一般社団法人の財源は?
法人は、組織を維持することや事業活動をするためには資金が必要です。それは、株式会社などの営利法人も一般社団法人などの非営利法人も同じです。法人が資金を得る方法の最も一般的な方法は収入を得ることです。一般社団法人も収入を複数の方法で得ることができます。
今回の記事では、一般社団法人が資金を集める複数の方法を、安定的な収入と特別な収入に分けて解説します。また、会費収入において知っておくべき事項について解説するので、参考にしてみてください。
目次
1 安定的な収入
法人が事業を継続するためには、収入が必要です。一般的には、法人を継続させるためには費用が必要だからです。費用とは、職員や従業員に支払う給与などの人件費や事務所の家賃などがあります。
費用は毎月支払いしなければならない固定費用なども多いため、費用以上の収入があることが望まれます。つまり、入ってくるお金で支払いする分が賄えるというのが望ましい形です。
一般社団法人における代表的な安定的な収入は、以下の通りになります。
- ①会費
- ②寄付金
- ③事業収入
1−1 会費
一般社団法人の安定的な収入の代表的なものは会費になります。一般社団法人の会費は、一般的にはその法人や事業を維持・運営するために必要な費用を賄うために会員が支払うお金になります。
⚫︎一般社団法人と会員
一般社団法人は、会員制度を設けることができます。
一般社団法人が会員を募り、会員になることで法人のサービスや会員同士の交流ができるなど、会員になることで得られる特典があります。また、会員になることで外部に対して会員になったことを開示できます。
⚫︎会員の種類
一般社団法人には、会員に種類を設けている場合があります。具体的には、「正社員」「賛助会員」「準会員」「一般会員」と「特別会員」などがあります。
会員によって受けられるサービスが異なる場合もありますが、会員の種類の違いによって間違いなく変わってくるのはステータスになります。また、会員の違いによって支払いする会費の金額も異なってくる場合があります。
例えば、一般社員と特別会員ではサービスが異なって、会費や義務も異なってきます。これらの違いを作る目的としては、より広く会員を作ることにあります。
例えば、特別会員は会費も高額な負担になって義務も発生するようにします。一方で、一般会員は義務がなく会費も低額に設定することで、一般会員を広く集めながら、特別会員を中心に一般社団法人の運営を回していくことができます。
上記のように、一般社団法人の運営に関わっていく会員があります。一般社団法人において正会員は、一般社団法人の意思決定機関である社員総会での議決権を持つ社員と同一の場合もあります。
⚫︎入会金と会費
一般社団法人の会費は、規定にて定めていることが一般的です。会費については、会員になる入会の際に支払いする「入会金」と年や月の単位の「会費」があります。
入会金は、入会すると同時に支払いすることが一般的で、入会金を納入することで会員になれます。入会金も正会員と賛助会員や特別会員と一般会員では金額が異なっているのが一般的です。
会費には、年間費や月会費などの単位は様々です。また、年間費であっても年に1回の支払いや年に2回〜4回などに分けて支払いする規定になっているケースもあります。
会費については、社会全体のインフレ傾向や職員の給与の上昇を反映させて増加させることができます。会費は、理事会などで決定できる旨を規定しておくことができます。逆に、会員数が増えて1会員が負担してもらう運営費などが抑えられるようになった場合にも、会費を下げることも決議することが可能です。
なお、入会金や会費について会員を退会したのちに返還しない規定を定めることも可能です。返還の定めを規程に載せて置かない場合には、退会した元会員とトラブルになる可能性がありますので、注意が必要です。
1−2 寄付金
寄付金とは、金銭や物品などの経済的に利益になるものを無償で供与することを言います。寄付については、原則「見返りを求めない」という点が前提になります。
そのため、サービス提供をして本来受け取っている対価などを受け取らないことも寄付金となります。具体例として、ボランティアとして労働をしてその対価としての給与を受け取らないことも寄付にあたります。
対価を求めないものが寄付となるため、サービスや商品の提供を受けた対価として支払う金銭などとは分けて考えられます。
⚫︎一般社団法人の寄付は課税対象
一般社団法人は、非営利法人になります。しかし、すべての所得は課税対象となり、寄付金も同様になります。一般社団法人の会計上では、一般的に寄付は売上計上となり、課税の対象となります。
一般社団法人の中でも税制上の優遇が受けられる非営利型法人のみ、寄付金収入は課税対象から除外されます。ただし、収益事業から生じた所得とみなされた場合には課税対象となります。
そのため、寄付金収入が多いことが予想できる場合には、非営利型法人の要件を満たすことを目指すことは、税制上でメリットがあります。(詳細は後述します)
⚫︎非営利型法人の要件
以下の要件のどちらかを満たした一般社団法人と財団法人は、非営利型法人となります。
- ①非営利性が徹底されている法人である
- ②共益的活動を目的とする法人である
なお、非営利型法人になる場合には特段の手続きは不要で、要件を満たしていることのみが必要になります。逆に、要件を満たさなくなった時点で自動的に非営利型から普通法人に自動的に移行する点に注意が必要です。
非営利型法人から普通法人に移行すると、累積所得に対して一度に課税されるため、経営に大きな影響があります。さらに、1度非営利型法人から普通法人に移行した法人はもう非営利型法人になることができません。
これらの点から、非営利型法人の要件を満たすことだけでなく、その要件を継続できるように留意することが必須です。
⚫︎非営利性の徹底
非営利性の徹底には、以下の3つが必要になります。
- ✔️剰余金を分配しないことを定款に定めておく*
- ✔️法人の解散時の残余財産は国や地方公共団体もしくは公益的な団体に贈与することを定款に定めておく*
- ✔️理事の親族要件**に該当しないこと
*この2つの定めに違反する行為を決定、もしくは実行したことがないことが前提になります。
**理事の親族要件は、理事とその特別な関係を持つ理事が1/3以下であることが求められます。特別な関係とは、「配偶者」「3親等以内の親族」「その他一定の特殊関係にある人」などを言います。
⚫︎共益的活動を目的とする法人
共益的活動とは、広く社会に対して共通の利益になる活動を言います。共益的活動を目的とする法人は、以下の要件を満たす必要があります。
- ✔️会員に対して共通の利益を図る活動を目的とする
- ✔️定款などに会費についての定めがある
- ✔️主たる事業が収益事業ではない
- ✔️特定の個人や団体に剰余金の分配を実施することを定款に定めていない
- ✔️解散時の残余財産を特定の個人や団体に帰属させることを定款に定めていない
- ✔️理事の親族要件に該当してないこと
- ✔️上記事項の要件を満たしている期間中に、特定の個人や団体に特別の利益を与えることを決定、もしくは実際に与えたことがない*
*特別の利益の供与の禁止は、非営利型法人の要件において特に注意が必要です。なぜならば、理解不足によって特別利益の供与に該当する行為を行う可能性があるからです。
また、特別な利益を与えることは事業について限定はありません。収益事業においても収益事業以外でも特別な利益を与えることは要件に抵触してきます。
1−3 事業収入
一般社団法人も、営利活動を実施することが可能です。株式会社などの営利法人と同様に、営利を目的とする事業活動を実施できます。
事業とは、営利などの目的をもって継続的に組織や個人によって行われる仕事を言います。事業で重要なことは“目的“と“継続性“になります。
事業は個人事業主や1人法人など1人などで立ち上げることは可能ですが、お客様や取引先がいて成立します。お客様や取引先は、その事業の継続性を信用して取引をします。
事業収入とは、法人や事業主が事業を行なって得る収入になります。例えば、物の販売やサービスを提供して受ける代金を言います。
一般社団法人の運営やその他の事業を支援するために事業収入を活用しようとする場合には、事業収入から原価や販売にかかる費用を差し引く必要があります。そうしないと、事業収入が継続できません。
原価とは、商品やサービスを作るために必要な原材料などにかかる費用を言います。例えば、ラーメンを提供する場合には麺や具材やスープを作るための出汁などが原価に該当します。
一方で、ラーメンを作る人やその販売にかかわる電気代やガス代金やその他の販売をするために必要な費用があります。これらの費用を払わなければ事業を継続することができません。
事業を継続するために費用を支払い、残った資金を一般社団法人における法人の維持や非営利事業活動に活用することができます。
⚫︎非営利型法人の収益事業
税法上の優遇を受ける非営利型の一般社団法人においても、非営利型以外の法人と同様に事業収入は課税対象になります。
事業収入を得ることを目的とする事業を「収益事業」と呼びます。
株式会社や合同会社などの営利法人は、原則行なっている事業のほぼすべては経済的な利益を得ることを目的にした収益事業に該当します。そのため、営利法人においては事業と言えば収益事業になり、事業を区別していません。
非営利型法人も主たる事業が公益・共益的な活動であれば、収益事業を行うことが可能です。非営利型法人においては営利法人とは異なり、主に実施している事業が収益事業ではない法人もあるため、事業の中で収益事業としてその目的を分けておく必要があります。
法人税上では、課税隊長となる収益事業を以下の2つの要件を定義しています。
- ・販売業、製造業その他の政令で定める事業を行っていること
- ・継続して事業場を設けて営まれている
⚫︎収益事業の定め
収益事業となる事業は、法人税法施行令第5条1項に定められていて、34の事業が収益事業となっています。代表的には、「物品販売業」「不動産販売業」「金銭貸付業」「製造業」「通信業」「運送業」などがあります。
なお、収益事業においても特例があります。特例とは、以下の6つに該当する者が事業に従事している総数の半数以上を占めている場合で、かつ事業によって従事者の生活を保護することに寄与している場合については収益事業として扱われなくなります。
- ・身体障害者福祉法に規定されている身体障害者
- ・生活保護法に規定されている生活扶助(ふじょ)を受ける者
- ・児童相談所、知的障害者厚生相談所、精神保健福祉センターまたは精神保健指定医による知的障害者の判定を受ける者
- ・65歳以上の者
- ・母子及び寡婦福祉法に規定されている配偶者のいない女子でかつ児童を扶養する者または寡婦
⚫︎継続して事業場を設けての営み
事業場を設けていることに該当するのは、常時営業している店舗や事務所などがあることなど事業を行う拠点を設けていることを言います。また、常時営業している店舗などはなくても、定期的に必要に応じて事業活動を行うための場所を設ける、もしくは既存の施設を借り受けるなどをして利用して事業を行うことも含みます。
加えて、継続するということに対しては、以下のようなものが含まれます。
- ・事業年度である1年を通じて継続した事業活動を実施している
- ・土地の造成や分譲など、通常1つの事業計画に基づく事業を完遂する上で必要と考えうる期間中に事業活動を実施している
- ・海水浴場においての席貸しや縁日での物品販売などのように、相当期間において継続的に行われるもしくは不定期に反復して行われる事業
2 特別な収入
会費や寄付金や事業収入は、実施している事業が安定すれば継続的に入ってくることが期待できる収入です。一方で、安定的な収入とはいえないものの、特別な収入として事業や活動に必要な資金調達としては重要な収入源になるのが、以下の3つの収入になります。
- ① 借り入れや投資
- ② 助成金
- ③ 補助金
営利法人と非営利法人とを区別することなく、法人全体として資金調達は事業継続並びに法人の維持のためには必須になります。どのように資金を調達するかという点を経営は考えなければならず、安定的な収入の他の資金調達方法が確立されているかどうかで法人の安全性などが変わってきます。
2−1 借り入れや投資
一般社団法人の借り入れ、つまりは融資を受けることは簡単ではありません。融資を実行してくれる公的機関や金融機関は決して多くありません。
一般的に融資を実行してくれるのは、「公的機関」と「民間の金融機関」になります。民間の金融機関が融資を渋る場合には公的機関がサポートや支援をする形をとっています。例えば、民間の金融機関が敬遠しがちな創業時の資金調達のために日本政策金融公庫が融資を実行しています。
しかし、一般社団法人への融資については公的機関においてもそもそも利用できる融資制度が「新創業融資」や「ソーシャルビジネス支援資金」など対象自体が限定されています。また、地域の企業を支える自治体の制度融資についても、多くの場合にはそもそも一般社団法人は対象外になっています。
民間の金融機関では、第一の課題として全国信用保証協会の保証制度自体で、医療系を除外した一般社団法人の利用ができません。保証制度が利用できないということは、保証してくれる後ろ盾が無くなるということなので、金融機関自身がリスクを負う融資である「プロパー融資」を利用することになります。
プロパー融資は、保証制度を活用した融資に比べると、金融機関が抱えるリスクが大きくなることからより厳しい目で審査されることが一般的です。
⚫︎一般社団法人への融資が難しい理由
一般社団法人は、利益を上げることを目的として事業活動や活動を実施していません。そのため、事業活動から得られる収入は利益を上げることを目的とする株式会社などの営利法人と比較すると収益性が低くなる傾向があります。
金融機関などの融資を実行する企業からすると、事業が成長して利益が安定的かつ継続的に成長することを目的にする企業への融資の方がリスクが低くなります。
一般社団法人では、事業の成長や利益の確保を第一の目的としていません。そのため、返済の原資となる収益を上げる能力である収益性が営利法人よりも低くなる傾向があります。そのため、債権者となる金融機関から見た場合には事業の成長や利益の継続的確保や成長が見込みにくい一般社団法人が安定かつ継続的な返済能力を保ちにくいと見てしまいがちです。
⚫︎融資が不可能ということではない
一般社団法人が融資を受けられない、ということではありません。
日本政策金融公庫には、一般社団法人が利用できる融資制度があります。通常の融資時と同様に事業計画や返済計画などを提出し融資額が決定しますが、融資額が少なくなってしまうケースなどもあります。しかし、これらは新設の法人でも融資額が少なくなってしまうケースはあります。
また、融資においては金融機関から借り入れができたという実績と、返済を遅滞なく実施しているという実績、この2つの実績が重要になります。返済を継続していることで、追加の融資を受けられる可能性と他の金融機関から借り入れができる可能性が上がります。
また、資産として不動産などを持っている場合には不動産担保ローンを利用することもできます。金融機関などは足りない信用を現物(不動産など)を担保にすることで埋めることができます。担保とする不動産が法人所有ではなく、代表個人の所有になっていても対応できる金融機関などもあります。
⚫︎投資
投資家が株式会社などに投資をする場合には、株式を購入する方法によって株主になるのが一般的なやり方になります。投資家は株主になることで、投資した法人の所有者となり、その事業活動で得た利益の一部の還元を受けることができます。
しかし、一般社団法人には、株式がありません。そのため、投資家を募ることはできません。しかし、一般社団法人も活動資金を集めたいというニーズは変わりません。
株式がなく投資を受けることができない一般社団法人には、株式制度にかわる「基金制度」があります。
基金制度は、株式会社で言うところの出資に似た資金調達ができます。一般社団法人は、設立に際して財産の拠出が不要です。資本金がない一般社団法人も活動するための資金が必要なことに変わりはありません。
資本金がない一般社団法人がその活動資金の拠出を受ける制度が基金制度になります。一般社団法人の社員や社員以外の第3者から活動資金などの拠出を受けることができます。
拠出を受ける基金には、上限や下限といった制限はありません。拠出の対象となるものとしては、金銭と不動産や動産などの現物財産などがあります。拠出の対象が金銭以外の場合には価額調査が必要になります。
価額調査は、裁判所へ検査役の選任申立てを行います。ただし、価額が総額500万円を超えない場合や客観的に存在する市場価格未満の有価証券などは検査役の調査が不要になる条件があります。
⚫︎基金制度の実施は任意だが、手続きには規定がある
基金制度は、株式会社における資本金制度と異なり、任意になります。そのため、一般社団法人によっては基金を設置していない法人もあります。
基金制度の導入は任意ですが、その手続き方法は一般社団法人法で規定されています。規定に沿って実施しない基金は、拠出自体が無効という扱いになるため注意が必要です。
また、基金を募集するにあたっては、定款にその条項を定めがあることが必要です。定款にすでに基金について定めがある場合には手続きが必要ありませんが、定款に定めがない場合には社員総会の特別決議が必要になります。
基金の募集事項は、一般社団法人法第132条によって定められています。定められた募集事項を決定して、通知します。
<基金の募集事項>
- ・募集する基金総額
- ・金銭以外の財産拠出を目的とする場合には、その旨と当該財産の内容とその価額
- ・基金拠出についての払込期間や期日
⚫︎基金の特徴
基金制度には、以下の2点の大きな特徴があります。
- ・返還義務がある
- ・登記が不要
株式会社が出資を受ける場合には返還義務がありませんが、基金制度には返還義務があります。また、返還についても一定の要件に合致させて変換を実施する必要があります。そのため、一般社団法人で基金制度の導入を検討する場合には返還義務について正しい理解が求められます。
一般社団法人は基金の返還義務を負いますが、その返還は以下の要件に該当する場合に実施できます。
<返還実施要件>
- ①事業年度の貸借対照表の純資産額が基金などの合計額を超過する
- ②事業年度の次の事業年度での定時社員総会の開催日の前日までに実施する
- ③①の超過額を限度とする
- ④基金を返還する定時社員総会の決議が必要
つまり、総資産から負債を差し引いた純資産が基金の合計額を超えなければ返還できず、返還する金額の上限も支払い後に残った総資産が負債より多い状況でなければならなくなります。その上、返還期限が短く、返還のたびに社員総会決議が必要になるという手続きが煩雑です。
実際の運用において、必ず事業年度ごとに基金の変換を実施する必要はありません。あくまで、基金制度を導入している法人と基金拠出を行う者の2社間での契約によって返還をどのようにやっていくかは合意できます。
そのため、基金の拠出を受けた一般社団法人が解散するタイミングにおいて基金の返還を実施し、それ以外において基金の返還を実施しないというふうに定めておくこともできます。
2−2 助成金
一般社団法人が公的な制度を利用して収入を得る方法の1つが助成金になります。
助成金は、法人や個人事業主が国や自治体からの支援の一環として支給を受けることができる資金になります。直近では、新型コロナウィルス感染予防対策や天災によって事業の停止や縮小を余儀なくされた法人や個人事業主を救済するため助成金が活用されました。
助成金が基金や金融機関からの借入と大きく異なる点は、返済義務がないことです。助成金を受けるためには、それぞれの助成金の要件を満たしている必要がありますが、支給を受けた助成金は原則返済する必要がありません。
また、同様に国や自治体からの支援である補助金よりも受給しやすい点も助成金の特徴となります。助成金は要件を満たすことが条件になっており、受給までの手順も簡単になっているものが多くあります。
⚫︎一般社団法人を対象とする助成金
助成金の要件には、対象とする法人を限定していることが一般的です。もちろん、対象とするのがすべての法人と個人事業主である場合もありますが、一般社団法人が対象から除外されている場合もあります。
なお、助成金の多くは厚生労働省が管轄しているものになるため、雇用保険適用事務所の事業主が対象になることが多くなっています。
⚫︎助成金の種類と代表的な助成金
助成金の種類は大きく2つに分けることができます。1つは、厚生労働省が管轄する雇用関係の助成金になります。もう1つは経済産業省が管轄する研究開発などの助成金になります。
一般社団法人が活用できる代表的な補助金には、以下のようなものがあります。
<代表的な補助金>
- ・雇用調整助成金
- ・業務改善助成金
⚫︎雇用調整助成金
厚生労働省が管轄する助成金で知名度が高い助成金の1つが「雇用調整助成金」になります。雇用調整助成金は、元々経済上の理由によって事業縮小を余儀なくされた事業主が従業員の雇用を一時休業や教育訓練などによって維持することを支援するための助成金になります。
この雇用調整助成金の制度を活用して、新型コロナウィルス感染症に伴って休業や営業時間の縮小を行いながら従業員の雇用を確保していた事業者が多くいました。
雇用調整助成金などの雇用関係助成金は、厚生労働省のホームページで確認できます。
⚫︎業務改善助成金
2023年において従業員の最低賃金を引き上げることを検討する事業者が活用することが多い助成金が「業務改善助成金」になります。
業務改善助成金は、事業場内最低賃金*を引き上げるために、事業の生産性を向上させるための設備投資などを実施した場合にその費用の一部を助成する支援策になります。
*事業場内最低賃金とは、雇用してから3ヶ月を経過した労働者の事業場内で最も低い時間給を言います。
業務改善助成金については、厚生労働省のホームページで確認できます。
⚫︎助成金の申請
助成金は、申請できる助成金制度を見つけることから始まります。助成金は返済する必要がないため、活用できる助成金を探すために日頃から調べを怠らないことが重要です。
助成金を申請する場合には、ネットなどから該当要件を満たしているかの確認と申請書類などの対応事項を確認して実施します。この時に注意しなければいけないのが申請期限になります。各助成金には申請期限などが設けてあるのが一般的です。
なお、労働保険の滞納がある場合や不正受給の実績などがあるとどの助成金も受け取ることができなくなります。必ず適正な助成金受領になるよう注意が必要です。
2−3 補助金
補助金は、助成金と同様に国や自治体が事業者を支援する制度になります。補助金は国や自治体が示す政策目標に合致した行動を行う事業者の資金の一部を給付する制度になります。
補助金も助成金と同様に返済義務がありません。補助金は「後払い」の仕組みであるため、先に購入などの精算をしたのちに、その費用の一部を補助する仕組みになっています。補助金の対象であると認識せずに購入したものでも、補助金の申請をすれば補助金の支給を得られる場合もあるため、最新の補助金の内容は随時確認しておくことを推奨します。
補助金は、必ずしも事業者が負担するすべての費用を補填するわけではありません。そのため、事前に必ず補助対象と補助の割合や上限額などを確認する必要があります。
また、補助金には審査が必要です。そのため、申請はしたものの審査が通らないケースもあります。また、審査のための書類も助成金などと比較すると多くなるのが一般的です。
ただし、前述の通り補助金には返済義務がありません。融資を受ける際にも同様に審査や必要書類の作成の手間があることを考えれば、一般社団法人の収入源の1つとして活用すべきです。
⚫︎一般社団法人を対象としない補助金に注意
補助金においては、知名度の高い補助金においても一般社団法人を対象としない補助金もあります。コロナ禍で多くの事業者が利用した「小規模事業者持続化補助金」も、一般社団法人を対象としない補助金になります。
小規模事業者持続化補助金は、その補助の対象となる者を「会社および会社に準ずる営利法人/個人事業主/一定の要件を満たした特定非営利活動法人」としています。
そのため、一般社団法人だけでなく一般財団法人や医療法人や宗教法人なども補助の対象から外れています。
このように、補助金の対象から一般社団法人が除外されるケースがあるため、補助金の対象となる法人の種類は見過ごさないようにしなければなりません。
⚫︎一般社団法人が活用できる代表的な補助金
一般社団法人が活用できる補助金も多くあります。一般社団法人が活用できる代表的な補助金には以下のような補助金があります。
<代表的な補助金>
- ・IT導入補助金
- ・事業再構築補助金
⚫︎IT導入補助金
IT導入補助金は、2023年10月から開始されるインボイス制度の対応や生産性改善のための自動化に向けたITツールの導入をした費用を補助することができます。
補助の対象となるツールは、ソフトウェアやパソコンやタブレットといったハードウェアなども対象となります。補助の割合は、導入費用の50%となっています。
ITの導入は、パソコンの入れ替えやさまざまあるクラウドサービスの導入なども対象となるため、幅広い対象と言えます。そのため、IT導入補助金が出るから導入するという活用の仕方もありますが、すでに入れ替えを検討していたITツールの導入の費用に対してIT導入補助金を活用するということも可能です。
IT導入補助金は、申請枠が3つに区分けされており、対象経費や補助金額が変わってきます。申請自体も簡単とはいいにくいため、IT導入支援事業者とともに共同で申請を行う形も多く取られています。
IT導入補助金について詳しく知りたい場合には、経済産業省「ミラサポplus」で確認できます。
⚫︎事業再構築補助金
事業再構築補助金は、現在のアフターコロナの経済状況の変化や原材料を中心とした物価高騰や人件費の増加などに適応・対応するための事業再構築を補助することができます。
事業再構築は、新しい事業分野の開拓や業種の転換や再編などに必要な機材や技術の導入や販売促進などが対象になります。
事業再構築補助金についても申請枠ごとに特性などが異なって必要要件も異なってくるため、申請の公募要領の確認は必須です。事業再構築の定義に該当する事業を実施していることや、認定支援機関との事業計画の策定が必要となるなど、要件を満たすのには一定の準備が必要になります。
対象となる費用は、「建物費」「機械装置・システム構築費」「技術導入費」「専門家経費」「運搬費」「クラウドサービス利用費」「外注費」「知的財産権等関連経費」「広告宣伝費・販売促進費」「研修費」「廃業費」など幅広い費用に活用することができます。
また、補助率は1/3〜1/2となっており、補助金額は1,000万円〜5億円と高額な費用の補助も可能になっています。
事業再構築補助金について詳しく知りたい場合には、中小企業庁「中小機構 事業再構築補助金」で確認ができます。
⚫︎補助金の申請
補助金を活用することを検討する場合には、まず注意点を整理しておくことが必要です。注意点は、審査の部分と、後払いという点です。
補助金には審査があり、審査結果によっては補助金が受給できないケースもあります。また、補助金は後払いになるため、補助金を当てにして商品購入やサービス導入を済ましている状況で補助金が降りないことによって資金不足などに陥らないようにしなければなりません。
補助金の申請も、助成金の申請同様に、どのような補助金があるのかを知ることからスタートします。補助金を探すには、前述のミラサポplusにて補助金や給付金の検索ができます。
公募をしている補助金の中から自身が対象となる補助金を見つけて、必要書類などを準備し、受付期間内に申請を実施します。審査には、2ヶ月前後期間が必要になり、書類審査に加えてヒアリングのための面談などを実施します。
審査が採択されると、採択決定通知書が到着します。この採択決定通知を受領後に、申請者は交付申請書を作成・提出します。再度申請内容の適合性を精査した結果として交付決定が行われます。
交付決定を受けた段階で、補助の対象となる事業を開始することができます。この補助事業期間において発注・検収・請求・支払を実施した経費が補助対象となります。くれぐれも、交付決定前に補助対象となる経費を発生・支払しないようにしなければなりません。
補助事業が終了後に、完了(実績)報告書を提出します。これによって、発注に関する証拠書類の適切さなどを確認する確定検査が始まります。
このすべての過程を経て、補助金の支払額が確定する確定通知が発行されます。証憑の不備などがある場合には減額や最悪補助金の支払いがなくなるケースもあるため、手順や提出書類の作成などは慎重に実施しなければなりません。
最終的に補助金を受領するために、確定通知書を受け取ったのちに補助金支払請求書を提出しなければなりません。この補助金支払請求書を手の提出から1ヶ月以内に指定された金融機関に補助金が振り込みされます。
3 一般社団法人が会費収入で知っておくべきこと
一般社団法人が安定した収入を得ようとする場合には、事業によって得られる収入を安定的かつ継続的に増やしていくことが重要になります。そうなると、事業活動によって会員を集めて会費を増やしていくことと事業自体から収入を得ていく方法があります。
一般社団法人は非営利法人ではあるものの多種多様な目的の上に設立や事業活動を営むことが可能です。その中でも、一般社団法人で実施している活動を賛同・支援してくれる会員を増やして会費を増やしていきたいと考える場合には、会費制度の導入を検討することが多くなります。
3−1 会員制度の導入
一般社団法人が会費を得ようとするためには、会員を募る必要があります。会員がいる一般社団法人の運営は、法人や事業の運営の重要な意思決定を行う『社員』と、収入面での協力と意思決定を投票することで示す会員などで構成されることになります。
一般社団法人が会員を募ろうとしている場合には、会員制度を導入するのが一般的です。
⚫︎社員と会員の規定
一般社団法人で会員制度を導入する場合には、定款に『社員』と『会員』を規定することが一般的です。
一般社団法人の社員は、最高意思決定機関である社員総会での議決権の行使ができます。一方で、会員にはどのような権限や地位を与えるのかは、会員制度を導入する一般社団法人の決定によるものになります。
ただし、業界団体や学会などの会員数が多くなる一般社団法人においては、社員と会員の地位を分けているケースが多くなっています。これは、社員と同等の権限を持つ立場の役職が多くなることで、社員総会の開催やその決議が煩雑になることを避けるためになります。
前述した会員を正会員と一般会員と賛助会員などに分けるのも、会員の中で権限や地位を分けるためになります。例えば、正会員のみが議決権を持つように規定することができます。
会員種別の設け方は、会員制度を導入する一般社団法人の意思に基づいて設定ができ、定款に定めることが求められます。また、議決権を有する会員が意図していない中で増加していくことを避けるために、会員の入会については代表理事の承諾が必要とするなどといった制限を設けることもできます。
⚫︎会費は収益事業の収入とは異なる
会員から受け取る入会金や会費は、収益事業の収入とは区別されます。そのため、会費収入を受けている状況では、収益事業には該当しないことになります。
つまり、一般社団法人が非営利型法人である場合には、入会金や会費収入は非課税となります。ただし、非営利型法人以外の一般社団法人においては普通法人の扱いになります。そのため、会費であるかどうかの区別にかかわらず全ての収益が課税の対象となります。
また、同じ会費であっても事業の対価として徴収する種類の会費は事業自体が収益事業と判定される場合には非営利型法人であっても課税対象となります。
非営利型一般社団法人が事業を行う場合には、実施している事業が収益事業に該当するのかどうかは非営利型の維持のために非常に重要です。事前に税務署や税理士などの専門家に確認して、収益事業かいなかは独自の判断をすることがないようにします。
3−2 非営利型法人のメリット
非営利型一般社団法人では前述のように会員から得る入会費や会費が非課税となります。収入に占める会費や入会金の割合が大きい一般社団法人にとっては非営利型法人になるメリットは大きくなります。
年間1,000万円の会費収入がある場合に、非営利型法人の場合と普通法人で以下のように税金が異なってきます。(実効税率35%で計算)
- 非営利型法人:課税無し
- 普通法人 :350万円の課税
同じ1,000万円でも課税の有無によって、手のこりが1,000万円と650万円という差が生まれます。
⚫︎寄付も非課税に
非営利型法人の一般社団法人では収益事業から生じた所得のみが課税の対象になるため、安定した収入の1つとして前述した寄付金についても課税対象外になります。
また、非営利型法人に寄付をする場合にも普通法人の一般社団法人へ寄付した場合と比べメリットが生まれてきます。
非営利型法人に個人が寄付をした場合には、寄付金が所得税の控除対象となります。そのため、確定申告をすると控除分の所得税が還付される可能性があります。
また、非営利型法人に法人が寄付した場合には一般の寄付金に加えて特定公益法人への寄付として別の損金算入限度制度が適用できます。そのため、普通法人の一般社団法人への寄付を行うより算入できる損金が多くなります。
これらのメリットに加えて、非営利型法人は社会的信用度が一般社団法人より上がります。これは、設立が簡単で規制が少ない一般社団法人にはどのような目的で運営されているのかがわかりにくい状況があります。一方で、非営利型法人であれば公益性や非営利事業の徹底などその法人の活動の目的が明確になっているため信用度に差が生まれやすくなっています。
非営利型法人の要件を満たしている一般社団法人は非営利型法人になることを一度は検討すべきです。
3−3 公益社団法人のメリット
公益社団法人は、不特定多数が恩恵を受ける公益性の高い事業を行う非営利法人の1つの法人になります。公益社団法人を設立するためには、一般社団法人の設立後にその事業の公益性を認められると公益社団法人となることができます。
非営利型法人になるためには審査などがありませんでしたが、一般社団法人が公益社団法人になるためには、内閣総理大臣もしくは都道府県知事による審査が必要です。
⚫︎公益社団法人の税法上の優遇措置
公益社団法人も、税法上の優遇措置が認められています。
まずは、非営利型法人と同じように定められた収益事業のみが課税対象となります。そのため、会費や寄付などの収入についても非課税となります。また、寄付をした個人や法人が所得控除や税額控除を受けられるメリットがある点も同様になります。
一方で、非営利型法人より大きい税法上の優遇措置もあります。その1つがみなし寄付金制度です。収益事業の収入であっても認定法上の公益目的事業に該当すれば非課税になります。また、収益事業で得た利益を公益目的事業に繰入計算をする(みなし寄付金)と、課税所得を圧縮することができます。
4 まとめ
一般社団法人の収入についてまとめました。
一般社団法人には会費や寄付や事業収入など複数の収入を得る方法があります。また、会費を安定的に得ながら、法人運営や事業運営をするために、会員制度を導入することができます。そして、非営利型法人や公益社団法人になることで税法上の優遇措置を受けられます。
一般社団法人を設立する際には、どのような事業を行い、どのような収入を得るのかを決めながら、将来税優遇を受けられるかどうかを検討しながら法人の運営を決定していくことが必要です。