協会ってなに?会社や法人とは何が違う?
「〇〇協会」という名称はよく目にしますが、実際に協会がどのような目的で設立される組織なのかはあまり知られていません。一口に「〇〇協会」と言われますが協会の運営形態や役割などは目的に応じて様々で、それぞれの目的に合わせた協会の設立も可能です。そこで今回の記事ではあまり知られていない協会という組織について、協会の概要、協会を設立するメリットやデメリット、協会設立の方法や手順について分かりやすく解説します。協会は事業を行う場合にも活用できる組織なので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
1 協会とは
協会は特定業界の発展などを目的として設立されることが多い組織です。また、協会は任意の団体として立ち上げることもできますが、「一般社団法人〇〇協会」のように法人の形態で設立することもできます。こちらでは、協会を設立する目的および協会の設立形態である「法人」と「団体」について詳しく確認してみましょう。
1-1 協会設立の目的
協会とは、特定の目的を達成するために設立される組織です。特に、特定の業界において業界の発展などに尽力する目的でその業界関係者が参加する協会などが日本には多く存在します。例えば、「一般社団法人 日本建築協会」は建築業の発展や建築を通じた社会貢献を目的として設立された協会です。この協会の設立目的は、「日本建築協会は建築設計事務所、建設業をはじめ建築材料、建築設備、機器メーカー、官公庁・教育機関等建築関係の各分野から参加する幅広い会員の連携協力によって、建築に関する学術、技術、事業の進歩発展を図るとともに建築を通じて広く社会に貢献することを目的としている一般社団法人です。」とホームページに記載されています(出典:日本建築協会ホームページ)
この設立目的から分かることは「一般社団法人 日本建築協会」は日本の建築設計事務所や建設業、建築材料、建築設備、機器メーカーだけでなく官公庁や学校等の建築に携わる分野の関係者が参加している組織だということです。また、これらの参加者が建築に関する学術、技術、事業の進捗発展を図りながら社会貢献することを目的に設立された組織となっています。このように、協会とは特定の目的を掲げて活動する組織で、その目的を達成するために賛同する会員と共に運営される組織です。
協会は会長や理事長などのトップの下で理念に賛同した会員等によって運営が行われます。上記の日本建築協会のように規模の大きな協会では総会を最高の意思決定機関に置き、その下に常任理事会や各委員会、部会などを設置して組織的な運営を行うことが一般的です。協会を運営するための原資は会員から払い込まれる会費や補助金・助成金による収入だけでなく、協会が行う事業によっても運営費を賄うことができます。
しかし、協会を設立する際に最も重要なことは、その協会が「どのような目的のために存在して、どのような事業を行うのか?」という協会の存在意義です。協会の存在意義や事業に賛同を得られなければ会員を募集することもできず、協会を運営するための安定的な収入である会費を集めることも難しくなります。そのため、協会を設立する場合は「誰が」「どのような目的で」「どのような事業を行うのか」という協会の存在意義をしっかりと掲げることで多くの会員が参加できるような仕組みを作り上げることが最も重要です。
ここまで、業界団体のために運営されている協会を例に挙げて説明してきたため非営利事業のみを行うイメージが強くなるかもしれませんが、もともと協会は営利事業も行うことができるため様々な目的で設立されています。例えば、「一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)」は音楽などを利用する方から著作権使用料などを徴収するライセンスビジネスを行っている協会です。他にも特定の商品を推進する目的で設立される協会や、社会公益性の高い事業のみを国や自治体と提携して行う協会など、様々な目的を持った協会が無数に存在しています。
1-2 会社・法人とは
協会は法人の形態でも設立できますが、そもそも法人とはどのような組織なのでしょうか?まずは、法人とよく混同される会社と比べながら言葉の意味を確認してみましょう。
①法人
法人とは法による主体性を与えられた組織のことを指します。具体的には、法務局に登記されることによって法人格を有し、法人として契約行為などの法律行為が可能になる組織です。少し難しい言い回しとなりましたが、以下の組織は全て法人格を有した法人に該当します。
・株式会社
株式を発行して投資家などから出資金を募り、その資金で事業活動を行う組織です。オーナー企業などは所有者と経営者が一緒になることもありますが、原則として会社の所有者である株主と会社を経営する取締役が明確に分かれていることが株式会社の特徴で、これを経営と所有の分離と言います。会社の所有者である出資者は出資した資金の範囲のみ責任を負う有限責任の株主です。
・合同会社
合同会社は出資者である社員が経営も行う会社の所有者と経営者が同一となる持ち株会社の一種です。出資者である社員は出資の範囲内で責任を負う有限責任となっています。2006年の会社法改正により設立可能となった会社形態で、有限責任の出資形態となっているため最近は株式会社に次いで設立件数の多い会社形態となっています。
・合名会社
合名会社も合同会社と同様に出資者と会社の経営者が同一となる持ち株会社の一種です。しかし、出資者である社員は全員無限責任を負うこととなり、会社が負債を抱えたまま破綻すると出資の範囲を超えて責任を負わなければなりません。
・合資会社
合資会社も合同会社や合名会社と同じ持ち株会社に該当しますが、出資者である社員は有限責任社員と無限責任社員から構成されることが大きな特徴です。そのため、合同会社や合資会社などは一人の出資者でも設立することができますが、合資会社の設立には必ず2名以上の社員が必要になります。
・一般社団法人
一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律に基づいて設立され主に非営利法人に分類される法人です。非営利法人とは、事業によって得られた利益を分配しない法人のことを指しており、株式会社のように会社に留保された利益の一部を配当することはできません。ただし、利益の分配はできませんが利益を出す事業自体は行うことが可能で、発生した利益は次年度に繰り越して組織運営に充てることや理事などの給与として支給することも可能です。
・一般財団法人
一般財団法人とは、一般社団法人と同様に「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律に基づいて設立される非営利法人です。一般社団法人と異なる点は設立の際に300万円以上の財産を拠出しなければならない点で、拠出された財産を一定の目的のために使用することに重点をおいた組織となっています。
・NPO法人
NPO法人は一般社団法人や一般財団法人と同様に非営利法人に分類されますが、特定非営利活動促進法という法律を根拠に設立される組織です。NPO法人は特定非営利活動に分類される不特定かつ多数の利益に貢献する公益性の高い活動を行わなければならず、医療や保険、教育、まちづくり、観光の振興、環境保全、人権の擁護などの特定非営利活動を行うことを目的としています。
・学校法人
学校法人とは、私立学校の設立を目的として私立学校法という法律を根拠に設立される組織です。学校法人は公益法人とも呼ばれますが、法律上の扱いは一般財団法人などと同じ非営利法人に分類されます。
以上のように、法人は株式会社や合同会社、合名会社、合資会社のような営利目的の法人と、一般社団法人や一般財団法人、NPO法人、学校法人のような非営利法人に大きく分類することが可能です。また、営利法人や非営利法人の他にも日本放送協会(NHK)や国民政策金融公庫のような公法人に分類される公共の事業を行う組織もあり、これらも含めて大きく法人という組織として定義されています。
②会社
会社とは会社法という法律に則って設立された組織のことを指し、具体的には上記の法人のうち株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4つの組織が該当します。以前は有限会社という会社形態もありましたが会社法の改正により現在は有限会社を設立することはできなくなっており、現在も活動している有限会社は現行の法律上は株式会社として扱われます。これらの4つの組織は資金の調達方法や責任の範囲など様々な点で異なる組織となっていますが、全て営利目的に活動する組織です。
株式会社や合同会社などの会社と呼ばれる組織は利益を追求し、その利益を出資者に配当することで出資を募る仕組みとなっています。そのため、利益を追求しない非営利事業は株式会社などの設立目的に反するものであって、収益の出ない株式会社に出資する投資家は皆無です。その点、一般社団法人や一般財団法人は非営利法人であり、利益を最優先にした会社組織と比べると理念や理想を優先した組織運営も可能になります。そのため、協会を法人として設立する場合は一般社団法人や一般財団法人での設立が最も現実的で、事業内容や理念に賛同する会員などから会費や協賛金、寄付金、賛助金などの名目で運営に必要な原資を募ることも可能です。
1-3 団体とは
もともと団体とは、ある特定の目的のために人々が集まって一つのまとまりとなったものを指す言葉です。言葉の意味だけを考えると上記の法人なども団体に含まれるのではないかと考えられますが、ここでいう団体とは法人格を持たずに様々な活動を行う集団のことを指しています。これらの団体は任意団体と呼ばれ、町内会の活動やマンションの管理組合、サークル活動などの法人格を持たない様々な団体が該当します。
任意団体として協会を設立する場合は登記などの手続きが必要ないため手間や費用もかからず設立することが可能です。その代わり、法人格を有しないため契約を締結するなどの法律行為については団体名義で行うことができません。ただし、一定の活動実態を満たす任意団体は「権利能力なき社団」として分類され、法人格を有する社団法人に準じた扱いをされることもあるためこちらについて簡単に説明を加えておきます。
「権利能力なき社団」の定義として過去に最高裁で以下のような判断が示されました。
「権利能力なき社団といいうるためには、団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない」
つまり、以下の4つの要件を満たすと「権利能力なき社団」として法人に準じた取り扱いを受けることがあるという可能性を示すものです。
①団体としての組織をそなえているもの
複数の人が独立した存在で、かつ、一つのまとまりとして存在していることを意味しています。個別に予算や実績を集計するなど財産的な独立性が保たれていることも判断要素の一つです。
②多数決の原則が導入されていること
団体としての意思決定が団体に参加する複数の人間によって多数決で行われているという点も判断要素の一つです。過半数の賛成によって決定される普通決議の他、4分の3以上の賛成によって決定される特別決議などもこの多数決の原則に含まれます。
③構成員の変更に関わらず団体が存続すること
団体構成員の新規加入や脱退などがあった場合でも変わらず団体が存続する場合は独立に存続する組織として判断されます。逆に、特定の構成員が脱退することによって継続しない団体は「権利能力なき社団」には該当しない団体です。
④代表者の決定や総会の運営、財産の管理方法などが定められていること
代表権を有するものをどのように選出するか、総会をどのように運営するか、団体の財産をどのように管理するかが明確に定められているかどうかも「権利能力なき社団」の判断要素です。単一の団体として活動するための最低限のルールとしてこれらの点が明確に定められていない場合は「権利能力なき社団」には該当しません。
「権利能力なき社団」については個々の団体の状況により判断されるため、一概にどのようなケースがこれに該当するのかは容易に判断することができません。一般的には、自治会やマンションの管理組合などの団体は該当する場合が多く、サークルや同窓会のような団体は該当しないことが多くなります。任意団体として協会を設立する場合は「権利能力なき社団」としての要件を満たすことで、法的に団体性を認められた組織として社会的にある程度の信用を得ながら活動することも可能です。
そのため、任意団体として協会を設立する場合は「権利能力なき社団」の要件についても把握しておく必要があります。ただし、「権利能力なき社団」については学説的な見解も多く、契約などの法律行為についても個々のケースに応じて判断されることも多いのが実情です。
協会設立の基本的な知識を紹介する本文では「権利能力なき社団」についての見解を交えて説明すると非常に理解が難しくなるため、以後こちらについては詳細な説明を割愛させていただきます。任意団体として協会を設立するためには規約や会則などを整備して、「権利能力なき社団」としての要件を満たせるような団体として設立することが望ましい、というレベルで認識しておいてください。
2 協会を設立するメリット・デメリット
法人や任意団体など協会の設立形態によってもこれらのメリット・デメリットは大きく変わるため、これらのことも正しく理解した上で協会設立の判断を行うことが重要です。
2-1 任意団体と法人の違い
協会の設立は任意団体でも法人でも可能です。ただし、任意団体と法人には①信用力と②税金という運営上大きく異なるポイントがあるため、これらの違いを正確に理解した上でどちらの形態で協会を設立するのか判断しなければなりません。
①信用力
任意団体として協会を設立する場合も「〇〇協会」という名称を使用することは可能です。これは、個人事業主が事業を行う場合の屋号と同じ考えで、クリーニング屋を経営する個人事業主が「〇〇クリーニング」という看板を掲げて事業を行うことと変わりはありません。しかし、任意団体として協会を設立する場合は法人格を持たないため、協会という団体としての法律行為自体が制限される点には注意が必要です。ここでいう法律行為とは契約などの行為を指しており、任意団体として契約が必要になる場合は基本的に団体の代表者個人が契約を行うこととなります。
例えば、設立した協会の事務所などで使用するコピー機が必要となった場合、リースでコピー機を準備することも可能です。法人の形態で協会を設立した場合は法人名義でリース契約を締結することもできますが、任意団体として設立した場合は代表者個人として契約を締結することが一般的です。この場合、リース契約の審査は代表者個人の支払能力に基づいて行われるため、法人で契約するよりもやや厳しく見られることが多くなります。
また、任意団体で使用する銀行口座を開設する場合、個人や法人として口座を開設するよりも手続きが複雑かつ煩雑になる点にも注意が必要です。任意団体として口座を開設するための書類や手続きは金融機関によって異なりますが、こちらではみずほ銀行の口座開設で必要となる書類を例に確認してみましょう。
必要となる書類
- ・本人確認書類
- ・ご印鑑
本人確認は以下いずれかの方法によります。
・代表者個人および来店者の本人確認による場合
代表者および来店者の本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
・任意団体に関する書類および来店者の本人確認による場合
任意団体の規約・会則・議事録や任意団体宛に官公庁から発行(発給)された書類および来店者の本人確認書類
(出典:みずほ銀行)
任意団体の口座を開設する場合は基本的に代表者個人の本人確認などが必要です。また、マネーロンダリングなどを防止する観点から任意団体としての活動実態があるかどうかも確認されることがあり、この場合は任意団体の規約や会則などの提出を求められることもあります。これらの書類などが準備できない場合は口座を開設できないという可能性もあるため注意が必要です。基本的に金融機関で任意団体である協会の口座を作る場合は「○○協会 代表 △△ ××」という代表者名義の口座になります。
このように、法人と任意団体では契約や銀行口座の開設などで大きな差が出てきます。基本的には、登記によって社会的な地位が明確にされている法人の方が社会的な信用が高いと判断され、協会としての事業を行う際にもその傾向は顕著です。
②税金
法人や任意団体として協会の活動を行う場合でも税金が課される可能性がある点には注意が必要です。特に、任意団体として協会の事業を行う場合、税金はかからないと誤解されることもあります。しかし、法人であっても任意団体であっても収益事業を営む場合は税金がかかることもあるのです。
・任意団体にかかる税金
意外なことですが任意団体には場合によって法人税が課されます。法人税とは本来登記などをされた法人に課される税金ですが、任意団体は「人格のない社団等」として法人税の課税対象です。「人格のない社団等」とは法人税法第2条に法人でない社団として規定されており、「多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有し統一された意思の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいう。」と明示されています。
これらの団体から労働組合などが該当する民法第667条組合契約の規定による組合や、商法第535条匿名組合契約の規定による匿名組合を除いた団体が法人税の課税対象です。ただし、任意団体は全ての事業が法人税の対象となるわけではなく、収益事業を営む場合に限って法人税が課されます。ここでいう収益事業とは、物品販売業や不動産販売業、製造業などの法人税法施行令第5条に定められた34事業に限られ、収益事業とは関係のない組合を運営するために受け取る会費や寄付金などは法人税の対象外です。
任意団体に課される法人税の税率は下図の「人格のない社団等」に適用される税率となっており、平成31年4月1日以降に開始される事業年度では所得が年800万円以下の部分が15%、年800万円を超える部分が23.20%の割合で法人税が課されます。
図1 法人税の税率表
(出典:国税庁)
また、消費税に関しても法人税と同様に任意団体は納税義務を負います。そのため、任意団体であっても収益事業を行っている場合は収益事業として行う資産の譲渡や貸付などにかかる消費税の納付が必要です。
・法人にかかる税金
協会を設立する場合、先述の通り一般社団法人や一般財団法人の形態で法人を設立することが一般的です。これらの法人についても法人税は課されますが、一般社団法人や一般財団法人は非営利型法人と非営利型法人以外の法人に分けて法人税が課されます。これらの法人が非営利型法人として認められるための要件には主に3つのポイントがあり、「定款に剰余金の分配をしない旨が定めてあること」「定款に解散したときの残余財産が国もしくは地方公共団体、公益社団法人や公益財団法人に帰属する旨が定めてあること」「配偶者や3親等以内の親族などが理事の総数の3分の1以下であること」などの要件に全て該当すると非営利型法人です。
図2 一般社団法人や一般財団法人の課税範囲
(出典:国税庁)
図2のように、一般社団法人や一般財団法人で非営利型法人に該当する場合は収益事業に法人税が課されますがそれ以外の事業については法人税が課されることはありません。つまり、公益認定を受けた社団法人や財団法人と同様に収益事業から生じた所得のみ法人税の課税対象となる仕組みです。逆に、非営利型法人以外の法人に該当する場合は株式会社などの普通法人と同様の扱いとなるため、全ての所得に関して税金が課されます。税率は一般社団法人でも一般財団法人でも年800万円以下の所得部分については15%、年800万円超の所得については23.20%です。また、消費税についても任意団体のケースと同様で、収益事業に関わる資産の譲渡や貸付を行う場合は消費税も納税も必要になります。
以上のように協会を設立する場合は設立形態によって信用面や税金の面での取り扱いが大きく異なります。任意団体と法人のどちらで設立するかは次に説明するメリットやデメリットも踏まえた上で慎重に判断することが重要です。
2-2 メリット
協会を設立する場合、任意団体と法人のどちらの設立形態をとるかによってその後の処理なども大きく変わります。こちらでは、任意団体で設立する場合と法人で設立する場合に分けて協会設立のメリットを確認してみましょう。
①任意団体として協会を設立するメリット
任意団体として協会を設立するメリットは主に以下の点が挙げられます。
・許可や認可なども必要なく誰でも簡単に設立できる
任意団体として協会を設立する場合は特別な手続きなども必要なく、誰にでも簡単に設立できる点が大きなメリットです。法人として設立する場合には定款や登記申請書の作成が必要になり、登記に必要な書類を整えるだけでも苦労します。さらに、法人の場合は登記費用などのコストもかかるため、手間や費用をかけずに設立できる任意団体の方が圧倒的に設立は簡単です。
・一人でも設立できる
一般社団法人や一般財団法人を設立する場合は複数人の社員や理事などが設立の際に必要になりますが、任意団体の場合は一人で協会を設立することもできます。協会を設立するためには様々な規約や会則などを整える必要もありますが、一人で設立する場合はこれらにかかる意思決定も迅速に行うことが可能です。この点は任意団体として協会を設立するメリットの一つになります。
・協会を解散する場合も登記等の手続きは不要
任意団体として協会を設立すると解散に関わる登記等の煩わしい手続きも不要です。もちろん、始めから解散を前提に事業に取り組む人はいませんが、任意団体として設立する場合は解散に関わる登記手続き等が不要のためチャレンジのためのハードルが下がる点は大きなメリットとなります。
・団体名を名乗って活動することが可能
前述の通り任意団体でも「〇〇協会」などの団体名を名乗って活動することは可能です。これにより、どのような目的で設立されている協会かを団体名で認知してもらうことができます。
②法人として協会を設立するメリット
法人として協会を設立するメリットは以下の通りです。
・法人として活動することができる
一般社団法人や一般財団法人は登記によってその法人の存在が証明されている法人です。そのため、法人として契約行為などができるため不動産の売買やリース取引を行う場合も比較的スムーズに手続きを進めることができます。また、法人の場合は法人名義での銀行口座開設も可能となるため、対外的な取引先から安心感を持って取引してもらうことも可能です。さらに、事務などで働く人材などを募る場合も法人の方が対外的信用力も大きく、任意団体などと比較して有利に採用活動などを進めることができます。
・非営利型の場合は収益事業以外が非課税
一般社団法人や一般財団法人として協会を設立した場合、非営利型法人に該当することで収益事業以外は税金が課されません。これは株式会社や非営利型法人以外の法人として活動するよりも税制面で非常に大きなメリットです。これによって収益事業に該当しない会員からの会費収入などが非課税となるため、長期間にわたって安定的に協会を運営することができるようになります。
・寄付金などを集めやすい
協会では公益的な事業を行うことも少なくありませんが、寄付金などを集めやすいことも法人で協会を設立するメリットの一つです。寄付金の拠出先が個人や任意団体の場合はどうしても「詐欺ではないか?」などの疑念も生じます。その点、法人の場合は一般社団法人などの法人名が記載された銀行口座を使用できるため、個人や任意団体と比較すると寄付金が集めやすくなります。
・認定公益法人として活動することもできる
一般社団法人や一般公益法人は国による公益認定を受けることで認定公益法人に移行することも可能です。認定公益法人とは、公益法人認定法に基づき国から公益性を認められた社団法人や財団法人のことで、公益を目的とした事業は非課税になるなど税制上の優遇措置をうけることができます。公益法人認定法では公益事業を「学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業であって不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう」と規定しており、公益認定対象となるこれらの公益事業に該当する事業を主な目的に置かなければ公益認定を受けることは不可能です。
そのため、公益認定法人になるためのハードルは非常に高く設定されていますが、認定を受けた法人のみが公益認定法人を名乗れるため社会的な信用も非常に高くなります。また、公益社団法人や公益財団法人と名乗ることにより寄付金を集めやすくなることは容易に想像できますが、寄付をした個人や法人にも税制上の優遇措置があるため一般の社団法人などと比べても寄付などを集めやすい環境ができます。この点も認定公益法人となる大きなメリットの一つです。
2-3 デメリット
協会を設立するとメリットもありますがそれぞれの設立形態によってデメリットも存在します。協会設立のデメリットについても任意団体で設立する場合と法人として設立する場合に分けて確認してみましょう。
①任意団体として協会を設立するデメリット
・法人形態と比べると信用力が劣る
任意団体として協会を設立する場合、法人形態と比べて信用力が劣る点は大きなデメリットです。例えば、対外的な契約行為などを行う場合は基本的に代表者個人がその契約行為を行います。登記などによって社会的な存在が認められた法人とは異なり、契約相手は「どこの誰かもはっきりしないような個人と契約を締結する」という不安が生じる点は大きなデメリットです。また、銀行口座も基本的には代表者名義の口座となるため、ある程度の取引実績などがない取引先からは取引を敬遠されるなどの可能性も否定できません。
・協会の所有する財産でトラブルが発生することも
任意団体として協会を設立する場合、団体が所有する財産は代表者などの個人の名義となります。これによって、協会が所有している不動産を代表者の死後に協会とは関係のない相続人に相続されてしまうことや、悪意のある代表者によって私的に流用される可能性がある点は大きなデメリットです。
・収益事業を行った場合は税務申告などの手続きが必要
任意団体として協会を設立した場合でも収益事業に関しては人格のない社団等として法人税が課されるため法人税の申告手続きなどが必要になります。法人税の申告書は非常に複雑で、法人を設立した場合と同様の手間がかかる点は大きなデメリットです。
②法人として協会を設立するデメリット
・会計処理の手続きが煩雑になる
法人の形態で協会を設立した場合、正しい処理方法に基づいて厳密な会計処理を行わなければならないため非常に煩雑な処理が求められます。非営利型法人の場合でも収益事業を営む場合は法人税の計算を行わなければならないため、非営利事業と営利事業を厳密に区分した会計処理が必要不可欠です。
・都道府県に対しては法人設立届が必要
収益事業を行わない一般社団法人や一般財団法人の場合は税務署への法人設立届は不要です。しかし、都道府県については収益事業の有無に関わらず法人設立届を行うことが求められています。また、都道府県によっては収益事業を行わない一般社団法人や一般財団法人であっても均等割という税金が課されることがあり、東京都は全ての一般社団法人や一般財団法人に対して一律7万円の均等割が課されます。なお、一部の道府県では収益事業を行わない法人は均等割が減免される制度も整備されているので都道府県ごとの制度を確認する作業なども必要です。
・任意団体より活動が制約される可能性も
法人として協会を設立した場合、任意団体よりも厳密な事業計画や収支予算などに縛られて運営することとなります。そのため、任意団体よりも活動内容に制約を受ける可能性がある点は注意が必要です。また、法人設立の際には定款に事業の目的などを記載しますが、定款に記載されていない事業などを行う場合は事前に定款変更などの手続きも必要になります。
・非営利型以外の法人の場合は寄付金も課税対象
非営利型以外の法人として協会を設立する場合、寄付金や補助金なども全て法人税の課税対象となります。収益事業でよほどの利益が見込める法人であれば問題はありませんが、一般的に協会は公益性の高い事業を営んでいることから寄付金や補助金による収入が事業を支える大きな資金となります。そのため、これらの寄付金や補助金に法人税が課されることは安定した事業の継続にも大きな影響を及ぼす可能性があるので大きなデメリットです。
3 協会設立の方法・手順
ここまで説明してきたように、協会は任意団体として設立する他、法人形態の一般社団法人や一般財団法人として設立することも可能です。こちらでは協会の設立方法・手順について、任意団体、一般社団法人、一般財団法人の3パターンに分けて確認してみましょう。
3-1 任意団体
任意団体として協会を設立する場合は登記手続きなどが一切不要です。しかし、協会としての機能を保ちながら健全に運営するためには規約や入会申込書などの書類を整備する必要があります。こちらは一般社団法人や一般社団法人の場合も同様です。それでは、協会を運営するために必要となる主な書類について確認してみましょう。
・規約
協会の会員が遵守する規則や運営方針などを規約や会則として事前に準備します。規約の内容では、目的(どのような活動を行うかなど)や協会の名称、事務局の所在地、会員の条件、役員の設置や任期、代表者、運営方針、会費、規約改正などの項目を網羅しておくことが重要です。特に、会費の支払などについては明確に記載しておかなければ不要なトラブルを招く可能性もあるため必ず記載しなければなりません。
任意団体として口座を開設する場合には規約の提出を求められることも多いため、任意団体として協会を設立する場合、規約は必ず準備しておくべき書類の一つです。
・入会申込書
協会の会員となる場合などに提出してもらう申込書類です。特に、会費などを徴収する場合は不払いなどのトラブルもあるため、事前に入会申込書などの書面で会員となる意思確認をした旨を残しておく必要があります。併せて脱退申請書なども整備しておくと会員の管理などもしやすくなるため非常に便利です。
・約款
協会が営利事業などを営む場合には約款も整備しなければならない書類の一つです。営利事業においては約款などの提携フォーマットを準備しておくことでサービス提供などの事業を円滑に進めることができます。
・業務委託契約書
外部へ事業の一部などを委託する場合に使用する契約書です。どのような事業をどのような範囲で委託するかを明記することで契約の不履行などを防止する役割を果たします。
・個人情報保護方針
個人の会員などを募集する際は個人情報保護方針も事前に準備しておく必要があります。昨今は個人情報の取り扱いが非常に厳しくなっており、住所氏名などの個人情報を入会申込書などに記載してもらう場合には必ず個人情報保護方針を事前に定めておくことが重要です。個人情報を使用する場面や用途を事前に周知しておくことで後々の無用なトラブルを回避する効果も期待できます。
3-2 一般社団法人
一般社団法人を設立するためには以下の手続きが必要です。
・社員の決定
一般社団法人を設立するときには一般社団法人の社員2名を予め決定しておく必要があります。この社員とは法人で勤める人という意味ではなく一般社団法人を立ち上げる発起人のことで、一般社団法人の設立登記申請書には設立発起人となる社員2名の捺印などが必要です。また、社員2名のうち少なくとも一人は一般社団法人の理事とならなければなりません。
・定款の作成
社員を決定したら次は一般社団法人の定款を作成します。定款には必ず記載しなければならない絶対的記載事項が7項目定められているため、該当する以下の項目は必須です。
- 1.目的
- 2.名称
- 3.主たる事務所の所在地
- 4.設立時社員の指名又は名称及び住所
- 5.社員の資格の得喪に関する規定
- 6.公告方法
- 7.事業年度
公告方法は官報に記載する方法や電子公告などのやりやすい方法を選択することができます。また、事業年度については1年を超えない範囲で任意に決定することができるため、これらを事前に決定してから定款の作成に取り組むことが重要です。また、定款には経費の負担に関する定めや議決権の数に関する別段の定めのような相対的記載事項や、理事の報酬などに関する任意的記載事項も記載できるため必要に応じてこれらの内容についても検討が必要になります。これらの事項を記載した定款ができたら社員2名が捺印して定款は完成です。
・定款の認証
定款が作成できたら株式会社などの設立と同様に公証役場での定款認証作業が必要になります。定款認証は事前に管轄の公証人役場に連絡を入れておくとスムーズに進めることが可能です。
・設立登記申請書の作成
定款の認証が終わったら次は法務局での登記に必要な設立登記申請書を作成します。必要事項を記載の上、社員2名の捺印と法人代表印を捺印すると設立登記申請書は完成です。登記申請の際に必要となる社員2名の印鑑証明書など必要な書類の準備も並行して行います。
・設立登記申請書の提出
設立する一般社団法人の所在地を管轄する法務局に設立登記申請書と社員2名の印鑑証明書などを提出すると登記申請の手続きは完了です。
一般社団法人の定款認証には5万円の費用がかかり、登記の際の登録免許税も6万円かかるのでその他の費用と併せた設立費用の総額で12万円ほど必要です。株式会社は登録免許税に最低15万円必要となるため、一般社団法人は株式会社よりも安い費用で設立することができます。
3-3 一般財団法人
一般財団法人を設立する場合は一般社団法人の手続きに加え300万円以上の拠出金払い込みなどが必要です。また、一般社団法人は社員2名で設立することができますが、一般財団法人の設立には最低でも評議員3名、理事3名、監事1名の計7名が必要になります。これらの違いを踏まえた上で設立手続きについて確認してみましょう。
・設立者など一般財団法人の設立に必要な人員を決定する
定款の取りまとめや拠出金の払い込みを行う設立者は評議員や理事、監事を兼ねることができるので設立には最低7名が必要です。
・定款の作成
一般財団法人の定款は以下の10項目が絶対的記載事項となっています。
- 1.目的
- 2.名称
- 3.主たる事務所の所在地
- 4.設立者の氏名又は名称及び住所
- 5.設立に際して設立者(設立者が2人以上あるときは各設立者)が拠出をする財産及びその価額
- 6.設立時評議員、設立時理事及び設立時監事の選任に関する事項
- 7.設立しようとする一般財団法人が会計監査人設置一般財団法人であるときは、設立時会計監査人の選任に関する事項
- 8.評議員の選任及び解任の方法
- 9.公告方法
- 10.事業年度
一般財団法人は拠出金の払い込みなどが必要となるため拠出する財産やその価額に対する記載が必要です。これらの絶対的記載事項と必要になる相対的記載事項や任意的記載事項を盛り込んで定款を作成します。
・定款の認証
定款の認証は一般社団法人と全く同様で、設立者が公証役場で公証人の認証を受けると完了です。
・拠出金の振込
定款の認証が終わったら設立者が拠出金の振込を行います。この時点では法人名義の口座が作れないため、設立者本人の個人口座に拠出金の全額を振り込むことで拠出金の振込は完了です。
・設立登記申請書の作成
法務局へ登記申請を行うために設立登記申請書を作成します。必要事項を記載した上で、設立時の評議員、理事、監事の就任承諾書及び印鑑証明書や拠出金の払い込みを証明する書類などの添付書類の準備も必要です。
・設立登記申請書の提出
主たる事務所の所在地を管轄する法務局へ設立登記申請書を提出すると設立登記の手続きは完了です。
一般財団法人の設立には最低7名の人員が必要となるだけでなく、300万円以上の拠出金も用意する必要があります。一般財団法人の設立に要する費用は一般社団法人と全く同じで12万円ほどです。
4 会社設立に必要な手続きの概要
会社を設立する上で必ず行うのが、「法務局での会社設立登記」の手続きです。これに加え、株式会社の場合、「公証人役場での定款認証」という手続きを行う必要があります。会社設立は、法務局で設立登記を済ませれば完了となりますが、それまでの過程で様々な手続きを行う必要があります。
4-1 株式会社と合同会社
会社というと、多くの方に浮かぶのが「株式会社」でしょう。他にも「合同会社」「合資会社」「合名会社」などの形態がありますが、今回は会社設立で多く選ばれる、株式会社と合同会社に絞って見て行きましょう。
4-2 株式会社の特徴と合同会社の特徴
株式会社の特徴と、合同会社の特徴を表で確認してみましょう。
株式会社の特徴 | 合同会社の特徴 |
---|---|
合同会社より知名度が高いと言われている | 近年は外資系企業を中心に、合同会社の形態を取る会社も増えているが、株式会社と合同会社に比べると認知度が低い |
設立費用が合同会社より高い | 設立費用が安価 |
設立に期間がかかる | 設立にかかる期間が株式会社より短い |
経営者と出資者が分離しているケースもある | 経営者と出資者が同一 |
外部からの出資が募りやすい | 外部からの出資が募りにくい |
以上のような特徴があります。一般的には、会社を拡大させたい場合は株式会社、小規模で堅実に行いたい場合は合同会社が適していると言えます。
5 会社設立の具体的な手順の概要
会社設立の手順は、株式会社と合同会社で異なります。大きい点は、「公証人役場で定款認証の手続きを行う必要があるか」という点です。株式会社の場合は公証人役場での定款認証が必要であり、一方合同会社の場合は定款認証が不要となります。公証人役場での定款認証手続きは、およそ5万2千円の実費と、3日~一週間の期間がかかります。スピード・費用等を重視する場合は、合同会社を選択するのも良いでしょう。
5-1 一般的な会社設立の手順は
株式会社の場合の事例を紹介します。
会社概要の決定 | 社名、事業の方向性、本店所在地、事業目的、ビジネススキーム、資本金、事業年度(何月から始め、何月までを第一期とするか)、決算の公告方法、資本政策、金融機関など外部から資金調達をするか否か、役員の任期(2年~10年)代表取締役・取締役など役員の決定等、会社の基本的な事柄を決める。また、「発起人」という会社設立の中心になる人物も決める。代表取締役だけでなく、複数選任してもよい |
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会社の印鑑の注文 | 社名(株式会社を社名の前か後ろにつける)と所在地が決まり次第、会社の印鑑、ゴム印を注文する |
発起人全員が自身で印鑑証明書を取得 | 自身の住民票がある市区町村役場で、発起人全員が印鑑証明書を取得する。手続きをスムーズにするには、2部取得しておくと望ましい |
発起人会を開催 | 基本事項が決まり次第、役員全員が集まり、発起人会を開催、議事録を作成する |
許認可・登録・届出の必要性の検討 | 会社の行う事業が、許可・認可・登録・届出等官公庁の手続きを要するかどうかを調べておく。もし許認可等が必要であれば、事前に行政書士などの専門家に相談するか、監督官庁に相談し、自社が要件を満たせるか確認する。 |
定款の作成 | 自分たちで決めた基本事項をもとに、定款を作成する。定款のひな形は法務局のホームページにあるが、理想としては専門家、会社設立の代行業者などに定款作成代行をしてもらうのがベスト。また、専門家に依頼すると電子署名を付与するため、紙の定款にかかる4万円の印紙代が不要 |
公証人役場での定款認証 | 定款完成後、公証人役場に連絡し、定款案をFAXする。定款案の修正指示が公証人役場より行われるので、その通りに修正する。定款修正完了後、公証手続きの予約をし、当日は印鑑証明書、委任状、手続き費用(概ね約5万2千円)など公証人役場より指示された必要物も含め持参し、実印の押印が必要な場所には押印をしておく |
発起人決定書の作成 | あらかじめ検討した発起人に誰が就任するかを決め、発起人決定書を作成する |
出資金の払い込み | 公証人役場での定款認証完了後、代表取締役(もしくは発起人の中の中心人物)の個人口座に、代表取締役や発起人自身も含め、全員が自分の名前で出資金を振り込む |
株主名簿の作成 | 出資者(株主)の氏名・住所・株式数・株式取得日などを記載し、株主名簿を作成する |
設立登記の申請 | 法務局に会社設立登記の手続きを行う。必要書類を収集・作成後、法務局の相談窓口に予約し相談を行い、確認をしてもらう。問題がない場合は、最後に収入印紙(株式会社の場合は最低15万円~)の印紙を貼付。消印はしない。 |
登記の補正と完了 | 書類が受理された後、内容に誤りがあれば法務局の指示に従い補正する。補正では足りない誤りの場合、書類一式が「却下」という形で返却されるケースもある。問題がなければ、概ね3~7営業日で登記が完了する |
印鑑カード・登記事項証明の取得 | 登記完了後、法務局で印鑑カードや登記事項証明(全部事項証明書など)を取得。登記事項証明の書類は口座開設、物件賃貸などで利用することも多いので、複数取得しておくと良い |
なお、合同会社の場合は、下記のような違いがあります。
公証人役場での定款認証が不要 | 公証人役場での定款認証の必要がないため、手数料約5万2千円と、定款認証にかかる時間を削ることができる |
---|---|
株主などの名称が、合同会社では異なる | 合同会社では、株主の事を社員、代表取締役のことを代表社員、取締役のことを業務執行社員、株主名簿を社員名簿と呼ぶ |
登記手数料が異なる | 合同会社の場合は、登記手数料が最低6万円からとなる |
任期の設定が不要 | 株式会社では、役員の任期を2年~10年と定め、期間経過後に役員の重任登記をする必要がありますが、合同会社の場合は役員の任期設定・重任登記の手続きは不要 |
決算公告が不要 | 株式会社は官報、Webなどで決算公告を毎期行う必要がありますが、合同会社の場合は決算公告不要 |
上記の点を除いては、合同会社も株式会社と類似した形で手続きを行う形となります。
5-2 自分で行うか、専門家に依頼するか
このように、会社設立の手続きを大まかに書くと、「自分でもできるかも」と考えるかもしれません。しかし、上記に書いた手順は、あくまで概要に過ぎません。実際の手続きの局面では、細かい点を含め、それぞれ決める必要がある事項が多くあります。
率直なところ、自分で会社設立をすることはお勧めできません。なぜ、会社設立を自分でやることが望ましくないのか。自分で設立する場合の概算費用を、株式会社と合同会社について示してみましょう。
株式会社の設立費用
自分で行う | 専門家に委任 | |
---|---|---|
公証人役場での定款認証費用 | 約52,000円 | 約52,000円 |
収入印紙代 | 40,000円 | 0円(電子定款の場合、収入印紙不要) |
登録免許税 | 150,000円~ | 150,000円~ |
専門家報酬 | 0円 | 40,000円~100,000円程度 |
合計 | 242,000円 | 242,000円~300,000円(複雑な形態の場合、これを超えるケースもある) |
このように、さほど自分で設立することと、専門家に依頼を行うことの費用は変わりありません。
それでは、合同会社の場合はどうでしょうか。
自分で行う | 専門家に委任 | |
---|---|---|
収入印紙代 | 40,000円 | 0円(電子定款の場合、収入印紙不要) |
登録免許税 | 60,000円~ | 60,000円~ |
専門家報酬 | 0円 | 40,000円~80,000円程度 |
合計 | 100,000円 | 100,000円~140,000円(複雑な形態の場合、これを超えるケースもある) |
合同会社の場合、公証人役場での定款認証が必要ありません。専門家に依頼を行う場合の工数が減り、費用全体として株式会社より安価に設立できます。このように、自分で設立することと、専門家、会社設立専門事業者に依頼することは、さほど違いがありません。そうすると、最初から専門家に依頼するのが最善と言えます。併せて、自分だけで会社設立を行うデメリットも見てみましょう。
自分で会社設立をするデメリット
手続きで苦労はするが、その経験が会社経営に活きることはほぼない | 会社設立の手続きは複雑だが、自分で会社を設立しても、その経験が経営に取ってプラスになることはほぼない。その時間を、会社の営業・製品開発など攻めの貯めに活用した方が望ましい |
---|---|
費用が専門家に頼むこととさほど変わりはない | 専門家に会社設立を依頼すると十数万~数十万かかるというイメージを持つ方もいるかもしれない。前述の通り近年は、電子署名で印紙代が4万円から0円になるという措置もあり、実質0円~6万円程度が専門家費用のボリュームゾーン。 |
補助金・助成金などが活用できる可能性があっても、見逃してしまう | 補助金・助成金はメニューが多数あり、個人で情報を集めることは厳しい。専門家の方が知識や実務経験があるため、専門家に活用できる制度を探してもらうことがベスト |
自分で金融機関に行くと、紹介経由より融資が通りにくい可能性もある | 金融機関は、自分から窓口にくる一見の顧客を警戒する傾向がある。専門家や会社設立代行事業者など、多くの案件を取り扱うところからの紹介の方であれば、金融機関の側も安心して対応しやすい |
このように、自分で会社設立を行うより、専門家・会社設立に強い代行会社に依頼する方が、いろいろな面でスムーズと言えます。
5-3 専門家への依頼メリットとは
専門家に依頼を行う場合のメリットは下記の通りです。
専門家に依頼を行うメリット
スピードが早い | 大半の手続きを専門家が行うためスムーズ。設立する側が行うのは、資本金の振り込み手続き、印鑑証明の取得、一部書類への署名、実印の押印など、少ない手続きで済むため、その時間を本業のための準備に活用できる。また、自分だけで設立を行おうとすると、各プロセスでの手落ちや公証人役場・法務局での補正などが発生する可能性もあるが、プロフェッショナルに依頼すると、正確に仕上げてくれる |
---|---|
客観的なアドバイスをもらえる | 各種手続きや法人の設計などで、「こうするとよりよい」という手法のアドバイスが受けられる。例として、・商号が他社と重複、類似していないか・設立者が考えている事業目的を、定款用の文言に変換してくれる・資本金や出資割合のアドバイス、現物出資の活用など、なかなか自分では気づきにくいアドバイスが受けられる |
他の専門家や事業者とのネットワークが存在する | 会社設立代行を行う事業者・専門家は、社会保険労務士、弁護士、司法書士などとネットワークがあり、クライアントも多様なため、様々な人脈を紹介してくれるケースがある |
自分で会社を設立する時と、さほど費用は変わらない | 専門家費用(実費部分)は4万円~10万円程度と幅があるが、専門家は電子定款への署名手続きを行ってくれる。すると本来定款に貼付すべき印紙代が4万円から0円となるため、実質0円~6万円程度の実費で設立できる |
株式会社と合同会社、どちらが自社に適しているかアドバイスをくれる | 株式会社と合同会社は、それぞれ特徴がある。どちらがいいか迷っている場合は、専門家がヒアリングをすることで、適した会社形態を提案してくれる |
補助金・助成金の提案や融資支援をしてくれる | 他の専門家と協調して行うケースも含むが、専門家は融資や補助金・助成金などの情報に長けており、自社に適した補助金・助成金を提案してくれるケースがある。また、融資の局面においても、金融機関の紹介や融資申し込み書へのアドバイスなどサポートをしてくれる事業者もある |
総合的に考えると、専門家に依頼を行い、会社設立にかかる一連の手続きを代行してもらった方が、様々な意味でスムーズと言えます。
会社設立後も、税務署、社会保険事務所など各種手続きは必要です。これも、自分でやると大変ですが、専門家に任せることでスムーズにでき、自分は経営に専念することができます。重要なことに集中するためにも、専門家や会社設立の代行事業者を活用することも大切です。
5 まとめ
この記事では協会についてその概要やメリット・デメリットを説明しました。協会の設立は任意団体と法人という2つの形態から選択することができるため、双方のメリットやデメリットも考慮した上で設立方法を決定することが重要です。
まずは、前提となる協会の目的や事業内容を明確に定め、どのような方法で協会を設立すると良いのか検討してみてください。