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一般社団法人を設立するメリットって何?デメリットはある?

「一般社団法人」と聞くとどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。一般社団法人は、株式会社や合同会社と比べて知名度こそ低いものの、意外と設立数の多い法人格として知られています。

そこで今回の記事では、一般社団法人を設立するメリットとデメリットについてわかりやすく解説します。一般社団法人の概要や他の法人との違い、設立プロセスなどについても併せて解説するので、一般社団法人の設立を検討している方はもちろん、メリットやデメリット、他の法人格との違いを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

1 一般社団法人とは

一般社団法人とは

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律に基づいて設立が認められている法人の形態です。

1-1 一般社団法人の意味

その最大の特徴は、非営利の法人である点です。非営利の法人とは、営利の獲得を目的としない法人を意味します。ただし、あくまで利益の分配を行うと問題になるだけで、営利を目的とした事業を行ってはならない訳ではありません。事業で利益を獲得した場合は、株主や従業員に利益を分配するのではなく、次年度以降の事業運営に回すことになります。

なお、「社団法人」とは、ある特定の目的で構成員(社員)が集まってできた団体のうち、法人格を持つ団体を意味します。あくまで社員の集まりが主体となるため、設立時に資金や保有財産に関する規定は存在しません。

1-2 一般社団法人の変遷

従来から日本では、民法の規定に基づいて社団法人を設立することが認められていました。ただし設立には許可が必要であり、誰でも手軽には設立できない法人の形態でした。

ところが、2000年代に公益法人の制度改革の一環として、一般社団法人の設立が認められるようになりました。制度改革前に存在していた社団法人は、その実態により「一般社団法人」と「公益社団法人」に分けられることとなりました。

一般社団法人の変遷

従来の社団法人とは異なり一般社団法人は、一定の手続きを行いさえすれば、誰でも手軽に設立できる法人となっています。現在では、広く一般社団法人もビジネスシーンで見かけるようになっています。(一社)という略称が使われている法人は一般社団法人ですので、覚えておいて損はないでしょう。

1-3 一般社団法人の数

東京商工リサーチの調査データによると、一般社団法人の設立数は、ここ数年で増加傾向にあります。2012年における一般社団法人の設立数は3,698社でしたが、その後設立数は右肩上がりに増え続け、2017年には6,387社と大幅に増加しました。2018年には5,982社と若干減少しましたが、数年前と比べると大幅にその数は増えています。

なお新設法人の全体数における一般社団法人の構成比率も、2012年以降大きく上昇しています。2012年には3.5%でしたが、2018年には4.7%まで増えています。

以上のデータから分かる通り、一般社団法人の数は増加しており、人気が上昇していると言えます。

参考:2018年「一般社団法人」の新設法人調査 東京商工リサーチ

1-4 一般社団法人の種類(非営利型と営利型)

一般社団法人の種類(非営利型と営利型)

一般社団法人の種類は、税法上の観点から見ると「非営利型の一般社団法人」と「営利型(普通型)の一般社団法人」の2種類に分けられます。

非営利型とは、法人税法で定められた収益事業にのみ税金が課税され、それ以外の事業には税金が課税されないという特例が適用される一般社団法人です。

一方、営利型とは、株式会社や合同会社と同様に、すべての事業で得られた利益に対して課税が発生する一般社団法人です。

非営利型の一般社団法人はさらに「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2種類に大別でき、それぞれ非営利型の一般社団法人として認められる要件が異なります。

非営利性が徹底された法人の場合、非営利型として活動するには下記4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 1.剰余金の分配を実施しない旨を定款に定めている
  2. 2.解散した際に、余った財産を国や地方公共団体、一定の公益団体に贈与する旨を定款に定めている
  3. 3.上記1および2の定款の定めに違反する行為を行う旨を決定、もしくは行った経験がない
  4. 4.それぞれの理事に関して、理事とその親族等である理事の合計人数が、理事の合計人数の3分の1以下である

これに対して、共益的活動を目的とする法人の場合は、非営利型として活動する上で下記7つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 1.会員に共通する利益を図る活動を実施する旨を目的にしている
  2. 2.定款などに会費について定めがある
  3. 3.主な事業として収益事業を行っていない
  4. 4.定款に特定の個人または団体に剰余金の分配を行う旨を定めていない
  5. 5.解散したときにその残余財産を特定の個人または団体に帰属させる旨を定款に定めていない
  6. 6.上記1から5まで、および下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人もしくは団体に特別の利益を与える旨を決定、または与えた事実がない
  7. 7.それぞれの理事に関して、理事とその親族などである理事の合計人数が、理事の合計数の3分の1以下である

上記の要件に該当しない場合は、営利型の一般社団法人となり、税法上の利点がなくなってしまいます。

1-5 一般社団法人の「社員」と「役員」

一般社団法人は、社員と役員である「理事」と「監事」によって構成されます。

一般社団法人における社員は、あらゆる重大な意思決定を行う社員総会で議決権を行使する権限を持っています。一方で理事は、業務の執行や事業の運営を担う役員です。そして監事とは、事業報告書や計算書類を監査したり、財産の状況を調査する権限を持つ役員です。

一般的な営利企業と一見すると名称は似ているものの、社員や役員の持つ役割は異なるため注意が必要です。

2 一般社団法人とその他法人との違い

一般社団法人とその他法人との違い

法人の種類には、一般社団法人の他にも、株式会社や合同会社、一般財団法人などさまざまあります。一般社団法人は、そうした他の法人とはどのような違いがあるのでしょうか?この章では、一般社団法人とその他の法人との違いをわかりやすく解説します。

2-1 株式会社や合同会社との違い

一般社団法人と株式会社や合同会社との最大の違いは、事業の主な目的です。

一般社団法人は、あくまで非営利活動や社員の共有利益を獲得する目的で事業を行います。一方で株式会社や合同会社の場合は、営利の獲得を目的に事業を行います。株式会社や合同会社は営利の獲得を目的にしているため、事業で得られた収益が手元に余った場合には、株主や従業員に分け合うことが認められています。

また株式会社に限定して比較した場合は、社員の持つ役割にも大きな違いがあります。前述したとおり一般社団法人の場合は、経営の重大な意思決定にも決定権を持ちます。一方で株式会社の場合は、社員はあくまで業務を行う役割のみを持ち、経営の意思決定には基本的に関与しません。

2-2 一般財団法人との違い

一般社団法人と一般財団法人を比較した場合、法人の主体に大きな違いがあります。一般社団法人の場合は、人の集まりである「社団」が法人の核となる存在です。一方で一般財団法人の場合は、財産の集まりが法人のメインとなります。

一般財団法人の主体はあくまで財産となるため、設立にあたっては財産の出資が必須条件となります。具体的には、300万円以上の財産の拠出が必須です。

設立時に財産の拠出が不要となる点で、設立の難易度は一般社団法人の方が低いと言えるでしょう。

2-3 公益社団法人との違い

「社団法人」というくくりで見た場合、一般社団法人と公益社団法人にも違いがあります。公益社団法人とは、「公益事業」を行うことを主な目的として設立された社団法人です。簡単にいうと、不特定多数の人たちの利益につながる事業を行う社団法人です。

公益社団法人は、一般社団法人の中でも、「公益社団法人および公益財団法人の認定等に関する法律」に関する認定を内閣総理大臣もしくは都道府県知事から受けることで設立できます。つまり、一般社団法人の中でも公益性の高い社団法人となります。

一般社団法人よりも設立が困難である上に、監事の人数や報告義務などの面でより制限が厳しいです。ただし公益社団法人の方が、より社会的な信用性が高い上に、税制や寄附金に関する優遇面でのメリットは大きいです。

2-4 NPO法人との違い

非営利法人という点で共通点を持つNPO法人と一般社団法人。しかし両社には、あらゆる点で違いがあります。

まず最大の違いは、事業として運営できる分野です。比較的自由に事業を行える一般社団法人とは違い、NPO法人は法律で定められた特定の分野でのみ事業運営が認められています。また、法人を設立する際の要件にも大きな違いがあります。一般社団法人の場合は最低2名の社員が必要ですが、NPO法人の場合は社員が10名以上いなくては設立できません。

加えて、情報公開の有無にも違いが見られます。一般社団法人の場合、事業報告書などの公開義務は一切ありません。一方のNPO法人では、事業報告書や活動計算書などの公開が義務となっています。

総合的に見ると、NPO法人の方が設立や運営に関して厳しい条件が設けられています。ただし厳しい分だけ、税制面などでの優遇が大きいため、どちらが良いかはケースバイケースと言えます。

3 一般社団法人を設立するメリット

一般社団法人を設立するメリット

一般社団法人を設立する上で、最も気になるのが設立で得られるメリットでしょう。株式会社や個人事業主などと比較した場合、一般社団法人には特有のメリットがたくさん存在します。そこでこの章では、一般社団法人を設立するメリットを10個ご紹介します。

一般社団法人を設立するメリットを10個

3-1 設立手続きが簡単

最大のメリットは、なんと言っても設立時の手続きがとても簡単である点です。NPO法人や公益社団法人の場合は、設立に関して厳しい条件を満たす必要があります。

一方で一般社団法人の場合には、法務局にて行う登記申請のみで設立することが可能です。手続きが大幅に少なくなるため、書類作成などに要する時間や手間を大幅に省くことが可能です。株式会社と同様に1ヶ月以内で設立を完了できるため、スムーズに事業を始めることができます。

また、設立時に必要となる社員も2名のみと、NPO法人よりも少ない人数で事業を行える点も大きなメリットです。

3-2 設立コストを安く抑えることができる

一般社団法人を設立する2つ目のメリットは、設立コストを安く抑えることが可能である点です。

株式会社の場合は資本金、一般財団法人の場合は財産の出資が必要となります。株式会社の資本金は1円からでも問題ありませんが、信用力の点から考えて100万円以上は欲しいところです。つまり株式会社や一般財団法人を設立するには、数百万円ほどのコストが必要となるわけです。

ところが一般社団法人の設立では、資本金や財産の出資は必要ありません。そのため、定款認証や登記、多少の事務手数料のみで設立が可能です。大体11〜13万円で設立できるため、資金力がなくても事業を始めやすいです。

3-3 設立や運営において事業内容に制限がかからない

NPO法人と比較した場合、行う事業の内容に一切の制限がない点も一般社団法人のメリットです。

NPO法人の場合は、法律で定められた20の業種でないと、事業を運営することは認められません。一方でNPO法人は、設立や事業の運営にあたって特段の制限はありません。業種が限定されないだけでなく、営利目的でなければ株式会社や合同会社と同様に収益事業も行うことが可能です。収益事業で得られた利益を、公益性の高い事業に回すことも可能です。

「一般社団法人は収益事業を行えない」という間違った認識を持つ方もいますが、実際には問題なく行えますので覚えておきましょう。

3-4 法人名義での契約が可能

一般社団法人に限った話ではないですが、法人名義での契約が可能となる点も、個人事業主と比べると大きなメリットです。

株式会社や合同会社などを設立すると、法人格を持つことができます。法人格を持つことで、日々の取引で締結する契約や不動産契約、銀行口座の開設など、あらゆる場面で法人名義で契約を締結できるようになります。一般社団法人も法人格を持つため、当然法人名義での契約が可能となります。

特に行政機関との委託事業を行う際に、法人名義での契約が必須条件となるケースが多いです。そのため、個人で公益性の高い事業などを行う場合に比べて、よりビジネスチャンスが広がります

3-5 小さな事業規模で立ち上げることが可能

一般社団法人を設立する5つ目のメリットは、小さな事業規模で立ち上げることが可能である点です。前述したとおり、一般社団法人は最低2名の社員がいれば設立できます。理事1名も必要ですが、社員との兼任が可能ですので2名からの設立が可能です。

NPO法人とは違い人をたくさん集める必要がないため、ご自身と知り合いや家族などを集めれば小さな事業規模で始めることが可能です。株式会社ならば1名から設立できますが、設立費用の面では一般社団法人の方が安いため、より小さな規模で設立できるといえます。

これまで個人的に行なっていた公益性の高い事業を、より本格的に行いたいという場合に最適な法人の形態と言えます。

3-6 公益性の高い企業というイメージを持ってもらえる

公益性の高い企業というイメージを持ってもらいやすい点も、一般社団法人を設立するメリットの1つです。

従来の「社団法人」は、元々公益性の高い企業として設立されていたものでした。そのイメージをいまだ持つ方が多いため、たとえ公益性があまり高くない事業を行っていても、公益性の高い企業というイメージを持ってもらえる可能性があります。

公益性が高いと思ってもらえれば、たとえばお堅い機関などとの契約で有利になったり、顧客に商品やサービスを受け入れてもらいやすくなる可能性があります。100%有利とは言えないものの、公益性の高さはあって損はないイメージです。

3-7 社会的な信用力が高い

公益性の高さだけでなく、一般社団法人は社会的な信用力も高いイメージがあります。というのも、「公益性が高い=社会的にしっかりと活動している」と考える人が多いためです。

もちろん実際に社会的な活動をしっかりしているのはベストです。しかし株式会社などの場合、たとえ社会的に意義のある活動をしていても、「金目当て」や「胡散臭い」と思われるリスクが少なくありません。一方で一般社団法人の場合、公益性が高いからという理由で、社会的な信用力も高くなる傾向があります。そのため、会社が行っている事業を認めてもらいやすいわけです。

加えて、個人事業主や任意団体として公益性の高い事業を行う場合と比べて、法人格があること自体が信用力の高さにつながります。ある程度本格的に社会的な事業を行いたい場合は、一般社団法人を設立するとしないでは大きな違いを生むでしょう。

3-8 寄付などを集めやすい

一般社団法人を設立すると得られる8つ目のメリットは、寄付や基金などを集めやすい点です。

一般社団法人は株式会社とは違い、資本金の制度がありません。そのため、本業活動を行うためには収益事業などからその資金を賄わなくてはいけません。しかし収益事業で収入を得ることは簡単ではありません。

そこで一般社団法人の資金調達源として重要となるのが、寄付や基金です。寄付とは、活動内容に共感や理解を示してくれた第三者から、返済不要の資金を受け取る方法です。一方で基金とは、社員やそれ以外の第三者から返済義務を負った上で資金を調達する方法です。こうした制度を活用すれば、一般社団法人でも本業の運営に必要な資金を賄うことが可能となります。

特に一般社団法人の場合、公益性の高さから寄付などを募りやすいです。そのため、活動内容やアピールの方法次第では、潤沢な資金を確保することも可能です。

3-9 税制面での優遇を受けることが可能

一般社団法人のメリットとして、忘れてはいけないのが税制面での優遇です。株式会社や合同会社の場合、事業内容に関係なく原則すべての利益に課税されます。

一方で一般社団法人の場合、「非営利型」の条件さえ満たせば、収益事業以外の活動から得られた利益は非課税となります。そのため、株式会社や合同会社などと比べると大幅に節税することができます。収益事業から得られた利益をそのまま公益性の高い非営利事業に回せるため、本格的に本業を進めることができるでしょう。

ただし非営利型の条件を満たさなければ、このメリットは得られません。税制面での優遇を受けたいならば、前述した「非営利型」の条件は必ず満たすようにしましょう。

3-10 行政からの干渉をあまり受けずに済む

NPO法人で非営利活動を行うと、常に所轄官庁から業務が適切に行われているかを監督され、問題があれば指導を受けることになります。そのため、自由に事業を運営していくのは難しいです。また、事業年度が終了するたびに、事業報告を提出する義務もあります。加えて、事業目的の変更や社名の変更時にも、わざわざ認証を受けなくてはいけません。

ところが一般社団法人には、業務を監督する制度がありません。そのため、事業の運営に関して一切行政からの干渉を受けずに済みます。NPOとは異なり事業年度が終わるたびに事業報告を提出するなどの義務もないため、余分な手続きに手間取ることもありません。

4 一般社団法人を設立するデメリット

一般社団法人を設立するデメリット

あらゆる点でメリットの多い一般社団法人ですが、実はメリットばかりではなくデメリットも存在します。メリットだけを設立すると思わぬ痛い目を見るリスクがあるため、あらかじめデメリットも把握しておくことが大切です。一般社団法人のデメリットとしては、下記8つに注意が必要です。

一般社団法人を設立するデメリットを8個

4-1 会計処理が複雑

一般社団法人の設立で注意すべき1つ目のデメリットは、会計処理が複雑になることです。まず注意すべきなのが、非営利型か営利型によって会計処理の方法が異なることです。実態に合わせて会計処理を変える必要があるので面倒です。

また、収益事業とそれ以外の事業でも会計処理を分けて行う必要があります。いちいち分けて処理しなくてはならないため、経理の手間が増えてしまいます。他にも補助金による収入などが多い場合には、消費税に関して例外的な会計処理を行う必要があるなど、処理内容は一般的な株式会社と比較して複雑です。

たとえ小規模に事業を行うとしても、会計処理は必須です。一般社団法人の会計処理に関する知識がないと、満足に事業を運営できないので注意を要します。

4-2 理事や監事の任期更新のたびに登記が必要

一般社団法人の役員にあたる理事や監事には、それぞれ任期があります。具体的に理事は最長2年、監事は4年となっています。この任期が切れた際に、毎回登記が必要となる点は一般社団法人を設立するに際して、前もって注意しなくてはいけません。

注意すべきは、たとえ同じ人が引き続き理事や監事を行う場合でも登記が必須となる点です。最低でも2年に1回は、登記のための書類作成や手続きに面倒な手間が発生します。手間がかかるだけでなくコストもかかるため、登記前はある程度資金に余裕を持っておく必要があります。

本業の活動が忙しい中で、わざわざ任期更新の手続きが必要となる点は、忙しい方にとっては大きなデメリットに感じられるでしょう。

4-3 書類作成の煩雑さや手間が増す

任意団体や個人事業主と比べた場合、書類作成の煩雑さや手間が増える点も、一般社団法人のデメリットとなります。

たとえば前述した役員の登記でも面倒な書類作成が必要です。また、毎年一回行う社員総会に必要な資料や会計処理で必要な書類など、あらゆる場面で頻繁に書類作成の義務が発生します。株式会社や個人事業主とは必要な書類や作成方法が異なることも多いため、新しくその知識を付けなくてはいけません。

書類作成に意外と手間がかかるため、本業に集中したくてもできなくなるリスクもあるので注意です。

4-4 毎年一回は必ず社員総会を開催しなくてはならない

先ほど軽く触れましたが、一般社団法人を設立したら、毎年一回はかならず社員総会を開催しなくてはいけません。社員総会とは、一般社団法人の組織運営や管理などに関する重要な事項を決定する会議です。株式会社で言う「株主総会」に相当し、社員一人一人が議決権を行使できる点が特徴です。

この社員総会を開催するために、面倒な手続きが多々発生する点が大きなデメリットとなります。たとえば社員総会を開催する際には、「社員総会の日時・場所」などを理事が決定する必要がある上に、社員に対して召集通知を発送する手続きも必要です。

4-5 社員に利益を配分することができない

根本的なデメリットとして、社員に利益を配分できない点も一般社団法人のデメリットです。株式会社の場合、事業で得られた利益が余った場合、株主や社員に利益を分配することが可能です。そのため、社員には利益をもらうために頑張ってもらえますし、株主には配当をもらうために出資をしてもらえます。

しかし一般社団法人の場合は、非営利の法人なので余った利益を社員に分配することができません。そのため、社員はどれほど頑張っても収入を増やすことは原則できません。配当金をモチベーションにして働いてもらうことができない点は、一般社団法人ならではのデメリットと言えます。

4-6 非営利型でない限り株式会社と実態が変わらなくなる

一般社団法人を設立する上で注意すべき6つ目のデメリットは、非営利型でない限り株式会社と実態が変わらなくなる点です。

非営利型の一般社団法人であれば、収益事業以外が非課税となるメリットを得られます。しかし非営利型でない場合、事業で得られたすべての利益に税金が課税されてしまいます。つまり税制面からのみでいうと、株式会社と比べて特段のメリットがなくなってしまうのです。

そもそも株式会社でも、やろうと思えば公益性の高い事業などを行えます。税制面でのメリットがない以上、知名度の高い株式会社の方が契約で有利になる可能性すらあります。そう考えると、非営利型でない一般社団法人を設立するメリットはそこまで大きくないと言えるでしょう。

4-7 株式による資金調達や上場が不可能

株式会社と比べた場合、株式による資金調達や上場が不可能となる点が大きなデメリットとなります。

株式会社の場合、株式を投資家に渡す対価として、返済不要の資金を調達することができます。上場すれば全国にいる投資家から幅広く投資を募ることができ、多額の資金をスムーズに調達できます。また、上場することで経営者は多額の利益を得られる可能性もあります。

一般社団法人には株式がないため、上記の恩恵を一切得ることができません。特に上場が不可能であるため、大きく事業を拡大させることは難しくなります。ある程度本格的に事業を拡大させたい場合には、株式会社の設立が適しているでしょう。

4-8 株式会社と同様に社会保険への加入手続きが必要

株式会社と比べると事業の成長面でメリットが少ない一般社団法人ですが、株式会社と同様に社会保険への加入は必須となります。社会保険への加入手続きには時間と手間がかかるため、前もって知っておかないと苦労することになるでしょう。

一般社団法人のメリットとデメリットは以上となります。株式会社などの他の法人と同様に、一般社団法人にはメリットのみならずデメリットもあります。メリットとデメリットを比較検討した上で、設立するかどうか決めましょう。

5 一般社団法人はどのようなケースに適している?

一般社団法人はどのようなケースに適している?

メリットとデメリットを踏まえた上で、一般社団法人はどのようなケースに適しているかを把握しておきましょう。ここで紹介するケースに該当する場合には、一般社団法人の設立が最適と言えます。

5-1 公益性や共益性の高いビジネスを行うケース

公益性や共益性の高いビジネスを行いたい場合、一般社団法人が適しています。公益性とは、幅広い人にとって利益となることを意味します。たとえば、医療や福祉、教育などの分野に関する事業は幅広い人からのニーズがあるため、公益性が高いビジネスと言えます。また、貧困や性差別などの社会問題の解決を目指すビジネスも公益性が高いため、一般社団法人での運営に適しています。

一方で共益性とは、一定範囲内の人たちにとって共通する利益を意味します。たとえば社団法人内の社員が共通して得られる利益を目指す場合、共益性が高く一般社団法人に適していると言えます。

5-2 いわゆる「協会ビジネス」を行うケース

一般社団法人は、協会ビジネスを行うケースにも適している法人です。協会ビジネスとは、特定の業界や地域、職業の分野において、共通利益の獲得や社会貢献を目指す「協会」を設置し、収益を得ようとするビジネスモデルです。

たとえばマイナーなスポーツを普及させるための協会や、特定業種の人たちが集まって社会貢献を目指す協会があります。協会ビジネスは、特定業種や職業、地域の知名度向上や活性化などのメリットを期待できます。また、協会内の社員が同じ利益を共有しつつ、社会的な貢献活動も可能となります。

6 一般社団法人を設立するプロセス

一般社団法人を設立するプロセス

一般社団法人のメリットを踏まえて、実際に設立したいと思ったら設立までのプロセスを知っておかなくてはいけません。一般社団法人を設立する際には、基本的に下記のプロセスを進めていきます。

6-1 最低限必要な人数だけ社員と理事を確保・選任する

前述したとおり、一般社団法人の設立に際しては、最低でも社員2名(理事は兼任可)を確保する必要があります。ですので、まずは最低限必要な人数だけ社員と理事を確保・選任しなくてはいけません。

ただしご自身が社員兼理事になれば、実質的に集める人数は1人となります。家族や理念を共感できる人を1人でも集めることができれば設立できるので、人数を確保するのはそこまで難しくないでしょう。

なお必要に応じて、監事や会計監査人を選任することも可能です。とはいえ必須ではないため、小規模な事業を行う場合は不要でしょう。

6-2 法人運営に関する基本的な事項を決定する

次に、法人運営に関する基本的な事項を決定します。一般社団法人に限らず、法人を設立する際には「法人の名称」や「役員構成」、「事業目的」、「事業年度」くらいは最低限決定しておかなければ、事業を行っていくのは困難です。よって人数を確保したら、これらの項目をどうするかを話し合いで決定します。

なお一般社団法人の社名は、「〇△一般社団法人」や「一般社団法人◯△」とするのが一般的です。一部活用できない記号はあるものの、基本的にはどのような社名も認められます。事業目的は事業の具体的な内容です。前述したとおり、NPO法人とは違い特に事業内容に制限はないため、行いたい事業を目的に設定すれば良いでしょう。

6-3 法人運営で必要なものを事前に準備する

一般社団法人を実際に運営すると、契約の締結などで代表印や印鑑証明書などが必要となります。作成は必須ではないものの、契約などをスムーズに行えなくなる可能性もあるため、あらかじめ準備しておくのがベストでしょう。

とくに法人の代表印は、後ほど行う登記申請で必須となります。登記申請をスムーズに行うために、このタイミングで作成しましょう。

6-4 定款を作成する

一般社団法人を設立するに際して、次に行うべきは定款の作成です。定款とは、一般社団法人を運営する上で遵守すべき基本的なルールをまとめたものです。定款に関しては、社員が共同で作成し、記名押印または署名を行う必要があります。

定款に記載する内容は、大きく「絶対的記載事項」、「相対的記載事項」、「任意的記載事項」の3種類に分けられます。絶対的記載事項は記載しないと定款全体が無効となる項目です。具体的な記載項目としては、主に下記が該当します。

  • ・法人名
  • ・主な事務所の所在地
  • ・事業目的
  • ・設立時の社員の氏名もしくは名称・住所
  • ・事業年度

一方で相対的記載事項は、定款に記載しないと効力を持たない項目です。具体的には理事や漢字の任期、基金、経費の負担に関する定めなどがあります。そして任意的記載事項とは、任意で自由に記載できる項目です。具体的には、事業年度や役員の人数、監事や理事の報酬などに関する項目が該当します。

一般社団法人の定款を作成する上で注意すべきは、記載しても無効となる項目がある点です。具体的には、下記の項目を定款に盛り込んでも無効となります。

  • ・社員に対して残余財産や剰余金の分配を受ける権利を付与すること
  • ・社員総会の決議事項に関して、理事や理事会、その他の機関が決定できるとすること
  • ・社員総会におけるすべての決議事項に関して、社員が議決権を行使できないとすること

6-5 公証役場で定款の認証を受ける

作成した定款は、公証役場と呼ばれる場所で認証を受けます。公証役場とは、公正証書の作成や私文書の認証などを行う機関です。定款の認証に関しては、主な事務所の所在地を管轄している公証役場にて実施します。

定款の認証を行うには、手数料として5万円の費用がかかるので、こちらも忘れずに用意しておきましょう。

6-6 設立登記に必要な書類を準備する

定款の認証が終わったら、いよいよ一般社団法人の設立登記を実施します。登記には書類がいくつか必要となるので、まずはそちらを揃えましょう。一般社団法人の設立登記で必要な書類は、主に下記の通りです。

  • ・一般社団法人の設立登記申請書
  • ・認証を受けた定款
  • ・設立時理事の選任決議書
  • ・設立時理事の就任承諾書
  • ・設立時代表理事の互選についての書面
  • ・設立時代表理事の就任承諾書
  • ・設立時理事の印鑑証明書
  • ・主な事務所所在場所の決定についての決議書
  • ・印鑑届出書
  • ・印鑑カードの交付申請書

提出すべき書類は多岐にわたるため、早めに準備を進めましょう。

6-7 法務局にて設立登記の申請を行う

次に、準備した書類を法務局に提出し、設立登記の申請を実施します。なお申請先は、主な事務所の所在地を管轄している法務局となります。登記の際には6万円の収入印紙税がかかるので併せて用意が必要です。

書類に特段の不備がなければ、提出からおよそ1〜2週間で設立登記は認められます。登記が完了することで、正式に一般社団法人の法人格が使えるようになります。なお法人の設立日は、法務局に申請書類を提出した日付となります。設立日にこだわりたい場合は、書類の提出日を調整しましょう。

6-8 関係各所に設立後の届出手続きを行う

設立登記により一般社団法人の設立は完了ですが、その後もいくつか手続きが必要です。具体的には、税務署や都道府県税事務所、労働基準監督署などに書類を提出しなくてはいけません。

各所に提出する主な書類を下記にて示しますので、参考にしていただければと思います。

⑴税務署への提出書類

  • ・法人設立届出書
  • ・青色申告承認申請書
  • ・収益事業開始届出書(収益事業を行う場合)
  • ・給与支払事務所等の開設に関する届出書
  • ・たな卸資産の評価方法に関する届出書
  • ・減価償却資産の償却方法に関する届出書
  • ・源泉徴収の納期の特例承認についての申請書

⑵都道府県税事務所への提出書類
都道府県税事務所へは、法人設立届出書の提出が必要です。

⑶労働基準監督署への提出書類
従業員を1人でも雇う場合、下記の書類提出が必要です。

  • ・保険関係成立届(雇用から10日以内)
  • ・概算保険料の申告書(雇用から50日以内)
  • ・適用事業の報告書
  • ・就業規則(常時10人以上の従業員を雇用する場合)

7 一般社団法人について知っておくべきポイント

一般社団法人について知っておくべきポイント

ここまで、メリットやデメリットをはじめとして、一般社団法人に関して基本的な事柄は網羅的にご説明しました。ですが上記で説明した以外にも、一般社団法人について知っておくべき事柄は存在します。

この章では、一般社団法人についてさらに知っておくべきポイントを4つ解説します。実際に一般社団法人の設立を検討している方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

7-1 一般社団法人の設立に要する費用

一般社団法人の設立では、最低でも定款認証の手数料5万円と、設立登記の手数料6万円がかかります。加えて、印鑑や法人印鑑証明書、定款謄本などの作成に合計で1〜2万円ほどかかります。

したがって、一般社団法人の設立ではおよそ11万円〜14万円ほどの費用がかかります。司法書士などの専門家に設立をサポートしてもらう場合は、プラス10万円ほどかかるので注意が必要です。

7-2 一般社団法人の設立に要する時間

一般社団法人の設立は一見すると面倒ですが、実はそこまで時間はかかりません。スムーズに手続きを進めることができれば、2〜3週間ほどで手続きを終えることができるでしょう。

ただし初めて一般社団法人を設立する場合、慣れないことだらけで時間がかかる可能性もあります。したがって、初めて一般社団法人を設立する方は、1ヶ月ほどかかると考えておくと安心です。

7-3 設立後に社員が1名になったらどうなる?

前述したように、一般社団法人を設立する際には最低でも2名の社員が必要です。ところが、設立後に何かしらの理由で1名の社員が退社する事態も考えられます。では、設立後に社員が1名となった場合、一般社団法人はどうなってしまうのでしょうか?

結論から言うと、設立後であれば社員が1名となっても問題ありません。ただし当然ですが、0名となった場合にはその一般社団法人は解散となります。

7-4 一般社団法人の「理事会」とは

一般社団法人では、理事会と呼ばれる組織を作ることも可能です。理事会とは、3名以上の理事と1名以上の監事から構成される組織であり、主に業務の意思決定を行います。

通常業務に関する意思決定は、社員総会で行います。しかし社員の数が多い場合、毎回社員が集まって総会を行うのは難しくなります。そこで理事会を作れば、社員総会の代わりに業務の意思決定を行えるようになります。事業規模が大きい場合、理事会を設置することで業務の意思決定をスピーディーに行えるようになります。

8 まとめ

今回の記事では、一般社団法人のメリットとデメリットを中心に、一般社団法人を設立する方が知っておくべき事柄を解説しました。本文が長くなりましたので、最後にメリットとデメリットをおさらいしておきましょう。

一般社団法人には、設立が簡便である点や公益性や社会的信用性が高いといったメリットがあります。しかし一方で、会計処理が複雑であったり、株式による資金調達や上場が不可能といったデメリットもあります。

メリットとデメリットの両方が存在するため、一般社団法人を設立する際には慎重に検討することが重要です。

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