社団法人の社員総会の役割とは
一般的に社員は「会社などの従業員」を指しますが、社団法人上の社員は「経費を支払う義務を負い」「いつでも退社することができる」者と法律で定められています。社員で構成される社員総会は、社団の運営方針や役員人事について決議できるので、会社でいう株主総会のような権限を持ちます。
今回は社団法人における社員と社員総会について解説していきます。
目次
会社の“社員”と何が違う?
普通一般の会社員は採用試験などを通過して入社しますが、一般社団法人の社員は、社団設立時に必要な構成員であり、運営方針に関する議決権を有する人となります。会社でいえば株主に相当し、社員が全員いなくなれば、その社団は解散します。しかし、会社の株主とは違って社員に対する利益配分は禁止されています。
会社の社員も企業にとって無くてはならない存在ですが、社団の社員は、社団を構成するうえで法的な絶対条件となっているのです。
社団法人の社員の特徴
まず、社団法人を設立するには2名以上の社員が必要です。社員は共同して定款を作成し、これに署名・押印をしなければならないと定められています(一般社団法人、一般財団法人法10条)。
社団の社員には定款により経費負担義務を負わせることができます(同27条)。事業活動を行う上で事務所家賃の支払いなど一般的な経費が発生した場合、定款が定めた範囲内で、社員にその負担を求めることが可能です。
社員になるための資格は定款で自由に定めることができます。また、社員は自由に退社することができますが、定款により制限を設けることも可能です(同28条)。このほか、「総社員の同意」「本人の死亡、または社団の解散」「決議による除名」があったときは、退社しなければなりません。
1. | 総社員の同意 |
2. | 死亡または解散 |
3. | 除名 |
4. | その他定款で定めた理由 |
社団法人は、設立後、社員名簿を作成して事務所に備え付けておく必要があります。社員は社員名簿をいつでも閲覧することができます。
法人が社員になることも可能
法人は社団法人の役員になることができませんが、社員になることは可能です(同65条)。ただし、本社・本店であることが条件となるため、支店、支部、営業所、出張所などは社員にはなれません。
このほか法人格のない社団(権利能力なき社団=任意団体)も社員になれると解されています。例えば、高校の同窓会や、親睦会、サークルなど、社団設立の登記をしていない“人の集まり”がそれに当たります。
絶大な権限を持つ社員総会
社団法人の全社員によって構成されるのが社員総会です。社員総会は社団の運営方針、組織・人事などすべて決議でき、会社でいえば株主総会にあたる最高意思決定機関です。社員は1人1票の議決権を持ち、決議に臨みます。
第35条 | 社員総会は、この法律に規定する事項及び一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議をすることができる。 |
定時社員総会と臨時社員総会
社員総会を開催する場合、その目的、日時、場所を決め、社員全員に開催の1週間前までに通知します。
社員総会には「定時社員総会」「臨時社員総会」の2種類があり、「定時」は年一回の事業年度終了後に開かれ、「臨時」は必要に応じて開催されます。
社員総会に出席できない社員は、代理人に議決権の行使を委任できます。
決議には、総社員の議決権の過半数を持つ社員が出席することで開催し、出席社員の議決権の過半数をもって決まる「普通決議」と、総社員の半数以上で、総社員の3分の2以上の賛成をもって決まる「特別決議」があります。
総会の決議事項
実は、社員総会で決議できる事項は「理事会を設置している場合」と「設置していない場合」で異なります。
理事会非設置社団法人では、「法律で定める事項、および一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項」について決議することができます。
一方、理事会設置社団法人では、「法律で定める事項、および定款で定めた事項」に限り決議可能となります。
30条 | 社員の除名 |
55条1項 | 理事、監事および会計監査人が当該社員総会に提出し、または提供した資料を調査する者の選任 |
55条2項 | 業務および財産の状況を調査する者の選任 |
63条 | 理事、監事および会計監査人の選任 |
70条 | 理事、監事および会計監査人の解任 |
77条3項 | 理事の中から代表理事の選定 |
89条 | 理事の報酬 |
105条 | 監事の報酬 |
109条 | 会計監査人の出席を求める決議 |
113条 | 理事、監事が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、最低責任限度額を控除した額を限度とする一部免除 |
141条 | 基金の返還 |
146条 | 定款の変更 |
147条 | 事業の全部の譲渡 |
148条3項 | 社団法人の解散 |
150条 | 解散した場合、もしくは清算が結了するまで一般社団法人を継続すること |
247条 | 吸収合併契約の承認 |