本独自の基準であり、日本企業や日本人にとって最も馴染みがある会計基準になります。

日本会計基準の原則は1949年公表の企業会計原則となり、それ以降日本社会と日本企業の変化に応じる形で変化を続けています。

企業会計原則には以下の3つの原則があり、日本会計基準はこの3つの原則に則っています。

  • ・一般原則
  • ・損益計算書原則
  • ・貸借対照表原則

多くの日本企業が作成する財務諸表の損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)は3つの原則に基づいて作成されています。

*国際会計基準は、別名IFRS(International Financial Reporting Standards)と言います。国際会計基準審議会が作成した会計基準になり、EU域内の上場企業に対して2005年に導入が義務付けられた会計基準になります。

国際会計基準では、貸借対照表を財政状態計算書という名称で呼ぶなど、日本会計基準とは異なるルールが採用されています。特に、IFRSでは時価の評価が重視されており、例えば売上において出荷ベースでの計上ではなく検収を基準とするルールとなっています。

⚫︎公益法人会計基準とは

公益法人会計基準とは、非営利型法人の多くが採用している会計基準になります。

一般社団法人においては、法人税法上の区分が非営利型法人と非営利型法人以外の法人=普通法人に区別されます。非営利型法人は、法人税法上においては公益法人と同等の取り扱いとなり、収益事業によって得た所得は課税対象となるものの、その他の公益事業によって得た会費や寄付金には原則として課税されません。

非営利型法人の中で、将来は公益認定を得ることを目指す法人であれば認定を得る前段階においても公益法人会計基準に則って会計処理を行うことを推奨します。

公益社団法人では、財務諸表の様式が異なってきます。具体的には、日本会計基準においては、損益計算書という収益性を示す財務諸表は、公益法人会計では、正味財産増減計算書という名称になります。

損益計算書も正味財産増減計算書のどちらも内容としては同じではありますが、営利法人の目的が利益になるのに対して公益法人の目的は公益事業の実施になるため、利益が出たかどうかではなく公益事業の実施において財産がどのように増減したのかについて注目するようになっています。

⚫︎NPO法人会計基準とは

営利を目的としない社会貢献を実施するNPO法人が望ましいとされる会計基準がNPO法人会計基準になります。NPO会計基準は、NPO支援センターが構成するNPO法人会計基準協議会が作成しています。

NPO法人会計基準では、活動計算書と貸借対照表と注記の3つによって財務諸表が構成されています。活動計算書は、日本会計基準における損益計算書(PL)に該当します。発生主義であり、収益と費用を日本会計基準と比較したときにより正確性が高いのがNPO法人会計基準の特徴の1つと言えます。

活動計算書は、収益の部と費用の部に分類された構成をとっています。収益の部では、資金の種類別に事業費と管理費に分類された費用が計上されます。また、事業費と管理費のそれぞれで人件費とその他の経費を区別して表示します。

複数の事業を実施している場合において、各事業の内訳をそれぞれ注記において明確に記載できます。その結果、資金利用を事業毎に明確にすることができ、活動実態を把握することができます。

⚫︎会計報告における附属明細書

事業報告と同様に会計報告においても付属明細書の作成が必要で、以下の内容について記載します。

<会計報告の附属明細書の記載事項>

  • ・重要な固定資産における明細
  • ・引当金における明細
  • ・その他会計報告の内容を補足する重要な事項

なお、重要な固定資産においては定款において基本財産と定められた資産(基本財産)と、特定の目的のために利用・保有または運用方法などが制約されている資産(特定資産)における明細について記載します。寄付によって増加した資産でかつその寄付者の意思によって寄付の使途が制約されている資産(指定正味財産)は基本財産か特定資産に区分して記載することになっています。

また、上記重要な固定資産における明細と引当金における明細については、財務諸表に注記されている場合には附属明細書では省略が可能です。事業報告と同様に会計報告と重複した内容を記載する必要はありません。

1−3 一般社団法人とその他の法人の義務の違い

一般社団法人だけが、事業報告や会計報告を義務付けられているわけではありません。日本で最も数の多い株式会社も事業報告書の作成は義務になっています。

なお、株式会社においては旧商法で「営業報告書」と呼ばれていましたが、2006年の新会社法において事業報告書に名称が変更されています。新会社法によって事業報告と計算書類(貸借対照表や損益計算書など)は分けて考えるようになりました。

株式会社における事業報告書の役割も、一般社団法人での役割と同じです。決算書のみでは十分に把握できない、法人の事業状況や役員や従業員についての重要事項などを補足する役割を担っています。事業報告書は、株主や取引先企業や金融機関などのステークホルダー(利害関係者)への情報開示ツールとして大きな役割を果たしています。

株主は、計算書類によって定量的な情報と共に事業報告書によって定性的な情報を手にして、重要な意思決定を正確に実施することに役立てます。

⚫︎会社法で全ての株式会社が義務付けられている

会社法によって、全ての株式会社は各事業年度において計算書類及び事業報告と付属明細書の作成を行う義務があります。株式会社には、株式を公開している会社と非公開の会社がありますが、全てを対象としています。

ただし、大企業と小企業では同じ内容を義務付けているわけではありません。株式を公開している大企業などは、多数の株主や複数の取引先や金融機関などのステークホルダーの数が多く、かつステークホルダーに与える影響も大きくなるケースも多くなります。

一方で、中小企業においては経営者自身が100%株主となっている場合が多く、取引先や金融機関などのステークホルダーの数も限られています。

そのため、ステークホルダーへの影響などを考慮して、会社法では会社の規模に応じた会社区分を設定して記載すべき事項を分けています。具体的には、『公開会社』『会計参与*設置会社』『会計監査人**設置会社』などの法人についての記載事項に規定が定められています。一方で、多くの中小企業はこれらの法人に該当しないため、事業報告自体の義務はあるものの記載事項の定めがなく簡潔に内容を記載することが可能です。

なお、具体的な事業報告における記載事項については、日本経済団体連合会のホームページの『会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型』を参考にすることができます。

*会計参与は、2006年の会社法で定められた役員制度で、取締役などと共に計算書類や事業報告などを作成・保管・ステークホルダーへの開示を行う職務を持つ機関になります。

**会計監査人は、企業の付属明細書と計算書類の会計監査を行う機関です。

2 報告の流れと作成方法

報告の流れと作成方法

一般社団法人では、事業年度が終了したタイミングから、計算書類と事業報告書とそれぞれの附属明細書の作成を開始します。

毎年のことになるので、流れを理解した上で順序立てて進めていく必要があります。特に、会計監査などで修正事項が発生した場合には、修正と再確認の手間と時間が必要です。

後述しますが、作成期限が設けられている報告になるため、正しくかつ無駄のないスケジューリングが重要です。

2−1 報告の流れ

事業報告の大きな流れは、以下のとおりです。

  1. ①書類の作成
  2. ②監事による会計監査
  3. ③決算承認理事会の開催・承認
  4. ④社員総会の開催・承認
  5. ⑤決算公告

一般社団法人においても株式会社においても決算公告の義務があります。一般社団法人においては、法人法第128条第1項で定められています。

ただし、決算公告の具体的な期限はありません。法律上は「定時社員総会の終結後遅滞なく」という記載になっており、具体的な日数が明らかになっていません。

実際に、決算公告を実施していない法人は一般社団法人にも株式会社にも存在し、罰則を課されていないケースもあります。ただし、決算公告を実施していない場合には「100万円以下の過料」が科されます(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第342条)。

法律上、義務や罰則がある決算公告になるため、自社で具体的なスケジュールや期限を定めておくことを推奨します。決算公告の期限を設けることで、その前段階である『書類の作成』や『社員総会の開催・承認』などもスケジューリングすることができます。

⚫︎書類の作成

法人における決算の対象期間となる事業年度は、一般的には定款に定められています。一般社団法人も同様です。多くは、1月や4月を区切りにしている法人が多くなっています。

事業年度の終了後、前章で説明した以下の書類を作成します。

  • ・会計書類(貸借対照表・損益計算書)
  • ・事業報告書
  • ・附属明細書
  • ・正味財産増減計算書(公益法人会計を採用している法人のみ必要)

⚫︎監事による会計監査

一般社団法人の監事は、理事が当該法人で実施する職務遂行を監査する責任を負います。監事を必ず置く必要はありませんが、理事会を設置する法人の場合には、監事を必ず置く必要があります。

監事は、理事の不正行為や不正行為を行う恐れがあると認められる場合には、理事会へ報告を行います。また、事業報告においては会計書類や事業報告書などの関係書類を監査する義務があります(社員総会への報告義務)。また、万が一書類に定款や法令や不当と認められる事項がある場合には、社員総会にて調査報告を実施する義務があります。

監事には職務を果たすために、一般社団法人の業務内容や財産の状況を調査できる権限や、理事や使用人に事業についての報告を求めることができます。一方で、義務違反*については責任を問われる立場にあります。また、監事は理事や使用人と兼任はできません。

*監事の義務は、「理事会への出席義務」「理事会への報告義務」「社員総会への報告義務」「善管注意義務」などがあります。

⚫︎決算承認理事会の開催・承認

理事会を設置している一般社団法人においては、監事の監査が終了した事業報告について決算承認理事会の開催と報告と承認を行います。

決算承認理事会を開催する定められた期限に、各理事に対して理事会招集通知を発出します。

決算承認理事会の承認と同時に、定時社員総会収集の決議を行い、社員総会の収集通知を社員に対して実施します。

また、決算承認理事会において、次年度の事業計画書や収支予算書などについても承認を行う一般社団法人も多くあります。事業計画書や収支予算書の作成は、必須ではありません。しかし、どちらも定款において定時社員総会において承認を得ることが定められている場合には実施する必要があります。

(事業計画書と収支予算書の詳細は、後述します。)

⚫︎社員総会の開催・承認

社員総会は、「定時社員総会」と「臨時社員総会」の2つに分けられます。この定時社員総会は、毎年事業年度末から一定の期間内に招集することが法律で義務付けられている社員総会になります(法人法第36条1項)。

一般社団法人の社員総会は、理事による招集と、招集においては社員への通知が原則として義務付けられています。

定時社員総会を開催する期間については、法律で明確な定めはありませんが、一般的には事業年度末から2ヶ月以内に開催します。法人税の確定申告は、事業年度末から2ヶ月以内に、社員総会によって承認を受けた決算報告書をもとに実施する必要性があります。そのため、確定申告に間に合うように社員総会の開催と事業報告と会計報告について承認を行います。

定期社員総会で事業報告と会計報告の承認は、普通決議事項になります。

普通決議事項は、以下の要件を満たすことで承認できます。

  • ・総社員の議決権の過半数を有する社員の出席
  • ・出席者んの議決権の過半数の承認

なお、定款において定足数緩和や決議要件加重などの個別の定めがある場合は上記の限りではありません。

なお、事業報告と会計報告の社員総会決議を『みなし決議』にすることも可能です。みなし決議とは、全社員が社員総会の決議事項を“書面“もしくは“電磁的記録“によって同意した場合に社員総会の開催・決議が実施しれたとみなすことを言います。そのため、みなし決議の手続きを行えば、実際に社員総会を開催する必要がなくなります。

⚫︎決算公告

定時社員総会で承認された計算書類の貸借対照表について、遅滞なく公告を実施します。公告は定款の定めに従って実施します。

決算公告の方法は、以下の3つの方法があります。

  1. ①官報
  2. ②日刊新聞紙
  3. ③電子公告

官報は国が運営する広報誌になります。日刊紙と比較して掲載価格が安いなどのメリットがあります。日刊新聞紙は掲載価格が官報より高い点などもあり、かつては上場企業などに限って利用されていました。現在、上場企業などは電子公告として自社のホームページに情報を掲載することが一般的になっています。電子公告は、決算内容の掲載を続けなければいけない手間などがあります。

2−2 事業報告実施におけるポイント

一般社団法人における事業報告のポイントについて抑えていきます。前述の通り、事業年度終了から3ヶ月以内に社員総会で決議された会計書類(計算書類)を元に確定申告を実施しなければいけません。

そのために、事業報告実施における代表的なポイントは以下のとおりになります。

<事業報告実施におけるポイント>

  1. ①決算に関連するスケジュールの段取りを組む
  2. ②収益事業と非収益事業の区分をつける
  3. ③監事監査を適切に実施する
  4. ④理事会・社員総会を適切に実施する

⚫︎決算に関連するスケジュールの段取りを組む

一番重要なのは、事業報告の開始準備段階から完了までを全てスケジューリングすることです。全体のスケジュールは完了期限から逆算して段取りを組んでいきます。

スケジューリングで気をつけたいのが、事業報告書や会計報告書の作成にかかる期間です。一度実施すれば大枠でどの程度の期間が必要かわかりますが、初めての書類作成の際には期間を長く取っておくこともポイントです。

また、監事による監査で指摘や修正が発生した場合に修正する余裕をスケジュールの中に組み込んでおくとスケジュールが狂うことが少なくなります。

加えて、理事会の開催は書類作成と監事の監査の終了スケジュールを見越して進めておくこともタイムロスを発生させないポイントです。

⚫︎収益事業と非収益事業の区分をつける

非営利型一般社団法人の場合で、かつ収益事業を行なっている法人については、収益事業と非収益事業を区分しなければなりません。収益事業については、申告納税が必要になります。

収益事業と非収益事業の両方を実施する法人では収入と費用を区分して、区分できない収入や費用については按分計算を実施します。

⚫︎監事監査を適切に実施する

監事を設置する一般社団法人においては、監事監査を適切に実施します。事業報告や会計報告の監事監査の目的は、『収入や支出が法人の本来の目的に沿っての実施』と『法人の規約に則った会計処理の実施』を理事と異なる観点から調査・評価することにあります。

なお、事業報告のタイミングでの幹事は会計書類(損益計算書や貸借対照表)などの必要書類が揃ったタイミングで開始します。一方で、監査は日常的な会計事務や業務運営についても監査対象にすることができます。

⚫︎理事会・社員総会を適切に実施する

理事会と社員総会については、成立の要件や手順があります。特に、招集と決議に必要な要件を満たすように段取りが必要です。

理事会や社員総会の参加メンバーが多くなる場合には、書面決議やオンライン開催など事情に応じた開催方法を選択していきます。

また、定期社員総会時に事業報告の承認のみではなく、特別決議なども合わせて実施する場合には開催や決議の要件が異なってくる点に注意します。

3 一般社団法人のその他の義務

一般社団法人のその他の義務

一般社団法人には、該当するケースにおいては事業報告の他にも作成しなければいけない書類があります。それが以下の4つになります。

  1. ①理事会議事録
  2. ②監査報告書
  3. ③事業計画書
  4. ④収支予算書

このうち、理事会議事録は理事会を設置している場合には必須になります。また、監査報告書も同様に監事を設置している場合には必須になります。

一方で、事業計画書と収支予算書は定款に記載があるかないかで作成の義務が発生するかしないかになります。ただし、事業計画書と収支予算書については新しい事業年度に対してどのように事業をしていくかということやそれに伴って資金需要や資金調達が必要になるのかなど事業運営において必須の書類になるため、作成するメリットが大きくなります。

3−1 理事会議事録

理事会を設置している一般社団法人においては、理事会の開催についてその議事録を作成することが義務付けられています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第95条1項)。理事会議事録は、書面もしくは電磁的記録で作成することが求められます(法人法施行規則第15条2項)。

また、作成した議事録は理事会の実施した日から10年間主たる事務所において備え置かなければなりません(同法第97条)。

⚫︎決算承認理事会も議事録が必要

前述の通り、事業報告や会計報告を社員総会で承認するためには、決算承認理事会の開催と決議が必要です。決算承認理事会での決議内容は作成される決算承認理事会の議事録に記載します。

また、定期的に開催される理事会についても同様です。一般社団法人の代表理事は最低3ヶ月に1回は自身の職務遂行状況の報告のために理事会を実施する必要がありますが、その際にも議事録を作成しなければなりません。

⚫︎理事会議事録の記載事項

理事会議事録の記載事項は、以下のように定められています(法人法第15条)。

<理事会議事録記載事項>

  • ・理事会開催日時と場所
  • ・理事以外が理事会の招集者として開催された場合にはその旨
  • ・理事会議事についての経過要領とその結果
  • ・決議事項に対して特別の利害関係がある理事の指名(特別な利害関係がある場合)
  • ・利益相反などの報告内容と意見の概要
  • ・(定款の定めがある場合)代表理事以外の理事会参加者による議事録への署名
  • ・(出席した場合)会計監査人氏名または名称
  • ・(存在する場合)理事会議長名

⚫︎みなし決議と理事会議事録

理事会を実際に開催せずに、理事全員の同意と定款に定めておくことで理事会の決議があったとみなす“みなし決議“を実施できます。決算承認理事会についてもみなし決議が可能です。

みなし決議においても理事会議事録の作成は省略できません。ただし、その議事録記載事項については、以下の通りに理事会を開催した際の理事会議事録より記載事項が省略できます。

<みなし決議の理事会議事録記載事項>

  • ・理事会決議があったとみなされた事項内容
  • ・決議事項を提案した理事の氏名または名称
  • ・理事会決議があったとみなされた日
  • ・議事録作成者の氏名

3−2 監査報告書

監事を設置している一般社団法人では、監事が事業報告と会計報告と付属明細書の監査を実施した監査報告書の作成が必要です(法人法第99条、同法197条)。

監査報告は会計監査人の設置の有無によって内容が異なってきます。多くの一般社団法人は会計監査人を設置していないため、ここで記載する事項は会計監査人の未設置を前提に解説します。

⚫︎監査報告書の記載事項

監事が会計書類と事業法とその付属明細書を受領した場合には、以下の事項について監査報告を実施しなければなりません(法人法施行規則36条、第45条、64条)。

<監査報告書記載事項>

  • ・監事による監査方法とその内容
  • ・会計書類に関する書類が、当該一般社団法人の財産と損益の状況についての重要事項を全て適正に表示されているか
  • ・監査における必要調査が未実施に終わった場合のその旨とその原因
  • ・追記情報*
  • ・監査報告作成日
  • ・当該一般社団法人の理事の職務遂行において、不正もしくはその疑いがある行為や法令や定款に対して違反する重大な事実を発見した場合に、その内容

*追記情報は、主に以下の内容があります。

  1. ①会計方針の変更があった場合に、その旨と変更に対する正当な理由
  2. ②重要な偶発事象などで、監事がその内容について説明を付す必要性があると判断する事項の内容
  3. ③会計書類の中で強調する必要があると監事が判断する事項の内容

⚫︎監事監査のスケジュール

監事監査は、会計報告書類と事業報告書などの必要書類全てを受け取った日から起算して、以下の2つの日付より遅い日付までに監査報告内容を通知しなければなりません。

  1. ①4週間を経過した日
  2. ②理事と合意して定めた日

ここでのポイントは、監事監査に必要な日数は4週間以上を設定しなければいけないという点です。理事と期限について4週間を下回る日付を定めることはできません。ただし、監事が4週間以内に監査報告を理事に通知を行うことはでき、かつその場合には監査を受けたことになります。

3−3 事業計画書と収支予算書

事業計画書と収支予算書は、今までの事業実績や収支実績から今後の事業や収支を計画・予想して、社員と理事並びに使用人に対して示すために作成します。

事業計画書は、事業上の戦略や収益見込みなどの計画を数値的に明確にすることが目的にあります。また、事業計画書があることで金融機関などの外部から資金調達をする上では必要になることが多い計画書になります。

⚫︎事業計画書の主な記載事項

事業計画書の主な記載時は、以下のようになっています。毎年の事業計画書においては、変更がない部分もあります。変更のない部分についてはあえて作り直す必要はありません。

<主な記載事項>

  1. ①創業者や主要メンバーのプロフィール
  2. ②ビジョンや理念
  3. ③事業内容
  4. ④サービスや商品の概要と特徴
  5. ⑤市場環境と同業他社
  6. ⑥販売やマーケティング戦略
  7. ⑦仕入れ先や生産・製造方法
  8. ⑧売上・利益についての計画
  9. ⑨必要資金と資金調達についての計画

⚫︎創業者や主要メンバーのプロフィール

創業者や主要メンバーには、社員や理事や監事や重要な使用人などが該当します。

プロフィールを記載することの目的は、創業者や主要メンバーの経歴や資格を知ってもらうことで、組織や事業運営や法人経営や資産運用についての信用や信頼を得ることにあります。そのために、経営や事業運営に関連する職歴や保有資格などを記載します。

どんなに良い事業であってもその事業を運営する人があってこそ、優秀な人材や資金が集まります。そのため、創業者や主要メンバーのアピールポイントを網羅するプロフィールにすることが大事になります。ただし、事業内容や経営に直接関係しない過去のアピールや、事実に基づかないアピールなどは信用を失う危険があるので注意が必要です。

⚫︎ビジョンや理念

一般社団法人は、非営利法人であるため事業を通じて社会や地域の人々に貢献したいといった思いや情熱が込められているケースも多くあります。

法人を設立して事業を通じてどのようなことを実現したいのかといったことをビジョン(企業の展望や未来像)や理念(企業としてあるべき姿)にして文章化することによって誰もが分かるようにします。

ビジョンや理念は、一般的には設立時から変わらず持ち続けるものになるため、毎年の事業計画書において変更する必要はありません。

⚫︎事業内容

事業の全体像を示すのが事業内容になります。事業の全体像を示すために、主に事業内容に盛り込まれる内容は以下の通りです。事業内容では、事業の全容を説明することを目的とします。そのため、記載事項自体は重複していくものの事業内容ではポイントを説明します。

  • ・目的
  • ・顧客ターゲット
  • ・商品やサービスの提供の仕方
  • ・特徴と魅力
  • ・現状と今後の重要な変化

一般社団法人の事業において収益を上げてはいけないわけではありません。また、事業を実施する上では、ターゲットとなる顧客にとって魅力的なサービスや商品を展開しなければ、事業やしいては法人の継続性や必要性がなくなります。そのため、事業内容において特徴や魅力についても十分に伝えられるようにします。

毎年の事業計画においては、すでに実施している事業内容について現状がどうなっているのか、今後の市場やターゲットの変化によって事業自体をどのように変えていくのかなどがわかるように記載します。

⚫︎サービスや商品の概要と特徴

サービスや商品は、事業において中核をなします。サービスや商品は、顧客のニーズの変化に応じて常に変化していきます。顧客にとって最良となるべくサービスや商品を変更していきます。

そのため、サービスや商品の概要や特徴も変わらない根本の価値や状況に応じて変更していく部分を記載します。

⚫︎市場環境と同業他社

市場環境は、常に変化します。市場環境を作る政治や経済や人口動態や技術変化などの大きな要素についての変化や動向をおさえます。その上で、自社が事業を行う業界についての消費者の動向や変化をおさえます。

同業他社は、自社が事業を行う業界で活躍する企業についてその特徴や変化をおさえます。同業他社を抑えることで、自社の特徴や強みを明確にできるようにします。

⚫︎販売やマーケティング戦略

商品やサービスの販売やマーケティングの戦略は、「どのように売るのか」ということを決定していきます。そのため、販売やマーケティング戦略の精度によって事業の成否は分かれてきます。

特に商品やサービスの競合が多く差別化が図りにくい業界においては販売方法やマーケティング戦略によって差が生まれます。

販売やマーケティング戦略は、毎年の事業計画書において一般的には変化することを求められる部分です。市場やターゲット顧客のニーズ変化や業界や競合他社の動向や変化、トレンドの変化などさまざまな変化の大きさや影響度に応じて販売やマーケティング戦略を適応させていきます。

⚫︎仕入れ先や生産・製造方法

仕入れ先や生産・製造方法は、「いかに作るか=いかにコストを適正化させるか」という商品やサービスの原価を決めていく重要なポイントになります。

仕入れ先や生産・製造方法の決定は、事業のコストを決定していく重要な要素になります。また、製造方法の変化によって新しい工場の建設や機器の導入などを行う場合など、資金計画に大きく影響する決定も多くあります。

仕入れ先や生産・製造方法に変化がない場合にも、世界情勢やインフレによって原料価格の増減や為替の影響などで仕入れ価格が変わってくる場合があります。このような場合にも、事業に与える重要度に応じて記載を行います。

⚫︎売上・利益についての計画

事業の変化に応じて、売上や原価がどのように変化し、その結果として利益がいくらになるのかを具体的な数値計画に落とし込みます。

売上や利益の計画は、事業や商品・サービスが複数ある場合にはそれぞれを分けて作成します。なぜならば、計画は実際の事業実態との差異を見ていく物差しになるからです。

計画通りに行くものは進めますが、計画と乖離していく場合には計画の変更や運営や運用の是正をしなければなりません。その時に、どこが乖離しているのかを見るためには、計画がある程度細かい方が発見が一目で分かります。

初めて作成する売上・利益についての計画は、一般的には同業他社の実績などを参考にしながら予想に基づいて作成されます。

一方で、繰り返し作成される事業計画書の中では、事業をすでに運用して売上や利益の実態があります。そのため、初年度以降の事業計画書では、売上・利益についての計画は、実態からの延長線に対して変化や成長を乗せて計画していきます。

⚫︎必要資金と資金調達についての計画

事業を行う上で必ず必要なのが、必要資金です。

事業を行うために必要な運転資金や金融機関などからの借り入れに対する返済資金と資金不足に陥らないための余剰資金を含めて、どのくらい資金が必要かを常に把握する必要があります。

そして、手元にある支出に活用できる現金が必要資金を超過しそうな婆愛には、資金調達を実施しなければなりません。

収支予算書は、一年の活動予定を資金面で予算化した書類になります。必要資金と資金調達についての計画は、収支予算書と同じ目的になるため、収支予算書を添付することで対応が可能です。

4 まとめ

社団法人 事業報告・会計報告義務とは

一般社団法人が、毎年実施することが義務付けられている事業報告や会計報告について解説しました。

事業報告や会計報告は、一般社団法人の理事や監事や社員などの事業運営の中核の役割をなすメンバーの意思決定に活用する資料になります。作成を適切かつ十分な事実を反映した資料になるよう、十分な時間と必要なスキルと責任感を持って作成にあたる必要があります。

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