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一般社団法人における代議員制とは何?採用するメリット・デメリットは?

法人形態の中でも社団法人は少なく、代議制を導入している社団法人はさらに少数です。そのため、一般的には馴染みがない社員総会への代議制導入ですが、社員や会員が増えて社員総会の開催の準備や開催自体が煩雑になる状態を解消できるなどメリットもあります。そこで今回は、社団法人の社員総会への代議制導入の該当とメリットデメリットと導入手続きについて解説します。

1 社員総会と社員

社員総会と社員

日本にある法人の種類は営利を得ることを目的とする営利法人(株式会社や合資会社など)と、営利を目的としない非営利法人(社団法人や財団法人)があります。

社員総会と社員

それぞれ法人には、その事業の重要な方針や運営を決定するために意思決定の方法があります。

社員総会とは、社団法人における意思決定機関になります。そして、社員総会で議決権を持って決議に参加する会社の構成員が"社員"になります。

分かりやすい例えとして、株式会社の意思決定機関が"株主総会"であり、法人の構成人が"株主"になります。社団法人においては株主総会に変わるものが社員総会であり、株主に変わる者が社員になります。

《株式会社と社団法人の比較》
意思決定機関 法人構成人
株式会社 株主総会 株主
社団法人 社員総会 社員

社団法人では、社員総会は年に1回開催することが義務付けられています。以下では、社団法人における社員総会や社員の役割について解説していきます。

1-1 社員総会の役割

前述の通り、社団法人における社員総会は法人の意思決定機関になります。意思決定機関である社員総会には定められた役割とその役割を果たすための権限を持ちます。

●社員総会の種類

社員総会には、「定時社員総会」と「臨時社員総会」の2つの種類があります。

定時社員総会 事業年度が終了した後に毎年1回必ず開催されます
臨時社員総会 決議事項が発生した場合に臨時的に開催されます

定時社員総会は、事業年度が終了した後に遅滞なく実施することが法律(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を指します。以下では「一般法人法」と呼ぶ)で定められています。また、税務申告の実施が必要な法人については、税務申告を実施する前に定時社員総会の開催が求められます

臨時社員総会は、定時社員総会のタイミング以外で決議事項が発生した場合に開催されます。

●社員総会の招集

社員総会は、社員の出席がないと成立しません。そのため、社員総会を開こうとする時には原則『招集』を行わなければなりません。招集とは、社員総会を開催する日時と場所と議題などの定められた事項を社員へ発することです。

招集を通知する場合には、社員が社員総会に参加するための準備を行う期間が求められます。そのため、原則は社員総会を行う日の1週間前まで*に社員へ発することが必要です。

なお、収集手続きは社員全員の同意がある場合には省略することができます。一方で、社員が社員総会に出しない場合でも議決権を行使できる「書面投票制度」や「電子投票制度」を採用していても、招集手続きの実施は必要になるので注意してください。

1.書面投票制度を採用している場合 法人は社員に対して「議決権行使書面」を送付します。社員はその書面を社員総会が開催される前までに法人に議決権行使書面を送付することで議決権の行使ができます。
2.電子投票制度を採用している場合 該当する法人のWEBサイトに社員はアクセスを行い、議案に対して投票することで議決権の行使ができます。一般的にはウェブ投票と言われます。
3.社員全員の同意 社員が2名しかいない場合など、少数の社員間で現実的な必要性がない場合には社員全員の同意**によって実施できます。

招集通知は、書面ならびに電子メールや口頭や電話での実施ができます。ただし、理事会を設置している社団法人や書面投票制度や電子投票制度を認める場合には書面での通知が求められます。

*書面投票制度や電子投票制度などを認める場合には、社員総会の2週間前までに収集通知の発送が必要です。
**同意を取得する方法に定めはありません。しかし、一般的には書面で同意を取得します。口頭の場合など記録が残らない形での同意は、後々のトラブルの原因になることがあります。

●社員総会の役割

社員総会は、重要事項を決定するためにある機関です。そのため、大きくは「一般法人法に定められた事項」と「法人組織と運営管理やその他重要事項」を決議していきます。

社員総会は、重要事項しか決議できないわけではなく、法人に関わる事項全てを決議することができます。しかし、運用上全てを決議していくと、事業や法人運営に支障が出るため重要事項を決議していくことになります。

また、社員総会の役割は理事会が設置されているかどうかによって異なってきます。理事会が設置されている場合には、業務執行における決定は理事会が実施します。そのため、社員総会の役割は理事会が設置されていない場合より限定されます。具体的には、予め定めてある社員総会の目的以外の事項は決議しません。

✔︎一般法人法に定められた事項

一般法人法では、社員総会で決議しなければいけない事項を定めています。これらの事項は、理事会やその他の機関で決定しても効力がありません。

《一般法人法で定められた社員総会のみの決議事項》

  • ・社員の除名
  • ・役員などの選任、解任
  • ・理事や監事の報酬などの決定
  • ・決算書類の承認
  • ・基金返還
  • ・定款の変更
  • ・事業譲渡
  • ・法人の解散・継続/合併の承認
  • ・清算人の解任

1-2 社員と会員の役割

社員と会員の役割

社団法人では、社員と会員が存在します。社員が会員を兼ねることもありますが、異なる存在になります。また、一般的な概念の社員や会員とは異なるため、適切に理解することが必要です。

●社員とは

社団法人における社員とは、社員総会での決議における議決権を持って参加することができます。また、社員総会で議案を提出することや社員総会の開催を求めることができます。

社団法人を立ち上げる時には、必ず2名の社員が必要です。また、会社の設立以降は1名以上の社員がいないとその社団法人は継続できません。

●会員とは

会員は、定款や規定によって権利や義務を定められた存在です。また、正会員や一般会員や賛助会員といった会員の中で区別することもできます。

正会員 その社団法人の目的に賛同して入会した個人や法人
一般会員 その社団法人のサービスの利用などをするために会員となった個人や法人
賛助会員 その社団法人の事業を賛助するために入会する個人や法人

会員に社員と同じ権限を付与することもできます。この場合だと、一般社団法人の会員と社員は同一となります。会員になったタイミングで、議決権を持った社員と同じ役割を担うことになります。

一般社団法人の規模を拡大させていきながら多数の会員の意見を反映させていく上で会員の役割を社員と同一にさせることは大きなメリットになります。一方で、会員の権限が強い状態で、不特定多数が会員=社員になっていく状態がつづくことはその社団法人のコントロールを失う事態になりえます。

コントロールを失わないために会員の権限や役割が大きい場合には、会員になるための制限や条件などをつけるなどして会員になることをコントロールする必要があります。医療系学会や業界団体などで、比較的規模が大きい団体でかつ会員になる対象が限られていてコントロールできる場合に採用されることが多くなっています。

会員に社員と同じ権限を付与しようとする場合には、定款に予めその旨を定めておきます。以下はその参考例となります。

《定款例》
当法人における正会員は、一般法人法で定める法律上の社員とします。

1-3 決議

社員総会の決議には、社員総会の定足数を満たしていることと各決議に必要な議決数を満たしていることの2つが必要になります。

● 定足数

社員総会では議決権を持つ社員や会員が一定数出席することが必要になります。この社員総会が成立するための最低限の出席数を定足数と言います。

一般社団法人の社員総会決議における定足数は、議決数の過半数以上の社員や会員の出席が必要と法律で定められています(法人法第49条1項)。

この点は、株式会社における株主と大きな違いになります。株式会社においては1株に1議決権が付与されるため、多くの株式を所有している場合には議決権も多くなり、影響度が大きくなります。

一般社団法人の議決権は、1社員に1議決になります(一般法人法第48条1項)。一般社団法人では1社員に1議決権になるため影響度が分散しています。しかし、定款で定めることで特定の社員に対して複数議決権を持たせることはできます。また、同様に特定の社員に議決権を持たせないことも可能です。

●委任状

社員総会に出席できない場合、議決権を委任することができます。この委任の意向を示すための書面が委任状になります。

委任を行うと、社員総会に出席したこととみなされます。また、委任を任された社員などが委任内容に応じて委任者の議決権を行使することになります。

委任状では、意向を示す形が最も適切ですが、白紙委任状という意向を示さない委任状の送付もできます。この白紙委任状を会議の進行を行うために中立的な立場にある議長に委任する場合があります。この場合には、実務上適切ではありません。委任状のフォーマットに定めはないため、委任先は議長にできないなどのフォーマットや条項を付け加えておくことができます。

●普通決議と特別決議

社員総会での決議には、普通決議と特別決議があります。その違いは、必要な議決権になります。

普通決議 社員総会に出席した社員の議決権の過半数をもって決議となります
特別決議 総議決数の3分の2以上をもって決議となります

普通決議は、10名の社員がいる社団法人で5名以上の出席で社員総会は成立します。また、そのうち3名が決議に賛同すれば決議が成立します。逆に6名参加した中で3名の賛同の場合には、過半数に届かないため決議は成立しない点も留意してください。(一般法人法第49条1項)

特別決議でも、社員総会の成立は普通決議と同じです。議決権をもつ半数の社員の出席で成立します。しかし、特別決議の場合には全ての議決権の3分の2以上の賛同が必要です。つまり、10名の社員がいる社団法人での特別決議には、7人以上の賛同が必要です。社員総会に出席している人数は関係ないので留意してください。(一般法人法第49条2項)

特別決議が必要な事項は予め定められているため、これらの決議が必要な場合には特別決議を実施します。決議事項の中でも重要な事項は特別決議で対応する形になります。

  • ✓社員の除名/監事の辞任
  • ✓役員などの一部責任免除
  • ✓定款変更
  • ✓事業譲渡/合併契約承認
  • ✓解散

●みなし決議

みなし決議とは、社員総会を実際には開催せずに社員総会の決議事項を決議することを言います。みなし決議には、社員全員の同意が必要になります(一般法人法第58条1項)。

みなし決議では、実際には社員総会を開催しないため、招集通知などの事前準備を省略できます。また、社員総会開催のための業務やコストも削減できます。
社員が2名しかいないなどの少人数の場合や、緊急性の高い事項の決議において利用されることが多くあります。

2 社員総会の代議員制導入

社員総会の代議員制導入

社員総会の開催や決議を行うことに支障が出る規模まで議決権を持つ会員が多い場合などに、代議員制は有効な制度と言えます。(詳細は後述します。)

代議員制自体の概要とメリットとデメリットをはじめとして、導入の仕方や運用方法について解説します。

2-1 代議員制とは

代議員とは、政党や自治会などの組織や集合体によって選出され、討議や議決に参加する人をです。まったく同じ読み方で、代議院という言葉もあります。これは、政治で利用される議会の名称になります。

そのため、代議員と聞くと政治的色合いが強く感じる場合もあります。政治には、国を治める活動という意味合いとともに、権限を行使して集団や組織を動かす意味合いもあります。そのため、社団法人における代議員制を導入するということには、政治の持つ後者の意味合いが適していると言えます。

●社団法人の代議員制

社団法人において代議員制を導入するのは、社員総会における構成員が会員から代議員へ変わることを意味します。つまり、社員総会において議決権を行使する社員や社員同様に権限を付与された会員を代議員が替わります。

社団法人が代議員制度を導入することで、多数の会員の中から代議員を選び、その代議員の議決権によって社員総会における決議を進めることができます。

代議員制を導入しようとする場合には、定款にその旨を定めなければいけません。また、代議員の役割も定款に記載します。定款に記載するときに押さえておくべき代議員制のポイントは以下になります。

  • ✓代議員の役割
  • ✓代議員の選出方法

●代議員の役割

代議員は、個人や法人がその役割を担っていた社員や議決権を持った会員の役割を代わります。そのため、基本的な役割は『社員総会に出席すること』と『社員総会において議決権を行使すること』の2つになります。

一般的には、上記の2つの役割以外が加わることはありません。そのため、代議員制を導入した社団法人において引き続き社員や会員は存続し、社員総会への出席や議決権の行使以外の権限や役割を継続する必要があります。また、代議員が社員や会員の権利を併せてもつことが一般的になります。

●代議員の選出方法

代議員には、代議員選任手続きを経て選ばれます。代議員選任手続きは、候補者となるための条件を満たした会員などが立候補します。その立候補を経て、代議員選挙が行われます。そして、代議員は2年などの任期があります。

代理人選挙は、その公正さを担保するために選挙管理委員会などの組織が設置され、選挙管理委員会の運営・管理のもと行われます。

これらの詳細を定款や代議員選挙に関わる規定などに定めておきます。

2-2 代議員制のメリット

代議員制のメリット

社団法人において代議員制を導入するメリットは、社員総会の決議の質の向上を目指せることと、社員総会の運営の煩雑さを抑えることができる点に集約されていきます。

●社員総会の決議の質の向上

前章で記載したように社員総会はその社団法人の重要事項を決議する場になります。重要事項の決定を誤ることで、運営の質や組織自体の存続を脅かすことも起こりえます。

そのため、社員総会の決議の質は、非常に重要となります。これも前述しましたが、社団法人の社員や会員の議決権は1人に対して1議決になっています。株式会社の株主のように、保有している株式数によってその発言力が異なってくるといった仕組みではありません。

そのため、社団法人においてはその設立から携わりその社団法人の意義や進むべき道筋などを熟知する会員の持つ議決権と直近で正会員となった会員の議決権が同じ扱いになります。この事自体は、新しい地域や物の考え方を組織にもたらす面などメリットもありますが、新規会員が増加していく中では社員総会に必要な質を確保することが難しくなる要素にもなりえます。

このような時に、代議員制を導入することで社員総会に参加する人数を限定することで議論と理解を深めることで決議の質を高めることが期待できます。

また、利益追求を目的としない社団法人も法人であり、事業の存続には収益=売上が必要です。収益がなければ、事業運営に必要な費用を支払うことができず、組織の維持ができなくなるからです。

そして、事業の運営の成否を分けるのは、社会の変化のスピードについていくための意思決定の正確さとスピードです。つまり、意思決定の質とタイミングと言い換えることができます。

タイミングを逸するということは、機を逸することになります。機を的確に捉えるためには、意思決定の迅速さ・スピードが重要になります。

迅速さ・スピードのためには、社員総会で決議をするまでに数ヶ月の単位で時間を要する社員総会を代議員制導入によって改善することはメリットになります。

●社員総会の開催/運営の煩雑さの抑制

社員総会を開催しようとすると、社員や会員など議決権を持つ者を招集することが必要になります。社員総会の開催頻度によるところも大きく関わりますが、年に1度の定時社員総会だけでなく、至急対応すべき決議事項に対応する臨時社員総会が定期的に実施されるような社団法人においてはその社員総会の開催/運営の負担は大きくなります。

2-3 代議員制のデメリット

代議員制のデメリット

代議員制導入のデメリットは、代議員制を維持するために必要なコストや事務的な負担が大きいことと、直接の会員の意見が反映されにくい環境への対策などが必要になります。

●代議員制を維持するために必要なこと

代議員を選定するためには、選挙が必要になります。選挙には選挙管理委員会や公正な選挙の実現が必要になります。特に代議員制を導入している社団法人はその事業規模が大きいことが一般的です。

大規模な社団法人の重要事項を決定する決議権を持つ代議員を決める選挙は公正であることが必須です。そのため、選挙の運営を行う上での専門知識が求められます。選挙を運営する知識は一般的ではないため、専門的知識を有した人間を採用するか、外部の専門家の力を借りるなどが必要となる場合もあります。

専門性の高い選挙管理委員会の設立と維持、2年に1回の選挙や選挙で選任された代議員の活動状況の管理などは代議員制を維持するために必要なことになります。

これらの業務負荷やコスト増加をおこなうことと代議員制のメリットのバランスを考える必要があります。単純な業務負荷やコスト増加であれば、数値化することにより比較は容易に実施できます。

例えば、単純に会員に議決権を持った状態で社員総会を維持する方法やシステム導入などを行ったうえでの前述の書面投票制度や電子投票制度などを導入したやり方と、代議員制の導入を比較することでコスト負担の比較できます。

会員の人数が少ない場合には、単純な社員総会を維持する方法が最もコストが少なくなります。会員の数が増えるのと決議の数や社員総会の頻度によって代議員制のコストメリットが大きくなっていきます。

●直接の会員の意見が反映されにくい環境への対策

代議員制を導入するうえで最も留意してその仕組みを検討しなければいけないことが、会員の声が直接届かなくなることで、意見が反映されない環境ができてしまうことです。

選挙で選ばれた代議員は、選挙時の公約や言動をもとに会員の意見を吸い上げてそれを社員総会の決議やひいては社団法人の適切な運用に反映する責任があります。

また、代議員制を導入する時には、既存の会員は議決権を失うことになりますし、社員総会への出席もしなくなります。そのため、少なからず不満が生まれやすい環境とも言えます。もちろん、その分会員の負担が減るという見方もできます。

代議員制を導入する場合には、既存の会員が決議進行や決議内容の質が向上できて、成果が見える形にできることが望まれます。

また、代議員制を導入することで会員に不利益が発生しないように内閣府公益認定等委員会が5つの要件を定めています。

●内閣府公益認定等委員会の5要件

内閣府公益認定等委員会は、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に基づいて設置されている委員会になります。委員会の活動として、民間有識者で毛構成された公益性の認定や公益法人の監督に関する審議を行う合議制機関の情報を掲載しています。

内閣府公認認定委員会は、一般法には代議員制についての明文化された規定はないとしながらも、現実として社員が極めて大きく全国規模で多人数が分布する状況において代議制の導入の高い必要性を認めています。そのうえで、特例社団法人が移行認定や許可に際して代議員制を採用するする際には、その法人の定款において満たすべき5要件を示しています。

ただし、以下の5要件を満たさなければ代議員制を導入した社団法人が公益法人になることができないという合理的な根拠はないとされています。

≪代議員制を採用する場合の5要件≫

  • ✓代議員を選定するための制度の骨格が定款で定められていること
  •  ここでいう骨格とは、代議員の定数、任期、選出方法、欠員措置などがあります。
  • ✓代議員を選出する代議員選挙において、各会員が等しく選挙権ならびに被選挙権の保障がなされていること
  • ✓代議員を選出する代議員選挙において、その選挙が理事ならびに理事会から独立していること
  • ✓選出された代議員が各訴権(責任追及や社員総会決議取消などの訴え)を行使してる期間においてはその代議員の任期が終了しないこと
  • ✓会員に対して代議員と同じだけの情報開示請求権などを与えること

3 代議員制の導入と運用

代議員制の導入と運用

前述の通り、議決権を持つ会員が多数になり、かつ全国に会員がいるような状況であると、社員総会の決議に支障がでてくる可能性が高まってきます。また、その状態で社員総会の決議自体に支障を出さないようにすると、業務負荷やコストが増加することが避けられなくなります。

本来の目的に立ち返ると社員総会は重要な事項を適切に決定することが求められます。そのため、社団法人の規模が大きくなり会員が増えていくと、代議員制を採用することを検討するタイミングがやってきます。

導入時に必要なことは、会員の同意を得ることと定款の変更が主な事項になります。そして、代議員制の導入が決議されたのちに選挙管理委員会の設置と選挙を経て代議員を決定することになります。

導入時の必要事項をまとめると、主だった必須事項は以下になります。

  1. ①会員の理解を得る
  2. ②定款の変更
  3. ③選挙管理委員会の設置
  4. ④代議員選挙の実施

これらの必須事項を全て実施しようとすると、事前の予備知識や何名で取り組むかなどの諸条件によっても異なりますが、目安として半年前後の準備期間が必要です。

3-1 会員の理解を得る

社団法人はその収益基盤が会員が支払う会費が占める割合が大きい場合も少なくありません。
代議員制導入をしようとする社団法人は、会員が数万の単位でいるところも多く、月の会費が1万円で1万会員いれば1億円の収入になります。収入の面からも会員がいて社団法人が成り立っていることを前提に、代議員制導入を会員に丁寧な説明が求められます。

会員への説明は、対象となる会員が多いため書面を通じて実施することが一般的です。

説明については、代議員制の内容や今後の会員の役割の変化などを記載することはもちろんですが、代議員制を導入するに至った経緯について具体的に記載することが多くあります。

多くの代議員制を導入する社団法人は、会員数が増えた結果、社員総会が成立する為に必要な議決権を持つ会員の半分の出席を満たさなくなります。そのため、実際の社員総会には出席しないものの委任状などを事前に取得して過半数を満たすようにします。

しかし、委任状を集めるのも会員数が数万になると簡単ではありません。社員総会の招集通知に委任状をつけて送付するだけでは、委任状も集まりません。そのため、会員へ連絡して出欠席の確認と欠席の場合には委任状の返送を依頼していきます。これらのことを繰り返してなんとか社員総会の開催にたどり着く状態まで出席数を増やしていきます。

社員総会の開催がままならない状態では、臨時社員総会や議決権数の3分の2以上の賛成が必要な特別決議の採決より困難になります。そのような状態では、健全に社団法人の運営に支障がでます。そのため、代議員制の導入をすることで社団法人の運営をより健全なものにすることが目指せる、ということを伝えるなどの経緯の説明が必要です。

留意しなければいけないのは、社員総会に出席することに意義を持っている会員も当然に多くいるということです。そして、代議員制を導入するためには定款の変更が必須になりますが、定款変更は総議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議に該当します。そのため、多くの賛同を得られる説明が必要になります。

3-2 定款の変更

定款の変更

代議員制を導入する際には、定款の変更が必須です。代議員制を規定する為に、以下の項目などを追加します。

  • ✓代議員
  • ✓代議員の報酬
  • ✓代議員選挙等に関する規定
  • ✓社員総会の手続き
  • ✓社員総会の成立、決議

以下は定款変更例になります。

第〇条 代議員(新規追加)
1. 本会に個人ならびに法人の会員から選任された代議員を置くこととする。
個人会員に対する代議員の数は、総会員数から400人と200人で除した数の範囲とする。*
法人会員に対する代議員の数は、総会員数から50社と30社で除した数の範囲とする。*

2. 前項の代議員が、『一般社団法人及び一般財団法人に関する法律』で定める”社員”とする。

3. 代議員は、個人ならびに法人の会員の中から代議員選挙に立候補し、かつその代議員選挙によって選任される。

4. 代議員選挙において、個人ならびに法人の会員は平等に代議員選挙に参加する権利を有する。しかし、理事ならびに理事会が代議員を選出することはできないこととする**。

5. 代議員の任期は、選任から2年とする***。また、現職の代議員の欠員などを理由とする補充の代議員選挙で選任された代議員の任期は、前任代議員の残任期間と同一となる****。

6. 代議員は特別な事由が発生した場合に理事会の議決が実施され、その資格を喪失する。特別な事由とは、以下の事由が該当する。

  • ・代議員から辞任の申し出があった場合
  • ・職務執行が困難であると認められる場合
  • ・会員の資格を喪失した場合
  • ・懲戒を受けた場合 など

7. 代議員が以下の訴えを行う場合には、その訴訟が終結するまでは社員としての地位と権限を継続できるものとする。しかし、役員の選任と解任ならびに定款変更についての議決権は有さないこととする。

  • ・社員総会決議に対する取消の訴え
  • ・社団法人の解散の訴え
  • ・責任追及の訴え
  • ・役員解任の訴え

8. 会員は、以下の社員の権限を代議員と同等に引き続き行使できるものとする。

  • ・定款の閲覧
  • ・代議員名簿の閲覧
  • ・社員総会の議事録閲覧
  • ・計算書類などの閲覧
  • ・清算する法人の貸借対照表の閲覧
  • ・合併契約などの閲覧

9. 代議員がその職務を怠ったことによって発生した法人に対する損害は、賠償する責任を負う。なお、この損害賠償責任は、個人と法人の会員全員の同意がある場合には免除されることとなる。

*個人の会員総数を2万人だとすると、50人~100人の範囲で個人の代議員を置くということになります。同じく、法人の会員総数を600社だとすると、12社~20社の範囲で法人の代議員を置くということになります。
**理事の役職を担う個人や法人が会員を兼務している場合には、会員として代議員選挙に参加しその権利を行使することができます。
***代議員の任期は、正確には選任から2年目の代議員選挙が終了するタイミングまでになります。また、この代議員選挙に立候補し再任が認められる場合もあります。
****前任者が1年の任期を残して代議員の職を辞した場合には、補充の代議員選挙で選任された代議員の任期は1年になります。

第〇条 代議員の報酬(新規追加)
代議員は無報酬とする。但し、その職務を全うするために必要と認められる費用は支払を受けることができるものとする。

第〇条 代議員選挙等に関する規定(新規追加)
代議員選任に関する運用などの定めについては、定款ならびに代議員選挙規程によるものとする。

『社員総会の手続き』については、既存の定款の複数の条項にまたがっている場合も多くあります。以下の2つの事例を記載します。

第〇条 社員総会(変更)
社員総会は、定時総会と臨時総会の両総会ともに、代議員*によって構成されるものとする。

第〇条 招集通知の手続き(変更)
〇 招集通知においては、代議員*が議決権を行使する書面を添付するものとする。
〇 あらかじめ通知された以外の事項を議案とする場合には、出席した代議員*の3分の1以上の同意をもって実施するものとする。

*この部分は、変更前の定款には特定されるための記載がされていない場合や、「社員」や「会員」が明記される場合があります。

『社員総会の成立、結尾』についても、既存の定款の複数の条項にまたがっている場合が多いことは変わりません。

第〇条 社員総会の成立(変更)
社員総会は、代議員の総数に対してその過半が出席することで成立するものとする*。また、招集通知に添付された書面をもって議決権の行使を実施する場合には、出席したものとみなす。

*過半の出席が見込めない場合には、開催自体を実施できません。

第〇条 社員総会の決議(変更)
〇 総会の決議は、一般的な決議は社員総会に出席した代議員の過半数の賛成によって実施される。ただし、社員総会に出席することなく招集通知に添付した書面をもって議決権の行使をおこなうことができる。この書面をもって議決権の行使を行う場合には、書面に必要事項全てが記載された状態で、該当する議題について審議する社員総会の前日までに当会にて到着を確認できるものとする。

〇 代議員の議決権は、1名につき1議決権とする。

以上が代議員制導入に関わる主だった定款の変更例になります。

●変更登記申請

代議員制の導入に応じた定款の変更には、前述のとおり社員総会での3分の2以上の賛成が必要になります。この代議員制の導入について定款の変更が特別決議されたのちに、社団法人の主たる事務所を管轄する法務局で変更登記申請を行います。

変更登記申請は、特別決議を実施した日から2週間以内になります。社員総会を開催する火を決定するタイミングで変更登記申請を実施する日もスケジューリングしておくことが必要です。

そして、この変更登記を完了して初めて代議員制の導入が完了し、定款で定められた会員から代議員へと社員総会の構成や議決権が移ります。

3-3 選挙管理委員会の設置

代議員を選任するための選挙は、選挙管理委員会の設置が必要になります。そのため、年度が新たに始まるタイミングに選挙運営・事務について社団法人の理事から選挙管理委員会が委任を受けます。

選挙管理委員会*は、選挙を実施する日程を決定します。そして、選挙管理委員会の運営と実務を行う委員と委員の中から委員長を決定します。

委員には任期があり、毎回の選挙が終了する日でその任期も終了することが一般的です。そのため、委員に欠員が出る場合には、新たな後任者が必要になります。また、委員長は委員の中での互選で決定します。

選挙管理委員会は、主に以下の事項を実施します。

  • ・選挙日程の決定
  • ・選挙人および被選挙人の名簿作成とその公示
  • ・立候補者の名簿作成とその公示
  • ・投票と開票の管理
  • ・当選者の決定

3-4 選挙の実施

設置された選挙管理委員会が、まず実施することは選挙日程の決定になります。選挙日程とは、大きく『選挙人名簿作成』と『選挙』の日程を決定する事になります。日程が決定したら、その日程を会員に対して開示します。

●選挙人名簿

選挙人名簿とは、代議員選挙に対する選挙権を持っている会員が記載された名簿になります。この名簿に記載がある会員が選挙に投票することができるため、選挙において非常に重要な名簿になります。

代議員選挙において選挙人名後に登録されるのは、選挙権の資格を持っている会員になります。具体的に選挙管理委員会は名簿を作成するために、全会員に住所や連絡先の確認を目的とした調査票を送付します。そして、調査票を受け取った会員は速やかにその決められた締め切りまでに調査票を返信します。返信された調査票を選挙管理委員会は、会員データの更新を実施する事で選挙人名簿が完成します。

この選挙人名簿の作成は、以下のようにおおよそ2か月前後の期間をもって日程が組まれます。

≪選挙人名簿 日程例≫
5月 全会員への調査票の配布(調査票受付締め切りは5月末日とする)
6月 調査票から会員データを更新
7月 選挙人名簿を完成

●選挙

選挙は、その社団法人の選挙権のある会員が代議員立候補者の中から代議員を投票によって決定します。選挙の概要は、立候補者を募り、立候補者の中から代議員を選挙によって決定するという2つのプロセスに分かれます。

具体的なプロセスとしては、選挙対象者である会員へ以下を送付します。

  • ✓選挙人名簿
  • ✓立候補用紙
  • ✓推薦用紙

代議員への立候補をするには、要件を満たしていることが必要になります。立候補の要件は、上記立候補用紙とともに概要説明の形で同封しておくことが一般的です。一般的な立候補の要件は、以下の3つになります。

  • ✓社団法人の代議員の役割を理解し、その責務を任期中において全うする意思があること
  • ✓被選挙権(選挙を受ける権利)を有していること
  • ✓必要とされる人数の推薦を得ていること

代議員に立候補するためには、推薦人が必要になります。推薦人にも要件があり、一般的な推薦人要件の主たる事項は2点あります。1点目は、推薦人になるには被選挙権をもつ会員であることが必要になります。もう1点が、選挙区域がある場合にはその選挙区以外の立候補者の推薦人が2名必要になります。

なお、法人が代議員選挙に立候補する際には、推薦人を必要としないケースもあります。

立候補の方法は、立候補用紙に必要事項を明記し、定められた期限までに簡易書留などの紛失の危険が少ない郵送方法などで送付します。

立候補用紙が選挙管理委員会に到着すると、立候補者としてホームページなどに公告されます。なお、立候補の要件を満たしていない場合には当然その立候補の申し出は取消になります。また、その立候補になるうえで相応しくない行為や虚偽の事実が選挙管理委員会で認められた場合にはその立候補は取消になる点に注意が必要になります。

選挙管理委員会は、立候補用紙を開票します。そのうえで、代議員立候補者の要件を満たしているかを確認して、立候補者数が代議員の規定数に足りているかを確認します。立候補者数が代議員の規定数のバランスによって選挙の必要性が決まってきます。

  • ✓立候補者数が規定数に不足している場合は、選挙を行いません
    ただし、立候補者が1名もいない場合には、立候補者の再募集を行います。
  • ✓立候補者数が規定数を超えている場合には、選挙を行います。

区域によって代議員の規定数が相違している場合には、その地域ごとで選挙を行うかどうかを立候補者数によって対応が異なってきます。選挙もしくは立候補者の再募集の準備が整えて、投票用紙を送付します。投票用紙には、選挙権のある会員は締め切り日までに郵送をもって投票を行います。

投票の受付締め切り日を経過してから、選挙管理委員会は開票を行います。開票はあらかじめ定めた日に定めた場所で実施します。開票は、立会人の立ち合いのもと選挙管理委員長ないしは委員長から指定された委員が実施します。なお、開票を選挙人と被選挙人に公開することも可能です。

選挙管理委員会は、選任に定められた方法で当選者を決定して、理事会の理事長に報告します。

この選挙のスケジュールは、以下のようにおおよそ4か月前後の期間をもって日程が組まれます。選挙人名簿の作成から選挙を介しての代議員の選出までは7か月前後の期間が必要になります。

≪選挙 日程例≫
8月 会員に選挙人名簿と立候補用紙と推薦用紙などを送付
9月 受付締め切り後に、選挙管理委員会が立候補者を確定
10月 投票用紙の発送
11月 開票後、選挙結果を公告

4 まとめ

まとめ

規模の大きい社団法人で導入することが多い代議員制について解説しました。社員総会は、その社団法人における重要事項を決議する場であり、その議決権を持つ社員や会員は決議を通して社団法人をより良い方向へ進めていくことが求められます。

社団法人の規模が拡大し、会員の数が増えた社団法人においてその社員総会ならびに決議を実施することに支障が出てくる場合があります。また支障をださないように社員総会の成立に事務的処理が増えて費用がかさむ状態にある場合には代議員制を導入することを検討する機会になります。

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