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社団法人の役員(理事・監事)を変更する方法

社団法人を維持するためにやらなければいけないことは複数あります。社団法人だけでなく、どの法人もその維持のためにやらなければいけないことは複数あります。

しかし、株式会社は日本に多数あるため、やらなければいけないことは一般的に知られています。また、司法書士などの専門化も株式会社の顧客が多く手続きや相談の経験を複数有していることが多くあります。

一方、一般社団法人などの非営利法人についてはその法人数の少なさから、やらなければいけないことが株式会社などと比較すると一般的な浸透度は低くなっています。そのため、社団法人の手続きについて専門的な知識や複数社の手続きを実施した経験のある専門家もそれほど多くありません。

しかし、必要な手続きを怠ると罰則の対象となります。そのため、社団法人を設立した後には、うっかり必要な手続きを忘れるようなことがないようにしなければなりません。

今回は、一般社団法人の役員変更の手続きについて解説します。一般社団法人の役員は、1名以上の設置が義務です。また、役員の変更など登記事項の変更が発生した場合の、適切な対応について解説します。

1 社団法人と役員

社団法人と役員

法人には、営利を目的とする営利法人と公共の利益などを目的とする非営利法人があります。営利法人の代表的な存在が株式会社になります。非営利法人の代表的な存在が社団法人になります。

営利法人も非営利法人も法人であるため、会社法に定められた様々な規則の対象となります。その規則は、株式会社と社団法人で共通部分もありますが、異なる部分も多数あります。法人数でいうと一般社団法人の数は2020年1月時点で59,901社となります*。これは、千葉県に本社をおく法人数よりも少ない数になります。そのため、社団法人についての専門家や詳細に詳しい人は株式会社と比較すると少ないのが現状です。

社団法人などの非営利法人を設立し法人運営をする際にはその運営に必要なことや株式会社との相違点など事前に自身で理解しておくか、もしくは理解するスタッフや外部の専門家や相談を仰げる相手を見つけておくなどが必要です。

*公益財団法人助成財団センター『日本の助成財団の現状』より

●同じ言葉でも意味が異なる

一般社団法人などを理解しようとする時に、最初に混乱しやすい点が株式会社などで広く使われている単語が社団法人では異なる意味で使われていることです。

具体例として、“社員”があります。一般的な株式会社などの会社では、社員とは会社に雇われている働く従業員を言います。しかし、社団法人での“社員”はその意味が異なります。

社団法人での社員とは、社団法人を構成する人員という意味を持ちます。具体的には、総会での議決権を有していて、その法人の運営を行う人を指します。これは株式会社で言うところの株主に似た役割になり、株式会社の社員とその役割が大きく異なっています。

社団法人における社員は重要な役割を担っているため、一般社団法人の設立時には社員が2名以上いることが設立の条件となっています。

詳細は後述しますが、“役員”についても株式会社と社団法人においてはその意味が異なります。

1-1 非営利法人と社団法人

社団法人とは、共通の目的をもつ非営利法人の一つです。

●非営利法人

非営利法人とは、「非営利性」あるいは「共益的活動の目的」を持つ法人です。

非営利性とは、事業活動によって得られる利益の剰余金を特定の人や団体に分配することができないことを言います。つまり、事業で利益を獲得して、その利益を事業活動に活用することが求められます。

共益的活動とは、会費などを払う会員などの特定の集団に共通する利益のために行う活動を言います。

非営利法人には以下の法人形態があります。

一般社団法人 2名以上の人が集まることで設立される非営利団体法人になります。目的や事業内容に制約はありません。
一般財団法人 300万円以上の財産が集まることで設立される非営利社団法人になります。目的や事業内容に制約はありません。
NPO法人(特定非営利活動法人) 特定非営利活動促進法によって法人格を取得し、法人認証を受けた営利を目的としない社会的活動を行う民間団体(NPO)を言います。
公益社団法人/公益財団法人 内閣府もしくは都道府県による公益の認定を受けた社団法人ならびに財団法人になります。公益法人になるためには、公益目的の事業がその法人の事業比率で50%以上であることや第三者委員会による公益性審査を通過することが求められます。
社会福祉法人 社会福祉事業を行う目的のみで設立された法人になります。社会福祉事業とは、社会福祉法第2条に定められています。
学校法人 私立学校法によって定められた幼稚園から大学院までの私立学校の設備運営を行う法人になります。

●社団法人

社団法人は、一般社団法人と公益社団法人の2つの分類があります。平成20年の憲法改正まではすべての社団法人の事業に公益性が求められていて、上記の分類もありませんでした。しかし、改正後には一般社団法人と公益社団法人が作られたことで、一般社団法人の事業には公益性が求められなくなりました。

一方で、公益社団法人はその事業において公益性が認められ、その代わり公益社団法人になることで税制上の優遇措置が受けられます。

なお、一般社団法人の登記時点においては2名の構成員が必要です。構成員であって役員である必要はありません。また、登記後に構成員が1名になったとしても法人の存続は継続できます。

社団法人の社員には、株式会社における株主と同じように法人や外国人であってもなることが可能です。

1-2 役員

役員

社団法人の役員には、「理事」と「監事」がいます。また、社団法人では役員を1名以上置くことは必須となっています。前述した株式会社と社団法人で社員の意味が異なるのと同じように、役員も株式会社と社団法人でその中身が異なっています。

会社法における株式会社の役員は、「取締役」と「会計参与」と「監査役」と「執行役」となって、社団法人の役員とは異なります。

●理事とは

社団法人では、理事を必ず1名以上置くことが義務付けられています。社団法人の理事は、その法人の経営ならびに運営を執行する役割を担います。株式会社での取締役の役割とほぼ同じです。また、理事の選定方法は社員総会の決議などがあります。

複数の理事がいる場合に、その法人を代表する理事を代表理事と言います。代表理事は、『理事長』と呼ばれることが一般的です。代表理事を選定する方法は、総会で選任された理事による互選などがあります。

なお、理事の任期は2年が一般的になります。しかし、定款や社員決議によって任期を2年以内の短縮することもできます。

●理事の権限

理事は、その業務を執行するために『業務執行権限』と『代表権限』があります。

業務執行権限とは、その法人における業務を執り行う権限です。理事の業務執行権限は、その法人が理事会を設定しているかどうかで異なってきます。具体的には、何を行うかという業務の意思決定と、業務遂行が分かれてきます。

≪理事会有無による業務執行権限の差≫

理事会が設置されている/理事会設置型一般社団法人 業務の意思決定は理事会が行います。その上で、業務遂行は代表理事もしくは業務遂行理事*が実施します。
理事会が設置されていない/理事会非設置型一般社団法人 複数の理事が存在する場合、理事の過半数の同意によって業務の意思決定が行われます。

*理事会が設置されている場合には、理事の役割は理事会の構成員として業務の意思決定を行うことになります。そのため、代表理事や業務執行理事以外の理事には業務執行権限がありません。

代表権とは、その法人の行為を代表する権利になります。そのため、代表権を持つ人の行為は、そのまま法人の行為と同一と見なされます。代表権を持つ理事が行った契約などは法人として契約を行ったことと同じ意味を持ちます。代表権限を持った理事を代表理事と言います。

しかし、すべての理事が代表権を持っているわけではありません。代表権限も理事会の設置の有無によって異なってきます。

≪理事会有無による代表権限の差≫

理事会が設置されている/理事会設置型一般社団法人 理事会で選ばれた理事が代表理事となります。代表に選ばれない理事には代表権限がありません。代表理事会で選定し、かつ定款にその人数を定めることで複数の代表理事で運用することもできます。
理事会が設置されていない/理事会非設置型一般社団法人 定款に定めがない場合、全員の理事が代表権をもちます。つまり、理事会非設置型一般社団法人の理事は、全員代表理事となります。
定款に定めを設ければ、代表理事を限定することも可能です。

代表理事の他には、任意で副理事長や専務理事や常務理事などの役職理事を設定できます。

理事の義務は委任規定と法令や定款や社員総会決議事項などを遵守することになります。また、理事がその任務を怠って一般社団法人に損害を発生させた場合にはその損害を賠償する責任もあります。

なお、職務を全うすることが難しいと判断できる場合には理事の解任をすることができます。理事の任期がまだ残っている状況であっても、理事としての業務執行を行うことが適切ではない人物ないしは状況にいると判断できる場合には、理事の解任を行うことができます。

理事の解任は、社員総会決議事項になります。社員総会の決議が成立すると、解任の効力が発生します。つまり、解任することを本人である理事に伝えることなく解任が成立するということです。

●監事

社団法人の監事とは、理事の業務執行が適切に実施されているかを監査する役割を持ちます。そのため、監事には理事などに対して事業報告を求める権利や業務内容や財産状況を調査できます。もし、理事の行為によってその法人に著しい障害が発生する恐れがあると判断できる場合、理事の行為をやめることを請求する権利があります。

監事はその役割から、通常の運営に係る理事や従業員が兼任できません。また、監事は理事会への出席義務や理事会や社員総会での報告義務があります。そして、善管注意義務*もあります。

*善管注意義務とは、業務を任された者がその役割上で一般的ないしは客観的に期待される注意義務を意味します。

監事の任期は一般的には4年となります。監事として専任された年度を含めて4回目の事業年度の定時社員総会が終了するまでが任期となります。また、定款や社員総会の決議によって監事の任期を理事と同じ2年に短縮できます。

監事を選任しようとする時には、原則社員総会の普通決議事項になります。定款に定めがない場合には、議決権のある社員の過半数が参加する社員総会において半数以上の賛成をえることで監事を選定することができます。

監事を置くかどうかは、原則任意になります。そのため、それぞれの一般社団法人で必要性を検討したうえで監事を置くかを決めることができます。しかし、理事会を設置している一般社団法人では、最低1名の監事が必要です。また定款に監事を置くことを前提とする監事設置法人と記載している場合にも監事の選任が求められます。

●会計監査人

監事をサポートする役割にある会計監査人がいます。会計監査人は、会計に関する書類について監査を行います。計算書類などの監査を実施し、会計監査報告書を作成します。会計監査人になることができるのは、公認会計士または監査法人に限定されています。

会計監査人は大規模(貸借対照表の負債が200億円以上)の一般社団法人や同負債が50億円の公益社団法人には必須となります。

一方で、それ以外の一般社団法人や公益社団法人では会計監査人の設置は任意になります。しかし、会計監査人を設置する際には監事の設置も併せて必要になります。つまり、監事のみを設置することは可能ですが、会計監査人を置こうとする場合には監事も置くことが必須となります。それは会計監査人が監査の結果を報告する義務がありますが、その報告は監事に実施することが必須となっているためです。

報告の実施を行う会計監査人と報告を受ける監事に意見や見解が一致しない場合には、社員総会に出席して意見を述べる権限を会計監査人にはあります。

会計監査人を選任する時には、社員総会の決議が必要です。また、社員総会に会計監査人の選任に関わる議題を提出する場合には、監事の同意が必要です。監事が複数いる一般社団法人では過半数以上の監事の同意が必要になります。なお、監事には会計監査人が職務の実施に適性を欠く場合や職務を怠った場合には解任することができる権限があります。

この会計監査人の任期は1年と比較的短い設定になっています。任期は短くなっていますが、任期が終了する定時社員総会で会計監査人の解任の決議などの別段の決議がなかった場合には再任されたこととみなされます。

1-3 変更事項

社団法人を何年も継続していくと、役員の変更など役員情報の変更を行う事象が生じます。この役員情報の変更に対して、都度役員変更の登記が必要になります。

役員情報の変更が必要となる事象には以下のような事項があります。

変更事項

役員の就任 法人の設立時ならびにその後の運用時に発生する役員が就任した場合に役員情報の変更が必要です。詳細は後述しますが、役員には任期があり継続的に役員の就任は発生します。
役員の退任・辞任・死亡など 退任とは、任期満了後に再度役員の職に就かないことです。一方で、辞任とは今までついていた職務を任期中に自らの意思で辞めることです。なお、代表理事の辞任には代表のみを辞任する場合と、代表と理事の両方を辞任する場合があります。
役員の変更 辞任などに伴って、役員の変更がある場合にも情報の変更となります。
役員の氏の変更 役員の婚姻などにより氏名が変更になることがあります。この際には、「役員の氏の変更」の登記手続きを行います。
役員の氏名の変更は、実質的に法人運営に影響がないため、見過ごされやすい事象になるため注意が必要です。
代表理事の住所変更 代表理事の登記情報には、自宅住所の登記も必要です。そのため、代表理事の自宅住所が転居などによって変更になった際には登記手続きが必要です。
役員の氏の変更と同様に、代表理事の住所変更についても法人運営上には影響がないため、やはり見過ごさないように注意が必要です。

2 役員情報の変更手続きについて

役員情報の変更手続きについて

社団法人の役員情報の変更について、役員自体の変更やその他役員自体は変更しない重任や情報のみの変更などの手続きについて確認していきましょう。

役員情報の変更手続きのポイントは、期限があることと必要書類があることです。そのため、役員情報が変更することがあらかじめ判明した時点で確認・準備を行うことが必要となることを念頭に入れておかなければなりません。

2-1 役員の追加

社団法人で新たに理事や監事などの役員を追加することがあります。なお、理事には誰でもがなれるわけではありません。以下の欠格要件に該当する場合には理事になることはできません。

≪理事の欠格要件≫

  • ・法人はその法人形態に関わらず、理事になることはできません。
  • ・成年被後見人、被補佐人
  • ・一般法人法とその他の関連する法律に違反により執行などが終了してから2年以上経過していない者
  • ・上記以外の法令違反により禁固以上の刑に処されたのちに執行などを終えたないしは受けることがなくなる**までの者
    *執行猶予中の者は除外します。

法令違反などがないかということは、第3者では分かりません。そのため、本人の申告に頼る形になります。理事に選任・登記された後に欠格要件に該当していた事実が判明した場合には、事実の判明によって理事の資格がなくなることはありません。しかし、社団法人と理事の契約は委任契約に基づいており、委任契約の終了事由に該当することにより退任させることが一般的です。

役員との委任契約の終了事項は、理事の欠格要件に該当する事実が判明した場合などの記載を忘れないようにする必要があります。その他には、『破産手続き開始の決定を受けた』場合や『後見開始の審判を受けた』場合なども終了事由としておくことが推奨されます。

また、理事の人数が定款に定められている場合には、その上限人数を超えて理事を選任することはできません。そのため、もし定款の上限人数を超えて理事を新たに追加する場合には定款変更の決議が社員総会で必要になります。

●理事の追加手続き

理事の追加手続きは以下の5つの手順になります。

理事の追加手続き

①理事会での理事追加と社員総会開催の決議

理事を追加する場合に、まず実施しなければいけない事は理事会にて理事を追加することを決定することです。そのため、理事会を設置している場合には理事会決議にて理事の追加することを意思決定します。(理事会未設置の場合には、過半数の理事の決定によります。)

また、同じ理事会で社員総会の開催を決議します。社員総会の開催を決議する際には、以下の事由もあわせて決定することが法人法第38条によって定められています。

・社員総会の開催日時と場所と目的
・社員総会に出席しない社員に対する、“書面”または“電磁的方法”での議決権行使の可否
・その他法務省令で定める事項

②招集通知発送

招集通知とは、社員総会を開催することを通知する書面を言います。社員総会を開催しようとする時には、収集通知を発送することが決められています(法人法第39条)。

理事会非設置法人の場合には、定款で定められた招集期間を守って通知を送付します。また、一般的には書面ないしはメールなどの電磁的方法での議決権行使をできるようにしているため、社員総会開催日の2週間前までに送付することが必要になります。また、書面や電磁的方法での議決権行使を認めない場合には社員総会開催日の1週間前が通知送付期限になります。

書面または電磁的方法での議決権行使を認める場合を除いて、社員全員の同意があれば招集手続きは不要になります(法人法第40条)。これをみなし社員総会と言います。みなし社員総会には、社員全員が書面または電磁的記録によって議決権のある社員全員の同意の意思表示が必要になります。

③社員総会での選任決議

議決権を有する総社員の過半数が出席する社員総会において、議決権の過半数をもって理事の追加は決議できます。

なお、社員が2名の場合には、社員総会に2名が参加し、2名ともに賛成することが求められます。

④就任理事による承諾

社員総会で選任の決議がされた理事は、その就任を承諾するかを決定します。そして、就任を承諾する場合には、就任承諾書に署名捺印します。就任承諾自体は、口頭であってもその意思を示すことで成立します。しかし、就任承諾書は役員追加の登記申請に必要書類として添付することからも作成が必須となります。

就任承諾を得た時点で、理事の委任契約書を作成・締結しておくことも前述のとおり必要になります。

⑤登記申請の実施

理事の追加は、新たに就任する理事の承諾を得た日から2週間が登記申請期限になります。登記申請は社団法人の本社がある住所を管轄する法務局で行います。登記申請には以下の添付書類があります。

≪登記申請添付書類≫

  • ・社員総会の決議議事録
  • ・新たに就任する理事の就任承諾書*
  • ・新たに就任する理事の本人確認証明書*

*理事会設置の社団法人の場合になります。もし、理事会を設置していない場合には、就任承諾書には理事の実印による押印が必要になります。また、本人確認証明書に代わって新たに就任する理事の印鑑証明書が必要になります。そのため、就任承諾書に押印された実印と実印登録されている印鑑証明が一致することも必要となります。

また、理事就任の登記申請にかかる登録免許税は1万円になります。

2-2 役員の任期満了

役員の任期満了

社団法人の役員には任期があります。理事が2年、監事は4年になります。任期を短く設定する事は可能ですが、伸ばすことはできません。そのため、理事と監事はそれぞれ定期的に任期が満了します。

●役員の重任

役員の重任とは、任期が満了した役員が再び役員として就任することです。

なお、任期が満了となった役員は退任が必須です。役員を継続する場合には就任手続きを経る必要があります。そのため、役員が実質的に続投する場合でも、社団法人における最高意思決定機関である社員総会で役員の選任の手続きを行います。重任することとなった役員は、登記簿謄本で重任と登記されることになります。

●重任手続きの流れ

役員の重任は、定時社員総会決議事項になります。そのため、役員の重任をする場合には、定時社員総会を収集する事が必要になります。

重任手続きの流れ

①定時社員総会の招集

社員総会を収集することができる理事が、社員総会の日程と場所などを決定して、招集通知を各社員に通知します。なお、原則として定時社員総会の1週間前までに招集通知を出すことが必要です。

②定時社員総会における理事の再任決議

理事の重任は、再任決議となります。重任と再任が意味するものは同じです。但し、登記上は重任と登記され、再任と登記されることはありません。

役員の再任決議は、社員総会の普通決議事項になります。普通決議事項では、総社員の議決権*の過半数の社員が出席することで社員総会の開催が認められます。また、その社員総会に出席した社員の議決権の過半数を得ることで決議が成立します。

*社団法人の社員は、各1個の議決権を有しています。株式会社の株主などのように、所有する株式数に応じて議決権の数が増減することはありません。

③代表理事の選定

理事が任期満了となると、代表理事はその資格を喪失します。そのため、改めて代表理事の選定が必要になります。一般的には、社団法人の定款には代表理事の選定方法が定められています。そして、代表理事の選定方法として理事の互選についてここでは記載します。

定款に互選規定が定められている場合には、代表理事の選定は定時社員総会にて選定された理事が社員総会終了後に行います。

④必要書類の準備

理事の選定ができたら、登記申請のための必要書類を用意します。登記申請には、規定の書類の提出が必要になります。必要書類は事前準備が必要になります。必要書類は、以下の書類になります。

  • ・役員返納登記申請書
  • ・定款
  • ・社員総会議事録
  • ・選定した役員の互選書
  • ・代表理事ならびに理事の就任承諾書
  • ・登記事項
  • ・理事の登記変更費用(登記免許税)10,000円

≪理事の互選書≫

代表理事が社団法人を代表することが定款に記載があり、定款に基づいて代表理事を選定したことを示す書面になります。なお、代表理事の互選とは複数の役員で協議・選挙などをして代表理事を決めることです。理事の互選書で記載する事項は、以下の通りです。

  • ・いつ(例:令和3年12月3日14時)
  • ・どこで(例:互選を実施した場所)
  • ・根拠(例:定款第〇〇条の規定に基づく)
  • 互選によって決まった結果
  • ・代表理事に〇〇を選定すること
  • ・代表理事に選定された役員がその就任を承諾したこと*
  • 互選を実施した役員の記名押印
  • ・書面作成日
  • ・社団法人名称
  • ・理事氏名と押印

*互選書に代表理事の承諾をした旨を記載することで、就任承諾書の添付が不要になります。

⑤法務局での登記申請

理事の重任が決議された日から2週間以内に、社団法人の主たる事務所がある住所を管轄する法務局で登記申請を行います。

ここで行う登記申請は、役員変更になります。既存の登記と同じ人物が役員を重任する場合であっても、登記は行うことが求められます。ついつい忘れていたなどがないよう、役員の任期期間を把握したうえで、登記申請完了までを計画に入れて行動することが必要です。

2-3 役員の退任・辞任・死亡など

社団法人の役員の退任は、その任期が満了したタイミングになるため一般的には2年や4年に1回になります。

一方で、役員の辞任はタイミングを計ることが簡単ではありません。任期期間中でも理事の辞任は可能です。役員の職を辞めたい場合には、原則いつでも辞任の意思表示を行うことができます。但し、意思表示ができてもいつでも辞任できるわけではありません。

役員はその辞任の意思表示を行っても、後任の役員が決まるまでの期間について役員の権利義務は続きます(法人法第75条第1項)。例えば、理事会を設置している一般社団法人は3名以上の理事が必要です。もともと理事が3名の場合には、1名辞任すると理事が2名になってしまうため、理事会の廃止をしなければなりません。そのため、新たな理事が就任するまでは辞任を表明した理事はその職務を継続しなればなりません。

仮に、一方的で突然の辞任によってその法人や事業運営に損害が発生した場合は、損害賠償責任を負うケースも出てきます。もし、辞任の意向があるないしは責務を全うすることが難しい事情などがある場合には事前に他の理事や社員などとコミュニケーションをとることが必要です。

一方、退任する場合も同様で重任する予定で周囲が考えていたが、本人だけ重任する意向が無いという事態も避けなければなりません。退任する意向がある場合には、各法人の事情にもよりますが、後任人事や引継ぎができるだけの期間が確保できるように意思表明をすることが必要です。

なお、理事の任期は定款で特別な定めがない場合には「選任されてから2年以内に終了する事業年度のうちで最終のものに関する定時社員総会の終結」までになります。例えば、4月1日から事業年度が開始する法人で、令和3年4月1日以降令和4年3月31日までに就任した理事は、令和5年3月31日に終了する事業年度の定時社員総会の終結までが人気となります。

役員の退任があった際の登記申請は、新たな役員の就任とあわせて実施されます。手続きについては重任と同じ手続きになり、新たに就任した理事による就任承諾書や本人確認書類が必要になります。

登記を済ませると、登記上も辞任と退任が区別されて記載されます。

●役員の死亡

不幸にも役員が亡くなることもあります。一般社団法人の理事が死亡した場合には、手続きとしてはその死亡した日で退任となります。

死亡であっても退任となるため、理事の登記変更が必要になります。そして、死亡によって理事を退任した日から2週間以内に法務局へ役員変更の登記申請が必要になります。死亡による役員変更の登記申請には、理事の死亡を確認する書類が必要になります。具体的には『戸籍謄本』や『戸籍抄本』や死亡した理事の家族が作成する『死亡届』などが必要です。

なお、理事の死亡による退任の際には、社員総会などの決議は不要です。一方で、理事の死亡であっても定款や法令で定められた理事の員数を下回る場合には、新たな理事の就任が必要になります。

また、もし理事が1名しかいない状況でその理事が死亡した場合も同様です。速やかに社員総会の開催を行い後任理事の選任と役員変更の登記手続きが必要になります。

但し、一般的に社員総会の招集は理事の職務になります。また、議決権のある社員に対して社員総会の1週間前までに招集通知を通達することが必要です。しかし、1名しかいない理事が亡くなった場合など理事の職務を全うすることができない場合はあります。このような場合など、社員全員の同意をもって招集手続きは省略することができます。(1名でも社員が同意しない場合には、招集通知を省略することができません。)

なお、理事が社員を兼ねている場合もあります。この際に、社員が2名以上いる場合には法人を存続することが可能ですが、1名しかいない社員が死亡などの理由でいなくなった場合には、一般社団法人を存続させることができません。自動的にその一般社団法人は解散します。一般社団法人の存続を考えるなら、社員は2名以上いることを推奨します。

2-4 代表理事の変更・重任

代表理事の変更・重任

代表理事の任期は、理事の任期と同じ2年になります。任期が満了すると、代表理事の資格が無くなります。

一般社団法人の代表理事の選定手続きは、理事会の設置の有無で異なります。また理事会を設置していない場合には、定款によって手続きが異なってきます。

≪代表理事の選定方法≫

理事会設置の一般社団法人

・理事会の決議によって代表理事は決定します。(法人法第90条3項)
定款決議事項は、議決権を持つ理事が過半数出席した理事会によって出席理事の過半数によって決議します。なお、一般的な決議事項において特別な利害関係がある理事はその決議において議決権を有しません。しかし、代表理事の選定における理事が当該決議において特別な利害関係はないと判断されます。

また、代表理事の選定を“みなし決議”によって理事会の決議を省略*することもできます。理事会の決議を省略するためには、その一般社団法人の理事全員が同意することが必要です。同意は、書面または電磁的記録で行うことが必要です。口頭での同意は認められません。

なお、理事のうち1名でも意義がでたばあいには理事会の決議省略ができないため、理事会の開催と決議が必要になります。みなし決議の内容は、場合によっては理事会への報告を省略することができます。しかし、代表理事の選定については省略することができません(法人法第98条2項)。
また、理事会決議の省略をしても、理事会議事録の作成は必要になります。決議省略をした場合には、以下の4点を記載した理事会議事録を作成します。

✓理事会決議があったとみなした事項の内容
✓上記の事項についての提案理事氏名
✓理事会の決議があったとみなす日付
✓議事録作成者氏名

理事会を設置していない一般社団法人

・社員総会の普通決議または定款の定めによって理事の互選や社員総会の特別決議などによって代表理事を選定します。また、代表理事を選定しないということも選択できます。

一般社団法人を立ち上げたばかりなどのまだ規模が小さいうちは、理事会の設置をしていないケースも多くあります。このように理事会未設置の状況では、理事が代表権を持つ代表理事となることが一般的です。例えば、2名の理事がいる場合には、その2名が代表権をもった代表理事となる運用を取ります。

代表理事が複数人いることで事業運営に支障が発生することが想定できる際には、社員総会普通決議や理事の互選などの方法で代表理事を選定します。社員総会の普通決議は定款に定めがない場合にも実施することが可能です。一方で、理事の互選や社員総会の特別決議を経て定款に直接代表理事を記載する方法は定款に記載がある場合に実施することができます。

*理事会のみなし決議は、定款に規定があることが前提になります。記載がない場合には、みなし決議を実施することができません。定款への記載有無に関わらず実施できる社員総会のみなし開催とは相違しますので注意が必要です。

みなし決議を行うためには、以下のような記載を定款内に記載することが必要です。
『法人法第96条に定められた要件を満たす場合には、理事会の決議が行われたこととみなして当該提案を可決できることとする』

2-5 代表理事に関する情報変更

一般社団法人における代表理事はその氏名と住所について登記事項となっています。そのため、代表理事の氏名や住所に変更があった場合には、2週間以内に変更登記の申請が求められます。

代表理事の氏名と住所に変更があった場合の変更登記では、添付書類は必要ありません。しかし、登記する情報を一致させることを目的に住民票を用意しておくことを推奨します。住所の移転日や住所の記載が住民票と登記で相違しないように記載事項を確認します。

代表理事の登記が完了したのちに、税務署に異動届出書の提出が必須です。加えて、都道県の税事務所や市町村役場や年金事務所などにも変更届出が必要になる場合があります。これらの届出において、登記と住民票の代表理事の情報が一致していることが必要です。

代表理事の氏名や住所の変更登記についても登録免許税は1万円となります。

●重任登記と住所変更

代表理事の任期が満了して継続する重任についても、登記が必要です。重任の登記を行うタイミングで代表理事の住所変更が行われた場合には、変更前の住所で重任登記を行うことができます。

変更前の住所で重任登記の申請と、重任した代表理事について住所変更の変更登記を行います。

3 役員変更の注意点

役員変更の注意点

今まで解説してきた役員変更に関わる登記の変更について、登記変更はそれぞれ期限がありました。期限を超過しても登記変更がなされないことはあまり取引先などに知られることではありません。しかし、いったん何かの事情で登記変更などが適切にできていないことが知れる事態になった場合には取引や信用問題に発展しかねません。

法人には信用によって取引を行う面が大きいです。そのため、役員の変更事項が発生した場合にはできるだけ早くかつ適切に登記変更を行うことが推奨されます。

その期限を超過してもなお登記変更を行わない場合には、登記懈怠(とうきけたい)になります。

3-1 登記懈怠と過料

登記懈怠(とうきけたい)とは、法人が実施すべき登記申請を実施することなく放置していたことを言います。一般社団法人を運営していく中で発生する役員の変更事項は、登記申請義務があります。具体的には会社法では会社の登記事項に変更が発生した場合には、その発生があった日から2週間以内に登記変更をすることが必要です。

役員の就任や辞任や代表理事の氏名や住所の変更については登記事項になります。そのため、これらの登記事項に変更があった場合には2週間以内に登記を行う必要があります。

法人や事業を運営していると、2週間という期間はあっという間に過ぎていきます。変更登記と変更登記に必要な準備だけを行うのであれば2週間という期間は短くありません。しかし、決算時期や仕事が立て込んでいる時期など予定していない事項に時間をあてることができない時期もあります。

万が一、変更事項が発生してから2週間が経過していても、登記変更は可能です。法務局では期限の超過によって申請を受理しないことはありません。

●過料

登記事項に変更があってから2週間を超過して登記変更を実施していない場合には制裁金が課されることがあります。この制裁金が過料となります。

過料の金額の決定は、裁判所が行います。しかし、過料がいくらになるのかは明確な基準がありません。そのため、年単位で登記変更を行っていなかった場合でも過料が発生しない、ないしは少額で済むこともあります。一方で、登記変更が数か月超過しているだけで過料が発生することもあります。

概ね過料が発生しても数十万円になります。過料を支払いするのであれば、本来の期限を超過しても問題ないということも考えることもできますが、前述のとおり信用で成り立っている法人にとって期限超過を見過ごすことは信頼を失うことに繋がります。それによってビジネス機会やお客さまの足が遠のくという事態になることがないように期限内に変更登記を行うことと、万が一期限を超過した場合でも法務局と調整しながらできるだけ速やかに登記を完了させることを行う必要があります。

●選任懈怠

役員には任期があります。その任期をすぎて役員登記野変更を行っていない場合には、その社団法人の選任懈怠となります。

役員の任期が満了すると、何も手続きを行わない場合にはその役員は退任になります。退任には、本人の意思は関係ありません。任期が終了した場合には自動的に退任となります。本人がその退任の事実に気づかず役員であった時と同じ行為を継続している状況は、権限も権利もない状況でそのようにふるまってしまうことはトラブルの原因になります。また、過料の対象となります。

但し、任期満了によって退任することとなった役員のうち、役員の退任が原因で会社法や定款で定められた役員の人数に満たない事態が発生した場合には、新たな役員の選任や自らの再任が行われるまでは役員としての権利や義務が継続します(法人法第75条1項)。同じく、理事会を設置している社団法人において理事が3名必要なところ、任期満了ならびに新たな理事の選任が実施されていなかった場合なども該当します。

但し、登記を長期間放置した状況を続けることはできません。過料が処されることに加えて、一般社団法人において5年以上登記が行われていな場合は登記官の権限によって一定の手続きが取られた後に登記上で解散の登記が記載されることになります。

解散の登記が入ると、その後の事業活動に大きな支障が出ます。新規の取引先はその取引を開始しようと思うタイミングで、相手の信用を確認します。信用を確認する中で、登記情報の確認はほぼ必須となります。登記情報を確認して解散の記載があれば、新規取引の成立は絶望的です。

4 まとめ

今回は一般社団法人における役員の変更に伴う登記変更について解説しました。役員の任期満了に伴う退任とそれに合わせた重任など、役員の任期管理やその任期に応じた社員総会や理事会における役員の選定などは時間がかかります。

定期的に発生する事項であるため、次第にその手順に慣れてくることやノウハウが蓄積されます。但し、担当変更やそもそも数年に1回のことはできるだけ簡潔に完了できるよう計画的な実施をしていきます。

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