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外国人技能実習先の7割で労働基準法違反

(出展:Mwebantu)

厚生労働省は8月、外国人技能実習生の実施先を調査したところ、5,672事業場のうち7割に当たる4,004事業場で、違法残業や低賃金などの労働基準関係法違反が認められたと発表しました。

近年、外国人労働者の受け入れ増加を背景に、労使協定違反の残業、残業代の不払いなどの問題が多発。厚生省は、その実態を把握すべく調査に乗り出し、違反実習先に対しては監督指導を行い、重大・悪質な場合は送検などの措置を取るなど厳正に対処しています。

本来、母国の経済発展を担う人材を育成する目的で始められた外国人技能実習制度。2012年と比べて労基違反率は下がっているものの依然として高く(79.1%)、厚生省は今後も技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保に重点的に取り組むと述べています。

本記事では、厚労省が発表した報道資料をもとに、昨年度の技能実習先における労基違反、監督指導、送検などの状況を詳細に見ていきます。

技能実習先の7割が労基法違反

全国の労働基準監督が行った調査によれば、5672件の監督指導を実施した実習先事業所のうち、約7割に当たる4004の事業所で労働基準関連法違反がありました。
監督指導を実施した事業場は2013年以降増加しており、労基法違反を行う事業場も増えています。しかし、違反率は、同年以降下がり続けており、2012年では79.1%でしたが、昨年は70.6%まで低下しました。

・ 労基関連法違反事業場数と違反率

  監督指導実施事業場数 違反事業場数 違反率
2012年 2776 2196 79.1%
2013年 2318 1844 79.6%
2014年 3918 2977 76.0%
2015年 5173 3695 71.4%
2016年 5672 4004 70.6%

(厚生労働省発表資料より作成)

長時間労働が最多の23.8%

違反内容をみると、週40時間労働を規定している労基法32条および40条違反の労働時間に関する違反が最も多く、全体の23.8%を占めます。次いで「安全基準」19.4%、「割増賃金の支払い」13.6%、「衛生基準」9.4%、「健康診断」8.9%と続きます。

・ 主な違反事項

違反内容 割合
労働時間(長時間労働など) 23.8%
安全基準(講ずべき安全措置をとっていない) 19.3%
割増賃金の支払い(不払いなど) 13.6%
衛生基準 9.4%
健康診断 8.9%
労働条件の明示 8.9%
賃金の支払い 8.4%
就業規則 8.3%
賃金台帳 6.0%
寄宿舎の安全基準 2.7%
最低賃金の支払い 1.6%

(厚生労働省発表資料より作成)

休日出勤で時給300円!?

「賃金の支払い」「最低賃金の支払い」違反の事業場の例では、技能実習生8名を月額6万5000円程度で雇用するなど、最低賃金の基準をクリアしていなかったり、時間外労働に対しては時給300円、2年目でも400円、3年目では450円など法定割増賃金率を下回る金額しか支払っていなかったなどが紹介

されました。

こういった違反事業所に対して厚労省は、最低賃金法が定める金額以上の支払いを求めたり、法定の割増率以上で支払うよう是正勧告を行いました。

技能実習生からの申告は2年連続の減少

技能実習生から、全国の労働基準監督署に対して労基法違反である旨の申告は前年より1件減少し88件でした。申告件数は2014年に一旦増えて138件となったものの、以降は減少傾向にあります。

・ 技能実習生からの申告状況

  申告件数
2012年 126件
2013年 125件
2014年 138件
2015年 89件
2016年 88件

 

賃金の不払いが最多

申告のあった88件の内容を見ると、「賃金・割増賃金の不払い」が83件と最も多く、次いで「最低賃金額未満」12件、「解雇手続きの不備」11件と続きました。

申告内容 件数
賃金・割増賃金の不払い 83件
最低賃金額未満 12件
解雇手続きの不備 11件

(厚生労働省発表資料より作成)

残業120時間超え!?

実際に技能実習生に行わせていた違法な長時間労働の例として、36協定の限度時間を超えて1ヶ月で120時間程度の時間外労働をさせていた事業場があり、厚生労働省は、協定された限度時間内で済ませるよう是正勧告を行いました。

36協定では、時間外労働の限度時間について、1ヶ月の場合は45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)、1年の場合は360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は320時間)と規定※されています。

※ 技能実習制度とは、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的に、諸外国の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、産業上の技能等を修得することを可能とする在留資格。平成5年に創立された。
※ なお、特別の事情があれば、最高で年6回まで、従来の限度時間を超える延長時間まで時間外労働をさせることが可能で、その時間の上限については、労使当事者間の自主的な協議による決定に委ねられている。

送検措置は3年ぶりに減少

全国の労働基準監督署の監督官は、会社が労働基準法や労働安全衛生法・最低賃金法などに違反していないかを強制的に会社に立ち入り調査(=臨検)する権限のほか、法律違反が判明した場合には、司法警察員として、犯罪捜査、逮捕、送検することができる権限を持っています。

 

労基法・最低賃金法違反がほとんど

昨年、技能実習実施先で重大・悪質な労基関連法違反が認められ、送検された件数は40件で、前年より6件減少しました。送検内容では、労働基準法・最低賃金法違反が39件で、労働安全衛生法違反は1件でした。

・ 送検件数の推移

  労働基準法・
最低賃金法違反
労働安全衛生法違反
2012年 5件 10件 15件
2013年 12件 0件 12件
2014年 21件 5件 26件
2015年 35件 11件 46件
2016年 39件 1件 40件

(厚生労働省発表資料より作成)

悪質な送検事例

厚生労働省はある技能実習生に対して2年間にわたって時間外労働に対する賃金の不払い、さらに最長120時間におよぶ時間外・休日労働を行っていた事業場を送検しました。

また、虚偽の帳簿書類の提出や臨検(立ち入り調査)を妨害した事業主に対しては逮捕したうえで送検とされました。

このように外国人技能実習制度を悪用して、外国人労働者を違法に安く雇用して働かせようとする事業主は後を絶ちません。技能実習制度は外国企業との関係強化や経営の国際化、社内の活性化に資するものとして創設された制度でもあります。本制度が正しく利用されるためにも、厚生労働省には実態把握に向けたより一層の取り組みが求められています。

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