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一般社団法人に寄附するメリット・注意点を解説!

一般社団法人というと難しく捉えがちですが、業界団体や自治会、町会など、私たちの身近には様々な一般社団法人があり活動しています。その一般社団法人に、一定の趣旨や目的をもって寄附を行うことがありますが、一般社団法人に寄附を行うと、予想に反して様々なメリットがあります。

今回の記事では、一般社団法人に寄附を行うメリットや寄附する際の注意点などについて解説しています。一般社団法人の活動を経済的に支援することを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

1 一般社団法人とは

一般社団法人とは

はじめに、一般社団法人の基本について整理してみましょう。同じ目的を持つ人が集まった任意団体を「社団」といいますが、一般社団法人は、この同じ目的を持つ人が集まった社団が、法律に基づいて法人格を与えられたものをいいます。

一般社団法人の根拠となる法律は、「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」となっており、以下の事項について定められています。

  • ・一般社団法人の設立や社員にかかる規定
  • ・社員総会や理事などの機関
  • ・会計
  • ・基金
  • ・定款変更
  • ・事業譲渡
  • ・解散など

一般社団法人の例として、「業界団体」「学術団体」「職能団体」「自治会・町会」「同窓会」などをあげることができます。

業界団体や学術団体は、人が集まっただけであれば、ただの任意団体にすぎません。しかし、法律に基づき法人格を持つと、一般社団法人の業界団体、学術団体となります。

一般社団法人の活動内容に特に制限はなく、事業目的が公益目的でも公益目的以外でもどちらも認められています。そのため、一般社団法人では収益事業もできるなど、比較的自由な事業を行うことが可能です。

一般社団法人は、設立手続きも比較的容易であることから、任意団体が法人化する場合に広く利用されています。一般社団法人は、一定の目的を持つ2人以上が集まり法律上の要件を満たしていれば、法務局で登記することにより設立することができます。

それでは、法人の区分の中で、一般社団法人はどこに位置付けられているのでしょうか。
法人の区分を挙げると以下の通りです。

①株式会社
②持分会社
(例)合名会社、合資会社、合同会社など
③その他の会社
(例)特例有限会社、外国会社など
④一般法人
(例)一般社団法人・一般財団法人など
⑤その他の法人
(例)学校法人、NPO法人、医療法人、社会福祉法人、農業協同組合、事業協同組合、管理組合法人、農事組合法人、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合など

一般社団法人は、①~⑤の種類の中で「一般法人」に区分されます。

1-1 一般社団法人の特徴

それでは、一般社団法人にはどのような特徴があるかについて見ていきましょう。一般社団法人の特徴は、以下の通りです。

一般社団法人の特徴

①簡単な手続きで設立できる

一般社団法人は、法律的な要件を満たしていれば、比較的簡単な手続きで設立できる特徴があります。一般社団法人は、設立の認証を受ける必要がないことから、社員2名と理事1名を揃えて法務局に登記すれば設立することができます。さらに、社員と理事は兼任が認められており、最低、社員1名と社員兼理事1名の2名がいれば設立の要件を満たすことが可能です。

②安い費用で設立できる

一般社団法人を設立するのに、まとまった資金は必要ありません。一般社団法人は、株主から出資金を集める必要がなく、また、一般社団法人の設立にかかわった人が資金を出す義務もないことから、出資金なしで法人を設立することが可能です。

ただし、公証人役場での定款認証手数料や法務局における登記費用(登録免許税)など、設立手続きにかかる費用(約15万円程度)は必要です。

③様々な事業を自由に行うことができる

一般社団法人の事業目的は特別な制限を受けないことから、収益事業や収益外事業、また公益事業や公益外事業など様々な事業を実施することができ、その活動内容を行政庁に報告する義務もありません。

一般社団法人には、営利型と非営利型とがありますが、営利型一般社団法人であれば、利益追求を事業目的とし、株式会社のように収益事業により事業拡大を図ることも可能です。
ただし、法人に利益が残っても、その残余利益を法人の構成員である社員に分配することは認められていません。(利益分配ではない役員報酬や給与の支給は可能です)。

④社会的な信頼を得ることができる

一般社団法人は、社会的に一定の信頼を受けることができます。任意団体は、一般社団法人として法人化することにより、社会的な信頼を得て、その活動を円滑に進めることができます。

組織は、任意団体のままでは社会的な信用を受けることが困難ですが、一般社団法人として法人化すれば、代表者に事故が生じても、法人自体の責任で事業や取引を継続することが可能であるため、社会的な信用度が高まるのです。

⑤出資義務がない

一般社団法人の設立に際しては、資本金を集める必要がなく、法人の構成員である社員も資金を拠出する義務はありません。

一般社団法人は設立時に資金を集める必要がないことから、設立後に事業収入がなければ、事業運営に要する資金が枯渇してしまいかねません。

そのため、基金制度の利用や国・地方公共団体からの補助金交付など、事業を行うための活動資金の調達方法について、事前に計画を立てておく必要があります。

なお、国・地方公共団体からの補助金の交付を受けるためには、一般社団法人の設立目的や事業内容が、国・地方公共団体における補助金の支給要件に適合している必要があります。

⑥基金制度を利用することができる

一般社団法人は、基金制度を使って資金を調達し、活動の原資とすることができます。この基金は、一般社団法人に拠出される金銭その他の財産ですが、拠出者に制限はなく、一般社団法人の社員、非社員のどちらでも拠出することができます。

基金の用途には法律上の制限がないことから、自由な使途に使うことができ、また、基金制度を利用するかどうかは、一般社団法人の判断で決めることができます。なお、基金の拠出者に対し、一般社団法人は当事者間の合意による返還義務を負います。

⑦非営利型になると税制上の優遇措置を受けることができる

非営利型一般社団法人は、税制上の優遇措置を受けることができます。すなわち、営利型一般社団法人は、収益事業・非収益事業のすべてが法人税の課税対象になりますが、非営利型一般社団法人は、非収益事業は課税対象外となります。

⑧利益を配分することができない

一般社団法人は、残余利益を社員に配分することができません。一般社団法人は、収益事業により利益をあげることは認められていますが、法人の残余利益を社員に分配することが禁止されているのです。

そのため、法人の残余利益は年度を繰り越し、次年度以降の事業資金として使用することになります。

1-2 公益社団法人と一般社団法人

社団法人には、公益社団法人と一般社団法人があります。一般社団法人が、法律に基づき認定を受けると公益社団法人となります。すなわち、「公益社団法人および公益財団法人の認定等に関する法律」に基づき、公益認定を受けた場合に公益社団法人になることができ、法律上は「公益法人等」として取り扱われます。

この公益法人等とは、学術・芸術・福祉事業など、不特定多数の人の利益の増進に寄与する「公益目的事業」を行う社団法人または財団法人のことです。

それでは、公益目的事業とはいかなる事業かというと、学術、技芸、慈善その他の公益に関する以下に掲げる種類の事業で、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものとされています。

  • ・学術および科学技術の振興を目的とする事業
  • ・文化および芸術の振興を目的とする事業
  • ・障害者若しくは生活困窮者または事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
  • ・高齢者の福祉の増進を目・的とする事業
  • ・勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
  • ・公衆衛生の向上を目的とする事業
  • ・児童または青少年の健全な育成を目的とする事業
  • ・勤労者の福祉の向上を目的とする事業
  • ・教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、または豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
  • ・犯罪の防止または治安の維持を目的とする事業
  • ・事故または災害の防止を目的とする事業
  • ・人種、性別その他の事由による不当な差別または偏見の防止および根絶を目的とする事業
  • ・思想および良心の自由、信教の自由または表現の自由の尊重または擁護を目的とする事業
  • ・男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
  • ・国際相互理解の促進および開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
  • ・地球環境の保全または自然環境の保護および整備を目的とする事業
  • ・国土の利用、整備または保全を目的とする事業
  • ・国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
  • ・地域社会の健全な発展を目的とする事業
  • ・公正かつ自由な経済活動の機会の確保および促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
  • ・国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
  • ・一般消費者の利益の擁護または増進を目的とする事業
  • ・前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

公益法人等として扱われると、公益目的事業により生じた所得は、法人税の課税対象外になります。法人税の課税対象となるのは、公益目的以外の事業のうち、「法人税法上の収益事業」から生じた所得とされています。

この法人税法上の収益事業は、次の34事業とされています。

〇法人税法上の収益事業

物品販売業、請負業、仲立業、遊覧所業、不動産販売業、問屋業、医療保険業、印刷業、金銭貸付業、出版業、技芸教授業、鉱業、物品貸付業、写真業、土石採取業、駐車場業、不動産貸付業、席貸業、浴場業、信用保証業、製造業、旅館業、理容業、無体財産権の提供等を行う事業、労働者派遣業、美容業、通信業、料理店その他の飲食業、周旋業、興行業、倉庫業、運送業、代理業、遊技所業

上記の事業により生じた所得は、法人税の課税対象になります。

2 寄附金とは

寄附金とは

次に、寄附にはどのような種類があり、その種類に応じてどのような税制上の取扱いがされているかについて見ていきます。

2-1 寄附金とは

寄附金とは、自分の事業に直接関係がない個人や法人に対し、見返りを求めずに行う金銭の供与、資産の贈与などをいいます。寄附金という名称が一般的に使われますが、「拠出金」など別の名前で行われる場合もあります。

すなわち、寄附金は、①自社の事業と直接関係なく支出されるものであること、②見返りを求めずに支出されるものであることが求められるのです。

税法では、寄附金となる範囲について、次のように定められています。

①低廉譲渡を行った場合、その時価との差額のうち、実質的に贈与したと認められる金額は寄附金となる
②広告宣伝費、交際費、福利厚生費など、何らかの見返りのある支出は、寄附金とならない
③寄附金、拠出金、見舞金などいかなる名目でも、実質的に金品を贈与したり、無償で経済的利益を与えたりするものであれば寄附金となる

以上のように、名称や名目がどうであれ、実質的に無償供与や贈与である場合は、寄附金とみなされるということです。

寄附金の主な例をあげると、以下の通りです。

  • ・災害復旧義援金
  • ・日本赤十字社への寄附
  • ・赤い羽根共同募金
  • ・神社・寺院への寄附
  • ・講演会への寄附
  • ・町会・自治会への寄附 など

2-2 寄附金の種類

寄附金は、以下の種類に区分されています。

寄附金の種類

①国・地方公共団体に対する寄附金

国、または都道府県・市町村などの地方公共団体に対して寄附を行うものです。国・地方公共団体に対する寄附金には、以下のものがあります。

  • ・公立学校や公立図書館などへの寄附
  • ・災害発生時に、国や地方公共団体に寄附する義援金、または日本赤十字社や報道機関、赤い羽根などが受け付ける義援金

②指定寄付金

指定寄付金は、公益目的で事業を行う法人・団体に対する寄付金のうち、以下の要件を満たすものについて、財務大臣が認定する寄附金です。例えば、「国公立大学への寄附」「赤い羽根共同募金」などが指定寄附金です

  • ・広く一般に募集されること
  • ・教育や科学の振興・躍進、社会福祉への貢献、文化の向上など公益を増進させるための支出で、かつ緊急を要するものに活用されることが確実であること

③特定公益増進法人への寄附金

公共法人、公益法人などのうち、教育・科学の振興、文化向上、社会福祉への貢献など、公益の増進に著しく貢献すると認定された法人への寄付金で、その法人の主たる目的である業務に関連するものをいいます。独立行政法人、日本赤十字社、公益社団・財団法人等の事業費・経常経費に充てられる寄付金などがこれに該当します。

特定公益増進法人への寄附金には、以下のものがあります。

  • ・日本赤十字社、公益社団・財団法人などの事業費・経常経費に対する寄付金

④認定特定非営利活動法人等に対する寄附金

認定特定非営利活動法人等に対する寄附金で、特定非営利活動にかかる事業に関連する事業費・経常経費に対する寄附金をいいます。認定特定非営利活動法人等に対する寄附金には、以下のものがあります。

  • ・認定NPO法人、または特例認定NPO法人に対する寄附金

⑤一般の寄附金

上で説明した①~④以外の寄附金をいいます。一般の寄附金には、以下のものがあります。

  • ・一般の法人や団体への寄附金
  • ・神社、寺院、宗教法人への寄附金
  • ・自治会、町会などへの寄附金

2-3 寄附金の種類による税制上の取扱い

寄附金の種類による税制上の取扱い

それでは、寄附金の種類により、税制上の取扱いはどのように違ってくるのでしょうか。
ここでは、寄附金の種類による税制上の取扱いの違いについて見ていきましょう。

元々、寄附は、見返りを求めない金銭の無償提供という性格が強いことから、法人の事業活動において、「寄附金は、損金として計上すべきでない」との考え方があります。しかし、近年における法人の事業活動は、特に社会との繋がりが重視され、企業の社会的責任や社会貢献、地域貢献などが強く求められてきています。

そのため、社会貢献や地域貢献などの手段である寄附金についても、一定の範囲内で損金に含めることが許容されています。ただし、寄附金の損金算入を無制限に認めてしまうと、税金対策として乱用される虞もあることから、法人税法では、一定の制限を設けています。

これまでに、寄附金には以下の種類があることをみてきました。

  1. ①国・地方公共団体に対する寄附金
  2. ②指定寄付金
  3. ③特定公益増進法人への寄附金
  4. ④認定特定非営利活動法人等に対する寄附金
  5. ⑤一般の寄附金

上記のうち、①国・地方公共団体に対する寄附金、および②指定寄付金については、その寄附金額の全額を経費として扱う、すなわち、損金に算入して所得から控除することができます。

一方、③特定公益増進法人への寄附金、④認定特定非営利活動法人等に対する寄附金、⑤一般の寄附金については、その寄附金額のうちの一定の割合についてだけ経費として計上することが認められています。そのため、寄附金額のうち、損金に算入できる限度額が決められているのです。

なお、この損金に算入できる限度額は、2段階となっており、③特定公益増進法人への寄附金、④認定特定非営利活動法人等に対する寄附金は、「特別損金算入限度額」として損金算入割合が高く、⑤一般の寄附金は「一般損金算入限度額」として損金算入割合が低くなっています。

【損金算入限度額】
〇特別損金算入限度額=
{(資本金等の額×当期の月数 / 12×0.375%)+(所得の金額×6.25%)}×1 / 2
③特定公益増進法人への寄附金、④認定特定非営利活動法人等に対する寄附金が対象

〇一般損金算入限度額=
{(資本金等の額×当期の月数 / 12×0.25%)+(所得の金額×2.5%)}×1 / 4
⑤一般の寄附金が対象

また、支出した寄附金額が、上記計算式で算出した限度額に満たない場合は、支出した寄附金額が損金に算入する額となります。

なお、後で説明しますが、一般社団法人に対する寄附金は、⑤の一般の寄附金として、一般損金算入限度額が適用されます。

3 一般社団法人に寄附するメリット

一般社団法人に寄附するメリット

それでは、一般社団法人に寄附するとどのような良いことがあるのでしょうか。ここでは、一般社団法人に寄附するメリットについてみていきましょう。

一般社団法人に寄附するメリット

3-1 社会的な貢献ができる

一般社団法人に寄附を行うと、社会的な貢献ができるメリットがあります。社会的な貢献ができることは、一般社団法人に対する寄附のみでなく、広く一般的に行われている寄附についてもいえることですが、一般社団法人への寄附に着眼してもそのメリットは大きいといえます。

社会で活動している個人や法人は、その事業から得た利益を社会に還元し、住民の生活や福祉の向上に貢献する役割を担っています。その役割を果たすことができる直接の手段が寄附なのです。

例えば、台風や地震などの災害が発生した場合に、地域住民の安否確認や安全確保に尽力する町会や自治会などの一般社団法人に寄附を行うことで、町会や自治会の活動を資金面からバックアップし、地域社会に貢献することができます。

また、一般社団法人である食品の業界団体が、産地表示の適正化に取り組んでいる場合に、
その業界団体に寄付を行うことで、産地表示適正化の推進に貢献することができ、ひいては広く一般消費者の希望に沿う商品が増えることに繋がります。

このように、一般社団法人に対する寄附は、住民の安全確保や健康維持をはじめとする社会貢献や住民福祉の向上に資するメリットがあります。

3-2 法人の活動を支援することができる

一般社団法人に寄附を行うと、その法人の活動を支援することができるメリットがあります。一般社団法人が事業目的を達成するためには、事業内容に応じた資金を必要とします。そのため、一般社団法人は、会員からの会費や事業による収入を原資として活動を行います。

しかし、法人の事業目的を達成するために、会員からの会費や事業収入のみでは十分でないと判断される場合は、その補完措置として寄附金を募り、その寄附金収入を法人の事業目的達成のための資金として利用します。

すなわち、一般社団法人の活動目的や事業内容に賛同し寄附を行うことは、その法人の活動を支援することができるメリットがあるのです。

例えば、海洋生物の調査・研究を事業目的とする一般社団法人の学術団体があるとします。
この法人は、研究事業のための海洋調査船を所有していますが、老朽化してきたため船体
の修理および動力部品の交換を行う必要が生じました。

この法人は、海洋生物の研究から得られた各種のデータを食品メーカーや製薬会社に提供して得た対価、および会員からの会費が主な収入となっています。しかし、この事業収入と会費収入だけでは、調査船の補修費用が賄えないため、広く一般から寄附を募集することにしました。

法人が寄附の募集について精力的にPRしたところ、調査船の修理および動力部品の交換費用を賄うことができる金額が集まりました。

このように、一般社団法人の設立趣旨や活動目的に賛同し寄附を行うことは、その法人の活動を支援することになります。この例で、一般社団法人に寄附した人は、その法人の海洋生物調査・研究、およびその研究から得られる各種データを産業界に提供するという活動について、金銭面からのバックアップを行うことができたのです。

3-3 自社の事業に利用できる

一般社団法人に寄附することは、自社の事業に利用できるメリットがあります。一般社団法人に寄附を行う目的は、その法人の設立趣旨や活動内容に賛同し支援を行う場合だけではありません。一般社団法人の活動内容が自社の事業と直接関係がなくても、その活動結果から得られるものが自社の事業にメリットを与えてくれるため、一般社団法人をバックアップするケースもあります。

上の例で、海洋生物の研究を行う学術団体は、調査で得られたデータを食品メーカーや製薬会社に提供するだけでなく、定期的に調査結果の概要を公表します。その場合に、学術団体から直接データの提供を受ける食品メーカーや製薬会社以外の企業の中で、公表された調査結果を自社の事業に役立てることが可能な企業もあります。

その企業は、学術団体の活動を支援することにより、将来的に、様々なテーマの調査結果について、定期的に閲覧することができるメリットがあります。この場合は、学術団体への寄附が自社事業に利用できるケースといえます。

3-4 自社をPRすることができる

自社をPRすることができる

一般社団法人の活動内容が自社の事業に関連がない場合でも、寄附を行うことで、自社のPRになるメリットがあります。

一般社団法人によっては、寄附を行ってくれた相手の名称を、相手方の同意を得た上で公表する場合があります。一般社団法人のホームページなどで寄附を行った旨が掲載されることは、寄附を行った企業の名称を広くPRする機会となり、それが会社の信用や業績に繋がっていきます。

3-5 寄附金を損金に算入できる

寄附を行うと、税制上寄附金を損金に算入できるメリットがあります。法人が一般社団法人に寄附を行うと、寄附した金額を損金に計上して節税することができます。

すでに説明しましたが、寄附金を損金に算入できる限度額は、段階が分かれています。「国・地方公共団体に対する寄附金」、および「指定寄付金」は、その寄附金額の全額を損金に算入して所得から控除することができます。

次に、「特定公益増進法人への寄附金」、および「認定特定非営利活動法人等に対する寄附金」は、「特別損金算入限度額」として損金算入割合が高くなっています。
一方、「一般の寄附金」は、「一般損金算入限度額」として損金算入割合が低くなっています。

このように、寄附金の損金算入限度額は段階が分かれていますが、一般社団法人に対する寄附金は、一般の寄附金として「一般損金算入限度額」が適用されます。一般社団法人に対する寄附金の損金算入限度額は、以下の計算式で求めます。

〇寄附金の損金算入限度額=
{(資本金等の額×当期の月数 / 12×0.25%)+(所得の金額×2.5%)}×1 / 4

上の計算式で算出した額を限度として、その年の損金に算入して税額を算出することが認められているのです。

3-6 寄附のメリットをめぐる検討

寄附金とは、自分の事業に直接関係がない個人や法人に対し、見返りを求めずに行う金銭の供与、資産の贈与などをいいます。寄附金が、自分の事業に直接関係がない相手に対して、見返りを求めずに行う金銭の供与、資産の贈与であるならば、あらかじめ自分にメリットがあることを見込んで行う金銭供与や資産贈与は、寄附金としての趣旨に適合しているのかという問題が出てきます。

これについては、すでに説明した寄附のメリットについて順番に見返し、検討してみましょう。

①社会的な貢献ができる

寄附により「社会的な貢献ができる」メリットは、寄附金の趣旨と矛盾しません。台風や地震などの災害時に、地域住民の安否確認や安全確保に向けた活動を行う町会や自治会などに寄附を行うことは、見返りを求めて行う行為ではなく、社会貢献という目的で行うものであるため問題はありません。

②法人の活動を支援することができる

2つ目のメリットである「法人の活動を支援することができる」も、一般的には問題がありません。寄附先の一般社団法人が、自社の事業と直接関係がある場合を除いては、一般的に、寄付先の法人の事業目的や活動内容に賛同して金銭面から支援するものであるため、寄附金の趣旨と適合しています。

③自社の事業に利用できる

次の「自社の事業に利用できる」メリットについては、検討が必要です。自社の事業が寄附先と直接の関係があり、寄付を行うことにより自社の事業に見返りが生じるような場合は、慎重に考慮する必要があります。

寄附金は、①自社の事業と直接関係なく支出されるものであること、②見返りを求めずに支出されるものであることが求められ、税法においても、広告宣伝費、交際費、福利厚生費など、何らかの見返りのある支出は、寄附金とならないとされています。

上で示した例で、海洋生物の調査・研究を行う学術団体から直接データの提供を受ける食品メーカーや製薬会社は、その事業が学術団体の活動と直接関係があるとみなされ、これらの企業が当該学術団体に寄付を行う場合は、その金銭的な支援が寄附金と認められない可能性があります。この場合に食品メーカーや製薬会社が行う寄附は、学術団体から提供を受けるデータに対する対価の一部とみなされる虞があるからです。

一方で、これも上の例で示しましたが、自社の事業が学術団体の活動と直接関係がなくても、公表された学術団体の調査結果が自社の事業に役立つことから金銭の支援を行うという場合は、この金銭支援を寄附金として取り扱っても問題ないでしょう。

④自社をPRすることができる

寄附により、「自社をPRすることができる」メリットは、自社のPRという「見返り」を求めて金銭の提供を行ったという見方もできますが、そういう見方を押し進めてしまうと、すべての寄附が見返りを求めて行うものとなってしまいます。

寄附を募る法人・団体の多くは、寄付してくれた個人名や企業名をホームページなどに掲載し、謝意を表しています。この場合は、寄附を行ったすべての個人や法人がホームページに掲載されることになります。

また、ホームページやSNS、企業広告などで、寄附者の情報を掲載し謝意を表すかどうかは、寄付先の企業・団体の自由意思に委ねられており、必ず寄附者をPRしてくれる保証はどこにもありません。

このことからも、ホームページやSNS、企業広告などに寄附者の情報を掲載するケースすべてが、自社の広告宣伝という見返りを求めて行われた寄附であるとする見方は、一方的で客観性を欠いているといわざるを得ないでしょう。

したがって、このような場合=ホームページに寄附者の情報を掲載してPRしてくれるケースでは、寄附者の事業が寄附先と直接関係がない限り、見返りを求めずに行う寄附金とみなして問題はないでしょう。

すなわち、見返りを求めずに寄附を行った結果として、偶然にも、寄付先がホームページ上で謝意を表してくれたことになるのです。

⑤寄附金を損金に算入できる

次に、税制上「寄附金を損金に算入できる」メリットですが、損金に算入して節税できる部分は、具体的な金額として寄附者に跳ね返ってくるものであるため、「見返り」を求めたものとみえなくもありません。

しかし、一般社団法人に対する寄附で、損金に算入できるのは寄附金の一部分であり、また、損金として計上することで課税対象額(所得)を圧縮できるに過ぎません。税金は、課税対象額に税率を乗じて算出されるものであるため、この場合に節税できる金額は、寄附金額よりもはるかに小さくなります。

このことから、寄附金の一部を損金に算入して節税するという「見返り」だけのために寄附を行うことは、収支的にみると採算が合わず本末転倒といえます。したがって、税制上寄附金の一部を損金に算入できるメリットは、見返りではないと判断できます。

以上、寄附金のメリットについて順番に見返していくと、ほとんどのメリットは、寄附金の要件に抵触しないことがわかります。

ただし、寄付を行うことで、③自社の事業に利用できるケースについては、寄附金の基本に立ち戻り、①自社の事業と直接関係なく支出されるものであること、②見返りを求めずに支出されるものであることの要件が満たされた金銭の提供、または資産の贈与であるかについて、事前に慎重なチェックが必要です。

4 一般社団法人に寄附する際の注意点

一般社団法人に寄附する際の注意点

一般社団法人に寄附をする際には、注意すべき事項があります。ここでは、一般社団法人に寄附する際の注意点についてみていきましょう。

4-1 個人が寄附しても控除の対象とならない

個人が一般社団法人に寄附を行っても、税制上のメリットはありません。上で説明したように、法人が一般社団法人に寄附した場合は、税制上、寄附金を損金に算入できるメリットがありました(損金に算入できる限度額はあります)。

しかし、個人が行った寄附金については、所得税を算出する上で所得から控除できないことになっています。同じ個人の寄附でも、公益社団法人に寄附する場合は、所得から控除することが認められています。

個人が公益社団法人等に支払った特定寄附金については、寄附を行った年の所得から「寄附金控除」としての適用を受けるか、以下の計算式で算出した金額を税額から差し引く「税額控除」の適用を受けるかについて、申告者が選択することが認められているのです。

【寄附金控除】
以下の通り、寄附をした金額をその年の所得額から控除することができます。すなわち、所得から経費として差し引いて税額を算出することが認められているのです。

〇寄附金控除額=次のいずれか低い金額-2,000円
㋐その年に支出した特定寄附金の額の合計額
㋑その年の総所得金額等の40%相当額

(注)特定寄附金に該当するためには、寄附先が限定されていますが、その中に、「公益社団法人への寄附金で財務大臣が指定したもの」が含まれています。

【税額控除】
以下の計算式で算出した額について、その年の税額から控除することができます。
〇寄附金特別控除額=
(その年中に払った公益社団法人等への一定の要件を満たす寄附金合計額)-2,000円)×40%

(注)寄附金特別控除額は、その年の所得税額の25%相当額が限度となっています。

このように、個人の公益社団法人に対する寄附は税制上の特典がありますが、一般社団法人への寄附は、その取扱いがないことに注意を要します。

4-2 損金算入限度額が公益社団法人より低い

法人が一般社団法人に寄附した場合の損金算入限度額は、公益社団法人に寄附した場合の損金算入限度額より低いことに注意が必要です。

既にみてきたように、法人が一般社団法人に寄附した場合は、税制上、寄附金を損金に算入できるメリットがありました。その場合の損金算入限度額は、以下の算式で求めます。

〇一般社団法人に対する寄附金の損金算入限度額=一般損金算入限度額=
{(資本金等の額×当期の月数 / 12×0.25%)+(所得の金額×2.5%)}×1 / 4

一方で、法人が公益社団法人に寄附した場合の損金算入限度額は、次のように算出します。

〇公益社団法人に対する寄附金の損金算入限度額=特別損金算入限度額=
{(資本金等の額×当期の月数 / 12×0.375%)+(所得の金額×6.25%)}×1 / 2

このように、同じ法人が寄附する場合でも、公益社団法人への寄附に比べ、一般社団法人に対する寄附は、損金に算入できる限度額が低く設定されています。

4-3 寄附金の使用目的を確認する

寄附を行う場合は、寄附金の使用目的について、可能な限り確認することが重要です。

世間では、様々な目的のための寄附が募集されています。その多くは、ネットなどを使って寄付者を募っています。開発途上国の支援や社会貢献など、一見すると寄附金の使用目的が適切なようにみえますが、寄附金が確実に寄附を必要としている人に届くかどうかについて確認する必要があります。

数ある寄附募集の中には、実際の寄附金使用が、募集要項に掲載されている目的と異なる怪しい案件も混じっている可能性があるからです。そのためには、寄付を募集しているサイトの運営者や寄附する先の法人・団体について、事前に調べることが大切です。

例えば、NPO法人に寄附を行う場合は、その法人について調べ、その法人が認定NPO法人かどうか確かめることも重要です。事業内容が適正で法令違反などがなく、一定の要件を満たすNPO法人は、国から認定を受けることができます。したがって、認定NPO法人であれば、寄附金の使用も募集要項に従って適切になされる可能性が高いといえます。

なお、この場合の認定NPO法人は、公益法人として寄付金控除の対象となる可能性があり、今回のテーマである一般社団法人への寄附には該当しないかもしれません。しかし、一般社団法人に対する寄附の場合でも、このように、寄付を行う先について事前に十分な確認を行うことが非常に重要なのです。

4-4 事業に支障が生じない範囲で行う

寄附は、自社の事業に支障が生じない範囲で行うことも大切です。寄附を行うことは、経済的な負担を伴います。寄附を行うことで、社会貢献ができる、世間からの評価が上がるなどのメリットがあるでしょうが、分不相応な金額の寄附を行った結果、自社の事業資金が不足してしまっては本末転倒といえます。
本来、寄附は見返りを求めずに金銭を提供するものであることからも、自社の事業に支障が生じない範囲の金額に止めておくことが肝心です。

4-5 寄附金に該当するか確認する

寄附を行う場合には、事前に寄附金の要件に該当するものであるか確認することが大切です。寄附金は、自分の事業に直接関係がない個人や法人に対し、見返りを求めずに行う金銭の供与、資産の贈与のことです。

「寄附のメリットをめぐる検討」でも説明しましたが、①自社の事業と直接関係なく支出されるものであること、②見返りを求めずに支出されるものであることの要件を満たす必要があります。

上記の要件を満たさず、自社の事業に直接関係がある法人・団体に見返りを求めて寄附を行い確定申告で損金に算入しようとすると、その金銭提供・資産贈与が寄附金として認めてもらえず、税務署から指摘を受ける可能性もあります。

5 まとめ

寄附金は、自分の事業に直接関係がない個人や法人に対し、見返りを求めずに行う金銭の供与、資産の贈与などをいい、①自社の事業と直接関係なく支出されるものであること、
②見返りを求めずに支出されるものであることが要件となっています。

また、寄附金は、①国・地方公共団体に対する寄附金、②指定寄付金、③特定公益増進法人への寄附金、④認定特定非営利活動法人等に対する寄附金、⑤上記以外の一般の寄附金の種類に分かれており、一般社団法人に対する寄附金は、⑤の「一般の寄附金」に該当します。

一般社団法人に寄附するメリットは様々ですが、「自社の事業に利用できる」ことを期待するにあたっては、上記寄附金の要件に基づき、自社の事業が寄附先である一般社団法人と直接の関係がなく、見返りを求めて行う金銭の提供、資産の贈与でないことが必要です。

また、「寄附金を損金に算入できる」については、一般社団法人への寄附金が「一般の寄附金」として位置付けられ、税制上、損金に算入できる限度額が決められているので、注意しましょう。

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