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業務提携、資本提携、経営統合、合併とは 〜破産後の会社設立手続きも〜

事業を展開していく中で、業務提携や資本提携、経営統合、合併といった言葉を聞く機会はありますが、それぞれの意味の違いをご存知でしょうか。業務提携とは、ある企業と他の企業が資本の移動をしないまま、共同でビジネスを展開することです。いわゆるコラボレーションとも言えます。大きく分けて販売提携、技術提携、生産提携の3種類のパターンが存在します。今回は、業務提携、資本提携、経営統合、合併の意味の違い、そして破産後の会社設立手続きの方法を解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

業務提携

IT系大手企業のAppleとIBMが業務提携をした件が以前話題になりましたが、業務提携をすることでAppleはIBMのノウハウを入手することができますし、IBMもAppleの技術を手に入れることができるというメリットがあります。この場合の業務提携は、技術提携でありノウハウの交換をイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。

似たような業種が、似たような事業を展開していて、一社で生産するよりも二社で生産したほうが効率的なので業務提携をするという生産提携のパターンもあります。それぞれで負担していた部分をまとめることで、生産コストが割安になるという仕組みです。OEM契約も生産提携の一種です。ある会社の自動車と他の会社の自動車が自動車そのものはほとんど同じで、前についているマークと販売店だけ違うというケースを見たことがある方も多いのではないでしょうか。自社ブランドの製品の製造を他社に委託する契約です。

製品には、委託元のブランドを付けて販売します。一から製造するとなると工場の確保から始めなければいけませんが、OEMの場合は必要な時に外部の余力のある企業に委託すればよいだけなので、より弾力的に生産量を調整することができます。

 

業務提携契約の内容

業務提携契約という契約類型は民法にはありません。実際の契約内容は、売買契約と請負契約、委任契約を組み合わせたものになります。業務提携契約を、実際に書面に落とし込むと業務提携契約書になります。業務提携契約書には、業務提携の目的、内容を明確に書きます。さらに、業務提携の目的と内容を実現するための方法を記載します。

業務提携契約そのものには企業間の資本の移動はありませんが、後々のトラブルを避けるために業務提携事業によって得られた収益について分配の割合や利用方法を決めておく必要があります。
さらに細かい項目として、業務提携事業の業務について第三者に委託して良いのか、プロジェクトチームを編成するとしたら、何人で構成するのか、事業展開に必要な金銭はどちらがいくら負担するのか、業務提携の終了時、終了後の秘密保持等の項目を条文にしてまとめます。

 

業務提携の注意点

業務提携は異業種間でも行われており、お互いのノウハウを取り入れることができる点がメリットです。スタートアップ間もない企業が業務提携をする理由としては、業務提携は資本の移動を伴わないため、負担が少なく他の企業とコラボレーションできるためというところが大きいでしょう。

ただし、業務提携契約は両企業にとって本当にメリットがあり、かつモチベーションが続く内容でなければ長続きは難しくなります。さらに、業務提携事業に投入するコスト、そこから得られる収益や、知的財産権などについても契約段階で決めておかないと、トラブルに発展することがあります。
自社のノウハウを共有するのと、企業秘密が漏れてしまうこととはまったく別の問題です。業務提携は自社の秘密が漏れる危険性が存在しているため、注意が必要です。

また、書面に残さない業務提携契約はおすすめできません。契約書という形が固くて気が引けてしまう場合でも、覚書を作成しておくことをおすすめします。なぜならば、業務提携契約はいくつかの種類の契約が複雑に絡み合ったものであり、トラブルが起きやすいためです。契約全般に言えることですが、あとからトラブルに発展する可能性がある場合は事前に対策しておくことが重要です。

資本提携

資本提携とは、企業同士が資本の持ち合うことを言います。実際には、経営権に影響しない程度の株式をお互いに持ち合います。業務提携では、あくまでも業務において提携するのみで、企業の資本には影響がありませんでしたが、資本提携では会社資本を持ち合うことで業務提携よりもお互いの関係を強くすることができます。資本提携は、広い意味のM&A(合併と買収)の一種とも言えます。お互いに株式を持ち合う場合を相互保有、片方の企業が相手の株式を持つ場合を資本参加と言います。

 

資本提携契約書の内容

資本提携契約の具体的な方法は、株式譲渡を行うか第三者割当増資を行うことです。資本提携契約書には、資本提携の目的、時期、内容(株式譲渡か第三者割当増資か)、協議事項(契約段階では決めていないが、将来的に発生するトラブルに備えた条項)を盛り込みます。

 

資本提携の注意点

資本提携契約は、提携と言いつつも他社の資本に影響を及ぼす契約です。議決権に影響のない範囲(株式の1割や、3分の1までといった低比率)で行うことが多いですが、仮に議決権に影響があるレベルにまで相手企業から出資されてしまうと、自社の経営に口を出されてしまう可能性があります。相手企業の資本を利用できるということは、自社の資本が強化されて企業としては強くなるわけですが、経営の独立性には十分に注意する必要があります。

経営統合

経営統合とは、複数の企業が資本を出し合って、同じ親会社を作ることを言います。経営統合をすると、同じグループの企業ということになります。資本や組織、給与水準等は別の企業なので異なりますが、同じ親会社の子会社という立場は同じです。このため、会社同士の関係が深まり、経営戦略などを共有することができます。

親会社は、株式を持って子会社を管理する目的で設立され、〇〇ホールディングスなどの名前が付くことが多くあります。例えば経営統合するA社とB社があったとします。A社とB社は、Cホールディングスを作り、傘下に入ることにしました。Cホールディングスは、A社とB社の株式を持ち、それぞれの配当で成り立っている会社になります。A社とB社は、Cホールディングス傘下という立場が同じ別会社になりました。A社もB社も、人事制度やシステムは以前のままです。また、万が一A社が経営不振に陥っても、B社には影響はありません。C社は、A社とB社の両方の将来を見据えた戦略を立て、統制していきます。

 

経営統合の内容

経営統合の具体的な方法としては、株式移転と会社分割を用いて親会社を作ります。もとから存在していた株式を、新しく作った親会社に移転すれば、持ち株会社である親会社を作ることが可能です。契約書の主要な内容は、株式移転についてです(会社設立の具体的な方法については、今回は割愛します)。

 

経営統合の注意点

経営統合の場合は、経営母体を同一にできる一方で別会社としてそれぞれが存続していく点が特徴です。この点がメリットにも、デメリットにもなり得ます。つまり、子会社同士は別会社なので、万が一、子会社の経営が上手くいかなくても、他社には影響を及ぼさないですが、別会社であるため足並みを揃えることが難しくなります。「企業同士の協調」という面で、経営統合は不十分なところがあります。

また、コストを削減しようと考えて経営統合をしたのに、結局、別の会社のままなので事業コストが下がらなかったというケースもあります。事業部が重複したり、会計システムが異なるといったことも起こり得ます。ノウハウの共有やコスト削減の効果が少ないこともある点に留意しましょう。

合併

合併は、複数の企業が新たに会社を設立することです。A社、B社があるとします。新設合併の場合、A社とB社が合併して、C社を作ります。C社ができると、A社とB社は解散して消滅します。A社とB社の経営権は、C社が引き継ぎます。

吸収合併の場合は、A社がB社を吸収し、A社になります。B社は消滅し、経営権はA社が引き継ぐというスタイルです。共通して言えることは、合併の場合、複数の企業が合併した後に残る会社が1社であるということです。結果的に1社にまとまるため、両企業の関係が深くなるというよりも一体になり、事業のコストを減らし、人事やシステムを統一することが可能になります。

 

合併の内容

まずは新設合併にするのか、吸収合併にするのかという協議が必要です。会社法では、「会社は、他の会社と合併をすることができる。この場合においては、合併をする会社は、合併契約を締結しなければならない。」(第748条)と規定されています。合併契約では、記載しないと契約が無効になってしまう点があるので十分に注意しましょう。

吸収合併の場合は749条1項に従い以下の項目を最低限記載しなければなりません。

一 株式会社である吸収合併存続会社(中略)の商号及び住所
二 吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して株式会社である吸収合併消滅会社(中略)の株主又は持分会社である吸収合併消滅会社(中略)の社員に対してその株式又は持分に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項(後略)
三 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社を除く。)又は吸収合併消滅持分会社の社員(吸収合併存続株式会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
四 吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる当該吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭についての次に掲げる事項(後略)
五 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する同号の吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭の割当てに関する事項
六 吸収合併がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)

 

新設合併の場合は753条1項に規定があります。

一 新設合併により消滅する会社(中略)の商号及び住所
二 株式会社である新設合併設立会社(以下この編において「新設合併設立株式会社」という。)の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
三 前号に掲げるもののほか、新設合併設立株式会社の定款で定める事項
四 新設合併設立株式会社の設立時取締役の氏名
五 次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項(後略)
六 新設合併設立株式会社が新設合併に際して株式会社である新設合併消滅会社(以下この編において「新設合併消滅株式会社」という。)の株主又は持分会社である新設合併消滅会社(以下この編において「新設合併消滅持分会社」という。)の社員に対して交付するその株式又は持分に代わる当該新設合併設立株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該新設合併設立株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項
七 新設合併消滅株式会社の株主(新設合併消滅株式会社を除く。)又は新設合併消滅持分会社の社員に対する前号の株式の割当てに関する事項
八 新設合併設立株式会社が新設合併に際して新設合併消滅株式会社の株主又は新設合併消滅持分会社の社員に対してその株式又は持分に代わる当該新設合併設立株式会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項(後略)
九 前号に規定する場合には、新設合併消滅株式会社の株主(新設合併消滅株式会社を除く。)又は新設合併消滅持分会社の社員に対する同号の社債等の割当てに関する事項
十 新設合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、新設合併設立株式会社が新設合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる当該新設合併設立株式会社の新株予約権又は金銭についての次に掲げる事項(後略)
十一 前号に規定する場合には、新設合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する同号の新設合併設立株式会社の新株予約権又は金銭の割当てに関する事項

 

吸収合併の場合も、新設合併の場合も合併後の会社の商号を記載しなければなりません。また、株式周りの記載事項が多いです。

 

合併の注意点

合併は複数の会社を一つの会社にまとめる手続きですので、結果として一社しか残りません。例えば、経営難の時期があったとして、経営統合であればバラバラの会社なので影響を受けない会社もあるかもしれませんが、合併の場合は一社しかないため経営難に陥った場合は影響を受けてしまいます。

また、吸収合併と新設合併ではそれまでに得た許認可についての扱いが異なります。吸収合併の場合は吸収される側の許認可を引き継ぐことができますが、新設合併の場合は取り直しになるので時間と費用がかかることに留意しましょう。

業務提携、資本提携、経営統合、合併という4つのキーワードを解説しましたが、それぞれの違い、メリットとデメリットを抑えた上で自社の経営に活用しましょう。契約を締結するときは、内容を十分に検討することが大切です。

破産後に会社を設立する方法

自己破産する理由は様々ですが、中小企業の経営をしている方は会社が倒産してその連帯保証人として自身も自己破産をするケースがあります。このような場合でも、自己破産をした経営者が再び会社を設立することは可能です。今回は、会社の倒産や個人の自己破産について概要や手続きを確認し、自己破産後の会社設立手続き、自己破産した後にできること・できないこと、会社が倒産する理由ベスト10を見ていきましょう。

 

会社の倒産の種類

中小企業が倒産する場合、多くのケースで債務を連帯保証している経営者の方も自己破産することとなります。まずは、会社の倒産の種類や破産処理の手続き、個人の自己破産手続きについて確認してみましょう。

企業が債務の支払いをできなくなることや、事業を継続できなくなった状態などを倒産と言います。実は、このよく使われる倒産という言葉は正式な法律用語ではないのです。大手の企業信用調査会社の帝国データバンクでは下記のいずれかに該当すると認められた場合に倒産と判断しています。

  1. ①銀行取引停止処分を受ける
  2. ②内整理(※注1)する(代表が倒産を認めた時)
  3. ③裁判所に会社更生手続開始を申請する
  4. ④裁判所に民事再生手続開始を申請する
  5. ⑤裁判所に破産手続開始を申請する
  6. ⑥裁判所に特別清算開始を申請する

(引用:帝国データバンクウェブサイト https://www.tdb.co.jp/tosan/teigi.html

(※注1)企業が支払不能などの状態に陥ったときに、法的手続きを取らずに債権者との直接の話し合いによる債務減免などで内々に整理を行うこと。

上記の①は、手形の不渡りなどで金融機関の取引が停止された状態を指していますが、②から⑥は会社が倒産するにあたって特定の手続きなどを踏んでいる状態です。②の内整理は「任意整理」や「私的整理」とも呼ばれ、倒産する会社と債権者が裁判所を通さずに直接当事者間で話し合う手続きです。③から⑥は裁判所の関与によって会社を整理する「法的整理」と呼ばれる手続きになります。①から⑥の概要については以下の通りです。

①銀行取引停止処分

手形や小切手が支払期日になっても決済できないことを不渡りと言います。この不渡りにはいくつかの理由がありますが、銀行取引停止処分の対象となるのは当座預金の残高不足などにより支払いができない1号不渡りです。最初にこの1号不渡りが発生すると不渡り処分を受けることとなり、全ての金融機関に不渡りを出した情報が通知されます。

この時点では、当座預金などを利用した全ての取引はそのまま行えますが、金融機関に不渡りの情報が通知されているため新たな資金調達などを行うのは難しい状態です。その後、6か月以内に2度目の1号不渡りが発生すると、銀行と借入や当座預金を利用した取引が2年間禁止される銀行取引停止処分が下されます。銀行取引停止処分を受けると企業の信用は著しく低下し、新たな資金の調達や手形・小切手などの支払い手段が使用できなくなることから事業の継続が困難とみなされ、事実上の倒産となります。

②内整理

内整理は企業が支払い不能などの状態などに陥り、債権者との直接の話し合いなどにより会社を整理する方法です。債務減免や債務免除などを受けることにより会社の清算手続きを行っている状態や会社の事業を停止していることが確認されたら、法的手続きを行っていなくても内整理による倒産として扱われます。

③会社更生手続

会社更生手続は、会社が事業を継続しながら更生計画に基づいた会社の再建を目指す再建型の法的整理です。会社更生法に基づいて、裁判所が選任した管財人の下で債務圧縮やスポンサー探しなどを進める更生計画に従いながら会社の更正を目指します。主に事業規模が大きく、倒産による社会的影響の大きい上場企業や大企業である株式会社が適用を受ける法的手続きです。裁判所に会社更生手続の開始を申請した段階で倒産として扱われます。

④民事再生手続

民事再生手続は民事再生法に基づく法的整理の手続きで、会社更生手続と同様の再建型の法的整理です。債務者の抱えている債務を圧縮して少なくなった債務を完済することにより再起を図る方法です。会社更生手続は上場企業などの株式会社のみが対象となっていますが、民事再生手続は株式会社や有限会社、学校法人から個人にまで適用の範囲が広げられています。再生手続きの対象となる企業の経営者が経営権を持ったまま再生を図ることができ、会社更生法による再建よりも手続きが簡単なことが特徴です。こちらも裁判所に民事再生手続の開始を申請した段階で倒産として扱われます。

⑤破産手続

破産手続は倒産する会社の全ての財産を金銭などに換えて債権者に配当する清算型の法的整理です。倒産形態の多くを占める倒産手続きで、債務者が支払い不能などの経済的破綻に追い込まれた場合に破産手続の開始が決定されます。資産の売却や債権者への配当などの手続きを行うのは裁判所が選任する弁護士などの破産管財人です。自ら破産手続開始の申請を行った場合は申請の段階で倒産として扱われます。

⑥特別清算

特別清算は会社法に基づく清算型の法的整理です。清算手続をすでに開始している株式会社が、債務超過などの状態によって清算に著しい支障をきたす場合に裁判所の監督の下で行われる法的手続きになります。破産手続と同様に会社の資産等を全て処分して清算する手続きになりますが、会社が選任した特別清算人が資産などの処分を行えることが大きな特徴です。

特別清算の申請後は、特別清算人が債務弁済の金額や時期などを定めた特別清算の協定案を作成し、債権者集会において出席した債権者の過半数および、債権総額の3分の2以上の同意を得られると協定案に基づいた弁済を開始します。この特別清算は、破産手続よりも比較的容易な手続きで迅速な清算が可能となる一方、大口債権者の協力が得られることや対象が株式会社に限られていることから利用される場面が限定された清算手続です。この特別清算も裁判所に特別清算開始の申請を行った段階で倒産として扱われます。

 

会社の破産処理手続き

中小企業が倒産する場合は上述の倒産手続きの中でも破産手続による倒産が圧倒的に多くなります。ここからは、会社の破産処理手続きについて少し踏み込んで確認してみましょう。

買掛金等の支払いができなくなり、今後も支払える見込みが立たない場合には会社の破産が認められます。株式会社などは負債が資産を上回る債務超過の状態も破産が認められる要件です。このような状況に陥り、事業自体が赤字で将来的な改善も見込めない場合には適切なタイミングで破産手続開始の決断が必要となります。一般的な株式会社の破産処理手続は以下のように進められます。

1.破産手続の申請準備

破産手続を申請するためには多くの申請書類が必要です。破産処理を弁護士に依頼する場合は着手金などの費用が発生するというデメリットもありますが、申請書類の作成を依頼することや会社が揃える書類なども教えてもらうことができます。また、支払いが滞っている場合には弁護士から受任通知の送付してもらうことにより会社への支払い請求や督促を止めることも可能です。もちろん、破産をする会社が弁護士費用を支払うことは容易ではありませんが、破産処理を経営者個人で進めることは非常に困難で手間も労力もかかります。破産手続開始の決断をした後はなるべく早く弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。

2.裁判所へ破産申し立て

破産手続の申請に必要な書類が整ったら裁判所へ破産の申し立てを行います。破産手続の申請を受けた裁判所は必要に応じて審尋(※1)を行いますが、これは破産の要件を満たしているかどうかを確認するための手続きです。会社が破産する場合は審尋に対応するため、必要に応じて代表者が裁判所へ出向き裁判官と面談することもあります。また、破産の申し立て時には破産管財人の報酬などに充てられる予納金の支払いも別途必要です。

(※1)裁判所が破産する債務者の意見などを聞く手続き

破産手続開始決定および破産管財人の選任

裁判所への破産申し立て後、破産の要件を満たしていると判断された場合は破産手続開始決定が行われます。また破産手続開始決定と同時に、裁判所は破産管財人の選任を行います。破産管財人とは、会社の財産や負債を調べて財産を換価(※2)し、債権者に対して配当を行う弁護士です。この破産管財人には会社とは全く関係のない第三者の弁護士が選ばれ、会社は帳簿などの必要書類を全て引き渡さなければなりません。

(※2)財産などを金銭にかえること

財産の調査と換価

破産管財人が選任されると、破産管財人は破産する会社の資産や負債を調査して換価します。売掛金や未収入金は回収し、不動産や動産を売却することによって債権者に配当する原資を現金化するのです。なお、破産管財人は資産や負債の状況を調査するとともに代表者に不正行為等がなかったかどうかも調査します。そのため、会社の代表者は破産管財人と何度か面談(※3)して質問などに答えなければなりません。万が一、財産隠しなどが見つかると破産手続自体に支障を及ぼすため、疑わしいことや判断がつかないことは包み隠さず破産管財人へ話すことが重要です。

(※3)会社が代理人となる弁護士と委任契約を締結している場合は、破産管財人との面談に委任契約している弁護士の同席を求めることができます。

債権者集会

破産手続開始決定から数か月後経つと裁判所で債権者集会が開かれます。債権者集会は破産管財人から破産会社の資産や負債、換価の状況などを債権者に説明するために開催される集会です。この場では、負債の調査において債権者から届け出があった債権等についても報告が行われます。1回目の債権者集会の時点で財産の換価や債務の調査などが終わっていない場合は2回目、3回目の債権者集会が開かれることもあります。

債権者への配当

財産の換価が終了すると、破産管財人は未納の税金や社会保険料、従業員の給与などを支払います。これらは売掛金などの一般債権よりも優先して支払われるもので、支払い後に金銭が残っている場合は一般の債権者へ配当が行われます。破産管財人が全ての配当を終え、裁判所に報告すると破産手続は終了です。その後、裁判所で破産手続終結の登記が行われると会社の登記も閉鎖されます。これら全ての手続が終わると法律で認められていた法人格は消滅し、残された債務も消滅します。

上記が一般的な会社の破産手続ですが、会社の残務整理や従業員の解雇なども破産手続と並行して行わなければなりません。従業員の解雇は事業を停止、または弁護士へ委任したタイミングで行うケースが多くなりますが、破産手続開始の決断が遅くなると従業員の給与なども支払えなくなるので注意が必要です。経営者が再起を図って事業を起こす場合には、将来的に解雇した従業員と係わりを持つ可能性も容易に想像できます。経営の再建が困難な場合は、従業員などに迷惑をかけないように適切なタイミングで決断を行うことも重要です。

 

代表者の自己破産手続き

会社が破産しても経営者である会社の代表者が債務を引き継ぐ必要はありません。もともと会社と代表者はそれぞれ別々の人格(会社は法人格)であり、上記の通り破産処理手続きが終了すると債務は消滅するので代表者まで影響を及ぼさないことが原則です。ただし、多くの中小企業では金融機関からの借入などを行う際に代表者が連帯保証人となっているケースが多く、この場合は代表者が会社の債務を弁済する必要があります。

代表者個人も弁済できない場合は会社と同様に財産を処分するなどの債務整理の手続きが必要です。個人の債務整理では、債務を圧縮して支払いながら再生を目指す個人再生という方法や、債権者と直接話し合って債務の弁済を行う任意整理という方法もあります。しかし、会社の破産は債務の総額が大きいことも多く、連帯保証人となっている代表者の生活の再建を図る目的から債務が免除される自己破産を選択するケースが多くなります。この場合、会社の破産申し立てと併せて連帯保証人である代表者の自己破産申し立てを行うことが一般的です。それでは、以下で代表者個人の自己破産手続きについて確認してみましょう。

1.自己破産の申し立て準備

会社の破産申し立てと同様に自己破産の申し立てを行うためには多くの書類が必要です。破産申立書や住民票、債権者一覧表などの書類を準備しなければなりませんが、破産処理を弁護士に依頼する場合は申し立てに必要な書類を作成してもらうことができます。また、会社の破産と同様に弁護士から受任通知を送付してもらうことで債務者個人への支払い請求や督促をストップすることが可能です。代表者の自己破産の際も費用は掛かりますが、弁護士などの専門家に依頼して会社の破産と同時に自己破産の手続きを進めることが一般的です。

2.自己破産の申し立て

必要な書類が整ったら裁判所へ自己破産の申し立てを行います。個人の自己破産手続きは債権者に配当する財産の有無によって2種類の手続きが存在し、「同時廃止」と「管財事件」に分かれます。破産手続開始決定と同時に破産手続廃止決定が行われる手続きが「同時廃止」で、破産手続開始決定と共に破産管財人が選任される手続きが「管財事件」です。

3.自己破産申し立て後の流れ

自己破産の申し立て後は「同時廃止」と「管財事件」でそれぞれ異なる流れとなります。

【同時廃止】

自己破産の申し立てをすると必要に応じて裁判所から債務者尋審が行われます。債務者尋審の日時が設定された場合は、代理人の弁護士と必要に応じて代表者本人が裁判所へ出向き、裁判官と面談して自己破産に至る経緯や事情の聴取に対応しなければなりません。管財事件に移行する必要性がないと判断されると、債権者に配当する財産がないため財産の調査や換価も行う必要がなく、破産手続開始決定と同時に破産手続廃止決定が下されるのです。同時廃止の決定が下されると、代表者本人が免責尋審と呼ばれる裁判官との面談を行わなければなりませんが、債務者尋審や免責尋審を通して裁判所が問題ないと判断すれば免責決定が行われます。その後、免責決定が確定すると債務が免除され債務の支払いをする必要がなくなります。

【管財事件】

同時廃止と同様に申し立て後に必要に応じて裁判所から債務者尋審が行われます。債権者に配当する財産がある場合は管財事件に該当し、破産手続開始決定が行われると同時に破産管財人も選任されます。会社の破産と同時に申し立てを行った場合は基本的に会社と同じ破産管財人が選任され、会社と併せて手続きが進めることが一般的です。その後、破産管財人との面談を経て債権者集会が開催され、配当する金銭がある場合は債権の優先順位と債権額に応じて債権者に配当が行われます。ここまでは会社の破産手続と同様ですが、個人の自己破産では破産手続き終了後に免責決定が行われます。その後、債務が免除され一切の支払いが不要となります。

自己破産後の会社設立手続き

前述の通り、会社が破産しても代表者個人が債務を引き継ぐ必要はありません。ところが、中小企業では代表者が会社の連帯保証を行っていることが多く、会社の破産と同時に代表者個人が自己破産するケースが多いのも現実です。中小企業は財務基盤が脆弱な傾向にあるため、景気変動や取引先の倒産などによる外部環境の悪化で倒産することも多々あります。それでも、事業自体の見通しが明るい場合には自己破産をした経営者が再度事業に挑戦したいと思われることもあるでしょう。このような場合は、自己破産により様々な制約が生じるものの、新しい会社を設立することも可能です。ここからは、自己破産後の会社設立手続きについて確認してみましょう。

自己破産した経営者は信用面でペナルティを受けることとなり、住宅ローンや車のローン、クレジットカードの審査などが通らないという制約を受けます。これは、信用情報機関に自己破産をした事故情報が記録されるため、事故情報が残っている間は金融機関が新たな貸し付けなどを行わないことが理由です。そのため、自己破産後に会社の代表者になっても連帯保証人としての役割を果たすことができず、通常の起業と同様に開業に必要な資金や運転資金を金融機関などから調達することは事実上不可能です。そのため、自己破産後に会社を設立する場合は以下の4つの選択肢から設立方法を検討し、設立手続きを行うこととなります。

開業に必要な手元資金を貯めてから設立する

ご自身で資金を貯めてから再度会社を設立する方法です。会社を設立するためには開業資金だけでなく当面の運転資金なども必要となります。自己破産した経営者の方がこれだけの資金をご自身で蓄えるのは大変難しいことですが、これが最も確実で安全な方法です。運転資金も準備しているため当面の資金調達も不要で、自己破産した経営者の方が再度代表者となっても全く問題はありません。

信用力のある親族を共同経営者や代表者にして会社を設立する

信用力のある親族に共同経営者や代表者になってもらい、会社を設立する方法も選択肢の一つです。会社の代表者などを信用力のある親族につとめてもらうことで、借入時の審査を通過できるようになります。また、配偶者などの近い親族が経営者となる場合は、ご自身が借入の連帯保証人だったときと同じように借入金の運用や返済計画の立案ができる点も大きなメリットです。ただし、事業が軌道に乗って会社が大きくなると親族間といえども経営権などを巡ってトラブルとなることも考えられます。そのため、共同経営者や代表者になってもらう親族は慎重に選ぶ必要があります。

公的な支援制度などを活用

日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金」や信用保証協会の「再挑戦支援保証」、商工組合中央金庫の「再チャレンジ支援貸付」のような公的な支援制度などを活用して再度起業に必要な資金や運転資金等を調達する方法も選択肢の一つです。こちらでは、それぞれの支援制度について概要を確認してみましょう。

Ⅲ-1.再挑戦支援資金

再挑戦支援資金は日本政策金融公庫が事業に失敗した起業家を対象に融資を行う制度です。起業家の方の経営者としての資質や事業の見込みなどを評価することによって再起を図るために必要な資金を融資してくれます。以下の3つの条件に該当する方が融資の対象です。

  • 廃業歴を有する個人または廃業歴のある経営者が営んでいる法人であること
  • 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みまたは整理されていること
  • 廃業の理由・事情がやむを得ないものなどであること

これらの条件を満たした上で、経営者としての資質や事業の見込みなどを勘案して融資の判断が下されます。融資の用途は設備資金と長期運転資金が対象となり、直接貸付で7億2千万円(うち運転資金2億5千万円)が融資限度額です。利率は信用リスクや融資の期間などに応じて所定の利率が適用されますが、技術やノウハウ等を活かした製品化や売上が見込めるもの、女性や若年者(35歳未満)、高齢者(55歳以上)が必要とする資金は通常の利率よりも低い特別利率が適用されます。なお、担保設定の有無や担保の種類、経営者の個人保証は個別の案件ごとに判断されるので、この再挑戦支援資金の活用を検討される方は日本政策金融公庫へ直接問い合わせることをおすすめします。

Ⅲ-2.再挑戦支援保証

再挑戦支援保証は信用保証協会が産業競争力強化法に基づき、過去の事業で失敗した経営者が再起を図るための手助けをする制度です。日本各地の信用保証協会が保証を行うことで金融機関から必要とする資金を円滑に調達することができるようになります。信用保証協会の保証限度額は創業関連保証と合算で2,000万円までとなっており、保証期間は最長で10年です。信用保証協会へ支払う保証料の料率は年1%前後の割合(各地の信用保証協会によって異なる)となっており、中小企業会計を準拠していることなどによって別途割引もあります。なお、この再挑戦支援保証は日本各地の信用保証協会が行っているため、更なる詳細については各地の信用保証協会へ直接問い合わせを行って確認してください。

Ⅲ-3.再チャレンジ支援貸付

再チャレンジ支援貸付は平成19年から商工組合中央金庫が独自に取り扱っている融資制度です。過去に事業に失敗した経験のある経営者を対象としており、新たに開業、または開業後概ね5年以内の事業者が下記の条件に該当すると利用することができます。

  • 廃業歴等を有する個人事業者、または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
  • 個人にかかる廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理されていること、または整理される見通しがあること
  • 廃業の理由や事情がやむを得ないものであること
  • 事業計画が合理的で実現性が高く、堅実な経営を遂行していく見通しが高いと商工組合中央金庫が認めたもの

ここで求められている条件は日本政策金融公庫が実施している再挑戦支援資金制度とほぼ同様です。これらの条件を満たすと再起を目指す事業に必要な設備資金や長期運転資金、短期資金の調達が可能となります。この融資制度は貸付限度額が定められておらず、利率についても商工組合中央金庫が定める所定の利率が適用されます。ただし、原則として代表者の保証が必要となり、必要に応じて担保の差し入れなども必要です。個別案件に対応した詳細については、商工組合中央金庫の各支店まで問い合わせを行って確認して下さい。

経営者保証に関するガイドラインを活用

経営者保証に関するガイドラインは中小企業の経営者が金融機関等と締結している個人保証について保証履行を求める際などにおける自主的なルールを定めたガイドラインです。法的拘束力はありませんが、中小企業と経営者、金融機関が自発的にこのガイドラインを遵守することを求めています。この手続きは会社の債務保証を行っている経営者の方が自己破産を行う前にできる手続きで、ここまで説明してきた破産後の会社設立の方法とは異なるものなのでその点は注意が必要です。以下の条件に全て当てはまる連帯保証人の経営者は自己破産をせずに保証債務の整理を求めることができ、再起に必要な一定の資産を手元に残せる可能性があります。

  • 法人の法的整理手続または準則型私的整理手続(※4)の申し立てを同時に行う、または手続き中であるか手続きが終了していること
  • 金融機関において、法人の債務及び保証債務の破産手続きによる配当よりも多くの回収を得られる見込みなど保証債務を整理することにより経済的な合理性が期待できること
  • 経営者に破産法に定める免責不可事由(※5)が生じていないこと

(※4)事業再生ADRや私的整理ガイドラインに則った私的整理、特定調停などの私的整理を指します
(※5)債権者に損害を与える財産隠しなどを意図的に行うことや不当に債務を負担する行為などの債務の免責が許可されない理由

これらの全ての条件に当てはまる場合は弁済計画を作成し、金融機関へ保証債務の整理を申し出ることが可能です。申し出を受けた金融機関は、経営者の手元に残す資産の範囲や弁済計画における分割弁済、保証債務の免除などを検討します。この保証債務の整理がまとまると、連帯保証人となっている経営者が再起に必要な資金や自宅などの財産を残したまま分割弁済などで保証債務を履行することが可能となります。

自己破産したあとにできること・できないこと

経営者の方が自己破産すると様々な制約が発生します。個人の信用力低下によって新規の借入ができなくなるなどその影響は甚大です。一方で、自己破産をしても制約を受けない意外なこともあります。こちらでは、自己破産したあとにできること・できないことについて例を挙げながら確認してみましょう。

 

自己破産したあとにできること

「自己破産すると会社の代表者にはなれないのですか?」という質問を受けたことがあります。実は、自己破産したあとでも再び代表者として新しい会社を設立することは可能です。自己破産したあとでも再起を図るためにできることは意外とあるものです。ここでは、自己破産したあとでもできることについて確認してみましょう。

・株式会社の取締役になる

法律上、自己破産したあとでも株式会社の取締役になることは可能です。つまり、代表権を持った代表取締役を務めることも可能で、このことが自己破産したあとでも代表者として会社を設立できる根拠となります。以前の法律では、破産手続開始決定を受けたあと復権(※6)するまでは取締役の欠格事由に該当していたため取締役を務めることはできませんでしたが、現行法ではその規定がないため取締役を務めることが可能です。ただし、取締役在任中に個人的な理由で自己破産した場合などは民法の規定によって会社と役員の委任関係が一旦終了するため取締役を退かなければなりません。この場合は、すぐに株主総会を開催して取締役として選任されることで取締役に就任できます。

(※6)破産者は破産手続開始決定を受けると一定の資格を利用できなくなり、これを資格制限と言います。多くの場合では、免責許可の決定が確定した段階で資格制限解除され、これを復権と言います。

・公的な支援制度などを活用して資金を調達する

既に公的支援制度の内容は説明しているので詳細は省きますが、会社の破産が原因で自己破産した経営者の方でも再チャレンジのための資金を調達することができます。自己破産したあとは、その方が会社の代表などを務めると金融機関からの融資を受けることは事実上不可能です。しかし、公的な支援制度などを活用することで再起に必要な資金を調達することができ、再起に向けた新たな事業を始めることもできます。

・従業員の雇用

自己破産したあとに新しい会社を設立した場合でも、当たり前のことですが従業員を雇うことができます。もちろん、破産した会社の従業員だった方を雇用することも可能です。破産した会社と同じ業界で再起を図る場合には、事情を知っている従業員の方の存在が心強く感じることもあります。そのような機会を失わないためにも、会社の破産手続を行う際は未払い賃金などが発生しないように従業員の方へ迷惑をかけないことが重要です。また、同じ業界内や関連企業へ転職する従業員の方も少なからずいます。新しく設立した会社に良くない噂がたたないように、会社の破産手続を行う際は債権者や従業員へ誠実に対応しなければなりません。

 

自己破産したあとにできないこと

自己破産したあとは主に信用面で様々な制約を受けます。ここでは、自己破産したあとに会社を設立するにあたってできないことを確認してみましょう。

・営業に必要な許認可が下りない業種

建設業などの業種では、破産手続開始決定から復権していない方が代表を務める会社は事業に必要な許認可が下りません。日本では、旅行業や貸金業、宅地建物取引業など数多くの許認可事業があるため、自己破産したあとに許認可事業を行う会社を設立する場合は許認可の欠格事由などを正確に把握する必要があります。基本的に、自己破産したあとは復権を待って行動を起こすことが無難です。

・金融機関からの融資を受けられない

自己破産すると信用情報機関に事故情報が登録されるため、当面の間は個人で借入などを行うことができません。同様に、会社を設立しても自己破産した方が代表者を務めている場合は金融機関からの融資を受けられなくなります。これは、会社の信用情報を調査する際に代表者の信用情報も併せて調べられることが理由です。自己破産したあとに設立する会社で金融機関の融資を受けたい場合は、前述の通り信用力のある親族などを代表者とする方法などをとらなければなりません。

・リース契約の審査に通らない

自己破産したあとに設立した会社で代表者を務めている場合は、基本的にリース契約の審査も通りません。そのため、コピーなどの事務機器や車両、設備などは全て購入資金を準備してから会社を設立する必要があるのです。同様に、会社で使用する経費用のクレジットカードなども基本的に審査で落とされてしまいます。この状況を回避するためには、金融機関の融資と同様に信用力のある親族を代表者にするなどの方法をとらなければなりません。

・会社の事務所や店舗を借りる際の保証会社の審査が通らない

会社の事務所や店舗を借りる際には家賃保証として信用保証会社を利用するケースが多くなっています。しかし、自己破産したあとでは信用保証会社の審査も通らない可能性が高いことには注意が必要です。不動産会社によっては親族の連帯保証などで賃貸してくれる可能性もありますが、信用保証会社よりも家賃回収のリスクなどが高まることが理由で断られるケースも多くあります。

このように、自己破産したあとは信用面での制約が非常に大きく、事業を継続させるための環境を整えることが難しくなります。自己破産したあとに会社を設立する場合は、これらのことも考慮してから事業の計画を立てなければなりません。

会社が倒産する理由ベスト10

ここまで会社の破産や自己破産後の会社設立について確認してきました。やむを得ない理由で会社が倒産することも多々ありますが、経営者の方は会社が倒産する理由を熟知して倒産を回避する努力義務を果たさなければならないのも事実です。ここからは、会社が倒産する理由ベスト10とその内容について確認してみましょう。

以下の表は、中小企業庁が発表した平成30年の中小企業の倒産状況をもとに作成したもので、表の左側から倒産件数が多い原因順に並んでいます。このデータは企業信用調査などを行う株式会社東京商工リサーチの調査データに基づいて公表されているものです。それぞれの倒産原因は東京商工リサーチが一定の基準に基づいて判断を行っています。

なお、今回使用している上記の数字は中小企業の倒産件数であるため、中小企業基本法に定義される個人事業主なども含まれています。純粋な会社だけの倒産件数ではない点はご了承ください。それでは、平成30年の倒産理由ベスト10を確認してみましょう。

1位 販売不振

平成30年の1年間で最も多かった倒産原因は販売不振です。1年間の中小企業の倒産件数8,235件のうち約7割の5,799件が販売不振により倒産しています。販売不振とは、売上の減少により事業が立ち行かなくなる状態を指していますが、この販売不振には緩やかに売上が減少していくパターンと急激に減少するパターンが存在します。緩やかに売上が減少していくパターンは、変化する顧客ニーズに応えられる商品やサービスを提供することができず、資金調達によって延命を図ったものの最終的には資金がショートして倒産するケースです。緩やかに売上が減少していく局面では、変化する顧客ニーズに敏感に対応すること、斜陽産業においては別の事業の可能性を探ることなどが倒産を防ぐポイントです。財務諸表や経営指標などから売上の減少傾向を早期に察知し、早めの対策を行うことによって販売不振による倒産のリスクを減少させることができます。また、外部環境の変化などが原因で急激に売上が減少するケースでは一企業の努力では業績の改善を測れないケースもあります。このようなケースでは事前に事業の多角化を図る努力などをすることで複数の収益源を確保し、外部環境の変化による影響を最小限に抑えられるよう対策しておくことが重要です。

2位 既往のしわよせ

既往のしわよせとは、過去から続いている業績悪化が徐々に累積し倒産に至ることを指しています。歴史の長い老舗企業などが時代の変化に対応できず、徐々に業績が悪化して倒産するケースも既往のしわよせによる倒産です。この倒産原因のポイントは長い期間をかけて業績が悪化していることで、業績の悪化を早期に察知して早急に手を打つことで回避できる可能性は高くなります。財務諸表や経営指標などから業績悪化の理由を素早く見抜き、必要に応じて事業の拡大や縮小、新規事業への参入などを図り、収益源の確保に努めることで一定の対策を講じることが可能です。特に、業績悪化が長期間に及んでいる場合は、キャッシュフローに注意を払いながら業績回復に努めることが重要となります。

3位 放漫経営

放漫経営とは、経営者が会社を私物化することやずさんな管理体制が原因で会社が倒産に至ることを指します。経営者の経営能力の欠如や資質の問題が最も大きな要因で、ワンマン体制に依存しない組織づくりをすることが放漫経営による倒産の予防策の一つです。また、長期的な事業見通しを販売計画や利益計画、資金計画などで適切に管理することによって無謀な投資を防ぎ、内規を整備することでずさんな管理体制などを排除することも必要な対策となります。

4位 連鎖倒産

リーマンショック後の長引く不況時に連鎖倒産という言葉をよく耳にしましたが、連鎖倒産とは特定の得意先などの倒産の影響を受けて倒産することです。特定の得意先などに売上の大部分を依存している場合は特に影響が大きく、これが連鎖倒産の原因となっています。連鎖倒産しないためには、特定の得意先に依存しないようなビジネス形態を構築し、得意先・仕入先を分散させることによってリスク分散を図ることが最も重要です。

5位 過小資本

過小資本による倒産とは、資本が少ないことから資金ショートなどを起こし倒産することです。以前は債権者保護の観点から株式会社は資本金が1千万円以上でなければ設立できないことが商法によって定められていました。しかし、2005年の会社法制定により最低資本金制度が撤廃されて、現在は資本金1円でも株式会社を設立することが可能です。これにより過小資本による倒産が従来よりも多く発生することとなりました。会社設立時の資本金は、当面の運転資金などを見込んでおかなければ資金ショートを起こす原因となるので注意が必要です。また、事業が順調に進んでいるときもある程度の内部留保を流動性の高い資産で確保しておくことで過小資本による倒産は防止できる可能性が高くなります。

6位 その他

他の9つの倒産原因に該当しないものをその他としてまとめています。東日本大震災の際に見られた震災関連の倒産など、災害などによる倒産もその他の倒産の原因として挙げられますが、最近は特に人手不足に起因する倒産が増加傾向です。人手不足に起因する倒産とは、人件費の高騰や求人難、従業員の退職、後継者難などが原因で会社が倒産に追い込まれることですが、特に最近増加傾向にあるのが人件費の高騰と求人難による倒産です。人件費高騰の煽りを大きく受けているのがサービス業や建設業、製造業などで人件費の高騰によって不採算の事業が増え、結果倒産するという会社が増えてきています。また、求人難によって製品の製造や売上に必要な人員が確保できず、事業を停止に追い込まれる会社もあります。このような人手不足の倒産に備えるためには、人件費の高騰に対応できるように収益体制を見直すことや、福利厚生を充実させて離職者を減らすなどの努力が必要です。

7位 設備投資過大

設備投資過大による倒産は、過剰な設備投資により資金繰りが悪化して資金ショートを起こすことが原因です。もちろん、事業の拡大局面では適切な設備投資が必要不可欠ですが、身の丈に合わない過剰な設備投資や無計画な借入による設備投資は必ず経営を圧迫します。大きな設備投資を行う際は長期的な利益計画を立案し、借入によって資金を調達する場合は無理なく返済できる計画を立てることが必要不可欠です。

8位 信用性の低下

金融機関や得意先をはじめとする取引先からの信用の低下により倒産に追い込まれるケースもあります。信用の低下を招く理由はいくつもありますが、粉飾決算やコンプライアンス違反は金融機関からの融資がストップすることや得意先からの受注が減少する要因です。また、役員や従業員の不正が企業自体の信用性の低下につながることもあります。この原因に対しては法令遵守を前面に打ち出し、内規の整備などを行うことで信用性の低下を未然に防ぐ方法が有効です。

9位 売掛金回収難

売掛金回収難は文字通り売掛金の回収がうまくいかず、資金繰りが悪化して倒産に至るケースです。中小企業は不利な取引条件を提示されることも多く、売掛金の回収サイトが長くなる傾向にあります。近年は下請法や独占禁止法によって中小企業への不当な扱いは抑制されている傾向にありますが、いまだに古い商習慣が残る業界では売掛金回収までの期間が長いものもあり、資金繰りを逼迫することも少なくありません。売掛金回収難による倒産はあまり件数も発生していませんが、取引先と支払い条件の交渉を行うことや、期日までの確実な回収を実施するなどの努力は必要です。

10位 在庫状態悪化

在庫状態の悪化も倒産までつながるケースがあります。在庫状態の悪化による倒産とは、過剰在庫を抱えることや棚卸在庫の価値が著しく低下することが原因で倒産することです。そもそも、在庫は原材料費や仕入にかかる費用を先行投資しているもので、売上が計上されることにより投資した費用を回収できます。

そのため、過剰の在庫を抱えることは資金繰りを圧迫する大きな要因です。また、在庫している商品などが破損したり流行にそぐわないものとなると在庫としての価値が著しく低下します。価値が低下した商品などを売却しても回収できる資金はわずかであり、このことが同様に資金繰りを圧迫する要因になります。在庫状態の悪化による倒産も近年ほとんど発生していませんが、日頃から在庫の適切な管理を行い、過剰な在庫は抱えないことが最も重要な対策です。

まとめ

自己破産の手続や自己破産したあとの会社設立手続きなどを確認しましたがいかがでしたか?
破産手続などは法律用語も多く内容が難しいと感じた方も多いのではないでしょうか。しかし、本稿で最も理解していただきたい内容は、会社が破産し経営者も自己破産することとなった場合でも破産処理の手続きをキチンと終わらせることで再起するチャンスが得られるということです。まずは、経営者として会社が倒産しないように最大限の努力をすることは当然ですが、努力の結果、自己破産することとなっても決して悲観することはありません。過去の失敗を将来の糧として活かせるように必要な知識を蓄えて、いざという時には新しいチャンスを掴めるように準備を怠らないことが何よりも重要です。

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