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社団法人設立の要件とは

最近、法人設立の選択肢として一般社団法人が注目を集めています。確かに、2006年の会社法施行後は多くの起業家が株式会社や合同会社という形態で法人を設立しているのが実情です。しかし、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を根拠法とする一般社団法人も法人設立の有力な選択肢の一つであり、株式会社や合同会社と同様に素早く簡単に設立できることから近年設立件数が増加傾向にある法人形態です。

今回の記事では、社団法人の概要や設立要件、社団法人設立の手順・流れ、設立に必要な書類等を分かりやすく解説します。これから起業する方や法人の設立を考えている方は是非参考にしてください。

1 社団法人とは

社団法人とは

社団法人は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律を根拠に設立される法人です。株式会社と同じように法務局に登記申請することによって法人格を得られますが、法人の特徴や運営形態は株式会社と大きく異なります。まずは、社団法人の特徴や課される税金について詳しく確認してみましょう。

1-1 社団法人の特徴

社団法人は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を根拠法として設立される法人です。具体的には、一般社団法人と公益社団法人がこれに該当しますが、公益社団法人は一般社団法人を設立した上で特定の公益性の高い事業を営んでいることなどの厳しい認定要件を満たさなければ設立することはできません。そのため、まずは一般社団法人として法人を設立し、事業を開始することが社団法人を設立する一般的な選択肢です。一般社団法人は会社法に基づいて設立される株式会社や合同会社、合名会社、合資会社などの営利法人とは異なり非営利法人という法人形態に分類されます。非営利法人と聞くと儲けるための営利事業を営んではいけないと思われがちですが、もちろん利益を生み出す事業を行うことも可能です。まずは、株式会社・合同会社と比較しながら一般社団法人の特徴を確認してみましょう。

①株式会社

株式会社

株式会社とは、株式を発行して投資家などの出資者から事業に必要な資金などを調達する会社形態です。株式会社は会社を所有する株主と会社を経営する経営者が別々になる「所有と経営の分離」が原則となっています。もちろん、中小企業などのオーナー企業では株主と経営者が同じになることもありますが、基本的には会社の所有者と経営者が明確に区分される法人です。株主は出資の範囲内で責任を負う有限責任が株式会社の大きな特徴で、連帯保証人などになっていない限り会社が破綻しても追加で債務の弁済などを求められることはありません

また、営利事業などによって得られた利益は内部留保として社内に留めておくこともできますが、株主へ配当金などの形で分配できる点も株式会社の大きな特徴の一つです。ただし、株主へ利益を分配する場合は配当できる金額について一定の制限が設けられている点に注意しなければなりません。株式会社が無制限に配当を行うことは会社の財産を減らす行為となるため、会社の財産を担保として取引を行っている債権者を保護する観点から会社法などによって一定の制限が設けられていることが理由です。なお、利益の分配は持ち株比率などに応じて行われることが原則となります。

②合同会社

合同会社

合同会社は出資者である社員が会社の経営も行う会社形態です。このような形態を持ち株会社と言いますが、会社の所有者と経営者が分かれている株式会社とは運営形態が大きく異なります。株式会社では会社の重要事項を決定する場合に株主総会や取締役会などのプロセスを経なければなりませんが、合同会社では出資者である社員が経営も行うためスピーディーに意思決定を行うことが可能です。また、合同会社では出資者となる社員が事業に使用する出資金を拠出しますが、こちらについては株式会社と同様に出資の範囲で責任を負う有限責任であることが大きな特徴となっています。

同じ持ち株会社である合名会社や合資会社が全ての社員、または一部の社員が無限責任となることを考慮すると、合同会社は有限責任で設立することができるため他の持ち株会社より設立のためのハードルが低い会社形態です。そのため、2006年の会社法施行で合同会社の設立が可能になってからは合同会社が持ち株会社設立の最も有力な選択肢となっています。なお、合同会社で利益が発生した場合は株式会社と同様に一定の制限の下でその利益を配当金として分配することが可能です。しかも、利益の分配は必ずしも出資比率に応じて行う必要がないため、より貢献度の高い社員に多くの利益を分配するなど自由度の高い会社運営も可能です。このように、合同会社は株式会社よりも優れた点もある会社形態ですが、会社規模が大きくなった場合に市場から資金を調達できないなどのデメリットもあります。そのため、比較的規模の小さい事業者などが会社を設立する場合に選択しやすい会社形態となっています。

③一般社団法人

一般社団法人

一般社団法人は会社法に基づいて設立される株式会社や合同会社とは異なり、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律に基づいて設立される法人です。一般社団法人は主に特定の目的を実現するために設立される法人形態で、業界団体の協会や医療関係、資格認定機関など多くの団体が一般社団法人の形態を選択しています。

一般社団法人は株式会社や合同会社とは異なり、資本金や出資金などの払い込みをしなくても会社を設立することが可能です。一般社団法人には株式会社や合同会社の資本金や出資金に該当する基金という仕組みもありますが、設立時には基金の払い込み要件が無いため実質0円でも設立できる法人ということになります(注1)。

また、一般社団法人は株式会社や合同会社のように「モノを売る」「サービスを提供する」などの利益を目的とした事業を行うこともできますが、事業で得た利益の使い道については法律によって一部制限が設けられているため注意が必要です。事業によって得た利益は次年度の活動資金や理事などの給料として使用することはできますが、資金を拠出してくれた人や設立者に配当金として支払うことができません。このように利益が出ても配当金などの形で分配することができない法人を非営利法人といい、一般社団法人は非営利法人に該当する法人の一つです。

(注1)
実際は、設立後に運営していく資金などが必要になるため一般社団法人を設立する際や設立後に会費や基金という名目で資金を募ることになります。

上記①から③を総括すると、株式会社と合同会社は利益を生み出し株主や出資者などに利益の分配を行うことを目的とする営利法人、一般社団法人は利益を生み出す収益事業自体は営むことができるものの利益を分配することができない非営利法人ということになります。このように、非営利法人に該当することが一般社団法人の最も大きな特徴です。

1-2 社団法人にかかる税金

社団法人にかかる税金

社団法人も上述の通り利益を目的とした事業を営むことはできますが、このような収益事業から発生した利益には原則として法人税が課されます。また、利益を目的としない非収益事業でも利益が発生することはありますが、こちらについては社団法人の形態などによって課税されるケースと課税されないケースがあるのでそれぞれのケースについての十分な理解が必要です。この法人税の課税を判断する社団法人の形態は大きく3つに分けることができるので、それぞれのケースでどのように法人税が課されるのかを詳しく確認してみましょう。

①公益社団法人

公益社団法人とは、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に基づく公益認定を受けた社団法人です。社団法人の中でも公益性の高い事業を営んでいることなどの厳しい認定基準をクリアした法人のみが公益社団法人としての認定を受けられます。公益社団法人では公益目的事業から生じた所得については法人税が課されないため、それ以外の収益事業から発生した所得に対してのみ法人税が課される仕組みです。ここで言う所得とは、事業によって得られた収益から事業にかかった費用を差し引いて得られる利益に各種控除などの様々な調整を加減算した数字のことを指します。簡単な計算式のイメージは以下の通りです。

「利益=収益-費用」
「所得=利益±各種控除などの調整」

この所得に対して法人税率をかけることで納付すべき法人税額を求めることができます。
「法人税額=所得×法人税率」

法人税の税率については以下の表1の通りです。

表1 法人税の税率

法人税の税率

出典:国税庁ホームページ

公益法人等のうち「公益社団法人、公益財団法人又は非営利型法人」の区分が公益社団法人の収益事業に適用される法人税率となり、所得が年800万円以下の部分は15%、年800万円超の部分は23.20%の税率で法人税が課されます。基本的に、この税率は資本金1億円以下の株式会社などに適用される法人税率と同じです。

②一般社団法人(非営利型法人)

一般社団法人のうち「非営利性が徹底された法人」または「共益的活動を目的とする法人」は非営利型法人として分類されます。

・非営利性が徹底された法人

非営利性が徹底された法人とは、その法人が行う事業によって利益を得ること、または得られた利益を分配することを目的としない法人です。これは法人税法施行令という法律によりその要件が定められており、以下の4要件を全て満たす法人が該当します。

  1. 1.剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること
  2. 2.解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること
  3. 3.上記2要件にある定款の定めに違反した行為を行ったことがないこと
  4. 4.各理事について、理事及びその親族等である理事の合計数が理事の総数の3分の1以下であること

・共益的活動を目的とする法人

共益的活動を目的とする法人とは会員から受け入れる会費によって運営される法人で、その会費を支払った会員に共通する利益を図るために事業を行う法人です。その事業を運営するための組織が適正であると認められるためには以下の7要件を全て満たす必要があります。

  1. 1.会員に共通する利益を図る活動を主な目的としていること
  2. 2.定款等に会員が負担すべき会費の定めがあること
  3. 3.主たる事業として収益事業を行っていないこと
  4. 4.定款に特定の個人または団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと
  5. 5.定款に解散時の残余財産を特定の個人または団体(公益的な団体等を除く)に帰属させる定めがないこと
  6. 6.共益的活動を目的とする期間において特定の個人または団体に特別の利益を与えたことがないこと
  7. 7.各理事について、理事及びその親族等である理事の合計数が理事の総数の3分の1以下であること

これらの「非営利性が徹底された法人」または「共益的活動を目的とする法人」に該当する非営利型の一般社団法人は公益法人等として取り扱われ、公益社団法人と同様に収益事業から生じた所得のみが法人税の課税対象となります。法人税率は表1の公益法人等のうち「公益社団法人、公益財団法人又は非営利型法人」の区分が適用され、公益社団法人と同様に所得が年800万円以下の部分は15%、年800万円超の部分は23.20%の税率です。

③一般社団法人(非営利型法人以外の法人)

一般社団法人のうち上記の非営利型法人に該当しない法人は全て非営利型法人以外の法人として普通法人と同様の扱いになります。そのため、全ての事業から発生した所得が法人税の課税対象です。非営利型法人以外の一般社団法人には、表1の普通法人のうち「資本金1億円以下の法人など」に区分される法人税率が適用され、年800万円以下の部分が15%、年800万円超の部分が23.20%となっています。なお、過去3事業年度の所得平均が15億円を超える法人は適用除外事業者となり、年800万円以下の所得部分についても19%の税率が適用されます。

上記の①から③の課税関係をまとめると以下の表2の通りです。

表2 課税所得の範囲

課税所得の範囲

出典:国税庁ホームページ

以上のように、社団法人は全ての収益事業に関して法人税が課される仕組みです。しかし、①公益社団法人と②一般社団法人(非営利型法人)に該当する場合は収益事業以外の利益に対して法人税が課されないことが大きなメリットとなります。

2 社団法人設立の要件

社団法人設立の要件

社団法人は株式会社や合同会社と同様に法務局に設立登記申請を行うことで設立できる法人です。しかし、社団法人を設立するためにはいくつかの要件を満たす必要があります。こちらでは、一般社団法人の設立要件である設立発起人と機関設計、設立後の非営利要件などについて詳しく確認してみましょう。

2-1 設立発起人と機関設計

株式会社や合同会社は一人でも会社を設立することができますが、一般社団法人を設立するためには最低2名以上の設立時社員と呼ばれる設立発起人が必要です。また、一般社団法人には社員総会という必ず設置しなければならない機関も必要になります。まずは、一般社団法人の設立要件である最低2名以上の設立時社員と機関設計について確認してみましょう。

①設立時社員

一般社団法人には社員と呼ばれる構成員が必ず必要です。社員は一般社団法人の重要事項を決定する社員総会という機関の構成員となり、議案の提出や議決権の行使などを行います。一般社団法人の社員は株式会社の株主と同じような役割を担っており、一般社団法人の運営に大きく関与する重要な役割を担う存在です。一般社団法人の設立に際しては設立時社員が2名必要で、法人の設立に際して定款の作成や、理事や監事などの選任を行うだけでなく、法人の設立についても以下の3つの責任を負う存在となります。

1.任務懈怠に基づく損害賠償責任
一般社団法人を設立するにあたり設立時社員としての任務を怠った場合には、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。

2.第三者に対する損害賠償責任
設立時社員が行う職務について悪意または重大な過失があった場合には、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。

3.法人不成立の責任
一般社団法人が成立しなかった場合、設立時社員は設立に関して行った行為について連帯して責任を負う必要があります。具体的には、設立に関して発生した費用の負担などが必要です。

このように、一般社団法人では設立時社員に一定の責任が求められているため、設立時社員の住所や氏名を定款に明記しなければなりません。

②機関設計

一般社団法人には設置が義務付けられている社員総会、理事という機関の他に、任意での設置が認められている監事、理事会、会計監査人という機関が存在します。

一機関設計

・社員総会

社員総会は一般社団法人の最高意思決定機関です。株式会社の株主総会に該当する重要な役割を果たす機関で、一般社団法人を設立する際には必ず設置しなければならない機関となっています。社員総会では法律で定められた以下の重要事項を決議することが可能です。

  1. 1.社員の除名
  2. 2.理事、監事および会計監査人の選任
  3. 3.理事、監事および会計監査人の解任
  4. 4.代表理事の選定
  5. 5.理事、監事の報酬の決定
  6. 6.基金の返還
  7. 7.定款の変更
  8. 8.事業の譲渡または吸収合併契約の承認
  9. 9.社団法人の解散

なお、理事会を設置しない一般社団法人では、上記の他に一般社団法人の組織や運営、管理などの一切の事項を社員総会で決議することができます。このように、社員総会は一般社団法人の運営に関する強大な権限を持つ機関です。

・理事

一般社団法人では最低1名、または2名以上の理事を選任しなければならないことが法律で定められています。一般社団法人の設立時には2名の社員が必要でしたが、設立後は1名以上の社員と1名以上の理事で運営することが可能となっており、設立時社員は理事を兼任することができるため一般社団法人は設立後も2名の態勢で運営することが可能です。

理事は社団法人の業務を担う存在となっており、株式会社の取締役のような存在として一般社団法人の業務を遂行します。後述する理事会を設置しない一般社団法人で2名以上の理事がいる場合は、定款の定めに基づく理事の互選や社員総会の決議によって代表理事を選任することも可能です。代表理事は株式会社の代表取締役に該当する役割を果たし、各理事を代表して一般社団法人の業務を遂行することができます。

なお、代表理事を選任しない場合は各理事が一般社団法人の代表となり業務にあたることとなります。理事の任期は選任後2年以内に終了する事業年度の最後の定時社員総会が終了するまでとなっており、この任期は定款に定めることで短縮することが可能です。しかし、任期を3年や5年に延長する定めを定款にすることは有害的記載事項となり定款の認証を受けられなくなるため不可能です。

・監事

一般社団法人の監事は定款に定めることによって設置できる機関で、理事の行う業務と会計について監査を行う機関です。理事の職務執行内容などを監督する立場のため理事と監事を兼任することはできません。監事の任期は選任後4年以内に終了する事業年度の最後の定時社員総会が終了するまでですが、定款で定めることによって2年まで短縮することも可能です。

・理事会

理事会も定款に定めることによって設置できる機関です。公益社団法人では設置が義務付けられていますが一般社団法人では任意で設置できる機関となっています。理事会を設置する一般社団法人は3名以上の理事と1名以上の監事が必要で、理事の中から必ず代表理事を定めなければならない点には注意が必要です。設立時の代表理事については設立時理事の一人一票による多数決で代表理事を選出することとなり、その後は理事会の決議で代表理事の選定を行うこととなります。理事会では主に業務執行の意思決定や理事の職務執行の監督、代表理事の選定および解職を行うこととなり、株式会社の取締役会に該当する役割を果たす機関です。

・会計監査人

会計監査人も任意で設置できる一般社団法人の機関ですが、貸借対照表の負債の合計額が200億円以上の大規模一般社団法人はその設置が義務付けられている機関です。会計監査人を設置する場合も必ず監事を置く必要があり、公認会計士または監査法人のみがその資格を有します。会計監査人は会計書類の監査を行う役割を担っており、理事の職務に対して不正な行為や重大な法令違反等の事実を発見したときは監事に報告する義務を負います。会計監査人の任期は選任後1年以内に終了する事業年度の最後の定時社員総会が終了するまでとなっていますが、その定時総会において別段の決議が行われなかった場合は再任されたものとして更に1年任期が延長される仕組みです。

以上が一般社団法人の主な機関となっていますが、これらの機関は法人の規模などに合わせて以下の5通りの組み合わせが可能です。

  1. 1.社員総会+理事
  2. 2.社員総会+理事+監事
  3. 3.社員総会+理事+監事+会計監査人
  4. 4.社員総会+理事+監事+理事会
  5. 5.社員総会+理事+監事+理事会+会計監査人

社員総会と理事の設置は必ず必要となるため、あとは一般社団法人の運営形態や規模に合わせて必要な機関の設置を検討することとなります。

2-2 非営利要件

非営利要件

一般社団法人を運営するためには非営利法人であることが必ず満たさなければならない要件です。既に説明した通り、非営利法人とは事業によって得られた利益を設立者や社員などに分配することはできません。しかし、利益を得ることを目的とした収益事業自体は営むことができるため、これらの区別については正確に把握しておくことが重要です。こちらでは、非営利要件とその他の運営上必要となる一般社団法人運営上の要件について説明します。

①非営利要件

何度も同じことを説明しますが、非営利法人は事業によって得られた利益を設立者や社員に分配することを法律で規制されている法人です。また、一般社団法人が解散する際に残った財産を設立者や社員に分配することも禁じられています。これが一般社団法人として満たさなければならない最も大きな非営利要件です。ただし、事業によって得られた利益は翌事業年度以降の運営資金などに充てることができるため、以下の支出は正当なものとして認められます。

・理事の報酬

設立者である設立時社員が理事を務める場合であっても理事の報酬は正当な運営資金の支出として認められます。理事の給与は社員総会の決議でも決定することはできますが、定款によって定めることも可能です。ただし、定款で理事の報酬を定めた場合は報酬を改定するたびに定款の変更も必要となるため、多くの一般社団法人では社員総会によって決議する方法を採用しています。

理事が複数人いる場合でも理事の報酬の総額に上限を定めておけば問題は生じないため、理事の間でどのような配分を行うことも可能です。なお、不相応に高額な報酬は納付する法人税を減らすための利益操作とみなされる可能性があるため、この点だけは注意しなければなりません。基本的に、不相応に高額でない限り社員総会の決議を経た理事の給与は一般社団法人の運営費用として支出することが可能です。

・従業員の給与やその他の経費

一般社団法人が事務員などの従業員に給与を支払う場合も正当な運営費用としてその支出が認められます。そのため、一般社団法人も他の法人と同様に業務を遂行するために必要な従業員を雇用することが可能です。また、事業に使用するコピー用紙や筆記用具などの消耗品や事務用品費などの経費も全て経費として支出することが可能です。

このように、一般社団法人の維持・運営に関わる全ての費用は、基本的に一般社団法人の経費として正当に支出することができます。ただし、一般社団法人には法人税法が適用されるため、交際費などの支出については法人税法の規定によって損金とならない部分が発生する可能性も否定できません。経費を支出する場合は、これらの法人税法の規定についても十分な理解が必要です。

②その他運営上必要となる一般社団法人の要件

一般社団法人として活動するためには自主的な法人の管理運営が求められます。これは他の法人にも該当することですが、事業年度ごとに計算書類や事業報告書を作成し、社員や債権者などの利害関係者へこれらの書類を開示することが必要です。また、一般社団法人は毎年貸借対照表を公告する義務もありますが、公告方法は以下の4種類から選択することができます。

  1. 1.官報に掲載する方法
  2. 2.時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
  3. 3.電子公告
  4. 4.不特定多数の者が公告すべき内容である情報を認識することができる状態に置く措置として法務省令で定める方法(主たる事務所などに掲示板を設置し、その掲示板で公告する方法など)

公告方法は定款に記載することでどの方法を選択することも可能です。いずれか1つの広告方法で問題ありませんが、定款に2つ以上の方法を記載した場合には全ての方法で公告を行わなければなりません。

以上のように、社団法人設立に関しては設立時社員や各機関設計、非営利要件、その他運営上必要となる一般社団法人の要件などを満たす必要があります。なお、設立時の定款記載事項などの要件については次章で詳しく説明します。

3 社団法人設立の手順・流れ

社団法人設立の手順・流れ

ここからは実際に一般社団法人を設立する際の手順と流れについて確認してみましょう。一般社団法人設立の流れは以下の①から⑤の通りです。

社団法人設立の手順・流れ

①基本事項の決定と必要書類等の準備

一般社団法人を設立するためには定款の絶対的記載事項に該当する名称や事業内容などの基本事項を事前に決定しなければなりません。この段階で、設立時社員となる発起人も最低2名以上必要になり、「誰が理事を務めるのか?」「監事は設置するのか?」「理事会は設置するのか?」といった機関設計についても予め決定しておくことが重要です。

また、法人の設立登記申請には法人の代表者印なども必要になりますが、印鑑の作成にはある程度の時間を要するため前もって準備しておくと登記申請手続きをスムーズに進めることができます。また、設立時の社員や理事、監事については登記申請の際に印鑑証明書が必要になるため、こちらも前もって準備しておくと申請手続きがスムーズです。

②定款の作成

基本事項が決定できたら次は定款の作成にとりかかります。定款は設立時社員2名以上が共同で作成し、完成した定款にはそれぞれの社員の記名押印が必要です。また、記載事項に漏れがある場合や記載してはならない事項を記載していると後の公証人による認証を受けられない可能性もあるため、以下の絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項を十分に理解して認証を受けられる定款を作成しなければなりません。

・絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、記載がなければ定款自体が無効となる最重要項目です。主に、目的や名称など基本的な内容についての記載が必要になります。一般社団法人の設立で記載しなければならない絶対的記載事項は以下の7点です。

1.目的
設立する一般社団法人がどのような事業を行うのかその内容を記載します。事業には特別な制限が設けられている訳ではないので、公益的事業や収益事業などを含めて公序良俗に反しない全ての事業を目的として定めることが可能です。設立後は定款に記載のない事業をとり行うことはできないため、予め予想できる全ての事業内容を明記しておくと後々の定款変更などの面倒な手続きが少なくて済みます。

2.名称
商業登記される一般社団法人の名称で、株式会社の商号にあたる法人の名称です。名称の中には必ず一般社団法人という文字を使用しなければならず、「一般社団法人○○○」のように前に付けるか「○○○社団法人」のように後ろにつけて名称を決定しなければなりません。名称には漢字やひらがな、カタカナ、アルファベットを自由に使用することができますが、記号については&(アンパサンド)や・(中点)などのいくつかの認められた記号以外は使用不可能です。また、主たる事務所の所在地に同じ名称の一般社団法人が存在している場合は同じ名称を使用することができません。

3.主たる事務所の所在地
主たる事務所の所在地とは設立する一般社団法人の活動拠点となる場所です。事務所の所在地については「〇〇県△△市□□町×丁目××番×号」といった地番まで特定して記載する方法と「〇〇県△△市に置く」という最小行政区画まで記載する方法の両方が認められています。

4.設立時社員の氏名又は名称及び住所
一般社団法人の設立に際しては設立時社員の氏名又は名称及び住所の記載が必要です。氏名は個人のことですが名称は法人のことを指しており、設立時社員が法人の場合はその名称と本店所在地を記載しなければなりません。

5.社員資格の得喪に関する規定
社員の入社や脱退、除名等に関する規定も定款の絶対的記載事項の一つです。法律では社員の資格について特別な制限が設けられていないため、個人や法人、権利能力なき社団に該当する団体なども社員になることができます。

6.公告方法
一般社団法人は公告方法を定めて定款に記載しなければなりません。こちらについては上記で紹介した通り4つの方法の中から選択しなければなりませんが、4つ目の掲示板などに掲示する方法は他の法人では認められていない方法です。こちらの方法は他の公告方法と異なり費用がかからないというメリットのある公告方法となっています。

7.事業年度
株式会社などの事業年度は任意的記載事項となっていますが、一般社団法人では事業年度が絶対的記載事項となっており必ず記載しなければならない項目です。事業年度は1年を超えない期間で自由に決定することができるため、半年や3か月を事業年度とすることもできます。ただし、期間が短いと決算などの煩雑な手続きを短い期間で何度も行わなければならないため、一般社団法人においても1年間を事業年度として決定することが一般的です。

・相対的記載事項

相対的記載事項とは定款に記載しない限り効力を発生しない項目です。絶対的記載事項とは異なり相対的記載事項の記載はなくても定款自体が無効になることはありませんが、理事や監事などの任期短縮などは定款に記載しない限り効力を発生することはありません。全ての内容まで説明していると長くなるため割愛しますが、相対的記載事項の一部には以下のような項目が挙げられます。

  1. 1.経費の負担に関する別段の定め
  2. 2.任意退社に関する別段の定め
  3. 3.定款で定めた退社の事由
  4. 4.社員総会の招集通知期間に関する定め
  5. 5.議決権の数に関する別段の定め
  6. 6.社員総会の定足数に関する別段の定め
  7. 7.社員総会の決議要件に関する別段の定め
  8. 8.社員総会以外の機関の設置に関する定め
  9. 9.理事や監事の任期の短縮に関する定め
  10. 10.代表理事の互選規定
  11. 11.理事会の招集手続きの期間の短縮に関する定め
  12. 12.理事会の定足数または決議要件に関する別段の定め
  13. 13.基金を引き受ける者の募集等に関する定め

・任意的記載事項

任意的記載事項とは、絶対的記載事項にも相対的記載事項にも該当しない記載事項です。定款にその旨の記載がなくても効力自体に影響するものではありませんが、内容を明確化するために記載されるケースが多くなっています。基本的に、公序良俗に反する内容でなければどのような内容でも記載することができ、以下のように社員総会の召集時期や理事の報酬などを任意的記載事項として記載することが一般的です。

  1. 1.社員総会の招集時期
  2. 2.社員総会の議長
  3. 3.役員等の員数
  4. 4.理事や監事の報酬
  5. 5.清算人

なお、社員に利益剰余金を分配できる旨や、社員が社員総会決議事項の全部について議決権を行使することができないなどの旨を定款に記載した場合、これらの記載事項は有害的記載事項として判断され、定款全体または当該事項が無効となります。

③定款の認証

定款の認証とは、公証人が正当な手続きによって定款が作成されたことを証明する作業です。株式会社と同様に一般社団法人の定款も公証人による認証が必要となるため、定款が完成したら公証役場へ持ち込んで公証人による認証を受けなければなりません。

定款の認証は一般社団法人の本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人しか認証できないため、本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証役場での認証手続きが必要です。定款の認証では定款の原本が2通必要になりますが、公証人の認証後は1通が役場保存用の原本となり、もう1通は会社保存用原本として返却されます。実務上は、登記申請の際に認証を受けた定款の謄本が必要となるため、通常はこの分も含めて3通原本を提出し手続きを進めるのが一般的です。

なお、定款の認証は直接原本を公証役場へ持ち込む前に事前に公証人の確認を受けておくことが推奨されています。事前確認の方法は公証役場よって異なるため、事前に認証を受ける公証役場へ電話連絡で確認しておくことが重要です。その際に、設立時社員の印鑑証明書などの必要書類も確認しておくことで再訪問による余分な手間や時間を省くことができます。

④設立登記申請

定款の認証が完了したら次は法務局での設立登記申請が必要です。登記申請に必要な一般社団法人設立申請書は以下の法務局のホームページからダウンロードできるので、必要事項を記載して設立登記申請書を完成させなければなりません。
参考:法務局ホームページ

設立登記申請書は「理事会及び監事を設置する一般社団法人の設立」と「理事会及び監事を設置しない一般社団法人の設立」で様式が別々のため、用途に合った設立登記申請書の様式をダウンロードしなければなりません。設立登記申請書の記入が終わったら公証人の認証を受けた定款や設立時理事の承認承諾書、設立時理事を選定したことを証する書面などの必要書類(次章で詳細を説明)とあわせて提出すると設立登記申請の手続きは完了です。

なお、登記申請は設立する一般社団法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局で手続きしなければなりません。不備なく設立登記申請の手続きが完了したら数日から数週間以内に登記手続きは完了し、登記を申請した日が一般社団法人の設立日となります。

⑤関係機関への届け出

登記手続きが完了したら一般社団法人の存在を証明する登記簿謄本が取得できるようになるため、税務署や都道府県などの自治体へ開業届などの書面提出が必要です。人を雇用する場合には必要に応じてハローワークなどにも届け出などの書類を提出しなければなりません。税務署に提出する書類だけでも以下の書類が必要です。

・法人設立届出書
収益事業を行う場合のみ提出が必要です。

・青色申告の承認申請書
青色申告が必要な場合は青色申告書を提出して所轄税務署長の承認を受ける必要があります。

・給与支払事務所等の開設届出書
給与や報酬の支払いが発生する場合はこの届出書の提出が必要です

他にも、源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書や、たな卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書などを必要に応じて提出することとなります。

4 必要書類

必要書類

一般社団法人の設立には定款をはじめとする多くの書類が必要です。中でも、設立登記申請の際に準備する書類は数も種類も多くなるため、こちらでは設立登記申請の際に準備する書類を中心に必要書類を確認します。

①一般社団法人設立登記申請書

一般社団法人の設立登記申請書は上述の通り法務局のホームページからダウンロードすることが可能です。監事や理事会を設置する場合としない場合では添付書類なども変わってくるため、設立登記申請書に記載されている添付書類についても確認しておいてください。

②定款

設立登記申請の際には認証を受けた定款の謄本が必要です。実務上は、上述の通り認証時に3通の原本を持参し、そのうちの1通を登記申請の際の定款として提出します。

③設立時社員の一致があったことを証する書面

定款に細部まで決めていない事項がある場合は、その細部を設立者で決定した旨を証明する書類が必要です。主に、設立時に話し合われた議事録などの書面を準備することとなります。

・設立時理事及び設立時監事の選任決議書
定款で設立時理事などを定めなかった場合は設立時社員が設立時理事などを選任しますが、その内容を記録した議事録などがこれに該当する書類です。定款で設立時理事を定めている場合は必要ありません。

・主たる事務所の所在場所決議書
定款で主たる事務所の所在地を最小行政区までしか定めなかった場合は設立者で細かい地番まで決めることとなります。その内容を記録した議事録などがこの決議書に該当する書類です。こちらも定款で地番まで定めている場合は不要です。

④設立時代表理事の選定に関する書面

設立時の理事や代表理事が設立時社員の決議によって選定されたことを証する書面です。なお、理事会を設置する一般社団法人は設立時理事の過半数を超える決定によって設立時代表理事を選定する必要があります。

⑤設立時理事、設立時代表理事及び設立時監事の就任承諾書

設立時の理事や代表理事、監事に選任されたことについて、選任された本人が就任を承諾する旨を記載した書面が必要です。設立時代表理事が選定された会議の席上でその就任を承諾し、その旨が④設立時代表理事の選定に関する書面に記載されている場合は設立登記申請所に「就任承諾書は、設立時代表理事の選定書の記載を援用する。」と記載することで提出を省略することもできます。

⑥印鑑証明書

定款の認証を受ける際は設立時社員の全員分の印鑑証明書が各1通ずつ必要です。提出する時点で発行から3か月以内の印鑑証明書でなければなりません。また、登記申請の際には設立時理事に就任する全員の印鑑証明書も発行から3か月以内のものが各1通ずつ必要です。設立時社員と設立時理事が同一人物の場合はそれぞれに印鑑証明書が必要となることもあるため計2通の印鑑証明書を準備しておくと間違いはありません。なお、理事会を設置する一般社団法人の場合は設立時代表理事の印鑑証明書だけで大丈夫です。

⑦本人確認書類

理事会を設置する一般社団法人を設立する場合、設立時理事や設立時監事などの印鑑証明書を添付しない役員について、住民票記載事項証明書や運転免許証のコピーに原本証明したものを提出する必要があります。原本証明をするためには裏面もコピーし、本人が原本と相違ない旨を記述し署名しなければなりません。

⑧委任状

設立登記申請は原則として発起人となる設立時社員が行いますが、司法書士や弁護士などが手続きを行う場合は委任状が必要です。

⑨「登記すべき事項」を保存した電磁的記録媒体

申請書に記載する事項のうち、登記すべき事項については申請書の記載に代えて電磁的記録媒体を提出することも可能です。この制度では電磁的記録媒体自体が申請書の一部となるため電磁的記録媒体の内容を印刷して別途添付する必要はありません。なお、電磁的記録媒体とは、日本工業規格X0606形式又はX0610形式に適合する120mm光ディスクのことを指しており、一般的にはCD-RやDVD-Rなどが用いられます。また、電磁的記録媒体で提出する場合は記録の方法なども定められており、文字コードやファイル形式などに注意して作成しなければなりません。

5 まとめ

今回の記事では社団法人の設立要件や設立の流れなどを説明しました。社団法人は株式会社のように知名度は高くありませんが、運営面での自由度が高く設立手続き等も比較的簡単にできる法人形態です。もちろん、収益事業などで獲得した利益を分配することはできませんが、事業の内容によっては株式会社よりも手軽に設立できる点などが大きなメリットとなります。これから起業や法人成りによって法人を設立される方は、一般社団法人も選択肢の一つとして検討してみてください。

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