社団法人も法人名義でクレジットカードを作れる?メリット・デメリットや作成方法も
会社など法人を運営する場合、様々な場面でお金の支払いが必要になりますが、その際に役立つのが法人用のクレジットカード(法人カード)です。現金での支払いから法人カードでの決済にすると色々と便利ですが、社団法人が法人カードを利用できるのかと疑問に思っている方もおられるのではないでしょうか。
この記事では、法人カードの特徴や、社団法人が利用できるかどうか、メリット・デメリット、法人カードの作成方法などのついて詳しく解説していきます。法人カードを作って組織や事業の運営を効率的に進めて行きたい方は、参考にしてみてください。
1 法人用クレジットカードと社団法人の利用
最初に法人用クレジットカード(法人カード)の主な特徴を確認していきましょう。クレジットカードとは、支払いの際に、現金をその場で支払わずに買物ができたりサービス等を受けたりするための決済に利用できるカードのことです。それらの代金は後でクレジットカード会社(カード会社)から請求され、銀行口座等で支払うことになります。
クレジットカードの利用は、店頭のほかにインターネットショッピング、公共料金、税金の支払いなど、さまざまな場面で使用されていますが、会社等の組織も様々な支払いで利用しているです。
クレジットカードはその持ち主(会員)の名義で登録され、その名がカードに記載されますが、クレジットカード自体の所有権は発行するカード会社にあります。つまり、カード会社が会員本人にカードを貸与しているという形態になっているのです。
従って、カード会員にはカード所有権はないため、夫婦や家族など親しい間柄の人であっても、カードの名義人以外の人が譲り受け、利用するということはできません。名義人本人がそれらの行為を承認し利用させた場合は、カード会社との契約違反になり、詐欺罪に問われる恐れもあるのです。
1-1 法人カードの名義と利用制限
法人カードの名義は基本的に個人名となるケースが多いです。法人なら会社自体などではなく申込みした会社等の代表者の個人名に、個人事業主ならその個人名、ということになります。
ただし、法人カードによっては、契約した会員本人以外の役員や社員が利用できる「追加カード」の発行が可能なタイプも多いです。なお、追加カードも個人の名義で登録され、その者以外は利用できません。
また、法人カードの中には、名義人の個人名のほか会社名が併記されるケースもあります。ただし、その場合でもカードの名義は記載されている個人であり、同じ会社の社員でも名義人以外は利用できないのです。
1-2 法人カードと個人カードとの違い
個人が利用するクレジットカードの機能と法人カードのそれとではいくつか違いがあります。その内容はカード会社によって多少異なりますが、大きくは以下の4点です。
- ⅰ 法人カードにはビジネス向けの付帯サービスが多い(各種サービスの優待、無料や低コストでの利用等)
- ⅱ 法人カードの利用限度額は大きい(ビジネスでの支出であるため100万円~500万円程度・審査で決定等)
- ⅲ 法人カードには基本的にキャッシング枠ない(貸倒リスクが大きくなりやすいから。キャッシング枠ありのカードもある)
- ⅳ 法人カードの支払方法は一括払いが多い(貸倒リスクが大きいため。なお、分割払い等が可能なカードもある)
法人カードと個人カードには違いがあることを認識・確認の上、利用するようにしましょう。
1-3 法人カードのタイプ
法人カードには、主に大規模企業の経営者を対象とする「コーポレートカード」や、主に中小規模企業や個人事業主等を対象とする「ビジネスカード」といったタイプのカードが提供されています。
各カード会社でコーポレートカードやビジネスカードのようなタイプが発行されており、その特徴の違いは各カード会社によって異なります。違いをあえて挙げると、前者の方が利用限度額で大きい傾向が見られる点です。
また、決済口座に関して、前者が法人口座で、後者が個人口座となるケースが多く見られます(カード会社やカードの種類で異なる)。なお、各種のサービス等の違いは、上記タイプよりは「一般・レギュラー」「ゴールド」「プラチナ」といったグレードによる方が大きいでしょう。
1-4 法人カードの役員や社員の利用
原則的に法人カードの利用は名義人だけの利用に限られます。そのため法人で追加カードを作る場合でも、利用する者を名義人にしなければなりません。この点は役員であっても社員であっても同様ですが、名義人の社員がそうでない他の社員に追加カードを貸すことは不可能です。
なお、その法人が何枚のカードを発行してもらえるかはカード会社によって異なるため、事前に確認しておく必要があります。追加カードも年会費が発生する場合もあるためよく確認しておきましょう。
1-5 法人カードの支払口座
法人カードの名義は、役員や社員に関係なく「法人に属する者の個人名」になりますが、法人の場合の決済口座は基本的に「法人名義の銀行口座」になるのが一般的です(カードの種類等により「個人名義の銀行口座」もある)。
従って、複数の追加カードが発行されていても、その支払はその法人口座になるため管理はしやすくなります。つまり、社長、役員や社員など複数者が法人カードを保有し使用した場合でも、その支払は一括してその法人口座から引き落とされるのです。
1-6 社団法人も法人カードを利用できる?
通常、社団法人も法人カードを利用できます。もちろんすべての社団法人が利用できるのではなく、各カード会社が設定している要件や基準などを満たしている場合に利用できるということです。
株式会社や合同会社等の会社、NPO法人や社団法人等の団体、といった組織形態により法人カードの利用が制約されることは一般的に見られません。通常、社団法人が法人カードの利用について制約されることはないのです。
例えば、株式会社ジェーシービーの規約を見ると、以下のように法人カードの利用が記載されています(一部内容を割愛)。
会員規約(一般法人用)
第1章 総則 第1条(法人会員とカード使用者)
1.カード発行会社および株式会社ジェーシービーが運営するカード取引システムに当社およびJCB所定の入会申込書等において、本規約を承認のうえ、会員区分を指定して申し込まれた官公庁、法人、社団、財団もしくはその他の団体(以下総称して「法人等」という。)または個人で事業を営む方(以下「個人事業主」という。)で両社が審査のうえ入会を承認した法人等または個人事業主を法人会員といいます。また、個人事業主である法人会員を個人事業主会員といいます。
⇒以上のように株式会社ジェーシービー(JCB)では、審査に合格した、官公庁、企業法人、社団・財団法人、その他の団体等の法人や個人事業主を同社の法人カードの利用対象としていることがわかるはずです。
その他のカード会社では、「当社が入会を認めた法人またはその他団体」を「法人等」として扱い、法人カードの利用対象とするケースが一般的に見られます。また、「社団法人」という組織名を挙げて利用を制限することも見られないのです。
なお、法人代表者を法人カードの名義人とする場合、社団法人の代表者が「代表理事」であるなら、代表理事がカードの本会員として入会し、その名義でカードが発行されることになります。カードの種類によっては、その本会員の追加カードとして理事や職員もカードを作ることが可能になるでしょう。
2 法人用クレジットカードのメリット・デメリット
ここでは社団法人等が法人カードを持つことでどのようなメリットとデメリットが生じるかについて確認しましょう。
なお、法人カードのタイプ等の違いにより、メリット・デメリットの内容も異なってきますが、一般的な内容を紹介します。
2-1 法人カードの主な利点
法人カードの利用により社団法人等では以下のようなメリットが期待できるでしょう。
1)経費処理の効率化
法人等が法人カードを利用して経費処理を行えば清算が効率化される上に誤りを防ぐことも可能です。
例えば、役員や社員では日々の業務で出張や接待などの現金支出を伴う活動も少なくありません。そうした費用の支出は社員等が立て替えるか、会社が社員等に現金を事前に渡す(仮払い)お金で支払います。
その後、社員等は立替分や仮払いを清算し会社は費用を計上することになるのです。しかし、法人カードでのその費用を決済すれば、こうした立替や仮払いの清算という余計な手間をかけずに済み、会社全体の経費処理の負担も軽減されます。
また、法人カードを使用すれば、カード会社から一括で請求されるため(明細書で毎月確認が可能)、社員等の清算漏れや計算ミスなどを把握でき、適正な経理処理の確保や資金管理にも有効です。社員にとっても領収書を紛失して経費計上できないといった問題もなくなります。
加えて今日では会計ソフトと法人カードの自動連携が進んでおり、カードの支払内容を自動で会計ソフトに反映させることができ、経理処理の効率化と負担の軽減にも有効です。
2)高額の支払いへの対応と安全の向上
法人カードの利用限度額はカード会社、カードの種類や法人・個人の状況などにより異なりますが、一般的に100万円~500万円程度の利用も可能です。この金額は個人用クレジットカードの利用枠よりも大きいため、予想外の高額支払にも対応しやすくなります。
海外での出張が長引いたり、想定外の高額支出が発生したりする場合でも法人カードならその場で迅速に処理できるわけです。また、法人カードを保有しているなら、個人カードで対応できない分の現金を持つ必要もなくなるため、安全が確保しやすくなるでしょう。
3)経費削減とキャッシュフロー向上に有効
オフィス用品や商材・副資材等の支払いを後払いで処理する場合、購入先の銀行座へ振込むといった作業が発生することもありますが、法人カードで支払えばそうした振込手数料をかけずに済みます。
また、法人カードにはビジネスで有効な各種サービスが多く提供されており、レジャー施設や宿泊施設などの優待割引などが受けられることも少なくありません。そうしたサービスを利用できれば、法人は独自の福利厚生サービスを提供する費用負担を低減でき、福利の向上にも繋げられます。
法人カードで経費等を決済する場合、毎月の一定日に銀行口座から引き落とされることになになるため、支払先へ振込む場合より遅く決済することが可能です。例えば、支払いの決済を2ヵ月後などで設定できれば、支払いの猶予が得られ資金不足の改善にも繋がります。
つまり、法人カードは、融資やファクタリング(売掛債権の売却)などの資金繰り対策として利用できるのです。
4)マイルやポイントの獲得
カードの種類等で違いがあるものの、法人カードも個人用クレジットカードと同様にポイント還元やマイル付与といった特典の付くケースが多く見られます。
法人カードでも出張費などのほか、備品・設備等の購入、水道光熱費等の公共料金や通信費などの支払いでポイントを得ることが可能です。そうして得たポイントを事務用品などと交換できれば経費の節約にも繋がります。
また、飛行機を使っての出張などの場合に法人カードを利用すれば、マイルも貯まり、それを航空券や商品券等に交換して利用すれば、これも経費の節約になるでしょう。
5)付帯サービスや保険
法人カードのタイプによっては、ビジネスで役立つ多様な付帯サービスや保険が提供されています。主な付帯サービスは、国内空港ラウンジの利用や飲食店等の割引などですが、グレードの高い法人カードになると、海外空港ラウンジの利用や旅行プラン・予約等のコンシェルジュサービスなどが提供されるケースも多いです。
また、法人カードには国内・海外旅行傷害保険等が付帯するケースも少なくありません。
6)ガバナンスの強化
法人カードを利用すれば、上記で確認したとおり、誰がいつ何を購入したかが明確になるため、社員個人と企業としての支払いを明確に区別できます。つまり、社員の支出が経費であるか、そうでないかの区別をより明確にすることができ、処理の誤りや不正行為を防止するのに役立つのです。
従って、法人カードの利用は、不適切な行為の発見や防止に貢献するため、企業のチェック機能を高める手段になります。
2-2 法人カードの主な欠点
あまり大きな短所とは言えないですが、法人カードにも以下のようなマイナス面があります。
1)審査による不合格
法人カードを利用するには、個人向カードと同様に審査を受けて合格にしなければなりません。なお、審査は申込んだ法人自体や個人が対象になるケースが多いです。従って、法人とその代表者等の個人の状況がカード会社の審査基準をクリアしないと法人カードは取得できません。
なお、カード会社の法人カードに関する審査基準は公開されていないため、絶対的な審査対策を取ることは困難です。ただし、一般的にはその法人の経営実績や財務状況のほか、申込者の信用情報などが審査されると見られています。
例えば、会社の業績で赤字が続く、申込者がクレジットカードの支払いで滞納したことがある、といったケースでは審査は厳しくなり不合格になる可能性が高くなるのです。
2)年会費が必要
カード会社やカードの種類によって異なりますが、法人カードにも年会費が徴収されるケースは多いです。
ビジネスカードなどの場合、年会費が無料といったケースも少なくないですが、上級グレード(ゴールドカードやプラチナカード)などでは1万円以上、10万円以上といった年会費が設定されるケースも見られます。
年会費の金額と、利用する際のメリット(利用限度額の大きさ、キャッシング枠の有無、ポイント還元率の大きさ、付帯サービスの内容等)の内容や自社での利用可能性等を踏まえてカードを選ぶことが重要です。
3)支出の誘発
法人カードを社員に持たせる場合、支出に関するルールを定め適正に指導しておかないと余計な支出を増やすことになりかねません。
カードを保有すれば現金で支払う必要がなくなるため、様々な面で高額な利用を増やす可能性を高めることもあります。例えば、交通手段や宿泊施設の利用において上位のクラスを利用しがちになる、といったケースです。
支出に関する運用ルールを社内規定で定めて社員に周知徹底させないと支出の増大に繋がりかねません。
4)リボ払い等での利子負担や管理の手間の増大
一般的な法人カードの場合、毎月の支払いは一括払いが採用されるケースが多いです。しかし、法人カードによっては、分割払いやリボルビング払い(リボ払い=設定した一定の金額で毎月に支払う方式)が利用できることもあります。
このリボ払い等には利子が発生するため、高額の支払いを長期に渡って行う場合、少なからぬ利子が発生し企業にとっては負担になるのです。また、リボ払い等にすると毎月の支払額を少なくすることができますが、長期間で支払うため、資金管理が複雑化します。
具体的には、経費の計上額と現金支出額とに差が生じるため、支払の残高を適切に把握しておかないと資金不足に陥る可能性を高めかねないのです。
5)ポイント還元率が低い
個人向けクレジットカードと比べ法人カードのポイント還元率は相対的に低いと言えるでしょう。ポイントの活用を重視する方の場合、法人カードよりも個人用クレジットカードを利用した方がお得になるケースが多いです。
3 法人用クレジットカードの申込みと審査
ここでは法人カードを作る際の申込みと審査について説明しましょう。
3-1 法人カードの作成方法
法人カードを作る際の申込手続を簡単に示します(カード会社等により多少異なる)。なお、法人カードを取得するにあたり、法人では銀行等の口座(個人事業主は個人口座)が必要です。
法人カードの申込みでは、一般的にオンライン手続と郵送手続で申込むケースが多いです。ここではオンライン手続の流れを紹介しましょう。
- ⅰ オンラインの申込フォームに入力(入会の申込み)
申込者は各カード会社のウェブサイトに設置されてあるオンライン申込フォームにアクセスし、そこで必要事項を入力します。一般的には氏名、住所、電話番号、職種、年収、営業年数などの入力が求められます。なお、ケースにより電話確認が実施されることもあるでしょう。
- ⅱ 申込書や必要書類の返送
上記の申込み後に指定の住所に申込書が送られ、それに必要事項を記入・捺印の上、必要書類とともに返送する、という形態が多く見られます。この場合での審査は、その返送後です。しかし、カード会社によっては必要事項の入力後に審査が行われることがあります。
必要書類としては、登記簿謄本(一般的には6カ月以内に発行されたもの)(または印鑑証明書)や代表者の本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等)のコピーが要求されます。ケースによっては決算書類などが求められることもあります(登記簿謄本や決算書が不要というカードもある)。
なお、必要書類の提出をWEB上で行うことが可能なカード会社もあり、その場合カード発行までの期間が極端に短くなるケースも少なくないです。 - ⅲ 入会審査
申込書と本人確認書類が返送されると正式な審査が実施されます。
- ⅳ カードの発行
審査に合格すれば入会が承認され、法人カードが発行され、オンラインフォームに入力した住所宛に発送されます。
- ⅴ カードの到着及び利用開始
カードの到着はカード会社によって異なりますが、審査結果の連絡後2~3週間程度で入手が可能です。早い場合では連絡後最短3~7営業日に届くケースも見られます。
3-2 法人カードの審査基準
法人カードの審査基準は各カード会社によって異なりますが、先に説明したとおり、業歴、業績状況及び財務状況や経営者(申込者)の信用状況などが主な審査対象となります。
・業歴
創業してからの期間の長さが評価対象の一つです。事業経験の長さがその企業の社会的信用を形成していることもあるため、短いよりは長い方が良い評価に繋がると見られています。
ただし、会社設立から間もない企業だから審査が不利になる・通らない、とは言いきれず、実際に設立してから1年以内の企業でも、法人カードが発行される例は少なくないです。
・業績及び財務状況
赤字決算が続いていないか、キャッシュフローに問題がないか、など企業の業績と財務状況が審査対象になると見られています。ただし、「赤字続きだから審査に通らない」や「黒字だから審査に通る」といった単純な評価で判断されるとは限りません。
黒字経営でもキャッシュフローの状態が悪い、赤字経営でも赤字が縮小傾向にあり資金繰りに問題がない、といった場合は深刻なマイナス評価にならない可能性もあります。ただし、赤字が続いている、債務超過に陥っているなどの場合は審査で不利になる可能性は高いです。
・経営者の信用情報
法人カードの審査では、経営者自身の信用情報が審査に影響を及ぼすと考えられています。クレジットカード等での支払いなどにおいて一定期間内に問題を起こしている場合、その方の評価は低くなり内容によっては審査に落ちることもあるでしょう。
クレジットカードの利用は、一般的に担保などを必要としない信用取引であるため、法人カードを利用する経営者等の信用情報は審査において重視されるのです。
なお、法人カードの審査に不安などがある場合、申込む前にカード会社に相談するとよいでしょう。コーポレートカードよりもビジネスカードのほうが利用(合格)しやすい、といった助言が得られることもあります。
ほかにも自宅に固定電話がない、会社独自の住所がない(自宅と会社の住所が同一等の場合)といったケースでは審査で不利になることもあり得ます。
3-3 審査に合格するためのポイント
法人カードの審査に合格しやすくするためには、以下のポイントに注意し、より良い状態にするように努めましょう。
●固定電話や会社独自の住所をもつ
個人事業主が申込む場合、携帯電話を保有していても固定電話がないと、事業の実在性が不明確だと判断される恐れがあるため、将来のことも考慮して固定電話を設置する方が賢明です。
なお、携帯電話のみで申し込む場合は、代表者の個人名義で保有できるビジネスカード等などの利用を検討する方が合格できる可能性は高まるでしょう。
また、個人事業主の場合、自宅と会社の住所が同じというケースも少なくないですが、事業の実在性の点で別々であるほうが審査には有利に働く可能性があります。会社を別に構える予定がある場合は、その時点で申込みを検討する方がよいでしょう。
●1年以上の業歴を経る
審査では会社の業歴も評価される可能性が高いため、決算を迎えていない企業等の場合評価材料が乏しくその分審査で不利になり得ます。そのため法人カードの申込みは、開業してから1年以上経ってから行うことも検討しましょう(1年以内で利用できているケースも少なくない)。
●個人は開業届けの提出後に申込む
個人事業主で税務署に開業届を提出することで、社会的に個人事業主として認識され社会的な信用も確保しやすくなります。そのため開業届けを提出した後に、法人カードに申込む方が合格しやすくなるはずです。
●財務状況を改善する
赤字・債務超過など財務状況が悪いと、支払い能力に問題があると評価され合格するのが困難になりかねません。そのため法人カードの申込みは、そうした財務状況の悪化が改善されてから行うほうが合格しやすくなるでしょう。
●代表者の信用状況の改善
法人カードでも申込者個人の信用状況が審査に影響を及ぼす可能性が高いため、信用状況に不安がある場合は問題を解決し一定期間を経てから申込む方が合格しやすくなります。
個人がクレジットカードやカードローンなどの返済を滞納したり遅延したりすると、その履歴が信用情報として記録され、法人カードの審査で不利になる可能性が高くなるのです。
そのためそうした返済滞納や遅延など(信用事故)は速やかに解消することが不可欠であり、法人カードへの申込みは信用事故の情報が消えてから行うことを検討しましょう。
4 法人用クレジットカードの選び方とおすすめカード
ここでは法人カードの選ぶポイントや、検討したい具体的な法人カードついて紹介しましょう。
4-1 法人カードを選ぶポイント
社団法人等の法人や個人事業主が法人カードを選ぶ際のポイントについて説明します。そのポイントが各法人(経営者)や個人事業主にとってより利用価値が高いかどうかを判断して選ぶことが重要です。
●年会費
法人カードを作ると保有するだけで年会費が徴収されるケースが多く見られます。年会費が無料の法人カードも多いですが、10万円以上といった高額なカードもあるため、そのコストと提供されるサービスの内容等を踏まえた選定が必要です。
例えば、上級グレードのゴールドカードやプラチナカードなどの場合、一般カードよりもサービスの種類が多く質も高い(サービス内容が豊富、付帯サービスが充実、ポイント還元率が高い、等)ですが、その分年会費も高額となる傾向が見られます。
従って、年会費の高さとサービス内容のバランスがその法人等にとって適していなければ、無駄にコストをかけることになるため、そのバランスを考慮して選定しましょう。
●申込基準
法人カードにはコーポレートカードやビジネスカードなどのタイプがあり、利用者(本会員となる者)が法人代表者や個人事業主のように分けられているケースも多いです。
また、コーポレートカードでも大規模企業と中小規模企業などに利用する法人のタイプを分けているケースも見られます。従って、法人カードには各々利用者に関する基準が定められているため、その内容に合致するかどうかが選定のポイントになるわけです。
なお、その基準(例えば、利用者の対象範囲が広い等)が緩いほど審査は優しく、厳格であるほど難しくなる可能性が高まるため、その点も気に留めておくとよいでしょう。
●利便性
提供されるサービスの豊富さや便利さで選ぶことも重要です。
・会計ソフトとの連携
法人カードによっては経理業務の負担を大幅に軽減できるタイプもあるため、選定の際にその点の考慮は重要になります。例えば、法人カード、銀行口座と会計ソフトを連携できれば、法人カードの支払データを会計ソフトに反映して経理処理ができます。
法人カードのデータから、経費の仕分けがある程度自動で処理されるため、経理担当者の作業は大幅に軽減されるのです(勘定科目や私的利用等のチェックで済む)。
・申込手続、カードの発行期間、海外利用等
また、申込手続がWEBで完結できる場合、申込者にとっては便利な上に法人カードが利用できるまでの期間が短くなることも魅力です。他には海外で利用できる地域やサービスの範囲などは、海外出張での利便性に直結するため重要な評価項目になるでしょう。
・追加カード
追加カードの発行上限枚数やその追加料金の内容なども利便性として考慮したい点です。法人では役員のほか、社員に対して、個人事業主では従業員や家族に対して、追加カードを発行できるケースは多いですが、その上限枚数や費用については各カード会社やカードのタイプで異なります。
そのためカードの上限枚数と費用についても事前に確認して検討することは重要です。
・ETCカード付
高速道路を利用した自動車での移動が多い場合には、ETCカード付法人カードなどが重宝するでしょう。
例えば、法人カードの中にはETCカードが複数枚発行できるといったタイプが提供されています。ETCでの利用はもちろん法人用のクレジットカードとしての様々なサービスや特典が付くタイプが多いです。
●利用限度額とキャッシング機能
法人の役員や社員が業務で支出する金額は高額になることも多いため、法人カードの利用限度額の大きさは選ぶ上での重要なポイントになります。特に海外に長期に出張したり、高額な商材を購入したりするようなケースでは利用限度額が大きいほど便利になるはずです。
また、海外などで現地の通貨による支払いが必要となった場合、法人カードにキャッシング機能があると重宝します。法人カードにはキャッシング機能を持つタイプは多くないですが、あれば選定する上での有力な候補になり得るでしょう。
●ビジネスに有効な特典や付帯サービス
・特典
法人カードのタイプによって、優待価格にて様々なビジネスシーンで利用できる便利なサービス(広告、レンタルオフィス等、ハイヤー、レンタカーや引っ越し等)や、接待を行う際に有利なサービス(高級施設等における優待価格での利用等)などが用意されています。こうした特典も選定する上での重要なポイントになるはずです。
・付帯サービス
法人カードには、空港ラウンジ利用や旅行傷害保険などのサービスが付帯しているものが多くあり、その内容が選定のポイントになり得ます。特に出張をする機会が多い役員や社員などにとっては、空港施設内や訪問する現地で受けられる付帯サービスの内容は重要です。
●ポイントやマイル
法人カードで支払いの決済をすると、決済額に応じてポイントやマイルがたまるケースも多いため、その点を考慮することも必要でしょう。ポイントやマイルは出張の旅費、事務用品等の購入や各種サービスの支払いなどに利用できることも多いため、上手く活用できれば経費の削減に有効です。
そのため法人カードが、ポイントやマイルがたまりやすいか、還元率が高いか、といった点の評価が重要になります。一般的に還元率1%以上(100円の利用で1円分のポイントがたまる)の法人カードは還元率が高いと見られており、選定の判断材料の一つになるでしょう。
4-2 こんな方におすすめの法人カード
ここでは法人カードの選定において重要となるポイントごとに適した法人カードをいくつか紹介しましょう。なお、法人カードの内容は変更されることもあるため、作る時点でご確認ください。
1)ポイント還元率の高さ
ポイントの利用を重視する方にとっては、ポイント還元率の高さが重要となるため、それに適したカードを2つ示しておきます。
・ポイント還元率:1.5%
一般的な法人カードのポイント還元率が0.5%程度であると考えると、Airカードは他の一般的な法人カードより3倍多く貯まりやすくなるはずです。
その他の特徴は以下のようになっています。
- ・年会費:本会員が5,500円(税込)、使用者が3,300円(税込)
- ・利用限度額:10万~100万円(審査で異なる)
- ・その他:会計ソフトとの連携が可能。カード利用によるポイント還元に加えて、リクルートポイントもたまる
- ・対象者:法人または個人事業主
●Mastercard® Gold Card™(ラグジャリーカード)
・ポイント還元率:1.5%相当
業界最高水準のポイント還元率を誇ります。
その他
- ・年会費:本会員が220,000円(税込)、家族会員が55,000円(税込)
- ・利用限度額:10~100万円(新規は50万円まで)。なお、利用限度額を超えても事前入金なら最高9,999万円まで可能
- ・国内旅行傷害保険:―
- ・海外旅行傷害保険:有り
- ・その他:1ポイントあたりJALやANA等の0.6マイルに交換可能。世界1300カ所以上の航空ラウンジの利用、ハイヤーでの送迎、高級ホテルや会員制ラウンジなどの利用。コンシェルジュサービスあり
- ・対象者:法人等の代表者または個人事業主
2)マイル還元率の高さ
飛行機での出張・移動が多い方にはマイル還元率の高い法人カードは有益です。マイル還元率とは、クレジットカードを利用した場合に、利用額に対して何%のマイルがたまるかの割合のことを指します。「付与されるマイル数÷クレジットカード利用額」で計算でき、例えば、利用額100円で1マイル貯まる場合は、1マイル÷100円×100%=1%になります。
●セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード
・マイル還元率:JALのマイル還元率1.125%
ショッピングの利用金額に応じて自動的にJALのマイルがたまる仕組み(マイル還元率1%)に加え、ショッピング利用金額に応じてたまる永久不滅ポイントがJALマイルに変換が可能で、そのマイル還元率は0.125%となっています。そのため、合計で最大1.125%のマイル還元率の利用が可能です。
その他
- ・年会費:年会費は22,000円(税込)*年間200万円以上のショッピングの利用で、次年度は11,000円(税込)に優遇
- ・ポイント還元率:通常0.5%、海外は1%(2倍)
- ・国内旅行傷害保険:最高5,000万円
- ・海外旅行傷害保険:最高1億円
- ・その他:コンシェルジュサービス。プラチナ会員限定の優待・特典・サービス。カード発行が最短3営業日
- ・対象者:法人代表者や個人事業主
●ANA JCB法人カード(一般)
・マイル還元率:基本1%
1000円のカード利用でOki Dokiポイントが1ポイント。1ポイント=10マイルが基本として付与されるため、マイル還元率は10マイル÷1000円×100%=1%が基本となっています。
ほかにもANAグループ便に搭乗するたびに、通常のフライトマイルに加え、区間ごとの割り増しボーナスマイルがプレゼントされます。
その他
- ・年会費:2,475円(税込)(初年度年会費無料)
- ・ポイント還元率:0.3%~0.47%
- ・利用限度額:10万~100万円
- ・国内旅行傷害保険:―
- ・海外旅行傷害保険:最高1,000万円
- ・その他:ショッピングガード保険が最高100万円(海外)。ほかに「ワイドゴールドカード」「ワイドカード」の2種類あり。Oki Dokiポイント1ポイントの変換レートは通常3円(最大4.7円相当)。
- ・対象者:法人または個人事業主
3)利用限度額の大きさ
利用限度額の上限が大きいほど、予想外の高額支出にも対応できるため安心できます。法人カードの場合、500万円程度までの枠設定が多いですが(審査で決定)、「利用限度額の一律の上限なし」や「事前入金による利用限度額のアップ」といった特徴のあるタイプがありますす。
同カードの利用限度額は最大500万円です。誰でも500万円の枠が設定されるのではなく審査によって申込者ごとに金額が設定されます。
その他
- ・年会費:永年無料
- ・ポイント還元率:通常0.5%(対象の三井住友カードを2枚保有すると1.5%にアップ)
- ・国内旅行傷害保険:―
- ・海外旅行傷害保険:最高2000万円
- ・その他:必要書類としての決算書や登記簿謄本が不要。タッチ決済が可能。券面のカード番号なし(ナンバーレス)。JR東海エクスプレス予約サービスの利用可能
- ・対象者:法人代表者や個人事業主
このカードの利用限度額は「一律の限度のない利用枠」という設定になっています。これは様々な経費の支払いを集約して支払えるように、一律の利用限度額が設定されず柔軟に利用できるようにするためです。
ただし、設備投資などで通常より高額の利用の場合は、事前の電話連絡が求められています。また、この高額利用の事前承認には所定の条件を満たさなければならず、誰でも利用できるとは限りません。
その他
- ・年会費:36,300円(税込)
- ・ポイント還元率:0.5%~1%
- ・国内旅行傷害保険:最高5,000万円
- ・海外旅行傷害保険:最高1億円
- ・その他:空港ラウンジサービス、ビジネス・ダイニング・コレクションbyグルメクーポン、手荷物ホテル当日宅配サービスなど。
- ・対象者:法人の代表者または個人事業主
4)コストパフォーマンスの良さ
法人カードでも、カードの種類等によって年会費が無料から年間10万円以上必要となるケースがありますが、ここでは年会費が無料や低額で有りながら全般的にサービスが整っているコストパフォーマンスの良いカードをいくつか紹介しましょう。
以下のような特徴があります。
- ・年会費:永年無料(代表者も使用者も無料)
- ・ポイント還元率:1.0%(ショッピング利用代金1000円で10ポイント=1ポイントは1円相当)
- ・国内旅行傷害保険:最高2000万円
- ・海外旅行傷害保険:最高2000万円
- ・ショッピング保険:年間補償限度額100万円
- ・対象者:法人代表者と個人事業主
内容は先に紹介した通りです。
●セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
- ・年会費:無料
- ・ポイント還元率:基本0.5%(条件を満たすと最大2.0%)
- ・国内旅行傷害保険:―
- ・海外旅行傷害保険:―
- ・その他:オンラインプロテクション(不正使用の損害補償)あり。利用限度額最高500万円。エックスサーバー優待等。海外キャッシングが可能。Apple Payの利用可能
- ・対象者:個人事業主またはフリーランス、経営者
5)追加カードやETCカードの発行で有利
複数の役員や社員で法人カードを利用したい、高速道路の移動が多いためETCカードを利用したい、という方に適した法人カードを紹介します。
- ・年会費:無料
- ・追加カードやETCカード:ともに最大999枚まで年会費無料
- ・ポイント還元率:―(ワイドゴールドは0.5%)
- ・国内旅行傷害保険:―
- ・海外旅行傷害保険:―
- ・その他:利用限度額30万円~1,000万円。分割・リボ払い可能。「ライフカードビジネス」の特典の利用が可能。
- ・対象者:法人代表者・個人事業主
- ・年会費:1,375円(税込)(オンライン入会は初年度年会費無料)
- ・追加カード:1枚目のカードの年会費が無料の場合、追加のカードも無料
- ・ETCカード:複数枚(年会費無料)
- ・ポイント還元率:0.5%
- ・国内旅行傷害保険:最高3,000万円
- ・海外旅行傷害保険:最高3,000万円
- ・その他:利用限度額10万~100万円。1回払いと2回払い。
- ・対象者:法人または個人事業主
●セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード
- ・年会費:無料
- ・追加カード:無料で9枚まで発行可能
- ・ETCカード:無料で5枚まで発行可能
その他の内容は先に紹介した通りです。
5 まとめ
社団法人でも法人カードを利用することが可能です。通常、法人カードは、法人の代表者や個人事業主などの個人がビジネス用として利用するための特徴が備わっていますが、多数のカード会社から様々な特徴を持ったタイプのカードが多く提供されています。
法人カードにはメリットもデメリットもありますが、社団法人の組織状況や事業の内容等に適したカードを選べば経費の削減や業務効率の向上などに役立てられるため、この機会に法人カードの保有を検討してみてください。