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会社設立前後の資金に関わる問題とその対策方法〜日本政策金融公庫の利用方法解説〜

会社設立後の企業の発展には適切な資金の確保が不可欠ですが、起業した方の中には資金の準備や管理が不十分となって事業運営に失敗するケースも少なくありません。お金は企業運営での必須の経営資源ですが、とりわけ会社設立前後の資金の調達と管理のあり方がその企業の行く末に大きく影響します。
今回は会社設立前後の資金に関わる問題や対策方法などを解説します。事業を軌道に乗せ自社を成長させるために資金がどの程度必要か、どう賄うかという点を踏まえ、資金調達、資本金の設定、資金計画及び資金管理等に関する内容、問題、対応方法、会社設立時に利用できる日本政策金融公庫の融資制度を紹介していきます。

目次

会社設立前後の資金問題

会社設立前の起業家には様々な問題を抱えていることが多いですがその1つが資金調達です。たとえば、2014年度版中小企業白書の第3部第2章第2節「起業に至るステージごとの課題や次のステージに移行しない理由」の中でその重要性が確認できます。

資金不足による会社設立への影響

具体的には資金調達が「初期起業準備者が直面する課題」や「起業準備者が直面する課題」の中で大きな課題となっていることが認められるのです。

2014年度版中小企業白書の図表3-2-20は、「起業したいとは考えており、他者への相談や情報収集を行ってはいるものの、事業計画の策定等、具体的な準備を行っていない者」という「初期起業準備者」が直面している課題がまとめられたものですが、資金調達は10項目中3番目に多い課題となっています。

また、図表3-2-22は初期起業準備者よりも一歩起業準備を進めている「起業準備者」が直面している課題をまとめたものです。この図によると資金調達は前11項目中3番目に多い課題になっています。

なお、2017年度版中小企業白書の図表2-1-30の「起業準備者が起業できていない理由」では資金調達が第1位の課題となっているのです。

企業の業種・業態・事業規模等により異なりますが、一般的に会社設立前後においては様々な支出が余儀なくされます。

たとえば、製造業では工場・生産設備・機器、原材料等、物流・営業拠点の施設ほか、事業を展開するための人員などが必要であり、それらを確保するための支出が生じるわけです。

それら以外の支出もあり事業規模が大きければその分だけ必要資金は多額になっていきます。

このように資金の確保が会社設立前の重要な課題となり得るため、その準備の如何によっては起業が困難になったり、遅延したりすることになりかねない点を留意しておかなくてはなりません。


会社設立後の資金不足による事業の停滞

会社設立後においても資金調達は重要な経営課題となります。2017年度版中小企業白書の図表2-1-51の「成長タイプ別に見た、各成長段階で直面している課題」の中で会社設立後の課題が示されています。

この図表では企業のライフステージを創業期、成長初期、安定・拡大期の3つにわけ、各成長タイプ(「高成長型」「安定成長型」「持続成長型」)の企業における課題がまとめられているのです。

創業期と成長初期において資金調達が第1位の課題となっており、安定・拡大期では第4位へ後退しています。つまり、会社が設立され事業が順調に進み安定するまでは資金調達が重要な課題となっているわけです。

起業前に事業を推進するだけの必要資金を確保することは容易ではなく、さらに事業を安定させ拡大させていくためにはさらなる資金が必要になるということが窺えます。

実際、事業が拡大し出せば原材料や販売品などを多く仕入れる必要も生じるため起業当初よりも運転資金は増大するでしょう。また、販売量が伸びていけば供給量を増大させるための機器や設備の増設なども必要な上、従業員の増加も伴うことになるはずです。

しかし、こうした企業の成長過程で必要となる資金需要に対応できなければ、生産量の増加、販売活動・PR活動の強化や必要人員の確保などができず、事業の強化や拡大のチャンスを逃すことになりかねません。

起業前と同様に起業後の必要資金の量は業種・業態・事業規模などにより、またどのように成長を果たすかという成長のタイプの違いなどにより異なります。そのためいくら準備していくかは各企業によって異なりますが、起業してから安定期を迎えるまでは特に資金の確保や管理が重要となる点を理解し、適切に対応することが求められるのです。

資金管理と経営リスク

会社設立後、順調に業績を伸ばしてもやがて事業が衰退し倒産に至ることも珍しくありません。その倒産の一因として、資金管理が上手くできなかったことが起因することもあるのです。逆に資金管理を適切に実施すれば経営を立て直し再び成長軌道へ乗せられることもあります。

下表は中小企業庁のWEBサイトで公開している「倒産状況」のデータから平成30年分を抜粋した企業の倒産原因の内訳を抜粋したものです。倒産原因の最も多い原因は「販売不振」次いで「既往のしわよせ」「放漫経営」「連鎖倒産」「過少資本」と続いています。

放漫経営 過少資本 連鎖倒産 既往のしわよせ 信用性の低下 販売不振 売掛金回収難 在庫状態悪化 設備投資過大 その他 合計
409 342 374 967 56 5799 27 8 71 182 8235

倒産の状況(平成31年2月分) *出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/tousan/index.htm

販売不振をもたらす原因には様々な理由があり、各企業はその理由を引き起こす要因を解消或は改善することで倒産を回避することが可能です。しかし、原因を突きとめ対策を講じて結果がでるまでには一定の時間が必要であり、その間に倒産リスクが大きく上昇することもあります。

そうした場合改善の効果がでるまでの間、一定の運転資金が確保できれば倒産リスクを大幅に低減できるはずです。

また、連鎖倒産や過少資本による倒産も資金に余裕があれば回避できますが、事業展開に必要な資金の計算ミスや自転車操業など運転資金が不足気味になれば回避は困難になります。

このように企業経営における資金管理のあり方によって倒産リスクを高めることにも成長に繋げることにもなるため、資金管理は経営管理の中でも最も注力すべきマネジメント対象と考えるべきです。

以上のように会社設立前後の資金に関する問題は多く存在するため、事業を成功させるには適切な資金調達とマネジメントが不可欠になります。これから資金に関わる主要な問題を取り上げ、その解決方法などを解説していきましょう。

資金調達の種類、実施方法及び問題

ここでは会社設立前後の資金調達の方法(種類)やその問題を取り上げ、解決などを確認していきます。

 

会社設立前の資金調達の方法と問題

①会社設立前の資金調達の種類

資金調達には一般的に以下のような方法がありますが、誰もが利用できるとは限ない点に留意しておきましょう。

A 自己資金

起業者が会社設立に際して自ら提供する自分の資金が自己資金です。一般の会社員が起業する場合、自己資金の準備には会社勤めしながら会社設立に向けてお金を貯えたり退職に伴う退職金を加えたりして準備するケースが多く見られます。

起業者の意志で準備するものであることから取り組みは容易ですが、会社の設立前後の事業運営に必要な資金を十分に確保するのは簡単ではなく時間も必要になります。

起業する業種等により必要資金の額は異なりますが、事業によっては自己資金だけで賄えないケースも少なくなく別の調達手段も利用することが多いです。

そのため起業に際しての必要資金の額や資金を要する時期を事前に予測し、それに対して自分でどの程度まで用意出来るかを見積る必要があります。そして、その用意できる自己資金では足りない分については融資や助成金などの別の調達手段を検討し利用できるようにしなければなりません。

B プロパー融資

民間金融機関からの融資(プロパー融資)を受けるという資金調達もあります。具体的には、個人が会社からの給与振込や住宅ローンで利用している銀行等から会社設立に必要な資金を借りるという方法です。

しかし、長年個人的に利用してきた金融機関であっても勤めていた会社を辞めて起業する場合、そう簡単には融資しくれません。設立会社には実績もなく事業が成功するという保証もないため、今まで付き合いのある金融機関でも何の保証もなく創業資金をやすやすとは貸してはくれないのです。

一般的にプロパー融資では、借手に担保や保証人が求められるケースが多く見られます。つまり、担保や保証人が用意出来なければ銀行等から融資を受けるのは実質的に困難になるのです。

ただし、最近では将来性のある事業に対する創業融資を積極的に支援する動きが民間の金融機関でも見られるようになっており、事業計画の内容等により一定の融資が受けられケースも見られるようになってきました。

また、民間金融機関と公的金融機関(日本政策金融公庫や保証協会等)との協調融資、連携融資などが行われているため、それらの融資制度で創業資金をある程度賄うことも可能です。

将来性のある事業、収益性の高い事業であることを事業計画や金融機関との面談でアピールできればプロパー融資の実現も不可能ではないでしょう。

なお、ほかにもビジネスローンを利用するという手もあります。融資額は上記のプロパー融資よりも少なく金利が高めに(数%~10数%程度)なりますが、審査が比較的優しく審査時間が短いなどが特徴です。短期で返済できる、一時的に借り入れるといったケースには有効となるでしょう。

C 公的融資

公的融資とは国や自治体が企業を支援するために設けている融資制度のことで、特に自治体が提供している融資は制度融資と呼ばれています。具体的には日本政策金融公庫が企業に直接提供する融資や、同公庫、保証協会や民間金融機関等が自治体の制度融資として提供する融資などです。

公的融資はプロパー融資と比べ融資額が多い(1千万円以上等)、金利が低い(1%程度等)、担保・保証人の条件が緩い などの利点あるとともに、審査が比較的優しいという特徴もあります。誰でもどんな事業でも融資が受けられるわけではないですが、一般の銀行よりも融資が得られる可能性は決して低くないでしょう。

ただし、事業計画の内容や面談での対応が悪ければ融資が得られないことも少なくありません。特に事業計画を大雑把に書き込み将来性や収益性が見込めない計画になっていれば、審査に落ちる可能性が高くなります。

制度融資に成功するための事業計画の作成や面談での対応はそれほど難しいものではないですが、商工会議所等の経営支援機関などから助言をもらって融資申請を進めるべきです。

各自治体や商工会議所等では経営支援のための相談窓口などがあり、そこで制度融資を受けるためのアドバイスを受けるとよいでしょう。また、日本政策金融公庫などに直接出向き融資の相談を行い指導してもらうという方法もあります。

D 助成金・補助金

起業の必要資金の一部を国等の助成金や補助金で賄うという方法も有効です。国・自治体では一定の条件に合致する事業の起業にともなう設備等の購入・一定の従業員の採用などに対して助成金や補助金が支給されるケースがあります。

助成金と補助金とは同じものではないですが、受給した場合どちらも融資とは異なり返済義務がありません。両者ともに起業時や起業後から間もない場合に利用できるタイプがあります。

たとえば、「地域創造的起業補助金」「小規模事業者持続化補助金」「キャリアアップ助成金」などです。

助成金と補助金の特徴としては、一定の要件や資格等を満足すること(審査有り)、後払いとなること、不正受給の検査があること などが挙げられます。

また、どの企業でも受給できるとは限らないということ、申請時期が限定され支給までに一定の時間がかかること、後払いであるため費用の支出・支払が先行することに注意しなければなりません。

助成金等に応募しても受給できるとは限らないため、資金調達の手段としては不確かなもので、利用時期が限定されるため調達時期の柔軟性は高くないです。また、後払いであるため支出する費用の資金を確保しておかなくてはなりません。

助成金・補助金の利用にあたっては、利用可能な制度があるのかを早めに確認し応募の準備を期限までに済ませることが不可欠です。会社を設立する前の早い段階から起業について各種支援機関や経営の専門家等に相談し、その際に利用できる助成金等を教えてもらうとよいでしょう。

その上で応募に際しての書類や事業計画の準備の仕方・作成について指導してもらうようにすれば受給できる確率は高まるでしょう。

E ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタルから起業の際に自社の株式を購入してもらうという資金調達の方法もあります。

VCは、ファンドを設立しそこからベンチャー企業などへ投資(株式の引き受け等)して、その投資先が株式公開した際に株式の売却で大きなキャピタルゲインを得ることなどを目的にする組織です。

起業家にとっては、VCから投資を受けることでまとまった必要資金が確保できるだけでなく、経営面でのサポートを受けられるケースも少なくありません。たとえば、組織マネジメントやマーケティングなどでのアドバイスを受けたり、関係業界の情報が提供されたりするというメリットが得られるのです。

また、一度投資を受けるとその後の資金提供も受けやすくなり、事業の拡大・成長期でも有効な調達先になる可能性が小さくありません。ほかにも事業上の提携先を紹介してもらえることもあるでしょう。

VCから投資を受ける場合の問題としては、VCが日本では多いとは言えない点、企業(事業)に将来性や高い収益性が見込めないと投資されないなどが挙げられます。また、役員などが派遣され経営の自由度が低くなるケースもあります。

審査も優しいとは言えません。自治体などが出資するVCやそのファンドの場合は、審査もさほど厳しくないですが、民間のVCではよりシビアな審査になるでしょう。

VCからの出資は魅力的ですが、投資を受けるには事業が魅力的であることをアピールする必要があります。そのためにはいつ黒字に転換できるか、近い将来どの程度の収益が確保できるかを客観的な情報をもとに作成した事業計画で説明しなければなりません。

審査の機会では複数の会社が応募するケースも多く、その中から選出されなければならないことも多いため、投資家を魅了できるプレゼンテーションの実施が求められます。

F クラウドファンディング

クラウドファンディングで創業資金を集めるという方法が最近注目されています。

クラウドファンディングとは、インターネット経由で不特定多数の人々から事業に必要な資金を集めるとい調達手段です。一般的にはクラウドファンディングを支援するWEBサイト(支援サービスの提供会社)に自分の事業を登録してその内容をアピールすることで資金を募ることになります。

クラウドファンディングには様々なタイプがあります。購入型では資金提供者に対して約束した商品やサービスが提供され、寄付型では寄付であるため商品等は提供されません(不要)。

また、株式投資型では自分の会社の株式との交換により資金が調達されます。融資型は「ソーシャルレンディング」とも呼ばれるタイプで、一般の融資と同様お金を借りて利息付きで返済する方法です。

なお、クラウドファンディングサービス会社によってそのタイプが異なるため注意しましょう。

クラウドファンディングの問題はそのタイプにより異なりますが、登録する際に審査に合格する必要がある、目標を達成しないと資金が受け取れない、起業内容の事前の周知が成否に影響する などが挙げられます。

クラウドファンディングサービス会社における審査はさほど難しいものではなく適正な事業計画を策定しておけば合格できるでしょう。重要なのは登録されてから目標資金を達成することですが、そのためには登録前からのWEB上等でのPRが欠かせません。

起業家自身が利用しているSNSで起業予定の事業やプロジェクトの内容をPRする、ベンチャーマーケットへ参加する・製品等を出展する、ベンチャー支援機関等への自社及び事業内容を登録する といったPR活動が求められます。

②会社設立前の必要資金と資金調達の金額

資金調達を行うにしてもどの程度の資金を準備すればよいかを把握しておかねばなりません。業種等により必要資金は様々ですが、一般的に必要される金額や資金の見積り方などを紹介しましょう。

A 必要資金の目安

2014年度版中小企業白書の図3-2-24では「起業に掛かった費用」が掲載されています。これによると、調査対象となった起業家全体では「200万円超~500万円以下」が最も多く、次で「0万円超~50万円以下」、「50万円超~100万円以下」、「500万円超~1,000万円以下」と続いています。

若者、女性、シニアなどの層別でみると費用の価格帯に多少の違いは見られますが、200万円超~500万円以下」と「0万円超~50万円以下」の価格帯の占める割合が多いです。

全体としては、500万円以下が全体の約75%を占め、200万円以下で50%以上を占めており、多額の資金を伴う起業は少ないことが分かります。

また、日本政策金融公庫の総合研究所が2016年12月22日発表している「2016年度新規開業実態調査」*では以下のような結果が報告されています。

*同公庫が融資を行った企業へのアンケート調査

「4 開業費用と資金調達」の項目で開業費用について、「500万円未満の割合が35.3%と最も高く、次いで500万円~1,000万円未満が30.9%を占める」点や「開業費用の平均値は1,223万円、中央値は670万円であった」点などが記載されています。

このように日本政策金融公庫のデータにおいても必要資金は500万円までといった比較的少ない金額が多くなっているのです。

また、同資料では金融機関等から借入と自己資金について、以下の内容が報告されています。

「開業時の資金調達額は平均で1,433万円であった」「資金の調達先は、『金融機関等からの借入』が平均931万円、『自己資金』が320万円であり、両者で全体の87.3%を占める」となっています。

この調査結果では自己資金対融資の関係は1:3となっていますが、一般的には1:2程度になることも多く、あまり融資に過度な期待を抱くのは難しいでしょう。

なお、上記の資金調達の平均値が1,433万円と高いのは同行が融資を実行した企業に対するアンケート調査のためであったからと推察されます。もし同公庫からの融資がなければ調達額は大きく減少することが予想されます。

B 必要資金の見積り

事業計画を策定する場合には起業前後だけでなく起業後からの一定期間における必要資金を予測し、それに基づいて資金調達の計画を立てることが不可欠です。

その場合の必要資金の見積方は様々ですが、以下のような点に留意して検討しましょう。

・業種等により異なるが起業時の資金調達額は、初期費用+毎月支出×2・3カ月程度以上で検討する

たとえば、初期費用と毎月の運転費用を以下のように項目を挙げて見積るとよいでしょう。

初期費用(飲食店の例)

費用項目 予定金額
店舗内外装費(改装、看板製作等) 300万円
厨房設備・機器・器具 150万円
什器・備品等(レジスター、テーブル・椅子、机、PC・FAX・プリンター、制服等) 150万円
保証金、敷金、礼金等 100万円
合計 700万円

毎月支出(飲食店の例)

仕入(食材、酒類等)*原価率35%(予定月売上高200万円) 70万円
家賃 20万円
人件費(アルバイト3人:時給900円×15H×25日=約34万円)*経営者の人件費を除く 34万円
借入返済額(支払利息1.5万円を含む)*融資額700万円 4.7万円
光熱水費(月売上高の5%以内を想定) 10万円
通信費、広告費等その他(月売上高の10%以内を想定) 20万円
合計 158.7万円
C 資金調達額の見積り

上記の例では初期費用700万円+毎月支出158.7万円×3=1,176.1万円となるため、余裕を持って起業するには約1,200万円の資金調達を目指す必要があります。

たとえば、初期費用700万円+毎月支出158.7万円×1カ月分=約860万円で起業した場合、予想外の支出が発生すればたちまち資金不足に陥る可能性が生じることを留意しておきましょう。

なお、上記の毎月の支出では経営者の人件費を除いているため、その点を考慮しておかなくてはなりません。

上記の例で資金調達の必要額を1,200万円とすると、後は調達先をどのようにするかが次の問題になります。仮に自己資金が400万円、親からの借入100万円が可能である場合、残りの700万円は融資が最も有力な候補になるでしょう。

700万円を民間の金融機関から借入することも可能ですが、日本政策金融公庫や信用保証協会などの制度融資も検討するべきです。

特に公的金機関である日本政策金融公庫は新規開業等での融資には前向きであり700万円といった金額なら同公庫からの融資は十分に期待できるでしょう。

 

会社設立後の資金調達の方法と問題

会社設立後の企業も資金を調達しなければならない様々な状況に陥る可能性が低くないため、適切な調達手段を確保しておかねばなりません。調達手段としては起業時に利用できる方法と大きく変わらないですが、いくつか注意しておきたい方法とその問題について説明します。

①増資

株式会社の増資は、新株を発行してそれを投資家、VC、金融機関、従業員・役員や取引先等に引き受けてもらうことで資金を調達して資本を増加させる行為です。つまり、資本の増加であるため融資と異なり返済義務がありません。従って増資は安定した事業運営に役立つ資金調達と言えます。

しかし、株式を投資家等に購入してもらうとその株主に利益配分、つまり配当を出さなくてはなりません。また、株式を大量に保有する株主が多くなると彼らから経営や配当等に対する要望が強くなり影響を受ける可能性が高まります。

会社設立時では設立者が大量の自社株式を保有して起業するケースが多いですが、増資により保有株式の多い株主が誕生すれば上記のような経営に対する圧力が生じかねない点を留意しておくべきです。

配当利回りが融資での金利を上回ることも少なくないため、配当利回りの上昇圧力は融資以上の財務負担になることもあります。

また、VCなどに株式を引き受けてもらうケースもありますが、安易に株式を提供すると経営基盤が揺るがされることもあるため注意しましょう。

たとえば、大塚家具は2019年3月に米系のファンドのイーストモア・グローバル(ケイマン諸島)に増資を引き受けてもらいましたが、上記ファンドはその直後の12日までに保有株の半分以上を売却しているのです。

どのように売却されたかは不明ですが、売却先によっては現経営陣の経営権に大きな影響を与える可能性も出てくるでしょう。

このように増資では経営上のリスクを高めることもあるため、引受先については信頼できる相手を選ぶ必要があります。起業以来取引のある銀行等、取引先、大企業のCVCや中小企業投資育成株式会社(自己資本の充実を支援する公的機関)などの検討が重要です。

②社債

社債とは、企業が資金調達のために発行する「債券」のことです。具体的には額面100万円の債券を95万円で販売し、償還期限に100万円を支払うとともにその期限までは毎年利子を支払うといった仕組みになっています。

つまり、社債は借入金と同じく返済義務があり、利子の支払いもあるわけです。しかし、返済負担はあるものの社債の購入者は株主ではないため、経営に口を出されることはありません。

社債の償還期限は発行日から10年後といった設定が多く、長期の資金調達として利用されています。社債のタイプはいくつかありますが、普通社債と新株予約権付社債が代表的です。前者は先に説明した社債の基本的な仕組みを実現する債券ですが、後者は同様の仕組みを有するほか新株に転換できる権利が付与されています。

つまり、新株予約権付社債は負債(借入金)から自己資本へ変換し得るもので、変換されれば企業には返済義務がなくなるというメリットが得られるのです。

ただし、企業が社債を発行しても機関投資家や個人などで購入してもらえるかはわかりません。社債の購入にはその企業の特徴、知名度・信頼度、事業内容、業績等が影響するため、起業して間もない実績の少ない企業の場合、社債の発行は決して容易な資金調達手段とは言えないでしょう。

ベンチャー企業などが社債を発行していく場合、事業の将来性や魅力を十分にアピールできる事業計画書及びプレゼン資料を準備して投資家、VC、取引先や金融機関等に説明するといった行動が必要になります。

③ファクタリング

ファクタリングとは、未回収の売掛債権を売買する(買取型)、売掛債権に保険を掛ける(保証型)といったサービスのことです。

たとえば、資金が急に必要となったが融資が受けられない、間に合わない場合などに顧客に商品等を販売して未だ回収できていない売掛債権を他者に購入してもらうという資金調達になります。なお、買取型の場合、早ければ当日や数営業日での現金化も可能です。

ファクタリングを利用する場合、利用企業はファクタリングサービスを提供する会社に手数料を支払う必要があり、融資の支払利息のような財務負担がある点は注意しなければなりません。

また、売掛債権の内容によってはファクタリングサービスが受けられないケースもあります。たとえば、売掛先の企業との契約で債権の譲渡が禁止されていれば当然サービスが受けられません。加えて売掛債権の全額が買取の対象とならず、担保評価額の70%~90%といった割合になるため注意が必要です。

さらに売掛先企業の信用度によっては手数料が高くなったり、断られたりすることもあり得るため、事前にサービス会社に確認しておきましょう。民間のサービス会社の手数料は5%~30%程度になるため、比較的短期間で借入可能なビジネスローンの金利以上の負担なることもあります。そのため安易に利用するのは避けるべきです。

また、上記の手数料以外に着手金、事務手数料、収入印紙代、登録免許税、司法書士費用などが必要になることもあります。

利用については民間金融機関等のファクタリングサービスのほか、信用保証協会の保証において利用できる「流動資産担保融資保証」などを活用するとよいでしょう。

資本金の金額及び設定でのポイント

ここでは会社設立時の重要な資金源となる資本金の設定や関連する問題などを説明します。

 

資本金の金額

資本金とは、会社設立にあたり発起人、出資者や投資家等が会社をスタートさせるために差し入れる資金のことです。会社の形態を株式会社や合同会社にすれば資本金は1円以上で設定することになります。

会社の事業運営は主に資本金である自己資金と借入などの負債を合わせた資金調達額で賄うことになるため、事業の内容や規模等に見合った初期費用と運転資金を自己資金と負債で用意しなければなりません。

一般的に公的融資などでは自己資金の2倍~3倍程度の借入が可能ですが、自己資金の額は次のように必要資金からの逆算などで求めます。

  • 必要資金(=初期費用+運転資金3カ月分)-予定借入金=自己資金(資本金)
  • 目安としては必要資金の3分の1以上は自己資金、残りは借入金等とする

上記の関係から借入金と自己資金の金額を検討するとよいでしょう。たとえば、初期費用等が1,000万円、自己資金が400万円とすると借入金は600万円となります。借入金600万円は自己資金の3倍未満、自己資金は必要資金の3分の1以上であるため公的融資を受けられる可能性が十分あるはずです。

なお、必要とする資本金の大きさは各企業によって当然異なりますが、先の日本政策金融公庫の「2016年度新規開業実態調査」では自己資金の平均は320万円、一般的に資本金の金額は100万円から500万円程度が多く見られます。

 

税金負担から見た場合の資本金の金額

会社の場合赤字の如何に関わらずただ存在するだけで課せられる税金があり、資本金の大きさによってその負担の大きさが変わるケースもあることを理解しておくべきです。

①消費税

法人の場合は資本金の大きさで消費税の負担が変わってきます。消費税には、「小規模な事業者の事務負担や税務執行コストへの配慮から設けられている特例措置」である下記の事業者免税点制度があり、適用対象となる企業にとっては有利になります。

  • 前々年(個人)又は前々事業年度(法人)の課税売上高が1,000万円以下の事業者については、その課税期間について、消費税を納める義務が免除されている
  • 基準期間(前々事業年度)のない新設法人の設立1期目及び2期目の扱いは原則として資本金の額で判定

※資本金1,000万円未満の新設法人は、設立当初の2年間、免税事業者となる。資本金1,000万円以上の新設法人は、設立当初の2年間、事業者免税点制度が適用されないため課税事業者となる

*出典:財務省WEBサイト

以上の通り資本金が1,000万円未満の会社なら免除が受けられる可能性があるわけですが、1,000万円以上なら免除されないことになります。

②住民税

資本金が1,000万円超の法人は資本金1,000万円以下の法人よりも法人住民税が高くなるため注意しましょう。

法人住民税には、都道府県及び市町村に事務所・事業所等を設置することで課税される均等割(都道府県民税の均等割と市区町村民税の均等割の2つ或は両方を兼ねる均等割)があり、法人の資本金により均等割の額が異なるケースがあります。

たとえば、東京都の場合特別区に会社を設立して事務所等を設ければ、資本金1,000万円以下、従業員数が50人以下の一般法人では、均等割の負担は7万円です。

*均等割は法人のタイプ(一般の法人、公共法人や公益法人等)、資本金や従業員数などで変わる

ところが資本金が1千万円超~1億円以下である場合、その均等割は18万円と2倍以上になります。

会社設立直後の資金に余裕がない状態では税負担の影響も大きいため、資本金と税金の関係についても注意を払うようにしましょう。

 

資本金の会計処理

合同会社と株式会社の資本金に関する会計処理や手続などを説明します。

①合同会社

合同会社で設立する場合出資者が出資金を準備する必要がありますが、その資金は出資者個人の預金口座に用意します。会社設立の登記手続した日にはまだ法人口座が開設されておらず出資金は個人口座にあり法人の手元には存在しません。

もし出資金が300万円だとすると、会社設立日の会計上の仕訳は、以下のようになります。

未収金300万円 / 資本金300万円

登記手続が完了し、登記簿謄本や印鑑証明書を入手できれば金融機関に法人口座を開設することが可能となり実際に開設して資本金を法人口座へ移動させます。その場合の仕訳は下記の通りです。

普通預金300万円 / 未収入金300万円

なお、振込手数料が発生している場合は「支払手数料」を費用計上し、その分を預金から差し引く仕訳にする必要があります。

②株式会社

株式会社の場合、原則として株主から払い込まれた金額を会社設立の資本金としますが、その払込金額の2分の1を超えない額を資本金に組み込まなくてもかまいません。

この場合の資本金に組み込まない金額は「株式払込剰余金」または「資本準備金」で計上されます。両者は貸借対照表の純資産の部に計上される科目です。

たとえば、会社の設立登記が完了した時点で株主からの払込金額500万円の全額を資本金とする場合の仕訳は次のようになります。

普通預金500万円 / 資本金500万円

もし払込金額の250万円を資本準備金にする場合、その仕訳は下記の通りです。

普通預金500万円 / 資本金250万円
         / 資本準備金250万円

なお、将来において資本準備金を減額し、その分を資本金に移動することもできます。つまり、資本準備金は資本金を準備するための資金、万が一に備える資金として利用されているのです。

たとえば、赤字の補填で資本金を減額する場合、株主総会での特別決議を必要としますが、資本準備金の場合の手続は比較的簡単になります。また、払込金を全額資本金とせず資本金の額を小さくすることにより消費税など税制上で有利になるケースや外部会計監査の義務負担の軽減に繋がるケースもあるのです。

資本金額が多いほど会社の安全性は高くなり、企業イメージや信用度もよくなりますが、払込金額の一部を資本準備金にして万一の備えや節税等に役立てることも検討しましょう。

資金管理の概要と実施方法

起業後事業を順調に成長させていくためには、会社設立前の資金計画、設立後の資金管理が重要になります。

 

資金計画

起業前の資金計画が不適切であれば会社設立から間もない時期に資金繰りに窮することになりかねません。そのため起業時には適切な資金計画の作成が必須であるだけでなく、融資を金融機関に求める場合でも資金計画書の提出がよく求められます。

なお、資金計画の主な内容は先に確認した「起業時の資金調達額=初期費用+毎月支出×2・3カ月程度以上」とほぼ同じものと考えてよいでしょう。支援機関等によっては資金計画もしくは創業計画と言う場合もありますが、内容的には同じです。

具体的な資金計画の構成としては、下表の日本政策金融公庫の資金計画などが参考になるでしょう。

必要な資金 金額 調達の方法 金額
設備資金 店舗、工場、機械、備品、車両など (内訳) 万円 自己資金 万円
日本政策金融公庫
国民生活事業からの借入
万円
運転資金 商品仕入、経費支払資金など (内訳) 万円 その他からの借入
(内訳・返済方法)
 
合計   万円 合計  

これだけで会社設立時の必要資金は把握できますが、設立後からの運転資金等の細かい内容(資金)がわからないため、予測損益も加えて把握しなければなりません。

*損益計画は、下表のような簡易な損益計算書もとに作成するとよいでしょう。

  創業当初 軌道に乗った後
売上高(1) 万円 万円
売上原価(2) 万円 万円
経費 人件費 万円 万円
家賃 万円 万円
支払利息 万円 万円
その他 万円 万円
合計(3) 万円 万円
利益(1)-(2)-(3) 万円 万円

*上記2つの図表の出典:日本政策金融公庫WEBサイト

つまり、事業を開始してからの売上、仕入、設備投資等の予定を明確にして、売上の回収、仕入等の費用の支払及び設備投資の支払などを計画に盛り込むのです。

   
前月繰越          
経常収入 現金回収        
売掛回収        
その他        
       
経常支出 現金支払        
買掛支払        
その他計        
       
投資収支          
財務収支 財務収入        
財務支出        
       
月末資金          

経常収入では、販売した商品等の現金による入金や売掛の入金、手形割引による入金、前受金などを記載します。

経常支出では、商品等の仕入代金、人件費、水道光熱費等の経費や税金等の支払のほか、買掛金や支払手形の決済による支出が記載されるのです。

投資収支は、購入した施設、車、設備や機器等の支払に関する収支の記載となります。

財務収支は、新たな借入による入金、借入金の返済のための支出などです。

月末資金は、前月繰越+経常収入-経常支出+投資収支(通常はマイナス)+財務収支(返済支出が多ければマイナス)の結果であり、これが翌月への繰越額となります。

資金管理の概要

資金計画により会社設立当初の資金繰りが上手くいってもその後の資金管理が適切に実施されなければ、たとえ業績が黒字であっても資金がショートして倒産の危機に直面することになりかねません。

資金管理とは一定期間の投資資金や運転資金を予測する資金計画、資金計画の状況の確認と統制、資金の使用における効率性の分析からなります。

資金計画は前節で示した内容ですが、計画を作っても経営活動の結果を適宜確認しなければ、資金の過不足の把握が遅れ経営リスクを高めることに繋がるのです。

少なくとも毎月1回一定時期に資金の状況を把握する必要があります。具体的には先ほどの資金計画の内容をさらに詳細にした資金繰り表などを作成してチェックするようにしましょう。

そして、チェックした現金収支の過不足を把握し、不足分については対策を早めに実施しなければなりません。たとえば、売掛金の遅れがあれば早く督促して回収する、資金ショートの恐れがある場合は短期の借入やファクタリングを検討する などの対応が必要です。

こうした対応を行いつつ、資金不足に陥る原因を究明し改善策を打ち回収・支払の漏れ、遅れなどの防止を実現できるように手立てを講じていくのが資金管理であり、経営上の重要な業務として認識しておきましょう。

日本政策金融公庫とは

会社設立時の資金調達手段として誰でも活用できるのが日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫は、政府が100%出資する日本公庫という株式会社が運営する銀行です。通常の銀行と違い、預金を受け入れていません。自然災害や経済危機などに対応した貸付、日本経済の発展のために新規事業に融資を行うなど、公的金融を担っています。

 

政府系の金融機関

例えば、街中で見かける民間の銀行の場合は私企業であるため自らの利益を確保する必要があります。結果として創業時の貸し付けに厳しくなるということがあるのです。民間の銀行としては、返済のめどが確実に立たないと貸し付けを行うことができないでしょう。返済が滞れば銀行の経営にもダメージになります。
しかし、日本政策金融公庫の経営母体は日本政府であり、利益を出す必要性が民間の金融機関とは異なります。公共目的の金融機関であるため、返済に多少の不確実性があるとしても貸し付けを行うことが可能なのです。まさに国民生活を支える金融機関と言えます。

 

小規模事業者へ積極的に融資

日本政策金融公庫には、国民生活事業、農林水産事業、中小企業事業の3つのチームがあります。このうち、小規模事業者や創業間もない企業の場合は国民生活事業の範囲として扱われています。逆に、中小企業がベンチャー企業を立ち上げるという場合は、中小企業事業で融資がなされることがあります。
国民生活事業は、個人向けの国の教育ローンと、小規模事業者向けの融資、経営支援サービスを実施しています。公式HPの記載によると、国民生活事業の融資先の9割は従業者9人以下の小規模事業者です。創業サポートも実施しており、創業計画書の作成相談サービスを利用できます。

 

小規模事業者・中小企業への融資方法に工夫がある

通常の融資というと、担保がある貸し付けを想像される方が多いでしょう。日本政策金融公庫の場合は、担保がない無担保の貸し付けも行います。詳細についてはこの後の項でご説明します。
国民生活事業については、無担保融資が8割を超えており、無担保の融資に積極的ということがわかります。創業時の資金調達に最適な銀行です。

 

創業支援メニューが充実

日本政策金融公庫は創業支援メニューが充実しており、創業前、創業時、創業後の支援を行っています。創業前の中小企業診断士との面談、電話相談窓口(創業ホットライン)があるなど、相談窓口を利用しやすいことも魅力の一つです。起業しようと決めたものの、どこに相談したらいいのかわからない方には心強いサポートでしょう。全国の商工会議所などで出張相談を行っていますので、興味がある方は相談してみてください。

利用するメリット

日本政策金融公庫を利用するメリットは次の4つです。

 

無担保で借り入れができる

必ず無担保でできるというわけではありませんが、無担保の借り入れに対応しています。

 

無保証人でも借り入れができる

無保証人で借り入れができるので、保証人をお願いする人がない方にもおすすめです。ただし、すべての制度で無保証人というわけではなく、利用できる制度が限定されます。
会社設立に使える融資としては、新創業融資制度(原則無担保・無保証人)があります。詳しくは後ほど説明します。

 

低金利・貸付条件が良い

民間の一般的な銀行や信用金庫よりも金利が低く、貸し付け条件が良いです。

 

融資が通ると他の銀行でも借り入れやすくなる

日本政策金融公庫で借り入れ実績があると、他の金融機関からの借り入れもしやすくなります。他の金融機関としては、日本政策金融公庫と取引があり、きちんと返済しているのだから貸し付けても大丈夫だろうと判断します。他の銀行と取引がない状態で借り入れにいくよりも、日本政策金融公庫との取引実績を作ってから他の銀行に融資の相談をしに行くほうが通りやすいです。

融資制度の種類

日本政策金融公庫の融資制度は多岐にわたりますが、原則として担保・保証人が不要で、会社設立時に使える融資制度「新創業融資制度」をご紹介します。会社設立、起業を考えた時に、最初に視野に入る融資制度です。

 

新創業融資制度(担保・保証人原則不要)

担保・保証人が不要なので、会社の代表者個人に責任が及ばないというところがポイントです。代表者が連帯保証人になると、利率が0.1%低減されます。
新創業融資制度は、国民生活事業の中の融資制度です。資金の用途は新たに事業を始めるためまたは事業開始後の設備資金、運転資金に限定されます。
新創業融資制度は、新たに事業を始める方と、始めて間もない方を対象としています。具体的な要件は「新たに事業を始める方または事業開始後で税務申告を2期終えていない方」とされていますので注意しましょう。

さらに細かい条件があり、雇用の創出を伴う事業を始めること、現在勤めている企業と同じ業種の事業を始めることなど、一定の要件があるので当てはまるかどうか確認することをおすすめします。
新創業融資制度には自己資金要件があります。新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方の場合は「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が必要です。業務経験により自己資金要件は免除されることがあります。融資限度額は「3,000万円(うち運転資金1,500万円)、返済期間は「各融資制度に定めるご返済期間以内」です。3か月に1回程度金利の変動があります。

 

中小企業経営力強化資金(担保・保証人については応相談)

次に、担保・保証人について相談できる融資制度「中小企業経営力強化資金」をご紹介します。この融資制度は国民生活事業と、中小企業事業の2種類があります。要件面に若干の違いがありますが、自己資金要件はありません。
国民生活事業の中小企業経営力強化資金を利用できる条件は、「経営革新又は異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方」「自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている方」であることです。
新規開業を行う場合も含むとあるため、創業時にも利用できる制度です。設備資金、運転資金として7,200万円(うち運転資金4,800万円)までを借り入れることが可能です。担保・保証人については応相談とされています。

一方で、中小企業事業の中小企業経営力強化資金では、国民生活事業の中小企業経営力強化資金の貸し付け要件を満たす企業の他、「中小企業の会計に関する基本要領」・「中小企業の会計に関する指針」に沿った会計処理を行う中小企業にも融資しています。
設備資金、運転資金として直接貸付7億2千万円(うち運転資金2億5千万円)までを受けることが可能です。設備資金は20年以内、運転資金は7年以内の返済です。据置期間は2年以内です。2年以内は利息の返済だけ行い、借入金本体は据え置くことが可能ということです。
中小企業事業の中小企業経営力強化資金は、長期の運転資金の融資制度です。中小企業経営力強化資金は、要件に当てはまれば創業してまもない企業から既存業者まで利用できます。

 

新創業融資制度と中小企業経営力強化資金の注意点

創業融資としてメジャーな新創業融資と経営力強化資金ですが、いずれの融資制度も無担保・無保証人で融資をしてもらえます。しかし、投資資金や生活資金は貸し付けてもらえません。次の段落以降でご紹介する別の創業融資制度についても同様ですが、事業が軌道に乗るまでの生活資金や投資資金については別の方法で確保する必要があるということです。

借入限度額については、中小企業経営力強化資金の方が高く、さらに金利も低めの設定です。
一方で、認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けなければならない点、年1回以上事業計画進捗状況を公庫に報告する義務がある点に注意してください。事務的な手間も考慮しつつ、創業時はどちらを利用するのか検討するといいでしょう。

 

新規開業資金(新企業育成貸付)(担保・保証人については応相談)

新創業融資制度と似ていますが、雇用の創出を伴う事業を始めるなどの要件があります。
この融資制度は地方経済の振興の意味合いもあり、地域おこし隊の任期を終了し活動した地域において創業する、Uターン等により地方で新たに事業を始める場合などについて特別利率が適用されることが特徴です。会社設立と並行して地方への移住を考えている方や、かつて地域おこし隊の任務を終了した経験がある方は検討する価値があります。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。据置期間は2年以内です。

冒頭でご紹介した新創業融資制度は、新規開業資金に特別な条件が付き、さらに融資限度額が低めに設定された制度です。新創業融資制度の場合は、原則無担保・無保証人ですが、新規開業資金の場合は保証人が必要になることがあります。

どちらを選ぶのかというポイントですが、融資限度額に注目しトータルでバランスを考えるのがいいでしょう。つまり、保証人は必要になるけれども(多くの場合は社長が保証人になるでしょう)より大きい金額を借り入れることができる新規開業資金と、保証人・担保とも不要なかわりに融資金額が小さい新創業融資制度のどちらを選ぶのかということです。事業の規模、必要な資金額によっても結論は異なります。

 

女性、若者/シニア起業家支援資金(担保・保証人については応相談)

女性、若者/シニア起業家支援資金は、年齢制限があることが特徴です。要件に当てはまると低い利率で資金を調達することが可能です。女性、若者、シニアの活用という政府の方針を反映させた融資制度です。
利用できる要件は、「女性または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」です。つまり、女性であるか、年齢が35歳未満の若者、もしくは55歳以上のシニアである場合に利用できる融資制度です。35歳以上55歳未満は利用できません。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、設備資金は20年以内、運転資金は7年以内の返済です(据置期間は2年間)。技術やノウハウ等に新規性がある等の条件に合致すれば特別利率が適用されます。

年齢や性別の要件をクリアすれば雇用の創出を伴う事業を始める等の条件がないので、比較的自由な事業内容にすることが可能です。

 

どの融資制度を活用するか

どのような事業で、どれくらいの運転資金、設備資金が必要なのかという点を明確にしましょう。さらに、会社を作る人の状況(前職で同じ業種の経験がある、女性である、シニアである等)を考慮し、制度を選んでください。日本政策金融公庫の職員に相談してもいいですし、創業融資に詳しい専門家に相談しても良いでしょう。

融資のポイント

日本政策金融公庫へ融資を申し込む際は、いくつか書類を準備しなければなりません。個人と法人で多少異なります。基本的な点ですが、添付漏れがないようにしてください。

 

必要書類をきちんとそろえる

一般的には、所定の借入申込書に、創業計画書、見積書(設備資金を申し込む場合)、法人の場合は履歴事項全部証明書または登記簿謄本、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書(担保を希望する場合)などが必要です。融資の相談をするときに必要書類を案内してもらえます。これらの書類の内、最も肝心なものは創業計画書です。

 

創業計画書をよく考えて書く

創業計画書とは、どのような事業をこれから始めようとしているのかを記載した書面を言います。この書面の目的は、これから創業する事業を通じて、きちんと借り入れた資金を返済できると説明することです。創業するのですから、過去の経営の実績は当然ありません。銀行側としては、過去の実績がないので創業計画書をもとに、返済能力がどれくらいあるのかということを見極めます。創業計画書は、空欄を埋めればよいというものではないのです。一般的には、創業計画書の中で過去の事業の経験、自己資金と借入の割合、事業の見通しが重要視されます。

創業計画書の記載事項は、創業の動機、経営者の略歴等、取扱商品・サービス、取引先・取引関係等、従業員、お借り入れの状況、必要な資金と調達方法、事業の見通し、などで最後に自由記述欄があります。
創業の動機については、しっかりと担当者にアピールする必要があります。なぜ創業しようと思ったのか、思いのたけを融資担当者にアピールしてください。
経営者の略歴では、どこでどのような仕事をしてきたのか書きます。過去に同じ業種で仕事をしていた場合はこの欄に記載します。
取扱商品については、どのようなサービスや物を売るのか、市場でどのくらいのシェアを占めているのかといったことを記載します。
事業の見通しのところでは、売上高、仕入れ高、経費などを計算して借り入れた資金をきちんと返済できることを説明します。このほかの記入欄についても正確に記載します。

 

別紙資料の作成

提出は義務ではありませんが、別紙資料を提出する場合があります。別紙資料とは、プロフィールや、持っている資格、詳しい創業の動機、客層などのターゲットに関する情報、お店や会社に関する情報、出店予定地の通行量や、収益や返済を趣味レーションするための損益計算書などをまとめた資料です。少しでも多く融資してもらいたいときや、融資されるかどうかの不安があるときに提出します。

 

面談時のポイント

融資の審査には書面による審査の他、面談があります。面談では、借り入れた資金をきちんと返済できるかということが調べられます。面談は提出された書面をもとに行うため、書面と違うことを言ってしまわないように内容に今一度目を通し、心を落ち着けて臨めば大丈夫です。売り上げの予測の根拠については詳しく聞かれることがあるので、なぜそのような予測になるのかというロジックを説明できるようにしてください。

 

自己資金の準備

借り入れをするには自己資金がある程度必要です。とはいえ、いわゆる見せ金を作ってまで自己資金があるように見せかけることはおすすめできません。自己資金の準備は重要なポイントではありますが、それよりも創業計画書の内容の方が重要視されます。日本政策金融公庫のホームページによれば、「新規開業実態調査」では自己資金の割合は平均で3割程度です。

利用する際の注意点

日本政策金融公庫を利用する際の注意点は次の4つです。

 

ネット銀行への振り込みに対応しない

ネット銀行は便利ですが、日本政策金融公庫から資金を振り込んでもらうことはできません。他の銀行や、地元の信用金庫などに口座を持っている必要があります。

 

会社設立の後に融資を受ける

会社設立の際に、日本政策金融公庫から資金を借り入れて資本金にしたいという方は折られませんか。資本金にしたいということは、会社設立の前に借り入れをしたいということです。日本政策金融公庫は事業資金を貸している金融機関なので、資本金の払い込みに使うことはできません。したがって、会社設立前に融資を受けることはできません。順番としては、先に会社を設立し、会社が法人として融資を受けることになります。

 

送金されるまでに時間がかかる

融資が受けられるまでに3週間程度かかるので、資金繰りが厳しくなってから借り入れるのはよくありません。創業時、まだ資金繰りに困っていないタイミングで借りるほうが得策です。もし、もっと早くに資金が欲しい場合などは、民間の銀行を当たってみてください。

 

融資の相談をする支店はどこでもいいわけではない

融資の相談は創業予定地を管轄する支店か、会社などの法人の場合は法人登記上の本店所在地を管轄する支店で行います。お住いの場所と会社の法人登記上の本店所在地に距離がある場合は注意してください。創業地が決まっていない状態では融資の申し込みができません。売り上げや収支の予測がつかないため、返済のめどを立てることができません。

まとめ

会社設立後の企業の成長は設立前後の資金調達と資金管理のあり方に大きな影響を受けます。会社を設立して事業を軌道に乗せるためには過不足ない設立時の初期費用や運転資金が不可欠であり、これを調達できるかどうかでその後の会社の運命が決まることもあるのです。事業を推進するためには、商品・サービス等の開発、取引先の開拓、事業活動に必要な施設・機材・道具・人材等の確保のほか、それらを実現させるための資金調達が欠かせません。過不足ない資金調達を行うは、事業計画と資金計画を策定の上必要資金を適切に把握することが重要です。また、事業を発展させるには設立後の資金管理を適正に実施して資金不足を回避しなければなりません。そのためには資金計画をさらに詳細化した資金繰り表による管理も必要になるでしょう。

また、資金調達で活用できる日本政策金融公庫の融資制度はいくつかありますが、その中でも新創業融資制度は保証人・担保なしで利用できます。また、本記事では中小企業経営力強化資金、新規開業資金(新企業育成貸付)、女性、若者/シニア起業家支援資金についてもご紹介しました。それぞれの制度において利用できる人の要件が異なりますし、融資限度額も違うので、自社にとってどの条件が良いのかよく考えてから選んでください。どの融資制度を活用すべきなのか、利率などの特別条件が適用されるかどうか等詳細な点は日本政策金融公庫の職員や創業融資に詳しい専門家に尋ねてみることをおすすめします。創業計画書の出来栄えは融資の金額を左右します。創業計画書では創業したら利益がきちんと出ること、その中から確実に資金を返済に充てることができるということを融資担当者にアピールしてください。

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