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社団法人に社会保険の加入義務はある?

働く従業員を守るための制度の1つに、社会保険があります。社会保険は、働く人たちの生活を保障していく目的の公的な保険制度になります。

社会保険は全ての法人に加入義務があります。そのため、従業員を採用した社団法人も株式会社などの営利法人と同じく、社会保険の加入義務が発生します。

今回は、社団法人における社会保険の義務や手続きについて解説します。社会保険の概要や加入方法、社団法人における社員の取り扱いなどを解説します。

1 社会保険の加入義務

社会保険の加入義務

社会保険には、広義と狭義の2つの意味を持っています。広義の意味での社会保険は、生活に支障が発生する以下のようなリスクに対応する保険を言います。

社会保険が対応するリスク

  • ・病気や怪我
  • ・加齢や介護
  • ・失業
  • ・労働災害

民間の保険会社が提供する保険サービスもありますが、社会保険は一定の要件に該当する人は誰でも加入できます。

民間の保険とは異なり、社会保険は国から委任された公的な機関が運営を行い、原則対象となる場合には強制的な加入になります。また、毎月納付する保険料は所得に応じて異なってきて、補償範囲は各制度で一律になっています。

任意加入で補償内容によって保険料が異なってくる民間の保険と比較すると、社会保険はより社会において安定した生活を国民全員が送れるための保険制度と言えます。

1-1 社会保険とは

広義の意味の社会保険は、社会保険制度に基づいて国が運営主体となっている公的保険制度になります。民間の保険と社会保険の大きな違いは、保険加入の自由にあります。

民間保険の加入は、個人に選択の自由があります。一方で、公的な制度である社会保険では一定要件を満たす対象者の加入は強制になります。

社会保険は公的保険制度であるため、その財源は保険料のみでなく国庫負担金*などもあります。

*国庫負担金は、国が地方公共団体が行う特定の事業や事務に対して、経費の一部を負担する支出金になります。

●国民皆保険

国民皆保険とは、1961年に国民健康保険法の改正によって実施された、日本国民すべてを何らかの医療保険に加入させる制度になります。

国民皆保険は、病気や怪我などになった際に医療を安心して受けられることを目的にして、国民が相互に助け合う制度になっています。この国民皆保険の考え方が現在の社会保険制度の根幹になっています。

●広義と狭義の意味

社会保険という言葉は、2つの意味で利用されます。そのため、広義の意味と狭義の意味という2つで区別されて利用されています。

広義の意味では、『医療保険』『年金保険』『介護保険』『雇用保険』『労災保険』の5つの保険の総称を意味します。一方で、狭義の意味では、『医療保険』『年金保険』『介護保険』の3つの保険を意味します。一般的に社会保険として使われる場合には、広義の意味で利用されます。

狭義の社会保険に含まれない『雇用保険』『労災保険』の2つの保険の総称が『労働保険』になります。

●社会保険の5つの保険

社会保険の5つの保険は以下のような概要と被保険者になっています。

<社会保険の5保険>

  概要 被保険者
医療保険 医療などに必要な費用を補助する制度 20歳〜59歳の全員
年金保険 老後の生活などに必要な資金を援助する制度 全員
介護保険 介護サービスの利用などに必要な費用を援助する制度 40歳以上の全員
雇用保険 失業や再就職などを支援する制度 法人ならびに個人事業の従業員など
労災保険 業務上の怪我の治療などに必要な費用を援助する制度

●医療保険

医療保険は、医療に関わる費用を援助する制度になります。病気や怪我に対する治療費や入院費用や葬儀費用などが援助の対象となります。

毎月の医療保険を納付することで、医療費の7割*などを医療保険で賄えます。医療保険があることで、医療費における自己負担が3割などになります。

医療保険には、いくつかの種類があります。個人事業主などが加入する国民健康保険や組合国保、企業に勤める従業員が加入する健康保険、国家公務員などが加入する各種共済などがあります。

*自己負担の割合は、年齢や所得によって異なってきます。

●年金保険

年金保険は、65歳など一定の年齢に達した高齢者や、病気などによって日常生活が制限される障害者などの生活に必要な資金を援助する制度になります。年金保険は、20歳以上になった個人が保険料を毎月納付し、受給対象となる個人を支援しています。

年金保険の種類は、個人事業主や学生などが自身で納付する『国民年金』会社員や公務員などの給与から天引き(企業などが代わって納付)する厚生年金などがあります。会社員などは国民年金と厚生年金の2つの年金保険に加入しています。

●介護保険

介護保険は、主に高齢者の介護支援を目的とする制度になります。医療保険の中で、介護に特化した保険という見方をする場合も多くあります。

介護保険は、40歳から保険料を毎月納付します。加入手続きは不要で、医療保険料額に介護保険料分を上乗せして納付します。介護保険は65歳以上でも納付するため、年金から介護保険料が天引きされる形になります。

●社会保険料の納付方法

社会保険適用事業主は、社会保険料を従業員給与から控除して、会社負担分と合算して毎月納付しなければなりません。社会保険料は原則翌月に徴収されるため、5月分の社会保険料の支払いは6月に支給される給与から控除して6月の月末までに納付します。

1-2 労働保険とは

労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称した保険になります。労働保険の特徴は、その加入対象者が企業や個人事業で働く従業員が対象となる点になります。

●労災保険

労災保険(正式名称:労働者災害補償保険)は、労働者が業務や通勤などで災害によって起こる疾病や障害などに対して保険給付を行うことを目的とする保険制度になります。

主な給付には、自己負担なしで治療を受ける『療養給付』や、治療により働くことができない期間中の給与の半分を給付する『休業給付』などがあります。

労災保険料は、事業主がその全額を負担します。保険料率が仕事中のリスク度合いによって業種ごとに定められています。

労災保険の加入は原則従業員が対象となりますが、条件に合致した個人事業主や中小企業の事業主も任意で『特別加入』が認められます。

●雇用保険

雇用保険は、仕事を失ったいわゆる失業状態にある労働者を支援するための保険制度になります。アルバイトなどの一部を除くほとんどの労働者が加入の対象となります。

主な給付には、失業をしたときに給付される『失業手当』や指定の教育訓練講座を受ける際に自己負担を軽減する『教育訓練給付金』などがあります。

雇用保険料の納付義務は、事業主と従業員の両方にあります。ただし、雇用保険の事業者負担分はおよそ従業員に支給する給与の1%程度になります。

雇用保険の加入は、原則労働者(従業員)になります。個人事業主であっても、加入することができません。また、労働者であっても加入条件を満たさない*場合には、加入できません。

*雇用保険の加入資格は以下の通りになります。

  • ・勤務を最低31日間以上働く見込みがある
  • ・1週間の所定労働時間が20時間以上
  • ・学生ではない(卒業前の就職で卒業後も引き続き働く場合は除く)

●従業員がいれば社会保険適用事業主

アルバイトやパートを含む労働者を1人でも雇用することで、社会保険の適用事業となります。社会保険の適用事業になった事業主は、加入手続きを定められた期限内に実施し、各保険料の納付を開始しなければなりません。

●労働保険の加入義務は法人や事業主にある

労働保険に加入をするのは、従業員ではありません。労働保険の加入手続きは、法人や事業主にあります。

労災保険は、従業員の通勤や業務中の怪我や病気の治療代や万が一の死亡事故などへの遺族への所得の補償をするための保険制度になります。

そのため、法人が労働保険の加入手続きを行わないことは従業員に大きなリスクを抱えさせることになります。

このような、法人の手続きの不備や遅延によって従業員が本来得られる保険制度の補償が受けられない事態が発生した場合でも、従業員には国からの保険給付を受けられる仕組みが整備されています。一方で、加入を怠った法人には遡って労働保険料の徴収と追徴金が徴収される仕組みにもなっています。

●労働保険の支払方法

労働保険の支払いは、『年度更新』によって納付をします。年度更新とは、毎月6月1日〜7月10日までに保険料の申告と納付を実施します。

年度更新では、前年度の概算保険料(概算で支払いした保険料)と本年度の確定保険料(本年度の賃金総額で計算した保険料)の差額を精算します。その上で、本年度の概算保険料も併せて申告と納付します。

具体的な保険料の計算は、以下の3つに分けて実施されます。

  • ・前年度の支払賃金総額を元に計算した確定保険料と、前年度の概算保険料の差額によって過不足について精算
  • ・本年度の概算保険料を計算
  • ・前年度の概算保険料と確定保険料の過不足分と、本年度の概算保険料の合計額

なお、年度更新の手続き遅延などによって申告期限を超過しても納付や申告を未実施になった場合、政府によって保険料が強制的に決定されます。その上で、保険料の10%を追徴金として課せられる場合があります。

1-3 一般社団法人も加入義務がある

前述の通り、労働保険の加入手続きを行うのは、従業員ではなく、法人が実施しなければいけません。法人が手続きを怠ることに対しては、ペナルティが規定されており、社会保険適用事業者になった場合には速やかに労働保険の加入手続きを行わなければなりません。

●一般社団法人も社会保険の加入義務がある

加入義務が発生しています。そのため、法人の1つの種類である一般社団法人にも社会保険の加入義務が発生します。一般社団法人も従業員をなど法人が労働者を雇用する場合には、社会保険に加入しなければなりません。

一般社団法人で理解が難しくなるのは、呼称が株式会社などと異なる点になります。

●社員の取り扱い

一般社団法人における「社員」は、株式会社における「株主」と同様の扱いになります。

一般社団法人の社員は、最高意思決定機関である「社員総会」において議案の提出・議決への参加と議決権の行使を行います。そのため、株式会社において、株主総会で重要事項の議案提出や議決権の行使を行う「株主」に似た立場になります。

株主は株式を持つことでその株式会社を所有する立場となるため、従業員という立場とは異なります。そのため、社長=株主の1名で法人を設立して従業員を雇わない状態の株式会社は社会保険の適用を受けません。

これと同様に、一般社団法人において社員のみで法人運用を行い、従業員を雇用しない場合には社会保険の適用は受けません。

●社員以外で雇用される従業員は対象

一般社団法人の多くでは、雇用されて働く従業員がいます。これらの従業員を雇用する一般社団法人は社会保険の適用を受けます。

従業員を雇用していなかった一般社団法人が従業員を雇用した場合、定められた期間内に社会保険への加入手続きを行わなければなりません。

●理事の取り扱い

一般社団法人における理事は、株式会社における「取締役」と同様の扱いになります。理事は、一般社団法人から委任を受けてその法人の重要事項を決定する権限を持っている役員になります。

一般社団法人の理事は、理事として働く対価に給与はもらいません。しかし、報酬を受け取ります。法人税法上で一般社団法人の理事の報酬は「役員報酬」として扱われるため、原則毎月定額を支払わなければなりません。

理事に支払う報酬も従業員に支払う給与も、中身や支給方法は同じです。そのため、報酬を支払する理事を選任した場合には社会保険の適用を受けることになります。

2 社会保険への加入方法

社会保険への加入方法

株式会社や一般社団法人だけでなく、合同会社や合資会社などの営利法人/NPO法人や一般財団法人などの非営利法人もすべて社会保険の加入義務があります。また、加入義務を履行しない場合は、すべての法人で違反になります。

一方で、法人ではない事業者には個人事業主があります。個人事業主は、常時雇用*する労働者が5人以上いた場合に社会保険の加入義務が発生します。5人未満であっても任意で加入もできます。

法人も個人事業主も社会保険の加入要件を整理して、義務に適切に対応できるようにしなければなりません。

2-1 社会保険の加入対象

社会保険の健康保険と厚生年金保険の加入対象が誰になるのかは、加入要件を把握する必要があります。加入要件は、以下の3つを基準として定められています。

役職 役員か従業員か、パート・アルバイトなどに分けられます。
働き方 常勤か非常勤か、常時か臨時か、所定労働時間などによって分けられます。
報酬 報酬を受け取っているのかどうかで分けられます。

●役員の社会保険

法人の代表者や常勤の役員は、役員報酬を受け取っている場合に社会保険の加入が必要になります。一方で、同じ役員でも非常勤の役員は役員報酬を受け取っていても勤務実態や報酬額などによる総合的な判断の結果によって社会保険の加入義務が発生します。

法人の役員が報酬を受け取っていない場合には、常勤と非常勤の区別なく社会保険の加入は必要ありません。同じく、個人経営の事業主は、社会保険の加入義務はありません。

一般社団法人の理事や監事も上記と同様になります。報酬を受け取っている理事や監事は、社会保険の加入が必要です。役員報酬を受け取っていない理事や監事は社会保険の加入は必要ありません。

株主や社員などは社会保険の加入義務は発生しません。しかし、株主が代表として社員が理事として常勤などをして報酬を得ている場合には、社会保険の加入が必要です。

●従業員の社会保険

従業員は、常時勤務しているか非常勤かによって変わってきます。従業員は原則労働の対価として給与を得ています。

常時勤務している従業員は、社会保険の加入対象になります。臨時で働く従業員は以下に該当する場合には、社会保険の加入対象外になります。それ以外は加入対象となります。

雇用契約期間が2ヶ月以内の臨時雇用* 期間終了後に再雇用や雇用延長などで雇用が継続される場合には、雇用が継続された日から社会保険の加入義務が発生します。
日雇労働者・出稼ぎ労働者 1ヶ月以上日雇いや出稼ぎ労働が継続し条件を満たした場合には、条件を満たした翌日から社会保険の加入義務が発生します。
季節的業務で働く労働者 農業や製茶業などが該当します。季節的業務で働く者でも、4ヶ月以上の雇用契約で働く場合には、社会保険の加入義務が発生します。
臨時事業の事務所で働く労働者 建設現場など一定の期間で労働がなくなる場所で働く労働者が対象となります。ただし、雇用契約時点で6ヶ月以上雇用される場合には、社会保険の加入義務が発生します。

*従業員のみではなく、パート・アルバイトを含みます。

●パート・アルバイトの社会保険

パートやアルバイトのように正社員より短い時間働く労働者を「短時間労働者」と言います。短時間労働者であっても、原則勤務時間や勤務日数が常時雇用されている従業員の4分の3以上であれば、社会保険の加入対象になります。

2016年の健康保険や厚生年金保険の適用拡大によって、常時雇用されている従業員の4分の3未満であっても、以下の短時間労働者の4要件をすべて満たす場合、社会保険加入の対象となりました。

  • ・週の所定労働時間*が20時間以上である
  • ・雇用期間が2ヶ月以上**見込まれる
  • ・月額の賃金合計が8.8万円以上である
  • ・学生ではない

*所定労働時間は、雇用契約書や就業規則などで定められた勤務時間で確認できます。もし、勤務時間が定められていない場合には、以下の計算式で算出します。

**2022年10月の改正タイミングで雇用期間が1年から2ヶ月に短縮されています。

<所定労働時間算出式>

1ヶ月の所定労働時間×12カ月÷52週

2022年10月から社会保険の適用事業者が拡大

一般社団法人や株式会社を含む法人について、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者が社会保険の適用になるのは、昨年2022年10月以前は501人以上の対象従業員がいる企業が対象でした。

対象事業者とは、フルタイムの従業員と週労働時間がフルタイムの4分の3以上のパートやアルバイトを含む従業員を指します。

2022年10月以降は、この対象従業員の数が101人から500人まで拡大されています。つまり、今までは対象従業員が200人だった企業で、社会保険未加入(所定労働時間が20時間以上30時間未満)であった者が社会保険の加入が必要になります。

さらに、2024年10月から対象従業員は51人以上にさらに拡大されます。今後は、社会保険の適用企業である特定適用事業者範囲は、拡大されて特定適用事業者の数も増えていくことが予想されます。

2022年10月時もそうでしたが、改正によって特定適用事業者になることが明らかな企業に対しては事前に「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。

改正が行われる2ヶ月前後のタイミングで日本年金機構から「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送られ、改正のタイミングの10月に「特定適用事業所該当通知書」が送られました。

書面が到着した事業者は、すでに特定適用事業者としてみなされるため、手続きは必要ありません。

2-2 社会保険の加入方法

狭義の社会保険である厚生年金と健康保険の加入手続きは、同時に実施します。加入に必要となる書類を揃えて、一般社団法人の主たる事務所を管轄する日本年金機構の年金事務所*へ手続きを実施します。

*管轄する年金事務所は、日本年金機構のWebサイト「全国の相談・手続き窓口」のページで確認できます。

●社会保険の加入対象となる従業員を把握する

社会保険の加入手続きをする場合には、被保険者(保険に加入する従業員)を把握して、加入するための手続きや情報収集をしなければなりません。

社会保険は要件を満たす場合には、本人の意思にかかわらず加入することになります。ただし、従業員によっては何かしらの事情によって社会保険への加入に抵抗感がある方もいる場合があります。

そのため、事前に社会保険に加入対象となる従業員を把握して、社会保険の加入対象である旨を説明の上、加入前に社会保険加入のメリットなどの説明と意思確認を行います。

●社会保険の必要書類

社会保険の加入手続きに必要な書類は以下の通りになります。なお、申請や相談を委任する場合には、上記の他に委任状が必要です。

健康保険・厚生年金保険新規適用届 健康保険と厚生年金保険の適用事業者になった場合に提出する書類になります。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 被保険者になる人全員の保険者資格取得者の情報を記載します。
被扶養者(異動)届 被扶養者*がいる場合、その情報を記載します。
保険料口座振替納付申出書 保険料を口座振替するために必要な書類です。毎月の支払いになるため、口座振替でなければ納付書を使って金融機関窓口で支払いしなければなりません。
法人の登記事項証明書 申請する法人の登記簿謄本を提出します。

*被扶養者とは、被保険者によって生計を維持されている被保険者の三親等以内の親族を指します。必ずしも同居の必要はありません。具体的には、直径尊属や配偶者や子供などが該当します。詳細は、全国健康保険協会Webサイト「被扶養者とは」で確認できます。

●提出方法は郵送もしくは窓口対応

必要書類の提出は、郵送も可能です。また、管轄する年金事務所の窓口に持参できます。社会保険の加入は、原則5日以内に加入手続きを実施しなければなりません。また、新規で一般社団法人設立のタイミングに社会保険の加入手続きをする場合が多くなります。

新設で一般社団法人を設立した日から5日以内に加入手続きが必要になるので日数がタイトになります。加入手続きには、登記事項証明書が必要になるからです。

そのため、登記事項証明書の発行を待って、窓口に持参する方が時間的には余裕が出ます。

なお、設立から5日以上経つと社会保険の加入ができなくなるわけではありません。何かの事情によって社皆保険の加入手続きが5日以上経過したとしても、できるだけ速やかに手続きを実施します。

●社会保険未加入のペナルティ

加入義務が発生してから5日以内の加入手続きができなかった場合でも、日付を遡って加入し、保険料の納付をすることになります。

未加入の場合には、最長2年間遡って社会保険料を追徴されます。しかし、その2年間で従業員が退職して連絡などが取れない場合、企業が肩代わりして納付しなければならなくなるケースもあります。

また、追徴は原則一括の現金支払いになるので企業にとっても従業員にとっても大きな負担になります。加えて、社会保険未加入は、健康保険法第208条で「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則も定められています。

加入義務が発生したタイミングでは手続きを正確に把握して、遅滞なく必要書類を提出しなければなりません。

2-3 労働保険の加入方法

労働保険(労災保険と雇用保険)は、1人でも従業員を雇用したタイミングで加入義務が法人や事業主に発生します。労働保険に加入する事務所を適用事務所と言います。

適用事務所は、『一元適用事務所』と『二元適用事務所』の2種類です。一元適用事務所は、労災保険と雇用保険の2つの保険を一括加入している適用事務所を言います。二元適用事務所は、労災保険と適用保険の2つの保険を別々に加入している適用事務所を言います。

一般的な法人は一元適用事務所です。事業実態で労災保険と雇用保険を別々に申告と納付する方が適している事業(建設業や農林や水産事業)などは二元適用事業所になります。

建設業などは、元請事業者が一括して建設現場で働く社員や職人を含めた建設現場単位で労災保険をかけます。一方で、雇用保険は別途事業者単位で雇用保険に加入します。そのため、建設業の多くは二限適用事務所になっている場合があります。

ただ、同じ建設業でも営業部門や管理部門などの工事を行わない事業所は一元適用事務所として加入しています。

●労働保険の加入条件

労働保険は、原則法人や事業主が従業員を雇用した場合に加入する必要があります。ここでいう従業員は、正社員などには限りません。アルバイトやパートなど短時間労働者も含みます。

一方で、従業員を雇わず代表者のみで事業に従事している場合には労働保険の加入義務は発生しません。

労働保険は従業員を雇用した日が労働保険加入日となり、そこから10日以内に労働保険へ加入する必要があります。

●労働保険の必要書類(一元適用事務所の場合)

一元適用事務所においては、一般社団法人の主たる事務所がある住所を管轄する労働基準監督署*と公共職業安定所*にて必要書類を提出します。

社会保険(厚生年金と健康保険)の加入手続きでは、日本年金機構の年金事務所に必要書類一式を提出することで完了できましたが、労働保険は一元適用事務所でも二元適用事務所でも提出先が2つになる点に注意が必要です。また、それぞれ期限が異なってくる点も注意が必要です。労働保険の加入手続きに必要な書類は以下の通りです。

<一元適用事務所の必要書類と手続き順位>

手続きには順番があります。下記1)の保険関係成立届を最初に労働基準監督署に提出し、その後に2)〜4)の提出が求められます。

1)保険関係成立届 労働基準監督署 保険関連の成立日翌日から起算して10日以内
2)概算保険料申告書** 労働基準監督署もしくは都道府県労働局もしくは日本銀行 保険関連の成立日翌日から起算して50日以内
3)雇用保険適用事務所設置届 公共職業安定所 保険関連の成立日翌日から起算して10日以内
4)雇用保険被保険者資格取得届 公共職業安定所 保険関連の成立日翌日から起算して10日以内

*労働基準監督署と公共職業安定所は、厚生労働省のホームページ『都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧』で確認できます。

**概算保険料申告書は、労働保険料を概算で計算して申告・納付するための書面です。労働保険の適用事務所になると、適用事務所になった年度末までの雇用した労働者へ支払う(見込)の賃金総額から概算の保険料を申告・納付します。

概算保険料申告書は、他の保険関係成立届や古法保険適用事務所設置届と異なり、労働保険料を概算で計算する必要があり、他の書類よりは提出期限が50日と長くなっています。

●労働保険の必要手続き(二元適用事務所)

一般社団法人のほとんどは一元適用事務所に該当するため、ここでは簡易的な説明になります。詳細を確認したい方は厚生労働省ホームページ『労働保険の成立手続き』をご確認ください。

二元適用事務所の場合には、労働保険の労災保険と雇用保険の適用の仕方の区別が必要です。そのため、雇用保険の加入手続きにおいても保険関係成立届と概算保険料申告書を公共職業安定所への提出が必要です。(一元適用事務所では労災保険加入時に労働基準監督署のみに提出していました。)

●労働保険未加入のペナルティ

労災保険の未加入事業者は50万件を超えています。そのため、労災保険から給付される金額の全部や一部の支払いを求める『費用徴収制度』などもあります。

労災保険へ『故意に未加入だった事業者』と『重大な過失で未加入だった事業者』の2つに分けられて費用徴収制度では徴収金額を決定しています。

故意に未加入だった事業者には、保険給付額の100%が徴収されます。また、重大な過失では同じく保険給付金の40%が徴収されます。

これらに加えて、労災保険の未加入の事業者には最大2年間の保険料とその保険料に10%の追徴金を加えた金額の支払いが請求されます。この請求は従業員の労働災害にあったかどうかではなく、未加入であることが判明されることで徴収されます。

加えて、社会保険同様に罰則もあります。労働者災害補償保険法第51条です。ここでは、6ヶ月以下の懲役または35万円以下の罰金が課されることが定められています。

3 一般社団法人の設立後の手続き

一般社団法人の設立後の手続き

一般社団法人を設立した場合には、社会保険(健康保険と年金保険)と労働保険以外にも実施しなければいけない手続きがあります。また、一期終了後に必ず実施しなければならないことがあります。

ここからは社会保険や労働保険の加入以外で実施しなければいけない手続きについて解説します。

3−1 法人設立届出を提出

一般社団法人は、税金を納めるために法人設立届出手続きを実施します。

●法人設立手続きとは

法人設立手続きは、法人として国や地方自治体に税金を納めるために必要な手続きになります。法人設立手続きによって、法人の設立を行なったこととその法人の概要を税務署へ伝えるために法人設立届出書の提出が必要になります。

なお、法人設立届出書は、一般社団法人でも必要になりますが、株式会社や合同会社などすべての法人で必須の提出書類になります。

●法人設立届出書の提出先は3つ

法人設立届出書は、会社設立後に本店がある住所を管轄する税務署*と都道府県税事務所の法人事業税課や法人住民税課などと、市町村の法人住民税担当部署の計3つに提出します。

税務署への提出書類は、2部用意します。1部は税務署へ提出し、もう1部は自社の控えになります。2部用意して税務署に行くと、1部は受け取りされて、もう1部は受領印の捺印を受けられます。

なお、法人設立届出書の添付書類には、定款と法人の当時事項証明書が必要になります。2019年4月以降、税務署へは定款のコピーのみが添付書類になりました。都道府県税事務所や市町村の法人住民税担当部署では、定款のコピーと登記事項証明書が必要です。

●法人設立届の提出期限

法人設立届の提出期限は、一般社団法人を含めて法人の設立した日から2ヶ月以内になります。なお、2ヶ月を過ぎて提出しても、罰則などはありません。ただし、法人設立届を提出しないと、税務署から送付される書類が送付されません。

また、本来設立した時点から法人は納税義務が発生します。納税義務が発生しているにも関わらず法人の設立を税務署に伝えない状況が継続することは良くありません。罰則はないものの、設立してから2ヶ月以内に法人設立届を提出できるようにしなければなりません。

*管轄する税務署を知りたい方は国税庁ホームページの『税務署の所在地などを知りたい方』で確認できます。

3−2 定時社員総会の開催

一般社団法人は、一般社団法人法に定められている通りに事業年度が終了した後に定時社員総会の開催を行わなければなりません。定時社員総会は、株式会社における株主総会に似たものです。社員総会に参加し、議決権を行使するのが一般社団法人における社員になります。

●定時社員総会とは

定時社員総会は、一般社団法人法で実施が義務付けられている社員総会の2つの種類のうちの1つになります。

社員総会は、法人の重要事項を決定する最高意思決定機関に位置します。社員総会には定められた期間で開催される『定時社員総会』と重要事項の決議が必要な時に不定期に開催される『臨時社員総会』の2種類があります。

定時社員総会は、毎年の事業年度末から2ヶ月など定められた期間内に招集が義務付けられています。定時社員総会は、1年に1回事業年度の終了した後に必ず招集・開催が義務付けられています。

●定時社員総会での決議事項

社員総会で決議することを決議事項と言います。決議事項には、普通決議と特別決議の2つに分けられています。

普通決議においては、総社員の議決権の過半数をもつ社員の出席と、その出席した社員の議決権の過半数が議決要件になっています。特別決議では、総社員数の議決権の3分の2以上が必要となります。

普通決議にて決定する事項は、以下の通りです。

  • ・理事や監事の選任
  • ・理事や監事の報酬額もしくは報酬の定款規定
  • ・決算書類の承認
  • ・会計監査人の出席
  • ・残余財産の帰属(定款規定が無い場合)

特別決議にて決定する事項は、以下の通りです。

  • ・社員の除名
  • ・理事や監事や会計監査人の解任や責任の一部免除
  • ・定款変更
  • ・解散
  • ・事業譲渡(全部)
  • ・合併契約の承認

●決算の承認後に納税申告

定期社員総会において、決算の承認を行います。決算の承認後には、事業年度の利益に基づいた納税の手続きに入ります。

一般的には、事業年度終了後の3ヶ月以内に定時社員総会を実施する旨が定款に規定されている一般社団法人が大半です。また、多くの一般社団法人は3月で事業年度が終了するため、6月までに定時社員総会を開催する流れになっています。

3−3 理事の重任登記手続き

一般社団法人の理事は、法人の業務を執行する者になります。株式会社の取締役と似た役割を一般社団法人で実施するので、「業務執行権限」と「代表権限」の2つの権限があります。

●理事の任期

一般社団法人の理事には任期があります。理事の任期は、最長2年になります。2年を1年などに短縮することは可能ですが、3年などに延長することはできません。

設立時の理事の任期は、設立から2年以内の定時社員総会が終結するまでと定めている一般社団法人が一般的です。

理事の任期が満了するまでに社員決議において、理事の選任をしなければなりません。また、理事の選任を実施後には原則2週間以内に登記申請をしなければなりません。

●設立後2年目の定時社員総会に注意

一般社団法人設立して2年目の定時社員総会のタイミングで、理事の選任を行い、その後に登記申請をします。この時が、途中で理事の退任に伴う選任などがなければ、初めての定時社員総会での理事の選任になるはずです。

設立後2年目の定時社員総会における理事の選任とその後の登記申請を失念してしまう法人がいますので、注意が必要です。2週間経過したのちにも登記は可能です。しかし、登記を怠ったと判断されると登記懈怠(けたい)となり、罰則が課される場合があります。

また、失念して理事の再任をせずに任期を終了すると理事の資格を失います。資格を失うと、代表権や業務執行権限も失うことになるので業務上大きな支障が発生します。

●理事の選任は普通決議

設立から2回目の定時社員総会において理事の選任決議を実施します。理事の選任決議も普通決議にて実施することができます。

なお、今までの理事と同じ人物が理事を継続する場合も理事の重任として普通決議が必要です。

代表理事を複数の理事から互選することが定款で規定されている場合には、定時社員総会の終了後に理事の中から代表理事を決定します。

●重任と就任

一般社団法人において、すべての理事は任期満了後には自動的に退任となります。退任後に多くの理事は引き続き理事を継続します。

この場合にも、理事の選任のプロセスは必要となりますが、退任した理事が引き続き理事を就任することに問題はありません。ただし、任期満了によって退任して改めて就任して実質上理事を変わらず継続する場合でも任期毎に変更登記が必要になる点に注意が必要です。

なお、理事が自身の意思などで理事の職を辞する場合、「辞任」と言います。任期満了によって理事を辞める場合、「退任」と言います。

一方、理事に就任する場合には「就任」と言います。基本、辞任した理事がその直後に理事を就任することはありません。引き続き理事の職を継続する場合には、定時社員総会までの任期満了によって退任した理事が、同じ定時社員総会の決議によって就任するパターンになります。

理事が退任して就任することを登記上では『重任』となります。重任と同じ意味で利用される言葉に「再任」がありますが、登記上では再任と登記されることはありません。

登記上では、初めて理事として就任する場合や退任してから期間経過後に再び理事に就任した場合などは「就任」と登記されます。任期満了で退任した後に同じ理事が期間をあけることなく再び理事に就任する場合には「重任」と登記して区別されています。

●法務局での登記申請

理事が選任された日から、2週間以内に役員変更を登記申請します。登記申請は、一般社団法人の主たる事務所を管轄する法務局にて手続きが必要です。

なお、理事を同一人物が継続する場合も、任期満了による退任と新たな任期での就任である『重任』の登記を行います。

理事の登記申請には、登録免許税10,000円が必要です。

登記申請に必要な書類は以下の通りになります。

<理事の登記申請における必要書類>

  • ・役員変更登記申請書
  • ・法人の定款
  • ・理事の選任を行なった社員総会議事録
  • ・理事の互選書*
  • ・理事の就任承諾書
  • ・代表理事の就任承諾書*など

*互選書と代表理事の就任承諾書は、代表理事を互選によって決定した場合に必要になります。

●社員総会議事録の例

理事の選任を行なった社員総会議事録が、理事の登記申請には必要になります。事前に作成して、就任から2週間以内に登記申請を行う必要があるため、議事録に必要な要点を押さえておくべきです。

ポイントは、誰がどのように決定したかと選任した人物がその就任を承諾したことを記載することになります。

<議事録の記載例>

議案第○号 理事の任期満了に伴う選任について

当社理事2名が任期満了に伴い本定時社員総会の終結後に退任するため、理事の選任が必要があることを議長が述べた。その選任の方法は、議長の指名で決定することが出席社員全員の承諾によって決定した。そのため、議長は下記の人物を2名を理事に指名した。

議場では、2名の指定された理事について承認を行い、選任することが可決確定することとなる。理事に指名された2名の者は理事の就任について承諾した。

理事 山田 太郎
理事 川田 花子

4 まとめ

社団法人の社会保険の加入について

今回は、従業員を雇用している一般社団法人を含むすべての法人で加入義務が発生し、加入手続きが必要となる社会保険や雇用保険について主に解説しました。

社会保険や雇用保険は加入義務があり、加入する要件を満たした従業員がいる場合には定められた期間内に手続きをする必要があります。また、手続きにおいても定められた申請書類を用意する必要があります。

加入を怠る状態になっている状態だと遡って加入することになり、未加入期間の保険料の一括納付などをしなければなりません。このため、設立して従業員を雇用するタイミングから社会保険について適切な知識を持って対応していく必要があります。

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