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不動産管理会社を設立すると節税対策になる? 設立するメリットと設立登記の手順

個人投資家が不動産経営をやり始めてだんだんと軌道に乗ってくると、顧問税理士の方から「不動産管理会社を作って節税対策をお考えになるほうがよろしいかと思います」とアドバイスを受けることもあるかと思います。専門家のアドバイスなのでなんとなくそのほうが良いのだろうとわかりますが、税金のことに詳しくない人にとってはいったいどうやって節税になるのだろうと疑問をお持ちになる方もいらっしゃると思います。そこで個人投資家による不動産管理会社の設立についてご説明いたします。

1 不動産管理会社とは何か?

不動産管理会社とは何か?

不動産管理会社(以下、管理会社)とは、不動産のオーナーと入居者との間に入り、賃貸不動産の清掃や修理、入居者からの不満を解消するなどの住環境整備、家賃等の徴収など不動産の管理に関するすべての業務を行う会社をいいます。

不動産管理会社の役割

不動産管理会社の種類として以下の3つが挙げられます。

1-1 不動産保

管理会社の設立にあたって個人投資家自身(以下、ご自身)が保有していた不動産を現物出資し、それに対する株式を取得するという方式です。この方法によれば、会社が利益を出せばその中から利益配当という形で手元に資金が入ります。また、家賃等の収入は会社の売り上げとして計上されますが、その会社の役員に就任すれば会社から役員報酬を支払う形でご自身の手元に資金が入ります。

1-2 管理委託方式

ご自身が所有している不動産に関する一切の業務を会社に委託させ、入ってくる家賃等の収入の中から不動産の委託管理費を会社に支払う方式です。

1-3 転貸方式

転貸とは別の表現をすると「また貸し」や「サブリース」です。ご自身が所有している不動産を管理会社へ貸し出すという方式です。管理会社はそれを各入居者に貸し出すということです。管理会社に入ってくる家賃等の収入の中から不動産の委託管理費を差し引いた分が、賃料としてご自身の手元に入ります。

2 管理会社を設立するメリット

管理会社を設立するメリット

管理会社を設立するメリットして一番大きいのが節税です。所得税や法人税、相続税には累進課税制度が採用されています。これらの税金は納税者の負担能力に応じて適用する税率が異なるため、受け取った収入や相続した財産の額が少ないほど税率は低くなります。そのため、ご自身が手に入れる家賃等収入を家族に振り分けることで所得税を節税することができます。また、ご自身が仮に亡くなったときの相続財産も少なくなりますので、相続人である家族に降り掛かってくる相続税を節税することもできます。

そこで現行の所得税法における所得税の計算式は次のようになります。このように所得金額が大きくなると税率が大きくなっています。

課税される所得金額 税額の計算式
195万円以下 所得金額×5%
195万円超330万円以下 所得金額×10%-97,500円
330万円超695万円以下 所得金額×20%-427,500円
695万円超900万円以下 所得金額×23%-636,000円
900万円超1,800万円以下 所得金額×33%-1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下 所得金額×40%-2,796,000円
4,000万円超 所得金額×45%-4,796,000円

現行の相続税法における相続税額の計算式は次のようになります。相続税に関しては現行法上、最高55%の税率が適用されます。

相続財産取得金額 税額の計算式
1,000万円以下 取得金額×10%
3,000万円以下 取得金額×15%-50万円
5,000万円以下 取得金額×20%-200万円
1億円以下 取得金額×30%-700万円
2億円以下 取得金額×40%-1,700万円
3億円以下 取得金額×45%-2,700万円
6億円以下 取得金額×50%-4,200万円
6億円超 取得金額×55%-7,200万円

それでは上記のことを踏まえて、具体的な節税の仕組みをお伝えします。

2-1 ご自身で設立した管理会社の役員に就任する

ご自身が設立した管理会社の役員として就任し、そこから役員報酬という形で家賃等収入の一部を受け取ります。その分について、所得税法上は給与所得に該当しますが、法人税法上は経費として算入します。そのため、家賃等収入の受け取りにあたって管理会社を通すことで所得税を節税することができますし、管理会社の利益(課税所得という)に対して課せられる法人税は、所得税より低い税率になることがあります。そのため、役員報酬として受け取る額をうまく設定することで家賃等収入に対する税金を抑えることができます。

現行の所得税法における法人税の適用税率は以下のとおりです(中小法人部分のみ記載)

課税所得
(いわゆる利益のこと)
税率
中小法人のうち、課税所得が800万円以下の部分 19%(15%)
中小法人のうち、課税所得が800万円を超える部分 22%

カッコの中の税率については平成31年3月31日までに開始される事業年度について適用される税率を表す。

2-2 家族を管理会社の従業員、役員にする

管理会社を1人のみにすることは可能ですが、節税効果を最大限に活用するというのであれば、ご自身の家族を管理会社の従業員や役員にするのもよいでしょう。家賃等収入を家族に分散して受け取らせることで更に所得税の節税効果を大きくすることが可能です。

2-3 利益配当を利用する

ご自身やその家族に株式を保有させることで、管理会社の家賃等収入によって生じた利益の中から一部を株主に利益配当することもできます。この場合、配当に係る税率は20.42%(復興特別所得税を含み、地方税はかからない)となっています。所得税や法人税との兼ね合いで利用すると、家族単位で支払う税金の節税になることがあります。メリットは有るのですが実務上はほとんど実施されていません。なぜなら利益配当は利益確定後に行われるものなので、配当として支払った分が経費として計上できないので、法人税の節税にはならないからです。

3 管理会社を設立するデメリット

管理会社を設立するデメリット

これまで管理会社を設立することで節税に関するメリットの紹介をしたので、何か良いことばかりあるような気になるかもしれません。しかし、実際のところはこのようなデメリットも考えられます。

3-1 管理会社維持のコストを考慮する必要がある

管理会社の設立にあたっては、どこかに事務所を借りなかったとしても設立費用だけで300,000円ぐらいかかります。また、家族を従業員や役員とした場合には社会保険に加入させる義務があります。家族への給与、役員報酬の額に応じて一定の額の社会保険料を支払う必要が出てきます。さらには、管理会社の確定申告にあたっても、個人の確定申告との兼ね合いを考える必要があるため、税理士との顧問契約を結んで節税に関するアドバイスを受けるほうが良いでしょう。そのためのコストも考慮しなければなりません。その他個人事業のときには生じなかったコストも生じることがありますので、管理会社を設立して節税を図るメリットと、これらのコストのバランスを考えて管理会社の設立を考える必要があります

3-2 所得税だけでなく法人税も考慮する必要がある

管理会社の方で利益が出たならば、その額に応じて法人税を支払う必要があります。先述の所得税と法人税の表を見てもらうとわかるように、給与や役員報酬という形でご自身や家族に対して支払ったことによる所得税よりも、利益の一部を社外に流出させずにプールしておくことで法人税を支払うほうが節税になるケースもあります。法律上はご自身と管理会社は別個の存在ではあるものの、実態はご家族も含め一体のものです。そこで、家族全体で支払う所得税と、管理会社の法人税をあわせた額を少なくするように節税対策を考慮する必要があります。

3-3 管理会社が赤字で申告しても一定額の税金は発生する

個人での確定申告を行う際に赤字で申告した場合には所得税は0円です。この点、会社(法人)での確定申告の場合は赤字で申告した場合であっても、地方税の一種である法人住民税の均等割部分を支払う必要があります。資金繰りに苦しくなると数万円の出費は大きく感じますので、この点も管理会社を設立するか判断材料の一つとして加えても良いでしょう。なお、均等割は資本金の額と従業員数によって決まっています。

4 個人投資家が管理会社を設立するタイミングとは?

個人投資家が管理会社を設立するタイミングとは?

ここまでご説明しましたように、管理会社を設立するには大きなメリットもありますが、それなりのデメリットもあります。ある程度利益が出ていないことには、管理会社を設立してもメリットを享受できずにお金がどんどん出ていき、最終的には家計が火の車にだってなりかねません。そこで管理会社を設立するタイミングはいつが良いのか大きな悩みどころです。

4-1 家賃等収入や利益の額で管理会社の設立を考える

所得税も法人税も適用される税率は多段階になっているというのもありますし、将来の空室リスクなど各種リスクをあれこれと見積もるのは難しいです。そこで1つの目安としては、

前年の家賃収入等の合計が1,000万円以上で、利益の額が500万円以上

それぐらいあれば管理会社を設立させて、節税のメリットを享受できるものと考えます。不動産投資による利益をいったん会社に仲介して、それをご自身や家族へと移転してこその節税になります。ご自身や家族にも不動産投資による利益が移転されることが何より大事ですが、管理会社のほうにも利益の一部をプールさせることも大事です。

4-2 前年の収入、所得をどのようにチェックすればよいのか?

何度か確定申告をされたことのある方であれば、青色申告決算書の存在はご存知かと思います。上記の要件を満たすかどうか調べるには、前年の確定申告の際に提出した青色申告決算書に記載されている数値をチェックする必要があります。控えとして保管している前年の青色申告決算書をご覧頂きますと、左上の方に「収入金額の合計④」があります。この部分が1,000万円以上あれば、家賃収入等の合計が1,000万円以上あったということになります。今度は一番右側の列の中ほどにあります「差引金額⑲」あります。それが事業を行ったことによって生じた利益部分です。これが500万円以上あれば利益の額が500万円以上あるということになります。管理会社を設立するかの最終的な判断はご自身になりますが、判断の目安として参考にしてください。

税理士さんなどの税務についてのプロの方から何かとアドバイスを受けると実践してみたくなるのはやむを得ないところです。ただ、場合によってはデメリットが生じることも理解しておくことが大事です。管理会社を設立するかどうか最終的な判断は税務のプロではなくご自身ですし、その効果が良かれ悪かれご自身で享受することになります。大きな経営上の意思決定をする際にはご自身でメリットとデメリットを比較考量したうえで判断をするよう心がけることが大切です。

5 会社設立登記に必要な書類と書類の作成方法

会社設立登記に必要な書類と書類の作成方法

会社設立登記を行う上で、専門家に依頼する場合でも、自分で行う場合でも、会社設立登記の流れ、また手続きの過程でどのような書類作成などが行われているのかを知っておくことは大切です。

まずは、会社設立の大まかな流れを説明し、その上で、どのような書類が必要となってくるのかを解説します。書類・提出資料については、4パターンの書類が存在します。

  • 会社設立者本人が取得する書類(株式会社の場合、公証人役場での定款認証含む)
  • 会社設立時の取締役が取得する書類
  • 会社設立者本人が作成し、本人や役員が押印する書類
  • 法務局(もしくは法務局のホームページ)で取得できる書類

以上4種類に分類されます。

法務局や法務局のホームページで取得できる書類は、ミスがあっても再度取得すれば良いです。しかし、それ以外の3種類、特に会社設立者本人以外にかかわる書類にミスがあると、印鑑をもらい直ししなければならないなど非常に時間をロスすることとなります。

そのため、「役員に集めてもらう書類、役員に押印してもらう書類」に関しては特に注意をしたほうが良いでしょう。

それでは、会社設立登記の説明に入っていきましょう。

5-1 会社設立登記の流れ

会社設立登記の流れ

会社設立登記の流れについて、表にしました。

登記の添付書類の収集・法人の印鑑の作成・定款の認証・出資金の払い込み 印鑑証明書(原則住民票がある市区町村役場で取得、後ほど説明する定款認証にも利用するため、各取締役が2部ずつ取得しておくと手続きがスムースに進みやすい)、法人の印鑑は制作に時間がかかるため、あらかじめ作っておく。定款の認証は、株式会社の場合公証役場で認証手続きを行う必要があるため、これも早めに行う。また、出資金の法人設立者名義への口座振込を済ませておく必要がある
登記書類の作成 株式会社・合同会社で若干必要書類が異なるので、当ページのポイント解説と法務局のページを参考に
登記申請 法務局に事前に相談・確認をした上で、法人所在地を管轄する法務局に持参するか、郵送を行う
(間違いがあれば)補正箇所の修正 書類に間違いがある場合、法務局より補正箇所の修正連絡が届くので、指示に従い修正
登記完了 法務局が書類を受け取ってから、担当官による厳密なチェックが行われる。かかる日数については、法務局の申請の混み具合にもよるが、2.3営業日~7営業日と幅を持たせて考えたほうがよい。
印鑑カードの受け取り 法務局の窓口または郵送で印鑑カードを受け取る。印鑑カードを元に、窓口か発行請求機を利用し、登記事項証明書を請求。管轄法務局・代表者の生年月日の入力・記載などが求められる。会社の契約で悪用されるおそれもゼロではないので、できれば代表者自身が取りに行くのが望ましい

以上のような流れになります。なお、印鑑証明書は、金融機関での口座開設時や、会社の不動産の売却、担保に差し入れる場合、その他契約相手から提示を求められた場合などに使うこととなります。また、登記申請については、2つの原則がありますので、それをおさえておきましょう。

当事者申請主義 登記申請を行う際は、「原則」、当事者が行わなければならない。会社設立登記の場合、株式会社であれば代表取締役になる人、有限会社であれば代表社員になる人が行わなければならない。ただし、司法書士については、当事者から委任を受けて書類の提出・申請代行・補正などを行うのが認められているため、実務上は司法書士へ当事者が委任状を作成し、依頼するケースが多い。
書面主義 法務局での会社設立登記申請に限らず、官公庁は、書面ベースでの手続きを行うのが原則となっている。(なお、インターネットを利用した電子申請は、書面主義の例外とされている)そのため、口頭などで手続きをすることは当然できず、書類を作成し、持参もしくは郵送することが必要。また、会社設立の場合は、書面持参日もしくは到達日が会社の設立日となる。

上記の点を大まかにまとめると、「会社設立登記をおこなうには、本人か本人より委任を受けた司法書士の申請を通し、書面で法務局に書類を出すことが必要」と考えておいてほうが良いでしょう。

5-2 必要な書類

会社設立に必要な書類は下記の通りです。株式会社・合同会社は必要なおおよその書類はかたよっていますが、若干細かい部分で違いもあるので、注意が必要です。

定款 法人の取締役、扱う業務、資本金など、会社に関するあらゆる決まり事を定めた重要書類。株式会社の場合は、公証人役場での定款認証手続きが必要となる。実務上は、定款を紙で作成すると、4万円の印紙代がかかる。電子定款であれば印紙税はかからないため、電子定款の作成は行政書士などの専門家に依頼するケースが多い。
また、よく誤解されがちであるが、合同会社は定款認証手続きこそ不要であるものの、定款作成は当然必要である。また、電子署名をできる専門家に定款を電子化してもらうことで印紙税の対象外の電子定款とするか、紙ベースで定款を作成する場合は、4万円の収入印紙の貼り付けを行うことも必要なので、注意
登記申請書 法務局の窓口や法務局のホームページに作成のひな形があるため、それを参考にする
資本金の払込を証する書面 発起人(会社の代表取締役・代表社員)個人の口座に、「発起人本人も含めた」、出資者の名義が入った振込部分のコピー、通帳の表紙、裏表紙などを綴ったものが、資本金の払込を証する書面となる。
また、通帳がないネットバンクの場合は、名義人・通帳の普通・当座の区別・口座番号・出資者の名義が入った振込部分ができるだけ一枚でわかる書類を用意することが必要。
発起人決定書(代表社員決定書) 役員(合同会社の場合は社員)が複数存在する場合は、「この人が代表者です」と明示できるよう、発起人決定書が必要。
役員の就任承諾書 発起人も含めた取締役予定者それぞれの、今回届け出る会社に「役員として就任しますよ」という承諾書が必要。承諾書の印鑑は、印鑑証明の陰影と同じ、つまり実印であることが要されるのに注意。一人会社でも、役員の就任承諾書は必要
役員の印鑑登録証明書 市区町村の窓口で発行される他、印鑑登録証明書を既に作成しており、マイナンバーカードを保有している場合は、自治体によりコンビニエンスストア・一部スーバー・ドラッグストアのコピー機で印鑑登録証明書を取得できるケースがある。ただし、自治体によって利用時間が限られる(港区の場合は午前6時30分~午後11時、年末年始・メンテナンス時は取得できない)
OCR用申請用紙(もしくはCD-R・DVD-R) 登記する事項を規定通りに記したOCR用紙もしくは、記載事項をテキストファイルで記載し保存したCD-R、DVD-Rが必要
印鑑届出書 法務局・法務局ホームページに印鑑届出書の様式がある
印鑑カード交付申請書 同上
(現物出資に関する)調査報告書 株式会社で現物出資がある場合、条件によって必要とされるケースがある
財産引継書 株式会社・合同会社で現物出資がある場合に必要
資本金の額の計上に関する証明書 資本金の額を現金での出資、現物出資がある場合はそれもあわせて記載し、資本金は合計いくらです、と示す

このように、提出書類はかなりの量です。かつ書類自体を集める作業が非常に苦労します。

司法書士や司法書士と連携した専門家に一任すれば、専門家の方でできるだけのことを行ってくれます。設立者・役員は印鑑証明の取得と各書類への押印、印鑑の作成(専門家によっては、印鑑の作成も代わりに印鑑の専門事業者と連携して取得してくれるケースがある)ため、できることならば専門家に一任する形が望ましいといえます。

5-3 株式会社設立の場合

まず、注意点として、当記事は会社設立登記の部分を主にして書いております。会社設立登記以外の部分、例えば会社の基本的な事項の決定、印鑑作成、定款作成などに関しては、会社設立登記を念頭においた注意点を中心に説明し、細かな作成方法の解説については省略いたします。

①定款を作成する

定款を一言でいうならば、「会社の基礎となるルールを定めた文書」といえましょう。定款は、今後官公庁・銀行取引や各種取引などの関係に原本の写し(改定を行った場合は改訂版の原本の写し)などを提出する必要があることもあり、慎重な作成を要します。

定款のひな形については、公証人役場で作成例が示されていますので、そちらを参考にするとよいでしょう。

定款の作成を専門家に依頼する場合であっても、自分で行う場合であっても、会社設立登記の際は、定款の内容を元に申請書類を作成するため、定款に記載間違いや遺漏のないように気をつけることは重要です。

特に会社の事業目的や資本金については、創業融資に関係する可能性があったり、業種によっては一定上の資本金や、事業目的が定款・登記事項証明書に記載されていることが許認可を得る上で重要になる業種もありますので、注意して定めてください。

事業目的の策定は、いろいろと注意を要します。

法務局や専門家と十分に協議をしている場合は問題ないですが、事業の目的で、法務局の担当官の裁量で、不適切と思われるものがあると、変更などを求められるおそれがあります。(なお、専門家用の書籍やwebサービスに、「このことを行う会社の目的部分は、このような書き方で書いてください」という会社の目的事例集があります。専門家に依頼していれば、事業内容を、登記手続きを行う上で適切な言い回しにして記載してくれます)

事業目的の決まりとして、最低限この4点を満たす必要があります。

適法性 公序良俗に反しないか
営利性 NPOなどとは違い、利益をきちんと出し、継続的にサービスを供給するための事業目的を設定しているか、ボランティアなど営利を目的としない事業目的になっていないか
具体性 何をやるのかがわからない、具体性に欠ける事業目的になっていないか
明確性 事業目的を聞けば、どういう事業をしようとしているのか第三者でもわかるか

このほかにも、アルファベット。外国文字を用いた表現などが補正の対象となります。

営利性については、あくまで株式会社、合同会社などの事業会社は、利益を出すことが第一だから、ボランティアなどNPOが担う部分を取り込まないで、という意味とも取れます。

具体性に欠ける事業目的としては、「世界を平和にする事業」「飲食業」など、一体何がやりたいのかわからない職業、飲食というジャンルでも、喫茶店なのか、食堂なのか、バーなのかなど、具体的でないものもアウトになる可能性があります。

明確性では、「福祉サービス」の提供だと、福祉サービスを提供して何をするのか、という点が不明確なので、「サービス付き高齢者向け住宅の運営」など、より具体的な目的に落とし込む必要があります。

あわせて、実務では、目的に書いた事業の周辺事業も含められるよう、「上記の事業に付随する業務及びコンサルティング」など、目的の業務そのものだけではなく、その周りの業務も取り込めるように、定款の目的部分における最後の文言を活用して、事業目的が当てはまる範囲を大きくしています。

また、目的にやりたいこと、これから行うことをいくらでも詰め込むのは自由ではありますが、一つだけ、「貸金業」、「貸金業を連想させる文言」については、創業融資や金融機関の融資が受けられなくなる可能性が極めて高くなりますので、避けることをおすすめします。

また、電子署名を一度行うと、修正の際に再度電子署名を付与してもらい、追加費用などが発生する場合があります。また、株式会社の場合、電子定款認証が完了し、公証人の認証も完了すると、記載ミスがあっても認証後の修正はできません

公証人役場での定款認証では約5万2千円~3千円の費用がかかりますので、再認証となると大きな出費となります、

そのため、電子定款認証後と、公証役場での認証時にミスがないか、また、定款の内容で、法務局に登記申請しても問題はないかを専門家・法務局にチェックしてもらった後に、電子署名なり定款認証を行うことは必須といえましょう。

また、株式会社であれば、公証人役場と密に連絡を取り合い、内容に間違いがないことを確認後に電子署名を行う、合同会社の場合は、公証人役場でのチェックがないからこそ、自身や法務局、できれば専門家の目を通した厳密なチェックを行うなど、慎重な確認が必要です。
正確かつ事業目的の漏れなど遺漏がなく、法務局に問題なく受理される定款が作成できるよう、入念に打ち合わせを行ってください。また、印鑑の作成、資本金の発起人名義の口座に対する払込もできるだけ早く着手したほうが望ましいです。

②登記に関する添付書類の作成

定款の認証、電子定款の作成や、紙の場合は印紙の貼り付けなどが終了すると、次は登記に関する書面の作成

設立する会社が株式会社か合同会社かにより若干登記書類の内容は異なりますが、今回は一般的な株式会社の方を事例として解説します。なお、法務局のホームページに、記載例や様式等が掲載されています。

詳しい手順や具体的な書き方、レイアウトなどについては上記ホームページを参照いただくことをおすすめしますが、必要書類について、記載する事項や注意点などを挙げさせていただきます。

・株式会社設立登記申請書の記載事項

商号

会社の名前を記載します。株式会社の場合、最初か最後に株式会社の文言が入っている必要があります。

本店

本店所在地を記載します。定款の場合は、都道府県・市町村まででよいですが、陶器に関しては、それ以降の町名、地番、ビルの場合は何号室など入れる必要があります。

登記の事由 令和○年○月○日発起設立の手続き完了、など、発起設立の手続きが完了した日を記載します。

登記すべき事項

別紙の通りの内容をオンラインにより提出済み、別添CD-Rのとおりなど、提出方法により記載が異なりますが、いずれにせよ具体的に登記する内容は別書類やオンライン提出データの方で記載しています、ということを書きます。

課税標準金額 金1,000万円 など資本金の額を記載します。

登録免許税 金150,000円 など登録免許税の額を記載します。概ね一般的な企業では、株式会社の登録免許税の下限金額にあたる15万円に収まるケースが多いです。なお、合同会社の登録免許税の下限金額は6万円です。

添付書類

添付した書類を綴る順番に記載します。

定款 1通
発起人の同意書 必要数
設立時代表取締役を選定したことを証する書面 1通
設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書 必要数
印鑑証明書 必要数 全ての代表取締役・代表取締役以外の取締役の、市区町村にて発行後3ヶ月以内の印鑑証明書
本人確認証明書 必要数 設立時取締役、設立時監査役(印鑑証明書を添付しない役員)について、住民票記載事項証明書か運転免許証の裏表コピーに、本人が「原本と相違ない」と文言を入れてコピーしたもの
(必要に応じ)設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書およびその附属書類 1通 会社法第28条各号にきていする変態設立事項に関する定めが定款に定められている場合にのみ添付する書類。
(資本金の)払込みを証する書面 1通 通帳やオンラインバンクの振込履歴と、発起人の名前・支店・口座番号などが一致し、本人も含めた出資者からの振込があったことをわかるようにすることが要される
資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書 1通
委任状 必要数 司法書士に依頼する場合

その他必要書類を記載し、最後に登記申請書の作成や申請会社・申請人・代理人・連絡先電話番号を記入します。

東京都○○区○○町○丁目○番○号○○ビル○○号室
申請人 ○○株式会社

東京都○○区○○町○丁目○番○号
代表取締役 ○○ ○○ 印

という形で、法務局に提出する会社印と同じ印鑑を押印します。個人で作成される場合、よく個人の実印を間違えて押されるケースが多いので、気をつけましょう。また、司法書士に委任する場合は、前述のとおり、司法書士が代理人として記載され、設立時代表取締役員の押印は必要なくなります。

連絡先電話番号 ○○○-○○○○-○○○○
と、携帯などつながりやすい連絡先を記入します。

○○法務局 ○○支局 御中

と最後に記入します。

書類が2枚以上にわたる場合は、ページ間に契印(株式会社設立登記申請書に押される印鑑と同じもの)をページの間に押印します。

③資本金の払い込みを証する書面

資本金がいくらあります、と申請書に記載しても、「その資本金が実際にある」という証明書類が必要です。それが、「資本金の払い込みを証する書面」です。

通帳の表表紙・裏表紙・振込のページのコピー(出資者がわかる部分にマーカーを引くと担当者がわかりやすい)かインターネットバンキングの入出金明細、及び法務省のサイトにあるひな形を利用し、作成し、各書類をホチキスで綴じ、各ページ間に割印を押印すれば大丈夫です。

また、法務局が確認する点は、「入出金履歴とその名義」です。たとえ自分の通帳であっても、出資者である場合は何らかの形で、自分の通帳に自分の名前で振り込まなければなりません。

④発起人決定書(代表社員決定書)

こちらも法務省のひな形を利用していただくのが確実ですので、ここでは注意点を記載いたします。発起人決定書を作成する理由は、「定款を作成する前に、割り当て株式及びそれぞれの発起人の出資金額について同意しました、という客観的な証明を行うためです。

余談になりますが、定款の作成日より後に発起人全員が払込を行った場合は、発起人決定書の添付は不要です。しかし、当事者の数が複数になると、出資金を払い込む時期にばらつきが出る可能性もあり、定款作成の前と後、両方の日に振込があるというケースも想定されるので、いずれにせよ発起人決定書を作成しておくことをおすすめします。

⑤役員の就任承諾書

一人会社の場合であって、役員が自分だけであっても役員の就任承諾書を作成する必要があります。役員ごとに就任承諾書を作成するのですが、注意する点が住所・氏名と印鑑です。印鑑証明書と「全く同じ内容」、例えば5丁目3番地3と地番があれば、そのまま「5丁目3番地3」と書く必要があり、略して「5-3-3」と書くことはできません。

また、難しい名字と簡単な名字が混在する場合(例:斉藤・斎藤・齋藤)、印鑑登録書記載の字と全く同じものを記載する必要があります。

また、役員の就任承諾書に押印する印鑑は、印鑑証明書と同じ印鑑、つまり実印である必要があります。

余談ですが、合同会社の業務執行役員については、定款に業務執行役員であることを記載すればそれでよいため、就任承諾書は不要です。

⑥役員の印鑑登録証明書

上記⑤の役員の就任承諾書と密接に関わる書類です。印鑑登録証明書は、マイナンバーカードを作っている場合は別として、通常は平日の昼間に市区町村役場へ行かなければなりません。また、ごくまれにではありますが、印鑑登録をしていなかったり、印鑑登録した印鑑を紛失しているというケースもゼロではありません。

そのため、役員には、実印を現在持っているか、実印の印鑑登録を行っているか、また本人が実印として使っている印鑑が、印鑑登録されたものと同じであるかの確認が必要です。

⑦OCR用申請用紙(もしくはCD-R・DVD-R)

現在は、専門家が登記事項を提出する場合は、オンライン申請が一般的です。一般の方のケースだと、自分でOCR用申請用紙を使うより、テキストファイル(メモ帳・テキストエディタなど作成でき、ファイルの末尾に.txtという表記があります)でCD-R、DVD-Rに必要事項を書き込んだデータを焼くほうが便利でしょう。

OCR申請用紙であれば、法務局へ直接取りに行く必要があります。CD-R、DVD-Rを利用する場合は、CD-Rの表面に文字を書いても問題ないマジックや、シール作成プリンタにより、商号を記載しておくと、担当者にもわかりやすいでしょう。

注意すべき点は、文字は英数字も含め、全て全角で記載しないといけないということです。一般的には、英数字は半角で入力するケースが多いので、気を付けることをおすすめします。

なお、このOCR用申請用紙に入力した記載事項が、そのまま会社の全部事項証明(いわゆる登記簿謄本)に反映されます。また、法人の定款と相違があってはいけません(例え1文字でも、補正対象となります)。間違いのないよう気をつけて入力しましょう。

⑧印鑑届出書

印鑑届出書については、法務省のページでも取得することが可能です。慣れた人でも印鑑の押し間違えなどをしがちなので、注意点を押さえておきましょう。

  • 法務局に届け出る代表社印は、左側の大きな部分に押す。印鑑作成時には、実印、銀行印、角印・認印など複数の印鑑を作成しているケースが多いと思われるが、実印を押印する
  • 住所・氏名は、代表取締役になる人の印鑑証明書通りに書き、前にも述べた略字体や丁目、番地などの省略は行わない
  • 右下側に、代表取締役になる人の実印を押印。代表者印を押してしまうケースが非常に多いので、ここは気を付ける

⑨印鑑カード交付申請書

印鑑カード交付申請書についても、印鑑の押し間違いがあるケースがあります。以下のポイントに注意してください。

  • 押印部分には、会社の実印(代表取締役印)を押す(個人の実印ではない)
  • 会社法人番号等については、登記完了後に決まるものなので、空白にしておく
  • 申請人が本人である場合は、住所・氏名を印鑑証明書通りに記載するとともに、連絡先には法務局の営業時間中でも出られる番号を記載

なお、この提出手続きで受け取る印鑑カードは、会社の印鑑証明書を法務局で発行してもらう際に必要な、大切なカードですので、金庫などセキュリティ性の高い場所に保管しましょう。

⑩(現物出資に関する)調査報告書(株式会社のみ)

出資においては、お金の出資だけではなく、現物(不動産、車・パソコン・タブレットなど業務に用いるものが明白なもの、株式など)を出資することもできます。現物での出資金額が500万円を超える場合、検査役の選任など時間と費用がかかりますので、一般的な起業であれば、出資額は500万円以内に収めることをおすすめします。

500万円以下の現物出資の場合、設立時取締役が現物出資について調査を行い、「調査報告書」を作成する必要があります。調査内容は以下の通りです。

  • 現物出資財産が定款に記載され、金額が相応であるか
  • 現物出資するものが事業を行う上で必要なものであるか
  • 所有者名義を変更することが要される場合、会社に名義変更が可能か(例えば、マイカーローンなどで所有権がディーラーになっている場合は、名義変更が難しい)

こちらも、定款通りの記載と、設立時取締役全員の記名押印(名前はパソコンで書いてあってもいが、印鑑の押印は必要ということ)が必要、日付を役員の就任承諾書の日付より後の日付にするという点にも注意してください。

なお、余談になりますが、調査報告書は認印で可とされています。しかし、実印を押す書類と、認印で良い書類が混在すると、押す側は混乱してしまい、実印を押すべきところに認印を押すケースも想定されます。ミスを減らすという観点では、実印を押してもらう方がスムースでしょう。

⑪財産引継書

財産引継書についても、現物出資がある場合は記載が必要です。これも定款通りに記載するなど、⑩の調査報告書と同様、法務局のひな形を活用しましょう。

⑫資本金の額の計上に関する証明書

こちらも法務省のひな形に準じて作成してください。注意点は以下の通りです。

  • 代表者印を押印
  • 資本金に組み入れず、資本準備金を計上する場合、その額を記載
  • 日にちは、資本金の払い込みが行われた日か、現物出資が行われた日のどちらか遅い日以後の日付とする

なお、現物出資に関しては、評価額の妥当性なども含め、専門家のアドバイス(司法書士・税理士)を受けるか、そもそも現物出資を行う予定があれば、専門家に依頼することをおすすめします。専門家であれば、現物出資の必要性や評価額の妥当性、書類作成など先方で行ってもらえますので、自分で調べるよりも確実といえます。

5-4 書類の並べ方

官公庁は書類主義であるということを前に述べましたが、書類の並べ方についても厳密な決まりがあります。書類は一度受理されると返却されませんので、提出者の方であらかじめコピーを取っておく必要があります。法務局から補正の連絡が来た場合、相手は紙ベースの書類を見ているのに対し、こちらにも同じように整理した書類がないと、どこを直すべきかがわかりにくくなるためです。

書類を分類すると、順番通りに並べ、ホチキスで留めるAグループと、順番通りに重ねるBグループが存在します。また、Aグループ、Bグループに記載がない書類については、法務局にご確認ください。

Aグループ この順番通りに並べ、ホチキスで留める

登記申請書
登録免許税納付台紙(絶対に消印をしないことと、法務局の確認などを経て提出前に法務局内の印紙売りさばき所で購入することに注意)
定款
発起人決定書
就任承諾書
印鑑証明書(A4のコピー用紙に1人1枚ずつ貼り付け)
払込みがあったことを証する書面

Bグループ 順番に並べる必要がなく、そのまま提出

OCR用申請用紙もしくはCD-R、DVD-R
印鑑届書

6 会社設立登記書類は専門家にチェックしてもらう

会社設立登記書類は専門家にチェックしてもらう

自分で会社設立登記の手続きを行う場合、法務局、確実性を求めるのであれば、費用を払って専門家にチェックしてもらうのが良いでしょう。法務局の手続きでは、ごく細かな間違いがあっても、補正依頼を受けたり、場合によっては書類ごと却下されたりするケースもあります。

6-1 会社設立書類の提出前に、法務局・専門家のチェックを受ける

会社設立書類の前に行うことを強くおすすめしたいのは、法務局で書類のチェックを受けることです。法務局に書類を確認してもらう上で、マナー・常識として押さえておくことが望ましい点が2点あります。

①作成上での細かな疑問で、自分で手引きを読んだり、調べてたりしてもわからないことだけを法務局の相談窓口に電話で聞く

会社設立登記の書類は膨大かつ複雑、厳密なので、口頭や窓口で全てを伝えるのは不可能です。(そして、手続きの仕方を伝えるために記載例などの手引きがあります)自分で行う場合は、自分でできる限りのことを調べて、その中でどうしてもわからないことだけを聞くのがマナーと言えます

また、司法書士・税理士・行政書士・社会保険労務士など、会社設立やその後の運営に関わる専門家は、知識を習得することに大きなコストを払っています。専門家に相談する場合は、所定の相談料を支払う、もしくは最初から一任するのが良いでしょう。

申請者側で申請の手引きを読み込んで、わからない部分においてのみ法務局のように、無料で相談できることをうたっているところに相談するか、専門家のアドバイスを受ける場合は相応の報酬を支払うなど、基本的な部分に気を配るようにしてください。

6-2 会社設立書類を法務局に提出する前の注意点

全書類のコピーを取っているか
収入印紙を貼り付けたか(収入印紙への割印・サインは絶対NG)
書類を所定の順番通りに綴ったか
法務局などの事前のチェックを受けたか
書類は全てA4で統一してあるか。A4以外のサイズの場合は、A4用紙に貼り付けているか
CD-R、DVD-Rの場合は、フォルダの中ではなく一番上(ルートディレクトリ)においてあるか
法務局のパソコンはwindowsなので、Macでディスクを作成した場合は(現在は問題ないと思うが念のため)Windowsで読み込めるか
定款と申請内容の日付に相違はないか
印鑑証明書は取得後3ヶ月以内のものか
印鑑の押し間違いはないか
郵送の場合は、印鑑カード返送用に、切手を貼った簡易書留扱いの封筒か、配達記録のあるレターパックを同封し、自宅や会社を返送先としてかいてあるか
提出日(書類到着日)=会社設立日となるため、日にちなどにこだわりがある場合、その日窓口に出すことを念頭に置いているか

以上の点を注意して、最終提出を行うようにすることをおすすめします。

6-3 書類に不備があった場合

登記申請書を提出する際に、必要最小限のチェックは窓口で行われますが、より細かい部分のチェックは、法務局の方で時間を取って行います。チェックの過程で書類に不備があった場合、修正できる範囲→補正の連絡、資料不足、内容の不備など修正でどうにもならない場合→取り下げ再度申請など、状況に応じた対処する必要があります。

補正の連絡があるケースとしては、押印間違い(個人実印を押すべきところに認印を押している、会社印を押すところに個人の実印を押しているなど)、日にちの記載間違い、定款の記載とCD-R記載の登記内容が異なる、書類の期限が切れている(住民票が3ヶ月を過ぎている)などのケースがあります。

また、派遣業など一定の資本金を要するケースや、許認可が必要なのに許認可申請にかかる事業目的を定款や登記事項に記載していなかった場合などは、いったん登記申請を切り下げ、必要に応じ、定款・登記事項を作り直すと共に、許認可が関わる業種は行政書士に資本金・事業目的が要件に合致するかを確認する必要があります。

7 まとめ

今回は法務局の会社設立登記手続きについてまとめました。会社設立の手続きを全て自分だけで行うとなると手間と時間がかかるため、税理士などの専門家にお願いした方が望ましい場合もあります。一人で会社設立を済ませれば費用はゼロですが、専門家に一任していれば、登記の前段階の定款認証で定款の電子化も行ってくれますので、4万円が浮きます。時間と手間を考慮すれば専門家に依頼する実質的な出費は案外軽くなる場合もあります。

一方、自分で申請書類を作ろうとして時間をかけても、よほど時間単価の安い人でない限り、その時間で本業につながることを行った方がずっと建設的ですし、いくら正確な書類を作っても、本業にはリンクしません。また、目的の文言を考えたり、許認可申請が必要な事業の場合は、目的・資本金の内容の考慮も必要になります。

会社設立の専門家に依頼すると、行政書士の定款作成・電子定款認証、司法書士の会社設立登記、税理士の税務署等届出と申告、社会保険労務士のハローワークや労働基準監督署への届出など、会社設立の専門家をハブとして他の専門家集団とそれぞれの分野で業務を受託してもらい、代わりに行ってもらうほうがネットワークは広がります

また、会社設立登記が終わったからと言って、会社に関わる手続きが全て終わったわけではなく、税務署・都道府県税事務所・市町村(23区除く)への税金に関する届出や、年金事務所・労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)への届出など、人の雇用の有無により異なりますが、多くの手続きをこなさなければいけません。

こちらも、ハブ的存在となる専門家に依頼しておけば、税理士・社会保険労務士と連携して(場合によっては、専門家が税理士や社会保険労務士の資格を有している場合もある)、その後の手続きも行ってくれます。自分で一つ一つ手続きを進めていくより、会社設立の検討・相談など最初の段階から専門家に相談、依頼することにすれば、なにかとスムースに進みます。

登記業務に関しても、株式会社の任期は最長10年となっており、この期間を過ぎているにもかかわらず、「重任」といい、再度代表取締役、取締役等を続けるという登記手続きを行わないと、場合によっては、会社が休眠扱いになったり、登記懈怠といって、「本来登記手続きを行うべき事をしなかった」ということで科料(少額の罰金)を処せられる可能性もあります。

もし、司法書士と初期の段階でネットワークができていれば、気の利く司法書士であれば、向こうから「そろそろ重任手続き、必要ではないですか?」とリマインドをしてくれます。起業後事業が軌道に乗り、新規分野に進出する場合、司法書士に目的の変更を行ってもらい、行政書士に許認可手続きを依頼するなど、起業後も司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士などと関わったり、場合によって係争案件などで弁護士との関わりがでてくる場合も想定されます。

いずれの場合であっても、初期の段階から、専門家とネットワークを築き、適正な業務運営、困りごとの相談などができる体制を作っていくことは、事業がスケールしてからでも活きてきます。「餅は餅屋」の言葉の通り、専門手続きは専門家に依頼するほうが確実と言えます。

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