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社団法人の仕事内容とは?一般企業と何が違う?

就職先・転職先や独立を考える場合、その対象として株式会社などの法人を検討する方が多いですが、最近では社団法人に興味を持つ方も増えてきました。法人には営利目的と非営利目的のタイプがありますが、社団法人は後者のタイプで株式会社などの会社組織とは性質の異なる点も多くあります。

そこで今回の記事では、社団法人の特徴や仕事内容、一般企業と異なるポイントを詳しくご紹介します。社団法人の種類や設立の内容を知りたい起業家の方、社団法人と一般企業の仕事内容、働き方や待遇などの違いを知りたい就職等の希望者などは参考にしてみてください。

1 社団法人の主な内容

社団法人の主な内容

一般企業と社団法人との大きな違いは、「営利目的」か「非営利目的」の違いであり、株式会社などの一般企業は営利目的で、社団法人やNPO法人は非営利目的の組織です。

現在、法律上「社団法人」を正式な名称として実在する組織はありません。改正前民法や特別法において「社団法人」という名称の組織が存在していましたが、2000年から2008年にかけて行われた公益法人制度改革の中で法律上その名称の組織は消滅することになりました。

現在、法人格を有する「社団法人」の名称で法人を設立することが不可能ですが、上記制度の改革後、「一般社団法人」「一般財団法人」「公益社団法人」「公益財団法人」が設立できるようになっています。世間的にはこれらの4法人を「社団法人」として扱うケースが多いです。

なお、一般社団法人と一般財団法人は「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」で、公益社団法人と公益財団法人は「公益社団法人および公益財団法人の認定等に関する法律」で規定されます。

1-1 一般社団法人と一般財団法人の概要

両者の特徴や違いを見ていきましょう。

1)一般社団法人

一般社団法人は、法律に定められた要件を満足できれば主務官庁の許可なしに、登記により設立が認められる一般法人です。

旧社団法人の時代では公益性や主務官庁の許可が不可欠でしたが、一般社団法人の場合は公益性の有無にかかわらず要件を満たせば法務局への登記により設立が認められます。その一般社団法人の設立要件は、以下の3分野です。

  • ・設立手続に関する要件
  • ・機関(役員・人)に関する要件
  • ・運営その他に関する要件

一般社団法人の最大の特徴は、剰余金の分配を目的としない「非営利法人」という点が挙げられます。なお、この「非営利」は「一般社団法人が収益を目的とした事業を行う法人ではない」という意味ではありません(収益事業もOK)。

また、「剰余金の分配を目的としない」というのは、同法人が得た利益を「社員」(株式会社の株主のような出資者等のことで、「従業員」ではない)に分配しないことを意味します。

例えば、株式会社の場合、獲得した利益(剰余金)を株主に配当金として提供しますが、一般社団法人はそのような剰余金の分配はありません。まとめると、一般社団法人は収益を目的とした事業も行いますが、「社員」に利益を分配しない法人なのです。

なお、一般社団法人においてもその役員や従業員には報酬や給与が支払われるため、その点は一般企業と同じになります。

また、一般社団法人の目的や事業の種類では、法律的な制限はなく、法律や公序良俗に反しない内容であれば、どのような事業を行っても構いません。一般社団法人でも公益を目的とする事業やボランティア活動的な事業を中心に取り組んでいるケースのほか、それら以外の収益事業を行っているケースも多いです。

なお、一般社団法人は目的を持った人の集合体として位置づけられ、地域振興や医療福祉への支援、学術研究、業界団体の発展・福利厚生への支援、資格認定、同窓会や自治会の運営などの目的で活動している法人が多く見られます。

2)一般財団法人

一般財団法人も同様に非営利法人ですが、一定の財産(寄付も含む)に対して法人格が与えられた団体になります。つまり、一般財団法人は、お金や土地などの「財産」を主に管理・運営する目的で設立される法人になるのです。

一般財団法人の設立要件として、設立人が300万円以上の財産を拠出し、その財産を事業の目的のために運用することが条件になっており、財産面に重点が置かれた法人になります。

なお、事業内容や団体の公益性に関しては一般社団法人と同じで、一般財団法人も法律や公序良俗に反しない限り事業内容を自由に決めることが可能です。

1-2 公益法人の概要

公益法人とは公益の増進を行うことを目的として活動する民間の法人です。一般社団・財団法人(以下「一般法人」)のうち、民間有識者で構成される第三者委員会により実施される公益性審査(公益目的事業等に関して)に合格し、内閣府または都道府県から公益認定を受ければ、公益法人として認定されます。

公益法人は、一般法人と同様に「社団法人」と「財団法人」のタイプがあり、前者が「人の集合体」である「公益社団法人」で、後者が「財産の集合体」である「公益財団法人」になります。

従って、一般法人が公益法人になるには、「公益社団および公益財団法人の認定等に関する法律」に規定された基準を満たし、行政庁の認定を得ることが不可欠となるのです。

つまり、一般法人と公益法人の違いを端的に示すと、「公益性」の認定を受けているか否かであり、認定されているのが公益法人になります。公益法人の認定基準は公益性であり、公益に役立つ活動をしているかという「公益性」と、公益目的事業を行う能力・体制があるかという「ガバナンス」の2つです。

なお、公益目的事業は、「認定法」に定められた、学術、技芸、慈善その他の公益に関する23種類の事業で、不特定多数の者の利益の増進に寄与するもの、と規定されています。従って、公益法人は一般法人に比べ事業内容が公益性の視点から厳格に限定される社団法人なのです。

公益目的の23事業には、学術および科学技術の振興業、文化および芸術の振興、高齢者の福祉の増進、地域社会の健全な発展、公衆衛生の向上などが挙げられます。

公益法人は、事業のうち公益目的事業比率が50%以上であること(公益法人の活動全体における公益目的事業活動の割合がその費用額において50%以上であること)が要求されますが、公序良俗等に反しない限り、公益目的事業以外の事業を行うことも可能です。

2 一般社団法人と一般企業の主な違い

一般社団法人と一般企業の主な違い

社団法人の中で最多の一般社団法人(国税庁法人登録数:78,381件)と一般法人で最多の株式会社を取り上げ、その主な違いを紹介しましょう。

  株式会社 一般社団法人
法人の区分
(法人税法上の区分)
営利団体
普通法人
非営利団体
非営利型法人(公益法人扱い)と非営利型法人以外の法人(普通法人扱い)の2タイプ
設立者の人数 1名以上 2名以上
資本金 1円以上 なし
事業内容 制約なし(法や公序良俗に反しない) 制約なし(法や公序良俗に反しない)
利益分配 可能 不可
役員の最低人数 取締役1名以上 理事1名以上(社員は2名以上)
意思決定機関 株主総会 社員総会
議決権 1株式につき1個 社員1名につき1個
設立の許可 不要 不要
監督庁 なし なし
公証役場での定款認証 必要 必要
設立の申請先 法務局 法務局

両者の特徴を簡単にまとめた資料が上表ですが、その内容をこれから確認していきます。

2-1 設立要件や機関構成の違い

ここでは一般社団法人と株式会社の機関の構成を含め主な設立要件の違いを見ていきましょう。

1)設立

株式会社を設立する場合、その設立を行う人のことを「発起人」と言い、その発起人が資本金やその他の財産を出資することになります。また、発起人は株式会社を経営する「取締役」となる人を選びますが、発起人が取締役を兼ねることもでき、取締役が一人で設立することも可能です。

一般社団法人を設立する場合、その設立する人は「社員」と呼ばれ、設立時の社員は2名以上必要です。「人の集まり」である一般社団法人は、一人では設立できません。

2)機関

●株式会社

会社法では株式会社を運営する機関として、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計監査人、会計参与、各委員会、執行役、監査等委員会がその会社の状況に合わせて(任意の機関あり)設置する必要があります。なお、取締役会を置く場合は、取締役3名、監査役1名以上が必要です。

以下に主な機関を簡単に見ていきましょう。

株主総会:

株主総会は株式会社の最高意思決定機関で、定款変更や取締役・監査役の選解任のほか、株式会社の組織・運営・管理等の重要事項を決定します。なお、決算後3カ月以内に定時株主総会を開催する義務があり、その約2週間前には招集決定を通知しなければなりません。

定時株主総会では、事業年度の決算報告およびその承認、事業報告のほか、役員報酬の金額や剰余金の配当等が決定されます。株主数が多いと、通知のための郵送料、会場費用や資料等の作成費等のコストが発生するほか、各種準備に多大な手間が発生する可能性が高いです。

取締役:

取締役は会社の業務執行を担う機関です。代表取締役を定めた場合、その代表取締役が会社の業務に関するすべての裁判上および裁判外の行為を有する権限を持ちます。

取締役会:

取締役会は3人以上の取締役で構成され、代表取締役の選定、重要な業務に関する意思決定を行うほか、業務執行者の業務執行を監督します。

●一般社団法人

一般社団法人の設置義務のある機関は、社員総会と理事(最低1名以上)です。それ以外の機関としては、定款の定めにより理事会、監事または会計監査人を設置できます。主な機関の内容は以下の通りです。

社員総会:

「社員総会」は、株式会社での株主総会に相当する機関で、「社員」で構成される同法人の最高意思決定機関として設置が義務付けられています。法律で定められた事項や、運営、管理その他社団法人に関するすべての事項に関して決議することが可能です。

なお、法人設立後の役員(理事および監事)の選任は社員総会の決議で実施されます。社員総会も1年に1度、事業年度の終了後に招集する定時社員総会の開催が必要です。

社員総会の招集は、理事が社員総会の日の1週間前までに社員へ通知しなければなりません(定款の定めにより1週間以内も可能)。ただし、「書面または電磁的記録の方法による議決権の行使を認める場合」は、社員総会の日の2週間前までの通知が必要です。

また、社員数が少人数である場合など、社員全員の同意があれば、招集手続なしで社員総会を開催できます。

社員総会も株主総会と同様に開催のためのコスト・手間・労力がかかりますが、不特定多数の株主が存在する株式会社などと比べると、一般社団法人のほうが負担は軽くなる可能性が高いです(規模による)。

理事:

「理事」は、一般社団法人の業務を実際に行う人です。「理事会(社員3名必要)」を置かない一般社団法人で理事が2名以上いる場合は代表理事(法人の代表)を定めることができます。なお、代表理事を定めない場合は、各理事が法人を代表することになるのです。

理事会のある法人では、理事の中から代表理事が選出され、その者が代表権を有することになります。

理事会:

「理事会」は、一般社団法人では定款で定めることで設置が可能な機関です。公益社団法人・一般財団法人・公益財団法人は設置が義務付けられています。なお、理事会を設置する場合は、理事3名、監事1名以上を置かなければなりません。

理事会は株式会社の取締役会に相当する機関で、業務執行の決定や理事の職務執行の監督、代表理事の選定および解職を行います。なお、理事会を設置しない一般社団法人の場合、「社員総会」が、法律で定められた事項、運営・管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議を行い、業務執行については理事が行うことになります。

3)社員および入社条件

「社員」とは株式会社の従業員のことではなく、発起人・株主に相当します。一般社団法人を設立する際に定款の作成や役員の選任をする者で、設立時には2名以上必要です。また、同法人の社員総会の構成員になります。

なお、一般社団法人には資本金がないため、設立前後の事業の運営等にかかる経費の支払いを社員が行わなくてはなりません。

株式会社の場合、会社が発行する株式を購入することで株主になれます。株主になれば、株主総会において保有している株式数に応じた議決権の行使が可能です(経営への参画)。なお、株主には原則的に資格や制限はありません。

一般社団法人の場合、株式の発行というシステムはなく、社員となる方法はその法人が定めた規則に従うことになります。一般社団法人の社員となるための資格、入退社の手続、退社事由等は、法人が定款で自由に定めることが可能です。

例えば、一般社団法人の入社に関する資格や条件について、特定の資格保有者や特定事業の営業者などと規定できます。従って、不特定多数の個人や特定の大株主が存在し得る株式会社と比べると、一般社団法人の経営は外部からの圧力を受けにくい構造を作ることが容易です。

4)資本金

株式会社は資本金の設定(1円から)が必要ですが、一般社団法人はその必要がありません。

株式会社の資本金は会社を運営するための資金となるもので、株主から株式の対価として提供される財産です。なお、株式会社の設立時では発起人が資本金の払込みを行います。

一方、一般社団法人には出資金という概念がなく、資本金や財産の拠出が不要です(一般財団法人の場合、300万円以上の財産が必要)。従って、一般社団法人では資本金(金銭等)の払込みという行為なく設立できます(株式会社より簡単)。

もちろん登記や諸々の準備(事務所の設置や材料購入等)・活動にかかる費用は発生するため支払いが必要となりますが、それらは社員が負担します。また、「基金」を設けて費用に充てることも可能です。

基金とは、法人のための活動資金や基礎財産として活用するための資金とするもので、社員や社員以外の第三者から集めるものを指します。株式会社の「出資」と違って、基金は一定の要件や合意により返還義務を負わなくてはなりません。

なお、基金は法務局への登記も必要なく、法人の履歴事項証明書(登記簿謄本)への掲載もないです。従って、基金の設置や募集に関する手続は概ね法人内部で完結します(一部除く)。つまり、株式会社の資本金制度以上に簡単な手続で資金調達が可能です(使い勝手がよい)。

5)税金

株式会社の場合は、原則的に所得に対して法人税が課税されますが、一般社団法人では、法人税法上「非営利型法人」と「非営利型法人以外の法人」に区分されて課税されます。国税庁によると、その内容は以下の通りです。

●公益法人認定法に基づく公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人

  1. ① 法人税法上の非営利型法人の要件を満たすもの(以下「非営利型法人」)
    公益法人等として取り扱われ、収益事業から生じた所得が課税対象です。
  2. ② ①以外のもの(以下「非営利型法人以外の法人」)
    普通法人として取り扱われ、全ての所得が課税対象になります。
課税所得の範囲
  公益社団法人
公益財団法人
公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人
非営利型法人 非営利型法人以外の法人
法人税法上の法人区分 公益法人等 普通法人
課税所得の範囲 収益事業から生じた所得が課税対象(注) 全ての所得が課税対象

(注)公益社団法人・公益財団法人の公益目的事業から生じた所得は課税対象になりません。

まとめると、「非営利型法人」に該当する一般社団法人の場合、収益事業にのみ課税され、収益事業以外の所得には課税されません。「非営利型以外の法人」にあたる一般社団の場合は、株式会社と同様にすべての所得が法人税の課税対象となり、課税所得の計算方法や税率については株式会社と同じになります。

2-2 設立手順の違い

一般社団法人を設立する手順は株式会社のそれと類似していますが、比較するとやや手間が少なく負担が軽いでしょう。

1)株式会社の主な設立手順

株式会社の主な設立手順

以下のような項目で設立の作業や手続が進められます。

(1)会社の基本事項の決定

手続を進めるにあたり以下の事項を決定しておきます。

  • 商号
  • 事業目的
  • 所在地
  • 資本金
  • 役員(代表取締役等)
  • 株主の構成
  • 設立日(登記申請した日)
  • 会計年度(事業年度)

(2)会社印鑑(実印)の作成

法務局に登記申請する時に用いる(登記申請書への押印)「代表者印」(代表取締役の印鑑)(会社実印)の作成が必要です。

(3)定款の作成と認証

定款は、会社設立時に発起人全員の同意により作成する会社の基本ルールで、作成が義務付けられており、登記の際に提出が求められます。なお、定款の作成後は公証役場で認証を受けなければなりません。

(4)資本金の払込み

定款の認証後は金融機関に資本金を払込みます。資本金の振込先は、発起人の個人口座です。

(5)登記申請

法務局で会社設立の登記申請を行います。提出書類が多いため漏れなく準備することが重要になります。

(6)銀行口座の開設

会社の銀行口座を開設し、発起人の口座にある資本金を移動します。

(7)会社設立後の諸届出

会社設立後は、税務署、労働基準監督署、社会保険事務所、ハローワーク、各種官庁等へ必要に応じた届出をしなければなりません。

2)一般社団法人の設立手順

一般社団法人の設立手順

(1)一般社団法人の設立の発起

一般社団法人の設立にあたり、設立代表者(設立時社員)として2名以上が集まり法人化を決意します。

(2)定款の作成

設立時社員が共同して定款を作成しなければなりません。

(3)公証人の認証

公証役場で公証人の認証を受けます。

(4)設立時理事および設立時監事等の選任

設立時の理事を選任します。なお、設立時監事や設立時会計監査人を置く場合は、これらの選任も必要です。

(5)設立時理事による設立手続の調査

設立時の理事が設立手続の内容(法令違反等の有無)を調査します。

(6)設立時代表理事の選定

設立時理事は、その設立法人において理事会が設置される場合に、設立時理事の中から代表理事となる者を選定しなければなりません。

(7)基金の募集・拠出

基金の募集は任意ですが、基金の募集をしない場合は、設立に伴う費用および活動資金は寄付または借入金に頼ることになります。

(8)法務局への設立登記申請

設立時理事または設立時代表理事が、法定の期限内に法務局で設立登記を行わねばなりません。

(9)銀行口座の開設や税金・社会保険等に関する届出

株式会社と同様に事業活動を行っていく上で必要となる銀行口座の開設や税金・社会保険等に関する各種届出を行います。一般社団法人において、事業を遂行するための職員(従業員)を雇うことは可能であり、その場合は雇用保険や労災保険などの社会保険の加入義務が一般社団法人にも発生します。

3 一般社団法人の仕事とは

一般社団法人の仕事とは

ここでは株式会社等との比較も交え、一般社団法人の仕事の内容を紹介しましょう。

3-1 一般社団法人の仕事の概要

一般社団法人の仕事は、株式会社と同様に様々です。同法人が行う事業の業種も多様ですが、その法人での職種も色々なタイプがあります。ただし、概して言うと製造業や流通業を直接的に営む事業ではなく、事業者や消費等の個人をサポートするようなサービス業が多いです。

職務としては、スタッフ職・事務職や事務総合職などが中心で、職種としては経営企画・人事・総務・経理などが多く見られます。ただし、医療や介護などの専門知識やスキル等が必要となる分野では一定の資格や経験・スキルなどが求められるケースも多いです。

また、一般社団法人の中には、その業界の企業を支援する会員サービスを主要な事業とするケースも多く、会員管理、福利厚生的なサービスの提供や各種イベントの案内・開催の支援を事業とする法人も少なくありません。

3-2 一般社団法人に多い業種と仕事内容

一般社団法人に多い業種と仕事内容を簡単に紹介しましょう。

1)専門家の養成や資格認定のサービス

公益目的事業の一つに「資格付与」がありますが、これは「申請者の技能・技術等について、一定の水準に達しているかの試験を行い、達していれば申請者に対して資格を付与する事業」のことです。

一般社団法人でもこれに類似した特定の技能等に対する、技能検定や資格認定が行われています。また、そうした専門家や資格者を養成するためのサービスを事業としているケースも多いです。

例えば、業界の組合的な法人の場合、その業界独自の資格認定を行ったり、国家資格などの取得を支援したりする法人や、ビジネスにおける各種資格等の取得を支援する法人などがあります。

●資格認定事業を行う法人の例

  • ・事業内容
    〇〇カウンセリングの普及、調査および研究、広報活動のほか、○○アドバイザー・カウンセラー・インストラクターの養成および認定
  • ・仕事内容
    上記の事業にかかわる業務の担当および補助等、企画・運営などを行うスタッフとしての仕事が多いです。

2)スポーツや芸術等の振興

特定のスポーツの普及、社会的地位の向上や愛好家の親睦等を図ることを目的とした一般社団法人がよく見られます。例えば、ゴルフ関連では、愛好家への指導、ゴルフスクール指導者の育成、愛好家同士の親睦等を事業とするケースが多いです。

また、芸術(音楽を含む)・芸能や文化などを振興する団体の法人もよく見られます。

●スポーツを推進する法人の例

  • ・事業内容
    パラスポーツ競技団体の活動支援
  • ・仕事内容
    パラスポーツ競技団体の活動を支援するスタッフとしての仕事で、大会やイベント等の企画・運営、会員管理、広報などを担当するケースが多いです。

3)医療・福祉・介護の支援

一般社団法人として、医療・福祉・介護の分野に携わる病院や介護施設等が運営されています。医療法人の場合、「医療法人社団○○会」という名称が付けられますが、社団の表記を省略しているケースも多いです。

福祉・介護関係では、障がい者の自立支援、介護サービスの提供、高齢者の健康維持や生きがい作りの支援などを事業する法人がよく見られます。

●生活介護事業施設を運営する法人の例

  • ・事業内容
    福祉施設として、常時介護や見守りが必要な利用者へのサポート事業
  • ・仕事内容
    介護事業施設で利用者への生活支援を担当する仕事です。具体的には、利用者への生活支援として、作業、創作活動、運動、外出、社会体験、地域社会活動支援などが行われます。ほかには、日常生活のサポートや身体介護、利用者の援助計画の作成、支援記録の管理・入力などです。

4)学会

医療学会、各種科学技術分野の学会、各産業界での学術団体が一般社団法人として活動するケースも多いです。産業界、科学技術や文学など、すべての分野における学術研究等を目的として活動する法人が見られます。

●各種学会の運営を支援する法人の例

  • ・事業内容
    各種学会の会員管理や会計、庶務を研究者等にかわって担う仕事
  • ・仕事内容
    各学会の諸々の業務(受託)、具体的には、その学会の会員管理や会計、庶務などその学会における事務業務全般などの仕事を担当します。

5)観光や地域振興

地域の観光業の振興、観光地や名所の知名度の向上、地域の特産品のPRなど地域の活性化、街づくり支援、地域への流入者・転入者の増進などその地域の発展に寄与する活動を行う一般社団法人も多いです。

●観光協会の法人の例

  • ・事業内容
    観光協会としての事業
  • ・仕事内容
    主に一般事務としての仕事が多いです。事務作業、窓口・電話・メールの応対、レンタルサイクル等の運営、誘客イベントやツアーの企画・運営、広報、特産品やお土産品の開発などになります。

●地域活性化の企画・運営を行う法人の例

  • ・事業内容
    地域の活性化およびその仕組づくり、ブランドの創設、異業種連携、農・工・食等の新連携の促進など地域の魅力を発見し地域を元気にする事業
  • ・仕事内容
    上記事業の運営スタッフで、デザイン、IT、マーケティング、WEB、経営支援などに関する知識やスキルなどを活かして企画・運営するなどの業務です。

6)教育(支援)

小中高の私立学校や大学などの教育機関で一般社団法人として運営しているケースや、学習支援を事業とする法人もよく見られます。後者では、学力に悩みのある生徒、経済的な理由等による学習困難者、心に悩みを抱える児童などへの学習支援を目的した活動に取り組む法人も多いです。

また、高齢者のほか会社員などの社会人を対象とした生涯学習の支援を行う法人も見られます。

●幼稚園から大学まで運営する学校法人の例

  • ・事業内容
    幼稚園から大学まで運営する総合学校法人としての教育事業
  • ・仕事内容
    具体的な業務としては、学院広報戦略およびブランディング戦略の立案・実施、広報活動、メディア対応およびニュースリリースの作成、大学サイトの管理、商標管理、その他広報などです。

7)技術開発や研究開発

科学技術にかかわる様々な分野において、その技術等を開発したり、研究したりする活動に取り組む法人も多いです。各業界の団体が一般社団法人として、その分野の技術開発等を担うケースがよく見られます。

●業界の発展、会員企業の技術支援を行う法人の例

  • ・事業内容
    業界における技術の開発、技術者育成、講習会の開催、業界企業の経営支援などにかかわる業務
  • ・仕事内容
    具体的には、業界の加盟企業等の地位・技術の向上を支援する技術スタッフとしての業務で、技術者育成講習会の実施、研究開発等の技術サポート、広報活動などを担う仕事です。

8)業界団体(の活動)

各産業界の発展や振興などを目的とした法人も多いです。例えば、自動車産業では、「一般社団法人 日本自動車工業会」があります。自動車に関する市場、技術、生産や輸出などの調査や研究等に関する活動、会員への資金調達支援などの活動が行われています。

会員には主要自動車メーカーが含まれており、一般社団法人としては大きな組織と言えるでしょう。ほかには金融機関の「一般社団法人全国銀行協会」なども有名です。

こうした業界団体として活動する法人には、業界を代表するような法人が会員となっていて、規模の大きな法人も少なくありません。

●業界の発展のために活動する法人の例

  • ・事業内容
    製品品質の維持向上、安全性の高い製品の提供、循環型社会に対応できる製品の普及のための各種の事業展開
  • ・仕事内容
    具体的には、上記事業に関連して、経理・総務・人事等の業務、理事会の運営・総会の運営、資料作成、事業計画の策定、官庁等との対応、法人業務におけるマネジメントなどがあります。

4 一般社団法人の給与・待遇と働き方

一般社団法人の給与・待遇と働き方

一般社団法人での、その働き方や給与・待遇等について紹介しましょう。

4-1 雇用の安定度

一般社団法人は一般企業のように営利を目的として設立された組織ではないため、事業は比較的安定しており、経済状況などによる事業の悪化で雇用不安が生じる可能性は一般企業よりは低いです。

もちろん各法人の事業目的や設立基盤の状況などによって異なりますが、業界を代表するような企業が会員となっている法人や会員数の多い法人などは長期的に事業が継続され、雇用も安定しやすいでしょう。

他方、収益事業を主体として取り組む小規模な法人の場合、その事業収益の内容によっては債務が弁済できず倒産に至り解散となるケースは少ないとは言えません。一般的には株式会社などよりも一般社団法人の方が倒産しにくいように思えますが、一般企業と同様にその法人の活動状況次第です。

一般社団法人へ就職や転職する場合、一般企業と同様にその法人の事業状況や財務状況などを十分に確認しましょう。

4-2 一般社団法人の雇用形態

雇用形態とは、企業と従業員との間で締結する雇用契約のタイプのことで、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員、委託・請負社員などになります。一般社団法人においてもその雇用形態は一般企業と大きな違いはありません。

なお、一般社団法人の場合、その勤務者は「従業員」のほか「職員」と呼ばれます。求人募集の際の雇用形態としては、「正社員(あるいは正職員)」「契約社員(あるいは契約職員)」などで掲載されるケースが多いです。

なお、仕事の内容・役割のほか、労働時間や契約期間、給与条件などは雇用形態の種類により異なるのが一般的で、各法人によっても違ってきます。

また、契約職員等から正職員への変更が可能かどうかも、各法人によって異なるため、ライフスタイルにあった働き方に対する柔軟性については事前に各法人に確認したほうがよいでしょう。

4-3 一般社団法人の給与や賞与

一般社団法人の給与や賞与については一般企業の構成内容とほとんど同じですが、その水準は各法人で異なります。一般社団法人の場合も給与・報酬については「月給+諸手当+賞与年〇回」という内容で示されるケースが多いです。

昇給は年1回、賞与(規定が必要)は年2回というケースが多く、一般企業と大差はないでしょう。給与形態は各法人で異なりますが、月給制・時給制のほか年俸制を採用するケースも見られます。なお、非営利目的の一般社団法人では一般企業で見られる出来高制や歩合制が採用されるケースは少ないでしょう。

手当については、残業手当や通勤手当などは一般企業と同様に支給されるのが普通で、その他の手当てについて各法人で異なります。

一般社団法人の職員の年収を正確に把握することは困難ですが、株式会社リブセンスが運営する、転職クチコミサイト「転職会議」の「団体職員の年収まとめ(給料/平均年収/企業名などを集計)によると、全世代平均は401万円です。

この値は全521件の投稿から算出された結果で、最高は1200万円、最低が150万円となっています。

国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は443万円(男性545万円、女性302万円)です。単純に比較はできないですが、一般社団法人の職員の年収はやや低い可能性があります。

ただし、規模の大きな法人、業界団体としての法人、官庁・公的機関と関連の深い法人、医療系・教育系などの法人では一般企業以上に高収入が期待できるところも少なくありません。

4-4 一般社団法人の労働条件や待遇

一般社団法人の勤務時間は一般企業と同様に各法人によって異なります。始業や終業の時間は、その法人の事業内容によって決まるため、9時~18時といった一般的な時間帯のほか、13時~20時といった設定もあります。

休暇についても土日・祝日、夏季休暇・年末年始休暇等を含め年間110日以上の日数を取っている法人も多いですが、各法人で異なります。福利厚生・待遇の内容も様々ですが、規模の大きな法人のほうがより手厚い制度が導入されている可能性が高いです。

退職金制度、社会保険完備、各種の手当(家族手当、出張手当、役職手当、資格手当 等)の支給、人間ドック補助金、資格取得支援制度、PC・スマホの貸与、コーヒー・紅茶等の飲み物完備、テレワーク対応、時短勤務制度、変形労働時間制・シフト制等など様々な福利厚生のメニューが見られますが、その種類や水準は各法人で異なります。

5 一般社団法人のメリット・デメリット

一般社団法人のメリット・デメリット

就職者・転職者にとっての一般社団法人の長所や短所を紹介しましょう。

5-1 一般社団法人のプラス面

1)待遇等は比較的良好

社団法人の中には、官庁・地方自治体や各業界を代表する企業などが設立と運営にかかわっている法人も多く、これらの法人はそうした官庁等や企業などの職員・社員に近い待遇となっているケースが少なくありません。

つまり、そうした一般社団法人の職員の待遇や労働条件は、役所の職員や大企業の社員のそれと近いということです。大企業や役所等を主な就職先・転職先として検討する方の場合、上記の一般社団法人もその候補になり得るでしょう。

また、福利厚生の面でもそれらの大企業等の水準に近いケースも多いため、働く環境としては中小企業の平均的な水準以上が期待できます。残業は少なめで休日が多く、有給休暇も比較的とりやすい環境になっている傾向が見られるため、ライフワークバランスのよい生活の実現が可能です。

2)経営の安定度も比較的良好

一般社団法人は営利を主要な目的として事業を営んでいないため、一般企業に比べ経営の安定が期待できます。

一般企業の場合、経済環境などの変化による業績悪化で事業の継続性が損なわれるという可能性が小さくありません。一方、一般社団法人の場合は、市場環境に適応して収益を拡大するという事業活動を目的としていないため、経済環境等の変化は一般企業ほど影響が大きくないです。

一般社団法人の仕事には、一般企業の仕事や行政サービスなどで対応しにくい社会貢献性の高いニーズに対して、行政等の協力も得ながら実施される傾向があります。つまり、同法人の仕事は厳しい市場競争に晒されて実施されるというタイプではないのです。

もちろんその仕事が永久に持続するわけではないですが、その社会ニーズ等が存在し続ける限り安定した運営が期待できるでしょう。

3)社会貢献度の高い仕事も多い

一般社団法人の中には、社会貢献度の高い事業を運営する法人が多いです。SDGs等の認識の広まりから、一般企業においても社会貢献を事業運営に取り入れるケースが多く見られるようになりましたが、一般社団法人の場合はよりその傾向が強いと言えるでしょう。

社会のため、誰かのために役立つ仕事がしたい、という労働者や就職・転職希望者が増えてきましたが、そうした方々には一般社団法人は有力な候補になる可能性が高いです。

一般企業の場合は、その収益を目的とする事業を通じて社会に貢献するといった形で取り組むことになります。一方、一般社団法人では事業そのものが社会貢献等に資する活動になっていることが多いため、その職員になれば自身もそれに直接的に関与できるはずです。

5-2 一般社団法人のマイナス面

一般社団法人で働く場合の主なデメリットを紹介しましょう。

1)入社機会が少ない

一般社団法人の求人募集は、一般企業に比べて少ないないです。社会の様々ニーズに対応するために、多くの企業が創設されたり事業が拡大されたりするため、一般企業での人材募集は常時発生します。

一方、社会貢献などを目的とする一般社団法人の場合、一般企業に比べて創設される法人の数が圧倒的に少ないため、比較すると求人数は多くありません。そのため就職・転職希望者にとっては、希望するような一般社団法人の求人募集があまり多くなく、あっても競争率が高くなって狭き門になる可能性が高いです。

2)高額年収は期待しにくい

一般社団法人の場合、職員の給与形態を成果給や歩合給にしているケースは少ないため、そうした給与形態を採用している一般企業よりも収入が劣る傾向が見られます。

一般企業の給与形態も様々ですが、月給や賞与の部分について成果の結果を連動させるシステムを取る企業は少なくありません。そのため、そうした企業の社員では自分が頑張った分が収入に反映されることとなり、より多い年収を狙うことが可能です。

一般企業の場合、「努力⇒成果⇒報酬アップ」のシステムが社員のモチベーションアップに繋がりますが、一般社団法人の場合その効果は期待しにくいでしょう。

3)仕事のマンネリ化の恐れ

一般社団法人の業務も多様ですが、一般企業ほど新たな業務が発生する割合は少ないため、その職員は同じ業務に長く携わりマンネリ化する可能性が低くありません。そのため違う業務に従事してキャリアの幅を広げるといったキャリア開発が一般企業よりも困難になります。

一般社団法人の事業は安定している反面、経済や市場の状況に合わせて事業を変化させたり、新たに開発したりという活動は少ないため、職員は同じ事業に従事することになりがちです。

そのうえ業務自体も同じ内容が続けば、職員の仕事はマンネリ化する可能性が高まってしまいます。さらに仕事上の自由裁量の権限が少ない場合、その職員の中には仕事に対する息苦しさを感じやすくなるのです。

仕事に変化を求めたり、創意工夫を凝らしたりして業務に従事したい方は一般社団法人の業務内容について確認しておく必要があるでしょう。

6 まとめ

社団法人の仕事内容とは

一般社団法人は非営利目的の組織で、社会貢献や業界等の発展などに関係する事業が多いです。その仕事としては事業を運営・管理するスタッフ、会員・利用者等へのサポート、研究、技術協力などが多く見られます。

待遇等は様々ですが、規模の大きな法人、官庁等や業界の大企業等に関連する法人などの場合、その待遇面等はそれらの水準に近く就職先・転職先の候補としては有力です。入社機会は多くないですが、そうした一般社団法人も有力な勤務先の候補になり得るでしょう。

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