決算書を読めるようになる4つの基本知識〜苦手な人もスラスラ分かる〜
ビジネスマンとして身につけたほうがいいと言われるのが決算書を読む知識です。しかし実際に決算書の内容を理解できるサラリーマンは多くありません。ただの社員なら自分の会社の決算書すらまともに読んだこともないのではないでしょうか。
決算書はいわば会社の成績表とも言われる計算書類です。上場企業などは国際的な統一ルールに合わせた決算書を作ることが求められますが、中小零細にはそこまで厳格な書類作成は必要ありません。
決算書はさまざまな項目から構成されていますが、全てを把握する必要はありません。あくまでビジネスマンとして知っていれば仕事で役立つツールだと思って、本記事を気軽に読み進めてみてください。
目次
そもそも決算とは?
年末・年度末になるとチラシによく「決算セール」「大決算」などの言葉が踊ります。在庫を残したくない会社が決算時期に合わせて商品を値下げすることで売り上げを伸ばそうとするわけです。決算書では売れなかった在庫の数量や総額を記載しなければなりません。会社は出資者(株主)に少しでも良い決算書を見せたいがために躍起になって在庫処分に取り組むのです。
決算とは簡単に言えば、1年間の収支報告書を作成するということです。決算書は正式には財務諸表とも呼ばれます。1年を通じた事業活動でいくら売り上げたのか、いくら借りたのか、いくら蓄えることができたのかなどを明らかにする書類です。
お金をさらに集めるために作成する
決算書を作成する理由は至ってシンプルです。たとえば東証一部に上場している企業は所有と経営が分離されています。会社を所有するのは出資している株主であり、経営は役員が行います。一部上場するには時価総額250億円以上、株主数2200人以上などの厳しい条件が設けられています。
上場企業を運営していくのには大変なお金が必要になるので、成長企業であることを示すような決算書を公開することで、さらに資金を集めようとするのです。
粉飾決算で刑務所に入る可能性も…
しかし、なかには倒産寸前なのに数字を偽って経営があたかも上手くいっているかのように見せる企業もあります。これを粉飾決算といいます。
電機メーカー大手の東芝が、2015年に不正会計を行っていたことが明らかになった事件は記憶に新しいのではないでしょうか。東芝は過去7年間で約1500億円の利益水増しを行っていました。この粉飾決算をきっかけに、東芝は経営危機に陥り、1万人以上をリストラすることを余儀なくされたのです。
この不正会計処理事件では逮捕者は出ませんでしたが、粉飾決算を行った場合、関わった者は会社法上の特別背任罪や刑法上の詐欺罪に問われる可能性があります。いずれも懲役刑の対象の重い罪ですので、経営者には嘘偽りのない決算書の提出が求められてます。
粉飾決算で問われる罪
罪状 | 法律 | 内容 |
---|---|---|
特別背任罪 | 会社法ほか | 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金 |
有価証券報告書虚偽記載罪 | 金融証券取引法 | 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金。法人には両罰規定として7億円以下の罰金 |
違法配当罪 | 会社法ほか | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 |
詐欺罪 | 刑法 | 10年以下の懲役 |
私文書偽造罪 | 刑法 | 3ヶ月以上5年以下の懲役 |
民事では損害賠償責任
粉飾決算をすると民事上の責任も負う可能性があります。たとえば、第三者に対して損害が生じた場合、役員に悪意または重大な過失があったとき賠償する責任が生じます(会社法429条)。また、株主に対して違法に配当を行っていた場合、役員は連帯して、配当を受けた金銭に相当する金銭を会社に支払わなければなりません(同462条)。
有価証券報告書に虚偽の記載をしたり、重要な事実が欠けていたりする場合は、これにより生じた損害を賠償する責任が生じます(金融証券取引法22条、24条の4)。
粉飾決算で生じる民事上の責任
役員等の第三者に対する損害賠償責任 | 会社法429条 | 役員等が自己の職務について悪意または重大な過失があった場合、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う |
剰余金の配当等に関する責任 | 会社法462条 | 不正に配当が行われた場合、金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者は株式会社に対し、連帯して、配当を受けた者が配当金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う |
虚偽記載のある有価証券報告書の提出会社の役員等の賠償責任 | 金融証券取引法22条、24条 | 有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合は、これにより生じた損害を賠償する責任を負う |
このほか粉飾決算した決算書類をもとに銀行から融資を受けていた場合、銀行から損害賠償を請求される可能性もあります。
有価証券報告書と決算短信
ひと口に決算書(財務諸表)といっても、その種類はさまざまです。
有価証券(株式)を発行する企業が、ディスクロージャー制度(企業内容開示制度:一般投資者が十分に投資判断を行うことができるような資料を提供するため、有価証券届出書を始めとする各種開示書類の提出を有価証券の発行者等に義務付ける制度)に基づいて外部に情報を開示する資料が有価証券報告書となります。この有価証券報告書のなかに決算書が含まれており、さらに連結財務諸表、個別財務諸表と細かく分かれていきます。有価証券を発行する会社は、原則として事業年度ごとに決算日の3ヶ月以内に有価証券報告書を提出しなければなりません。
そして、有価証券報告書を発表する前に、決算内容の要点を整理したものが決算短信と呼ばれる資料です。いわば有価証券報告書のダイジェスト版となります。決算短信は証券取引所が定めるルールに従って、作成する必要があります。発表時期は四半期ごととなっていいます。投資家が投資判断をする重要な資料と位置付けられており、世間的な注目度が高い決算書類となっています。決算日から45日以内に提出しなければなりません。
決算書を構成する4つの計算書類
それでは決算書を細かく見ていきます。決算短信などで発表される財務諸表は1.貸借対照表、2.損益計算書、3.キャッシュフロー計算書、4.株主資本等変動計算書の4つから構成されます。取引先の経営状況が手に取るように分かるので、ビジネスマンとして知っておいたほうが得になるでしょう。
1.貸借対照表は、英語ではバランスシート(balance sheet)と呼ばれ、会社にいくらの資産と負債があるのかを端的に示した資料です。貸借対照表が読めると、その会社の規模や借金をいくら抱えているかを判断することができます。
2.損益計算書は、英語ではプロフィット・アンド・ロス・ステートメント(profit and loss statement)と呼ばれ、会社の売上や利益、費用などを明らかにする書類です。
3.キャッシュフロー計算書(cash flow statement)では、キャッシュ、つまり現金の流れを表す書類です。
4.株主等変動計算書とは、貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成される決算書となります(参照:中小企業庁)。少し難しい説明ですが、要は貸借対照表の純資産の部の変動額を表す計算書類となります。
貸借対照表(B/S)について
決算時点で会社にいくらのお金があるかを示すのが貸借対照表です。個人でたとえるなら銀行に預けている貯金だったり、月々のローンの支払い額だったりします。ただ預金額や借金だけではないのが会社の貸借対照表です。
貸借対照表はおおまかに次表のような構造をしています。左側に「資産の部」、右側に「負債の部」「純資産(資本)の部」と分けられています。なお、「資産の部」=「負債の部」+「純資産の部」と一致するように作成しなければなりません。
貸借対照表の構造
借方 | 貸方 |
---|---|
資産の部 | 負債の部 |
純資産(資本)の部 |
資産の部
ここでは現金や建物・土地など会社の資産となる勘定科目(金額の内容をあらわす名目)が掲載されます。会社は事業活動するにあたり、さまざまな資産を保有しています。本社ビルや金融機関に預けている現金ほか、パソコンなどの備品やその他什器、切手・印紙なども資産となります。
資産の部はさらに「流動資産」「固定資産」に分けられます。流動資産は短期的に回収することを目的とした資産です。1年以内に現金化できる資産であり、たとえば「現金および預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券」「棚卸資産」「繰延税金資産」「貸倒引当金」などがあります。なお、早く現金化できる順に並んでいます。
一方、固定資産は長期的に保有することを目的とした資産になります。すぐには現金化することはできません。「建物・土地」「機械・運搬具」「工具、備品」などの形のあるもの(有形固定資産)から、「のれん」「ソフトウェア」「営業権」「商業圏」の形がないもの(無形固定資産)、「有価証券」「繰延税金資産」「貸倒引当金」などがあります。
資産の部の例
流動資産 | 現金および預金 | 手元にある「現金」と銀行に預けている「預金」のこと。「預金」は銀行ごとに記載する必要がある。連結決算書の場合、グループ会社すべての合計額となる。 |
---|---|---|
受取手形 | 代金の支払いを約束した手形。商品を売ったものの、未だ代金を受けっていない「売上債権」の一種 | |
売掛金 | 商品販売後、未だ受けっていない商品代金 | |
棚卸資産 | 商品・製品、原材料、仕掛品など | |
貸倒引当金 | 売掛金、短期貸付金などの金銭債権に対して取り立てが不可能となる見込みを計上するもの。万が一のために備えておく資金 | |
固定資産 | 建物・土地 | 本社ビル、事務所、倉庫、駐車場、敷地など。なお、長年使用すると価値が落ちるので減価償却する必要が出てくる |
機械・運搬具 | 機械装置、これに付随する設備、自動車、フォークリフトなど | |
工具、備品 | 工場などで使われる計測器、測定器や机、椅子、パソコン、その他什器など | |
のれん | 企業を買収した際に生じ、高額になるほどのれんの金額も大きくなるもの | |
繰延税金資産 | 払いすぎた税金が、将来回収されることを前提として計上されるもの |
負債の部
会社の負債、つまり借金を明らかにするのが「負債の部」です。他人資本とも呼ばれます。たとえば、銀行などからの借入金、ツケで購入した商品代金、ガス代・電気代などの公共料金、法人税・事業税・住民税などが該当します。早くお金を返さなければならない順に並びます。
負債の部も、短期で返済しなければならない「流動負債」と、支払い期限が1年以上の「固定負債」に分けられます。
流動負債は1年以内に返済する必要があります。「支払手形」「電子記録債務」「買掛金」「短期借入金」「未払金」「未払法人税等」「賞与引当金」などがこれに当たります。いずれも、サービスは受けたもののまだ支払っていない代金となります。
一方、固定負債は、長期間かけて期限が到来する支払い債務です。「社債」「新株予約券付社債」「長期借入金」「退職給付引当金」「繰延税金負債」などがこれに該当します。
負債の部の例
流動負債 | 支払手形 | 仕入先に対して現金の代わりに手形で支払ったものなど |
電子記録債務 | 企業間取引などで発生した債権の支払いをインターネットなどの電子記録で行うことができるもの。手形の電子版である | |
買掛金 | 商品・原材料等を購入したがまだ支払っていない代金 | |
短期借入金 | 支払い期限が1年以内となっている借入金 | |
未払金 | 1年以内に支払われる備品などの購入代金 | |
未払費用 | ガス・電気代など継続的に提供されるサービスに対して未払いとなっている費用 | |
未払法人税等 | 未納の法人税、未払法人税等、住民税(道府県民税・市町村民税)など | |
固定負債 | 社債 | 会社が資金調達のために発行する有価証券 |
新株予約券付社債 | 新株予約権(一定の条件で株式を取得できる権利)が付けられた社債 | |
長期借入金 | 返済期限が1年を超える借入金 | |
退職給付引当金 | 将来見込まれる従業員の退職金・年金をあらかじめ計上するものなど | |
繰延税金負債 | すでに支払った税金が、本来支払うべき金額に足らず、将来その差額分を支払うことになる債務。みなし税金とも言われる |
純資産の部
「純資産の部」は、以前は「資本の部」と呼ばれていましたが、平成17年に呼び方が改定されました。
純資産は自己資本(株主資本)ともいい、他人資本と明確に区別されるものです。資本金や資本準備金などから構成され、資本金は株式会社をつくる際に元手となる資金です。株式を引き受ける人は株主と呼ばれ、株主総会での議決権を有します。また、会社が利益をあげれば、所有株式数に応じた配当金を受け取ることができます。
純資産の部のお金は返す必要がなく、安定して使えるものとなります。
株主からの出資金である「資本金」ほか、営業活動を通じて得た利益の「利益剰余金」、「その他有価証券評価差額金」「自己株式」などが株主資本に該当します。
資本金 | 株式発行によって株主から調達したお金 |
資本剰余金 | 自己株式処分差額、株式払込剰余金などの資本取引によって得られたお金 |
利益剰余金 | 事業活動によって得られたお金 |
その他有価証券評価差額金 | 売買目的有価証券、満期保有目的債券、子会社株式、関連会社株式の債券以外の有価証券を評価替えした際に生じる差額 |
自己株式 | 株式発行後に買い戻して自己が保有する株式 |
損益計算書(P/L)について
損益計算書は、1年を通して会社が事業活動で得られた利益やかかった費用を明らかにする計算書類です。いわば会社の成績表でもあります。英語ではProfit Loss Statement(プロフィット・ロス・ステイトメント)と表記され、PLと呼ばれます。
損益計算書では売上高から売上原価を引いて売上総利益を求め・、営業利益や経常利益を計算して、最終的に当期純利益を求めます。当期純利益は、その会社の最終的な利益となります。
売上高−売上原価=①売上総利益 |
↓ |
①売上総利益−販売費及び一般管理費=②営業利益 |
↓ |
②営業利益+(営業外収益−営業外費用)=③経常利益 |
↓ |
③経常利益+(特別利益−特別損失)=④税引前当期純利益 |
↓ |
④税引前当期純利益−法人税、住民税及び事業税−法人税等調整額−少数株主利益=⑤当期純利益 |
貸借対照表が財産や借金などのストックを表していたのに対して、損益計算書は売り上げ、経費、利益などお金のフロー(流れ)をあらわします。
損益計算書は①売上総利益、②営業利益、③経常利益、④税引前当期純利益、⑤当期純利益の5つの利益から構成されます。それぞれを簡単に見ていきましょう。
損益計算書の5つの利益
科目 | 金額 |
---|---|
売上高 | ◯◯◯◯◯ |
売上原価 | ◯◯◯◯ |
①売上総利益 | ◯◯◯ |
販売費及び一般管理費 | ◯◯◯ |
②営業利益 | ◯◯◯ |
営業外収益 | ◯◯◯ |
営業外費用 | ◯◯◯ |
③経常利益 | ◯◯◯ |
特別利益 | ◯◯◯ |
特別損失 | ◯◯◯ |
④税引前当期利益 | ◯◯◯ |
法人税、住民税及び事業税 | ◯◯◯ |
⑤当期純利益 | ◯◯◯ |
売上総利益
売上高から売上原価を引いたものが売上総利益となります。売上高とは商品・サービスを販売した全体の売り上げです。売上原価は、その商品を製造するのにかかった費用(人件費・材料費など)になります。売上総利益は粗利益とも呼ばれます。
なお、この売上高として計上できるお金は本業から得られた稼ぎに限られます。たとえば、「クルマの製造」を本業とする自動車メーカーが、ビル・土地などの不動産の売却で得られた利益を売上高として計上することはできません。
営業利益
①売上総利益から「販売費および一般管理費」を差し引くと営業利益を求めることができます。販売費および一般管理費とは、商品等の販売管理業務や研究開発業務で発生した人件費などの経費です。企業の本業に関する利益となります。
「販売および一般管理費」として計上できる経費にはさまざまな種類があります。水道光熱費や家賃などのほか、給料・賃金(従業員に支払う給料・手当・退職金)、消耗品費(FAX、電話機などの事務用品や文房具、キッチン用品や洗面用品)、通信費(電話代、インターネット料金)、接待交際費(取引先、得意先との飲食代、慶弔見舞金)、広告宣伝費(新聞や雑誌への広告掲載料、名刺・パンフレット・チラシ・ポスター作成費、ショウウィンドウの陳列費用)、雑費(事業活動に関するその他の費用)などがあります。
経常利益
②営業利益に本業以外での収益・費用を足し引きしたものが経常利益です。本業以外の活動も含めた総合的な利益となります。たとえば営業利益が良い会社でも経常利益が悪ければ、本業は上手くいっているが本業以外の財務活動(=財テク)はあまり得意ではないということを表します。逆に、営業利益が悪いのに経常利益がいい会社は、本業はイマイチでも財テクは上手いということになります。
本業以外での収益は「営業外収益」と呼びます。会社が本業以外で稼いできたお金であり、いわば副業です。たとえば、貯金や貸付金の利子である受取利息、株式の配当金である受取配当金、銀行に預けている預金の利息や株の配当金などが該当します。
一方、本業以外での費用は営業外費用と呼びます。長期借入金に対して支払う支払利息や社債を売却したときに生じる有価証券売却損などがこれに該当します。
税引前当期純利益
③経常利益に臨時的に発生する利益である「特別利益」を足して、臨時的に発生する損失である「特別損失」を引いたものが「税引前当期純利益」となります。
特別利益は営業取引に関係無く突然発生した利益です。ビル・建物の売却で得られた固定資産売却益、抱えていた債務の免除による債務免除益、長期間保有していた株の売却益、火災などで損害を受けた建物の損害保険による補償金、投資目的で所有していた有価証券が決算書に記載している金額よりも高く売却できたときの投資有価証券売却益などです。
また、特別損失は地震や火災などの自然災害に見舞われ、ビルが破損するなどしたとき固定資産除売却損として特別損失に計上します。このほか、土地を評価替えしたときに生じた土地評価損、退職金に上乗せした退職時加給金などがあります。
税引前当期純利益は法人税等の税金を支払う前の最後の利益となっています。
当期純利益
④税引前当期純利益から法人税、住民税および事業税や法人税等調整額の費用差し引いたのが当期純利益となります。会社における最終的な利益であり、純利益とも呼ばれています。
企業には事業活動を通じて獲得した売上に対して法人税、事業税、住民税がかかります。
法人税 | 国税の一種であり、法人の所得に対して課される税金 |
事業税 | 法人税の所得によって超過累進税率で課せられる税金。所得が多ければ多いほど、かかる税率も高くなる累進課税となっている。東京都内に事務所を構える法人の場合、年800万円を超える所得の税率は年6.7% |
住民税 | 法人所在地の都道府県と市町村に納税する税金(東京都の場合は、都民税)。計算方法には、会社の規模によって所得に関係なく一定額が課せられる均等割と事業年度の法人税額によって課せられる法人税割の2つがある |
以上の税金を差し引いて、法人税等調整額をさらに引き、連結グループの以外の少数株主に属する少数株主利益を差し引けば、当期純利益を求めることができます。
損益計算書のまとめ
売上高 | 商品・サービスを販売した全体の売り上げ |
売上原価 | 商品を製造するのにかかった費用(人件費・材料費 |
①売上総利益 | 売上高から売上原価を差し引いた利益 |
販売費及び一般管理費 | 商品等の販売管理業務や研究開発業務で発生した人件費などの経費 |
②営業利益 | 売上総利益から「販売費および一般管理費」を差し引いた利益 |
営業外収益 | 本業以外での収益 |
営業外費用 | 本業以外での費用 |
③経常利益 | 営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いた利益 |
特別利益 | 臨時的に発生する利益 |
特別損失 | 臨時的に発生する損失 |
④税引前当期利益 | 経常利益に特別利益を足して特別損失を引いた利益 |
法人税、住民税及び事業税 | 法人の営業活動にかかる税金 |
⑤当期純利益 | 税引前当期純利益から法人税、住民税および事業税や法人税等調整額の費用差し引いた最終利益 |
キャッシュフロー計算書(C/F)について
会社にあるお金の流れの出入りを示し、現金(キャッシュ)の流れを表したものがキャッシュフロー計算書(cash and flow statement)です。会社の活動別に、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローに分かれます。
営業活動によるキャッシュフロー
本業である営業活動で得た現金の流れを表すのが営業活動によるキャッシュフローです。損益計算書の税引前当期純利益をベースとして営業損益の対象となる科目を加減算して営業活動から得た現金(キャッシュ)を計算します。
営業活動によるキャッシュフローの項目
税引前当期純利益 | 法人税、事業税などの税金を調整する前の利益 |
減価償却費 | 建物など固定資産の使用により計上した費用。しかし、現金が流出したわけではないため、足し戻しをする |
貸倒引当金の増加額 | 売掛金、短期貸付金などの金銭債権に対して取り立てが不可能となる見込みを計上する。しかし、現金が流出したわけではないため、足し戻しをする |
固定資産売除却損 | 固定資産を除却または売却したとき減損。しかし、営業活動とは無関係なので足し戻しする |
受取手形および売掛金の増加 | 貸借対照表では増えるが、キャッシュフローは利益より少なくなるため、減算する |
支払手形および買掛金の増加 | まだ現金が流出したわけではないので足し戻す |
投資活動によるキャッシュフロー
資金の投下や回収の状況を表すのが「投資活動によるキャッシュフロー」です。有形固定資産の取得・売却や、無形固定資産の取得・売却、有価証券の取得・売却などの投資活動による収支の流れを記載します。
投資キャッシュフローがプラスなら、本業以外の投資活動でうまく稼いでいることをあらわし、マイナスなら将来の営業活動のために投資していること分析できます。
有形固定資産の取得による支出 | 建物・土地などを取得することによって支出した現金 |
有形固定資産の売却による収入 | 建物・土地などを売却することによって得られた現金 |
無形固定資産の取得による支出 | のれん、ソフトウェア、営業権などを取得することによって支出した現金 |
無形固定資産の売却による収入 | のれん、ソフトウェア、営業権などを売却することによって得られた現金 |
有価証券の取得による支出 | 株式や社債などを取得することによって支出した現金 |
有価証券の売却による収入 | 株式や社債などを売却することによって得られた現金 |
財務活動によるキャッシュフロー
資金調達や借金の返済状況を明らかにするのが財務活動によるキャッシュフローです。営業活動や投資活動で資金は増えたり減ったりするので、その最後の調整を行います。
社債の発行や増資などキャッシュ(現金)の不足をどのように補ったかを表します。財務キャッシュフローがプラスだと、資金の借入や社債の発行を行ったことをあらわし、マイナスなら借入金の返済や配当金の支払いを行ったことを表します。
科目としては短期借入金の増減額や、社債の償還による支出、自己株式の取得による支出をなどになります。
株主資本等変動計算書について
ビジネマンと違って株主が最も知りたいのは保有する株式の値上がり状況です。つまり自分の資産が増えたのか減ったのかです。それを明らかにするのが株主資本等変動計算書となります。貸借対照表の純資産の増減でも確認することはできます。しかし、どのようにして増えたのか、どのようにして減ったのかなどその過程をまで詳細に知るには、株主資本等変動計算書を確認する必要があるのです。
株主資本は、資本金、資本剰余金(資本準備金、その他の資本剰余金)、利益剰余金(利益準備金、その他利益剰余金)、自己株式の合計額をもって計算されます。
これらが「当期首残高」から「当期末残高」の変動要因(新株の発行、剰余金の配当など)ごとに記載されています。
ビジネスマンとして知っておきたい、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書を読み解く基本的な知識を解説しました。「決算書についてもっと勉強したい!」という方は、各計算書類をさらに深く学んでみてください。