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経営者に今すぐおすすめしたい!中小企業の13の節税対策〜不動産投資を使った節税方法も詳細解説〜

事業が安定的に利益を上げられるようになれば、税金の負担を大きく感じるようになります。税金は当然に納めるべきもので、避けられませんが、工夫次第で税金を減らす、つまり「節税」することは可能です。節税すれば、手元にキャッシュを多く残すことができるため、経営の安定化につながります。

節税の方法は知っているか、知らないかで差がつきます。その意味では、知らなければ単純に損をしてしまうわけです。そこで、本稿では、中小企業経営者を対象に、実行可能な節税対策について、具体的な方法を説明します。

しかし、節税には例え合法であっても、効果の高いものもあれば、あまり意味のないものもある点に注意が必要です。節税に慣れてくると、手当たり次第に実践していきたくなるものですが、意味のないものを実行することで、最悪の場合、将来の会社経営にマイナスの影響を及ぼす危険性もあります。

今回は中小企業経営者が知っておきたい節税対策についてまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも税金の仕組みとは?

経営者ならば、経営の安定を目指しつつ、税金をできる限り安く抑えたいと思うことでしょう。もちろん必要な資金を確保するためには当然のことですが、税金を正しく納めるということは、経営者にとっても非常に重要です。

本稿は、節税のためのノウハウを解説するものですが、税金を「取られるもの」ととらえていては、道を誤ってしまいます。最悪の場合、厳しい罰則によって結局会社が倒産してしまう事例もありますが、それは税金に対する理解不足が原因となることもあるでしょう。

そこでまずは、そもそも税金とは何なのか、なぜ税金を納めなければならないのかといった基本的事項について、理解しておくことが必要です。

会社にとっての税金とは?

税金とは、国や地方自治体が、公共の福祉を向上させるための様々な政策を実施するための財源とするものです。国や地方自治体は、これを徴税権という強力な権限を行使して、課税し、徴収します。

つまり、個人であれ法人であれ、社会の中で生きている以上は、様々な公共サービスの恩恵を受けて経済活動を行っています。「蛇口を捻れば水が出る」「道路が整備されていることによってトラックを走らせて商品の運搬ができる」「法律制度があることで安心して取引ができる」などは税金によって成り立っています。

このように、民間企業では採算が取れないような、社会基盤を作り、支えていくために税金が絶対に必要なのです。税金は取られるものではなく、これらの仕事をみんなに代わって確実に実行してもらうために「納める」わけです。

そこで、税金が何に対して、どのようにして課税されるのかは全て法令によって定められています。これは公平な課税を実現するためです。

その中でも、法人である会社に対して課せられる税金は、法人税、法人事業税、法人住民税、固定資産税、消費税などです。

法人税とは、法人の所得、すなわち「もうけ」に対して課税されるものです。資本金1億円以下の中小企業の場合、課税所得が800万円以下の部分は15%、800万円以上の部分は23.2%となります。

つまり、もうけが大きい会社ほど多くの税金を納めるということになっています。これは能力に応じて負担をするべき、という考え方にもとづいています。

法人税は国に納めるべき国税であるのに対して、法人事業税、法人住民税は地方自治体に納める地方税です。法人事業税は所得に対して課税されます。法人住民税は、所得に関係なく課税される「均等割」、法人税額と連動する「法人割」、利子等に課税される「利子割」の合計です。

以上の3種類の税金は、規模にかかわらず全ての会社に課せられる税金です。その他、固定資産を保有している場合には固定資産税が課され、また、一定規模以上の売上高があれば消費税を納付する必要があります。

この他にも様々な種類の税金がありますが、会社にとって最も大きな負担となるのが法人税です。また、法人税の額は法人住民税と連動しますし、法人事業税額にも影響を及ぼします。

そこで、われわれが「節税」を考える際には、やはりこの法人税を中心に検討していく必要があります。

ただし、注意しておかなければならないのが、中小企業の場合は、経営者が唯一のオーナー(株主)であるケースが多くあります。この場合は、経営者個人にかかる税金のことも考慮する必要があります。

このような場合、経営者は個人の財布と会社の会計をあまり区別せずにとらえがちですが、法人と個人では、適用される税法が異なりますから、これを見誤ると、合計では同じ所得なのに、結果的に高い税金を納めなくてはならなくなるケースもあるからです。

この点については後述します。

節税とは?

さて、前節において、納税がいかに重要かという点について説明しました。しかしながら、ここで検討するのは節税、つまりいかに税金を安く抑えるか、という話題です。

一見矛盾したことを言っているように感じられるかも知れませんが、実はそうではありません。ここでは、節税とは一体何なのか、について整理します。

法人税額は会社の「もうけ」、つまり利益の額を基準とします。決算書における利益の額から、法人税法上の調整を加味することによって税法上の「もうけ」である課税所得を計算します。

ですから、中小企業でもスタートアップ段階など、利益が出ていない段階ではあまり気にすることはありません。経営が順調に拡大し、安定的に利益を獲得できるようになってから検討を始めることになるでしょう。

節税とは、簡単に言えば、合法的に利益を圧縮するということです。つまり、ここで注意しておかなければならないのは、「節税」と「脱税」は違うということです。「節税」とは、あくまで法令が認める範囲で、解釈によって幅が生じる課税所得の中で、できる限り安い金額になるように工夫することです。

それに対して「脱税」は、法令に反して不当に課税逃れを行うことですから、れっきとした犯罪です。「節税」は積極的に行うべきですが、「脱税」は絶対にしてはならないことです。

利益は収益(益金)から費用(損金)を控除して求められます。ですから、利益を圧縮するということは、収益を減らすか費用を増やすしかありません。

収益を減らす節税は、方法がかなり限られており、要件も厳しいことから、基本的には費用を増やす方向で検討することになります。

しかしながら、売上原価など大部分の費用は経営上の必要性から確定していきます。その意味で工夫の余地はさほどありません。

そこで、現実としては、決算が近づいた段階で予測利益を計算して、利益が出そうな場合に追加的に計上できる費用が無いかを検討することが、節税実務の姿です。

ですから、追加的に何が計上できるかを知っておくということが重要なのです。知らなければ、費用計上できるものが無いまま、その分課税額が増えてしまうということになります。

また、例外的に「税額控除」という大変強力な節税手法があります。これは、課税所得をコントロールするのではなく、利益計算とは別に、最終的に計算された納税額から、一定額を直接差し引くことができるというものです。課税所得のコントロールに比べて効果は絶大ですから、適用できるものがあれば積極的に実施していくべきです。

本稿では、次節から中小企業経営者にとって使いやすい節税方法を紹介します。その中には、良い節税、つまり節税効果が長期的に続いたり、経営にプラスの効果をもたらしたりするものもあれば、悪い節税、あまり意味がないばかりか、経営にマイナスの影響を及ぼしかねない節税方法もあります。

これら両者の違いをよく対比して考えることで、効果の高い節税を実施するコツが見えてくるでしょう。

効果の高い節税

節税を考えるにあたっては、その効果を考慮する必要があります。つまり、実行することによって節税はできるとしても、その他にどのような影響があるのかを考えなければならない、ということです。

ここでは、効果の高い節税とは、実行することで税金以外に及ぼす影響が無い、あるいは経営にプラスになるものとして整理します。これらは積極的に適用することを検討していくべきものと言えます。

 

役員報酬

中小企業経営者にとって、最も実行しやすい節税対策は役員報酬です。

会社から役員報酬を経営者に支払うことで、会社の利益を減らすことになるので、節税につながります。

しかしながら、役員報酬は経営者の所得になるので、所得税の課税対象になります。どちらにしても課税対象となるのであれば意味が無いように思えますが、実は違います。

法人税と所得税では課税の計算方法が異なります。そのため、会社に課税される法人税と、経営者個人に課税される所得税をトータルで考えた時の、最適解を探していくことになります。

もう少し具体的に見てみましょう。所得税率は、所得の水準に応じて5%から最高45%と幅広く設定されています。これに対して、中小企業の法人税率は、前述のとおり、所得に応じて15%から23.2%となります。

税率の幅が異なるということは、例えば同じ100万円でも法人の所得にするのか、個人の所得にするのかによって、税額が異なることになります。

このため、事前に様々なパターンのシミュレーションを行って、最適解を見つけることが必要です。またそのためには、役員報酬の金額だけを見ても意味がありません。会社や個人の所得が全体でいくらになるのかをある程度固めた上で、役員報酬だけをコントロールするとどうなるのか、を検討する必要があります。

さらに、法人税以外の税金、個人が負担する社会保険料もシミュレーションに含める必要もあるでしょう。

なお、役員報酬を全額経費とするためには、毎月一定額を支給する、という定期同額給与の形式を整えることが最も簡単です。このような要件も考慮して、確実に節税を実行しましょう。

 

未払い費用

当期に発生した費用であるものの、キャッシュの支払いは翌期になるような場合には、これを当期の決算で経費とすることができます。具体的には、給料や保険料、リース料などが挙げられるでしょう。

例えば給料の場合、従業員に対する給与の締め日が月末以外の場合は、締め日以降の未払い給与を費用として計上することができます。

つまり、締めが15日で翌月払いの場合、3月決算であれば3月16日から31日までの労働に対しては、決算日現在ではまだ支払っていません。そこで、この期間の労働に対する対価を、未払い費用として経費計上するということができます。

保険料やリース料なども同様の考え方で経費にすることができます。これも簡単に実行できるものなので、積極的に適用していきましょう。

 

在庫の評価損

在庫を多く保有している場合は、評価損の計上を検討するべきでしょう。

在庫資産は、通常は購入した際に支払った金額で資産計上されています。しかしながら、在庫は、棚ざらしになってしまっているなど、保管状態次第でどんどん劣化していくものです。また、そうでなくとも、型落ちしたり技術環境の変化等によって市場のニーズが更新されたりして、売れにくくなっていくこともあります。また災害が起これば大きく損傷することもあるでしょう。

そのような場合に、在庫資産の評価を見直すことによって、切り下げた額を評価損として計上できます。

ただし、客観的な根拠が無いにもかかわらずむやみにこれを適用すると、認められないこともあります。適正に対応しましょう。

 

不要な固定資産の除却・廃棄

中小企業では、既に使用しなくなっている機械設備などの資産が、そのまま放置されているケースがよくあります。過去の一時期だけ受注が集中したことによって生産設備を導入したものの、既に売れなくなってしまったので使用を中止した、というようなケースです。

このようなケースでは、廃棄するのにも費用がかかるためにそのまま放置している、ということでしょう。

こうした不要な固定資産は、有姿除却の手続きをとることで、除却損を計上することができます。有姿除却とは、物理的には廃棄せずに会計上でのみ使用を中止する、ということです。

有姿除却の手続きによって、実態は何も変わらないにも関わらず、資産の帳簿価格の金額を経費に計上できます。ただし、使用の実態が無い、ということが条件となります。使用の実態があれば認められませんので注意しましょう。

 

中小企業等投資促進税制

中小企業等投資促進税制とは、中小企業が機械等を取得するなどの設備投資を行ったことを条件に、特別償却あるいは税額控除を認める制度です。これは、中小企業における投資活動を促進しようという政策的な目的から設立された制度です。時限的な制度ですから、平成31年3月31日までに機械等を取得している必要があります。

特別償却は、通常の減価償却限度額とは別に、償却可能な限度額が加算されるもので、経費に計上できる金額がそのぶん大きくなります。それに対して税額控除とは、納税額を計算した後に、そこから一定額を控除できるというもので、こちらのほうが、より大きな節税効果を期待できます。

中小企業等投資促進税制では、特別償却は中小企業であればどの会社でも適用できますが、税額控除は中小企業の中でも、資本金が3,000万円未満の会社、ということに限定されています。税額控除は効果が非常に大きいので、もし税額控除が適用できるのであれば、そちらを選択したほうが良いでしょう。

適用対象となる資産は、機械装置であれば160万円以上のもの、パソコンやプリンタであれば120万円以上のもの、ソフトウェアであれば70万円以上のものなどです。

特別償却の場合は、取得価額の30%に相当する額を通常の償却額に加算することができます。

税額控除の場合は、取得価額の7%に相当する額を法人税額から控除できます。ただし、当該年度の法人税額の20%が控除上限となり、それを超える額は翌年度に繰り越すこともできます。

特別償却も税額控除も節税効果はかなり大きく、また何よりも、設備投資は将来の成長につながりますので、積極的に行っていくべきでしょう。

 

短期前払費用

契約にもとづき、毎月同じように支払いが発生するようなサービスについて、向こう1年間分を前払いした場合には、まだサービスを受けていない部分、つまり来年の部分も含めて、全額を経費にすることができます。

具体的には例えば、家賃や地代、保険料、リース料やレンタル料などがあります。

これが認められるためにはいくつかの条件があります。形式的な面からは契約そのものが年契約であることと、支払日から1年以内に終期が到来することが求められます。また、実質的な面からは、売上に直接関連する経費でないことと、金額的にあまり重要ではない、つまり多額ではないことが必要です。

このような条件をクリアできるものは積極的に活用すべきですが、注意すべき点として、来年度も同じ取扱いをしなければならないということです。

つまり、利益が出そうな年度だけ前払いして、出なさそうであればしない、ということは認められない、ということです。継続して今後適用できるかどうかを検討しておく必要があるでしょう。

 

小規模企業共済への加入

小規模企業共済とは、経営者の退職金制度とも呼ばれるもので、中小企業の経営者や役員、個人事業主のための積立型の退職金制度です。中小企業の経営者等が廃業や退職に陥った場合に、その事業再建や生活安定のための保障を目的として設立されました。

この小規模企業共済に加入するのは、あくまで経営者個人です。個人が支払う掛け金が、個人にかかる所得税の計算で経費処理できるというものです。ですから、会社の法人税に節税効果を出すためには、その支払いの原資を役員報酬として、経営者に給付すれば良いのです。

このようにして、将来起こりうる万一の事態に備えながら、会社の法人税と個人の所得税をトータルで考えた節税を実行できることになります。

 

中小企業倒産防止共済への加入

中小企業倒産防止共済とは、経営セーフティ共済とも呼ばれるもので、会社が取引先の倒産による経営難に陥ってしまった場合に、必要な事業資金を速やかに借り入れることができるようにする制度です。

取引先が倒産することによって、その会社に売掛金があった会社は、回収の見込みが立ちません。このことで健全であったはずの中小企業まで巻き込まれて倒産してしまうという事態、いわゆる連鎖倒産を防ぐために設立されました。

この中小企業倒産防止共済に加入すると、取引先が倒産した直後に、無担保・無保証人で、当該取引先に対する債権額と、掛け金の10倍の額との少ない方の金額を上限として、借り入れすることができます。

そしてその掛け金は月額5,000円から20万円の間で選ぶことができ、全額を経費とすることができます。そのうえ、12ヶ月以上掛け金を支払っていれば解約時に80%、40ヶ月以上支払っていれば全額が返戻されます。

もしもの事態に備えながら節税効果を得つつ、純粋な掛け捨てではないので、積極的に活用するべきでしょう。

 

社員旅行の実施

社員のレクリエーションを目的とした旅行は、条件を満たせば経費とすることができます。その条件とは具体的には、4泊5日以内の短期旅行であること、全社員の50%以上が参加していること、過度に贅沢な旅行ではないことが求められます。

過度に贅沢ではないとは、おおよそ一人あたり10万円以下というのが一般的な基準です。おそらくほとんどの社員旅行はこの条件を満たすことができるでしょう。また、不参加の従業員に対して代わりに現金を渡すことは認められません。その場合は給与として取り扱われてしまいます。

このような条件さえクリアできれば、社員旅行にかかる費用を福利厚生費として経費計上できます。また、社員旅行を催行することによって、従業員のモチベーションの向上につながれば、未来の会社の成長も期待できます

 

生命保険への加入

経営者を被保険者とした生命保険に、会社単位で加入することが可能です。この場合に、保険料を経費にすることができる商品があります。商品選びさえ間違えなければ、会社と個人のトータルで考えると、個人で加入するよりも節税効果の分だけ保険料が安くなる、と考えることもできます。

もちろんこれは、生命保険本来の効果があってこその話です。経営者に万一のことがあった場合に備える、ということが第一の目的であることを忘れてはいけません。保険加入の必要性については十分に検討する必要があります。

当該商品が掛け捨て保険であれば、その節税効果は保険料の部分だけ発生します。そのほか、解約時に返戻金がある商品もあります。返戻金がある場合には注意が必要です。

というのもこの場合、保険料は当然に経費にできますが、返戻金を受け取った場合には一旦収益になり課税対象になるのです。

そこで、会社はこれを退職金として経営者に給付することで相殺できます。その代わり経営者個人に所得税が課税されますが、退職金にかかる所得税はかなり安いのです。

これらを組み合わせることによって、かなりの節税効果を生むので、大変有効な対策と言えます。

 

決算賞与

決算賞与とは、従業員に対する臨時賞与であり、決算期末において1年間の貢献をねぎらうために支給するものです。

これを適用するためには、事業年度終了までに従業員全員に対して賞与の額を伝えること、翌年度開始後1ヶ月以内に支給すること、その額を決算で未払金として計上しておくことが求められます。

この中でも、1ヶ月以内の支給という条件が厳しく感じられますが、支給の実態が無ければ経費として認められませんので注意が必要です。

決算賞与の支給は、1年間の従業員の働きをねぎらうという意味で、従業員のモチベーション向上につながります。将来の経営に対してプラスに働きますから、利益が出ていて資金に余裕があるならば、積極的に採用していくと良いでしょう。

 

従業員社宅

決算賞与と同じく従業員に対する給付として、従業員社宅があります。これは、本来であれば従業員が支払うべき家賃を会社が支払うことによって、支払った金額が経費として認められるというものです。

給料を上積みして支払っているようなものなので、経費にできるのも当然だと感じますが、実は、効果的な使い方があるのです。

それは、会社負担分を給与から同額減額するということです。

つまり、このようにすれば会社にとっての総支払額は変わりませんが、従業員の手取り額が少なくなります。手取り額が少なくなるということは、所得税の課税対象が少なくなります。従業員の給与所得にはいずれにしても家賃を経費算入できませんから、実質負担額はそのままで、その分所得税の負担が少なくなるのです。

このようにして、従業員にとっての税制上のメリットがあるため、モチベーションの向上につながり、会社経営にもプラスに働くことが期待できます。

なお、この制度を適用するためには、家賃の少なくとも一部分は従業員が負担すること、社宅は会社名義とすること、家賃の振込を会社名義とすること、という条件があります。

いずれも、社宅という建前上必要な条件であると考えられます。

 

出張日当の支給

日当とは、経営者や社員が業務で出張する際に、旅費や宿泊費に含まれないような雑多な費用の支払いにあてるために、経営者や社員個人に対して支給するものです。

日当は、不必要に高額でない限りは経費に計上することができますが、そのためには、金額の算定基準などを定めた旅費規程の整備が必要となります。

出張日当も、それ単独で大きな効果があるものではありませんが、重要なポイントがあります。それは、受け取った経営者や社員の所得税の対象外になるということです。これは、雑費に対する実費弁償という性質から認められているものです。

会社にも経営者にも社員にもプラスになる制度ですから、特に出張が多い会社は活用していくべきでしょう。

しかしながら、旅費規程の整備など準備が必要であることや、出張は常日頃から発生している出来事であることを考えると、決算期が迫ってから慌てて行う節税というよりも、事前に準備をして継続的に適用していく性質のものだと言えます。

あまり意味のない節税

ここまで様々な節税手法を説明してきました。中には現金支出が無いにも関わらず節税効果があるという、非常にメリットが大きいものもありました。

他方で、現金支出が伴う節税もありましたが、その場合も将来の経営にとってプラスに働く可能性を秘めたものばかりです。

注意しなければならないのは、一時的な節税効果は期待できるものの、将来の経営にとってマイナスに働くおそれのある節税です。

それは、経費と言う名の無駄遣いです。

例えば、期末になって利益が多く出そうな状況だからといって、不必要な消耗品や備品を購入することが考えられます。もちろん、消耗品や備品が将来必要になることが明らかであれば、積極的に購入すべきでしょう。

しかしながら、節税目的といって不要な物を購入することは厳に避けるべきです。確かに、当期の経費に計上できる可能性はあるため、節税効果はあるかもしれませんが、購入した物品を使うことが無ければ、それは死に金です。

その資金を来期以降、有効に使うことができればより大きな利益を得られたかも知れませんので、将来の経営にマイナスの影響を及ぼします。

脱税ではなく、適正な節税であったとしても、このようなあまり意味のない節税もあります。

節税を考える上では、このように将来の経営への影響も含めて、良い判断を一つ一つ丁寧に積み重ねていくことが、非常に重要なことなのです。

不動産投資が節税対策につながる3つの理由

近年、サラリーマンの副業として注目を集める不動産投資ですが、始めた理由を聞くと「節税になるから」という答えが返ってくることがあります。不動産投資は家賃収入を得ることで資産を増やしていく、資産形成の方法です。

収入が増えれば、その分納める税金も高くなります。では、なぜ収入を増やす効果が期待できる不動産投資が節税になるのでしょうか?今回は不動産投資が節税対策になる理由を解説します。

 

不動産投資の賃貸収入は総合課税の対象

不動産投資は私たちが国や地方自治体に納めている税金を減らす効果が期待できます。不動産投資の賃貸収入は「総合課税」の対象となっています。
総合課税とは他の所得と合算して税金額を計算する制度です。総合課税の対象となる所得は以下のようになっています。

所得の種類 備考
利子所得 源泉分離課税に該当するもの及び平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等を除く
配当所得 源泉分離課税に該当するもの、確定申告をしないもの、平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当で、申告分離課税を選択したものを除く
不動産所得  
事業所得 株式等の譲渡による事業所得を除く
給与所得  
譲渡所得 土地や建物等及び株式等の譲渡による譲渡所得を除く
一時所得 源泉分離課税に該当するものを除く
雑所得 株式等の譲渡による雑所得や源泉分離課税に該当するものを除く

(参考サイト:国税庁「№2220 総合課税制度|所得税」

サラリーマンの方が会社から受け取っている給与は給与所得に該当します。そしてこの給与からは所得税や住民税が天引き(源泉徴収)されています。

納める税金の金額は課税所得によって決められるため、基本的には高所得者であればあるほど納税額も高額になってきます。この納める税金の額を減らすことができるのが不動産投資です。

前述のように不動産投資で得た所得は他の所得と合算して計算することができます。詳細は後述しますが、不動産投資にはさまざまな経費がかかってきます。この経費を有効活用し、帳簿上の所得を減らすことで、納める税金額も減らすことができます。

たとえば年間の給与所得が300万円の方の場合、他に所得等がなければ300万円から課税所得を求め、定められた税率を掛けて納める税金額を決定します。

しかし、不動産投資で100万円の赤字が出ている場合は、この赤字分を給与所得から差し引くことができます。この黒字から赤字を差し引くことを損益通算といいます。

給与所得300万円から赤字100万円を差し引くと200万円です。この場合、200万円から課税所得を求めるため、通常よりも課税所得額を減らすことができ、納める税金も減らせることになります。

 

不動産投資は経費に計上できるものが多い

不動産投資が節税対策に効果的といわれているのは、経費に計上できる支出が多いためです。以下に不動産投資に伴う代表的な経費をまとめましたのでご覧ください。

  • 保険料
  • 租税公課(税金)
  • 管理会社への業務委託料
  • 減価償却費
  • 修繕費
  • ローン金利
  • 広告宣伝費
  • 交通費
  • 通信費
  • 司法書士や税理士への報酬

火災保険などの保険料、固定資産税や都市計画税などの税金、減価償却費、修繕費など土地や建物に直接かかる費用はもちろん経費として計上することができます。固定資産税については後述します。

ちなみに不動産投資は初年度が圧倒的に節税対策しやすいといわれていますが、その理由は不動産取得税、登録免許税などによって経費がかさむためです。

また不動産投資は金融機関から融資を受けて物件を購入するケースがほとんどですが、経費として計上できるのは金利部分のみです。元本は経費として計上できないため、注意しておきましょう。

その他、入居者募集の目的で不動産会社に支払った広告費や管理会社との打ち合わせなどのときに発生した交通費も経費として計上できます。このように不動産投資は経費として計上できる支出が多いため、所得をマイナスにしやすいという特徴があります。

 

お金が出ない経費「減価償却費」

不動産投資の節税の肝といえるのが減価償却費です。不動産投資でお金を残すには利益を少なくし、税金を少なくすることです。そしてこの利益を減らすのに大きな役割を果たしているのが減価償却費です。

減価償却費とは簡単に説明すると建物が劣化する代金を指します。建物だけに限らず、車やテレビ、冷蔵庫などのモノは時代の流れとともに劣化して、いずれ使えなくなります。今の税金制度ではこのモノの劣化代も経費として計上することができます。

ちなみに不動産投資時には建物と一緒に土地も購入しますが、この土地に関しては減価償却することができません。土地は建物や車と違って時間の経過により価値が下がることはないからです。

減価償却していく建物には耐用年数というものがあります。耐用年数とは減価償却資産(建物や車など)が利用に耐えられる年数のことを指します。この耐用年数の期間については国が決めており、建物の耐用年数も構造ごとに定められています。

構造 耐用年数
木造 22年
鉄骨造(3mm以下) 19年
鉄骨造(3mm超え) 37年
鉄骨造(4mm超え) 34年
鉄筋コンクリート(RC) 47年

(出展:国税庁「耐用年数(建物・建物附属設備)」

ご覧のように建物の耐用年数は木造22年、鉄骨造19年~37年、鉄筋コンクリート(RC)47年で設定されており、残存年数に応じて減価償却費を計上していきます。

木造築12年、700万円の価値が付いた建物があるとします。木造建築の耐用年数は22年ですので、残り10年で建物の価値700万円はなくなります。この場合、現在の700万円の建物は1年ごとに70万円ずつ減価することになります。

この70万円が減価償却費に該当し、経費として計上することができます。もしこの建物が毎月5万円の家賃収入を生むなら、年間で60万円の収入になります。

本来ならこの60万円は課税対象になりますが、減価償却費(経費)の70万円がありますので、そのまま相殺され、帳簿上は家賃収入0円とみなされます。

もちろん本業で給与所得を得ている方は、この減価償却費によって作られた赤字分を差し引くことができますので、減税の効果を見込むことができます。

減価償却費は現金が外に出ていかない経費でもあるため、キャッシュフローを多く残せるという魅力があります。このような理由から不動産投資で節税対策を行う場合は、物件の築年数や構造も確認しておくとよいでしょう。

不動産投資で節税できる3つの税金

ここからは実際に不動産投資で節税ができる税金の種類、節税につながる仕組みを解説します。

 

所得税

所得税とは利益に対してかかる国の税金です。所得税は以下の3つの計算式で求めることができます。

  1. 収入-必要経費(サラリーマンの場合は給与所得控除)=所得
  2. 所得-各種所得控除額=課税所得額
  3. 課税所得額×所得税率-控除額=所得税(納税額)

課税される所得金額が950万円の方の場合、以下の計算式で所得税を求めます。

・950万円×0.33%-153万6,000円=159万9,000円

※上記金額から復興特別所得税(2.1%)を加算した金額が源泉徴収される

課税所得額950万円の方の場合、納税する所得税は約160万円です。では不動産投資で減価償却費などの経費を活用して、100万円の赤字が出た場合はどうなるのでしょうか?

・850万円×0.23-63万6,000円=131万9,000円

※上記金額から復興特別所得税(2.1%)を加算した金額が源泉徴収される

このように課税所得額950万円から不動産投資で出た赤字100万円分を差し引いたことで、約30万円の節税が可能になります。

所得税の税率は課税される所得金額によって7段階に分かれています。所得税の金額も以下の速算式を使用すると簡単に求めることができますので、参考にしてみましょう。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超え 330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超え 695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超え 900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超え 1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超え 4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超え 45% 479万6,000円

※平成25年から平成49年(2037年)までは復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付する

(参考サイト:国税庁「№2260 所得税の税率」

住民税

所得税が国に支払う国税であるのに対して、住民税は地方公共団体に納める地方税です。住民税の税率は市区町村に支払う部分が6%、都道府県に支払う部分が4%の計10%となります。また住民税は以下の計算式で求めることになります。

・所得割額+均等割額=住民税

所得割額は個人の所得(収入)によって納税額に差が出ます。所得割額は課税所得に10%を掛け、その後調整控除を行うことで求めることができます。

一方の均等割額は所得にかかわらず、同じ自治体に住む納税者全員が同額を納めることになります(住民税の基本料金的な位置づけ)。住民税の調整控除ですが、課税される金額が200万円以下と200万超えで計算方法が異なります。

【課税される金額が200万円以下の場合】

(1)所得税と人的控除額の差額合計
(2)課税される金額
(1)と(2)のいずれか小さい額×5%=調整控除額

【課税される金額が200万円以上の場合】

(1)所得税と人的控除額の差額合計
(2)課税される金額-200万円
((1)-(2))×5%=調整控除額  ※2,500円未満の場合は2,500円

人的控除額とは配偶者控除、扶養控除、基礎控除など、人に関する所得控除のことを指します。先ほどの課税所得額950万円の方でシミュレーションを行ってみましょう。課税所得額950万円の場合、所得税は159万9,000円です。

一方の人的控除額は基礎控除5万円、配偶者控除5万円、一般扶養控除5万円、特定扶養控除18万円の計33万円です。この場合、人的控除額が所得税を下回っているので、今回は人的控除額に5%を掛けます。

・33万円×5%=1万6,500円

では住民税の最終計算を行ってみましょう。

(1) 159万9,000円×6%+3,500円(均等割)=9万9,440円(市区町村民税)
(2) 159万9,000円×4%+1,500円(均等割)=6万5,460円(都道府県民税)
(3) 9万9,940円(市区町村民税)+6万5,460円(都道府県民税)=16万5,400円
(4) 16万5,400円-1万6,500円(調整控除)=14万8,900円(住民税)

課税所得額950万の場合、1年間に支払う住民税は14万8,900円です。では不動産投資で100万円の赤字を出し、課税所得額が850万円(課税所得131万9,000円)に下がったケースではどうなるでしょうか?

(1) 131万9,000円×6%+3,500円(均等割)=8万2,640円(市区町村民税)
(2) 131万9,000円×4%+1,500円(均等割)=5万4,260円(都道府県民税)
(3) 8万2,640円(市区町村民税)+5万4,260円(都道府県民税)=13万6,900円
(4) 13万6,900円-1万6,500円(調整控除)=13万6,900円

こちらも所得税と同じく納めるべき税金額を減らすことができています。

 

相続税

現金で相続するより、不動産で相続したほうが税金が安く収まるというのはよく聞く話です。その理由ですが現金は全額が相続税の課税対象となるのに対し、不動産は課税評価額が落ちるためです。

現金が5,000万円あった場合は評価額も5,000万円のままです。一方の不動産は土地や建物に対して一定の評価基準があり、5,000万円で購入した不動産でも相続税評価額は5,000万円よりも低くなります。

土地の評価は一般的に路線価方式で、公示価格の約8割程度の評価額となります。また建物に関しては固定資産税評価額を基に算出します。こちらも新築時の建築費用の約6割~7割程度の評価額となることが多いようです。

このほか、更地の土地にアパートなどの賃貸物件を建てると、その土地は貸家建付地として約20%の評価減になり「小規模宅地等の評価減」を適用すれば、さらに評価額を下げることができます。

小規模宅地等の評価減を適用した場合、土地の200㎡までの部分については評価額を50%減少させることができます。

このように不動産投資はトータルで見ると相続税評価額を約3割~4割ほど減少させることができます。不動産投資で節税効果が最も大きいのは、相続税といわれていますので、相続を検討する時期に入った方には非常におすすめです。

節税目的で不動産投資を行うときの注意点

不動産投資は上手に活用すれば、高い節税効果を見込むことができますが、いくつか注意しておきたいポイントもあります。ここでは不動産投資で節税対策を行う際の注意点を解説します。

 

黒字による増税

前述したように不動産投資は所得税や住民税の減税につなげることができます。しかし、その条件はあくまでも「賃貸経営で赤字を出すこと」です。

不動産投資初年度や2年目は不動産取得にかかる費用が大きいため、それらを経費として計上することで赤字を出すのは簡単です。また減価償却費が発生している期間もやり方次第で節税を見込むことができます。

ただし、耐用年数が超えると減価償却費はなくなるため、必然的に経費として計上できる金額も少なくなります。

こうなると賃貸経営が黒字化することもあり、結果的に増税へとつながる可能性も高くなります。このような理由から節税目的のみでの不動産投資を検討している方は、今一度じっくり考え直す時間を作ってみましょう。

 

金融機関の融資が下りない

不動産所得を赤字にすることで、税金の還付を受ける方は多くいます。しかし、節税目的での赤字は金融機関からの融資が下りないという状況を招く原因にもなります。

実際に節税対策で赤字申告をしたところ、金融機関からの追加融資がNGという経験をされた不動産投資家もいます。これは金融機関から融資を受けて、次の収益用物件を購入したいという方にとっては死活問題です。

不動産投資の目的が節税のみであれば、積極的に赤字申告をしても大きな問題が起きることは少ないです。

しかし、不動産投資の目的が節税以外にもある場合は、金融機関からの融資を受けられるような体制を整えておく必要があります。自身がどのような目的で不動産投資を行いたいのかといった点もしっかりと把握しておきましょう。

固定資産税とは

固定資産税は土地や建物などの不動産や機械や備品などの固定資産に対して課税される税金です。法人や個人事業主が納めた固定資産税は経費として計上することが可能で節税対策として使われることもあります。
固定資産税は、法人や事業を行う個人事業主の方は必ず1度は目にしたことがあるかと思いますが、サラリーマンや主婦の方々にとっては、持ち家がある世帯でなければ耳にすることも少ない税金になります。

 

固定資産税の納付先

例えば、法人税や所得税、あるいは相続税などは国税と呼ばれ、国に対して納税することとなっています。つまり管理しているのは、国税局や各地方の税務署です。
一方、固定資産税は課税の対象となる資産が所在する市区町村に対して納付することになります。つまり固定資産税は地方税なのです。

そのため、法人で支店が全国各地にある場合には、それぞれの支店が所在する市区町村に、その支店に存在する資産の申告と納付を行うことになります。余談ですが、企業の総務や経理の方にとっては、それぞれの資産がどのようなもので、どこに所在するのかという点を管理することが大変苦労する作業となっています。
なお、毎年の納付は4期(4月、7月、12月、2月)にわけて行うことになりますが、1年分一括で納付することも可能です。

 

固定資産税の課税対象

固定資産税は法人や個人が所有する「資産」に対して課税されるものですので、同じ資産を所有していれば、所有者の所得が多かろうが、少なかろうが同じ納税額となります。

なお、一般的に「固定資産税」というと不動産に係る税額を意味することが多く、償却資産に対して課税される「償却資産税」と区別して呼ばれることがあります。
しかし、固定資産税とは、本来「不動産に係るもの」と「償却資産税」を総称するものです。そのため、便宜的に当文書においては、「不動産に係る固定資産税」と「償却資産税」という文言を用いてご説明を進めていきます。

さて固定資産税の課税対象のうち、不動産についてはイメージが付きやすいと思います。が、償却資産はどうでしょうか。固定資産税の課税対象となるうちの一つ、償却資産について見ていきましょう。

 

償却資産税

償却資産とは、法人や個人のうち事業を営んでいる方が、その事業のために所有しており、かつ実際に使用している事業用資産をいいます。ただし、一部の例外がありますので注意が必要です。具体的には建物や車両です。

建物は償却が行われる資産ですが、前述したように「不動産」として固定資産税が課税されます。そのため償却資産として更に課税すると二重課税になるため課税されません。車両については、自動車税や軽自動車税が課税される普通乗用車や軽自動車が償却資産税の対象外となります。こちらも、自動車税等と償却資産税との二重課税を排除するために対象外となっています。なお、自動車税等がかからない大型車両などは償却資産税の対象となるため注意が必要です。

 

免税点

では、償却資産をわずかでも所有している事業者は必ず償却資産税の納税が発生するのかというとそうではありません。たとえ償却資産を所有していたとしても、償却資産の価額の合計額が各市町村が定める免税点以下であれば、納付額は発生しません。

例として大阪市の基準をもとにご説明をすると、償却資産の課税標準(新品の価額ではなく、一定の償却計算が行われたあとの金額です)の合計額が150万円未満の場合は、課税されないことになっています。あくまで、各市町村によって基準は異なる可能性がありますので注意してください。

申告納税方式と賦課課税方式

所得税や法人税などの税目は毎年納税者が自らの所得や業績を「申告」することで納税すべき金額を算定し、納期限までに納付することが求められています。例えば個人が納付する所得税は毎年2月16日から3月15日までに確定申告をしなければなりません。

では、「賦課課税方式」を採用している固定資産税はどうでしょうか。
具体的には、「不動産に係る固定資産税」の場合、建築がスタートして完成するまでに市町村の担当者が物件の確認にきます。そこで、課税対象となる物件の設備等を確認の上、課税されることになります。

ここで、会社等の経理や総務をご経験の方は「償却資産税は毎年1月末までに市町村に申告しているのだけど…」と疑問に思う方もいるかもしれません。
確かに、償却資産については市町村により多少異なることもありますが、一般的に1月末までに前年度末時点に所有する償却資産を報告する必要があります。

しかし、この報告は「申告」ではなく、あくまで、所有者の報告により資産の保有状況を確認し、その状況によって各市町村が税金を賦課しているという考え方なのです。
つまり、固定資産税は「不動産に係る固定資産税」も「償却資産税」も賦課課税方式を採用しているわけです。
なお、固定資産税の他にも消費税や個人住民税、不動産取得税などが賦課課税方式を採用しています。

固定資産税の納税義務者

どのような資産に対して固定資産税が課税されるのかは説明した通りですが、では、固定資産税を負担することになるのは「誰」になるでしょうか。
固定資産税の対象者は、それぞれの課税対象となる資産の毎年1月1日時点の所有者(法人および個人)となります。この所有者については、不動産の場合、「法務局に対して行われている登記上の名義が誰か」という部分がポイントになります。

 

不動産登記

不動産登記は、それぞれの不動産に係る所有状況や権利状況を公示するために行われます。日本国内にある不動産(一部の建物を除く)は必ず登記をする必要があり、売買や贈与、相続が発生しその不動産の所有者が変更された場合などは、所有者の名義変更の登記を行わなければなりません。

しかし、実際のところは登記されていない物件が多く存在したり、所有者が変更されているにも関わらず名義変更の登記がされておらず、すでに亡くなっている方の名義となっていることもしばしば見受けられます。

このような場合、市町村としては登記情報では誰に固定資産税を負担してもらうべきか確認することができないため、例えば相続の場合には相続人の方にお尋ねの文書を出すなどして固定資産税の納税義務者を定めることにしているようです。

 

未経過固定資産税の取扱い

不動産に係る固定資産税は毎年1月1日時点で所有している不動産に対して課税されます。
では、年の途中で不動産を購入した人はその年の固定資産税は全く納めないことになるのでしょうか。実は半分正解で半分は間違いです。

確かに年の途中で不動産を購入した方は、その年の1月1日時点で購入した不動産を所有していないため、固定資産税の納付義務はありません。これは紛れも無い事実です。ただし、取引上の慣行により購入する際に売主に対して未経過の固定資産税を精算することがあります。

例えば、8月に対価を5,000万円とする土地の売買が行われた場合を考えてみましょう。売主は売却までに第1期(4月)と第2期(7月)の2期分の固定資産税を納めています(仮に1期ごとの納付額を10万円とします。)。もちろん第3期と第4期分も同様に10万円ずつ納めなければなりません。

しかし、8月以降その土地を所有し、実際に使用するのは新しい所有者である買主です。実際の所用者がその固定資産税を負担しないのは少し違和感があります。そこで、日本国内で行われる不動産の売買では、不動産の売買代金に未経過の固定資産税相当額を上乗せして取引されることが多いのです。

つまり、今回の例で言えばもともとの対価5,000万円に2期分の固定資産税相当額20万円を上乗せした5,020万円で取引を行うことになります。中古物件の売買を行う場合には注意をしておく必要があります。

経費として認められるもの

ここまで固定資産税の基礎や課税方法などを説明してきましたが、実際にいくらが経費として認められるのか考えていきます。しかし、そのお話をする前に法人と個人事業主との経費の捉え方の違いを確認する必要があります。
まず、法人は特殊なもの(社会福祉法人や学校法人など)を除き、営利を目的として事業活動を行うものと考えられています。つまり、法人が行う取引はすべて事業に関連するものととらえます。

 

個人事業主の場合

一方、個人事業主は事業と家事部分(プライベートなもの)を分けて考える必要があります。例えば個人で八百屋を経営している場合、販売するために仕入してきた野菜については、もちろん経費として算入可能です。しかし、自宅で自らが食べる為に購入してきた野菜などは、「事業と関係がなくプライベートで消費するために購入したもの」となるため、事業の経費に算入することは認められません。

法人と個人それぞれの経費の捉え方を理解して頂ければ、固定資産税についての取扱いも難しくはありません。法人においては、支払う固定資産税の全額が経費計上が認められ、個人事業主は事業に関係のある部分(店舗敷地部分に係る固定資産税など)のみが経費計上することが可能なのです。

 

損金算入時期

次に固定資産税を経費計上すべきタイミングを確認します。このタイミングは実務においてしばしば問題となります。法人の決算時に未払計上しても問題ないのかどうかなど、しっかりチェックしておきましょう。

固定資産税等の賦課課税方式により課税される税目は、原則として賦課決定のあった日の属する事業年度に損金算入することが求められます。この賦課決定のあった日ですが、固定資産税の場合は各市町村から固定資産税の納税通知書が届いた日(4月頃)と考えれば良いでしょう。そのため、例えば10月末を決算とする法人にとっては4月と7月の2期分をすでに納付している場合、12月と2月分を未払費用として損金算入することができます。

また、例外として実際に納付した日に損金算入できるという規定もあります。この場合に、上記と同じ10月末決算法人だと仮定すると、4月と7月の2期分はもちろん損金算入することとなりますが、未払となっている12月と2月分は未払計上せず、翌期中に納付が行われた時点で損金算入を行います。

このような考え方は賦課課税方式である税金については、すべて同様の取り扱いになりますので覚えておくと良いでしょう。

固定資産税評価額の利用

固定資産税について基礎の部分から説明してきました。補足として、不動産に係る固定資産税の算定は市町村が評価した固定資産税評価額を基に行われますが、実はこの固定資産税評価額は相続税の算定をする場合や非上場株式の株価評価を行う場合に利用することになります。

今回は詳細な評価方法のご説明は割愛させて頂きますが、例えば倍率方式が適用される土地や、建物の相続税評価に利用します。相続税の詳細な試算は時間と手間がかかるものですが、固定資産税評価額を用いれば簡易試算は時間をあまりかけずに行うことができます。

なお、繰り返すようですが固定資産税評価額は市町村が定めています。実地調査も行った上で適正な評価がおおむね行われておりますが、土地の利用状況が異なった場合などは評価額の反映まで時間がかかることもあります。評価額に疑問を感じられた場合は市町村に尋ねると良いでしょう。

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