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持株会社へ移行するタイミングはいつ? 持株会社とは何かを解説します!

上場会社の社名には「ホールディングス」という単語が付いている会社が多い事に気づきますでしょうか。また最近では上場会社以外でも多数の企業でホールディングス=持株会社制度の利用が進んでいます。会社の事業が拡大・多角化した場合や、複数の異なる事業運営を検討する場合には、持株会社化を検討するタイミングになります。

今回は近年中小企業においても検討する機会の増えてきている持株会社についてまとめます。今後持株会社の設立とその設立方法をご検討されている方に向けて、持株会社とは何かという定義説明と、メリットとデメリットと設立方法を解説します。

1 持株会社とは

持株会社とは

持株会社は、グループ経営を行う際に実施する企業経営手法の1つになります。前述のホールディングスについては持株会社のカタカタ表記になり、英語表記の「holdings」からきている言葉になります。

持株会社とは

持株会社とは傘下の子会社等の株式会社の株式を保有して支配している会社をいいます。そのため、持株会社とは「親会社」の1つになります。

持株会社を設立する目的は、“企業再編”と“企業の子会社化”です。企業再編とは、会社の組織や形態を変更・再編成する事をいいます。企業の子会社化は、持株会社が子会社を管理・支配する事を強化する事があります。また近年は、事業継承なども主たる目的の一つになってきています。

持株会社は合計3種類

持株会社はその運営方法により『事業持株会社』と『純粋持株会社』の2つの種類と、イレギュラーケースともいえる『金融持株会社』の計3種類になります。

●事業持株会社
自らも主たる事業を持っている持株会社になります。つまり、事業を行いながら株式保有を行う会社の支配を行なっている会社をいいます。
●純粋持株会社
自らは事業を行わない持株会社になります。株式保有を行う会社の支配のみを行っている会社をいいます。
●金融持株会社
純粋持株会社でも、事業持株会社でもない持株会社になります。これはグループ傘下の会社全てが金融機関である場合の持株会社をいいます。金融持株会社の設立には、銀行法や保険業法などの管轄する監督官庁の法律にのっとった許認可が必要です。

日本の財閥解体を目的として、持株会社(ホールディングス)はGHQによって第2次大戦後禁じられていました。しかし、産業構造の変化に伴い、企業買収や組織再編の機会が増加しました。それぞれの事業に特化した企業群を構築する持株会社の効率的な経営への要望が募りました。その結果、1997年12月の独占禁止法の改正により純粋持分会社の設立が解禁される事になりました。

経済産業省の『平成27年純粋持株会社実態調査』によると、純粋持株会社数が485社(前年度比7.3%増)となり、純粋持株会社の売上高または営業収益が3兆2,369億円(同5.2%増)、常時従業者数が25,695人(同3.9%増)と継続的に増加しています。

また、業種としては卸・小売業が109社(構成比23%)と最も多く、その次に製造業95社(同20%)とサービス業52社(同11%)、金融・保険業44社(同9%)、建設業37社(同8%)と続きます。これらの上位5業種によって純粋持株会社全体の70%以上を占めています。また純粋持株会社の子会社保有状況は、国内12.0社、海外7.2社の子会社を平均保有しています。また関連会社に関しては国内2.4社、海外1.4社を平均で保有しています。

純粋持株会社は会社設立の方法により『合弁代替型』と『企業組織再編型』の2つに区別できます。

①合弁代替型…持株会社を自社以外の会社と共同で設立する、経営効率の向上と規模の拡大を目指す設立方法です。

②企業組織再編型…持株会社を自社の分社化によって設立する、経営効率の改善を目的とする設立方法です。

さらに組織再編においては、『新設型』と『吸収型』の2つがあります。

新設型は新たな会社の設立をします。1社の単独ないしは複数の会社の共同による組織再編になります。新設分割、新設合併や株式移転などの手法が利用されます。吸収型は既存の会社間での組織変更になり、既存の会社が継続して存続します。吸収合併や吸収分割や株式交換などの手法が利用されます。

1-1 管理・支配とは

持株会社の特徴は、自社の下に管理・支配する株式会社がいることです。では、この管理・支配される対象の会社はどのように選定されかについて定義を解説します。

管理・支配は持株会社の意思決定が支配されている会社(被支配会社)の意思決定と同一になることを意味します。持株会社と被支配会社との関係が成立する条件としては、一般的には被支配会社の議決権のある発行済株式の50%超を持株会社が保有している事があります。この50%とは、株主総会を開催できてかつ株主総会決議を行うことができるという会社法(第309条第1項)に基づいています。この議決権のある発行済株式の50%超を保有されている会社を子会社といいます。また、子会社の中でも100%を保有されている会社を完全子会社といいます。

1-2 子会社になる定義とは

子会社になる定義とは

会社法では、『会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省で定めるもの』を子会社としています(会社法第2条3号)。

法務省で定める定位は、会社の“財務”及び“事業”の方針の決定を支配している場合をいいます(会社法施行規則第3条1項)。つまり、子会社とは『財務及び事業の方針の決定』という意思決定を支配されている会社をいいます。

具体的に子会社であると定義される条件のポイントは、議決権になります。議決権とは、財務及び事業方針等の会社の方針を決定する株主総会に参加できる事、また株主総会の決議に票を入れる事ができる権利になります。一般的には1単元株*あたり1議決権を得る事になりますので、具体的には株式会社における株式を所有する事で議決権を得ていきます。

支配している事の定義は大きく以下の3つに分けられます。

  1. ①50%超の議決権を所有する場合
  2. ②40%超の議決権を所有する場合で、一定の要件に該当する場合
  3. ③40%未満の議決権を所有する場合で、かつ特定者が持つ議決権と合わせると50%超になり、かつ一定の要件に該当する場合

*単元株とは、株式取引の売買単位をいいます。単元は各株式会社で決定する事ができ、1株や100株や1,000株が一般的です。

〇一定の要件

一定の要件とは、支配するために必要な「ヒト(役員等)、モノ(契約等)、カネ」が議決権以外でもある場合になります。

該当する会社の取締役会等を構成する役員の50%超を当社の意思で行動する人たち(当社役員など)が占める場合
該当する会社の財務及び事業の方針など重要な決定を支配する契約等がある場合
該当する会社に対して行なっている融資などの資金提供が該当する会社の資金調達額総額に対して50%超となっている場合

〇特定者

特定者とは、自社と同じ意思決定=議決権の行使を行う人ないしは法人をいいます。特定者の定義は、大きく以下の2つに分けられます。

人事や技術・取引や資金・出資などから自社と“緊密な関係”がある事が認められている役員等や関係会社等
契約などにより自社と同一の内容の議決権行使を同意している人や法人

〇関係会社

関係会社とは、人事、技術・取引、出資等を通じて財務や事業の方針の決定に重要な影響を与える事が出来る他の会社をいいます(財務諸表規則第8条第5項)。但し、この他の会社には子会社は含まれません。

重要な影響とは、子会社同様に議決権の所有状況によって定められています。

  • 自社が議決権20%超を所有する場合
  • 自社が議決権15%以上を所有し、一定の要件に該当する場合
  • 自社と特定の者の議決権の合計で20%超を所有し、一定の要件に該当する場合

関連会社における一定の要件は以下になります。

  • 該当する会社に対して、代表取締役や取締役などに準ずる役員が就任している場合
  • 該当する会社に対して、重要な取引や技術提供や、重要な融資が行われている場合

1–3 持株会社の収益と配当方法

事業持株会社を除いた持株会社では、子会社の管理・支配を主たる事業としています。そのため、基本的には子会社からの配当金が主たる収益になります。また、子会社に融資を行なっている場合にはその利息等も受け取る事ができます。

配当とは、株式会社が得た利益を株主還元する行為をいいます。また配当金は株主に配当される利益=金銭をいいます。配当には株主特典など様々な形がありますが、ここでは配当金のみについて説明します。

配当金はその年に利益が出なかったとしても、今までの利益を余剰金として内部留保していれば行う事が可能です。一方で、債務超過*や欠損**の状態では、配当金を支払う事ができません。

*債務超過とは、その会社の資産合計より負債総額が上回っている状態をいいます。
**欠損とは、株式会社において純総資産(資本総額–負債総額)が資本金合計(資本金+資本準備金)を下回っている状態をいいます。

また、配当金を支払い出来る金額には上限があります。その上限のことを配当可能限度額といいます。配当可能限度額の一般的な計算方法は『その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額』になります。その他資本剰余金は、資本剰余金の資本準備金以外をいいます。その他利益剰余金は、利益剰余金の利益準備金以外をいいます。なお、非上場の持株会社で経営者と株主がイコールの場合には、持株会社に配当を行わないケースが多くあります。持株会社に配当を行なうメリットより、子会社において資金を内部留保するメリットの方が大きい場合があるからです。

〇中小企業の配当手続き

中小企業(かつ非上場企業)が配当を実施する場合、定款に基づいて実施する事が必要になります。つまり、取締役会と株主総会の決議を経て配当金額が決定します。

配当金を支払う上で重要になってくるのが、配当金です。配当金は所得税の対象になるからです。配当を行なう会社は配当金額から一律で20.42%の源泉徴収税額(所得税20%と復興特別所得税0.42%)の徴収が必要です。

仮に配当金1,000万円を配当する場合には、795万8千円を配当金として株主に支払いします。また、204万2千円を税務署に支払します。なお、源泉徴収税額は配当金の支払いを行なった月の翌月10日が納税期限になります。納税は金融機関また管轄する税務署で行なう事ができます。

持株会社とその子会社の株主が同一の場合には、源泉徴収税額が配当を行なうデメリットになります。内部留保しておけば1,000万円のキャッシュが残りますが、配当に回すと手元に残るのが795万円になってしまうため、先述の配当を行わず利益を子会社側で内部留保を行なう要因になります。

配当手続きにおいて、持株会社は配当金を受け取る立場になります。持株会社の会計上では配当金は営業外収益になります。また、注意が必要になるのは税法になります。配当金を受けとる会社の区分により、配当金は非課税や課税対象となります。

持株比率 関係会社*区分 株式保有の要件 非課税(益金不算入)
100% 完全子会社等 配当計算期間に対して全期間で保有している 受取配当金全額
100%未満33.3%超 子会社や関連会社等 配当計算期間に対して6ヶ月以上保有している 受取配当金金額から負債利子を控除した金額
33.3%以下5%超 その他の株式等 配当基準日***に保有している 受取配当金金額に50%を乗じた部分
5%以下 非支配目的株式等** 配当基準日***に保有している 受取配当金金額に20%を乗じた部分

*関係会社とは、親会社の連結決算の対象となる子会社と関連会社などをいいます。
**被支配目的株式等とは、配当金の支払いにかかわる基準日時点で所有する、5%以下の株式等をいいます。
***配当基準日とは、株主の配当を受けとる資格が確定する日付になります。

2 持株会社のメリットとデメリット

持株会社のメリットとデメリット

持株会社は前述のとおり、現在の会社運営や経営を行ううえで必要であるため持株会社は解禁されています。非常にメリットの多い制度になっていますが、一方で全ての会社がメリットのみを享受できるわけではなく、デメリットもあります。持株会社を設立する場合の判断材料と、メリットを大きくデメリットを抑えるようにしなければいけません。

2-1 メリット

持株会社を設立するメリットは以下の5点になります。なお、持株会社は中小企業より大企業の割合が高くなっていますが、事業規模や企業規模が大きくなればなるほど持株会社を設立するメリットは強力になります。

持株会社を設立するメリット

①グループ会社全体で基本観の統一が出来る
②業界や顧客の変化のスピードに対応出来る
③買収や売却などのM&Aに適している
④企業や事業に適した人事戦略が出来る
⑤リスク分散をする事が出来る

①グループ会社全体で重要な考え方の統一が出来る

会社経営において重要な事が“意思決定”になります。その意思決定の判断を正しく行うためには基準が必要になります。この基準を揃える必要があります。お客様や株主や取引先や従業員などステークホルダーにどのような価値を提供するかなどの考え方は会社の経営方針に大きく影響を与えます。

また、事業においては事業の投資した金額に対してどの程度利益を上げるべきか、どの程度の成長度を目指した事業計画を策定していくかなど、ヒト・モノ・カネの配分するためのルールなども重要な考え方になります。これらの考え方を統一出来る事は持株会社が管理・支配しているからこその統治効果といえます。子会社などが各社それぞれの経営方針で資金や人材を利用する事を避け、効率の良い事業に資源や人材を振り分ける事が出来ます。それによりグループ全体としてより効率の高い経営を行う事が可能になります。

②業界や顧客の変化のスピードに対応出来る

事業が異なる場合には、業界全体や顧客ニーズの変化が事業ごとに大きく異なってきます。この変化に対応していける事業・企業が利益を上げる事が出来ていきます。変化に対応していくために必要なのが、権限委譲になります。権限委譲を行うためには、1つの会社で複数の事業を行うよりは、事業単位で会社を設立してその事業会社の代表に権限を委譲するのがシンプルであり明確になります。

また、業種に特化する事でその業種に必要な専門知識や慣習を会社の中に集積する事が出来ます。この専門知識や慣習を集積する事で小さな変化にも敏感に察知し、大きな変化になる前に変化への対応準備を行う事が出来ます。

また、各会社に分ける事で、事業で得ている利益が会社単位で明確になります。1つの会社で複数の事業を行っていると、事業ごとに利益を計算する事は不可能ではありませんが、どこまでいっても机上の数値になってしまいます。利益が出ている会社とそうでない会社が一目瞭然で分かるという点は、各従業員の事業へのコミットも異なってきます。

③買収や売却などのM&Aに適している

買収と売却のそれぞれ持株会社である事は適しています。

〇買収
買収とは、持株会社が他の株式会社を管理・支配する事を目的として株式を買い取る事をいいます。買収の場合は、持株会社からしてみると新たな子会社や関連会社の株式を購入し、管理・支配する会社が一つ増える事になります。買収された株式会社は株主が変わりますが、株式会社や事業は引き続き継続する事も出来ます。そのため、持株会社も子会社化した買収された会社も買収による業務負荷は限定されています。会社やその事業を購入するということだと、合併や事業買収などもあります。合併とは、別の会社同士だった会社が一つになる事です。合併のやり方は新設合併と吸収合併とはありますが、どちらにしても最低1社は会社が消滅します。そのため、会社の事業を買いたいと考えた場合には、持株会社による子会社化という買収を行うことで手続きを少なくすることが出来ます。また、事業のみを購入する事も可能ですが、ノウハウや人材を失ってしまうデメリットがあります。
〇売却
売却には会社売却と事業売却になります。持株会社として子会社を売却する場合には、会社売却になります。また、持株会社ではなく1社で複数行う事業の一つを売却する場合には事業売却になります。
会社売却は、株式を他の会社に売却する事をいいます。つまり、会社は引き続き事業を行う事は可能な状態で株主が変わる事になります。事業売却は、会社で行っている事業の一部もしくは事業全てを売却する事をいいます。事業売却の後に発生した事業の利益は、事業を買収した会社が受け取る事になります。
売却する手間を考えると、株式を売却するだけで済む持株会社の会社売却のメリットが勝ります。

④企業や事業に適した人事戦略が出来る

どのような事業を行う企業かで、必要な人材やスキルは異なります。例えば営業会社であれば営業力の強い人材が必要ですし、システム会社であれば優秀なシステムエンジニアが必要になります。必要な人材が異なれば、給与制度や評価制度や教育制度などの人事戦略も異なってきます。

このように事業によって異なる人事戦略を導入するためには、事業ごとに会社化する事が有効です。

一方で、1つの会社で複数の事業を行うと、事業ごとに人事戦略を策定する事はできますが、事業部間の異動を行うと給与が下がるなどの人事評価に基づかない不公平が生まれます。会社ごとに人事戦略を変える事で、社員の不公平感を減らすことが可能です。さらに会社ごとに収益が明確であるため、給与制度において基本給に差をつける事や賞与で差をつけるなどの成果に見合った褒賞を提供する事も可能です。

また教育の面でも新入社員研修などの共通スキルはグループ会社をまとめて教育しながら、子会社ごとに事業ニーズに合った教育を提供する事が可能です。

⑤リスク分散をする事が出来る

持株会社で各子会社の損失は各子会社で影響が停まります。評判などはグループ会社全体に影響する事はありますが、1つの子会社が出した損失を支払いする責任は原則その会社のみが負います。

例えば、1つの事業で賄う事が出来ない損賠賠償責任が発生した場合で、1つの会社で複数の事業を行っている場合には会社の存続が危ぶまれる状況に陥る事になります。一方で、持株会社化している場合には賠償責任を負ったその子会社の存続のみが危機に陥りますが、それ以外の会社は一般的には存続できます。

2-2 デメリット

持株会社にはメリットもありますが、デメリットもあります。デメリットも理解し、持株会社を設立・運営する場合には注意する必要があります。デメリットは大きく以下の通りになります。

持株会社を設立するデメリット

①会社間の必要な情報連携が希薄になる
②持株会社全体の方向性と事業の方向性が異なってしまう
③法人を維持し、管理するコストが発生する

①会社間の必要な情報連携が希薄になる

持株会社では、それぞれの子会社は独立して企業経営を行っていきます。持株会社は管理・支配する方法として、定期的な業績や財務状況や事業運営の報告を受ける事などを行います。また報告だけではなく、内部監査など定期的な監視を行います。しかし、現実的には全ての子会社に起こっている事をタイムリーに把握する事は難しいです。

つまり、発生しているリスク情報を連携する事は子会社側の意思によってしまう部分が強くなります。しかも、子会社からすれば持株会社は親会社であり、支配・管理する存在です。不都合な事態が発生した場合でも、隠ぺいや歪曲などが発生する可能性があります。また、正しく情報連携をしていても、重大なリスクを見落とす可能性もあります。持株会社がリスク情報を定期的に発見しに行く仕組みと、子会社との情報連携における信頼関係を構築する必要があります。

また、持株会社が子会社へ行う指示についても、子会社全体に適切に理解・浸透させる事も必要になります。会社運営における統制は各子会社が行う必要があるため、情報伝達力と徹底力についても子会社間の違いに注意が必要です。

②持株会社全体の方向性と事業の方向性が異なってしまう

事業会社の運営が長くなるにつれ、社風や価値観は少しずつ変化していきます。その結果、元々の持株会社やグループ全体の社風や価値観と乖離する事が起こる場合があります。社風や価値観の多様性は、グループ全体の強化につながる面もあります。一方で、絶対に持株会社側が譲れない価値観があるにもかかわらず、子会社の事業上必要な考え方になる場合もあります。例えば、金融持株会社において、金融会社独特の“硬さ”はブランディング上でも必要になりますが、子会社のシステム会社では優秀なエンジニアの活躍のためにフレキシブルさが必要になる場合などがあります。また、海外進出すると進出先の現地の考え方にフィットするための社風や価値観と日本式の持株会社のそれと一致しない事も発生しやすくなってきます。

定期的な社風や価値観のすり合わせを行い、会社や事業に必要なものを取り込みながらも譲れない部分を確認していく必要があります。

③法人を維持し、管理するコストが発生する

コストという点でいうと、間接部門がグループ企業全体で重複しながら増加していく事に注意が必要です。間接部門とは人事や総務や経理、情報システム部門などの会社の継続に必要な機能をつかさどる部門をいいます。会社の維持に必要ですが、強化しても売上や利益に影響が間接的になる点があります。利益を増加させようとすると、間接部門にかかるコストを最小化させていく必要があります。しかし、持株会社において子会社は独立して運営しているため、間接部門も独立して存在する事が多くなっていきます。

設備も同様になります。それぞれの子会社で独立した事務所を利用している場合には、受付機能やセキュリティ設備や空調設備などが重複して必要になります。持株会社としては、子会社の必要な独立性を維持させながら、不要な重複コストを削減していくための取り組みが必要になります。

2-3 社内カンパニー制と持株会社との比較

社内カンパニー制と持株会社との比較

持株会社のメリットとデメリットを確認したうえで、複数の事業を行うために持株会社以外の選択肢もあります。持株会社の比較対象となる事が多いのが、社内カンパニー制になります。

社内カンパニー制と持株会社との比較

社内カンパニー制は、1つの会社において事業ごとに会社を設けているように管理していく方法です。社内カンパニー制を利用すれば1つの会社でありながら、事業ごとに事業計画や予算などを区分ける事で権限委譲を行い事業に必要なスピードを得る事が可能です。例えば、既存事業から派生した新しい事業をトライアルで行う際には社内カンパニー制は優れています。また、あくまで区切りであるため、既存事業の顧客情報や資産・設備を利用する事もできるなどの優位点もあります。

そして、事業が成長するあるいは成長の見込みが強くなった時点で独立を検討する事が出来ます。また、事業として魅力がないあるいは成長が難しいと判断できる場合には止める事も簡単に行う事が可能です。つまり、事業として独立性を持ちながらも既存の事業の顧客や管理部門の手助けをうけながら早く開始できてかつ事業を止める事や拡大する事などの次の展開に移りやすい点が社内カンパニー制の優位な点になります。

一方で、同じ会社内であるため人事戦略まで独立したものを設定しにくい点など事業の独立性を持株会社と比較するとデメリットになります。持株会社と社内カンパニー制は併用もできるため、事業の開始の仕方やその後の展開などの状況に応じた選択をしていく必要があります。

3 持株会社の設立方法

持株会社の設立方法

持株会社を設立して経営統合を行おうと思ったときに、その設立方法は主に3つあります。

持株会社設立方法は主に3つ

  • ・株式移転方式…新たに設立した会社を親会社=持株会社にします。
  • ・株式交換方式…既存の会社を親会社=持株会社にします。
  • ・会社分割方式…会社分割により既存事業を子会社化するか譲渡をして、既存の会社を純粋持株会社にします。

それぞれの会社設立の内容とメリットデメリットと手順などを開設していきます。

3-1 株式移転方式

株式移転方式とは、持株会社になる会社を新たに設立する方式になります。株式移転方式の手順を簡単に言うと、会社を新たに1社設立し、その会社に株式を移転して持株会社とするやり方になります。なお、会社新設の際には出資が必要になり、一般的には現金によって出資は行われます。一方で、持株会社を設立する際には、金銭の代わりに既存の株式会社の株式を現物出資*します。そのため、持株会社を設立した後には、管理・支配すべき子会社が存在する形になります。

株式移転におけるメリットは、子会社になる会社が事業を継続するために必要な許認可は移転等が不要である事や、子会社の既存事業への影響が最も少なく、手続きに要する期間も1ヶ月程度と短い点もあげられます。また、出資を株式による現物出資でおこなうため持株会社は設立に際して現金が要らない点にあります。なお、株式移転を行う場合には株主総会の特別決議事項になります。また、反対株主から株式買取請求権**の行使を受ける場合があります。

*現物出資とは、会社設立の際の出資を現金以外で行う事をいいます。
**株式買取請求権とは、所有株式を公正な価格で買い取る事をその株式を発行する株式会社に請求する事が出来る権利をいいます。

〇株式移転スケジュール

株式移転は、手続き開始から持株会社設立までの手続きの完了までにおおよそ1ヶ月程度の日数が必要になります。以下はスケジュールの概要と説明になります。

No 項目 説明
基本合意 事前検討のうえ、関係者間の合意を行います。この時点で新しく設立する持株会社の定款内容や役員構成など通常の会社設立に係る決定事項を決めておくのが一般的です。
取締役会等による株式移転承認 取締役会により持株会社設立に向けた株式移転を承認し、同時に『株主総会招集』を決定します。また、株式移転計画を作成します。条件*に該当する会社では、この時点から1か月以上の官報公告などの債権者保護手続きが必要になります。
株式移転計画書の備え置き 株式移転計画の承認を決議する株主総会の開催する日の2週間前から据え置きが必要になります。
株主総会の招集と株式移転の株主への通知 株式移転を行う日(効力発生日)の20日前までに株主に通知を行う必要があります。
株主総会での株式移転の承認 株式移転を行う前日までに行う必要があります。
株式移転による設立登記の申請 株式移転の効力が発生する日(効力発生日)になります。株式移転は、持株会社設立登記により効力が発生します。そのため、法務局が休みの日には行う事が出来ません。
事後対応 株式移転後の据え置きや、その他の税務手続きなどの事後処理を行います。

*条件とは、株式移転を行う子会社が新株予約権付社債の発行を行っているなど、債権者保護の必要がある場合が該当します。

3-2 株式交換方式

株式交換は、親会社=持株会社になる会社が子会社になる会社の株式を取得する事で持株会社になるやり方になります。子会社の株式を取得する対価として、親会社の株式が子会社に交付されます。親会社が子会社の株式を取得するという点では、株式譲渡と同じになります。しかし、株式を交換するため現金が不要な点が株式交換の特徴です。

株式交換のメリットは、持株会社設立に現金が不要な点があげられます。株式移転も出資においては現物出資するため現金は不要ですが、会社設立費用に現金が必要です。株式交換であれば、会社を新たに設立する事はしないため、設立費用も不要です。また、株式交換では持株会社にも子会社にも新たな株主が参加する事になります。新たな株主の参加は、組織を活性化させる良い機会になる場合も多くあります。また少数株主から強制的に株式を取得する事が出来るので、完全子会社にする事が可能です。

一方、デメリットとして手続きに時間と労力がかかる点と、株式移転と同様に株主から株式買取請求権の行使を受ける場合があります。また、これも株式移転と同様ですが、株主総会の特別決議が原則必要となります。

〇株式交換スケジュール

株式交換も、手続き開始から持株会社設立までにおおよそ1ヶ月の日数が必要になります。以下はスケジュールの概要と説明になります。

No 項目 説明
基本合意 事前検討の上、関係者間で『株式交換の比率』や『資本の増加金額』等を定めた、『株式交換契約書』を作成し、内容について合意します(会社法768条)。また、親会社が株式の交付に代わって金銭などを交付する場合には、金額とその金額の算定方法ならびに子会社の株主に対する金銭などの割り当てに関して記述する必要があります。
取締役会等による株式交換承認 親会社と子会社になる双方の取締役会で『株式交換』と、『株主総会招集』を決定します。また、株式交換契約について合意・締結します。株式移転同様で、完全子会社が新株予約権付き社債等を発行している場合には、1か月以上の債権者保護手続きが必要になります。
株式交換契約書等の備え置き 株式交換承認を決議する株主総会の開催日の2週間前から据え置きが必要になります。
株主総会の招集と株式交換の株主への通知 株式交換を行う日(効力発生日)の20日前までに株主に通知を行う必要があります。
株主総会での株式交換の承認 株式交換を行う前日迄に行う必要があります。
株式交換効力発生 株式交換の効力が発生する日(効力発生日)になります。株式移転は、持株会社設立登記により効力が発生します。そのため、法務局が休みの日には行う事が出来ません。

〇簡易株式交換

株式交換する親会社が交付する株式等の対価合計額が、“親会社純資産”の20%以下である場合、簡易株式交換を適用できる可能性があります。簡易株式交換では親会社側の株主総会承認の決議が不要になるため、株主総会の招集と開催等に関わる手続きや準備が不要になり、スケジュールも大幅に短縮が可能です。但し、簡易株式交換は原則“公開会社”のみが選択できる点には注意が必要です。

公開会社とは、株式の全部または一部が譲渡制限株式ではない株式会社をいいます。反対に、発行している株式全てが譲渡制限株式である会社は非公開会社となります。つまり、1株でも譲渡制限株式を設けていない株式を発行していれば公開会社になります。譲渡制限株式とは、株式の譲渡を行う際に取締役会もしくは株主総会での承認が必要になる株式をいいます。譲渡制限を設けておけば、歓迎しない人物ないしは法人に株式が渡る事を避ける事が出来る利点があります。また、非公開会社は取締役会や監査役が不要になり、株主総会も簡略化できます。そのため、上場会社以外の大半の会社は非公開会社となっています。しかし、持株会社として株式交換を頻繁に実施する予定がある場合には、株式の一部を譲渡制限株式ではなくして公開会社としておくことも検討する余地があります。

3-3 会社分割方式

会社分割方式は抜け殻方式ともいいます。事業分割や会社分割などにより持株会社の事業を子会社に移転させます。そして親会社は子会社の管理・支配の実を事業とする純粋持株会社に移行します。子会社へ親会社の事業や資産を移すため、資金は不要です。但し、親会社の事業や資産を移す子会社を新設する場合には、会社設立費用は必要になります。なお、会社分割は、成長事業の独立や不採算事業の切り離しや重複事業の集約などグループ企業内の組織再編としても利用される手法になります。

会社分割には新たに設立した会社に引き継ぐ『新設分割』と既存の会社に引き継ぐ『吸収分割』があります。また分割の対価で株式を分割会社*に割り当てる『分社型分割』と、同様に株式を分割会社の株主に割り当てる『分割型分割』があります。

会社分割のメリットは、株式移転や株式交換と同様ですが現金は不要な点です。また、利益準備金や剰余金を引き継ぐことも可能です。また、株式は動かさずに実施する事も可能です。一方でデメリットとしては、従業員の会社間の移転が生じる場合には社会保険等の変更手続きが必要になります。また事業を行う上で必要な許認可がある場合には、移転の手続きが必要になります。

*分割会社とは、会社分割において事業ないしは会社を分割して引き渡す会社をいいます。

〇新設分割スケジュール

新設分割は、手続き開始から手続きの完了までにおおよそ2ヶ月程度の日数が必要になります。以下はスケジュールの概要と説明になります。

No 項目 説明
基本合意 事前検討のうえ、関係者間の合意を行います。この時点で子会社となる新たに設立する会社の発行株式数や資本金額等や定款等の設立に係る決定事項を決めておく事が必要です。
取締役会等による新設分割承認 取締役会により新設分割を承認し、同時に『株主総会招集』を決定します。また、新設分割計画書を作成します。
新設分割計画書等の備え置き 株式移転や株式交換同様に、新設分割の承認を決議する株主総会の開催する日の2週間前から据え置きが必要になります。
株主総会の招集と新設分割の株主への通知労働者への新設分割の通知 その他同様に、新設分割の効力発生日20日前までに株主に通知を行います。また、分割会社で分割される事業に関わる仕事に従事していた従業員は、新たに設立される子会社で働くことになるため、その旨を2週間前までに通知する事が必要になります。
株主総会での新設分割の承認 その他同様に、新設分割前日までに行います。
分割公告申込/債権者保護のための官報掲載 債権者保護のため、官報への掲載は、申込から掲載まで10日前後必要になります。債権者から異議申し立てがあった場合には、債務の弁済等の対応を行います。
新設分割での設立登記の申請 株式移転と同様に、会社の設立登記により効力が発生します。そのため、休日対応が出来ません。
事後対応 こちらも株式移転と同様で、会社設立後の税務手続きなどの事後処理を行います。

なお、分割する事業の資金調達のために担保になっている不動産があるなど、分割する事業に属する不動産がある場合には、その不動産の名義を変更する必要があります。また、譲渡される事業に必要な許認可がある場合も変更の手続きが必要になります。許認可が下りないと事業の継続に支障が出るため、監督官庁に事前に相談の上間違いのない対応が必要になります。

〇吸収分割スケジュール

吸収分割は、新設分割同様に完了までにおおよそ2ヶ月程度の日数が必要になります。以下はスケジュールの概要と説明になります。

No 項目 説明
基本合意 分割により、許認可事業の承継が支障ないかは特に注意が必要です。また、吸収分割契約の契約内容についても詰めておきます。
取締役会等による吸収分割承認 取締役会により吸収分割を承認し、同時に『株主総会招集』を決定します。また、吸収分割契約を締結します。
吸収分割契約書等の備え置き その他と同様に、吸収分割の承認決議の株主総会の開催する日の2週間前から据え置きます。
株主総会の招集と新設分割の株主への通知労働者への吸収分割の通知 吸収分割の効力発生日20日前までに株主に通知を行います。また、新設分割同様に吸収分割においても従業員には、2週間前までにその旨を通知する事が必要になります。
株主総会での吸収分割の承認 吸収分割の効力発生日前日までに行います。
分割公告申込/債権者保護のための官報掲載 新設分割同様に、債権者保護のため官報への掲載を行います。債権者から異議申し立てがあった場合には、債務の弁済等の対応を行います。
吸収分割の効力発生日 吸収分割契約書に定めた日付に応じて吸収分割の効力は発生します。
事後対応 税務処理を中心として必要な処理を行います。

吸収分割においても、新設分割同様に不動産や事業上必要な許認可お変更が必要となります。

4 まとめ

まとめ

今回は持株会社=ホールディングスについてまとめました。現代の厳しい経済環境下においてはますます事業の多角化による経営の安定が必要とされています。また、それぞれの事業環境が求められている変化のスピードは増しています。その変化のスピードについていくためには、事業ごとに会社がある事が必要になります。その一方でグループ会社であるシナジーを生かそうとすると、親会社による管理・支配も同時に必要となります。結論として、事業ごとの独自性とグループ会社としての強みを生かすために持株会社の重要性が今まで以上に高まっている状況です。

持株会社の特性やメリットとデメリットを理解したうえで、現在と今後の会社の状況を照らし合わせて、持株会社の設立とその設立方法をご検討ください。

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