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株式会社が社団法人を設立することは可能?目的や手順も

株式会社が主体となって、別の法人を設立することは珍しくありません。例えば、複数の事業を行っている株式会社が事業ごとに法人を分社化するといった例があります。そんな中、企業の活動に対して社会性や公益性などを求める動きが強くなった風潮もあり、公益事業などを行う場合に社団法人を設立するケースが増えています。

今回の記事では、株式会社が社団法人を設立する場合について解説します。設立が多いケースや手順やメリットなどを紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

1 一般社団法人の設立目的

一般社団法人の設立目的

株式会社などの法人が主体となって、一般社団法人を設立することができます。近年、非営利事業を行う若しくは関心を持つ株式会社が増加しています。そして、株式会社が非営利事業を行うために社団法人を設立することが増えています。

事業ごとに会社を分けることは責任感の醸成や収益性の明確化など、大きなメリットがあります。また、単一の事業だけを行うと、大きな社会的変化や競合の発生などに対応できる選択肢が少なくなります。

これらのことから、企業の規模の大きい法人ほど複数の事業を実施し、同一株主による事業ごとに法人を分けるグループ会社が増えています。

1−1 社会課題解決の重要性の増加

株式会社が非営利事業を行うことを検討する背景には、社会課題解決の重要性の増加があります。

⚫️社会課題とは

社会課題は社会に存在する解決すべき課題を言います。具体的には、以下のような課題があります。

  • ・環境問題
  • ・人権問題
  • ・貧困問題
  • ・食料問題
  • ・教育問題
  • ・エネルギー問題
  • ・気候問題

社会課題の解決として、国連加盟193か国が参加する国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)などがあります。

⚫️社会課題解決への関心の向上

社会課題は、日常生活にも広く浸透しています。例えば、スーパーやコンビニエンスストアのエコバックの活用やビニール袋の使用削減などがあります。

社会課題解決に向けた動きが日常生活に浸透している結果、Z世代を含めた広い年代から興味を持たれています。そのため、SDGsや社会課題の視点で商品購入やサービス利用を行う消費者が増えています。また、社会課題に取り組む企業へは、好印象を持つ消費者が増えています。

⚫️政府が検討する新しい法人の形

新しい形態の法人を日本政府が検討しています。新しい形態の会社とは、“環境“や“貧困“などの社会課題の解決を事業目的とする法人です。

その背景にあるのは、株式会社などの利益を追求する法人において、社会課題の解決など社会的に価値のある事業の実施を推奨する意向があります。

株式会社が社会課題の解決を目指す事業を行う場合、株主利益と衝突するケースが出てきます。例えば、その事業が不採算事業となっている場合などです。会社の事業方針と株主利益が衝突すると、株式会社の代表などの役員は株主からの追及を受ける事態になりえます。

現存する法人の種類である、非政府組織(NGO)や社団法人などとも異なる、『収益性』と『社会課題の解決』の2つの柱を長期的に追求できる法人を設立する必要性を検討することとなりました。

1−2 長期的取り組みの必要性

法人には、大きく営利法人と非営利法人があります。

⚫️営利法人

営利法人の目的は、法人の構成員へ利益を分配することです。営利法人の代表的な法人の種類は株式会社になります。株式会社の構成員は株主になり、株式会社は事業を行うことで利益や資産を増やして株主に分配します。

⚫️非営利法人

同じ法人でも、非営利法人は法人の構成員へ利益を分配することを目的としていません。非営利法人では、逆に構成員への利益の分配を禁止されています。

非営利法人は事業によって利益を得ること自体は禁止されていません。非営利法人では事業で得た利益は構成員ではなく、事業に還元していきます。

非代表的な非営利法人には、NPO法人や社団法人や財団法人などがあります。

⚫️社団法人の2種類

過去は、社団法人という法人格がありましたが、現在は一般社団法人と公益社団法人の2段階方式となっています。

社団法人には、以下の2種類があります。

  • ・一般社団法人
  • ・公益社団法人

一般社団法人には、事業内容に制限はありません。また、社員が2名以上いれば一般社団法人の設立ができます。設立には、主務官庁の許可は必要ありません。しかし、税制上の優遇措置はありません。

公益社団法人は、一般社団法人である中の公益認定等委員会の公益性認定が行われた法人のみがなることができます。そのため、事業内容などに制限が発生します。一方で、税制上の優遇措置を受けることができます。

公益性は、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すること」になります。社会全体に対して利益につながる事業を行っていることが求められます。

⚫️非営利法人も利益は上げられる

非営利法人が行う事業でも、利益を得ることができます。また、どのような事業を行うかの制限はありません。従業員などへの賞与なども支給できます。

一般社団法人は、利益を構成員に分配することができない点以外に大きな制約はありません。そのため、株式会社で実施する事業も一般社団法人として行うことはできます

⚫️一般社団法人の設立は事業の独立

株式会社が主体となって一般社団法人を設立する大きな目的は、事業目的の区分けにあることが多くあります。

株式会社には、株主の利益の増加が求められます。そのため、毎期単位の利益成長や中長期的な事業価値の拡大を追求する組織運営が進められます。

一方で、社会課題の解決など公益性が高い事業を行う社団法人にとって、最優先されるのは社会課題が解決されたかどうかになります。そのため、利益の増減などの優先順位は株式会社などと比較すると低くなります。

公益性が高い事業を株式会社で実施することもできないわけではありません。また、一般的な営利目的の事業を行っている株式会社で公益性の高い事業とともに実施することも可能です。

しかし、前述したように事業ごとに法人を設立することによって事業の独立性やそこで働く役員や従業員にとってより事業の独立性を持つメリットがあります。

また、一般社団法人を設立すること自体に、中長期的に社会課題の解決などの公益性が高い事業を行っていくことを内外に示すことにつながります。

⚫️長期的取り組みの必要性

事業は、長期的に取り組むことが求められます。そのため、公益法人が行う公益目的事業には『収支相償』の規則があります。

収支相償の規則とは、公益目的事業で得た利益は社内で留保することなく、公益目的事業の拡充の財源にすることで、受益者を広げていこうとする考え方です。

この収支相償の規則に基づき、公益社団法人は税制優遇を享受することができます。公益性の高い事業は、事業の拡充を図ることでより社会課題の解決に貢献していきます。そのため、長期的に取り組めば取り組むほど、社会課題の解決に貢献できる可能性が高くなっていきます。

そのため、公益性が高い事業や社会課題を解決するための事業を行う場合には、長期的取り組みが求められます。

なお、収支相償の規則は公益社団法人が利益を出していけないとするものではありません。そのため、単年度で見た場合に公益社団法人で利益を出しても問題はありません。公益事業で得た利益があった場合には、公益事業に活用することが求められるのが収支相償の規則です。

1−3 価値拡大にも貢献

一般社団法人などの社団法人を設立することは、企業の価値拡大にも貢献します。社団法人の設立をする・しないに限らず、企業には社会貢献が求められています。社会貢献とは、その企業が行う事業によって社会や地域に対して貢献することです。具体的には、以下のような社会貢献を企業は実施しています。

  • ・ボランティア活動
  • ・各種団体への寄付や寄贈
  • ・教育や啓蒙活動
  • ・環境活動 など

社会課題の解決も、社会貢献といえます。

⚫️社会的責任

現在の企業には、利益を追求することだけが求められているわけではありません。雇用を守ることや社会貢献を果たすことなど、社会的責任が求められています。企業は、利益を得る経済活動を通して、社会貢献も同時に果たしていくことが求められます。

企業に求められている社会的責任は、最近のトレンドなどではありません。戦前から日本の企業の在り方の1つとして存在しています。

例えば、日本のビジネス慣習として「三方よし」という言葉があります。これは、売り手と買い手だけでなく、世間=社会にとっても喜ばれる企業や事業であるべきという考え方を示しています。

一方、戦後の復興の中で利益至上主義のような企業は利益を得ることが優先される風潮が強くなっていきました。利益を追求すること自体が悪いことではなく、利益を出す=納税するという社会貢献の一面があるのも紛れもない事実です。

しかし、1990年代になると、企業が巨大化していく中でその企業活動が原因の不祥事や社会への悪影響を与える事態が発生してきました。不祥事や社会への悪影響を受けて、企業のモラルが問われる風潮が増していきました。そして、改めて企業の社会的責任を問う声や社会貢献活動を行う企業を応援する消費者が増えていきました。

⚫️企業が社会的責任を果たすメリット

企業が社会的責任を果たすことで、義務の履行や社会課題の解決だけでなく、社会的責任を果たす企業にとって大きなメリットが生まれます。

具体的には、以下のような複数のメリットがあります。

  • ・ブランドイメージが強化できる
  • ・消費者や顧客の評価が高まる
  • ・優秀な人材を集められる
  • ・資金調達能力が上がる

⚫️ブランドイメージが強化できる

社会課題の解決などの社会貢献活動を行うことは、企業の評判とも言えるブランドイメージを強化してくれます。

企業の中長期的に実施する社会貢献活動などの社会への関わり方は、その企業のイメージを大きく左右します。

企業の不祥事が発生すると、イメージを損なうのと同じです。社会貢献活動を中長期的に実施する姿勢や行動は、消費者にとってプラスのイメージを抱かせる要因になります。

現代は、企業間の競争が激しく同じようなサービスや商品が多くなっています。そんな環境下で、他社より高いブランドイメージを持っていることは、消費者がサービスや商品を選んでくれる大きな要素になります。

そのため、大手企業を中心に多くの企業が社会貢献活動を通じてブランドイメージの強化を続けています。

⚫️消費者や顧客の評価が高まる

消費者の環境問題などの社会課題への関心の高さから、さまざまな生活習慣が変わっています。例えば、マイバックの利用によるレジ袋使用の削減や使わなくなったものをフリマアプリで販売するといったリユースなどがあります。

そのため、消費者が社会貢献活動を行う企業のサービスや商品を購入するということは、消費者にとってもプラスの活動になります。

前述のように社会貢献を中長期的かつ積極的に実施している企業を消費者の評価は高まります。また、消費行動において、評価が高い企業を支援するための消費を行ってくれます。

社会貢献を行う企業のサービスや商品の購入は、間接的に社会貢献活動などを広げる動きにつながることを消費者が理解しているからです。

⚫️優秀な人材を集められる

企業の継続的かつ安定的に利益を出すために必要なものの1つが、社員です。企業の社会貢献活動などは消費者だけでなく、企業で働く社員などの従業員などにとっても良い影響をあたることができます。

会社で働く従業員は、自分の仕事や自分が働く企業が社会貢献することを好みます。また、求職者から見た場合も具体的な社会貢献活動をする企業は好まれます。

社会貢献活動に賛同してくれる従業員が集まり定着することができれば、優秀な人材を企業に集めることに成功します。

企業の活動に誇りを持てる従業員はモチベーション高く働くことができます。自分の会社に誇りを持てる社員とそうではない社員では働き方や生産性が大きく変わってきます。

自分の働く会社への誇りは会社へのロイヤリティを高めてくれます。ロイヤリティの高い従業員は、より一層自分が勤める会社をよくしたいという行動を取っていき、業績や企業価値を高める大きな要素になります。

⚫️資金調達能力が上がる

企業において重要となる資金調達能力も社会貢献活動によって、高めることが期待できます。近年は、企業の成長において以下の3つの観点を配慮することが投資家からも求められています。

  • ・環境(Environmennt)
  • ・社会(Social)
  • ・企業統治(Governance)

この3つの観点に適切に対応している企業への投資をESG投資と言います。ESG投資を行うことで、SDGsといった中長期的な社会課題解決を後押しするという投資家が増えています。

ESGに適切に対応している企業は前述のメリットを享受できるため、業績も継続的かつ安定的に成長している企業が多くあります。そのため、ESG投資を行うことは、社会課題解決の支援と投資家としての資産運用ができるという2つのメリットを同時に得ることができるケースが増えています。

また、ESGに取り組む企業の収益パフォーマンスが高くなることから、銀行などの金融機関からの借入などによる資金調達もハードルを下げることができます。

2 一般社団法人の設立手順

一般社団法人の設立手順

前述の通り、株式会社などの営利法人が社会課題の解決や社会貢献活動を実施することには確実なメリットがあります。また、社会課題の解決や社会貢献活動を中長期的に実施することを企業の内外に示すために、既存の法人から分離して一般社団法人などの法人を設立していく動きは今後ますます増えていくものと予想できます。

ここでは、実際に株式会社が一般社団法人を設立する時の具体的な手順について解説します。

2−1 設立前の法人での手順

株式会社がグループ会社や関連会社として一般社団法人を設立しようとする時には、前段階の準備が必要です。

⚫️グループ会社と関係会社

グループ会社とは、親会社が存在しそこに子会社や関連会社などの資本面で関連する法人群を言います。そのため、一般的にはグループ会社は共通の経営理念やビジョンを持って、同じ方向性の共通の意思決定のもと共同して事業活動を実施していきます。

なお、グループ会社は法的な要件がある言葉ではなく、一般的に活用されるビジネス用語になります。

グループ会社に多いケースは以下の2パターンです。

①親会社が子会社の株主となっているケース

例)株式会社Aは、関連する事業を行う株式会社Bの100%株主となっている。
この場合に、株式会社Aを親会社と呼び、株式会社Bを子会社(完全子会社)と呼びます。

②親会社と子会社の株主が同じケース

例)株式会社Aと株式会社Bの株主はC氏が100%株主になっており、関連した事業を行っている。
なお、上記②ケースで同じ個人の100%株主であっても、全く関連しない事業を行っている場合などグループ会社として捉えられないケースもあります。

関係会社とは、会計のルールで定義されています。関係会社とは決算において連結決算を行う企業群を言います。具体的には親会社・子会社・関連会社をまとめた総称が関係会社になります。

なお、株式会社が親会社となり、子会社に一般社団法人を所有することは可能です。50%超の議決権を1つの法人が所有している状態など“実質的に法人の意思決定を支配している法人“が親会社となり、支配されている法人が子会社になります。

⚫️株式会社が別会社を設立する前準備

親会社が子会社となる法人の設立を決める場合には、以下の2ステップの前準備が必要です。

  1. ①会社の設立方法を決める
  2. ②法人設立の合意を取得する

⚫️会社の設立方法を決める

株式会社などの法人が、グループ会社別会社を設立する方法は複数あります。具体的には、以下のような方法があります。

  • ・新会社を設立する
  • ・分社化する
  • ・他社を買収する

新会社の設立は、既存の会社と事業の関連性がない場合に設立することが多くなっています。株式会社が一般社団法人の設立を検討する場合も、既存の会社の事業とは関連性がないもしくは薄い場合に新会社の設立を選択します。

一方で、すでに株式会社で実施していた社会貢献活動や社会課題への解決について一般社団法人として切り離す場合には分社化します。分社とは、現在実施している事業を切り離して、別法人に承継や譲渡することです。承継や譲渡を受ける企業は、新設するパターンと既存の法人という大きく2パターンがあります。

企業で新たな会社設立や既存の会社への承継などではなく、全く資本関係のない法人を買収する方法でもグループ会社の設立が可能です。法人を買収するためには、既存の株主などの企業の所有者との協議を行い、企業価値に見合った金額で株式譲渡などを行うのが一般的です。

実質的に稼働していない法人を購入し法人設立の手間を省くことを目的にしている場合もあります。しかし、多くは既存の事業とその運営を行っている人も含めてグループ会社とすることで事業のノウハウや取引先など事業を行う上で必要不可欠なものを1から作り出す手間を省くことがあります。

⚫️法人設立の合意を取得する

子会社を設立する場合には、親会社になる法人での取締役会などの決議が必要です。子会社の設立は、「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」に該当すると考えるのが一般的です。そのため、取締役会決議事項とするのが妥当です。実際の設立の決議においては、内規を確認して実施します。

また、新たに設立する一般社団法人の理事*を決める場合にも「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」に該当すると考えます。そのため「重要な使用人の異動」を取締役会の決議で決定します。

取締役会の決議は、議決権を持った取締役のうち過半数が出席する必要があります。さらに、出席した取締役の過半数の賛成を持って決議されます(会社法369条1項)。

なお、取締役会の開催は書面決議で代替できます。書面決議は、取締役会の決議事項を書面などで同意の意思表示を行うことで取締役会での決議に換えることです。取締役の全員が書面等で同意の意思表示をした場合、取締役会の決議を行ったものとみなせます(会社法370条)。

2−2 株式会社と設立時社員

株式会社が一般社団法人を設立するこれからの説明は、関連会社を設立する前提での解説になります。

⚫️子会社の設立登記の手続き

株式会社が設立時社員になって、一般社団法人を設立しようとする時の手続きは以下のような流れになります。

  1. ①一般社団法人の設立の発起
  2. ②定款作成
  3. ③公証役場での定款認証
  4. ④法務局で設立登記申請
  5. ⑤設立後の届出

⚫️一般社団法人の設立の発起

株式会社の設立を行うのは発起人になります。一般社団法人の設立を行うのは“設立時社員“と言います。一般社団法人における社員とは、株式会社でいう株主とほぼ同義になります。

発起人は、会社設立において資本金の出資や定款作成など会社設立の手続きを行う責任を負う人になります。発起人は、会社設立後は出資した資本金の金額分に対しての株主になります。

株式会社における“発起人“も一般社団法人における“設立時社員“についても、法人がなることが可能です。

また、一般社団法人における設立時には2名以上の設立時社員が必要になりますが、1名は個人でもう一名が法人という組み合わせも、2名ともに法人という組み合わせも可能です。

⚫️設立時社員の役割と責任

設立時社員は、一般社団法人の設立に関わる対応を進めていきます。そのため設立時社員は、具体的に以下の役割を担います。

  • ・定款の作成
  • ・理事*や監事**の専任
  • ・所在地や社名の決定など

一方で、設立時社員には責任があります。いずれの責任も法人が設立されるまでの責任になります。法人の設立後の責任を設立時社員が負うことはありません。

設立時社員の責任は具体的には、以下の責任があります。

  • ・任務懈怠に対する賠償責任
  • ・法人設立に対する第3者への賠償責任
  • ・法人不成立になった場合の責任

*一般社団法人の理事は、一般社団法人の重要事項を決定する権限や業務執行権限を有します。株式会社でいうところの取締役に似た立場にあります。

**一般社団法人の監事は、理事の不正や不正行為の恐れがあることを理事会に報告する義務をもっています。一般社団法人の監事には、理事の職務執行の監査権限があります。なお、監事は必ず設置義務があるわけでなく法人の任意になっていますが、理事会の設置をする法人において監事は必須となります。

⚫️一般社団法人の定款は設立時社員が作成する

会社設立をするためには、定款が必要です。定款は、法人の目的や組織や活動や構成員や業務執行など法人の運営における基本規約や基本規則を定めた内容を紙や電子媒体に記録したものを言います。

つまり、定款は会社の個別で定められたルールブックになります。そのため、定款の定めに従わない法人運営を行うことはできません。あくまで、定款に従って法人運営をおこなわなければなりません。

定款の作成は、誰もが作成して良いわけではありません。定款は、会社設立の責務を負う人が作成しなければなりません。一般社団法人の定款は設立時社員が作成し、株式会社の設立は発起人が作成します。

⚫️一般社団法人の定款作成

一般社団法人の定款にも、必ず規定しなければならない『絶対的記載事項』があります。また、『相対的記載事項』と『任意的記載事項』もあります。

絶対的記載事項は、名称や主たる事務所の所在地や設立時社員氏名や名称と住所、社員の資格得喪に関する規定や公告の方法や事業年度などがあります。

絶対的記載事項を定められていない場合には、次のステップである公証役場での定款の認証が受けられなくなります。

なお、相対的記載事項は一般社団・財団法人法により定めに規定されていれば効力が生じる事項になります。規定されていなければ効力が生じないため、規定していない場合にはあらためて定款の変更対応が必要になってしまいます。

任意的記載事項は、絶対的記載事項でも相対的記載事項でもないその他の事項になります。任意的記載事項は一般社団・財団法人法に違反しない内容であれば記載ができます。ただし、記載があってもなくても法的な効果はありません。

もう1つ、記載してもその効果が無効化される『無益的記載事項』があります。これは、一般社団法人では認められていない「社員に剰余金や残余財産の分配をする権利」についての定めなどは無効になります。

その他、無益的記載事項には以下のようなものがあります。

  • ・社員総会の決議が必要とされる事項について、社員総会決議以外の方法で決定しようとする内容(理事や理事会への委譲もできません)
  • ・社員総会の議決において、社員が決議をできないようにする内容

⚫️定款の原案ができたら事前協議

詳細は後述しますが、定款自体は公証役場での認証が必要になります。そして、その認証を行う公証人と事前に定款原案について内容確認を行うことができます(事前協議)。

この公証人との事前協議は欠かさず実施するようにします。事前協議の方法は、定款の原案が作成できた時点で実際に定款認証を行う公証役場*へ電話連絡を行い、事前協議を依頼します。

事前協議を行う際には、定款の原案をメールやFAXを活用して、公証人に定款の原案を連携します。定款の原案の連携方法は事前に確認しておくことを勧めます。

公証人は定款の原案を受け取ってから概ね2〜3日以内に確認を実施してくれます。確認結果は、メールやFAXにて行われます。不備があった場合には、不備内容の連携も受けることができます。

不備を訂正してあらためて事前協議を依頼して、修正内容をあらためて公証人に確認してもらえます。不備訂正内容に不備がある場合も同様に、結果をフィードバックしてもらうことができます。

事前協議のタイミングで、後述する公証役場へ訪問する際の必要書類を確認することができます。

⚫️公証役場での定款認証

定款の認証は、新しく設立する一般社団法人の主たる事務所がある住所を管轄する公証役場で行います。

公証役場で公証人が、事前に設立時社員が作成した定款について、適法性と有効に成立したという事実を公証(内容を証明)します。これにより、定款は認証されることになります。

定款は、その法人のルールブックとして運用方法を規定します。そのため、定款認証することでその内容の明確性を確保します。内容が明確になっていることで、内容の相違による紛争や不正行為が発生することを防ぎます。そのため、定款は認証を受けて初めてその効力が発生します。認証された定款がない場合、法人の設立登記ができません。

⚫️定款認証の具体的方法

定款認証を受ける方法には、以下の2通りの方法があります。

  1. ①書面(紙)定款
  2. ②電子定款

それぞれの方法では定款認証を受けるまでの流れが異なります。

<書面(紙)での定款認証の流れ>

  • ・公証人との事前協議(定款原案の確認)
  • ・定款を3部作成
  • ・公証役場での定款提出
  • ・本人確認
  • ・定款認証

<電子定款での定款認証の流れ>

  • ・公証人との事前協議(定款原案の確認)
  • ・定款への電子署名の実施
  • ・オンライン申請*
  • ・公証役場へ訪問
  • ・本人確認
  • ・定款認証

*オンライン申請の詳細は、法務省「オンラインによる定款認証及び設立登記の同時申請の取扱いを開始しました」で確認可能です。オンライン申請では、一部の条件はあるものの24時間以内の処理によって登記が完了する点など多くのメリットがあります。

⚫️公証役場での必要書類など

公証役場での必要書類は、以下のものが必要になります。

・定款

書面(紙)での定款認証の場合には、公証役場の控えと会社保管用の原始定款と登記申請用の定款3部が必要です。なお、電子定款での定款認証では紙の定款を持参する必要はありません。

・設立時社員の印鑑証明書原本

印鑑証明書は、発行から3ヶ月以内の有効期限内の原本が必要です。法人が設立時社員になっている場合には、法人の印鑑証明書原本が必要になります。

・身分証明書

公証役場へ訪問する人は、顔写真付きの身分証明書が必要です。運転免許書や住民基本台帳カードなどが身分証明書となります。

法人が設立時社員になっている場合には、法人の登記簿謄本原本が必要です。また、法人が設立時社員の場合、実際に公証役場へ訪問するのはその法人の代表者や担当者になります。そのため、本人の身分証明書と設立時社員となる法人に勤めていることが分かる書類などが必要になります。詳しくは、訪問する公証役場へ事前に確認します。

・実印

設立時社員の実印が必要になります。ここで注意して欲しいのは、設立時社員全員の実印が必要だという点です。もし、設立時社員全員が公証役場に訪問せずに代理人を通じて認証手続きを実施する場合には、代理人の実印もしくは認印を用意します。

・委任状

定款認証には、原則設立時社員全員の公証役場への訪問が必要です。しかし、公証役場へ設立時社員全員が行けない場合もあります。そのような場合には、代理人に代わりに公証役場へ訪問してもらうための委任状が必要になります。

・申告書

実質的支配者となるべき者の申告書が必要になります。実質的支配者とは、設立しようとする一般社団法人の事業運営や経営についてその重要事項について決定権を持つ人を言います。具体的には、支配的な影響力を持つ個人もしくは代表理事が該当します。

株式保有によって実質的支配者が明確になる株式会社と異なり、一般社団法人には明確な影響力を示すものがありません。そのため、実質的支配者の申告制をとっています。

実際のところ、実質的支配者を具体的に指定する事例は少なく、設立する代表理事が実質的支配者となる場合が多くなっています。

実質的支配者となるべき者の申告書で申告すべき内容は、「実質的支配者の氏名、住所、生年月日、性別、国籍」に加えて、暴力団員や国際テロリストなどに該当していないかが必要になります。

実質的支配者が暴力団員の構成員や国際テロリストの場合には、公証人の判断によって定款の認証が認められないケースがあります。

実質的支配者がどのような人かを見るわけではありません。暴力団員などによって法人の活動を利用したマネーロンダリングなどの不正利用を防止するための申告が求められています。

暴力団の構成員や国際テロリストでない限り、申告書の内容によって認証を受けられないことは稀です。

・定款認証手数料5万円

定款認証には手数料が発生します。定款認証手数料は、一律5万円になっています。定款認証手数料は、現金で認証する当日に支払いすることになります。

また、定款の謄本が必要になる場合には、提供代として約2,000円がかかります。なお、公証役場での定款認証は一般的には短時間(30分前後)で終了します。ただし、事前に定款内容を公証人とすり合わせを行なっていることが前提になります。事前のすり合わせを行なっている場合には、定款認証の当日には認証を受けるのみの対応で完了します。

また、公証役場は事前予約を実施していきます。原則、公証役場は事前予約制になっています。そのため、スムーズな手続きを行うためには、公証人との事前競技が終了したタイミングで、公証役場に訪問する日程調整を行います。

事前予約がない状態で公証役場へ訪問すると、対応を開始してもらうまでに時間を要する場合があります。また、公証役場の方針や予約状況によっては事前予約がない場合には別日の対応になることもあります。

⚫️定款認証後

定款認証後には、書面(紙)の認証と電子定款の認証で受け取るものが異なってきます。

書面(紙)の認証では、以下の2通りの定款を受け取ります。

  • ・会社登記を行う法務局で提出する謄本用定款
  • ・会社保管用の定款

電子定款の認証では、電子定款データ入りのCD-Rを受け取ります。なお、謄本請求用紙による定款謄本の請求を行うことで、紙の定款謄本を受け取ることができます。

⚫️法務局での設立登記

定款認証が終了したら、法務局で設立登記を行います。法務局での設立登記においては事前に必要書類を準備する必要があります。

設立登記手続きは、設立しようとする一般社団法人の代表理事が実施するのが一般的です。なお、設立しようとする一般社団法人の代表理事が実施しない場合には、代理人への委任が必要になります。

一般社団法人の成立する日は、法務局での登記申請日になります。登記申請日とは、法務局への書類提出日になります。つまり、法務局へ登記申請に必要な書類を提出した日から、一般社団法人としての事業活動を開始できます。

なお、法務局への書類提出から7日程度で登記完了となります。書類に不備があった場合には法務局から連絡があるため、速やかに不備修正を実施します。

登記が完了すると、登記事項証明書と印鑑証明書が発行・取得可能になります。

⚫️設立登記に必要な書類

理事会を設置する一般社団法人の設立に必要な書類一覧は以下のとおりです。

  • ・定款(認証済)
  • ・設立時理事及び設立時幹事の選任決議書*
  • ・主たる事務所所在地の決定決議書*
  • ・設立時理事と設立時幹事の就任承諾書と本人確認書類
  • ・設立時代表理事の選定書と就任承諾書と印鑑証明書
  • ・登記申請書**
  • ・印鑑届書

*設立時理事及び設立時監事の選任決議書と主たる事務所所在地の決定決議書は、定款に定めてある場合には作成不要となります。

**登記申請書には、6万円分の収入印紙が必要です。

3 一般社団法人設立のメリットとデメリット

一般社団法人設立のメリットとデメリット

一般社団法人を設立することには、メリットとデメリットがあります。社会貢献活動や社会課題の解決は、営利法人である株式会社などでも実施はできます。

そのため、株式会社が一般社団法人を設立する場合には自社の状態に即してメリットとデメリットを整理した上でメリットが大きい場合に設立する必要があります。もしくは、一般社団法人を設立する必要がある場合には、メリットが大きくなるように勧めていくことが求められます。

3−1 メリット

一般社団法人の設立は非常に増えています。その背景にあるのは、一般社団法人設立の複数のメリットです。

⚫️自由度が高い

一般社団法人には、事業目的に制限がありません。そのため、収益事業を行う一般社団法人も存在します。

また、設立時に社員2名が必要になりますが、設立に監督官庁の許認可などは必要ありません。設立後も許認可がないため、運用の自由度が維持できます。

⚫️独立して活動ができる

株式会社が一般社団法人を設立する場合には、その活動の独立性が担保できます。法人格を持つ一般社団法人として、独立した取引ができます。株式会社とは別に法人名義での銀行口座の開設や事務所や店舗などを自らの名義で契約もできます。

独立した法人の運営は、組織に属する従業員のモチベーションを高めて、組織基盤を強化していけます。また、独立することで収益性も明確になり、収支を考えながら事業継続性を高めるための事業運営ができます。また、独立して事業を継続することでその法人への社会的信用につながっていきます。

⚫️費用負担が少ない

一般社団法人は設立時の財産が必要ないため、株式会社のように資本金や出資金を設立時に集めておく必要がありません。

また、設立にかかる費用も株式会社より9万円も安くなっています。株式会社の設立時の登録免許税は15万円で、一般社団法人は6万円になります。

非営利型で共益活動を行う一般社団法人については、税制上の優遇措置を受けられます。

⚫️国や地方自治体との連携がしやすい

非営利活動を行う場合には、一般社団法人として国や地方自治体との連携が容易になります。国や地方自治体はその活動や外部との契約において公共性を重視します。そのため、非営利法人として独立して共益活動や社会貢献を行う一般社団法人との連携は株式会社などの営利法人との連携と比較してスムーズに進みます。

⚫️公益認定を目指すことができる

一般社団法人は、定められた条件を満たすことで公益社団法人の認定を受けることができます。公益社団法人になると、より一層社会的信用が増します。また、税制上でより高い優遇装置を受けることができます。

3−2 デメリット

一般社団法人には前述の通り複数のメリットもありますが、デメリットもあります。

⚫️消費者からの知名度は高くない

一般社団法人という法人格は、株式会社と比較すると消費者からの知名度は高くありません。約170万社ある法人のなかで、一般社団法人の数は7万社を切る数になります。圧倒的に数が多いのは、株式会社になります。

また、一般社団法人は事業の制限がなく、比較的に設立が簡単であるため企業運営や事業活動の質にばらつきも生まれやすい状況です。

そのため、同じサービスを展開している株式会社と一般社団法人では知名度の差から消費者は株式会社のサービスを利用する可能性があります。

そのため、一般社団法人それぞれで知名度や社会的信用を高める努力を行う必要があります。

⚫️利益の分配ができない

一般社団法人は、非営利法人です。非営利法人は、利益を構成員で分配できません。資産を活用してより多くの利益や資産を増やしたいという目的から法人を設立する場合、営利法人の設立が適切です。

非営利法人の目的にした事業や企業活動を行う場合に、非営利法人である一般社団法人を設立すべきです。ただ、前述の通りではありますが事業を通して利益を得ることに非営利法人に制限があるわけではありません。また、勤務して報酬を得ることも問題ありません。

株式会社でいう株主に該当する一般社団法人の社員には、報酬を支払することはできません。一方で、株式会社の取締役に該当する一般社団法人の理事には勤務実態があることを前提に報酬を支払いすることは問題ありません。もちろん、従業員への給与を支払することも問題ありません。

利益を法人の構成員に分配することなく、事業へ再投資をしなければならないということになります。

⚫️公益認定は簡単ではない

一般社団法人がより社会的信用を高める上で、公益社団法人になる選択があります。

一般社団法人の設立は比較的簡単ではありますが、公益社団法人になるための公益認定は簡単ではありません。また、いったん公益認定を受けると、法人運営や事業内容に制約が発生します。そのため、一般社団法人と公益社団法人を比較すると、法人運営のコストは公益社団法人の方が増えるのが一般的です。

4 まとめ

株式会社が社団法人を設立する手順

株式会社が、社会課題の解決や社会貢献活動を行うにあたり、一般社団法人を設立する手順を中心にメリットやデメリットを紹介しました。株式会社などの法人が果たすべき社会的責任について、今後はより大きな関心が寄せられていくことが予想されます。そのため、株式会社などが一般社団法人を設立しながら、組織と事業の独立性と継続性を担保して社会的責任を果たしていくことが大切です。

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