税務調査と決算月は関係している? 〜税務調査の種類、税務調査の対応で気をつけたいこと〜
会社の経営にかかわる人や、勤務先の経理財務を担当している人にとって税務調査にどのように備えるか?は非常に重要な問題です。
企業経営者の方にとって、税務調査は怖い存在ともいわれますが、特に、会社の事業年度が終わる決算月以降、税務調査が来るとしたらいつのタイミングになるのか?は、業務スケジュールを考える上でも切実な問題といえるでしょう。
知り合いの事業者が税務調査に入られてたくさん追徴を取られた」「予告なく踏み込まれて難儀した」というような話を聞いたことがある方もひょっとしたら多いのではないでしょうか。
そこで今回は、企業経営者の方向けに、税務調査の意味や対応する際の注意点について説明し、税務調査が来るタイミングと「会社の決算月」にどのような関係があるのかについて見ていきましょう。
目次
税務調査とは簡単にいうと何?
税務調査とは、ごく簡単にいうと「税務署が正しく税金を納めているかどうかチェックしに来ること」をいいます。
税金の計算は事業者が自分で計算して行うものですから、その計算方法が正しいかどうか?をお役所の担当者が定期的にチェックしに来るというわけです。
当然ながら、あなたの計算方法が正しい場合には「おとがめなし」で終わりますが、もし間違いが見つかった場合には修正申告などを求められる可能性があります。
さらに、過去に納めた税金の金額が、本来納めるべき金額よりも小さかったような場合には、追徴課税や延滞税といった形でペナルティが課せられることもありますから、注意しなくてはなりません。
税務調査は必ず来る?
税務調査は、必ずしも「この事業者は怪しいからチェックしに来る」という性質のものではありません。
ある程度規模の大きい事業者の場合、2年か3年ごとに定期的にチェックしに来るというケースはありますし、税務署側で「今年はこの業種の事業者を重点的にチェックしていく」というようなかたちで調査対象が決まる場合もあるのです。
そのため、税務調査は「ほとんどの事業者が何年かに一度は経験するもの」と考えておく必要があります。
重要なことは「税務調査が来ないようにすること」ではなく、「税務調査が実際に来た時に、適切に対応できるようにしておくこと」であることを理解しておきましょう。
税務調査に入られやすい業種はある?
「今年はこの業者、というように税務調査が入る可能性がある」という話をさせていただきましたが、それでは「こういう業種の事業者は税務調査に入られやすい」ということはあるのでしょうか。
結論からいうと、税務調査が来やすい業種というのは存在します。
具体的には、いわゆる「現金商売(掛け売りなどではなく、お客さんから直接現金で売上代金を受け取る業種)」の事業を営んでいる方がそれで、例えば飲食業や理美容業などは税務調査が来やすい業種といえます。
現金商売の事業者に税務調査が入りやすい理由
現金商売の事業者の特徴として、「売上の過少計上」が疑われやすいということが、税務調査がよく来る原因として挙げられます。
売上高が少なくなればなるほど、当然ながら利益の金額は少なくなり、結果として税金も安くなりますから、税務署としてはこうした過少計上が行われていないか?をチェックしに来るというわけです。
例えば、居酒屋さんの店主はお客さんから代金を受取り、その代金をレジ入力して入金し、一日の終わりにレジシートを印刷してその合計額を会計ソフトに「売上」として入力します。
ところが、レジ打ちをするときに店主が売上の一部をポケットに入れてしまい、売上高を実際よりも小さい金額で計上するということが行われるケースが少なくないのです。
税務調査の種類
税務調査には、大きく分けて「①任意調査」と「②強制調査」の2種類があります。
以下ではそれぞれの調査の意味について解説していきましょう。
実際の税務調査の8割以上は「任意調査」
任意調査は、その名の通り税務署が事業者の同意のもとに任意で行う税務調査のことで、実際に行われている税務調査の8割以上は任意調査です。
ただし、任意とはいっても調査を拒否したり、調査の結果として課せられる延滞税などのペナルティを拒否したりした場合には、法律に基づいて罰則が適用される可能性がありますから注意しなくてはなりません(国税通則法第74条の2・第128条という法律があります)
任意調査とはいっても、実際には調査を求められた際には拒否することは難しいということを理解しておいてください。
任意調査の手続き:準備調査と実地調査
任意調査の手続きは、準備調査と実地調査の2段階で行われます。
準備調査とはごく簡単にいえば税務署の職員が、役所の中で事業者のデータ(開業届や過去の申告の内容)に基づいて税務調査の準備を行うことです。
机上での調査が基本となりますが、場合によっては事業者の事業所の状況などを見に来る外観の調査が行われることもあります。
一方で、実地調査は実際に事業者の事業所に税務署の職員が訪問して行う調査のことをいいます。
実地調査は申告の基礎となっている会計帳簿をチェックしに来るのが基本ですが、上で見た現金商売の事業者などの場合には、「現況調査」が行われることもあります。
現況調査とは、例えば税務署職員が実際に調査対象の事業者のお店で飲食をし、レシートを受け取って、そのレシートの内容が適切に会計帳簿に反映されているかを後日確認するといった方法のことをいいます。
マルサによる税務調査が「強制調査」
テレビドラマや映画などでは、いきなり国税庁の職員が事業所に乗り込んでいく形の税務調査をよく見かけます(テレビドラマ「マルサの女」など)
こうした調査方法のことを強制調査といい、その名の通り事業者の許可を事前に得ることなく、抜き打ちで強制的に行われる点に特徴があります。
もっとも、強制調査は税務調査の中では例外的な存在で、税金逃れの疑いが濃厚かつ悪質である場合や、脱税金額が非常に大きい場合などに限って行われるのが通常です。
税務調査の対応で気をつけるべきこと
実際に税務調査が行われることになった場合、「どのような点に注意しながら対応していく必要があるのか?」について見ていきましょう。
税務調査の連絡があった時点での対応方法
通常の任意調査の場合、税務調査が決定した時点で事業者に対して電話で連絡が入ります。
「1週間後に御社の~事業所で」というように税務署の職員が日時や場所を指定してきますが、どうしても都合が悪い場合には日程を変更してもらうことも可能です。
多くの事業者の場合は税理士(会計事務所)に顧問を依頼していると思いますので、税務調査の依頼があった旨を報告してください。
もし顧問の税理士がいない場合には、税務調査の対応を専門にしている税理士と連絡を取るのが適切です。
税務調査でチェックされることの多い項目
税務調査は、ごく大まかにいえば「過去に行った申告の内容が、実際の会計帳簿の内容から見て正しく計算されているか」をチェックしに来るものです。
多くの場合、税務調査は2日間にわたって行われ、1日目には経営者に対する事業内容のヒアリングと会計帳簿のチェック、2日目は1日目では時間が足りなかった場合のための補助日という扱いのことが多いです。
ですので、実際の税務調査では過去数年分の会計帳簿をすべて提出し、チェックを受けることになります。
以下では、会計帳簿の内容として、税務署の職員が重点的にチェックしている項目について確認しておきましょう(普段からこれらの項目について間違いが生じないように処理していくことが大切です)
①売上高の計上方法
現金商売の事業者の場合、売上高の計上漏れが問題となることが多いのは上で説明させていただいた通りです。
その他、スクラップ品の販売代金が正しく計上されているか、事業所に設置している自販機の売上の計上、締め日~決算期日分の売上が計上されているかといった点がチェックされやすい項目です。
②在庫高の計上
在庫高の計上は、粗利率の計算に直結する項目ですから、事業の利益に大きな影響を与える項目といえます。
基本的には期末において実地棚卸を行い、その結果に基づいて在庫高を計上しますが、在庫表の内容に不備があったり、棚卸の評価方法に不備があったりする場合には、税務調査において修正を求められる可能性があります。
また、在庫高が不自然に上下すると、粗利率が不自然に上下することになりますから、税務署の職員はすぐに気づきます。
在庫高の恣意的な操作が明らかになった場合、会計帳簿そのものの信頼性を低下させることになり、非常に危険ですから避けなくてはなりません。
③経営者の個人的な出費と事業支出の区分
特に個人事業者の方の場合、社長のプライベートな支出と、事業経費としての支出が明確に分けられていないケースは少なくありません。
当然ながら、社長のプライベートな支出を事業経費として処理するのは適切ではありませんから、こうした処理をしていると税務調査によって修正を求められる可能性があります。
事業の経費として処理したい支出については、領収書などの証ひょう書類を確実に保管しておくとともに、取引内容や取引相手について詳細を説明できるようにしておかなくてはなりません。
④源泉所得税の処理
従業員を雇用している事業者の場合、彼らのお給料から生じる所得税についてはお給料からの天引きで徴収し、毎月税務署に納付してあげなくてはなりません。
こうした処理をしていない場合、源泉所得税の納付漏れとして追徴課税を受ける可能性がありますから注意が必要です。
また、建設業などを営んでいる方で問題となりがちなのが、職人への支払いが実質的には従業員への給与支払いとみなされ、結果として源泉所得税の納付漏れを指摘されるケースです。
外部の職人さんの場合は会計帳簿上外注費として支出を管理しても問題はありませんが、求人広告に求人を出して募集したり、継続的に仕事を依頼していたりして、これらの職人を従業員とみなされてしまう場合があるのです。
※外部の職人への外注費として処理する場合、源泉所得税納付の必要はありません。
外注費として処理をしたい場合には、これらの職人さんには個人事業主として確定申告を行ってもらうとともに、請求書などの発行ももれなく依頼するようにしなくてはなりません。
⑤消費税の計算方法
消費税の課税事業者となっている場合、売上や経費の消費税課税区分が正しく処理されているかどうかも問題となりやすいです。
特に、輸出事業者で消費税が還付となる場合には、重点的にこれらの項目についてチェックされることを覚悟しておかなくてはなりません。
具体的には地代家賃の課税区分や海外出張費の課税区分、外注事業者への支払いなどで間違いが生じやすいので、注意しておきましょう。
税務調査後の対応方法
税務調査が行われた後、過去の申告内容に誤りがない場合には「申告是認」ということで何もする必要はありません。
上でも見たように、税務調査は必ずしも「怪しいから来る」というものではなく、定期的なチェックの意味を込めて行わることも少なくありませんから、申告是認という結果になることは決して少なくないのです。
一方で、過去に申告した税額が過少であったことが判明したような場合には、税務署の職員から「修正申告」を行うように指導が行われます。
修正申告とは、簡単にいえば「過去に行った申告が間違っていたので、もう一度やり直します」という手続きのことです。
修正申告は事業者側から自主的に行うものですから必ずしも従う必要はないのですが、修正申告を行わない場合には、税務署側の職権で「更正」の手続きが行われます。
更正とは、こちらもごく簡単にいえば税務署が事業者に代わって計算を行い、「正しい税額はこれですから追加でこれだけ納めてください」というように指示してくることをいいます。
修正申告と更正
税務署側としては事務手続きの都合上、事業者が修正申告を行ってくれる方が手間が省けるので、なるべく修正申告を行うように指導してくるのが一般的です。
事業者が自主的に修正申告を行う見返りとして、「過少申告加算税」というペナルティが免除されるというメリットがあります(逆に言うと、更正を選択した場合には過少申告加算税の免除はありません)
ただし、修正申告は「自主的に税額の誤りを認めること」にほかなりませんから、その後になってから不服の申し立てができなくなる点には注意が必要です。
税務調査の結果に不服がある場合には、税務署側による更正を受けたうえで、異議申し立てという形で手続きを行う必要があります。
税務調査と決算月の関係
税務調査は、ごく簡単にいうと税務署に対して提出した申告書の内容と、実際の取引を記録している会計帳簿の内容がマッチしているかどうか?をチェックしてもらうための手続きです。
当然ながら税務調査は会社の側でその年の分の決算が終了した後のタイミングでやってくるのが基本ということになります。
3月決算法人の税務調査はいつくる?
例えば、3月決算の会社であれば法人税の申告は5月末に行いますから、この会社に対する税務調査は6月1日以降のタイミングでやってくることになります。
逆にいえば、3月末日で会計帳簿を締め切り、決算作業を行う4月1日~5月末には税務調査が行われる可能性は極めて低いといえます。
また、税務調査を行うためには税務署にとっても労力をともなうものですから、できる限り直近の事業年度の情報を調査したいと考えるのが普通です。
なので、3月決算の会社なら事業年度が終了する直前の1月~2月というタイミングで税務調査に行くよりも、その年の事業年度が終了してから税務調査に行くほうが効率的です。
決算月から3か月目以降の6か月間は要注意
結論的に、3月決算の会社に税務調査が入るのは6月~12月のタイミングということになるでしょう。
つまり、決算月から3か月目以降の6か月間は税務調査が行われる可能性が高くなる時期と考えることができます。
あなたの会社の決算月に応じて、次のようなタイミングでは税務調査が行われる可能性が高いと考えておいてください。
(決算月) (要注意の月)
1月決算→4月~10月
2月決算→5月~11月
3月決算→6月~12月
4月決算→7月~1月
5月決算→8月~2月
6月決算→9月~3月
7月決算→10月~4月
8月決算→11月~5月
9月決算→12月~6月
10月決算→1月~7月
11月決算→2月~8月
12月決算→3月~9月
税務署に入られにくい決算月法人ってあるの?
結論から言うと、10月決算法人は税務署の職員にとって税務調査のスケジュールが組みにくい会社ということがいえるでしょう。
というのも、税務署は1月~3月と、7月~8月前半のタイミングは業務の都合上非常に忙しくなるのですが、10月決算法人はこの時期と「要注意の月」の重複が多いからです(10月決算法人の要注意月は1月~7月です)
もっとも、なんらかの形で税務署に目をつけられている会社であれば、決算月がいつであれ税務署職員はスケジュールを組んで税務調査に来ますので、「10月決算法人だから安全」とか、「3月決算法人だから危ない」ということは基本的にはないと理解しておくべきでしょう。
「要注意の月」と「税務署が忙しい時期」が重なるタイミングを知っておこう
とはいえ、税務署も人間が運営している組織ですから、それぞれの時期に行う業務の都合上、税務調査に行きたくても忙しくて行きにくい時期というのはあるでしょう。
簡単にいえば、上で見た「要注意のタイミング(例えば12月決算法人の会社なら3月~9月が要注意)」と、「税務署の職員が忙しいタイミング」が重なる会社が、税務署職員にとってはやりづらい会社ということがいえます。
この点についてより深く理解していただくため、次の項目では「税務署の職員が忙しいタイミングがいつなのか」について具体的に説明しますので、参考にしてみてください。
税務署の人たちの業務スケジュールを知っておこう
税務署は6月を年度末として業務を行っています(7月に年度がスタートして6月に終わります)
以下、それぞれの月にどのようなイベントがあるのかについて具体的に見ていきましょう。
1月~3月:個人事業主の確定申告対応でとても忙しい
個人事業主として活動している人は、1年に1回、所得税の確定申告の手続きを行う必要があります。
法人企業の場合には決算月の2か月後というルールで税務申告を行いますが、個人事業主の場合には毎年2月16日~3月15日の日程で税務申告を行わなければならないというルールになっているのです。
この時期には税務署にすべての個人事業主が税務申告のために殺到することになりますから、必然的に税務署の職員も対応に忙殺されることになります。
そのため、1月~3月の時期に税務調査は基本的に行われにくいというのが実情です。
5月~6月:3月決算法人の法人税申告の対応に忙しい
日本の法人企業のおおよそ2割程度は3月決算法人です。
3月に決算を行うことに何かメリットがあるかというとそういうことは何もないのですが、日本では伝統的に4月~3月を1つの事業年度とする企業が多くなっています。
法人企業は事業年度が終わる日から2か月以内に法人税の税務申告を行うのがルールですから、税務署側も5月後半~6月にかけては、3月決算法人の税務申告対応に追われることになります。
また、6月末は税務署にとって年度末にあたりますから、人事異動に合わせて業務の引継ぎなどが行われることになります。
必然的に業務量も多くなりますから、この時期には税務調査の数も少なくなっているのが実際のところです。
7月~8月:新年度のスタートと人事異動でてんやわんや
税務署の職員にとって、7月は人事異動の月です。
新しい体制がスタートして前任者からの業務引継ぎや、一緒に働くメンバー同士の交流などもこの時期に集中して忙しくなります。
7月に新体制がスタートして8月前半はお盆休み、お盆が明けてから8月末ぐらいまでは税務調査が行われることは少ないでしょう。
9月~11月:税務調査が行われるピークの時期
上で見たような税務署にとっての繁忙期が終わり、9月~11月の時期には税務調査が集中的に行われる時期になります。
対応に追われる企業の側としては、税務調査対応の体制を整えておくなら秋が来る前の春~お盆休みにかけての時期に完了しておくのが適切といえるでしょう。
また、9月~11月の時期に税務調査の連絡が入らなかった場合には、定期チェックの意味での税務調査はその年にはまぬがれることができたと判断しておいて大きな問題はありません。
一方で、この時期を外れて税務調査が来たという場合には、何らかの形で申告内容に重大な過誤が指摘されてしまう可能性が高くなります。
次の項目では、上で見た原則的な業務スケジュールを外れて税務調査が行われるのがどのような場合七日についてみておきましょう。
原則的なパターンから外れて税務調査が来た場合は要注意
ここまで税務調査が入りやすくなる原則的なパターンについてみてきましたが、逆に見るとこのような原則を外れて税務調査が来たときには、何らかの形で「税務署から目をつけられた(怪しいと思われている)」という可能性が高いということが言えます。
税務調査は定期的なチェックとして行われるのが基本ではありますが、税逃れが金額的に大きく、しかも悪質であるような場合には、緊急性の高い案件として税務調査が行われる可能性があります。
通常の税務調査は事前に日程の調整なども柔軟に対応してくれる「任意調査」ですが、重大かつ悪質であることが見込まれる企業に対する税務調査は、強制かつ調査日程についても事前に知らされることがない強制調査となる可能性があります。
もし強制調査の形で税務調査が来た場合、重加算税として多額の追徴課税が発生することを覚悟しておく必要があるでしょう。
税務調査対策は「入られないようにする」ではなく「入られたときどうするか」が重要
ここまで税務調査が入りやすくなるタイミングについてみてきましたが、税務調査対策を考える上では、「税務調査にはいられないようにする」よりも、「実際に税務調査に入られた時に、どのように対応するか」を考えることの方が重要です。
というのも、税務調査というのは怪しい会社を狙ってくるというよりも、定期的なチェックとしてやってくるという側面が強いからです。
事業規模が一定以上の会社であれば、3年に1度のタイミングで定期的に税務調査がきているということもあるでしょうし、開業してから3年が経過するタイミングというのは
もちろん、過去に重大な税金逃れを行った履歴があるとか、事業の内容的に税逃れが行われやすい業種というものは存在しますが、税務調査対策は基本的にすべての業種・決算月の会社が考える必要のある問題ということができます。
「税理士に依頼したら得」ということはあるか
上でも見たように、税務調査は「定期的チェック」として行われている側面がありますから、顧問税理士がいるから税務調査がきにくくなるということは基本的にありません。
事実、税理士事務所のホームページなどをみると「税務調査対策に実績あり」というようにキャッチコピーを作っていることが多いですが、このことはその税理士事務所が顧問となっている企業にも税務調査は来ているということを表しています。
このように説明すると「それなら税理士に顧問になってもらう意味なんてないのでは」と思われる方もいるかもしれませんが、結論から言うとそうでありません。
税務調査では「調査担当官との交渉」が重要になる
というのも、税務調査というのは調査担当の職員との「交渉」によって修正の有無や税額変更の大小が決まる側面があるからです。
税務調査の日程は基本的に2日間ですが、事業規模が一定以上で会計帳簿のボリュームが大きい会社の調査では、この期間中にすべての会計帳簿をチェックしつくすということは物理的にできません。
必然的に、重要な項目をサンプル的にピックアップして調査するということが行われることになります。
そのため、修正が必要な事項が見つかった場合に、「この部分を見逃すから、この部分については追加の税額を負担してほしい」というような交渉が行われているのが実際のところなのです。
専門知識を持った税理士による対応で税額が少なくなる仕組み
例えば、接待費と事業主のプライベートな支出が一部混同している事実と、外注費について源泉所得税の納付を行っていなかった事実の2つが見つかったとしましょう。
このとき、数年間分のすべての接待費の領収書をチェックするということは物理的に難しいですから、「外注費の源泉処理については今回は指摘しないので、接待費についてはこれだけの追加徴収を概算で請求することを認めてほしい」というような交渉が行われることがあるのです。
このような交渉が行われる場合、税務調査の実態をよく理解している顧問税理士が対応するのと、会計は苦手でできれば見たくもないという人が対応するのとでは、前者の方が有利に交渉を進めやすくなるというのは当然です。
税務調査を行う調査担当者が重点的にチェックしている項目や、「ここは見逃せない」という項目はある程度予測できますから、そうしたポイントを押さえて交渉を行うのと、そうではないのとでは結果が違ってきます。
調査担当の税務署職員としても、顧問税理士に対して今後の改善を指導するのと、経営者に対して改善指導を行うのとでは、前者の方が実効性が高いと考えるのは専門家として自然なことといえるでしょう。
このように、税務調査の対応については「実際に調査に入られた時の対応」が税金の負担を少し減らすために重要であることは理解しておく必要があります。
まとめ
今回は、会社の決算月と税務調査が行われやすくなる時期の関係について解説しました。
事業を営んでいる方にとって、税務調査は基本的に避けることができないものですから、税務調査が来ないようにするよりも、税務調査が来たときに適切に対応できるように準備をしておくことが大切です。
税務調査については税理士に依頼することでスムーズに対応してくれますから、まだ税理士と顧問契約を結んでいない方は検討してみると良いでしょう。
また税務調査は基本的にすべての会社に対して行われる可能性があるものですから、いかに税務調査が来ないようにするかを考えるより、税務調査が来た時にどのような対応をすべきかを具体的に考えておくことが重要です。
税務調査対策については、顧問を依頼している税理士と日ごろから入念に打ち合わせをしておくようにしましょう。