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社団法人も潰れる?社団法人の倒産条件や手続き、理事の責任などを詳しく解説

帝国データバンクや東京商工リサーチは毎月企業の倒産件数を公表しています。例えば、2021年5月には1000万円以上の負債があって倒産した企業は461件であったことが発表されています(帝国データバンク『全国企業倒産集計2021年5月報』より)。

支払ができないほどに負債が膨らんでしまった企業は倒産することになり、もちろん社団法人もその対象です。

今回の記事では、社団法人の倒産についてと倒産後の解散手続きやその場合の理事に求められる責任や倒産を回避するための方法などを解説するので、ご参考ください。

1 社団法人が倒産をするとき

社団法人が倒産をするとき

倒産は、正式な法律用語ではありませんが、社会一般的に広く使われています。倒産とは、企業が“支払不能”になるなど、経済活動を継続することができなくなった状態を言います。

詳細は後述しますが、倒産にはいくつかの種類があります。また、最近では『経営破綻』『破綻』などの表現も倒産と同じ意味です。

そして、社団法人も支払不能になることはあり、倒産に陥ることがあります。支払不能になったら、事業をやめなければいけないということはありません。しかし、支払いが不能の状況では、他の企業との取引や従業員の雇用や事務所や会社組織を維持するために必要な設備を維持することが難しくなります。事実上、会社の継続を行うことができなくなり倒産することになります。

そして倒産することとなった企業は、事務処理上は解散を行います。ここでは、社団法人の倒産、解散となどを解説します。

1−1 社団法人の倒産

倒産は、『私的倒産』と『法的倒産』の2つに分けることができます
法的倒産…裁判所の関与のもとで法律に基づいて実施される倒産手続きになります。
私的倒産…裁判で行わずに実施される倒産手続きになります。

さらに、以下のように私的倒産は2つに法的倒産は4つに分けられます。しかし、会社更生法などは、株式会社のみが利用できるため、社団法人は利用できませんので注意が必要です。

≪倒産の分類≫

私的倒産 銀行取引停止
内整理
法的倒産 再建型 会社更生法
民事再生法
清算型 破産
特別清算

●私的倒産

裁判所の関与を受けずに実施する倒産には、銀行取引停止と内整理があります。

私的倒産

・銀行取引停止

銀行との取引ができなくなると、取引の支払いや受取ができなくなります。全ての支払いも受取も現金で行う場合には、銀行との取引がなくても事業は成立するかもしれません。しかし、銀行が取引をやめてしまった企業と取引すること自体が取引先からすればリスクが高すぎると判断されて取引を敬遠されます。そのため、銀行取引停止処分を受けた場合には、倒産としてカウントされます。

銀行取引停止処分には、条件があります。手形や小切手などが指定期日に決済できないいわゆる“不渡り”が、6ヶ月のうちに2回同じ手形交換所管内で発生すると、その企業は取引停止処分となります。中小企業や個人事業主が中心の倒産分類になります。

また、近年では手形や小切手の流通が減少しています。それに代わって台頭しているのが電子債権決済になります。この電子債権においても、手形や小切手と同じく6ヶ月のうちに2回デフォルト(決済不能)が発生した場合には、取引停止処分を電子債権記録機関から受けることになります。

・内整理

内整理という言葉はあまり聞いたことが無いかもしれません。『任意整理』や『私的整理』と言った方が聞きなれた言葉になります。内整理は、任意整理や私的整理と同じく、債務超過などにより債務の支払いができなくなった場合に、任意のなかで債権者と交渉・協議をしながら債務を整理することを言います。

内整理には、そのやり方や対応が定められた『私的整理ガイドライン』*があります。このガイドラインは、平成13年に緊急経済対策に応える形で採択されています。法的手続きのみではなく、債権者と債務者の2者間の合意によって債権放棄や期間などの支払い条件の変更などを行うために定められた手続き規定になります。

私的整理ガイドラインには、法的拘束力はありません。しかし、再建することに値していて債権が可能な企業を救済するために金融・産業・経営者の一般的コンセンサスとなっています。

私的整理ガイドラインにはいくつかの特徴的な規定があります。まずは、債権放棄を行う債権者にとってメリットなることは債権者が債権を無税での償却が可能になる点になります。一方で、債権放棄を受ける企業の経営者と株主はその責任の一端を担うことになります。

具体的には、債権放棄を受けた経営者は、その地位を継続することができません。また、減増資を実施する際には従前の株主はその地位を失い、または所有株主の価値が減少することがあります。また、再建計画成立した翌期以降の3か年のうちに経常利益が黒字化したうえで債務超過が解消していることが求められます。

*私的整理ガイドラインの詳細を確認したい方は、私的整理に関するガイドライン研究会がまとめた『私的整理に関するガイドライン』をご参照ください。

●法的倒産

裁判所の関与を受けて実施する法的整理には、再建型の『会社更生法』『民事再生法』と清算型の『破産』『特別清算』があります。

法的倒産

・会社更生法

企業が事業継続を目指すことができるのが、再建型になります。事実上に事業は継続しますが、会社更生法を申請すると帝国データバンクなどは倒産とカウントします。

債務を契約時の約定通りに支払いすることができなくなった企業が、裁判所が選定する更生管財人の指導のもとで、債権者などの利害関係者と協議して同意を得た“更生計画”の策定と実行を行います。

前述のとおり、会社更生手続きは社団法人の利用ができません。

・民事再生法

民事再生では、裁判所が該当企業を返済不能であると認めて、該当企業の債務減額などをします。民事再生は、法人や事業者を対象に5,000万円(住宅ローンを除く)超の債務総額が対象となるものと、それ以外の個人を対象とする個人再生があります。

会社更生は株式会社のみが利用できますが、民事再生であれば法人が対象となるため社団法人も利用することができます。

・破産

企業がその財産を清算する法的手続きで、倒産のなかの8割が破産になります。破産は、裁判所によって債務者が支払不能となったことが認められて破産手続き開始が決定されます。債務者の財産は全て債権者に平等に分配されることになります。

破産は、債務者自らが債務超過で支払不能であることを原因として破産を裁判所に申請するのが一般的です。しかし、債務者からの支払いを受けることができない債権者が債務者に対して破産を裁判所に申立てすることも可能です。

破産手続きが開始されると、破産管財人が資産を換価して債権者に対して配当案を策定して実行します。

・特別清算

特別清算は会社再生法と同じく株式会社のみが利用できる清算型の倒産方法になります。破産と比較して異なるのは、会社側が清算人を選任することができる点になります。

債務超過でかつすでに解散した株式会社が、迅速に清算するための手続きになります。申請を実施した以降は、特別清算協定案が清算人によって策定されます。協定案は、債権者集会に出席する債権者の過半数もしくは議決権総額3分の2以上の同意をもって可決されて、実行されます。

1−2 社団法人の解散事由

社団法人の解散事由

社団法人が解散する場合には、その解散事由にそって解散することになります。
一般的に解散事由は、定款に定めがある場合と定めがない事由に分けることができます。しかし、定款に解散事由を定めてある場合は稀です。一般的な社団法人の解散は、社員総会決議によるものとなっています。

≪社団法人の解散事由≫

定款に定めがある場合 存続期間の満了
解散事由に該当する
定款に定めがない場合 社員総会の特別決議
社員の不在*
合併後の消滅
破産手続き開始
解散命令または、解散の訴えによる解散を命ずる裁判があったとき**

*社団法人における社員は、社団法人の意思決定機関である社員総会で議案提出や議決権の行使を行う者になります。そのため、社団法人の社員は株式会社の“株主”に似た立場と言えます。社員は個人や法人や団体でもなることが可能です。

“社員の不在”とは、1人も一般社団法人を構成する社員がいなくなった状況を指します。一般社団法人は設立時には2名の社員が必要です。設立後には社員が1名の状態でも社団法人を継続できます。しかし、1名も社員がいなくなった場合には、社団法人を継続することができません。

**解散命令とは、法人の存在自体やその事業内容などが法令違反などによって公益に違反する場合、裁判所が実施する解散の命令を言います。類似するものに株式会社や合名会社などに対して実施される“会社の解散命令”があります。会社の解散命令は、株主や社員や債権者などの利害関係者が申立てできます。

・社員総会の特別決議

社団法人において、重要事項の決議は社員総会で実施します。法人を解散させる場合には、社員総会において特別決議として『総社員数の半数以上』が決議に参加している社員総会において『総社員の議決権の2/3以上の賛成』によって可決されます。

社団法人の社員は、多くないことが一般的です。そのため、2名しか社員がいない場合には2名の出席と同意が必要になります。また、3名の場合にも全員の出席と2名以上の同意が必要になります。

・休眠は5年

社団法人の登記の変更が5年間ない場合には、一定の手続きの後に解散と見なします。

2 社団法人の解散・清算の手続き

社団法人の解散・清算の手続き

設立した社団法人が前述の解散事由に該当した場合には、解散の手続きを行います。なお、解散はいつでも実施できます。解散は、その法人の存在を消滅する行為であり、一般的には主体的な行為になります。

解散の手続きは、『解散』と『清算』という2つの大きな手続きに分けることができます。
✓解散…行っていた事業や業務をすべて停止し、法人を消滅させる手続きに入ること
✓清算…法人を消滅させる手続きを行うこと

なお、清算手続きを実施する人は、清算人と呼びます。清算人は清算される社団法人で選任することや定款で定めておくことができます。

●債権者保護手続き

清算の手続きの中で大きな手続きが、『債権者保護手続き』になります。債権者保護手続きとは、清算する法人の債務を返済する手続きを言います。債権者保護手続きでは、債権者に対して2ヶ月の期間中に債権の申し出を受けることを官報に公告して広く申し出を待たなければなりません。また、すでに把握している債権者には個別で申し出を催告する必要があります。

2ヶ月の催告期間が経過した時点で申し出は締め切られます。締め切りまでに申し出があった債権について清算において返済を行います。清算手続きを経て残った資産(残余財産)は、定款の定めによって処分することができます。

一般社団法人では、残余財産は国や地方の公共団体もしくは公益法人などに贈与することが定款に定められています。もし、定款に残余財産の贈与先が定められていなければ、社員総会決議にて決定する必要があります。

清算手続きが完了すると、一般社団法人の財産が無くなります。この時点で初めて法務局へ清算結了登記を行うことができます。清算結了の登記をすることで最終的に法人格は消滅します。

2−1 手続きの流れ

社団法人が解散する時には、その多くは社員総会における特別決議で解散が可決される手続きが大半です。そのため、手続きの流れも社員総会の特別決議で解散する流れを説明します。

≪解散手続きの流れ≫

社員総会での解散特別決議
2 『解散』と『清算人選定』を主たる事務所を管轄する法務局での登記申請
3 財産目録と貸借対照表の作成などによる財産現況の調査
4 債権者保護手続き
5 税務署への解散届出と解散確定申告
6 債権者確定の後、残余財産の処分
7 社員総会での決算報告書の承認
8 『清算結了』を法務局での登記申請
9 税務署での清算確定申告と清算結了届の提出

この手続き概要における1~2の手続きが『解散』手続きになり、その後に続く3~8の手続きが『清算』手続きになります。8で社団法人の解散は完了しますが、その事後処理として税務署などへの届出が必要です。

2−2 手続き詳細

前述の解散の手続きの詳細について解説します。法人の解散は、あまり前向きな話ではありません。しかも、今まで所得を得ていた法人が解散・消滅するため、解散手続きを実施する人の解散以降の仕事や生活のことなど大きな岐路に立っていることも少なくありません。そのため、できるだけ短期間でかつ煩雑にならないよう、事前に下準備をすることをおススメします。

●社員総会での解散特別決議

社団法人を解散しようとする時には、社団法人の最高意思決定機関である社員総会の特別決議で決議します。なお、特別決議は総社員の半数以上の参加と、総社員数の3分の2以上の賛成が必要になるため、事前に経緯などを説明し同意を得ておくとスムーズに決議が進みます。

社団法人の特別決議で解散を決議する際には、以下の事項を主に決定させます。

≪主たる決議事項≫
✓法人の解散
✓いつ解散するのか(一般的には、社員総会の開催日をもって解散します。)
✓清算人の選任(定款に定めがない場合に必要です。)

清算人は、一般的には代表理事が選任されます。しかし、第三者を選任することも可能です。

●『解散』と『清算人選定』を主たる事務所を管轄する法務局での登記申請

解散の決議を経ると、その社団法人の代表は代表理事から清算人に移行します。清算人は、解散した日(解散日)から2週間以内に解散と清算人選任の登記申請を行います。登記は主たる事務所の住所を管轄する法務局で行います。なお、解散の登記を完了しても、まだ法人は消滅してはいません。

解散と清算人選定の登記申請には、必要書類があります。事前に用意する書類もありますので、注意が必要です。以下は、例として標準的な必要書類になりますが、登記の際には事前に登記をする法務局に問い合わせするようにします。

≪解散と清算人選定の登記申請時の必要書類≫

一般社団法人解散及び清算人選任登記申請書
2 定款
3 社員総会議事録
4 清算人の就任承諾書
5 印鑑届出書
6 清算人の印鑑証明書

上記とは別に、登記すべき事項がある場合には、別紙が必要になります。

解散と精算人の登記には、解散の登記に3万円と清算人選任に9,000円の合計3万9千円が必要です。

●財産目録と貸借対照表の作成などによる財産現況の調査

清算人は、就任後にすぐに財産現況の調査を開始することが求められます。具体的には、財産目録や貸借対照表を作成し、清算する法人がどれだけの財産があるのかを明確にする必要があります。

財産目録は、解散日における財産状態を示すものになります。解散時点で法人が所有する『資産』と『負債』と『正味財産』を記載します。資産には、所有する土地や建物や在庫、現金や預金や債権や売掛金などが含まれます。負債には、借入金や買掛金や未払い給与などが含まれます。正味財産とは、貸借対照表の資産から負債を差し引いた金額になります。

貸借対照表も、解散日における『資産』『負債』『純資産』を分けて記載します。仮に、清算結了するまでに長期の時間がかかる場合には、清算事務年度ごとの貸借対照表が必要になります。貸借対照表の純資産は過去からの利益の蓄積などが表示されます。

財産現況を把握する中で、まだ支払いを受けていない債権がある場合には請求していきます。ここで注意することとして、法人は清算結了すると消滅することになるので、それまでに支払いを受けなければいけないということです。そのため、支払期限が清算結了より先になっている場合などは相手との交渉を行う必要があります。また、回収できずに残ってしまった債権は最終的には債権放棄*などをおこない、債権がない状態にしなければなりません。

*債権放棄とは、債権者がもつ債権を放棄することを言います。つまり、請求する権利を捨てることになるので、債務者側にとっては債務免除になります。

●現務の結了

現務の結了とは、法人の事業を終了させることを言います。具体例は以下のようになります。

✔︎消費者や取引先との契約の終了
✔︎従業員の雇用契約に終了
✔︎商品の在庫や原材料などの処分
✔︎事務所や店舗などのテナント契約の解除
✔︎売掛金の回収などの未回収債権の請求と、未払い債務の支払い

●債権者保護手続き

一般社団法人が解散すると、債権者からすると請求先を失うことになります。そのため、解散しようとする法人は債権者を保護する動きをとることが求められます。その求めが債権者保護手続きです。

債権者保護手続きでおこなうことは大きく以下の2つになります。
・法人の解散を官報で公告する
・既に分かっている債権者へは個別の催告をする

気づかずに催告のし忘れが発生して債権者に公告することと、分かっている債権者が公告を見落とすことがないように個別で知らせるという対応をとることが債権者保護の手続きになります。

官報で公告
官報とは、国が発行元となる機関紙になります。この官報へ以下の事由を記載して広く知らせます。
✔︎法人が解散する事実
✔︎債権者である場合、定める期間内(一般的には2ヶ月以内)にその旨を申し出ること
✔︎期間内の申し出がなされない場合、清算から除斥されること

なお、官報への公告は、1行ごとに費用が異なってきます。1行22文字で3,000円前後×行数×消費税率と言った計算になります。10行程度使おうとすると、約3万円程度かかることになります。官報での公告は、省略することはできない義務になります。

債権者への個別催告

債権者保護の手続きは公告を行えば終わりではありません。自身でできるだけ債権者を把握し、把握できた債権者へ個別に催告書として郵送することが必要です。催告書の内容は公告と同じで構いません。公告は省略できませんが、債権者が把握できない場合には個別催告は省略できます。

●税務署への解散届出と解散確定申告など

主たる事務所がある住所を管轄する税務署や年金事務所などでも社団法人の解散に伴う手続きは必要です。なお、下記の手続き内容は、それぞれの社団法人によって詳細が異なってきます。手続きについては対応する機関に問い合わせを行うことが必要です。

≪税務署や社会保険関連の手続き≫

対象 手続き場所 手続き内容
税務関連 税務署・都道県税事務所・市区町村 解散の届出と、解散確定申告を行います。
社会保険関連 年金事務所 社会保険加入の場合には、保険適用事務所全喪届と資格者喪失の手続きを行います。
労働保険関係 労働基準監督署・ハローワーク 従業員への雇用保険に加入の場合には、離職証明書と雇用保険資格喪失の手続きを行います。
また、すべての従業員が退職したのちに、雇用保険適用事務所廃止の手続きを行います。
また、労働保険加入の場合には、労働保険料確定保険料申告書を届出します。

●債権者確定の後、残余財産の処分

残余財産とは資産を現金などにして、債務の弁済も終了して残った財産を言います。残余財産は定款や社員総会決議に則り処分します。

●社員総会での決算報告書の承認

清算人は、作成した財産目録や貸借対照表にもとづいて、決算報告書を作成して、社員総会で承認を得ることが必要です。

なお、法人の事業年度は1年になりますが、法人が解散すると事業年度が変更します。事業年度の開始が4月1日で、10月31日に解散した場合には、その10月31日までが『解散事業年度』になります。そして、11月1日からは『清算事業年度』が開始になります。

つまり、事業年度開始日から解散日までが解散事業年度で、解散日翌日からは清算事業年度になります。また、清算が1年で終了しない場合には、清算年度が繰り返す形になります。一方で、清算年度は残余財産が確定した日(清算手続き終了日)をもって終了します。この清算事業年度の開始日から残余財産確定日までを『残余財産確定事業年度』と言います。

解散や残余財産の確定によって事業年度が強制的に終了や変更になりますが、事業年度が変更したことに変わりがないため、それぞれの事業年度について確定申告が必要になります。

●清算結了を法務局での登記申請

清算結了は、会社の財産を清算して、消滅することを言います。清算結了の登記をすることで、法人が消滅することが認められます。

清算が結了したことを法務局で登記します。社団法人によって一部書類は異なりますが、概ね以下の書類が清算結了には必要となります。

≪清算結了の登記申請時の必要書類≫

一般社団法人清算結了登記申請書
2 社員総会議事録
3 決算報告書

上記とは別に、登記すべき事項がある場合には、別紙が必要になります。

清算結了には、清算しようとする法人の支店ごとに2,000円の費用が掛かります。

●税務署での清算確定申告と清算結了届の提出

清算によって、清算確定申告を実施します。清算確定申告は、残余財産確定日から1ヶ月以内に実施することが必要です。清算確定申告をもって、解散した法人の最後の確定申告になります。

同じく税務署で、清算結了届(異動届出書)と閉鎖事項が記載された登記事項証明書を提出します。これで、清算人の業務が終了します。

3 破産社団法人の理事の責任

破産社団法人の理事の責任

社団法人が債務を全て弁済したうえで解散した場合には、債権者に金銭的負担をかけることはありません。しかし、破産など債務の一部ないしは全部を払えないままにその法人が解散や消滅すると、債権者は金銭的負担を受けることになります。この債権者が金銭的負担を受ける代表的な事例が、破産による社団法人の解散になります。

では、破産をしたときにその社団法人の意思決定や経営を進めていた理事や役員に責任は問いたいと思うのが、債権者の心情です。しかし、法人が破産した場合に理事や役員が法的責任を負われることは原則ありません。これは、社団法人だけに限ったことではなく株式会社なども同様です。株主や取締役が破産した会社の責任を取って個人の負担を強いられることはありません。

つまり、社団法人などが破産した場合には、その債務の責任は誰も引き継いで負担することはありません。経営の責任を問われることはありますが、法律上法人と理事個人は完全に別人格になります。

一方で、理事は経営を執行する立場にいた人間であり、経営については責任を負うことは求められます。最後まで破産手続きならびに解散の手続きを完了させることに対しての責任があります。

しかし、状況に応じては理事などに請求が発生する場合があります。代表的な事例として破産管財人の否認権の行使があります。

●否認権

破産した社団法人の破産管財人から、社団法人の代表理事などに否認権が行使されて社団法人から譲りうけた財産や金銭の返還を請求されることがあります。

否認権とは、破産した者とそれと同視できる第3者の行為の効果を否定することを言います。行為の効果とは、不正に流出した財産になります。そのため、否認権を行使することで不正に流出した財産は元に戻ることにあります。

例えば、破産しようとして返済を停止した社団法人が代表理事への負債のみ優先的に返済していたとします。この場合に、代表理事への返済が管財人による否認権行使の対象となります。否認権行使が認められた場合には、この代表理事は社団法人からの返済された金銭を社団法人に返還する責任を負います。

つまり、破産手続きが開始すると、その破産手続き中の法人の財産は全部破産管財人が管理し処分を決めることになります。そのため、破産手続きの開始前に破産管財人の意向に沿うことなく、法人の財産を処分した場合には否認権行使の対象となります。

3−1 連帯保証

法人が金融機関などから融資を受ける際には、過去多くの場合に代表者(代表理事など)の個人の連帯保証が求められていました。規模が小さい中小企業においてはほぼ必須で連帯保証が求められていたというのが実態です。また、代表者一人分の信用では不足する場合には、その他の社員なども連帯保証に追加を求められることもあります。

●連帯保証とは

連帯保証は、契約の責任を連帯して負うことを言います。つまり、融資契約の連帯保証人は法人と言う主契約者に連帯してその支払い債務に対して保証することになります。

この代表理事などが連帯保証に入っている場合には、会社が破産などをして消滅したとしても代表理事としてではなく個人として債務を弁済する義務が残ります。さらに、主契約者である社団法人が破産をすると、一般的には期限の利益の喪失事項に該当します。つまり、毎月決まった金額を返済する権利である“期限の利益”が無くなることになります。その場合には、債権者は一括での支払いを請求する権利を行使します。

一括での支払いを請求された場合には、債権者と交渉をすることで和解契約などを締結して新たな分割契約を組みなおすことも可能です。しかし、多くの場合には法人が破産をした場合には連帯保証人である代表理事個人も支払不能になる結果理事の自己破産を申し立てることが多くなっています。

●保証人とは

保証人には、以下の権利が認められている点で連帯保証人と異なります。

≪保証人に認められている権利≫

分別の利益 複数の保証人が要る場合、保証人は自己の負担分のみの支払いが主張できます。
催告の抗弁権 債権者から督促を受けた場合、先に主契約者への請求を要求できます。
検索の抗弁権 主債務者への強制執行が可能な場合、主契約者への強制執行を優先することを主張できます。

この中で、主契約者が破産した場合に、連帯保証人より保証人が有利になるのは他にも保証人がいる場合の分別の利益のみになります。他に保証人がいる場合には、負担する債務を少なくすることができます。

しかし、他に保証人がいない状態で主契約者が破産した場合には、保証人と連帯保証人に差がありません。

3-2 賠償責任

損害賠償とは、不法行為によって発生した損害について賠償することを言います。社団法人の理事や監事または会計監査人には、その任務を怠ったことで損害が発生した場合にはその損害を賠償する責任があります。損害賠償責任は個人に発生するため、法人が破産していたとしてもその責任が消えることはありません。

理事には、業務執行権限があります。業務執行とは、その法人の事業計画を実現するための全ての業務の実行を行うことです。この業務執行には、社内と社外の2つの側面があり、社外的な部分でその社団法人を代表する業務執行権限を持つ理事が代表理事になります。また、理事が複数いる場合には、理事の過半数の同意をもって業務執行を決定していきます。

業務執行権限を持つ理事は、社団法人において大きな権限を持ちます。そのため、その権限を適切に活用させるために、理事は委任契約に基づいて“注意義務”を負います。また、委任された社団法人に対して“忠実義務”や、“競業避止義務”が課せられます

●注意義務

注意義務とは、社団法人の業務執行において善良な管理者の注意をはらって職務を行わなければならないという義務になります。(民法第644条)

社団法人がその事業や業務を行う上で遵守する必要がある法令や定款があります。注意義務を具体的に言うと、法令や定款を遵守する義務と、業務の執行を適正に実施して、他の理事や従業員の監督と監視の職務を行う義務になります。

●忠実義務

忠実義務とは、社団法人の理事には法令・定款・社員総会決議を遵守し、社団法人のために忠実に職務を実施する義務です(法第83条)。

注意義務と忠実義務に違反してその法人に損害を負わせた理事は、損害賠償の責任が発生します。その責任は自ら不祥事を起こして法人に損害が発生した場合に留まりません。法人内で発生した不祥事を知った時点から積極的な損害回避の方法の検討を怠ったため注意義務違反が認められた高裁の判決もあります(大阪高裁平成18.6.9)。

理事を務めていた社団法人が破産をした場合には、理事個人の責任を問われることはありません。しかし、注意義務や忠実義務を怠ったことが認められれば、損害を被った債権者などから損害賠償を請求される可能性があります。

●責任の免除

役員の責任が重く法人において過失が発生したら個人での負担を強いる状況下では、理事や監事の責任を負う人間が不在になってしまう懸念があります。

そのため、一般法人法では役員などの責任免除の条文を設けています。約款に責任免除の規定を設けることで、以下の3つの事項を満たすことで役員などの責任は免除されます。
✓行為は善意にもとづいている
✓重大な過失がないこと
✓理事会決議または理事会非設置法人では理事の過半数の同意

ただし、定款に責任免除の条項を定めてあったとしても、役員などの責任のすべてを免除されることはなく、一部免除に留まります。

●競業避止義務

競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)とは、在職中ないしは退職後に委任契約のあった法人の事業に対して競合する企業や組織に所属することを禁止する義務になります。競業避止義務は、理事や社員だけでなく従業員まで適応される義務になり、競業行為を禁止することで法人が不利益を負わないための義務になります。

義務に違反した場合には、競業行為の差止め請求とあわせて退職金の支給制限が課されることや損害賠償責任を追及されます。

所属した社員が自社のノウハウや得意先企業をもったまま競合他社で勤務することや独立されることは、企業の利益を損ないます。一方で、競業避止義務は個人の職業選択の自由を制限する一面も併せ持ちます。そのため、競業避止義務の有効性は『競業避止義務契約の有効性』(経済産業省)や過去の判例を参考にしながら判断されています。

上記の競業避止義務契約の有効性のポイントの一つに『従業員の地位』があります。従業員の地位とは、“企業が守るべき利益”に必要な人材であったかということが重要になります。形式的な地位にあった理事などは該当しない可能性がありますが、実質的にも法人の業務執行に深くかかわっていた場合には有効性が非常に高まります。

4 倒産を避ける方法

倒産を避ける方法

社団法人などがその社会的使命を終えて解散することは、時として必要な場合もあります。しかし、法人が倒産することは、社会にとってマイナスしかありません。そのため、社団法人の業務執行を取り仕切る理事はできうるかぎり倒産を避けなければなりません。

倒産を避けるために必要なことは、『事業価値を高く維持すること』です。事業価値とは、法人の事業活動自体がもっている価値です。基本的には、事業が今後どれくらい利益などの価値を金額に算定したものになります。

事業の価値が最も分かりやすいのは、利益がでていることです。社団法人においても、利益を出す事は重要で、顧客を満足させるサービス価値に見合った売り上げを確保できるからこそ、利益を稼ぐことができます。一方、Amazonが長年利益を出さない状況を続けていたことは有名な話ですが、利益がでていなくても事業価値が認められることもあります。

事業価値に似た言葉で企業価値という言葉があります。企業価値は、企業が持つ価値になります。事業価値と企業価値は同じように聞こえるかもしれませんが、企業価値には事業価値が含まれています。しかし、1つの事業価値が高かったとしても、他の事業価値が著しく低い場合や事業以外の価値である非事業価値が低い場合には企業価値が低くなってしまう場合もあります。

そして、倒産する可能性がある企業や法人の企業価値は低い状態です。しかし、倒産しようとする企業がもっている事業価値が高い場合も少数ではありますがあります。事業価値が高い場合には、倒産を避けられる可能性が高まります。

●資金不足

法人が倒産する原因は、資金不足の状態が継続することです。資金不足とは、手元の現金や預金など支払のための資金が実際の支払しなければいけない金額を下回って不足する状況です。現在のコロナ禍の緊急事態宣言によって短期間に売上が激減する場合など資金の不足が発生しやすい状態と言えます。

そして資金不足の状態が継続していくと、事業を継続するために必要な仕入れ代金や取引先への支払いや従業員への給与などが支払いできない状況になって、最悪な状況として事業の継続ができない状況となり、破産することになります。

資金不足から回復するためには、大きく以下の2つの方法があります。
✓ 支払額を少なくする
✓ 資金を調達する

支払額を少なくするためには、債務総額を変えずに支払いを伸ばす方法と、債務自体をカットしてもらう、という2つのパターンとその両方を同時に行うことが必要です。いずれの方法でも、債権者の理解と協力が不可欠です。

支払を待つことや支払をカットすることは債権者にはメリットがないことにみえますが、このまま請求を継続して破産されると回収見込みが減ってしまいます。それよりは待つことで資金不足が解消することを選択する債権者は少なくありません。

また、資金を調達することでも資金不足は回復します。資金調達は、不動産などの固定資産売却による現金化や金融機関などから融資を受けるなどの方法があります。しかし、一般的に営利を上げることを目的としていない社団法人などは金融機関からの融資を受けることは簡単ではありません。

一般社団法人は、利益や解散時の残余財産の分配ができません。そのため、返済の原資が株式会社などの営利法人と比較して少ないと判断されます。しかし、まったく社団法人が融資を受ける可能性がないわけではありません。融資ができるかどうかの判断も、事業価値によって大きく影響を受けます。

今後事業で収益を継続的に上げていけると判断できる場合は、その収益分が返済原資になるからです。

●基金制度

また、社団法人には株式会社にはある資本金制度がない代わりに、基金制度があります。基金とは、社団法人の社員や第3者など社団法人の活動に賛同してくれた人から集めた資金で、法人の活動資金や基礎財産になります。

基金は、社団法人の経営安定化を目的に資金を集める制度であり、一定の要件で返還義務があります。返還義務がある点で、基金と寄付金は異なります。基金は、返還義務はあるものの金利や配当金などを支払いする必要はありません。また、社団法人の解散時点でしか返還しないなどの条件を付けることができます。

株主の自己の利益を目的とする出資と異なり、あくまで賛同と事業の安定を目的としている点が、出資と基金の大きな差となっています。基金をを得ることによって資金不足を解消することも選択肢にはいります。

4−1 債務整理(私的整理と法的整理)

資金不足時に倒産しないためには、支払=債務を減らす方法を債務整理と言います。債務整理には『法的整理』と『私的整理』の二つの方法があります、

●法的整理と私的整理の選び方

債務整理を実施しようとする時には、裁判所の協力を得る法的整理と裁判所以外で債権者との個人交渉の私的整理のどちらの方法を採用するかを決定しなければなりません。

決める上での判断基準になるのは、どの程度の債権者の協力を得なければいけないのかという点になります。債権者全員に近い協力が必要な場合には、法的整理を選択します。法的整理であれば、すべての債権者に一同に債務自体の減額や返済金額の減額を法的処理の元に依頼することができます。

一方で、一部の債権者のみの協力が必要な場合には、私的整理を選択します。例えば、1社の返済額が大きく負担になっている場合には、その1社に対して返済方法の相談にのってもらうことで資金不足が一気に解消する場合もあります。

4−2 合併

社団法人も合併をすることができます。事業価値が高い場合には、その事業価値を活かして資金力があって事業上の相乗効果が期待できる社団法人に吸収合併することも選択肢になります。吸収合併を行うと、1つの社団法人は消滅します。しかし、消滅する社団法人の権利義務は存続する社団法人が承継することになります。

そのため、資金力がある社団法人と合併することでも資金不足を解消し、倒産を回避することも可能です。

なお、社団法人は株式会社や特定非営利活動法人など異なる法律によって法人格を認められている法人とは合併することができない点は注意が必要です。

5 まとめ

まとめ

社団法人も倒産することがあります。また、倒産した場合でも理事の個人には連帯保証等になっていなければ返済義務は及びません。しかし、理事の責任である、注意義務や忠実義務に違反していた場合には、損害を賠償する責任を負うことになります。

倒産をすると、債権者だけでなく、従業員や取引先やお客様にも大きな影響があります。そのため、できるだけ倒産は避けるべきです。一方、現在は先行きが見えにくい世の中であり、資金不足などにならないことが一番ですが、万が一資金不足になった場合に次の手も用意しておくと安心です。

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