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起業するなら会社設立?NPO法人設立?メリット・デメリットまとめ

ソーシャルビジネスの起業においては、会社設立かNPO法人かという選択肢があります。それぞれの法制度と設立環境を見ると、会社は、会社法施行を機に設立のハードルが下がって起業が促進され、新興のベンチャー企業等の増加につながっています。一方のNPO法人についても、1998年に特定非営利活動促進法が施行されたことで、活動団体の信頼度向上につながり、2012年4月には、NPO法人の財政基盤強化を中心とした大幅な法改正が行われて、制度の整備が進みました。今回、制度面での熟度が向上しているこの両者について、それぞれのバックグラウンドと、設立に係るメリット・デメリットをまとめましたので、ぜひ、起業時の判断材料の一つとしてご活用下さい。

1 会社の種類

会社の種類

2006年5月1日に会社法が施行され、同法で規定された会社は、「株式会社」、「合名会社」、「合資会社」、「合同会社」の4種類となり(会社法第2条第1号)、同時に、施行から100年を経過した旧商法体系の抜本的な見直しを目的に、商法特例法と有限会社法が廃止されています。このため、この記事では、会社の説明をするにあたり、この4つの会社形態を対象にとすることとします。なお、これ以降、この記事において会社法の条項を記載する際には、「法〇条〇項〇号」の要領で記載します。

会社の種類

1-1 株式会社の特徴

株式会社の特徴

株式会社が出資者に対して発行した株式は、株主となった出資者に対して配当権と株主総会における議決権を付与することになり、この株式の保有数が多いほど会社に対して大きい影響力を持つことになります。しかし、現実的には、株式会社の株主は、経営そのものに携わることなく、会社が生み出す利益分配への関心度が高いのが特徴と言えます。

株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立があり、どちらも発起人が必要ですが、発起設立の場合は発起人一人で設立することが可能で、後述する機関設計も簡易で済むため、一般的な起業では「発起設立」が主流となっています。また、設立と同時に株主となる発起人の出資が必要となりますが、会社法の施行以降、出資額に大きな変化が生じています。

会社法施行前は、株式会社の場合、最低出資額の下限が1,000万円と定められていましたが、会社法施行を機にこの下限が撤廃され、出資金が1円でも会社を設立できるようになりました。会社の設立が容易になったことで、「起業」を促す効果が表れていますが、起業したからと言って、安易な気持ちで会社を運営することは危険です。

会社の設立によって、「法人格」という特殊な地位を得ることになりますが、これにより、事業を行っていく上で必要なあらゆる法的判断と意思決定の主体となることで、様々な法規制の下、社会的な責任を負うことにもなるからです。

また、この組織の管理・運営を含めた意思決定を行う「機関」が必要となります。取締役一人で運営する会社は別として、従業員を雇用し、規模が大きくなるにしたがって、社会とステークホルダーに対する責任が大きくなり、意思決定のプロセスを明確にすることが求められるからです。

株式会社における機関とは、「株主総会」、「取締役」、「取締役会」、「監査役」、「監査役会」、「会計参与」、「会計監査人」、「指名委員会等」などがあり、それぞれが組織を運営するための権能を有します。株主総会が必置機関である以外は、経営者の将来構想や会社の規模等に応じて、いくつかの組み合わせが可能であり、一定の要件の下で自由に編成することができます。

この機関を編成すことを「機関設計」と言い、各機関の名称と役割及び機関設計における組み合わせは以下の通りです。

(表1)株式会社の機関の役割

機関 役割
A 株主総会 会社の運営に当たり、重要な基本的事項を意思決定する機関。会社の取締役や監査役の選・解任、合併等の重要事項の決議等を行います。
B 取締役 取締役は、会社を代表し業務を執行する機関です。法的には、株主から経営を委任されるという「委任契約」が成立することになります。取締役は一人又は二人以上を置かなければならず、株主総会の普通議決で選・解任されます。
C 監査役 取締役(会計参与設置会社においては取締役及び会計参与)の職務執行を監査し、監査報告を作成する任務を負います。監査役は、いつでも取締役等に対して事業の報告を求め、業務や財産の状況を調査する権限を有します。
D 会計参与 会社法で創設された機関で、どのような株式会社でも任意で設置可能ですが、就任できるのは、「公認会計士」、「監査法人」、「税理士」、「税理士法人」という専門家に限られます。会計参与は、取締役と共同して財務諸表を作成し、会計参与は「会計参与報告書」を作成する任務を負います。
E 取締役会 業務執行についての意思決定を担うとともに、取締役の業務執行を監督する役目を負います。取締役会を設置するときは、取締役を3名以上置かなければなりません。また、取締役会を設置した会社は、監査役を置かなければなりません。
F 監査役会 株式会社の業務執行を監査する合議制の機関。株式譲渡制限を設けていない公開会社である大会社(注1)は、監査役3名以上からなる監査役会を設置しなければなりません。独立性・客観性を保つため、その半数以上は社外監査役でなければなりません。
G 指名委員会等設置会社 取締役が、指名委員会・監査委員会・報酬委員会という3つの委員会を編成し、その活動を通じて経営の監督を行うとともに、取締役会が選任する執行役が、取締役会から権限委譲を受けて業務執行を行う体制です。指名委員会等設置会社においては、執行役が業務を執行し、それを取締役が監督するという特殊な形態です。
H 監査等委員会設置会社 大会社か否か、公開会社か否かを問わず、監査等委員会設置会社とするためには、株主総会、取締役会、代表取締役、会計監査人を置かなければならない一方で、監査役を置くことができません。監査等委員は、取締役でなければならず、株主総会の決議において、監査等委員である取締役として、他の取締役と区別して選任されます。
I 執行役 Gで解説した指名委員会等設置会社において、取締役で構成される指名委員かにより業務執行を任命された機関。
J 会計監査人 計算書類(財務諸表)及び内部統制について監査を行う機関。公認会計士若しくは監査法人しかなれません。

(表2-1)株式会社の機関設計の組み合わせ(大会社の場合)

機関の組み合わせ 株式譲渡制限(注2)区分
1 取締役会+監査役会+会計監査人 譲渡制限なし(公開会社)
2 取締役会+指名委員会等+執行役+会計監査人
3 取締役+監査役+会計監査人 譲渡制限あり(非公開会社)
4 取締役会+監査役+会計監査人
5 取締役会+監査役会+会計監査人
6 取締役会+指名委員会等+執行役+会計監査人

(表2-2) 株式会社の機関設計の組み合わせ(大会社以外の場合)

機関の組み合わせ 株式譲渡制限区分
1 取締役会+監査役 譲渡制限なし(公開会社)
2 取締役会+監査役会
3 取締役会+監査役+会計監査人
4 取締役会+監査役会+会計監査人
5 取締役会+指名委員会等+執行役+会計監査人
6 取締役 譲渡制限あり(非公開会社)
7 取締役+監査役
8 取締役+監査役+会計監査人
9 取締役会+会計参与
10 取締役会+監査役
11 取締役会+監査役会
12 取締役会+監査役+会計監査人

(表1)と(表2)の組み合わせにあって、取締役会の設置が義務付けられる株式会社は以下の通りであり、取締役会設置会社には一部を除き監査役を設置しなければなりません。

(表3)取締役会設置義務のある会社(法327条1項)

取締役会設置義務会社 備考
公開会社 取締役会設置会社には監査役を置かなければなりませんが、公開会社ではない会計参与設置会社には監査役設置義務はありません(同条2項)。また、会計監査人設置会社は監査役を置かなければなりません(同条3項)。
監査役会設置会社
監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社

(注1)大会社
会社法2条6号に規定する大会社の要件は、次のいずれかに該当する株式会社を言います。
イ.最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること。
ロ.最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること。
なお、貸借対照表については、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間は、その成立の日における貸借対照表(法435条1項)を言います。

(注2)株式譲渡制限
株式会社は、定款において「譲渡による株式の取得については会社の承認を得なければならない」旨の規定を設けることができます。このような株式を譲渡制限株式(法2条17号)といいます。また、会社法においては、このような譲渡制限のない株式会社を「公開会社」と定義しています(法2条5号)。「非公開会社」という表現は、この公開会社の対義語として使用されているもので、法令上の言葉ではありません。

1-2 合同会社の特徴

合同会社は、会社法の成立によって生まれた会社形態であり、それまで存在しませんでした。国内における起業を促進するための起爆剤として、米国のLLC(Limited Liability Company)を参考に作られた仕組みです。

合同会社は、「持分会社」という「株式会社」とは異なる概念の会社です。持分会社の出資者は、会社法上「社員」と呼ばれますが、これは一般的な従業員という概念ではなく、出資者としての立場とともに持分会社の業務執行権(法590条1項)を有する立場であることから、株式会社で言う「株主(議決権)」と「取締役(業務執行権)」の立場を併せ持つ地位にあると言えます。

また、後述する「合資会社」及び「合名会社」を含め、持分会社には、株式会社のように法令で設置を義務付けられた「機関」を置く必要がありません。定款で規定できる範囲(これを定款自治と言います)が株式会社よりもはるかに広く、例えば、会社法で定められた事項であっても、定款で別の定めができるという高い柔軟性を備えています。

会社の所有と経営が分離され、絶えず株主から関与を受ける株式会社に比べ、合同会社のこの組織特性による「経営の自由度」の高さが、起業家にとって大きな魅力となり、近年は合同会社による会社設立が増加傾向にあります。

1-3 合資会社・合名会社の特徴

合資会社と合名会社は老舗の形態で、旧商法時代から存在する持分会社です。合資会社は、有限責任社員と無限責任社員で構成される会社で、設立にあたっては各社員1人以上の最低2人が必要となります。設立時社員の数で言えば、合同会社と合名会社は1人で設立できますので、合資会社特有のルールであると言えます。

合資会社は、いずれかの社員が退社した場合、無限責任社員が退社したときは「合同会社」に、有限責任社員が退社したときは「合名会社」になるという定款変更があったとみなされることになります(法639条1項及び2項)。

合名会社は、会社の債務について、債権者に対して他の社員と連帯して直接無限責任を負う社員のみで構成され、この無限責任社員1人でも設立できます。個人事業主が集まって共同事業化する経営に向いており、会社草創期の明治時代から利用されてきましたが、近年では、直接無限責任というリスクの大きさ敬遠され、新規設立はほとんどありません

1-4 各会社の特徴の整理

以上の4つの会社形態について、その特徴を対照させて整理すると以下の通りとなります。

(表4) 4形態の会社対比

項目 株式会社 合資会社 合名会社 合同会社
出資者の呼称 株主 社員 社員 社員
(注3)
出資者責任
間接有限責任 直接有限責任及び
直接無限責任
直接無限責任 間接有限責任
出資の目的 金銭・現物 金銭・現物・
労務・信用
金銭・現物・
労務・信用
金銭・現物
出資の
タイミング
法令上は定款の公証人による認証日以後(法30条1項) 合資・合名とも社員になる者は、必ずしも設立登記時までに出資の履行を完了する必要はありません。 定款作成後設立登記前に全額(法578条)
役員(社員)の最低数 1人以上 2人以上 1人以上 1人以上
法定の商号 株式会社 合資会社 合名会社 合同会社
会社所有と経営 所有:株主
経営:取締役
所有と経営一致 所有と経営一致 所有と経営一致
経営主体 取締役 業務執行社員 業務執行社員 業務執行社員
最高意思決定 株主総会 社員総会 社員総会 社員総会
代表者 代表取締役 代表社員 代表社員 代表社員
最低資本金 1円 金銭の場合1円 金銭の場合1円 1円
社員の加入 持分会社に新たに社員が加入する場合、必ず定款変更が必要です。
社員の退社 社員自らの意思でする「任意退社」と、会社法で規定された事由による「法定退社(当然退社)」があります。
持分譲渡 原則として自由(但し、定款で譲渡制限を設けることは可能) 《原則》他の社員全員の承諾がなければ、自身の持分を他人に譲渡できません(法585条1項)。《例外》業務執行社員でない有限責任社員は、業務執行社員全員の承諾があれば、その持分を他人に譲渡することができます(同条2項)。

(注3)出資者責任
有限責任というのは、会社が倒産した際に、出資者が自分の出資額を限度として責任を負うことを言います(間接有限責任)。出資金で賄いきれずに負債が残ったとしても、自分の出資額以上の責任を追及されることはありません。株式会社の株主責任と合同会社の社員の責任は有限責任です。

一方、無限責任は、会社財産で支払いきれない債務は、社員に支払い義務が残るため、債権者は直接その会社の社員に対して債務の履行を請求することができます(直接有限責任)。合名会社は無限責任を負う社員だけで構成され、合資会社は有限責任社員と無限責任社員で構成されます。

2 NPO法人とは

NPO法人とは

NPO法人という言葉は様々な場面で使われますが、そもそもNPOとは何かという言葉の整理から始めたいと思います。「NPO」は、NOT-Profit Organizationの頭文字をとったもので、「非営利組織」と和訳されています。「NPO」という場合、広義では、町内会や自治会、ボランティア団体、社団法人などが含まれますが、「NPO法人」と称する場合は、かなり限定されることになります。

「NPO法人」とは、NPOの枠組みで捉えられる組織の中でも、「特定非営利活動促進法(通称:NPO法)」に基づき、所定の手続きを経て認証を受け、法人化した団体を言います(特定非営利活動法人)。また、ボランティアに代表されるように、「非営利」という言葉に引きずられて、NPOと称すればなんでも「無償」で行うかの如く、間違った認識で語られることも少なくありません。

そもそもボランティア活動自体が無償である必要はなく、「有償ボランティア」という言葉が近年頻繁に使われるようになっています。有償ボランティアとは、無償で行うボランティア活動に対し、その直接の受益者が謝礼金を支払うボランティアのことを言います。これは、この記事の本旨から外れますので詳述は避けますが、この記事においては、NPO=ボランティアという認識は一旦捨てて下さい。

2-1 特定非営利活動とは

前述の通り、「NPO法人」とは、特定非営利活動促進法(以後、「NPO法」と言います。)に基づいて認証された法人ですが、特定非営利活動は、同法別表に20項目が指定されています(後掲の(表5)を参照)。

NPO法人の定款には、(表5)の20項目のうち、どの活動を行うのかを記載することになりますが、多く書けばいいと言うものではありません。認証に係る審査で関係が薄いと判断される項目は削除するよう指導されるのが常ですので、確実に実施できる活動を記載することが肝要です。

ここで、「非営利」という言葉の意味を整理しておきたいと思います。「特定非営利活動法人」と称すると、利益をあげてはいけないというイメージがつきまといますが、非営利というのは次のような考え方で整理できます。

事業を行うことによって収益をあげ、あげた収益から人件費を含めた経費を引いて残った剰余金は、利益として分配せず、次の非営利活動の資金に充てることで、収益事業を行ったとしても利益を目的とする活動ではない。

どのような事業であっても、収益がなければ再生産(活動の継続)はできず、再生産ができなければ事業として成り立ちません。事業として成り立たなければ、NPO法人は存続できず、存続できなければ、その目的を達することができないということになり、法人の設立自体が無意味なものとなってしまいます。

このように、営利事業と非営利事業の違いは、剰余金を利益配当として分配するか、再生産(活動の継続)資金として活用するかの違いにあると言えます。収益事業を行う限り、NPO法人であってもその部分には法人税が課税されますので、収益事業に関する税制上のメリットは多くはありません。NPO法では、本来の目的のために行う事業と、その他事業(2002年の同法改正までは収益事業)に分けていますが、法人税法で言う収益事業の定義はこれとは全く関係ないことに注意が必要です。

法人税法では、収益事業の要件として以下の3点をあげ、この全てに該当する場合は収益事業とみなされます。したがって、本来の設立目的のための事業ではあっても、一定の要件に該当するもの以外は課税されることになります。

  • ・法人税法施行令に定める34業種のいずれかに該当する。※この34業種の紹介は省略します。
  • ・継続的に事業を行っている。
  • ・事業場を設けて行っている。

2-2 事業目的で見るNPO法人

NPO法人の3つのタイプ

NPO法人は、その事業目的によっていくつかのタイプに分けることができます。もっとも多く見られるのが「ボランティア活動の発展型」です。阪神淡路大震災の折、全国からボランティアが駆け付けたものの、法人格のないことで活動に支障を来したことが契機となって、ボランティア団体のNPO法人化が進んだと言われています。

次に、収益事業を行うタイプで言えば、介護施設や障害福祉施設を展開する法人でしょう。これらは、会社組織で取り組むケースも多いため、認定審査の際に、NPO法人にこだわる理由を聞かれますので、確固たる信念と明確な設立目的を持たなければなりません。

三つ目のタイプとして、会社として本業を展開する中で自社の積み上げたノウハウを、環境問題や地域の抱える諸問題に活かすことを目的にNPO法人を設立するケースです。近年の建物に関する構造計算偽装や耐震偽装などへの対応から、建物のリスク診断やリフォームに関する知識向上を目指したセミナーを行うなど、一般人では知り得ない知識を普及啓蒙することで消費者を保護し、その活動の中で業界全体の成長を目指すというタイプです。

本業の会社本体で行うと単なる利益誘導となってしまうことでも、業界を巻き込み、NPO法人で活動を行うことで社会的責任を担うことにつながります。

2-3 NPO法人設立に必要な要件

NPO法人の認証を得るためには、審査に通らなければなりませんが、そのためには、法令上要求される要件を満たす必要があります。また、審査に通り,認証を受けたとしても、法人設立後も要件を満たしているか検証が続きます。営利を目的としないことは当然として、その法的要件について、事業目的と人的要件に分けて整理します。

2-3-1 特定非営利活動20項目に該当するか

特定非営利活動とは、NPO法・別表に定める20項目のいずれかの活動を行い、かつ、不特定多数の人の利益の増進に寄与する活動を言います。一つ目の要件は、特定非営利活動20項目にあてはまる活動を行うことであり、法に定められたその項目は以下の通りです。

(表5)NPO法・別表に規定された20項目の活動

項目 具体例
(1)保健、医療又は福祉の増進を図る活動 介護事業所、障害福祉関連
(2)社会教育の推進を図る活動 生涯学習、動物愛護
(3)まちづくりの推進を図る活動 商店街活性化
(4)観光の振興を図る活動 地域観光資源発掘、PR活動
(5)農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動 耕作放棄地の活用
(6)学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 文化財の保護、少年スポーツ
(7)環境の保全を図る活動 リサイクル等環境問題への取り組み
(8)災害救援活動 災害被災地支援活動
(9)地域安全活動 地域防災等の活動
(10)人権の擁護又は平和の推進を図る活動 戦争体験の語り部等
(11)国際協力の活動 海外の貧困問題への対応等
(12)男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 ジェンダーフリーへの取り組み
(13)子どもの健全育成を図る活動 学童保育、子育て支援、託児所等
(14)情報化社会の発展の図る活動 情報通信教育等
(15)科学技術の振興を図る活動 科学技術分野のセミナー開催等
(16)経済活動の活性化を図る活動 アントレプレナー養成等
(17)職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 職業訓練、キャリアプランニング講座
(18)消費者の保護を図る活動 食品の安全・安心活動
(19)前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
(20)前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県または指定都市の条例で定める活動

2-3-2 不特定多数の利益につながるか

要件の二つ目は、その活動が「不特定多数の利益」につながるかという点です。「特定の人のため」になってはいけません。たとえば、町内会が非営利活動を行なったとしても、NPO法人の認証は受けられません。特定の町内の人のみが参加する限られた地域での活動ですので、不特定多数にはあたりません。

一方、福祉関係の団体が、障害者や子ども、高齢者を対象としたサービスを提供する場合、これは、活動の対象を絞っているだけで、特定の人へのサービスにはあたらないため不特定多数の利益ということになります。以上のような点を考慮すると、「この法人は、〇〇市及び〇〇市周辺の生活支援サービス希望者を援助し、住民の安心・安全を守り、豊かな生活空間を創造することを目的とする」という活動ならば、認証の対象となります。

2-3-3 組織の人的要件

組織の人的要件

NPO法人を設立するには、「理事」、「監事」、「社員」が必要となります。理事は3人以上、監事は1人以上置かなければなりませんので、最低でも計4人の役員が必要となり、社員は最低10人以上とNPO法で定められています。なお、理事は社員を兼ねることができますので、理事3人が確保できれば、残り7人の人員を集めることで人的要件をクリアすることができます。この役員及び社員の役割を整理すると以下の通りとなります。

(表6)人的体制とその役割

区分 必要数 役割
理事 3人 法人の業務執行。理事会を開催して法人の意思決定を行う。株式会社の取締役の立場であり、基本的には、各理事が法人を代表しますが、組織運営の合理性を確保するため、代表者を選任するのが一般的です。この場合、代表権を持つ理事のみ登記することになります。
監事 1人 理事を監督し、法人の財産の状況を監査します。監査で不正行為や法令・定款に違反する行為を発見した場合は、社員総会又は都道府県庁に報告する義務を負います。なお、監事は独立性を確保するため、理事及び社員との兼務はできません。
社員 10人 NPO法人の社員は、社員総会で議決権を持つ人をいい、その法人の構成員という立場であり、合同会社など持分会社の社員と似ています。なお、一般的な会社で言うところの従業員は、NPO法人においては「職員」と呼称します。
〔役員の欠格事由〕NPO法第20条に規定された内容
NPO法人の役員の欠格事由は以下のとおりであり、いずれかに該当すると役員とはなれません。

  1. 1.成年被後見人または補佐人
  2. 2.破産者で復権を得ない者
  3. 3.禁固刑以上の刑に処せられ、その執行を終わった日またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  4. 4.NPO法、刑法などにより罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わった日またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  5. 5.暴力団の構成員等
  6. 6.設立の認可を取り消されたNPO法人の解散当時の役員で、設立の認証を取り消された日から2年を経過しない者

〔その他の制限〕
NPO法では、役員になれる親族の数が決められており、同族支配の防止が図られています。

  1. 1.各役員のそれぞれの親族が、1人を超えて役員の中にいてはならない。
  2. 2.役員とその親族をあわせた数が、役員総数の3分の1を超えてはならない。

2-4 資金調達をどうするか

NPO法人には出資金は不要ですが活動資金は必要です。資本金がない分、この資金の調達方法が重要になります。NPO法人と聞くと、国や自治体から補助金や助成金がもらえて、有志の人たちから寄附金がいっぱい集まるというような妄想を抱いている方もいるようですが、それは大きな間違いです。

補助金や助成金は国や地方公共団体に用意されていますが、実績を積み重ねて、社会に大きく貢献するようにならないと触れることもできないでしょう。活動資金は法人自らが調達することが基本です。考えられるのは、「会費」、「融資」、「事業目的による収益獲得」、「その他事業による資金獲得」です。それぞれの内容を整理すると以下の通りとなります。

NPO法人の主な収入源

(表7)主な収入源

項目 内容
会費 法人を設立するときに会費を設定する方法です。会員構成によって調達できる金額も違ってきますので、資金調達の主力とするなら、どのような層を会員の対象とするかを入念に検討しなければなりません。
融資 日本政策金融公庫は、NPO法人向けに「ソーシャルビジネス支援資金(企業活力強化貸付)」を設けて、積極的に支援しています。対象となる事業目的は、「保育サービス事業」、「介護サービス事業」、「社会的課題の解決を目的とする事業」とし、融資額は、担保無しで4,800万円、担保有りで7,200万円です。
事業目的での収益獲得 2-2で事業目的について解説しましたが、介護施設などを営み、収益をあげて活動資金を確保し、さらに活動を活発化させるというサイクルを事業とするケースです。このような事業は、運転資金を含め、日本政策金融公庫の融資を受けられますので、事業を収益源として確立するまでの資金手当ても可能です。
その他事業による収益 事業目的とは何の関係もない事業によって活動に回すための資金を確保するケースです。法人税は課税されるものの、自力での資金調達手段としては有効です。

2-5 NPO法人設立のながれ

事業目的や人的要件、資金調達手段等の構想が固まり、NPO法人設立の具体的な手続きに入る場合、その全体的な流れを整理すると以下の通りとなります。

(表8-1)NPO法人設立スケジュール

順番 手順 内容
1 申請書類(案)を作成する (表8-2)参照
2 1の(案)を持参して事前相談 都道府県の担当窓口で書類をチェックしてもらいます。
3 設立総会を開催する 設立総会を開催して、法人設立の意思決定をします。
4 申請書類を作成する 事前チェックを受けた申請書類を完成させ、関係者の押印を受けます。
5 申請書類を提出する 都道府県の担当窓口へ書類を提出します。
6 ※縦覧期間 書類が受け付けられると、公告され、1か月間一般に公開されて異議や意見等を受け付け調査する期間です。
7 ※審査期間 縦覧期間終了後、審査の期間に入ります。都道府県によってこの期間は異なりますが、都道府県は受理日から3カ月以内、縦覧期間後2カ月以内に審査をしなければなりません。
8 設立認証の決定 審査が終了し認証されると、認証書が郵送されます。
9 決定通知
10 登記して「NPO法人成立」 認証書が到達した日から2週間以内に法人設立登記をしなければなりません。登記が完了して法人成立です。
11 登記完了届の提出 登記後、法務局で登記事項証明書を取得し、これを添付して都道府県へ「設立登記完了届出書」を提出します。

(表8-2)NPO法人設立申請に必要な書類一覧

書類 概要
1 設立認証申請書 都道府県のサイトからダウンロード。
2 定款 都道府県に用意された「モデル定款」をダウンロードして作成。
3 役員名簿 役員名簿と、役員のうち報酬を受ける者の名簿を作成(都道府県のサイトからダウンロード可能)。
4 各役員の就任承諾書及び宣誓書の謄本 就任承諾書:NPO法人の役員に就任することを承諾する旨。宣誓書:役員の欠格事由に該当せず、親族の排除についても違反しないことを誓約する内容。
5 各役員の住所又は居所を証する書面 申請前6カ月以内発行の住民票を添付。
6 社員のうち10人以上の者の名簿 設立要件の一つである「社員10人以上」の確認が目的。
7 確認書 NPO法の所定条項に定められた、宗教活動や政治活動を行うことものではないこと、暴力団関係者ではないことなどを証するための書面。
8 設立趣意書 現状の問題点、原因、解決するための方法、法人の社会的意義、NPO法人を設立する理由とその決意等を記載する。
9 設立についての意思決定を証する議事録の謄本 法人設立意思の確認、役員に関する議案審議及び議決、事業計画書及び活動予算書審議及び議決、確認書の内容確認、議事録署名人の選任、定款、資産等の確認。
10 事業計画書(設立年度及び翌事業年度分) 事業内容の実施予定や従事者の予定人員、受益者の範囲、支出見込みなど、2年度分を作成。
11 活動予算書( 〃    ) 一般的な会社の収支計画。

3 会社を設立するメリット・デメリット

会社を設立するメリット・デメリット

会社設立においては、出資者責任の選択の段階で、株式会社と合同会社に絞られます。出資者責任以外でこの両者をみると、税制面での違いはありませんが、起業という視点に立てば、設立費用(後掲)の安さ、機関設計や組織運営の柔軟性という面では合同会社のメリットが大きいと言えます。合同会社と株式会社のメリット・デメリットについて整理します。

3-1 合同会社のメリット・デメリット

(表9)合同会社設立のメリット

メリット
1 株式会社で必要な公証人による定款認証手続きが不要であるなど、設立手続き自体が簡略化されています。設立費用も株式会社に比べるとかなり低く抑えることができます。
2 株式会社のように、法律で規定された機関が必要ないため、経営判断にあたり株主総会や取締役会などに付議する必要がなく、迅速な意思決定が可能で、経営と組織運営の機動力が高いという特徴があります。
3 株式会社で必要とされる様々な機関の設置が不要であることに加え、会計監査人監査や決算公告の必要がありません。また、合同会社の社員には、株式会社の取締役のような任期の定めがありませんので、役員の変更登記のような手続きと費用が不要で、全体的にみても、組織管理面での事務手続きが簡素で費用負担が少なくて済みます。
4 会社法で規定された事項であっても、定款で別の定めをすることができる項目が非常に多く、柔軟性の高い組織です。また、社員の利益配分は、株式会社のように出資比率に拘束されることなく、定款で定めることにより、自由に行うことができます。
5 株式会社と同様に出資者責任は有限責任であり、経営への参画がしやすい組織体です。
6 会社の規模が大きくなっても、株式会社のように大会社規制を受けることがありません。このため、会社規模に応じた取締役会や監査役会などの重厚な機関の設置が不要であり、管理コストも抑えることができます。
7 人の信頼関係で組織し運営するという組織の特性から、出資者である社員は、出資額の多寡にかかわらず平等な発言権を持ちます。

このように、合同会社はシンプルな機関で組織運営の自由度が高く、設立手続きも簡素ですから、ソーシャルビジネスを含め、どのような事業にも対応できる会社形態であると言えます。敢えてデメリットをあげるとすれば、会社としての知名度が低いことでしょう。

3-2 株式会社のメリット・デメリット

株式会社の起業状況では、次の上場を狙う新興ベンチャー企業が多数誕生しています。株式市場においては、大企業がひしめく一部、二部、育ち盛りの企業が集まるジャスダックやマザーズなど、受容性が高く、将来の優良企業を育成するだけの土壌が整っていると言えます。

上場に至れば会社としての知名度が一気に向上し、資金調達手段も株式市場にとどまらず多様化できます。長い歴史の中で培ってきた「株式会社」という商号ブランドの価値は、揺るぎない「信用」となってビジネス界に然るべき地位を築いています。

一方で、会社の成長に従って新たな機関の設置義務が生じるとともに、計算書類の作成・報告が複雑化するなど、オペレーションが煩雑になる分、管理コストが上昇して組織運営のスピードも衰えるという、株式会社ならではのデメリットがあります。

また、ソーシャルビジネスの展開を想定すると、営利企業の代表格である株式会社という形態はマイナスに働く可能性があります。もちろん、取り組み方次第ですが、イメージという点ではネガティブ要素となります。

4 NPO法人を設立するメリット・デメリット

NPO法人を設立するメリット・デメリット

非営利活動を行っている団体が法人化するメリットの一つは、「法人格」を得ることにあります。法人として契約の締結などの法律行為を行なうことができ、法人名での金融機関口座の開設とともに、団体としての経理区分を明確化できるようになります。これは、自然災害などで支援活動を行う際に威力を発揮します。寄附金の募集等を行うときに、「NPO法人」として受け付けることができれば寄附金も集まりやすくなります。

4-1 メリット

2点目は、寄附金の話しでもわかるとおり、「社会的な信用」が得られると言う点です。公告による縦覧期間を含め、長い時間をかけて官・民の審査を経て認証に至る組織であること、また、NPO法人としての情報が、都道府県や内閣府のポータルサイト上に公開されていることなど、組織としての透明性の高さが公的に保証されることで、自ずと信頼性が高まります。

3点目は、税制上のメリットです。前述のとおり、法人税法上の収益事業を行う場合は、その事業に対して課税されますが、税法上の収益事業を行っていない場合は、法人税が課税されないことはもとより、申請によって、法人住民税の均等割りの免除を受けることが可能です。また、登記の際、通常は登録免許税が必要ですが、NPO法人の場合は不要です。

4-2 デメリット

デメリットの一つ目は、事務の煩雑さです。一般的な会社では、事業年度終了後は決算と税務上の処理と手続をして終了ですが、NPO法人の場合は、都道府県への「事業報告」を毎年行わなければなりません。これを怠ると、認証取消のリスクもありますので注意が必要です。東京都の場合、NPO法人認証の取消し原因で最も多いのが、「3年以上の事業報告未提出」であると言われます。

二つ目は、変更事項があったときの手続きの煩雑さです。NPO法人の場合、登記事項は登記を変更するだけではなく、都道府県への届出が必要となります。また、定款を変更する場合は、原則として設立と同じように事業計画書や予算計画書を作成して、縦覧期間、審査期間を経て新たに認証を得ることになるため、事務手続きの煩雑さだけでなく、設立時と同等の時間がかかることになります。

三つめが、会計書類の作成です。法人税法施行令第6条は、「収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければならない」と規定しています。課税所得を計算するためには、「収益事業」を特定しなければならないからです。

一方で、NPO法第5条第2項では、「その他事業に関する会計は、当該特定非営利活動法人の行う特定非営利活動に係る事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない」と規定されています。NPO法で言う「その他の事業」は、その収益を特定非営利活動に繰り入れなければならず(前掲)、活動計算書も区分して記載することになっているためです。この法律上の定義の違いから、最大で4区分の経理が必要となるため、一般的な会社に比べて煩雑な処理と複雑な管理が必要となります。

5 会社設立・NPO法人設立にかかる費用比較

会社設立・NPO法人設立にかかる費用比較

実際に会社又はNPO法人を設立するとして、費用がどれぐらいかかるのかを比べてみましょう。

(表10)設立費用の比較

費用の項目 NPO法人 合同会社 株式会社 備考
定款認証印紙代 0円 0円 0円 電子定款は無料
公証人定款認証費用 0円 0円 50,000円 株式会社のみ必要
登録免許税 0円 60,000円 150,000円 法定の最低額で記載しています
設立費用計 0円 60,000円 200,000円 ※士業による手続代行費用を除く

(この表は、司法書士や行政書士による手続き代行費用、住民票等添付書類の発行手数料等は含まれていません)。

(表10)のとおり、手続き代行費用を除き、NPO法人の設立には大きな費用はかかりません。合同会社及び株式会社においては、設立に係る登録免許税として資本金の0.7%相当額が必要となります(その額が最低額に満たないときは、株式会社15万円、合同会社6万円の最低額を適用)。株式会社は、このほかに公証人による定款の認証費用が必要です。

なお、(表8-1)・(表8-2)から、NPO法人の設立手続きには相当の時間がかかり、作成書類・添付書類等も多いため、士業による代行を依頼したくなるところですが、15万円~20万円程度必要と言われています。(表8-1)に記載しましたが、様式類は都道府県のサイトからダウンロードできることを考えれば、都道府県の窓口で書き方の指導を受けられることが前提になっていると言えます。また、記載内容の事前チェックを受けることで書類を完備することは可能ですから、手間だけ思い切れば、高い費用を払わずに済むことに注目すべきです。

6 会社の登記手続とは?

会社の登記手続とは?

会社設立を行う際には、法務局に「登記手続」を行う必要があります。書類に関しては、内容の間違いがないことはもちろん、書類を綴る順番まで細かく規定がされています。登記手続きに必要な書類は、主に10種類、付随書類がある場合は14種類にのぼります。ケースにより、書類が不要、もしくは追加書類が必要になる場合もありますが、原則としては10~14種類の書類が必要となります。会社設立を専門家に依頼した場合は、全てお任せできますので、細かいことに気を配る必要はありません。しかし、自分で法務局へ手続きをされる場合は、流れを把握しておくことが大切です。

なお、現在法務局への会社設立登記の方法としては、「紙による申請」と「オンライン申請」の二種類がありますが、当記事では紙による申請を前提に扱います。

6-1 会社の登記手続きをなぜ行うのか

先ほど、「会社の登記手続きは、第三者の安全を図るため」と述べました。そもそも、登記手続きをすることで、なぜ取引を行おうとする第三者の安全が図られるのでしょうか。

会社の設立登記を行うことで法務局に、会社名・会社所在地・代表者の氏名・住所・資本金など、「会社が確かに設立されていて、資本金はいくら、代表者はこの人で、ここに住んでいます、役員はこの人で、住所はここです」などのデータが登録されます。

このデータは誰でも、法務局に行くか、登記情報提供サービスを利用すれば、数百円で閲覧することができます。

会社と取引を行おうとする第三者にとって、登記情報を登記情報提供サービスで閲覧するか、法務局で「全部事項証明書等」を取得することにより、会社の基本的な状況に加え、そもそも実在するか、過去の役員の就任、退任などの部分まで確認できるわけです。

なお、第三者から意外と確認されるのが、資本金と本社所在地です。以前は会社を設立する上で、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円が必要でした。現在は資本金1円なり、10万円、100万円などでも会社を設立することがはできます。

しかし、資本という側面では、以前の有限会社の基準であった300万円以上の資本金がある会社を「ある程度資本に厚みがある会社」としてみなす人もいます。

また、事務所所在地も、現在はインターネットで確認すれば、通常の事務所であるか、レンタルオフィス・バーチャルオフィスであるかなども容易に確認できます。レンタルオフィス・バーチャルオフィスでは、自宅兼事務所とさほど変わりない見方をされる可能性もあります。

上記の点も踏まえ、資本金は手厚く(できれば専門家と相談し、現物出資などの手法も検討)、本店所在地など他の情報や、代表取締役、役員の住所なども第三者から見られるということは承知しておく必要があります。

6-2 登記手続きにかかる期間はどれくらい?

登記手続きにかかる期間ですが、書類を窓口に提出後最短で2~3営業日、年末年始や連休を挟むなど混み合っている場合は5~7営業日を目安に考えた方がよいでしょう。

また、補正が生じた場合は、その都度法務局まで行き修正したり、書類を追加提出、差し替えを行う必要があります。あまりにも不備が多い場合は「却下」という形で書類ごと返却される可能性もあります。時間のロスを防ぐためにも、登記の専門家である司法書士に最初から頼むか、事前の確認、相談を窓口の担当者としっかり行い、書類に遺漏がないかを確認してもらう必要があります。

書類の確認の手続きや、ミスによる手戻りで生じる負担を考えると、最初から専門家である司法書士に依頼するか、会社設立のスタート時点で、会社設立の専門家に依頼、そのネットワークから司法書士に行ってもらう、という形式が様々な意味でスムースといえましょう。

7 登記手続きの書類に関して

登記手続きの書類に関して

登記手続きの書類に関しては、自分で作成するもの、法務局や法務局のホームページで入手するもの、印鑑証明書など市役所で取得するものなど様々な種類があります。

7-1 登記手続きに必要な書類リスト-原則10種類、最大14種の書類が必要

会社の設立登記申請に必要な書類を表にしました。(株式会社設立の場合)

まず、原則必要な書類10種類です。(ケースにより必要でない場合もありますが、原則としては下記の書類が必要なものだとして抑えておくとよいでしょう)

書類名 入手・作成方法 注意事項
設立登記申請書 Word、一太郎などワープロソフトで作成 法務局のホームページに記載例があるので、参考にする
登録免許税納付台紙 A4の紙でOK 法務局より指定された金額の収入印紙を貼る必要あり。(株式会社の登録免許税は原則15万円~、合同会社など持分会社の登録免許税は原則6万円~)消印は絶対にしない。一番最後の提出段階で、窓口担当者に確認の上貼り付けることを強くお勧め
OCR用申請用紙もしくはCD-R 法務局の窓口でOCR用紙を入手するか、店舗・コンビニなどでCD-Rを購入 登記すべき事項を、順番に記載。現在は、CD-Rにテキストファイルを添付するやり方が多い。なお、現在ほぼ使われることはないが、フロッピーディスクも一応受け付けている
定款 Word、一太郎などワープロソフトで作成 株式会社の場合は公証人の認証を受けたものを提出する。なお、合同会社など株式会社以外の場合は公証人の定款認証は不要だが、専門家などによる電子署名か、4万円の収入印紙貼付は必要。電子署名か印紙貼付両方がない状態でも受理してもらえる可能性はあるが、税務調査があると、印紙貼付がないことにより、3倍の過怠金を課されるおそれがあるため、専門家による電子署名か4万円の印紙貼付は行うこと
発起人会議事録・発起人決議書など Word、一太郎などワープロソフトで作成 定款の本店住所は市区町村まで記載するケースが多いため、この書類で本店の所在地までを明記する。また、発起人全員の実印による押印が必要。
就任承諾書 Word、一太郎などワープロソフトで作成 代表取締役他役員が、実印を用いて署名捺印・記名押印を行う
発起人全員の印鑑証明書 市区町村役場 発起人・役員を兼ねる場合は2通、発起人・役員のどちらかの場合は1通が必要。取得後3ヶ月以内ものであることが要されるため、できるだけ印鑑証明取得後は早く手続きを行う
資本金払込みを証する書面 Word、一太郎などワープロソフトで作成 法務局の記載例・割印方法などを確認しながら、通帳かネットバンクの取引明細の写しとともにホチキス留めで提出。
代表者の印鑑届出書 法務局で取得 会社の代表印届出に必要
印鑑カード交付申請書 法務局で取得 印鑑カードの交付申請に必要

また、下記の書類は、法人が発起人である場合、現物出資がある場合などの場合に必要です。

必要書類 入手先・作成方法 注意事項
登記事項証明書・法人印鑑証明 法務局で取得 法人が発起人になる場合必要
取締役・監査役による調査報告書 Word、一太郎などワープロソフトで作成 現物出資した物の価格が適正であることを、取締役・監査役が証明
資本金の額の計上に関する証明書 Word、一太郎などワープロソフトで作成 現金と現物出資分の金額を合計し、資本金に計上する額を計算
財産引継書 Word、一太郎などワープロソフトで作成 現物出資をする発起人から、会社に対し、適正に財産が提供されたことを証明

また、書類に関しては、法務局が指定する順番で綴ったり、並べたり、割印の押印、綴らない一枚紙として配置するなど、細かな決まりがありますので、法務局の指示や記載例等に従ってください。

7-2 登記手続きの注意点

登記手続きで注意すべき点は、「あらゆる部分に対するチェックの細かさ」です。例えば、文字に間違いがあり、補正が必要になった場合、法務局が指定する下記の方法で修正する必要があります。法務局の記載要領を確認ください。

例えば、数文字の修正であっても、“記載した文字を訂正等するときは,訂正前の文字が見えるように線で消し,挿入又は削除した文字の数をその部分の欄外に「何字加入」又は「何字削除」と記載して,申請書に押印した人が,欄外のその部分に押印してください。“と記載されています。つまり、斜線を引いて訂正印を押すだけ、修正テープで書き直すなどの、一般的によくある手法ではなく、「何字を追加しました、何字を削除しました」と欄外に明記をする必要があります

また、官公庁特有の、「原本還付」という制度があります。

“登記の申請書の添付書面は,原本を添付するのが原則ですが,議事録,許可書等,当事者が原本を保管する必要があるもの又はそれを欲するものについては,その原本の還付(返還)を請求することができます。この場合には,必要となる書類のコピーを作成し,そのコピーに「原本に相違ありません。」を記載の上,申請書に押印した人がそのコピーに署名(記名)押印(2枚以上になるときは,各用紙のつづり目ごとに契印(割印))したものを申請書に添付して,原本とともに提出してください。“と記されております。

つまり、返して欲しい書類は事前にコピーしておき(法務局の方でコピーしてくれる場合もありますが、あくまで例外です)、コピーに対し、「原本に相違ありません」と書いて、署名や押印をする必要があるのです。

このように、提出書類の直し方、扱いなどにも、法務局特有のルールが存在するのです。

8 登記手続きは司法書士の業務

登記手続きは司法書士の業務

ここまで登記手続きについて書いてきました。なお、登記手続きを専門家に任せる上でも注意した方が良い点はありますので、まとめておきます。

8-1 司法書士資格を持たない行政書士・税理士などは登記手続きをできない

注意して欲しいのは、「登記手続きは司法書士(弁護士も可能です)の業務である」ということです。行政書士・税理士などは、職務上申請はできないため、司法書士に依頼します(なお、行政書士・司法書士の資格を両方持つ専門家も多くいます)。

会社設立の専門家といっても、司法書士・弁護士・税理士・行政書士・会社設立の専門事業者など様々な種類が存在します。

通常の事業者であれば、司法書士・弁護士以外の専門家は、司法書士・弁護士など登記手続きを業として行うことが認められている専門家に依頼します。

8-2 自分で書類を出してくださいと言われたら要注意

会社設立の専門家に依頼しているにもかかわらず、「法務局の書類提出に関しては、自分で書類を出してください」といわれたら要注意です。

通常の良識ある専門家であれば、自分の分野でできない部分については、自分が扱えない部分を扱う専門家に報酬を払って依頼するのが良識だからです。

コンプライアンスを守るべき法律・法務の実務者、法律の隣接専門職が、きちんとコンプライアンス・マナーを遵守しているかは気を付けた方がよいでしょう。

ミスがあった場合は、法務局へ取りに行くなり、郵便で返送してもらうだけでも、設立までの期間が延びてしまいます。手続きをスムースに進めるためには、会社設立の最初の段階から専門家に依頼し、会社の形態や基本的設計、資本金、現物出資などもふくめ、会社の根本的な部分から専門家の力を借りるのが一番でしょう。

そこで型ができれば、手続きなどは専門家に一任し、自分たちは必要な書類を取りに行く、専門家が作成した書類に押印するなど、複雑な部分を一任し、会社設立、起業で重要な営業やプロダクトの開発他、「業務にとって本当に大切なこと」に力を注ぐことができます。

また、専門家へ依頼すれば、定款への電子署名を行ってくれますので、定款の印紙代4万円をゼロにすることができます。この点を踏まえ、ぜひ最初の時点から、専門家へ会社設立全体の手続きを一任することをおすすめします。

9 まとめ

いかがでしょうか。ソーシャルビジネスの起業を考えるとき、真っ先にNPO法人の設立が頭に浮かぶかもしれませんが、認証に至る時間と条件整備は会社設立以上に煩雑です。また、「社会的な信用が命」の組織であるが故に、設立後も、設立要件を具備しているか否かについてチェックを受け続けることになり、区分経理も複雑です。組織運営や資金調達を考えれば、どのような事業形態にも対応可能な合同会社のほうが魅力的だといえます。しかし、公益性の高い事業に営利を目的とせずに取り組むという確固たる信念を貫こうとするなら、NPO法人は進むべき本道でしょう。起業家の皆様にとってよりよい選択となるよう、この記事をご参考いただければ幸いです。

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