全国対応電話相談受付中!0120-698-250メール相談はコチラから
社団法人設立が全国一律27,800円!KiND行政書士事務所:東京

社団法人は合併できる? 必要や手続きや方法を詳細解説

社会貢献事業や業界団体などの発展のために多くの社団法人が活躍されていますが、小規模な法人組織の行動では限界も多く組織の見直しを検討されているところもあるのではないでしょうか。こうした場合に社団法人同士の合併は有効です。株式会社などが合併を行う例は多いですが、社団法人も合併は可能であり実施されているケースも少なくありません。

今回の記事では、社団法人の概要、合併の状況やメリット、合併に関する手続・方法や注意点などを解説します。将来に社団法人を設立する方や既に設立されている方などのために社団法人の合併に関する必要で役立つ情報をご紹介するので、社団法人の合併に興味のある方、社団法人の合併における制約や手続等を知りたい方などは、ぜひ参考にしてください。

1 社団法人の概要

社団法人の概要

社団法人にもいくつかの種類があり、合併にもその種類が制約として影響することもあるため、種類やその特徴を簡単に説明しましょう。

1-1 社団法人呼ばれる組織とは

社団法人とは、「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された一般社団法人のことです。一般社団法人は、特定の目的のために構成員(人)が集まって設立する「非営利」の団体で、まったくの新設のほか既に存在する○○協会や□□互助会などが法人化する際に多く利用されています。

なお、財団法人は特定の目的のもとに拠出された「財産」の集まりに対して法人格が与えられる団体です。財団法人は、拠出された財産を理事が運用して収益を得て事業を行います。以前は公益を目的として運営されていましたが、現現在では原則的にその制約を受けません。

社団法人の設立要件として、この「非営利」が挙げられますが、事業で収益を得ることはもちろん可能です。この非営利は「事業で稼いだ利益を団体の構成員(株式会社の株主的な存在)に分配できない」(剰余金は団体の活動のみに利用が可能だが、株式会社のように株主に剰余金の配当を行うようなことは禁止されている)ということを指します。

公益性のある事業に活動が限定されるNPO法人も非営利団体ですが、社団法人は原則として事業の制限がありません。つまり、公益性のある事業のほか、株式会社などと同じように非営利以外の事業ができます。ただし、事業内容は法令や公序良俗に反してはなりません。

1-2 一般社団法人と公益社団法人の違い

社団法人の種類は、一般社団法人と公益社団法人に分けられます。後者は、上記の非営利性であることは当然ですが、名称のとおり事業での「公益性」が行政に認められることが必要です。

一般社団法人は法務局への登記という手続で簡単に設立できますが、公益社団法人はそれに加え公益認定を受ける必要があります。しかし、公益認定を受ければその法人は一般社団法人と違い税制上の優遇措置が受けられ、事業活動をする上での大きな利点になるでしょう。

公益社団法人に認定される主たる要件は、第一に一般社団法人として設立されることと、次に公益社団法人として認定され登記することが必要です。なお、公益社団法人は公益目的事業(法律で定められた23の公益目的事業のうちいずれかを行うことが必須)を行う団体であり、その活動の比率(金額ベース)が50%以上にならねばなりません。

2 社団法人の合併の状況、必要性と形態

社団法人の合併の状況、必要性と形態

社団法人でどのような合併が行われているかを事例で紹介するとともに、合併のメリットや形態などを説明しましょう。

2-1 社団法人の合併の例

ここでは社団法人がどのような形や目的で合併しているのかを例を挙げで確認してみましょう。

①一般社団法人 日本建設業連合会

同法人は、総合建設業に従事する企業や建設業者団体が全国的に連合して、建設業に関する国内外の諸課題の解決などに取り組むことを目的としている法人です。

建設業界が大きな転換期を迎える状況を踏まえ、平成23年4月1日に建設業団体としての機能の強化・拡充や、建設業の発展に向けた活動の強力のために「日本建設業団体連合会(旧日建連)」「日本土木工業協会(土工協)」、「建築業協会(建築協)の3団体が合併して、この日本建設業連合会(新日建連)が誕生しました。

そして、合併して誕生した同法人は日本の建設業の主導的団体として、会員企業のほか政府、発注機関、各種経済団体、業界団体や労働組合などと連携しつつ、「建設業の長期ビジョン」に掲げた目標の達成のための活動を推進し建設業の再生に貢献できるように活動しているのです。

このように業界の転換期の変化に対応するために、個別の組織の活動よりも3つの組織の類似した機能や役割を統合したり拡充・強化したりした方がより効果的・効率的な対応が図れると判断されたのでしょう。

②公益社団法人兵庫みどり公社

同法人は「環境に配慮した循環する森づくり、緑豊かな環境づくり、活力ある農山村づくり、食と農に親しむ『楽農生活』」を推進する兵庫県の公益社団法人です。

同法人は、令和2年12月18日に「一般社団法人兵庫県農業会議を合併してその権利義務一切を承継して存続し、一般社団法人兵庫県農業会議は解散する」と合併公告を出しました。

つまり、同法人が合併による存続法人となり、兵庫県農業会議が解散法人となる吸収合併が行われるわけです(効力発生日は令和3年4月1日予定)。また、兵庫みどり公社は平成15年4月1日に「農林業施策の一体的な推進のため」に「財団法人ひょうご農村活性化公社」と合併し現在に至っています。

現在、同法人は兵庫県の「森づくり」や「緑と農山村づくり」などを推進する団体となっていますが、自治体の政策に合わせる形で事業内容を対応させており、その手段として合併が活用されたと言えるでしょう。

この事例は、行政の方針などに対応する社団法人の活動を適切に調整する手段(事業内容の変化・追加などに合わせた機能の拡充や強化)として、合併が有効であることを物語っています。

③一般社団法人データ社会推進協議会

同法人は「データ提供者が安心して、かつスムーズにデータを提供でき、またデータ利用者が欲するデータを容易に判断して収集・活用できる技術的・制度的環境を整備すること等を目的」とした活動を行っています。

同法人は令和3年4月1日付で「一般社団法人官民データ活用共通プラットフォーム協議会(DPC)」を合併することを発表しました。同法人はDPCの全ての権利義務と事業を継承するといしていることからこの形態は吸収合併と言えます。

今回の合併で内閣府が推進するスーパーシティ構想の実現に向けたデータ連携基盤に関する調査業務という新たな事業に対応していくことが予定されています。つまり、そのために必要な機能の拡充・強化として今回の合併が実施されるものと推察されます。

④公益社団法人日本表面真空学会

同法人は、「表面と真空に関する科学・技術とその応用についての研究発表、知識の交換等の普及・利用促進」を目的した団体です。

同法人は、平成30年4月1日に一般社団法人日本真空学会と公益社団法人日本表面科学会との合併により誕生しました。法的には、公益社団法人日本表面科学会が存続団体となり、一般社団法人日本真空学会の資産および権利義務の一切を公益社団法人日本表面科学会へ承継させる形式が取られています(吸収合併)。

両法人(学会)の合併では「多様化・深化する学術・技術分野に対応し、世界を牽引する学会となること」が目指され、「個人・法人の会員全員の飛躍の場を広げること」、実施している事業・教育プログラム、融合による新たな事業プログラムの提供などが目指されました。

また、合併による学会誌の統合で印刷経費の大幅削減やる事業・教育プログラムの充実による若手会員の増加などが期待されたのです。つまり、この合併により各学会およびその構成員・会員のさらなる発展、サービスの拡充・強化やコスト削減等の効率的運営の実現が図られたと言えます。

2-2 合併の有効性やメリット

合併の有効性やメリット

企業においてよく見られる合併にはいくつかのメリットが期待できますが、社団法人においても類似のメリットが得られる可能性があります。ここでは合併の一般的な有効性やメリットについて説明しましょう。

合併の有効性やメリット

①資産・債務などの財産や権利義務の承継

合併する場合、各法人の資産や契約・債務等の権利義務などが合併により新設或いは存続する法人に引き継がれることになります。たとえば、合併前に各法人が雇用していた従業員との労働契約や、金融機関からの融資である金銭貸借契約などは存続法人に原則引き継がれるのです。

従って、存続法人等では旧従業員と新たに労働契約を結ぶ必要はなく、金融機関には一度返済してまた借りるような手続も行う必要がありません(異議等がない場合)。つまり、合併のスキームを使うことによって新たな契約の手続を不要とし、円滑に事業を承継できるわけです。

②シナジー効果

複数の法人が統合されることにより資産・機能が増大するだけでなく、様々な知識、技術やノウハウなどのナレッジも増えて強化され、統合前の各々の法人が有する強み以上の効果が期待できます。

シナジー効果とは一般的に「相乗効果」と呼ばれるもので、「1+1が2より大きくなる」のような結果が得られる現象を指します。統合した法人のもつ各々の強みが共有・利用され、単純な足し算の結果以上の成果が得られるのです。シナジー効果が期待できる種類として以下のような点が挙げられます。

シナジー効果

・販売シナジー

販売シナジーとは合併による得意先や販路の拡大・補強、販売ノウハウの共有化・能力強化、販売員の流用・統合、物流資源の共有化・効率化、などで売上の増大が狙える効果のことです。

・生産シナジー

生産シナジーは、生産ノウハウ等の技術情報や生産設備を共有・活用して得られる効果を指します。具体的には、設備の共有化に伴う生産量の増加を通じた生産コストの削減、仕入先との交渉による材料仕入単の低減(ボリュームディスカウント)などです。

生産技術(情報)を活用した生産方法の改善による納期の短縮・品質向上・コストダウンなどのほか、新製品開発などでの効果も期待できます。また、生産だけでなく関連する在庫や配送などの物流コストの低減も期待できるでしょう。

・投資シナジー

合併前なら別々に投資が必要だった案件も合併後ならその投資規模を小さくできるという点が投資シナジーです。たとえば、A法人とB法人が各々「1」の規模の投資をする、すなわちトータルで「2」の投資を行うような場合でも合併すれば「1」や「1.5」の規模で済むことが期待できます。

・マネジメントシナジー

このシナジーは「経営シナジー」とも呼ばれ、合併することで得られる経営ノウハウの共有化等による経営品質上の効果と言えるでしょう。たとえば、吸収合併される法人の経営ノウハウを承継法人に導入することでマネジメントのシステムの高度化を図ることが期待できます。

業績管理、資金管理や人的資源管理などの各種のマネジメント・システムを統合してより効率的・効果的な管理ノウハウの構築を目指すことも可能でしょう。

③迅速な事業展開

異なる事業を営む法人同士の合併は、短期間に新たな事業を展開させることができます。特に公益社団法人などは公益性の高い事業を扱うケースが多く、行政の方針などにより事業範囲が急に拡大する可能性があるため、異なる事業を迅速に展開できる合併は有効な手段です。

たとえば、中小企業の一般的な経営支援を行う社団法人が行政による起業家支援強化の政策を受けてその分野に対応するために、起業支援の社団法人を統合して迅速な事業展開を図るといったことが考えられます。

特定の事業分野のノウハウや実績の少ない法人が、それらが豊富・得意である法人と合併すればスピード感のある事業拡大が可能になるはずです。

2-3 社団法人の合併の形態(タイプ)

これまで見てきた社団法人の合併には、どのような形態があるのでしょうか。形態としては企業合併のように吸収合併と新設合併に分かれます。社団法人の合併については「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」で規定されますが、「合併契約の締結」が必要な点と「合併の制限」には注意しておきましょう。

・合併契約の締結

一般社団法人または一般財団法人は、他の一般社団法人または一般財団法人と合併できますが、その際に合併をする法人は、合併契約を締結しなければなりません。

・合併の制限

「合併後存続する一般社団法人もしくは一般財団法人または合併により設立する一般社団法人もしくは一般財団法人は、それぞれ当該各号に定める種類の法人でなければならない」が前提条件になります。具体的な存続法人は以下の通りです。

1)合併をする法人が一般社団法人のみである場合 一般社団法人
*公益認定を受けた法人含む

2)合併をする法人が一般財団法人のみである場合 一般財団法人
*公益認定を受けた法人含む

3)上記以外の場合:
一般社団法人と一般財団法人とが合併する場合、合併後存続する法人または合併により新設される法人は一般社団法人または一般財団法人社団のどちらか
*ただし、「合併をする一般社団法人が合併契約の締結の日までに基金の全額を返還していない場合、合併後存続する法人または合併により設立する法人は、一般社団法人でなければならない」という制限があります。

なお、一般社団法人は、他の法律に基づき設立された法人と合併できません(たとえば、特定非営利活動促進法に基づいて設立された特定非営利活動法人や会社法に基づき設立された株式会社などとの合併は不可)。

①吸収合併

吸収合併とは、合併する社団法人のうち合併後1つの法人が存続し、他の社団法人が合併により消滅するする形態のことです。消滅する法人の権利義務等のすべては合併後存続する法人に承継されます。

合併で消滅する一般社団法人は「吸収合併消滅法人」と呼ばれ、合併後存続する法人は「吸収合併存続法人」と呼ばれます。なお、合併する際どの社団法人を吸収合併存続法人とするかについての制約はありません。ただし、株式会社やNPO法人などとの吸収合併は不可能です。

②新設合併

新設合併とは、複数の社団法人が合併する際にその全法人がすべて解散して、同時に新しい社団法人を設立する形態を指します。そして、この新たに設立された法人は「新設合併設立法人」と呼ばれ、合併する前に各法人が保有していた権利義務等はこの新設合併設立法人に継承されます。

なお、新設合併では一般社団法人同士の合併はもちろん、一般財団法人と新設合併をすることも可能ですが、その際には新設合併設立法人は一般社団法人か一般財団法人のどちらかを選択しなければなりません。また、吸収合併と同様に株式会社やNPO法人などとの新設合併は不可能です。

3 社団法人の合併の手続

合併の有効性やメリット

ここでは社団法人の合併に関する主な手続の流れと重要な内容を説明しましょう。

主な手続としては、

●合併の際には合併する法人間で合併契約を締結する

●社団法人の場合は社員総会により特別決議で合併承認を受けた上で債権者保護手続などを行う

●合併にかんする登記を行う

以上のような項目があり、登記を済ませることで合併の効力が生じます。

3-1 社団法人の吸収合併

まず、社団法人の吸収合併の手続の内容を説明しますが、それに先立ちその手続に関連した流れと内容を簡単に示してみましょう。

・吸収合併の準備:存続法人および消滅法人
⇒合併の妥当性等の評価、合併契約内容の検討、債権者の確認などを実施する

・理事会の決議:存続法人および消滅法人
⇒合併契約に関する承認や、社員総会の招集の決定などを行う
・官報への合併公告の申込み:存続法人および消滅法人

・合併契約の締結:存続法人および消滅法人

・吸収合併契約に関する書面等の備置き:存続法人および消滅法人
・債権者の異議に備えた処置(個別催告等):存続法人および消滅法人
・官報への合併公告:存続法人および消滅法人

・社員総会招集通知の発送:存続法人および消滅法人

・社員総会:存続法人および消滅法人
⇒合併契約に関する承認決議を行う

・合併に関する登記
⇒存続法人:吸収合併の効力発生日から2週間以内に法務局で合併による変更の登記を行う
⇒消滅法人:吸収合併の効力発生日から2週間以内に法務局で解散の登記を行う

①吸収合併契約

一般社団法人または一般財団法人が吸収合併をする場合、吸収合併契約を締結する必要があり、以下の事項を決定しなければなりません。

●吸収合併後存続する一般社団法人または一般財団法人(吸収合併存続法人)および吸収合併により消滅する法人(吸収合併消滅法人)の名称および住所

●吸収合併がその効力を生ずる日(効力発生日)
*吸収合併存続法人は、効力発生日に吸収合併消滅法人の権利義務を承継することになる点に注意しておきましょう。また、吸収合併に伴う消滅法人の解散は、吸収合併の登記の後でなければ第三者に対抗することができません。

なお、法的な手続としてはこれが最初の事項となりますが、合併する法人は合併契約を締結するための準備が必要になります。準備としては、存続法人と消滅法人ともに合併契約内容の検討や債権者の確認などです。

②吸収合併消滅法人の手続

吸収合併で消滅する法人の手続を確認していきましょう。

1)吸収合併契約に関する書面等の備置きおよび閲覧等

A 消滅法人は、吸収合併契約備置開始日から効力が発生する日まで吸収合併契約の内容や法務省令で定める事項を記載・記録した書面または電磁的記録をその主たる事務所に備え置く必要があります。

B 吸収合併契約備置開始日は、以下の事項のいずれか早い日になります。
・一般社団法人である吸収合併消滅法人の場合、社員総会の日の2週間前の日
・一般財団法人である吸収合併消滅法人の場合、評議員会の日の2週間前の日
・規定の官報への合併広告または債権者への個別の催告の日のいずれか早い日(一般社団法人または一般財団法人に関する法律の第248条第2項に基づく)

C 吸収合併消滅法人の社員、評議員および債権者は、吸収合併消滅法人に対して、その業務時間内は、いつでも以下の号について請求できます。そのため消滅法人はその対応が必要です。ただし、社員および債権者が第2号または第4号に関する請求をする場合、当該吸収合併消滅法人は定めた費用の支払いを求めることができます。

1 Aの書面の閲覧の請求
2 Aの書面の謄本または抄本の交付の請求
3 Aの電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
4 Aの電磁的記録に記録された事項について、吸収合併消滅法人の定めたもので電磁的方法により提供することを求める請求またはその事項を記載した書面の交付の請求

2)吸収合併契約の承認

A 吸収合併消滅法人は、合併の効力が発生する日の前日までに、社員総会または評議員会の決議によって、吸収合併契約の承認を受けなくてはなりません。なお、この承認の決議では、「総社員の半数以上の出席かつ総社員の議決権の3分の2以上の多数による賛成を必要とする」特別決議が必要です。

また、合併契約するためには社員総会等の開催・決議に先立って、理事会で合併に関する契約の決議を行い、社員総会等の開催を決定しておかねばなりません。さらに合併については官報への合併公告が義務付けられていることから公告に要する期間を踏まえた上で理事会決議後に公告を申込むことになります。

3)債権者の異議に備えた処置

A 吸収合併消滅法人の債権者は、その消滅法人に吸収合併の異議を述べられるため、消滅法人は次の事項を官報に公告するとともに「知れている債権者」(債権者の数や債権の請求の理由等を会社が凡そ把握している者)には、個別に催告しなければなりません。ただし、第4号の期間は、1カ月を下ることは不可です。

1 吸収合併をする旨
2 吸収合併存続法人の名称および住所
3 吸収合併消滅法人および吸収合併存続法人の計算書類
4 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

*消滅法人が同規定による公告を、官報のほか、日刊新聞紙や電子公告で実施する場合、債権者への個別の催告はしなくても構いません。

B 債権者が期間内に異議を述べなかった場合、当該債権者はその吸収合併について承認をしたものとみなされます。

C 債権者が期間内に異議を述べた場合、消滅法人は当該債権者に対して、弁済する、相当の担保を提供する、当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託する、などの対応が必要になります。ただし、その吸収合併で当該債権者を害する可能性がない場合は適用されません。

D 基金の返還にかかる債権の債権者は対象外です。

4)吸収合併消滅法人の解散登記

一般社団法人等が吸収合併をした場合、吸収合併消滅法人は吸収合併の効力発生日から2週間以内に主たる事務所を管轄する法務局に解散の登記をしなければなりません。この解散登記は、吸収合併存続法人の変更登記とあわせて(同時に)申請する必要があります。

この解散登記に関する規定の理由は、吸収合併存続法人は変更の登記が必要であり、その登記で吸収合併した旨並びに吸収合併消滅法人の名称および主たる事務所を登記することが要請されているからです。

③吸収合併存続法人の手続

1)吸収合併契約に関する書面等の備置きおよび閲覧等

A 吸収合併存続法人は、吸収合併契約備置開始日から効力発生日後6カ月を経過する日まで、吸収合併契約の内容や法務省令で定める事項を記載・記録した書面または電磁的記録をその主たる事務所に備え置く義務があります。

B Aに規定する「吸収合併契約備置開始日」とは、以下のいずれか早い日です。

・一般社団法人である吸収合併存続法人では、社員総会の日の2週間前の日
・一般財団法人である吸収合併存続法人で、評議員会の日の2週間前の日
・第252条第2項の規定による公告の日または同項の規定による催告の日のいずれか早い日

C 吸収合併存続法人の社員、評議員および債権者は、吸収合併存続法人に対して、その業務時間内は、いつでも消滅法人の場合と同様の内容について請求できます。そのため存続法人はその対応が必要です。

2)吸収合併契約の承認

A 吸収合併存続法人は合併の効力が発生する日の前日までに、社員総会または評議員会の決議によって吸収合併契約の承認を受けなくてはなりません。

B 吸収合併存続法人が承継する吸収合併消滅法人の債務の額が法律に定めた一定の額を超える場合、理事は吸収合併の承認を得る社員総会でその理由を説明することが義務付けられています。

3)債権者の異議に備えた処置

A 吸収合併存続法人の債権者は、同法人に吸収合併についての異議を述べることが可能です。

B そのため吸収合併存続法人は、次の事項を官報に公告するとともに知れている債権者(債権者の数や債権の請求の理由等を会社が凡そ把握されている者)には、個別に催告しなければなりません。ただし、第4号の期間は、1カ月を下ることは不可です。

1 吸収合併をする旨
2 吸収合併消滅法人の名称および住所
3 吸収合併存続法人および吸収合併消滅法人の計算書類
4 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

*存続法人が同規定による公告を、官報のほか、日刊新聞紙や電子公告で実施する場合、債権者への個別の催告は必要ありません。

C 債権者が期間内に異議を述べなかった場合、当該債権者はその吸収合併について承認をしたものとみなされます。

D 債権者が期間内に異議を述べた場合、存続法人は当該債権者に対し、弁済する、相当の担保を提供する、当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託する、などの対応が必要になります。ただし、その吸収合併で当該債権者を害する可能性がない場合は対応不要です。

E 基金の返還にかかる債権の債権者は対象外です。

4)吸収合併に関する書面等の備置きおよび閲覧等

A 吸収合併存続法人は、効力発生日後遅滞なく、合併により承継した消滅法人の権利義務や合併に関する法務省令で定めた事項を記載・記録した書面・電磁的記録を作成する必要があります。

B 吸収合併存続法人は、効力発生日から6カ月月間、前項の書面または電磁的記録をその主たる事務所に備え置かねばなりません

C 吸収合併存続法人の社員、評議員および債権者は、同法人に対して、業務時間内は、いつでも以下の請求が可能であるため、同法人はその対応が必要です。但し、社員および債権者が第2号または第4号の請求を行う場合、当該存続法人はその定めた費用の支払いを求められます。

1 Aの書面の閲覧の請求
2 Aの書面の謄本または抄本の交付の請求
3 Aの電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
4 Aの電磁的記録に記録された事項について、吸収合併存続法人の定めた電磁的方法で提供することを求める請求またはその事項を記載した書面の交付の請求

5)吸収合併存続法人の変更登記

吸収合併存続法人は、吸収合併の効力発生日から2週間以内に主たる事務所を管轄する法務局に合併に伴う変更の登記を行わねばなりません。なお、この変更の登記については同存続法人の代表者が申請します。その際に以下のような書類が必要となるため注意しておきましょう。

・吸収合併契約書
・合併契約を承認した際の社員総会議事録
・債権者保護手続に関連する書類
・消滅法人の登記事項証明書(不要のケース有り)
・司法書士に依頼する場合の委任状

3-2 社団法人の新設合併

社団法人の新設合併

新設合併の手続の場合、合併により消滅する法人の作業がほとんどで、新設法人の作業は合併による設立登記になります。その新設合併の手続に関連した主な内容は以下の通りです。

・新設合併の準備:消滅法人
⇒合併の妥当性等の評価、合併契約内容の検討、債権者の確認などを実施する

・理事会の決議:消滅法人
⇒合併契約に関する承認や、社員総会の招集の決定などを行う
・官報への合併公告の申込み:消滅法人

・合併契約の締結:消滅法人

・吸収合併契約に関する書面等の備置き:消滅法人
・債権者の異議に備えた処置(個別催告):消滅法人
・官報への合併公告:消滅法人

・社員総会招集通知の発送:消滅法人

・社員総会:消滅法人
⇒合併契約に関する承認決議を行う

・新設法人の設立準備:消滅法人
⇒新設合併設立法人の定款等などを消滅法人が準備する

・合併に関する登記
⇒新設法人:吸収合併の効力発生日から2週間以内に法務局で合併の登記を行う
⇒消滅法人:吸収合併の効力発生日から2週間以内に法務局で解散の登記を行う。
*設立登記と解散登記は同時に行います。

①新設合併契約

2以上の一般社団法人または一般財団法人が新設合併をする場合、新設合併契約を行い以下の事項を定めなければなりません。

1 新設合併により消滅する一般社団法人または一般財団法人の名称および住所
2 新設合併により設立する一般社団法人または一般財団法人の目的、名称および主たる事務所の所在地
3 前号に掲げるもののほか、新設合併設立法人の定款で定める事項
4 新設合併設立法人の設立に際して理事となる者の氏名
5 新設合併設立法人が会計監査人設置一般社団法人または会計監査人設置一般財団法人である場合、その設立に際して会計監査人となる者の氏名または名称
6 新設合併設立法人が監事設置一般社団法人である場合、設立時監事の氏名
7 新設合併設立法人が一般財団法人である場合、設立時評議員および設立時監事の氏名

なお、新設合併の効力の発生はその成立の日(設立登記の申請日)にあり、新設合併消滅法人の権利義務を承継することになります。

②新設合併消滅法人の手続

新設合併で消滅する法人の手続を確認していきましょう。

1)新設合併契約に関する書面等の備置きおよび閲覧等

A 新設合併消滅法人は、新設合併契約備置開始日から新設合併設立法人の成立の日まで新設合併契約の内容や法務省令で定める事項を記載・記録した書面・電磁的記録をその主たる事務所に備え置く必要があります。

B 前項に規定する「新設合併契約備置開始日」は、以下の項目に関する日のいずれか早い日です。

1 一般社団法人である新設合併消滅法人にあっては、社員総会の日の2週間前の日
2 一般財団法人である消滅法人の場合、評議員会の日の2週間前の日
3 規定による公告の日または催告の日のいずれか早い日

C 新設合併消滅法人の社員、評議員および債権者は、消滅法人に対し、その業務時間内は、いつでも以下の項目の請求が可能であるため、消滅法人はその対応が必要です。ただし、社員および債権者が第2号または第4号の請求をする場合、消滅法人はその定めた費用の支払いを請求者に求めることができます。

1 Aの書面の閲覧の請求
2 Aの書面の謄本または抄本の交付の請求
3 Aの電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
4 Aの電磁的記録に記録された事項について、消滅法人の定めた電磁的方法で提供することを求める請求またはその事項を記載した書面の交付の請求

2)新設合併契約の承認

新設合併消滅法人は、社員総会または評議員会を開催しその決議により、新設合併契約の承認を得なければなりません。なお、この承認の決議では、「総社員の半数以上の出席かつ総社員の議決権の3分の2以上の多数による賛成を必要とする」特別決議を必要とします。

また、合併契約するためには社員総会等の開催・決議に先立って、理事会で合併に関する契約の決議を行い、社員総会等の開催を決定しておかねばなりません。加えて官報への合併公告が必要となるため、理事会での決議後にその公告に要する時間を考慮の上申込むべきです。

3)債権者の異議に備えた処置

A 新設合併消滅法人の債権者は、その消滅法人に対して合併に関する異議を述べられるため、消滅法人は以下の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、個別に催告する義務があります。ただし、第4号の期間は、1カ月を下ることはできません。

1 新設合併をする旨
2 他の新設合併消滅法人および新設合併設立法人の名称および住所
3 新設合併消滅法人の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
4 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

*消滅法人が同規定による公告を、官報のほか、日刊新聞紙や電子公告で実施する場合、債権者への個別の催告は不要になります。

B 債権者が上記第4号の期間内に異議を述べなかった場合、当該債権者は合併を承認したことになります。

C 債権者が上記第4号の期間内に異議を述べた場合、新設合併消滅法人は、当該債権者に対し、弁済する、相当の担保を提供する、当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託する、などの対応が必要です。

但し、合併をしても当該債権者を害する可能性が低い場合には適用されません。

D 基金の返還にかかる債権の債権者は適用外です。

4)新設法人設立の準備

新設法人の設立には登記が必要であり、定款の作成を含む登記の準備などをしなくてはなりません。なお、以下のような書類・資料が必要となるため早めに用意しましょう。

・新設合併契約書
・定款*
・設立時代表理事を選定する場合の選定書
・理事や監事の就任承諾書
・代表理事等の印鑑登録証明書
・理事や監事の本人確認証明書
・合併契約を承認した社員総会議事録
・債権者保護手続に関連する書類
・消滅法人の登記事項証明書(不要のケース有り)
・司法書士に依頼する場合の委任状
*社団法人の定款でも公証人の定款認証が必要です。

5)新設合併消滅法人の解散登記

一般社団法人等が新設合併をした場合、消滅法人は同時に主たる事務所を管轄する法務局に解散の登記をしなければなりません。

③新設合併設立法人の手続

1)新設合併設立法人の設立登記

新設合併設立法人は、当該法人の主たる事務所の所在地で新設合併により設立する一般社団法人の設立登記を申請します。なお、一般社団法人の新設合併は登記により効力が生じます。

2)新設合併に関する書面等の備置きおよび閲覧等

A 新設合併設立法人は、その成立の日後遅滞なく、新設合併により新設設立法人が承継した消滅法人の権利義務や新設合併に関する法務省令で定める事項を記載・記録した書面や電磁的記録を作成しなければなりません。

B 新設設立法人は、その成立の日から6カ月間、上記の書面または電磁的記録および新設合併契約の内容、法務省令で定める事項を記載・記録した書面や電磁的記録をその主たる事務所に備え置く義務があります。

C 新設合併設立法人の社員、評議員および債権者は、新設合併設立法人に対して、その業務時間内は、いつでも、以下の項目について請求ができるため、当該法人は対応が必要です。

ただし、社員および債権者が第2号または第4号を請求する場合、当該新設合併設立法人はその定めた費用を請求できます。

1 Aの書面の閲覧の請求
2 Aの書面の謄本または抄本の交付の請求
3 Aの電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
4 Aの電磁的記録に記録された事項について、新設合併設立法人が定めた電磁的方法で提供することを求める請求またはその事項を記載した書面の交付の請求

4 社団法人の合併の注意点

社団法人の合併の注意点

社団法人においてもメリットの多い合併ですが、手続も少なくないことから注意すべき点も少なからずあります。ここではその中から特に重要な点を紹介しましょう。

重要な点

4-1 社団法人の合併手続にかかる時間

吸収合併および新設合併の手続・作業にかかる時間は2カ月ほどかかるケースも珍しくありません。そして、さらに準備を怠ればより長期間になり得るため注意しましょう。

合併の検討・準備、合併契約に向けた理事会の開催や契約の準備、合併に関する当事者の社団法人による打ち合わせや締結交渉に加え、官報への合併公告の掲載、債権者への個別催告、書面の事前備置、社員総会の開催・決議、変更および設立登記等、といった一連の手続を済ませなくてはなりません。

社団法人間での交渉が長引いたり、法的手続の1つでも漏らしたりする可能性は十分にあり得るため、合併作業が予定よりも遅れやすくなるのは不思議ではないでしょう。

たとえば、官報への合併公告にかかる日数は貸借対照表の要旨を掲載しない場合は申込みから7営業日程度、合併公告と一緒に貸借対照表の要旨も掲載する場合は14日程度かかる可能性があります(2021年3月現在)。

そのため合併作業に早くかかるとともに一連の手続の内容をしっかり把握して進めることが重要です。こうした手続・作業は日常の業務ではお目にかからないものであり、従業員にその専門の知識・情報を求めることもできないため、司法書士などの専門家に相談や依頼して進めることも検討しましょう。

4-2 一般社団法人と公益社団法人との合併に伴う優遇税制への影響

公益社団法人が一般社団法人を吸収合併する場合などで、税制上の扱いが変わる可能性がないか注意が必要です。

公益認定を受けた公益社団法人は法人税法上の取扱いにおいて「公益法人等」として優遇されますが、非営利型の法人として認められている一般社団法人も法人税法上は「公益法人等」とされます。

このタイプの社団法人が合併しても優遇税制への影響は生じにくいですが、公益社団法人が「非営利型の法人以外の法人」である一般社団法人を吸収合併する場合は影響する可能性は低くありません。

つまり、通常の株式会社のように営利目的事業の割合が高い一般社団法人との合併で公益目的事業以外の収益事業が増え公益目的事業費率(活動全体における公益目的事業活動の割合)の基準(50%以上)を満たさなくなれば、公益認定に影響しかねません。

せっかく合併したのに公益目的事業費率が基準を下回れば、収益事業等の廃止、縮小や事業譲渡に迫られる恐れもあります。また、公益社団法人としての公益認定を受けられなくなった場合、累積所得(資産の帳簿価額-負債帳簿価額・利益積立金額の合計額)へ課税されることもあるでしょう。

このように社団法人の合併では公益目的事業や非営利型事業の範囲や金額に影響がおよび税制優遇措置が受けられなくなることもあるため、税理士などと相談・確認の上十分に合併自体や対応策等を検討しなければなりません。

4-3 合併後の事業内容の変化等に伴う対立

新設合併でも吸収合併でも複数の社団法人が合併で統合されると、それまでの事業のあり方に変化が生じるケースも少なくありません。その場合に「特定の公益事業の範囲が狭まる」「収益上の負担の大きい事業が加わる」「法人の理念が変わる」といった不満の声が上がり、合併した法人内で対立が生じる恐れがあります。

たとえ、公益目的事業を行う公益社団法人同士の合併であってもその事業目的や活動範囲のほか、提供するサービスの量・質や提供方法が異なるのは当然です。そうした異なる組織が合併された場合、特定の法人の事業が主体となり、他の法人の事業が補完的な扱いになることも珍しくないでしょう。

たとえば、各社団法人では「社員」や従業員のほか、多くの会員などが存在して様々な活動やサービスの提供が行われています。しかし、合併によりそれらの内容に変化が生じ、吸収された側の事業やサービスが縮小されれば従業員や会員などから不満の声が上がり対立へと発展することもあるのです。

もともと異なる組織風土をもつ、違った価値観を有する組織が統合されるという合併には、上記のような対立を生み出す苗床になり得ますが、その現象の発生は社団法人であっても例外ではありません。

合併前の検討段階や打ち合わせなどで対立しやすい点を挙げ、それについて十分な対応策を用意して合併に臨みましょう。

5 まとめ

まとめ

社団法人でも株式会社のように合併が可能であり、合併によるシナジーを活用して事業環境の変化へ有利に対応していくことができます。しかし、社団法人の合併は、各一般社団法人間、各一般財団法人と両者の間で可能ですが、株式会社など他の法律に基づいて設立された法人との合併はできません。

また、合併の手続はそれほど複雑ではないですが、それでも準備・手続に2カ月程度の時間を要するため早めに取りかかるとともに、司法書士等の専門家に相談して進めることが重要です。

もっと効率的な運営でコストを削減したい、事業環境に合わせた機能を拡充・強化したい、会員やユーザーに幅広くより質の高いサービスを提供したい、などを考えている社団法人はこの機会に合併を検討してみてください。

社団法人設立が全国一律27,800円!KiND行政書士事務所:東京