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社団法人に勤めている人は公務員?会社員との違いは?

社団法人には『一般社団法人』と『公益社団法人』があります。平成20年に法改正がされて、上記の2つに区分が分かれるようになりました。それまで、社団法人の設立には事業の公益性が必須で求められていましたが、法改正後には事業の公益性には必須ではなくなりました。

公益性が求められる社団法人は、国や地方公共団体と同じように見られがちです。しかし、社団法人は民間企業に区分されます。そして、社団法人に勤めている人は『公務員』でもなく『会社員』でもなく、『職員』と呼ばれています

また、社団法人の中でも事業の公益性が求められる公益社団法人の職員は公務員に準じた給与や待遇になっていることもあります。そのため、公益社団法人への就職希望者は多くなっています。

そこで今回は、公益性を求められる社団法人の特徴、公務員・会社員との違い、国・地方自治体やNPO企業との違いについて詳しく解説するので、ご参考ください。

1 公益社団法人とは

公益社団法人とは

公益社団法人とは、通称「公社」と呼ばれる、不特定多数の人が恩恵を受けることができる公益性が高い事業を実施する法人を言います。また、公益法人のその事業内容や組織体制から役所などのイメージを持たれることもある公益社団法人は、民間の法人になります。

公益社団法人が行う事業は、環境保全や高齢者福祉支援などがその代表例になります。また、公益社団法人の代表的な団体は地域医療振興協会や青年会議所などの団体などがあります。

公益社団法人は、公益法人と言われる民間の企業法人の1つになります。

●公益法人

公益法人は、“公益の増進を図ることを目的として法人の設立理念に則って行動する民間の法人”となります*。

個人のライフスタイルや考え方など価値観の多様性が認められている社会において、社会のニーズも多様化が進んでいます。その中で、行政部門や利益を追求する営利法人だけでは、この多様化する社会ニーズや課題に対応するサービス提供が難しい状態となっています。

そこで、国や地方公共団体などの行政や一般的な民間企業が提供できないサービスを提供する企業・組織の重要性が高まっています。このサービスを提供する役割を担い、ひいては社会を支えるという役割を担うのが、公益法人になります。

そして、公益法人には2つの法人があります。一つが志を同じくする人の集団である『公益社団法人』であり、もう一つが財産の集まりを管理する法人である『公益財団法人』になります。

*内閣府作成『民間が支える社会を目指して~「民による公益」を担う公益法人~』より

●新公益法人制度

2008年12月に公益法人改革三法*が施行され、新公益法人制度が施行されました。

それまでの公益法人は、行政との結びつきが強すぎたことから、官僚の天下り先の企業となっていたことや、組織運営が適切でないことから補助金の無駄遣いなどあることを指摘されていました。また、公益法人の組織力が強すぎる場合などは民間企業を圧迫する結果になっていたことなどもありました。

これらの状況を改善するために、新公益法人制度によって制度改革が進められました。この制度改革によって、以下のようにそれまでの社団法人と財団法人は以下の新たに創設された4つの法人形態に変化しました。

✓新公益法人制度によって、簡単な登記のみで法人が設立できるようになりました。
従来は、主務官庁(都道府県では、知事や教育委員会など)による厳しい要件の設立許可制度となっていました。簡易な登記で設立ができる法人を新しい法人形態“一般社団法人”と“一般財団法人”を創設しました。

✓委員会の認定
公益目的事業を実施することが主たる目的である一般社団法人と一般財団法人は、民間の有識者などによって構成される公益認定等委員会**の認定を受けることで“公益社団法人”と“公益財団法人”となれる制度となりました。

つまり、新公益法人制度の導入以前は、公益法人を設立する場合には公益性の判断が必要でした。その結果、公益法人の設立が簡単ではありませんでした。これらの課題を解消するために、一般社団法人と一般財団法人の『設立』と『公益性の判断』を分離しました。

そのため、一般社団法人と一般財団法人は非営利法人ではあるものの、その目的を公益とする必要はなくなりました。実際に、利益を目的に設立されている一般社団法人もあります。

しかし、公益社団法人と公益財団法人を設立する際には、公益認定等委員会による公益性の認定が必須となりました。

*公益法人三法とは、以下の3つの法律の総称になります。
・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(法人法)
・公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(認定法)
・上記の整備法(整備法)

**公益認定等委員会は、公益法人の認定などを行うための、認定法に基づく内閣府に設置された機関になります。公益性の認定の他に、公益法人などの監督も実施しています。

● 近年の公益社団法人数

新公益法人制度導入前にあった2.4万社あった公益法人は9千社まで絞られる結果となりました。そして、2021年3月時点の公益法人は9,794社となっています。その中で、公益社団法人は4,200社と公益財団法人5,594社に分かれています*。

*公益財団法人助成財団センター『日本の助成財団の現状』より

1-1 公益性とは

公益性とは

公益社団法人を設立しようとする場合には、満たさなければいけない基準があります。その基準は大きく2つに分けられます。

  1. ①公益に資する活動を行っているか(『公益性』の基準)
  2. ②公益目的事業を実施する能力・体制があるか(『ガバナンス』の基準)

満たさなければいけない基準

①公益性の基準

公益性の基準は、以下の大きく5つの要素を満たすことが求められます。

公益性の基準

✓公益を目的とする事業を主に実施している
公益目的事業は、学術や技芸や慈善活動など公益に関する認定法に掲げられた種類の事業で、不特定かつ多くの人の利益の増進に寄与する事業を言います。公益法人は、公益目的事業を実施することが主たる目的であることが求められ、具体的に事業比率で50%以上が公益目的事業である必要があります。

また、公益目的事業以外の事業を実施することも認められていますが、その事業を実施することで公益目的事業に支障がない事が前提になります。

✓特定の者に『特別の利益』を与える行為は実施しない
ここでいう“特別の利益”とは、公益法人の事業内容など具体的事情を踏まえて、社会通念上で合理的ではないと判断される利益や優遇を言います。

✓収支相償が見込まれる
公益法人の収支は、公益目的事業によって得られる収入がその費用より多くなることが見込まれることが求められます。収入が費用より少ない状況では、公益事業を継続することができません。公益法人と公益目的事業を継続するためにも、適切な収入を確保することが求められます。

✓遊休財産規制
公益法人では、具体的な利用方法が定まっていない財産(遊休財産額)は公益目的事業で発生する費用1年分を超えて保持してはいけないことになっています。

✓その他の規制
公益法人の理事や監事などの報酬は、支給基準を不当に高額になることを避けなければなりません。また、実態としての営利活動を実施することを回避するために、他の団体への意思決定に関与できる株式などの財産は保有できません。

②ガバナンスの基準

ガバナンスの基準は、公益目的事業を実施する能力や体制が保てることが求められます。この基準は、大きく4項目に分けられます。

ガバナンスの基準

✓経理的基礎・技術的能力を有する
公益目的事業が安定的かつ継続的に行われるために、公益法人には経理的基礎と技術的能力が求められます。この経理的基礎と技術的能力は、公益法人の存立に必要不可欠な根本的基準といえます。また、技術的能力を自組織に持たず、指示や依頼だけを行うことで実際の業務は別法人が実施するいわゆる“丸投げ”は禁止されています。

経理的基礎と技術的能力の両方ともに、抽象的な事項になっています。そのため、基準に該当しているかどうかを判断することが簡単ではありません。しかし、一つの基準となるのが公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)になります。

✓お互いが密接な関係にある理事や監事が3分の1を超過しない
共通の特定の利益がある理事や監事が集まることで、公益性を阻害する要因が生じる恐れがあります。そのため、理事と監事のうちに親族などの相互に密接な関係がある者は理事と監事の合計に対して3分の1を超過することはできません。

✓公益目的事業財産の管理を定款に定める
公益目的事業財産とは、公益法人が所有する財産の中で、公益目的に活用されるべき財産をいいます。この公益目的事業財産の中で、公益目的事業の実施に必要な財産は、その管理方法を定款で定めることが求められます。

具体的に定款で定めるべき事項は、以下に該当した場合には公益目的事業財産もしくはその残額を公益目的団体などに贈与する旨の定めが必要です。

・公益認定が取り消しとなった場合
・法人を解散する場合

✓その他
会計監査人の設置は必須になります。また、社員資格の得喪に関する条件などがあります。社員資格の得喪とは、社団法人の社員になること又は社員でなくなるための手続きや条件などの定めを言います。

●欠格事由

上記の公益性の基準ならびにガバナンスの基準を満たしていても、欠格事由に該当していると公益認定を受けることができません。公益認定における欠格事由は以下になります。

  • ・理事と監事と評議員のうちに、一定の要件(公益認定取り消し日から5年以上経過していない公益法人の理事など)に該当する者がいる場合
  • ・公益認定取り消し日から5年以上経過していない
  • ・定款や事業計画書の内容が法令または行政機関の処分に違反している
  • ・事業を実施するために必要な行政機関の許認可などが受けられない
  • ・国税や地方税の滞納処分終了から3年以上経過していない、または執行中
  • ・暴力団員などがその活動を実質的に支配している

●公益目的事業

公益目的事業は、以下の2つの要素を満たす事業を言います。
・学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業
・不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業
そして、具体的に公益目的23事業が別表として挙げられています。

公益目的23事業

  1. 1 学術と科学技術の振興を目的とする事業
  2. 2 文化と芸術の振興を目的とする事業
  3. 3 障害者、生活困窮者又は被害者(事故・災害・犯罪)の支援を目的とする事業
  4. 4 高齢者福祉増進を目的とする事業
  5. 5 勤労意欲のある者が就労するための支援を目的とする事業
  6. 6 公衆衛生向上を目的とする事業
  7. 7 児童や青少年の健全な育成を目的とする事業
  8. 8 勤労者福祉の向上を目的とする事業
  9. 9 教育やスポーツなどを通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、または豊かな人間性のかん養を目的とする事業
  10. 10 犯罪防止または治安維持を目的とする事業
  11. 11 事故または災害を防止することを目的とする事業
  12. 12 人種や性別などの事由によって不当な差別や偏見を防止し、根絶することを目的とする事業
  13. 13 思想や信教、表現などの自由を尊重しかつ擁護することを目的とする事業
  14. 14 男女共同参画社会など、より良い社会の形成推進をすることを目的とする事業
  15. 15 国際相互理解の促進、開発途上地域に対する経済協力することを目的とする事業
  16. 16 地球や自然環境の保全や保護、整備することを目的とする事業
  17. 17 国土の利用や整備、保全することを目的とする事業
  18. 18 国政の健全な運営確保に資することを目的とする事業
  19. 19 地域社会が健全に発展することを目的とする事業
  20. 20 公正で自由な経済活動を行う機会確保と促進、活性化することで国民生活を安定向上させることを目的とする事業
  21. 21 国民の生活に不可欠な物資やエネルギーなどの安定供給するための確保を目的とする事業
  22. 22 一般消費者の利益を擁護し、増進することを目的とする事業
  23. 23 前各号に掲げるもの以外で、政令で定められた公益に関する事業

1-2 公益社団法人の設立方法

公益社団法人の設立方法

一般社団法人で、非営利組織として事業を行い、法人自体ならびに事業内容などの審査を受け、『公益性』を認定されると公益社団法人になります。

つまり、公益事業を行うだけであれば一般社団法人でも公益社団法人でもできます。公益社団法人を設立することは、一般社団法人で事業を継続するよりメリットがある場合に実施すべきです。公益法人になることを目的にすることなく、メリット・デメリットのバランスを考えながら、公益社団法人になることを検討する必要があります。

●公益社団法人の設立方法

前述のとおり、公営社団法人になるためには公益性の認定を受けなければいけません。そして、公益性の認定を受ける流れは以下のようになります。

≪公益社団法人設立の流れ≫

  1. 1 一般社団法人を設立する
  2. 2 行政庁へ公益認定申請を実施する
  3. 3 行政庁の審査が行われ、公益認定等委員会ならびに合議制の機関で諮問を受ける
  4. 4 行政庁からの公益認定の通知を受ける
  5. 5 公益社団法人へ移行登記

公益認定の申請は、行政庁に行います。行政庁とは、内閣総理大臣または都道府県知事になります。事務所が1つないしは複数あっても同じ都道府県にある場合には都道府県知事宛てに申請します。

一方で、以下の事由に該当する場合には内閣総理大臣が行政庁となります。

・事務所の住所が複数の都道府県に存在する
・公共目的事業を実施する地域が複数の都道府県をまたがることを定款で定めている
・国の事業や事務と密接な関連があり、かつ政令で定められた公益目的事業を実施している

申請書ならびにその添付書類が適切に提出されると、行政庁は書類審査(定款審査)を実施します。行政庁による書類審査を通過したのちに、公益認定等委員会による認定基準に該当し、欠格事由に該当しないかの審議が行われます。

公益認定等委員会が申請された法人の公益性とガバナンス性に問題ないと判断されると、認定書が交付されます。なお、公益性やガバナンス性に問題があると判断された場合には、その問題点を改善して、再度申請をやり直すことができます。

認定を受け取った一般社団法人は、本店の事務所がある住所を管轄する法務局で公益社団法人に移行するための登記を行うことで、公益社団法人の設立の手続きは完了です。

●公益法人のメリット

公益法人の主たるメリットは以下の2点があげられます。

公益法人のメリット

≪公益社団法人のメリット≫

  1. 1 税法上の優遇措置
  2. 2 社会的信用の獲得

✓税法上の優遇措置
公益社団法人になることで、具体的なメリットが税法上の優遇措置になります。税法上の優遇措置は、公益社団法人に寄付する個人と法人が寄付金控除を受けることができます。また、公益社団法人自体にも優遇措置があります。

公益社団法人に認められている寄付金控除とは、寄附金が国によって特定寄付金として認められることで、その寄付金額に応じて所得に対して一定の控除が認められる制度になります。そのため、公益社団法人に寄付をする法人や個人は、自分が応援したい活動に対して寄附という形の支援をできるだけでなく、寄附に応じた節税ができることになります。そのため、公益社団法人になることでより寄付金が集まることが期待できます。

具体的な控除金額については、『1年間に寄付した特定寄付金の合計金額』と『1年間の総所得金額などの40%に相当する金額』のうちの低い金額から2千円を差し引いた金額が寄付金控除額になります。

公益社団法人自体も以下の税法上の優遇措置を受けることができます。

≪公益社団法人が利用できる優遇制度≫

  • ・公益事業での収益が非課税(法人税法第7条)
  • ・みなし寄付金制度*の利用が可能(法人税法第37条第5項)
  • ・源泉所得税と消費税は一定割合まで非課税(所得税法第11条/消費税法施行令第75条第1項第6号ハ)

*みなし寄付金制度とは、公益社団法人の事業における収益事業で得た資産を同一法人内の収益事業以外に利用した金額をみなし寄付金とする制度です。みなし寄付金とすることで、公益社団法人に寄付を行うのと同じ優遇措置を利用できます。

✓社会的信用の獲得
公益社団法人になるということは、簡単ではありません。その公益性について、内閣総理大臣や都道府県知事の審査を通過したうえで、公益認定等委員会の諮問を通過する必要があります。

そのため、一般社団法人が行う公益事業よりも公益社団法人が実施する公益事業はより客観的な信用を得ていると考えられます。また、その認定は実施事業の公益性だけでなく、経理的観点や組織的観点からのガバナンス性も含めで法人全体が審査の対象となっている点からも信用が増します。

人のため、といった美辞麗句を並べて自己の私腹を肥やす詐欺まがいな行為を行う法人や個人もいるのも事実です。そのため、公益社団法人と言う社会的に信用を取得した組織である公益社団法人が得る信用は非常に大きな価値を持ちます。

●公益社団法人の維持

公益社団法人を維持しようとすると、税法上の優遇措置などその他法人と比較して優遇されている面があるため、認定を受けてからも遵守しなければいけない事項が複数あります。

≪遵守事項≫

  1. 1 公益目的事業の比率が50%以上である状態を維持する
  2. 2 遊休財産額は定められた金額以内に抑える
  3. 3 寄付金などの定められた財産は公益目的事業にだけ活用する
  4. 4 財産目録などを作成し、常に閲覧できるように備え置く
  5. 5 行政庁への必要書類の作成・提出を行う など

遵守事項が守れない状態が続く場合には、監督措置がとられます。監督措置とは、第3者委員会などが報告の徴収や立入検査を実施します。それでも遵守事項に反する行為が継続する場合には、第三者委員会から内閣府や都道府県を通じて必要な措置を講ずるように勧告が実施されます。勧告後も違反状態が続く場合には、認定が取り消しになる場合があります。

認定が取り消しされた公益社団法人は、一般社団法人に戻ります。認定が取り消しになると、公益社団法人を名乗ることはできません。また、公益社団法人としての活動で得た収益は使用することができず、定款に定められた通りに類似した事業を目的としている他の公益法人などに贈与することになります。

仮に類似した事業を目的とする公益法人がない状態など、公益認定が取り消しされてから1ヶ月を経過しても贈与を実施していない場合には、国もしくは都道府県に贈与しなければなりません。

なお、認定を受けたままで公益社団法人を解散することは可能です。ただし、公益社団法人を解散した日から1ヶ月以内に行政庁へ解散の届出が必要です。

1-3 公務員・会社員との違い

公務員・会社員との違い

公益社団法人は非営利法人です。非営利法人は利益を上げることはできますが、利益を分配することができません。利益を分配することができない、と聞くと公益社団法人で働く人は、ボランティアで給与を得ることができない、もしくは株式会社などの一般企業で務める人のように賞与がない、と勘違いする方もいます。

公益社団法人で働く職員にも給与は出ます。また、賞与も出ます。ただし、利益の再分配はできないので、決算が良かったから特別に発生する“決算賞与”などはありません。

公益社団法人を含む非営利法人では、職員へ支払される給与や賞与などは一般企業と同じく費用として計上されます。そのため、利益の分配にあたることはありません。利益の分配とは、あくまで利益が出たから支払いを行うものに限られます。

●公益社団法人の職員は公務員ではない

公益社団法人は、その公益性から民間企業のイメージより、行政のイメージが強いのかもしれません。そのため、公益社団法人で働く職員は、公務員と思う方もいます。

実際には、公益社団法人は民間企業であり、公益社団法人の職員も公務員ではありません。ただし、公益社団法人には国や地方自治体と連携をとりながら公益事業を実施する法人もあります。

そのような公益社団法人においては、就労条件が公務員に準じたものが設定されていることもあります。就労条件は各法人個社で設定しているものになりますが、株式会社などの営利法人と比較すると公務員などに準拠している法人が多いと言えます。

ただし、それほど給与面などの報酬面は一般企業と大差はありません。前述のとおり、利益の再分配ができない為、歩合などの形も取りにくく実力次第で報酬やコミッションが支払われる給与体系は取れません。

その代わり、補助金や寄付金などもあり、安定的かつ継続的な経営を実施している公益社団法人が多く、給与が安定しているということができます。

●公益社団法人で働くメリット

公益社団法人で働くことの代表的なメリットは以下の2点になります。

公益社団法人で働くメリット

≪公益社団法人で働くメリット≫

  1. 1 社会的意義の大きさを感じられる
  2. 2 安心できる待遇がある

✓社会的意義の大きさを感じられる
公益社団法人の事業の多くは、社会に対して貢献が大きい事業内容になっています。また、公益社団法人を支える職員の数はそれほど多くありません。そのため、社会的貢献が大きい事業を自身が進めている・支えていると実感することが多くなります。

そのため、自分の仕事自体に社会的意義の大きさを感じる機会が多くなります。自分の仕事に意義を感じながら、社会に対して貢献できる事業を進めることは働く喜びを得やすい状況と言えます。

また、公益社団法人は認定を受けて継続している法人であり、社会的信用が高いこともその組織で働く社会的意義を感じるポイントにもなります。

✓安心できる待遇がある
公益社団法人は認定を受けている点や補助金などを受けている面もあり、労働条件なども一般的ないしは一般的より少しだけ良い条件になっています。

また、非営利法人であるため利益の再配分ができないため、利益に応じた報酬をだせません。その代わり、福利厚生は公務員と同程度の法人が多くなっています。安定的かつ継続的に成長するスキルや性格の人材が求められるため、長く働くことで得られる経験が評価を受ける人事制度になっている法人が多いのも特徴です。

これらのことは、長く働こうとする人にとっては安心できる環境と言えます。

●公益社団法人で働く注意点

公益社団法人に限った話ではありませんが、組織で働く場合にはその組織に規模によって待遇や忙しさは変わってきます。

組織が大きいとそこで働いている職員の数は多く、急な休みが必要な時に替わりの人を見つけることが比較的簡単にできることになります。一方で、組織の規模が小さくそこで働いている職員も事業を回すのに最低限の人数と言う状況ではなかなか休みをとることもできにくい環境になります。

公益社団法人は、比較的規模の小さい法人もあります。また、収益を上げることを目的の営利法人とは異なり、利益を成長させることで法人の規模も大きくなっていくということは一般的ではありません。公益社団法人でも法人規模の大小はありますが、営利法人ほど大きな規模の変化はありません。そのため、働く環境や境遇については事前に確認をする必要があります。

また、公益社団法人の職員と一言で言ってもその職種は様々です。その職種を二分すると、現場職と事務職と分けることができます。公益社団法人は、公共サービスや公共事業などの官公庁や行政からの委託での検査や監督などの仕事があります。これらの仕事を実施するのが現場職です。この現場職においては、専門資格が必要な仕事が大半になります。

例えば、電気保安協会での現場職は電気点検業になるため電気工事士の資格が必要です。その他に建設工事や医療・介護などの分野の資格やスキルも公益社団法人の現場職員で募集される資格やスキルになります。

一方で、事務職は一般企業の事務職と大差はありません。ワードやエクセルなどが使えるなどが求められますが、その他の特別なスキルは求められていない職員もいます。

一般企業でも公益社団法人でも自分の持っているスキルを活かせる環境で働いた方が、スキルアップにもつながります。公益社団法人で務めようとする時にもどのような仕事が募集されているのか、自分のスキルが活かせるのかという点にも注意が必要です。

●公益社団法人への就職方法

公益社団法人に就職・転職しようとする場合、その流れは一般企業への就職・転職と同じです。興味のある公益社団法人のウェブサイトの採用ページや、ハローワークや就活・転職のサイトをチェックします。そして、求職がある公益社団法人に対して応募を行い、書類選考や面接を行います。

面接の回数や筆記試験の有無や採用基準や採用条件などは、各法人によります。そのため、詳細は直接求人をしている法人に確認が必要なことも一般企業と変わりません。

一般企業と異なるのは、公益社団法人自体の数が少ないことと公益社団法人が求人をする機会が多くないため、公益社団法人の採用募集はかなり数が限られています。そのうえ、新型コロナウィルスの感染などによる不景気感や今後の見通しの難しさから、安定した職場である公益社団法人の職員へのニーズは高まっています。

そのため、公益社団法人の職員になることは、機会が少ないうえに競争率が高い状況になっていて、非常に狭き門になっている現実があります。定期的に気になる公益社団法人の求人ページを確認することや、直接法人の人事担当者へ電話で確認などをして積極的に情報を取得しに行く必要があります。

公益社団法人へ就職する際に、現場職のかつ専門性が求められる仕事ほど競争率は下がります。公益社団法人が求める専門スキルや免許を持っている場合には、公益社団法人に就職するチャンスです。一方で、事務職の募集は求められる専門性が低いため、競争率が高まります。スキルや実務経験は必要ないですが、他の就職希望者より秀でている部分が必要になります。

現場職であれ事務職であれ、求人情報自体が少ないため、まずは継続的な情報収集と過去の求人で求められたスキルや条件などをチェックしておくことが必要です。

2 公益社団法人とその他の法人との違い

公益社団法人とその他の法人との違い

公益社団法人が、非営利法人でかつ公益目的事業を主として実施している法人です。公益社団法人をより理解するためには、他の組織や法人との違いを把握することでより深く具体的な理解ができます。

ここでは、『国・地方自治体』『財団法人やNPO法人』との相違について解説していきます。

2-1 国・地方自治体との相違点

国・地方自治体との相違点

国・地方自治体の組織は、法人ではありません。国や都道府県や市区町村などの機関が運営する組織と、公益社団法人での大きな違いはその資金源になります。公益社団法人を含む法人は収益を得てその収益をもとに事業を継続していきます。

公益社団法人に限らず法人には補助金を受け取っている場合もありますが、あくまで補助のお金になります。公益社団法人を含む法人は、事業で収益を上げて法人とその事業活動を維持していくことが基本です。収益を上げる必要があるのは営利法人非営利法人に限らず共通です。

一方で、国や地方自治体はその運営に必要な費用は税金でまかなわれています。国や地方自治体などの行政組織は倒産することは原則ありません。

また、国や地方自治体で勤務することと、公益社団法人で勤務することにも明確な違いがあります。国や地方自治体で勤務する人は公務員になります。公務員には、国家公務員と地方公務員と国際公務員と分かれていますが、どの公務員として働く場合でもそれぞれの公務員試験に合格する必要があります。

公益社団法人は、国や地方自治体の仕事を業務委託の形で受けている法人も多いというのは前述のとおりです。職種によっては専門の資格やスキルを求められることはありますが、公益社団法人の職員になるための資格はありません。

国や地方自治体で働く公務員も公益社団法人の職員も安定した職業である点にメリットを感じて働く人が多いのは共通点になります。

もともと、国や地方自治体だけでは行き届かないが確実に社会的ニーズを拾い上げることが公益社団法人などの非営利法人の重要な役割の一つになります。そのため、国や地方自治体と公益社団法人は連携して社会や地域に貢献していくことが多くなります。その点で、また、公益社団法人は利益より共益性を重視しているため、社会に対して貢献する仕事ができる点も公務員との共通点と言えます。

2-2 財団法人やNPO法人との相違点

財団法人やNPO法人との相違点

公益社団法人は法人区分では、非営利法人の区分に含まれます。そして、非営利法人には公益社団法人以外に以下のような法人があります。

特定非営利活動法人(NPO法人) 営利を目的とせずに社会的活動を行う民間組織(NPO)で、法人認証を受けた法人になります。
一般社団法人 人が集まることで設立ができる非営利団体法人になります。事業内容は原則自由であり、制限などもありません。
一般財団法人 300万円以上の財産があれば設立できる非営利団体法人になります。そのため、設立後には2期連続して純資産が300万円以下の状態が続く場合、法人を存続させることができません。
公益財団法人 一般財団法人で、公益認定を受けた法人になります。公益社団法人と同様に公益財団法人も公益目的事業の実施を主たる目的にすることが求められます。
社会福祉法人・学校法人など 社会福祉事業や学校施設(幼稚園から大学院まで)の設置運営を行うことを目的とする法人が、社会福祉法人や学校法人になります。また、医療を行うことを目的として設立された非営利法人が医療法人になります。

●一般社団法人と財団法人

一般社団法人は、公益の認定を受けている場合には公益社団法人になります。全ての一般社団法人が将来的に公益社団法人になるわけではありません。そのため、一般社団法人の中には、公益目的事業を主として実施せずに収益事業を主に実施している法人もあります。

一般社団法人と公益社団法人は“人が集まって設立できる”という点など共通点は多くあります。一方で、相違点は公益認定を受けられる体制の社団法人かどうかという点が相違点になります。一般的には、公益認定の基準を満たしていれば公益認定を取得し、公益社団法人になった方が税法上の優遇措置や社会的信用の増大のメリットが大きくなります。

財団法人は、財産の管理を目的として設立される非営利法人になります。財団法人も、設立に許可や認定が不要な一般財団法人と公益認定が必要な公益財団法人に分かれます。一般財団法人も、必ずしも公益財団法人に移行するわけではないという点で社団法人と同様です。

公益財団法人助成財団センターのウェブサイトには、日本の助成財団の現状を示す目的から資産総額上位100財団(2019年度)が掲載されています。その中で、最も資産が多い財団法人は日本財団となっています。その資産総額は2,781億円となっています。

日本財団は、「ソーシャルイノベーション」のハブとなり、子ども支援、障碍者支援、災害復興支援など、より良い社会づくりを目指す財団法人です。

公益財団法人と公益社団法人の共通点は公益目的事業を主として実施することにあるため、共通点が非常に多くなります。

一方で、その組織の成り立ちが人の集まりとして組織である社団法人と、財産があることを前提とする財団法人という点から相違が生まれてきます。社団法人の設立時点では社員が2名以上いることが必須となり、一方で財団法人の設立ならびに維持に対しては一定の財産の維持が求められます。

●NPO法人

特定非営利活動を行うことが主たる目的であることの認証を受けることで設立ができるのが特定非営利活動法人(NPO法人)になります。特定非営利活動とは、定められた20種類の分野に該当する活動*を言います。これらの活動は、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とするものです*。

*内閣府HPOホームページ『特定非営利活動(NPO法人)制度の概要』で詳細を確認できます。

特定非営利活動を行う法人格を持った団体組織がNPO法人です。特定非営利活動を行う組織を法人化することで、ボランティア活動などの市民の自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進しています。NPO法人になることで、活動や団体に対する信用が高くなる利点があり、社会からの支援や協力やその他の法人との取引の活性化が進むことが期待できます。

なお、NPO法人にも一定の要件を満たすことで所轄庁(都道府県もしくは政令指定都市)から認定をうけて認定特定非営利法人(認定NPO法人)に移行ができます。認定NPO法人は税制上の優遇措置を受けられます。

一定の要件を満たすことで認定を受けることができ、それにより法人の種類が移行して税法上の優遇措置を受けられる点は公益社団法人とNPO法人(認定NPO法人)の類似点と言えます。『公益的な活動を実施する法人を支援する』というベースとなる共通点が、公益社団法人と認定NPO法人にはあります。

税制上の優遇措置としては、寄附を行う個人や法人に対する税制上の優遇措置は共通です。

一方で、公益社団法人では収益事業における利益も公益目的事業であれば非課税になりますが、認定NPO法人では税法の収益事業に対しては課税がなされます。また、公益社団法人では収益事業の利益もすべて損金に算入させることができます。しかし、認定NPO法人の場合には、損金算入が可能な金額には上限があります。

税法上の優遇措置を幅広く受けることを目指すのであれば、公益社団法人のメリットは認定NPO法人より大きくなります。

✓公益社団法人と認定NPO法人の認定要件と設立までの比較
認定NPO法人は、その設立段階で行政による公益性の判断が入ります。認定NPO法人に移行するために必要な認定には、以下に挙げる認定基準に合致する必要があります。

≪認定NPO法人の認定基準≫

  1. 1 PST(パブリックサポートテスト)*に適合する
  2. 2 事業活動で共益的な活動が占める割合が、半数未満である
  3. 3 運営組織と経理が適切である
  4. 4 事業活動内容が適切である
  5. 5 情報公開を適切に実施している
  6. 6 事業報告書の作成ならびに所轄庁への提出が実施されている
  7. 7 法令違反や不正行為ならびに公益に反する事実がない
  8. 8 設立日より1年以上の経過期間がある
  9. 9 欠格事由に該当しない**

*PSTとは、広く市民からの支援を受けているかの判断を行うための基準です。認定基準の中で重要な役割を果たしています。PSTの判定においては『絶対値基準』『相対値基準』『条例個別指定』のどれかの基準を選択することができます。

**内閣府NPOホームページ『認定制度について』で詳細を確認できます。

公益社団法人と認定NPO法人のどちらも認定を受けること自体は簡単ではない点は共通点になります。

認定NPO法人は、NPO法人の設立から2期が終了してから申請することが一般的です。基本的にはその認定には、2期分の決算書にもとづいた申請書の作成が必要となるからです。一方で、公益社団法人は原則として一般社団法人設立から1期未満であっても申請を行うことはできます。

そのため、もし早く税制上の優遇措置を受けたい場合や公益や認定などのブランディングが必要な場合には公益社団法人の設立を目指す方が効率的です。

また、公益社団法人と認定NPO法人にはその認定の有効期限にも相違があります。公益認定法人の認定に対する有効期限はありません。不正や違法行為など、認定の取り消し事由に該当する行為が継続する状態がなければ、原則公益認定を受けて以降で認定は無期限に有効になります。

一方、認定NPOの認定は有効期限が5年に設定されています。5年経過した後には更新が必要です。更新時に認定の要件を満たしていない場合には、認定が更新されずNPO法人に戻ることになります。更新は、認定の有効期限の3から6ヶ月前までに所轄庁に申請が必要です。

なお、公益社団法人も特定NPO法人もそれぞれ認定の取り消しなどが発生した場合には、一般社団法人やNPO法人になる点は同じです。

3 まとめ

公益性を求められる社団法人の特徴、公務員・会社員との違い、国・地方自治体やNPO企業との違いを見てきました。公益社団法人は、公益目的事業を主として実施することが求められます。その見返りとして、税制上の優遇措置を受けることができます。また、国や地方自治体からの補助金が支払われることや寄附を得やすくなっているという特徴があります。

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