法人化するタイミングや反対する家族を説得する方法を教えます!
個人事業が軌道に乗り、売り上げも上がってくると、個人事業主から法人成りしよう!と考える人も少なくないと思います。
確かに法人成りは、信用性の向上(やはり、単純にフリーランスと法人の代表取締役では、取引先・第三者など周囲の印象が異なる)、法人との取引のハードルが下がる(個人事業主には仕事を出さない会社もある)、節税、法人向けの補助金・助成金など、様々なメリットがあります。
とはいえ、ただ法人成りするのではなく、売り上げ・決算期など法人成りに適したタイミングを見計らうことも重要です。法人成りする上での注意点も多くあります。
また、世間一般では、法人成りは売上1,000万円が目安と言われていますが、売上だけでなく、利益・タイミング・外部要因など他の要素も踏まえて、法人成りすべきかどうかを判断することが重要です。
それでは、法人成りについて深掘りしていきましょう。
1 法人成りについて
当項目では、法人成りとはどういうことかという基本的な部分から、法人成りのメリット・デメリット、最適なタイミング、法人成りのプロセスにおける会社設立、設立後の手続きの概要などを見ていきます。
1-1 そもそも法人成りとは?
よく、個人事業主周りで「結構儲かってきたから、法人成りするかな」という声を聞いたことがある人もおられるかと思います。
そもそも法人成りとは、具体的にどういう状況を言うのでしょうか?
シンプルに言うと、
通常の会社設立と法人成りが異なるのは、「既に実績・信頼がある」というアドバンテージです。
「ゼロからいきなり会社設立」ではなく、「個人事業としてやってきて規模が大きくなったから、会社設立をしよう」ということで、既に個人で事業をある程度事業実績を積んでいる、軌道に乗せているという実績は、起業後信頼を勝ち取るための大きな助けとなります。
それでは、法人成りすることで、何が変わり、どういうメリット、デメリットがあるのでしょうか。
1-2 法人成りするメリット
法人成りするメリットは下記のとおりです。
①社会的信頼性の向上
最初の方でも触れましたが、信頼性の向上というのは、予想以上に大きいです。
個人事業主と会社の社長(代表取締役)という立場では、様々な方面からの社会的評価が異なります。これは特に、会社勤めの人・年配の人のリアクション非常に良くある傾向といえます。1人会社でも、「会社の代表取締役」という立場であれば、名刺をもらった人は「すごい、経営者か」と思ってくれます。
以前は株式会社の設立には1,000万円以上の資本金、有限会社の設立には300万円以上の資本金が必要でした。しかし2005年の最低資本金制度の撤廃・2006年の会社法施行により、株式会社は1円の資本金から設立できるようになりました。
また、意外と知られていないことですが、旧会社法では、取締役3名以上、監査役1名以上が就任することが必須とされていました。
しかし現在は、代表取締役1人で、株式会社・合同会社ともに設立できます。
過去は株式会社を設立するハードルが高かったため、年配の方でも、案外会社を設立するには大きな資本や複数の取締役が必要、というイメージが残っている方もおられます。そのため、年配の方の方の中には株式会社を設立したというだけで、すごいと思ってもらえるケースもあると聞きます。
ただ、資本金の部分に関しては、いくら1円から設立できると言っても、常識的な資本金を積むという注意が必要です。最低金額の1円は論外として、数万円、十数万円などの極端に低い金額は避けた方が望ましいといえます。
なぜなら、資本金は、法務局で全部事項証明を取得することで第三者でもわかるからです。法務局で資本金を調べたところ、資本金が10万円。このような額の資本しか用意できない会社と、なかなか関わろうという会社は少ないと言えましょう。
このように、制度上はOKでも、現実的に資本金1円や極端に少ない資本で株式会社を設立しても、会社の経営を本当にやる気があるのかと思われかねません。通常は100万円なりある程度の資本金を備えておくのが確実といえます。
このように、資本金については注意すべき面がありますが、いずれにせよ、会社の代表取締役・代表社員と個人事業主では、社会的信頼性は大きく異なると思っておいた方がいいでしょう。
②企業との取引(いわゆるBtoBの取引がしやすくなる)
企業、特に歴史のある大企業や昔ながらの企業ほど、個人事業主との取引はNGという会社が複数存在します。
もちろん、個人事業主でも取引をしてくれる大企業も多いです。ですが、やはり法人と個人事業主の場合では、法人の方が様々な意味で信頼を得やすいと言えます。
③税率がほぼ一定
個人事業の場合、儲けの部分である「所得」にかかる所得税は、「累進課税」といい、税率も上がっていきます。
まず、国税庁のタックスアンサーページ内にある、「所得税の税率」を見てみましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
これに、平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)が合算・請求されることとなります。
例えば、課税される所得金額の公式は、下記の通りとなります。
課税される所得金額×税率-控除額
700万円であれば、
700万円×23%-636,000円=974,000円
と100万円近い所得税額となり、さらに復興所得別所得税も必要、市民税・住民税などの各種税金、社会保険料も所得と連動して上昇するため、合算すると相当な負担額になるでしょう。
また、意外と見落とされがちですが、都道府県に支払う個人事業税というのも存在します。
業種により異なりますが、290万円を超える売上がある場合は、事業によって3%~5%の個人事業税を支払う必要があります。(個人事業税が存在しない業種もあります)
一方、会社であれば、法人税という形で、税率はほぼ一定になります。
こちらも国税庁 タックスアンサーページ内の法人税の税率によると、普通法人に限ると、
区分 | 税率 |
---|---|
資本金1億円以下の法人で売上年800万円以下の部分 | 15%(一部法人はH31年4月以後19%) |
資本金1億円以下の法人で売上年800万円を超える部分 | 23.2% |
上記以外の普通法人 | 23.2% |
と、税率が比較的フラットとなります。
ただ、これに加え、法人住民税・法人事業税・消費税、その他諸税はかかります。また、赤字でも法人住民税の均等割(概ね7万円)と、消費税(売上が1,000万円を超えた2年後の事業年度から納税)は納めなければなりません。
このように、法人独自の税はありますので、その点も留意しておくとよいでしょう。
④役員報酬を支給し、報酬部分を損金に計上することで節税ができる
個人事業主は、事業のサイフと個人のサイフが実質的に一緒(もちろん、私用と業務用の口座を分けている人は多いでしょうが)なのに対し、法人化していれば、毎月報酬額として一定額を期初に定める必要がありますが(途中で変更はできない)、役員報酬とすることで、損金に算入することができます。
⑤節税策が個人事業より豊富になる
役員の住居を法人で借りて社宅とする、会社で役員の生命保険に加入することなど、行える節税対策が広がります。
節税については、素人考えでやるより、税理士の客観的なアドバイスのもと、無理のない範囲で行うことが大切です。
また、税金を払いたくないばかりに節税対策を行い、内部留保がたまっていかないのも問題です。
内部留保が少ないと、業況が悪化したときに、あっという間に支払いができなくなる恐れがあります。
なお、節税対策としてメジャーな小規模企業共済制度は、名前から企業向けに思われがちですが、個人でも加入可能です。
⑥新設法人は、消費税が最高2年免税となるケースがある
個人事業主として2年間の消費税免税特典を享受した場合でも、法人成り後に、新設法人の免税特典を享受することができます。
ただし、資本金が1,000万円以上、前年の上半期の売上が1,000万円を超えるケースなど、消費税免税の適用除外のケースもあります。
⑦アフィリエイトサイトの売却の場合、法人の方が有利になるケースが多い(特にサイト開設後5年以下の場合)
会社の売却・M&Aはかなり一般化してきましたが、近年増えてきているのが、アフィリエイトサイト・メディアサイトも含めたサイトの売却です。
法人の場合は、売却益をそのまま利益として計上できますが、個人の場合は、譲渡代金に所得税がかかり、法人で売却するより税負担が大きくなるケースが想定されます。
アフィリエイトサイト・メディアサイトの場合、不動産などと同じ「譲渡所得」に当たりますが、この譲渡所得がくせ者です。
国税庁の譲渡所得に関するページを見てみましょう。
ここには、“土地建物や株式等を売った場合を除き、資産を売ったときの譲渡所得は、給与所得や事業所得などの所得と合わせて総合課税の対象となります。
この総合課税の譲渡所得は、取得したときから売ったときまでの所有期間によって長期と短期の二つに分かれます。
長期譲渡所得となるのは、所有期間が5年を超えている場合で、短期譲渡所得となるのは、所有期間が5年以内の場合です。
ただし、次の四つの場合には、所有期間が5年以内の場合でも長期譲渡所得となるとされています。
- (1) 自分が研究して取得した特許権や実用新案権などの工業所有権
- (2) 自分が著作した著作権
- (3) 自分で発見した鉱山などの採掘権
- (4) 自分の育成による育成者権
以上のように書かれています。
こうして読むと、一見アフィリエイトサイト・メディアサイトは(2)の自分が著作した著作権のように思えてしまいますが、もうひとつ、国税庁の譲渡所得に関するタックスアンサーを見てみましょう。
アフィリエイトサイト・メディアサイトなどのWebサイトは、ドメインも含むため、著作権ではなく、その他の資産-総合課税として扱われるのです。
そして、ドメインを取得してから5年を超えるサイトであれば長期所得という形で税負担が軽くなりますが、5年以下の場合は短期所得という形で課税額が大きくなります。
詳細は税理士にぜひ確認をしていただくことをお勧めしますが、概ね長期所得と短期所得で課税対象額が倍近く異なります。(言い換えると長期所得の場合は課税対象額が短期所得のケースの半分になる)そのため、特にサイト開設後5年以下の場合は、長期・短期問わず税率が変わらない法人にサイトごと移管して、その後売却という手もあると言えます。
また、長期の場合でも、譲渡所得による課税がないため、あくまで法人の所得という形で扱うことで、結果的に節税となるケースも想定されます。
また、Webサイトを買う法人の側としても、サイト購入は節税対策になります。買う側、売る側双方にとって、サイトの売買はメリットのある取引といえるでしょう。
⑧補助金・助成金を活用しやすくなる
現在国・地方自治体が行っている助成制度は、基本的に法人を対象としたものが多いです。
もちろん、個人事業主を対象としたものもありますが、補助金・助成金の場合、設備投資・人の雇用、企業誘致など大きなお金が動くものが多いため、必然的に法人が対象となってくるケースの助成金・補助金が多くなります。
⑨代表取締役個人と会社の経営責任を分離することができる
個人事業の場合は、事業で生じた赤字は個人の負担に当然なります。
一方、法人の場合は、(実態はともあれ)個人と法人は分離されていますので、法人の赤字は法人の赤字、法人の責任は法人の責任(ただし、取締役など役員が、管理者としての責任を問われるケースはありえます)と、ある程度切り分けることができます。
さらに、近年の事業承継や会社のスムースな廃業の必要性をすすめるために、「経営者保証に関するガイドライン」という制度が積極的に活用されるようになりました。
金融庁は、平成25年に、「会社に万一のこと(つまり経営破綻)があっても、経営者保証ガイドラインに沿った状況で処理を行うのであれば、経営者個人の信用情報にマイナスのデータを残さないし、華美でなければ自宅や車・財産も残していいよ」という、経営者の算入・撤退リスクを極力少なくするガイドラインをつくりました。
また、ガイドラインでは、経営者本人も含めた、人的保証に頼らない融資の促進を強調しています。
このガイドラインでは、“経営者保証に依存しない融資の一層の促進”のために、
- ●法人と経営者との関係の明確な区分・分離
- ●財務基盤の強化
- ●財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
など、クリーンな経営の必要性を強調するとともに、できるだけ経営者自身が会社の保証人になるのはなくしていきましょうね、という方向性をも示しています。
また、「このガイドラインによる債務整理を行った保証人について、対象債権者は、当該保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報(代位弁済に関する情報を含む。)を、信用情報登録機関に報告、登録しないこととする。」とされており、これは重要な一文と言えます。
今までは会社が破産すると経営者も一緒に破産、信用情報も悪化し再起が出来なくなるという状況がありました。このような悲劇をできるだけ防ぐ意図も、経営者保証に関するガイドラインには含まれていると言えます。
このため、起業して経営が行き詰まってしまったとしても、
- ●会社と個人の財産を分離し
- ●税理士などの経営者保証ガイドラインに詳しい専門家に依頼
- ●きちんと債権者に説明責任をはたす
など、ガイドラインにそって処理を行えば、ある程度の資産を残し、信用情報への記載もされないなど、十分な再起の道が残せる可能性があるわけです。
また、日本政策金融公庫・金融機関なども人的担保(つまり連帯保証人)に頼らない形の融資を拡充する方向に進んでいます。場合によっては代表取締役の連帯保証なし、もしくは後から代表取締役の連帯保証を外すことができるというケースも出てきています。
このように、会社と個人を完全に別個のものとして扱えるという点において、融資や企業再生・破綻処理でも、法人を作り、そちらに事業を移すことで、万一の際の個人のダメージを最小限に抑える制度が整備されてきています。
このように、いざという局面においても、法人成りというのは大きなプラスになるケースがあります。
⑩赤字の繰越は法人10年、個人事業3年(青色申告の場合。)
法人は赤字の繰越できる期間が長いのもメリットです。青色申告を行い、(当然ですが)確定申告を行うことで、資本金1億円以下の中小企業であれば、赤字を10年繰り越しできます。(とはいえ、10年も赤字が続くと、そもそも経営としてどうかという問題はありますが・・。)
いずれにせよ、赤字の繰越期間が長いのはメリットです。
1-3 法人成りするデメリット
ここまで、法人成りのメリットを説明してきましたが、もちろん法人成りのデメリットもあります。
法人成りのデメリットについて説明します。
①赤字でも税金がかかる
個人事業の場合、赤字だと所得税や事業税などかからない税金が大きくなりますが、法人の場合は赤字でも、法人事業税が最低7万かかります。また、社会保険関係の費用もかかりますし、人を雇っている場合は雇用保険の費用、年齢によっては介護保険の費用などもかかります。
②個人での決算が難しく、税理士に依頼することが必要になる
個人事業の場合は、自分だけで記帳・経理を行っていた人も少なくないかもしれません。しかし法人化すると、法人の決算書や財務諸表は複雑であるため、個人で税務・財務・決算の処理を行うのは大変です。それゆえに、記帳・決算なども含め税理士に依頼することがほぼ必須となります。
税理士報酬についても、経費になるとはいえ、毎月の顧問料、決算費用で数十万はかかることを心得ておいた方がいいでしょう。
③個人事業より税務調査の対象になりやすくなる傾向がある
法人化すると、税務調査の対象になりやすくなるという都市伝説があります。その都市伝説は、あながちウソではありません。
国税庁が出している資料で、「実調率の推移」という資料があります。実調率というのは、申告対象法人・申告対象者の中で、いわゆる税務調査の対象になった割合がどれくらいかという資料です。
これを見ると、平成元年には法人の8.5%、個人の2.3%が調査対象であったにもかかわらず、平成27年には、法人は3.1%、個人は1.1%まで実調率が低下しています。
近年の傾向で行くと、1年で法人は100社のうち約3社、個人(個人事業主)は100人のうち1人に税務調査が入るという計算です。
実調率が低下したとはいえ、やはり法人の方が3倍近く、税務調査の対象になる可能性があるということですので、きちんと税理士に依頼し、会計周りはできるだけ初期から適正に行うことが大切といえます。
④会社をたたむのにもお金がかかる
会社をやめて個人事業に戻る、廃業するという場合もお金がかかります。
まず、法律で解散の登記・清算結了の登記を行うことが義務づけられており、また廃業することを官報で公告することも要されます。
解散登記の費用で3万円、清算人の専任登記費用で9千円、清算結了の登記費用で2千円、官報公告の費用で3万3千円近くかかり、実費部分だけで7万4千円、さらに司法書士への専門家報酬も加えると十数万から20万はかかると考えておいた方が良いでしょう。
他にも、設備や在庫の処分、店舗・事務所・工場が賃貸借物件である場合は、原状回復費用もかかります。特に製造業・店舗事業・物販事業はここの負担が大きいと言えます。
このため、廃業に関する費用は事業形態にもよりますが、数十万から数百万、ときに1千万円を超えるケースも想定しうるでしょう。
近年は会社のM&Aも普及していますので、会社を譲渡することができれば、廃業にかかる費用は払わなくてすみますが、経営状態が厳しい会社に買い手がいるのか、という問題はあります。
⑤社会保険の加入義務がある
個人事業主の場合1人の場合ですと、国民年金保険料の支払いと国民健康保険の支払いで済みます。ただ、個人事業主であっても、5人以上を雇用する場合は、「強制適用事業所」として、多くの業種で業種厚生年金・健康保険の加入の義務が生じます。
これが法人化をすると、1人会社であっても、厚生年金・健康保険(協会けんぽ)への加入義務が生じます。
厚生年金は、給与のうち18.3%を保険料とし、企業と従業員(役員)が半分ずつ支払う形となるわけですが、1人会社の場合は実質全額自己(自社)負担という形となります。
また、健康保険も法人であれば、人数を問わず加入する義務が生じます。このように、社会保険関係の会社負担は大きいのです。
また、人を雇っている場合は、労災保険・雇用保険に加入する義務も生じます。
とはいえ、厚生年金は老後に年金としてもらえるお金の積み増しにはなりますし(どこまで頼りにできるかは不透明ですが)、他の社会保険もいざというときに従業員のために役立ってくれますので、完全な払い損ではないということは言えます。
⑥帝国データバンク・東京商工リサーチなど調査会社から調査が来る可能性がある
まず、この点については、対応によってメリットにもデメリットにもなり得るという前提を置きます。
法人化すると、帝国データバンク・東京商工リサーチなどの信用調査会社から調査を受ける可能性が出てきます。
その際に、企業の情報や個人のことを根掘り葉掘り聞かれるため、人によっては痛くもない腹を探られているようで嫌かもしれません。
実務で忙しい中、調査対応に時間を割くことも、大きなフラストレーションとなるでしょう。
しかし、ある程度の規模の会社になれば、帝国データバンク・東京商工リサーチなどの調査会社の調査は来ますし、調査会社が来て、きちんとデータがある、運営実績があるということで、プラスに見られる可能性もあります。
帝国データバンクのホームページには、信用調査に関するインタビュー記事があります
“帝国データバンクさんの調査を受けたのは、5年くらい前でした。「なんで調査を受けないといけないの?」と思う反面、「とにかく会わないといけないのではないか」とも思ったのを覚えています。それでもやはり、気持ちが良いものではありませんでした。初対面の人に「家のローンはいくらですか?」、「貯金はどれくらい?」、「給料はいくら?」と訊かれて気持ちが良くなる人は、なかなかいないですよね。”
“私が調査を受けたのは、新規取引先に指摘されたことがきっかけです。当時は、長い期間をかけた泥臭く地道な営業活動をおこなっていました。さまざまな方とお会いして、ようやく当社の強みを生かせる部門までたどり着き、やっと商談まで進めることに。しかし、いざ新規取引のチャンスという局面で、「御社の情報は、きちんと帝国データバンクさんに登録されていないね」と先方から言われてしまったのです。これは、企業としての信用に関わるのだと思い、調査を受けることにしました。”
“調査を受けて感じたのは、知ってもらうことの大切さです。取引銀行の担当者はよく交代するのですが、そのたびに財務内容の説明を求められます。また、先ほどの話のように、新たな取引先を増やすような局面では、自社の財務内容を説明するのに大きな労力がかかります。この点、帝国データバンクさんに話しておけば、自社のことが先方の目に触れる状態になっているため、あらかじめ理解してもらえるのです。これは、大きな負担軽減につながります。”
このように、調査自体に関しては、不快感を覚える人も少なくないでしょう。
また、調査会社のサービスをセールスされることも考えられる(もちろん、強制ではないですが、提案を受ける可能性はあります)ので、諸手を挙げて歓迎できるものではない反面、誠実に自社の状況を開示することで、金融機関や第三者にも情報が入りやすくなるなど、プラスに働いてくれる面もあります。(もちろん、自社にとって好ましい情報が登録されていることが前提ですが・・・)
また、帝国データバンク・東京商工リサーチなど調査会社は、経営の良い事例だけでなく、倒産など負の事例にいたるケーススタディも多く蓄積しています。
このような信用調査会社の知見を活用することで、結果として経営の健全化・強みの発見などプラスの方向に向けることもできます。
「信用調査」というと、面接や商談、銀行の融資審査のように身構えてしまいますが、むしろこちらが胸襟を開き、「うちにも調査会社がくる規模になった」、「調査会社を活用しよう」という形でプラスに考えるのがより望ましいと言えます。
ちなみに、帝国データバンクがサンプルとして出している調査例を見ると、驚くほど多くの事項を調べ上げています
- ●創業者・経営者の生年月日・現住所・経歴・趣味・業界経験・自宅所有の有無・人物像など
- ●法人が有する不動産
- ●関係事業や公職の有無
- ●売上高・経常利益・当期純利益のグラフ
- ●貸借対照表の中での自己資本比率割合
- ●取引銀行
- ●創業(個人事業も含め)・設立(法人化)した年月
- ●従業員数
- ●仕入れ先・得意先・系列
- ●事業構成
- ●業歴・資本構成・損益・資金の現況・経営者の査定・企業活力など、信用程度が点数化される、さながら法人版リアル格付けチェック。A~Eまで存在し、51点以上のC評価を超えると、銀行が営業にやってくるという噂も。ちなみに、帝国データバンクのFAQでは40点台の企業が最も多いとのこと
- ●代表者の最終学歴(大学・学部・卒業年度)
- ●許認可・債権譲渡登記や質権設定の有無
- ●資本金の推移
- ●資本構成
- ●会社の機関設計(取締役会設置会社・監査役会設置会社か)
- ●役員の氏名・業務・代表取締役との関係や他社の取締役であるか
- ●後継者の有無
- ●輸出の有無
- ●得意先概数
- ●回収方法(現金・手形・ファクタリング利用の有無)
- ●借り入れ状況
- ●主力行の変更
- ●事業内容・特色・業績
他にもここに書き切れないくらい、様々なことを調べ上げています。
帝国データバンク・東京商工リサーチは、企業の倒産、長きにわたり反映している企業を分析した書籍など、莫大な企業データを持っているからこそわかる、経営のOK・NGに関する書籍を多く出しています。
なお、経営を考える上では、同じ轍を踏まないためにも倒産事例、参考にするために反映企業の事例をまとめた、帝国データバンク・東京商工リサーチなどが関与した書籍に目を通すこともヒントになるかと思います。
帝国データバンク情報部が記した、「倒産の前兆 30社の悲劇に学ぶ失敗の法則」には、このような一節があります。
「100年以上、企業倒産の現場を分析し続けて、わかったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある、ということだ。」
このような経営の「べからず」を予め学んでおくことも、大切ではないでしょうか。
1-4 法人成りする最適なタイミングは?
ここまで、法人成りのメリット・デメリットを挙げてきました。
法人化にはいい点、注意点があれど、やはりある程度の事業規模になれば、法人化を視野に入れるのが自然な流れかと言えます。
それでは、いつが法人成りの最適なタイミングなのでしょうか?
売上高・課税所得・利益・外部環境・時期という5つの観点で見ていきましょう。
①売上高
タイトルにも挙げた、売上高1,000万円は法人化を考える上で大きなポイントと言えます。なぜなら、消費税の存在が大きいからです。
法人・個人事業どちらの状態であっても、年間の売上が1,000万円を超えるということは、必然的に消費税の課税事業者になるということです。そして、翌々年には消費税の納付義務が生じてきます。
消費税の納付義務・納付額は、法人・個人事業とも変わりはありません。
しかし法人化すると、少なくとも翌年度、場合によっては翌々年度も、2期前の売上高が存在しないため、1年から2年間、消費税が免税の扱とになるケースが想定されます。(2期目については例外もあります)
消費税の納税対象になると、1年で少なくとも40万~50万以上、もしくはそれ以上の負担になることが想定されます。
これを1期から2期分免税されることで、80万~100万、もしくはそれ以上の負担減が想定されます。
法人設立には30~40万円前後かかりますが、税負担の軽減を考えるとむしろ法人設立費用を支払ってもおつりが来るくらいですので、消費税の課税を免除されることがいかに大きいかがおわかりいただけるかと思います。
②課税所得
課税所得が800万円~850万円を超えたときも、法人化を検討する時期といえるでしょう。
前に貼った所得税の速算表をもう一度確認してみましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
課税所得が900万を超えると、一気に税率が10%(厳密に言うと、控除額もありますので、そのまま10%上がるわけではないのですが)上がり、連動して他の税金(住民税など地方税)、社会保険料も上昇します。
そのため、法人化することで、「法人」というもう一つのポケットを持ち、お金の入り口を分散、個人の課税所得を抑えることで、課税される所得金額を抑えることができます。
③利益
利益も法人化を考える上で重要なポイントです。
一般論としては、利益が500万~600万円に達したら法人化を検討することが各所で推奨されています。
法人の場合、個人事業より節税の幅が大きく、早いうちであれば様々な節税対策が取りやすいという点も言えます。
もちろん、無理に経費や節税ばかりに走って、利益を圧縮することは、銀行融資などの点ではお勧めできませんが、(赤字やギリギリ黒字の会社には、金融機関は融資を出したがらない)無理のない範囲での節税は早いうちに取り組む方が効果的です。
④外部環境
現代では少ないケースかもしれませんが、クライアントから、「法人でないと取引できないから、法人化して欲しい」と要求される、もしくは「法人以外とは取引できない」と言われるケースがまれにあります。
特に伝統的な大企業などにあるケースですが、この場合は迷わずに法人化するのみでしょう。
また、法人成りすることで、取引先のレベルそのものが変わることも考えられます。
⑤時期
法人化を考える上では、時期を考えることも大切です。
法人化の作業は、費用負担だけでなく様々な手続きや、事業によっては許認可の個人から法人への移行手続きなど多くの手間をとられることになります。
当然、多くのことは専門家に任せることはできます。しかし、会社の基本方針の策定・資本金の振り込みの関係者への手配、印鑑証明書の取得など、経営者本人でないとできない部分もある程度は生じてしまいます。
特に、印鑑証明書の取得は、平日に市区町村役場へ行く必要があるため、ここが意外と負担となるケースがあります。
そのことを考えると、事業の繁忙期は避けることは大切です。事業が伸びる見込みが出て、近いうちに繁忙期に入りそうという目算が立てば、早めに会社設立を行うということも一つの考えです。
このように、会社設立の時期についていろいろと触れてきましたが、会社設立専門業者や税理士など、専門家にしっかり相談することは不可欠です。そして、
- ●法人設立による今の事業でのメリット・課題を把握
- ●法人設立の適切なタイミングを協議
- ●法人設立のメリットを十分に享受できる制度活用、助成金・補助金の制度など
以上の点を明確にし、法人設立を大きなプラスにできるよう、専門家の力を借りることが重要と言えます。
1-5 法人設立についておさらい
それでは、法人設立の手続きにかかる時間やタイミングを考える上でも、改めて法人設立の流れについておさらいしてみましょう。
①会社の形態を決める
会社の形態としては、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類がありますが、法人成りを考えるくらい利益が出ている状況であれば、株式会社一択といえます。
合同会社のメリットは、設立が安くて早い、決算公告の必要がない、役員の2年から10年での変更登記が不要という点などありますが、既に個人事業が回っている人に取っては、さほどメリットと言える点はありませんし、合同会社のマイナーさに伴うデメリット、融資の受けにくさや会社の拡張性・信頼性など、株式会社に比べ不利な点が多いです。
また、株式会社の場合、代表者の肩書きは「代表取締役」となりますが、合同会社の場合は「代表社員」となり、取引の相手方や第三者に、「合同会社・・?代表社員・・?」という余計な疑問を与える印象になってしまうこともあります。
なお、合資会社・合名会社は、合資会社は2名以上の社員が必要かつ、1人は無限責任社員(出資額にかかわらず、全ての債務について弁済責任を負う)である必要があり、合名会社は1名で設立できるものの、こちらも代表者は無限責任社員となるため、よほどのことがない限りおすすめしにくいです。
ちなみに、株式会社・合同会社の場合は、あくまで出資の範囲で責任を負うのであり、出資金額以上の責任を負うことはありません。(ただし、経営者が会社の借り入れに対し、連帯保証している場合は別です。)
このような点を考えると、株式会社が一番よいということがおわかりいただけるかと思います。
②事業の許認可について、法人成りの場合はどうなるのかを早めにリサーチする
事業の許認可を個人で有している場合は、法人成りの検討段階からの事前リサーチ・管轄への確認が必要です。
これがそのまま法人に引き継げるか、法人成りに伴う手続きや許認可の条件変更があるか、あるいはレアケースですが、様々な事情で個人から法人に移行ができないものではないかということの確認は不可欠と言えましょう。
ケースとして現代ではあまりないかもしれませんが、個人で取得した許認可を法人に移行できない場合は、個人事業のままで行うしかありません。
また、法人成りで再度許認可取得の手続きを要する場合も、本業に支障がないよう、準備をすることが求められます。
もちろん、簡易な手続きで個人の許認可を法人に移行できるケースも多いとは思われますが、いずれにせよ許認可が絡む業種で個人事業を行っている場合は、許認可がスムースに法人に引き継げて、その間の業務に支障がないかを調べることは重要です。
③会社設立の手続きに入る
会社設立は、年末年始や連休を挟むなど特殊事情を除くと、概ね2ヶ月の期間がかかります。(書類のやりとりがスムースに行けば、短縮される場合もあります)
この2ヶ月で行うことは、
会社の基本事項・社名・所在地などの決定・発起人会議事録作成・類似商号の調査
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会社の印鑑の作成
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基本事項を元にした定款の作成・事業目的の決定・決算公告の方法決定など
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定款に専門家の電子署名付加(ただWordファイルで作っただけでは電子定款と見なされない)
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公証人役場での定款認証
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出資金の払い込み(出資者が代表者の通帳に資本金を振り込む)
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法務局に設立登記の申請・登録免許税を印紙で納付
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法人の全部事項証明書・印鑑カードの取得
以上の手続きを経て、会社が設立されたことになります。
文字にするとこれだけですが、実際に行うと、定款に役員全員の実印と印鑑証明をもらい、公証役場・法務局など方々回って・・・、とかなりの負担になりますので、会社設立専門業者に一任することが確実と言えます。
さらに、会社設立後も行うことは多くあります。
④会社設立後の手続き
会社の全部事項証明書と印鑑を用いて、法人口座の開設
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必要があれば、日本政策金融庫や銀行に融資申請を行う
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会社設立専門業者や税理士・社会保険労務士のバックアップがある場合は、会社の創業期に申請・取得できる助成金・補助金の申請
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税務署・都道府県税事務所・市町村に法人設立届け書など税務関係の書類を提出
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年金事務所・労働基準監督署・ハローワークなどに社会保険労務関係の書類を提出・必要に応じ労働協約・労使協定・36協定書など各種労働関係の書類作成
以上がごく大まかにまとめた会社設立の流れです。
こちらに関しても、特に労働関係の書類作成は、後の労務トラブルを防ぐためにも、社会保険労務士にきっちり作り込んでもらうことが大切といえます。
このように、設立後の手続きでも、10日(1人会社で融資が不要な場合)から1ヶ月以上(人を雇用している・融資を受けるなどの場合)の期間は見ておく必要があります。
そのため、会社設立全体では、バッファも含め全体で3ヶ月は動くことになると考えておくのが望ましいでしょう。
もちろん、業務が手薄になることを防いだり、税務・労務・許認可関係の落ちを防ぐためにも、できるだけ手続きは会社設立専門業者や税理士・社会保険労務士・司法書士・行政書士などの専門家に依頼することを強くお勧めします。
2 会社設立や独立開業は反対される可能性が高い
働き方改革などに影響されて、会社設立して経営者になったり、独立開業して個人事業主になるサラリーマンは近年増えつつあります。今後は老後の生活に備える目的や自己実現の目的で、さらに起業を志す社会人は増えると考えられます。自分のやりたい仕事を行えたり、うまくいけばサラリーマン時代と比べて圧倒的に収入を増やせるものの、家族がいる方は反対される可能性もあるでしょう。そこで会社設立や独立開業する際に、家族を説得する方法をご紹介します。
2-1 経営者や個人事業主はサラリーマンと比べて不安定
会社設立や独立開業を反対される最大の理由は、経営者や個人事業主がサラリーマンと比べて不安定であることです。
会社に勤めているサラリーマンは、仕事の成果とは関係なくあらかじめ決まった給与額を毎月受け取ることができるため非常に安定しています。しかし一方で、経営者や個人事業主は仕事をして結果を出せた分だけ稼げる仕組みであるため、仕事で結果を出せなければ給与がゼロとなる可能性があり、非常に不安定です。
親や配偶者自身が経営者や個人事業主を経験したことがあれば、独立開業や会社設立に対して一定の理解を得られる可能性があります。しかしサラリーマンしか経験したことがない場合、「経営者=不安定」というイメージを持っていて、ハイリスクな独立開業や会社設立を理解しないケースがほとんどです。
今まで安定していた生活を捨てて、不安定な道を歩むことを理解してもらうのは、相手がサラリーマンしか経験していないならば仕方ないことなのです。
2-2 子供がいるとより一層反対される可能性が高くなる
ただでさえ不安定なことを理由に反対されがちな会社設立や独立開業ですが、ご自身の家庭にお子様がいるとより一層反対される可能性が高くなります。
子供を育てるには、幼稚園の月謝や小学校の給食費といった最低限の費用はもちろん、塾や予備校、習い事などの教育面で多額のお金が必要です。とくに大学まで行くとなると、より一層お金がかかります。通う学校が私立か国公立かによって異なるものの、子供一人を育てるのに1,000万円〜2,000万円はかかると言われています。子供一人育てるのにかなりの大金がかかるため、多くの親は安定的な仕事を続けて子育て資金を作ります。
ところが不安定な会社経営や個人事業を始めてしまうと、子育てに必要なお金を確保できなくなる可能性があります。子育ての資金を十分確保できなければ、子供の持つさまざまな可能性を潰してしまうことになりかねません。場合によっては、就職の際に不利益を被るかもしれません。
子供の可能性を潰したくないために、配偶者の会社設立や独立開業には断固反対するという方は多いのです。理由が理由であるだけに、こうしたケースでは慎重に起業を検討しなくてはいけません。
2-3 会社設立や独立開業を契機に離婚につながるリスクも
以上の理由より、会社設立や独立開業は反対されてしまうことがほとんどです。反対されてでも起業を強行しようとしたり、起業後に生活が不安定になると、最悪の場合離婚の危機に陥る可能性もあります。
仮に起業が上手くいかずに離婚してしまうと、配偶者や子供と過ごしてきた平穏な日々を一生失ってしまいます。それだけでなく、安定的に得られていた収入も不安定となり生活も苦しくなります。もはや手元には何も残っていない状態となるのです。
会社設立や独立開業をしなければ、これまで通りの安定で平穏な生活を続けることができます。しかし、自己実現や大きな成功を夢見て安易に開業や会社設立を行うと、全てを失うリスクがあるのです。
3 会社設立や独立開業するときに家族を説得する方法7選
反対されることの多い会社設立や独立開業ですが、本気でやりたいならば家族を説得するしか道はありません。とはいえ、ただ単にこちら側の要望を伝えるだけでは説得できるものもできなくなります。
この章では、会社設立や独立開業を行うことについて家族を説得する方法を7つご紹介します。家族を説得して起業したい方は必見です。
3-1 あらかじめ会社設立や独立開業するつもりであることを伝える
まず一つ目の説得する方法は、ある日突然会社設立や独立開業することを伝えるのではなく、かなり前から起業する意思があることを伝えておくことです。
ある日いきなり起業したいことを伝えられると、気持ちの整理もついていない上に、理由や事業プランなども知らないため、不安ばかりが募って結果反対することになります。一方であらかじめ起業したいことを伝えておけば、相手は気持ちの面で準備しておけます。また、やりたい事業内容などを詳しく伝えておけば、相手にとっては今後の見通しがつくため、反対される可能性を減らすことができます。
少しでも起業するときに反対される可能性を減らすには、前もって具体的に起業のプランを伝えておくことはもちろん、複数回根気強く伝えておくことが大切です。
3-2 今の仕事を辞めずに独立開業する
そもそも会社設立や独立開業が反対される理由は、収入が不安定となって生活に支障をきたす可能性があるからです。それならば、今やっているサラリーマンの仕事を辞めずに、独立開業するなり会社設立すれば良いのです。サラリーマンを続けながら起業すれば、サラリーマンで安定的に収入を得つつビジネスにチャレンジできるため、反対される可能性がグッと小さくなります。
「サラリーマンをやりながら独立開業なんて無理なのでは?」と思うかもしれませんが、ビジネスモデル次第では並立できます。たとえばせどりやブログであれば、仕事終わりの少ない時間で行えるため、数年かければ十分な収益を得られるようになります。実際にせどりやブログで稼いでいるサラリーマンは少なくありません。
ただしサラリーマンを続けたまま独立開業するには、いくつか注意点があります。まず当たり前ですが、ご自身の自由時間が減る点です。自身の趣味や休息に使える時間はもちろん、家族サービスできる時間も減るため、下手すると家族との関係が悪化する恐れもあります。
また、会社によっては副業を禁止しているところもあります。企業から見ると、サラリーマンを続けたまま他のビジネスを行なっていることは「副業」に他なりません。そのため、副業が万が一バレてしまうと会社内に居づらくなったり、トラブルに発展するリスクもあります。
3-3 内緒で副業として起業し、実績を作っておく
家族公認でサラリーマンを続けながら独立開業するのも良いですが、内緒で副業してしまい、実績が出てから本格的に会社設立するのも一つの選択肢です。
人によっては、本業に集中できないからなどの理由で、サラリーマンを続けながら独立開業することにも反対する可能性があります。そのため、いっそのこと独立開業することを内緒にしたまま副業をはじめて、ある程度実績が出た段階で家族に伝えるのもアリでしょう。
実績を出してからサラリーマンを辞めて本格的に起業することを伝えれば、従来と変わらないかそれ以上の収入を得られる可能性が高いため、家族から反対される可能性も低くなります。
ただしこちらも、企業の副業禁止規定に注意する必要がある上に、ご自身の時間が少なくなる点は変わりありません。そもそも家族と接する時間が減るため、副業を家族に隠しきれない可能性も十分あります。
3-4 信頼できる客観的なデータを示す
独立開業や会社設立について家族を説得する4つ目の方法は、信頼できる客観的なデータを示す方法です。
反対する主な理由は、事業が失敗して借金したり、収入が不安定になるリスクです。そこで、具体的な事業プランを提示することで、失敗する可能性が低いことを理解してもらえば良いのです。
ただし重要なのは、主観的なデータではなく客観的なデータを示すことです。合理的な理由もなく「90%成功する」みたいなデータを見せても説得できません。「この仕事をこのくらいすれば、このくらいの顧客を獲得できる」といった客観的なデータを示さなくてはいけません。
合理的な理由を見せてもらえば、家族も安心して起業を認めてくれる可能性が高いです。ただし中には、「起業=必ず失敗する」と決めつける方もいるため、100%説得できるとは限らないので注意が必要です。
3-5 「〇年以内に結果が出なかったら諦める」ことを約束する
あらかじめ挑戦の期間を決めておくのも、家族を説得する上で有効な方法です。たとえば「3年以内にサラリーマン時代と同じかそれ以上の収入を稼げるようにならなかったら、ビジネスを諦めて新しい就職先を探す」と伝えれば、家族に安心してもらえる可能性が高くなります。もしくは、貯金を使い果たす前にビジネスへのチャレンジを諦めると伝えるのも一つの戦略として有効です。
いつまで不安定な生活が続くか分からないとなると、起業を支える家族としては不安なものです。そこであらかじめチャレンジ期間を伝えておけば、「数年は我慢してやりたいことをやらせてみよう」と思ってもらえるかもしれません。
3-6 リスクの小さいビジネスで独立開業する
一口に独立開業や会社設立といっても、ビジネスの種類によって背負うリスクは大きく異なります。たとえば飲食店や不動産経営は、初期費用や運転資金が多額になるため非常にハイリスクです。一方でブログやコンサルティング業の場合は、初期費用や運転資金がほとんどかからないため、相対的にリスクは小さくなります。
リスクをあまり背負わないビジネスで独立開業すると伝えれば、家族を説得できる可能性が高くなります。ただしサラリーマン時代と比べるとほぼ確実にリスクは高いので、反対される場合もあります。
3-7 本気度をアピールする
どれほど合理的な理由を伝えたり、リスクの小ささを伝えても、将来の不安から反対される可能性は十分あります。それでも会社設立したり、独立開業したいならば、最後は本気度をアピールして家族を説得する必要があります。
これは営業や商談でも同じですが、熱意を持って本気さを伝えれば、絶対に説得できない相手でも説得できることは意外とあります。一度反対されたからといって諦めずに、何回も根気強く説得し続ければ、いずれ家族が折れてくれるかもしれません。
以上、さまざまな方法をご紹介しましたが、要約すると「リスクの低さ」と「熱意」をアピールするのが家族を説得する上では効果的です。
そもそも家族が会社設立や独立開業に反対する最大の理由は、今後の生活が不安定になることを恐れているからです。つまり裏を返せば、副業として始めたりリスクの小さいビジネスを行うなりして、生活が不安定にならない保証をしてあげれば良いのです。それでも説得仕切れなかったら、最後は本気さを根気強くアピールするしかありません。
ただしご自身の熱意ばかり押し付けると、冒頭でお伝えした通り離婚などのリスクもあります。ご自身の考え方と家族のこと、両方をバランスよく考えた上で説得することが重要です。
4 まとめ
以上、法人成りの基準、法人成りのメリット・デメリット、法人成りの手続きや家族を説得する方法についてまとめてきました。
法人成りというのは、既に個人事業で安定した実績を出しているという証拠ですので、通常の0からの起業よりも大きなアドバンテージがあると言えます。
また、法人成りをすることで、自分自身が個人事業の代表から会社の経営者という立場にかわり、必然的に経営者としての自覚を持つようになります。
法人成りというのは、節税や社会的信用性の面も大きいのですが、本人の「職人・特定分野のプロフェッショナル」から「経営者」へのマインドチェンジという面がさらに強いとも言えます。この気持ちの変化というのは、金銭に変えられない価値があると言えます。
法人成りというのは、全体で3ヶ月近くを費やす可能性もあり、諸手続で数十万の費用を要する大きな手続きでもあります。
しかし、会社が成長していけば、その時間と数十万は投資であり、事業の幅を広めるための心強いパスポートを得る手段でもあります。
それほど、個人事業主と法人の代表取締役では、自分自身の考え方も、社会の見方も大きく変わっていく可能性を秘めていると言えましょう。
どうしても法人成りというと、節税とか、いくら稼いだら法人化かなど、現実的な観点で見てしまいます。
もちろん、そういう現実的な観点や節税・対外的な見え方も大切ですが、法人成りすることによる、自分自身にとっての副次的効果にも目を向け、法人という仕組みを積極的に活用して欲しいと思います。
ぜひ、法人成りを飛躍のチャンスとして活かせるよう、意識してみて下さい。