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一般社団法人から公益社団法人になるには

一般社団法人・一般財団法人のうち、主に公益事業を行うことを目的とする法人は、定められた要件を満たすことで公益社団法人・公益財団法人になることができます。一般法人が公益法人になるメリットは「税制上の優遇が大きいこと」「社会的な信用度が高いこと」などが挙げられます。
その一方、デメリットは「活動の範囲が制限される」「立ち入り検査など行政庁による厳しいチェック」などとなるでしょう。

そもそも、公益法人に移行するためには公益認定基準を満たしたうえで、行政庁による「公益認定」を受けなければなりません。
今回は「公益認定」を申請する手続きと、公益法人から一般法人になるための手続きを分かりやすく解説します。


公益認定を受けるために必要な手続き

社団法人もしくは財団法人から公益社団法人・公益財団法人に移行するためには、申請書類を提出、書類の内容の適正に関する審査を受け、さらに行政庁による「公益認定」を受けることが必要です。

「公益認定」は、民間有識者で構成される国の公益認定等委員会(または都道府県による合議制)によって行われます。

公益法人制度改革以前は、主務官庁の裁量的判断によって「公益認定」が行われていましたが、改革後の2008年12月以降は、これが廃止されました。

公益社団法人、公益財団法人に移行するまでの流れ
1. 申請書類の作成
2. 行政庁に申請書類を提出
3. 行政庁による審査(定款審査)
4. 公益等認定委員会による審議
5. 認定を受けた後、移行登記

申請書類を確認する

まずは、公益認定法人に移行するための申請書類を作成します。必要な書類は申請書(かがみ文書)別紙1〜3その他添付書類です。

申請書(かがみ文書)

表紙となる申請書には、申請日、申請先の行政庁名、事務所所在地、公益目的事業を行う都道府県の区域、事業の内容、認定を受けた後の法人の名称などを記載します。


(申請書サンプル 参照:国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人information)

別紙1〜3

別紙は3枚からなり、それぞれ「法人の基本情報及び組織について」(別紙1)、「法人の事業について」(別紙2)、「法人の財務に関する公益認定の基準に係る書類について」(別紙3)を用意します。

別紙1(法人の基本情報及び組織について)では、法人の名称や事業年度、住所、電話番号、メールアドレス、ホームページのURL、代表者名など企業情報の概要を記入します。

別紙2(法人の事業について)では、公益目的事業について詳細に記載し、事業の公益性についても説明します。
公益性では、「事業が不特定多数の者の利益の増進に寄与すると言える事実」を具体的に書き記します。また、収益事業、その他の事業(相互扶助等事業)、事業を反復継続して行うのに最低限必要な許認可についても記載します。

別紙3(法人の財務に関する公益認定の基準に係る書類について)では、「収支相償の計算」「公益目的事業比率」「遊休財産額の保有制限」「他の団体の意思決定に関与可能な財産」「経理的基礎」「各事業に関連する費用額の配賦」「収支予算の事業別区分経理の内訳表」についてそれぞれ記載します。

別紙3の記載事項
別表A 収支相償の計算について
別表B 公益目的事業比率について
別表C 遊休財産額の保有制限について
別表D 他の団体の意思決定に関与可能な財産について
別表E 経理的基礎について
別表F 各事業に関連する費用額の配賦について
別表G 収支予算の事業別区分経理の内訳表について

収支相償とは、公益法人が利益を内部に溜めずに、公益目的事業に充てるべき財源を最大限活用して、無償・格安でサービスを提供し、受益者を広げようとするものです。たとえば、収益が費用を超えている場合は、「利益を溜め込んでいる」と判断され、「収支相償を満たしている」と判断されません。逆に、費用が収益を上回っていた場合、収支相償を満たしていることになります。

その他添付書類

添付書類は、「定款」や「定款変更の案」などに関する14種類を提出します。

すなわち、「1.定款」「2.定款変更の案(認定後の案)」「3.定款変更に関して必要な手続を経ていることを証明する書類」「4.収支予算書」「5.事業計画書」「6.事業計画書および収支予算書に記載された予算の基礎となる事実を明示する書類「7.登記事項証明書」「8.役員等就任予定者の名簿」「9.理事、監事及び評議員に対する報酬等の支給の基準を記載した書類」「10.滞納処分に関する国税及び地方税の納税証明書」「11.前事業年度の事業報告およびその附属明細書」「12.前事業年度末日の財産目録」「13.前事業年度末日のB/S(貸借対照表)およびその附属明細書」「14.確認書」(公益法人informationより)となります。

添付書類の内容
定款
定款変更の案(認定後の案)
定款変更に関して必要な手続を経ていることを証明する書類(評議員会・理事会議事録の写しなど)
収支予算書
事業計画書
事業計画書及び収支予算書に記載された予算の基礎となる事実を明示する書類(前年度の正味財産増減計算書など)
登記事項証明書
役員等就任予定者の名簿
理事、監事及び評議員に対する報酬等の支給の基準を記載した書類
滞納処分に関する国税及び地方税の納税証明書(過去3年間で滞納処分がないことを証明する書類)
事業年度の事業報告およびその附属明細書
前事業年度末日の財産目録
前事業年度末日のB/S(貸借対照表)およびその附属明細書
確認書

公益認定基準クリアの目安

行政庁による書類の審査(定款審査)を通過すると、公益認定等委員会により「公益認定基準を満たしているか」の審議に入ります。法の定めにより、公益法人は、不特定多数の利益の増進につながるよう、厳格な基準が課されています。具体的には、①公益に資する活動をしているか(公益性)②公益目的事業を行う能力・体制があるか(ガバナンス)が判断されます。

公益に資する活動をしているか

公益性の判断では、1.「公益目的事業を行うことを主たる目的としているか」、2.「特別の者に特別の利益を与えていないか」、3.「収支相償であると見込まれるか」、4.「遊休財産額が一定額を超えない見込みか」、5.「その他規制に反していないか」がポイントになります。

公共性判断
公益目的事業を行うことが主たる目的である
特別の者に特別の利益を与えていない
収支相償であると見込まれる
遊休財産額が一定額を超えないと見込まれる
その他規制に反していない

(内閣府公益認定等委員会事務局より)

公益目的事業とは「学術、技芸、慈善その他の公益に関する認定法別表各号に掲げる種類の事業」と定義されます。別表では1号〜23号で、障害者支援、高齢者福祉増進、公衆衛生の向上、犯罪抑止、事故・災害の防止、地球環境保全、消費者擁護などを公益目的に資するものの例として挙げています。

公益目的事業の例(一部抜粋)
一号 学術および科学技術の振興を目的とする事業
二号 文化および芸術の振興を目的とする事業
三号 障害者支援、犯罪被害者支援を目的とする事業
四号 高齢者福祉増進を目的とする事業
五号 勤労意欲のある就労支援を目的とする事業
六号 公衆衛生向上を目的とする事業
七号 児童または青少年の健全な育成を目的とする事業
八号 勤労者の福祉向上を目的とする事業
九号 教育・スポーツを通じた心身の発達を目的とする事業
十号 犯罪防止、治安維持を目的とする事業

1.「公益目的事業を行うことを主たる目的としているか」に関して、公益法人は、公益目的事業比率が50%以上であることが必要とされます。

2.「特別の者に特別の利益を与えていないか」とは、社会通念上、合理性を欠くような利益を与える、または優遇する行為になります。公益法人は法の定めにより、「特別の利益」を与えてはならないことになっています。

3.「収支相償であると見込まれるか」については、「2-2 別紙1〜3」記載のとおり、公益目的事業に関する収入額が、その事業に必要な適正費用を償う額の中に収まってなければなりません

4.「遊休財産額が一定額を超えない見込みか」に関しては、遊休財産額とは、法具体的な使途が定まっていない財産を言い、1年分の公益目的事業費相当額を超えてはならないこととなっています。

5. 「その他規制に反していないか」では、他団体の意思決定に関与できる株式財産の保有禁止や理事、監事等に対する報酬について、著しく高額にならないよう基準を定めています。

公益目的事業を行う能力・体制があるか

公益事業を行うだけのガバナンス(=執行能力)があるかの判断では、①「経理的基礎」及び「技術的能力」があること、②密接な関係にある理事または監事の3分の1以下であること、③定款で公益目的事業財産の管理方法について定めていること、④その他定めがあること、が審査対象です。

ガバナンス性判断
経理的基礎」及び「技術的能力」がある
密接な関係にある理事または監事の3分の1以下である
定款で公益目的事業財産の管理方法について定めている
その他定めがある

(内閣府公益認定等委員会事務局より)

公益法人は安定的かつ継続的な公益目的事業を行うために必要な「経理的基礎」「技術的能力」があることが必要です。

また、公益の増進に寄与するため、親族など深い関わりがある理事・監事が3分の1以上を超えないことを定めています。これにより、本来の目的に反した運営が行われることを抑止します。

さらに、公益目的で集まった財産を私的に使われることなどがないよう、その管理について定款に必要事項を定めておかなければなりません。具体的には、公益認定の取消しを受けたときなどは公益目的事業財産の残額を、解散したときは残余財産を、それぞれ公益目的団体等に贈与する旨を定款に定めるなどの方法があります。

このほか、会計監査人設置、社員の資格の得喪に関する条件について定めておく必要があります。

認定基準を全て満たしていれば、公益認定委員会より認定書が交付されます。また、認定が認められなかった場合は、事業内容の見直しや組織の改善をして再度申請することができます。

認定を受けたら、各地の法務局にて移行の登記を行います。これで手続き完了となります。

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