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一般社団法人がSDGs・サステナビリティに取り組むメリットとは

世界の多くの企業がSDGsやサステナビリティに取り組んでいます。SDGsやサステナビリティに取り組んでいる企業には営利企業が多いように思う人も多くいます。もちろん、SDGsやサステナビリティに取り組む企業には株式会社などの営利企業も多くありますが、多くの一般社団法人などの非営利企業も取り組んでいます。

今回の記事では、企業だけでなく個人としても取り組むべきSDGsとサステナビリティについて、その概要と取り組み事例やメリットなどを取り上げるので、参考にしてみてください。

1 SDGsとサステナビリティ

SDGsとサステナビリティ

SDGsやサステナビリティといったキーワードは耳にする機会は多くなっています。SDGsは特にその認知度が高く、2022年1月の国内10代〜70代の男女では86%が認知している調査結果*があります。

また、認知度を職業別に見ると最も認知度が高いのが『経営者・役員』で認知度100%になります。次に高いのは98.3%で『自由業』となります。3位が94.5%で『会社員(事務系)』となっています。

この数値は既に企業に勤めている上で、特に経営者や役員などではSDGsの知識は必須になっていると言っても過言ではありません。

SDGsと言うキーワードの認知は進んでいる一方で、認知はしているものの『内容まで含めて知っている』割合は全体の34.2%と結果があります。また、同様にSDGsについて単語はなんとなく知っている、現状も垣間見えます。

SDGsやサステナビリティの概要や内容を理解することは、企業や企業経営において差を生むことができます。

*参照:電通『第5回「SDGsに関する生活者調査」を実施』

1-1 SDGsとは

SDGsは『エス・ディー・ジーズ』と読み、英語では「Sustainable Development Goals」となります。日本では「持続可能な開発目標」を意味します。

「持続可能な開発」の定義は、『将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発』になります*。

持続可能な開発の目的は、人々と地球のために包摂的で持続可能な、強靭(レジリエント)な未来を築くことにあります。

この目的を達成するための3つの核心となる要素が挙げられています。

  1. ①経済成長
  2. ②社会的包摂(ほうせつ)
  3. ③環境保全

これらの3要素を、『個人と社会の福祉のために必要な要因』として調和を図っていく必要を説いています。

なお、持続可能な開発は最近提唱されたここ数年で発表された概念ではありません。この概念は、1987年に「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書で提唱されているため、2022年現在ではすでに提唱から35年の歳月が経過しています。

*引用元:国際連合広報センターWebサイト『持続可能な開発』より

●SDGsの構成

SDGsは、2015年9月に開催された国連による持続可能な開発サミットで採択された『国際目標』になります。この国際目標は、当時国連に加盟していた193カ国の全ての国による全会一致で決定されました。

SDGsは、以下の3つの構成を持っています。

  • ・ゴール(目標)…17個
  • ・ターゲット(具体目標)…169個
  • ・インジゲーター(指標)…247個

SDGsが設定された翌年の2016年から15年後の2030年までにゴール17個すべてを達成させて「持続可能な社会」を実現させることがSDGsの最終目標になります。

●『変革すること』と『誰一人取り残さない』

SDGsの目標実現と合わせて重要な理念が2つあります。それが以下の2つです。

  1. ①変革すること
  2. ②誰一人取り残さない

『変革』は、変化によって新しいものを作ることを意味します。現代の世界とSDGsの目標実現後の世界では変化の結果新しい世界に変わっていなければならないと言えます。

例えば、貧困問題がすべて解決して、すべての子どもが学校に行き教育を受けることができるようになる世界がSDGsの目標実現後の世界です。または、持続可能な農業技術の発展によりすべての人が飢餓の苦しみから解放される世界や海洋汚染が改善された美しい海やそこで暮らす生態系が取り戻された世界です。

このような未来を実現させるためには、貧困や飢餓や汚染と言った問題の原因を変化させるだけでは不十分で、変革させることが求められるとされています。

『誰一人取り残さない』理念は、自分が変革に取り残されてしまう側になる可能性もある前提に、それでも変革において誰一人取り残さない工夫を行っていくものです。

●SDGsの大原則

SDGsの大原則

SDGsの2つの理念とその理念を実現するための17の目標とを結ぶ役割が以下の5つの大原則である5Pになります。

①人間(People)

全ての人が平等かつ最低限度の生活ができる状態の実現を目指します。具体的な項目として、「人権の尊重」「潜在能力の発揮」「貧困と飢餓を終わらせる」「ジェンダー平等の達成」「誰もが教育を受けられる」「水や衛生、健康的な生活の保障実現」などがあります。

②地球(Planet)

人間が生きる上で欠かせない地球を破壊から守り、人間や生物が生き続けられる状態の維持を目指します。具体的な項目として、「責任ある小人生産を行う」「天然資源の持続可能な管理」「気候変動への対応」などがあります。

③繁栄(Prosperity)

繁栄は、人間の尊厳や地球環境を守って、人間と地球の双方の繁栄実現を目指します。具体的な項目として、「地球で生活する全ての人々が豊かで充実した暮らしができるようにする」「自然と調和した経済・社会・技術の進展を目指す」などがあります。

④平和(Peace)

苦労して築いた繁栄は、戦争や紛争といった争いによって存続の危機に瀕することは過去の歴史の中で繰り返されています。持続可能な繁栄を目指そうとする時に、平和や公平さを優先することは重要になります。

また、理念『誰も取り残さない』に従う時には、差を生まないと言う意味でも平和が必要になります。

⑤パートナーシップ(Partnership)

SDGsの理念や大原則の実現には、地球規模での連携・協力が必須になります。特定の国や組織、個人だけで実現できるものではありません。

政府、民間セクター(民間企業)、市民社会(市民たちで構成される社会)、国連機関といった複数の組織とのパートナーシップが求められます。

●SDGsのゴール(目標)

SDGsのゴール

SDGsは、17の明確なゴールが設定されています。

  1. 1)貧困をなくそう
  2. 2)飢餓をゼロに
  3. 3)すべての人に健康と福祉を
  4. 4)質の高い教育をみんなに
  5. 5)ジェンダー平等を実現しよう
  6. 6)安全な水とトイレを世界中に
  7. 7)エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  8. 8)働きがいも経済成長も
  9. 9)産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 10)人や国の不平等をなくそう
  11. 11)住み続けられるまちづくりを
  12. 12)つくる責任 つかう責任
  13. 13)気候変動に具体的な対策を
  14. 14)海の豊かさを守ろう
  15. 15)陸の豊かさも守ろう
  16. 16)平和と公正をすべての人に
  17. 17)パートナーシップで目標を達成しよう

上記17の目標に対して、ターゲット(具体目標が169個、インジゲーター(指標)が247個設定されています。

尚、ターゲットやインジゲーターの詳細については外務省Webサイト『JAPAN  SDGs Action Platform』で確認できます。

●SDGsの推進方法

目標や指標にあわせて、期間までに目標を達成させるためには実際の取り組みが重要になります。SDGsの取り組みを促進する方法として、その取り組みによる成果を指標と照らしてスコアリングを行い、国別のランキングを公表しています。

2016年からのランキングとスコアは以下の通りになります。ランキングとスコアが最も高かったのは、2017年になります。また、2019年の15位になって直近4年間はランキングが落ち続けている状況になります。

表1 2016年以降の日本のSDGsランキング/スコア

年度 ランキング スコア
2016 18位 75点
2017 11位 80.2点
2018 15位 78.5点
2019 15位 78.9点
2020 17位 79.1点
2021 18位 79.8点
2022 19位 79.6点

●日本での取り組み

日本政府は、全国務大臣が構成員になる持続可能な開発目標(SDGs)推進本部を設置しています。SDGs推進本部は『関係行政機関相互の緊密な連携』と『総合的かつ効果的な』推進を実施しています。

日本政府の取り組みは、首相官邸のWebサイトで確認できます。Webサイトには担当省庁が決められているアクションプランも掲載されています。

●法人や事業者のSDGsへの取り組み

株式会社などの営利法人や一般社団法人などの非営利法人など、法人はどのようにSDGsを経営に取り組むべきかと言う課題があります。

その法人経営者の課題の一助になるのが、「SDGs経営ガイド」になります。SDGs経営ガイドは、SDGsをいかにして企業経営に取り組み『ESG投資』を獲得するかを目指すための経済産業省による経営ガイドになります。

SDGs経営ガイドについては、経済産業省のWebサイト『「SDGs経営ガイド」を取りまとめました』から確認ができます。

ESG投資とは、利益を上げる能力を示す財務情報のみではなく、『環境(Environment)』『社会(Social)』『ガバナンス(Governance)』に関する取り組み状況から受ける投資になります。

一般社団法人には、株式会社と異なり株式がありません。また、非営利法人は利益を配当することができないため、ESG投資を獲得できません。しかし、SDGs経営をすることは間違いなく企業価値の向上に直結していきます。

1-2 サステナビリティとは

サステナビリティは英語ではSustainabilityと書き、『持続可能性』と訳します。自然環境や社会や経済などが将来においても現在の価値を失わずに継続させていくことを目指す考え方になります。

人間の本能に任せてしまうと、“今“を大事にしてしまいます。もしくは、近い将来までを大事にするあまり、近い将来の後を考慮しない行動をとってしまう可能性があります。目先の利益やパフォーマンスを重視・追求するあまり、将来の利益や将来へのマイナス影響を考慮しない行動をとってしまう可能性があります。

これからの未来に向けて長い期間が経過した未来において、3つの柱(トリプルボトムライン)の『環境』『社会』『経済』を持続可能にする取り組みを言います。

●サステナビリティの3つの柱

サステナビリティの3つの柱

サステナビリティには、『環境保護(Environmental Protection)』『社会開発(Social Development)』『経済発展(Economic Development)』と言う3つの柱があります。

●環境保護

環境の保護活動は、持続可能性を高める取り組みになります。

森林伐採や海洋汚染や地球温暖化など、環境に関わる多くの課題を解決していくことは地球上で生活する人類を含めた全ての生物に関わる大きな問題になります。

脱炭素社会に向けた取り組みや再生エネルギーの活用、水資源の節約、森林保存や海洋汚染対策など現在の地球環境を改善して未来に残すための活動が求められます。

●社会開発

社会開発は、社会サービス(住宅や交通・保健・医療・衛生・社会福祉・教育など)の改良と発展させる取り組みになります。

ジェンダーや教育格差や国同士の戦争や地域紛争や難民問題などの社会における課題解決が、国や地域における安定だけでなくグローバル社会に安定をもたらします。

平等に教育を受ける機会をつくることや、多様性(ダイバーシティ)のある働き方の推進などが社会開発の活動になっていきます。また、戦争や紛争をなくすための国単位の活動も社会開発に含まれます。

●経済発展

経済発展とは、企業単位から経済全体の現在から将来まで社会貢献を果たしながら、利益成長を継続していく取り組みになります。

経済発展をすることで貧困問題や労働環境格差やセイフティネットなどの社会保障の拡充などの経済課題の解決に結びつき、経済の安定や公平さをもたらします。

環境問題や社会課題の解決に直接的もしくは間接的につながる商品や経済活動を実施して、利益を確保していく取り組みになります。

1-3 SDGsとサステナビリティの違い

前述の通り、SDGsは持続可能な開発目標になります。そのため、持続可能性と言うサステナビリティの考え方をより具体化して、目標まで落とし込んだのがSDGsになります。

SDGsには前身の目標がありました。SDGsの前身の目標は、MDGs(ミレニアム開発目標/Millennium Development Goals)になります。SDGsは2016年に設定された目標ですが、2015年までを起源とした目標がMDGsになります。

●MDGsとは

MDGsは貧困や飢餓や差別などの撲滅を含めた8つの目標と、目標を詳細な設定がされた21ターゲットと、ターゲットを達成させるための60の指標が定められたものでした。2000年にニューヨークで開催された180カ国が参加した国際ミレニアムサミットで採択されました。

そして、MDGsは2015年を期限として以下の8つの目標を設定していました。

  1. 1)極度の貧困と飢餓の撲滅
  2. 2)初等教育の完全普及の達成
  3. 3)ジェンダー平等推進と女性の地位向上
  4. 4)乳幼児死亡率の削減
  5. 5)妊産婦の健康の改善
  6. 6)HIV/エイズ、マラリア、その他の疾患の蔓延の防止
  7. 7)環境の持続可能性確保
  8. 8)開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

MDGsの取り組みによって極度の貧困状態*にある人口の10億人以上の人々が貧困から脱却して貧困状態の人の割合が半減するなど、大きな貢献を果たしました。

開発地域の小学生の就学率が2000年時代には83%でしたが、2015年では91%まで改善が進んでいました。また、教育における女性の通学率も男子学生100人に対して女子が74人の通学割合だったものから、女子が百三人になるまでの改善ができています。

その他、各目標について大きな成果を上げています。

これらの目標の多くは、SDGsに引き継がれています。MDGsとSDGsには共通点が多くありますが、大きく異なる点もあります。大きく異なる点の代表的なものは、その目標の範囲になります。

MDGsの目標範囲は発展途上国の発展が主たる目的になっていました。一方で、SDGsは発展途上国と先進国も対象として解決すべき課題が設定されています。この点からは、SDGsはより地球規模の取り組みになっています。

*極度の貧困とは、1日の収入が1.25ドル以下で生活をしている状態を言います。

●企業の取り組み差

法人などの経営方法には、SDGs経営もサステナビリティ経営も単語としてはあります。

サステナビリティ経営は、サステナビリティが表す理念を体現する経営になります。つまり、「環境・社会・経済」の3つの観点から見て持続可能な状態の実現を行なっていく経営になります。

一般的には、経営は自社のステークホルダー(自社と自社の株主や社員やお客様や取引先などの関係者)のために経営を行っています。しかし、サステナビリティ経営においては時間軸が未来思考になった上で環境や社会や経済といったより広い範囲の持続性を重視した経営が求められます。

SDGs経営は、サステナビテリティ(持続可能な状態)の概念を持ちながら、その目標や指標に対してより具体的な経営を行うことを意味します。具体的には、その行動指針や事業運営により具体的な指数や行動によって企業としてSDGsを推進する経営になります。

SDGs経営を進める上で重要になるのは、『SDGsCompass』があります。SDGsCompassとは、企業がいかにSDGsに取り組むべきかを経営戦略に落とし込むためのステップになっています。SDGsCompassで示すステップは以下の通りです。

ステップ1 SDGsの理解 SDGsを本質的に理解し、「なぜ自社がSDGsに取り組まなければいけないのか」主体的な取り組みの目的を明確にします。
ステップ2 優先課題の決定 自社の取り組みの中で、17の目標のどこに最も貢献できるのか、貢献度と実現難度を見ていきます。また、目標実現への取り組みによってプラスとマイナスの影響がある点を考慮して、総合的に優先課題を決定します。
ステップ3 目標の設定 目標範囲とKPI*を選択し、ベースラインと目標タイプを決定して、公表します。
ステップ4 経営への統合 社内全体での取り組みになるよう目標を定着させて、全ての部門にSDGsに取り組む目的と意義を落とし込みします。
ステップ5 報告とコミュニケーションの実施 実施状況について、適時ステークホルダーへ報告や開示をしていきます。

*KPIとは、『Key Performance Indicator』の略になり、重要業績評価指数と訳し、事業の業績を評価する上で重要になる指標数値になります。

これらのことから、サステナビリティとSDGsの関係性が概念とその概念を目標や指標までに落とし込みされた関係性であるように、サステナビリティ経営とSDGs経営も同様の関係性と言えます。

2 企業の取り組み

SDGsに対する企業の取り組み

サステナビリティやSDGsに企業が取り組むことは、2022年の現在は一般的になりつつあります。特に、上場している企業など大きな企業ほどこのような取り組みを率先して実施しています。

サステナビリティやSDGsの考え方には、主体者を限定する考え方はありません。SDGsには誰も取り残さない理念があるように、すべての組織や個人を対象として取り組みが期待されています。

SDGsも同様に、その取り組みは企業の取り組みが求められているものも多くあります。例えばSDGsでは目標の1つに『ジェンダー平等を実現しよう』があります。これは、日本社会において女性活躍へ着目されています。

企業においては、女性管理職比率や女性取締役比率などでガバナンスの強化や女性の就業率の改善などが求められます。特に、少子高齢化による労働力の低下が懸念されている中で、女性活躍推進は企業にできる大きな貢献と言えます。

2-1 CSRとの違い

元々企業には、CSR(Corporate Social Responsibility)と言う『企業における社会的責任』があります。これは、企業が自社の利益のみを追求するのではなく、社会的公正さや環境などに配慮して社会の発展に貢献する責任が企業にはあります。この責任を果たすことで、企業は消費者や従業員や株主などから信頼を得られるため持続的な成長ができます。

社会的責任を果たさない企業は、消費者や従業員や株主から見放されてしまい、いくら短期的な利益を上げることができても長期的に利益を得るための消費者や従業員の手を借りられず、かつ資本提供をする株主の賛同も得られない状況に陥ってしまいます。

そのため、企業が永続的な成長をしようとするためにはCSRを果たす必要があります。

SDGsは、CSRと比較するとより社会に対してより積極的なアプローチになります。CSRは、ボランティア活動に近く、ビジネスとは離れています。例えば、CSRで多いのが環境保護になりますが、森に苗木を植える環境保護は素晴らしいですが、ビジネスの活動とは別の活動になります。

一方で、SDGsはもっとビジネス活動と直接的に関わってきます。例えば、同じ環境保護を目的としていても、より森林伐採につながりにくい材料の使用を開始するなどの取り組みになります。つまり、ビジネスなどの利益や顧客獲得をおこなっていく事業活動自体の仕組みの中でSDGsの目標達成に向けた取り組みを混合させていった「ビジネス自体で社会の持続可能性を上げていく」点で、社会に対してより積極的と言えます。

近年で消費者にも気づくことが多い事例が、『ストロー』になります。

ストローはプラスチックでできていて、一般的なプラスチック製品と異なり、ストローはサイズが小さいためリサイクルが困難で使い切りでした。

ゴミとして処分されるストローの一部が、海に漂流して、溶けてなくなることなく海に漂い続ける状況が続いていました。このような状況を改善するために、ストローの利用をやめる飲食店などが増えたことと併せて、紙製ストローなどの新しい形のストロー開発にもチャレンジしました。

紙製のストローなど、SDGsに取り組むことは新しい商品開発や新しい市場の誕生などにも影響を与えることになります。旧来の製品が環境や社会にとってマイナスの影響がある場合には、マイナス影響が出ない商品を開発できれば既存商品が占有していた市場を獲得できるメリットがあります。

SDGsやサステナビリティへの取り組みは、そのまま事業の強みやサービスの差別化などにつながります。そのため、前述のSDGs経営のステップにあったように全社で取り組む目的を理解して進めていくことで強みや差別化に繋がっていきます。

一方で、CSRに積極的な企業は社会的な責任を果たすことで会社や商品のブランディングを改善でき、間接的に販売や収益にプラスの影響を生むことを理解しています。CSRは事業と分離できるため、事業領域とは異なる領域まで踏み込んでボランティア活動を行えるメリットもあります。

CSRとSDGsのどちらか一方を選ぶ必要はありません。CSRとSDGsの違いを理解した上で、置かれた状況下でできることを選択してやっていくのが社会にとってプラスになっていきます。

2-2 営利と非営利の違いは取り組みに関係ない

SDGsやサステナビリティについて非営利法人が取り組むメリットは、営利法人と違うのでしょうか。結論から言えば、違いや差はあるものの大きくそのメリットは変わりません。

一般社団法人などの非営利法人は資本金がありません。そのため、投資家から出資を受けられません。そのため、どれだけ事業価値や企業価値を高めても、出資によって資金調達を受けられるわけではありません。

株式会社などがSDGsに取り組む目的の1つはESG投資を受けられる可能性の向上ですが、一般社団法人などの非営利法人にはESG投資も受けられません。

●ESG投資

ESG投資とは、長期的な資産運用をとる投資方法になります。長期的な成長や事業継続を目指していく場合に、環境分野(Environment)/社会分野(Social)/企業統治(Governance)の3つの視点から企業経営を行い、事業リスクや事業機会を長期的視点に立って把握・対応している企業に投資を行う方法です。

サステナビリティ経営は、経済発展(Economic Development)/社会開発(Social Development)/環境保護(Environmental Protection)の3つの視点でした。ESG投資が重視する3つの項目と比較すると、ESG投資の分野では“経済発展“があり、ESG投資には“企業統治“があります。

それぞれ、経済発展も企業統治も企業経営の上ではサステナビリティ経営においてもESG投資を受ける経営においても重要ではあります。サステナビリティ経営やSDGs経営を成功させるためには企業統治は必須であり、結果的にESG投資の対象企業と言えます。

●投資以外にもメリットは多い

SDGsやサステナビリティへの取り組みは、投資以外にも複数のメリットがあります。詳細は次章に記載しますが、SDGsやサステナビリティへの取り組みは環境や社会や経済の持続可能性を高める取り組みです。

そのため、SDGsやサステナビリティへ取り組む企業は長期的課題かつ広範囲な課題に取り組みが実践できる企業になります。SDGsやサステナビリティへの取り組みを実践してかつ成果を挙げられる企業の価値は、ただ事業を成功させるより高く評価されていきます。

高い評価を受ける結果、長く事業を継続するために必要な、情報や人的資源やものが調達しやすい環境になっていきます。

2-3 法人の取り組みと事例

SDGsやサステナビリティへの取り組みについて、法人としてどんな取り組みができるのかを具体的に知っておくと、自身の会社の取り組みに加えるイメージが付きやすくなります。

ここでは、実際に法人はどのような取り組みができるのかを具体的に取り上げていきます。

●CO2排出量削減

企業活動において切り離せない課題の1つが、事業活動によって排出するCO2排出量になります。SDGsの目標13には『気候変動に具体的な対策を』があります。

地球温暖化の課題のために、CO2排出量を削減しなければいけない点は多くの企業が取り組んでいます。例えば、自動車メーカーであるトヨタは新車の二酸化炭素排出量、工場の二酸化炭素排出量、製造から廃棄までのライフサイクルの中での二酸化炭素排出量などをゼロにするチャレンジを開始しています。

その中でも新車の二酸化炭素排出量をゼロにするチャレンジとして、今までガソリンを燃料として動いていた自動車を変革して「電動車」の開発に力を入れています。トヨタは自動車メーカーとして地球規模で販売台数などにおいてトップレベルを誇っており、SDGsへの取り組みによって新しい市場を獲得しにいく好例と言えます。

●Amazonのサステナビリティへの取り組み

その他、グローバル企業に目を向けてみるとEコマースの巨大企業であるAmazonもCO2排出量削減に大きな目標を掲げた取り組みを実施しています。

Amazonは以下のようにWebサイトでサステナビリティへの取り組みを伝えています。

“Amazonはすべての業務にサステナビリティ(持続可能性)を取り入れ、科学的根拠に基づくアプローチを用いて革新的なソリューションを拡大しています。“

その取り組みの1つとして、温室効果ガスの排出量実質ゼロを2040年までに達成するための取り組みを実施しています。

●イオンモールのハートフル・サステナブル

日本だけでなくアジアなどの海外展開を進めるイオンモールは、SDGsへの取り組みとして『ハートフル・サステナブル』と言うスローガンで取り組みを実践しています。

各国で大型商業施設を展開しているイオンモールならではの取り組みの一例が地域の防災拠点化になります。イオンモールの商業施設を自然災害などの発生時には非常用電力や飲料水の提供などによって地域社会の防災に貢献する取り組みを実施しています。

また、イオンモールでは地球環境の保全のために『次世代スマートイオン』と言う脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行なっています。展開するモールに電気自動車の充電器設置や太陽光発電の活用などの二酸化炭素排出量削減につながる技術や設備の活用を実施しています。

●中小企業の取り組み方もある

上場企業やグローバル展開をしている大企業が社会に与える影響は大きく、またテレビやネットなどのメディアなどに取り上げられるため、その反響や認知度も高くなります。

一方で、中小企業もSDGsやサステナビリティを取り入れて経営や事業を軌道に乗せている中規模・小規模の企業も複数あります。中小企業が事業にSDGsを取り入れることで注目度が高くなる点やブランディングにつながるなどの効果も期待できます。

●貧困問題への対応 株式会社ワンプラネット・カフェ

ワンプラネット・カフェは、『人と地球の持続可能性の追求』を理念とする株式会社になります。ワンプラネット・カフェは2020年に経済産業省からSDGsに取り組む事例の1社に認定されています。

SDGsへの具体的な取り組みとして、ザンビアで今までは廃棄されていたバナナの茎を買い取り、ザンビアにおいて新しい仕事と雇用を生み出すことで同国の深刻な貧困問題の解消への取り組みを実施しています。また、もともと廃棄されていたバナナの茎を資源として有効活用して木材の代替品としてバナナペーパーを製作している点でも生態系の保全に貢献しています。

バナナペーパーを利用して作成された製品は、SDGsに関心を寄せる企業に利用されており、SDGsを活用したビジネス市場を開拓している好例になっています。

●持続可能な農業への対応 有限会社ワールドファーム

ワールドファーム社では、持続可能な農業への取り組みを実践しています。持続可能な農業とは、生産する野菜の栽培から消費者への販売までを自社で行う農業の「6次産業化」の実現を推進しています。

もともと、農業や水産業などは第1次産業に該当します。その農業が書品加工(2次産業)や流通販売(3次産業)などの業務範囲を拡大する経営形態が6次産業です。

6次産業の実践は、1次産業である農産物などの価値を加工や販売方法の工夫によって価値を高める効果があります。価値を高めることで、1次産業だけでは得られない所得を向上させて『儲かる農業』になることが目指せます。

儲かる農業になると事業の持続可能性を高められるのはもちろんのこと、事業規模の拡大や多角化が可能となり次世代農業者の育成や安心・安全な国産野菜の利用促進や食糧自給率の改善などへも波及していきます。

3 一般社団法人が取り組むメリットとポイント

一般社団法人がSDGsに取り組むメリットとポイント

SDGsやサステナビリティに法人が実際に取り組もうとする時に、重要なのがSDGsやサステナビリティの取り組みが事業や経営にプラスメリットをもたらすように取り組まなければなりません。

法人には『継続企業の前提(going concern)』の前提があります。この前提は、企業が将来も事業を継続していくことを意味します。将来継続する可能性が低い事業では、消費者も取引先も見つけられません。継続企業の前提に乗っ取る場合には、法人や事業に直接的・間接的にプラスになるように取り組み方を工夫する必要があります。

継続企業の前提は、一般社団法人も例外ではありません。利益の再分配を行わない一般社団法人でも、利益は必要です。利益がない事業はスタッフの給与や事務所家賃などの費用を支払い不能になり、組織や事業の継続ができなくなります。

3-1 メリット3つ

一般社団法人がSDGsやサステナビリティに取り組むメリットの多くは、株式会社などの営利法人と変わりません。

≪一般社団法人がSDGsやサステナビリティに取り組むメリット≫

  1. ①事業領域を広げられる
  2. ②消費者や取引先を含む社会の賛同を得られる
  3. ③資金調達が有利になる

●事業領域を広げられる

SDGsやサステナビリティは、広く地球規模の問題であり狭くは日々の事業や社会生活に関わる大規模な課題になります。

そのため、課題解決のための取り組みには新しい事業領域が生まれます。新しい事業領域には、ビジネスチャンスも多くあります。事業領域を広げることは、経営の安定につながる効果が期待できます。

直面する社会課題の中で、自社のサービスや強みを持って課題解決の取り組みを実践すること自体が、新しい事業領域での活動になります。また、新しい事業領域での社会課題の解決ができれば、多くの顧客や支援者を獲得できます。

●消費者や取引先を含む社会の賛同を得られる

SDGsやサステナビリティに取り組む活動は、消費者や社会の認知度が高いことは前述の通りです。自分達が暮らす地球が直面する課題に取り組む意義は広く理解されているため、実際に取り組む企業や組織は賛同が得られやすい状態となっています。

SDGsやサステナビリティに取り組んでいる企業には、サプライチェーンを構成する企業に対しても同様に取り組みを求める場合もあります。そのような場合には、取引先の選定要件の1つになってきます。

賛同はブランディングにもつながります。SDGsやサステナビリティに取り組む企業は社会や地球規模の課題解決に責任を果たしている点で消費者や社会から好印象を受けます。企業や事業が好印象を受けるとブランディングが向上していくことと同義になり、競争戦略上もプラスになります。

ブランディングの効果として消費者へアピールできる点はもちろんとして、採用面でもプラスの効果があります。若い人材の継続的確保は企業の存続には不可欠になりますが、SDGsやサステナビリティへの取り組むことで社会的責任を果たそうとする企業で働きたいと思う若い人材の確保につながります。

●資金調達が有利になる

一般社団法人などの非営利法人は、投資家から出資を受けられません。しかし、資金調達の方法は出資以外にも複数あります。例えば、銀行などの金融機関からの借入になります。

借入において、社会や環境などの持続可能性を高める動きは審査上プラスに影響します。貸付をしようとする金融機関などは、企業や事業の将来性を見ます。将来性を具体的に言えば、先々の返済期間中に資金の返済に対して十分な収益性を維持できるかを判断します。

その将来性を見る中で、SDGsやサステナビリティなどの取り組みとリンクした事業は将来もニーズがなくなりにくい事業になるため収益性が下がりにくい点がプラスに働きます。

また、一般社団法人などは寄附などを受ける機会が多く、その時にも社会的課題に対して責任を果たしている企業は賛同を受けやすい点においても資金調達が有利になると言えます。

3-2 成功させるためのポイント

SDGsやサステナビリティに取り組む上で、その取り組みを成功させる必要があります。取り組みが名ばかりになっていて、成果や効果が見られない場合には収益や社員のモチベーションなどにマイナスの影響が出るリスクがあります。

SDGsやサステナビリティの取り組みを成功させるためのポイントは以下の3つになります。

●企業の理念へ組み込む

企業の活動とSDGsやサステナビリティの取り組みをバランスよく実施するためには、企業理念や経営理念と一致させるのが最も有効的になります。

企業理念や経営理念と持続可能性が一致するとは、企業や事業の持続可能性を高める動きになります。逆に一致しない場合には、持続可能性を下げる動きになるため、企業や事業として本来実施する意味がないと言えます。

そのため、SDGsやサステナビリティへの取り組みは企業の理念や経営理念として会社に関わるステークホルダー全体に正しく理解させる必要があります。

●経済的価値も追い求める

SDGsやサステナビリティに取り組むこと自体には、社会的価値があります。ただし、社会的価値があるだけでは持続可能性を継続的に追い求めることができません。継続性を高めるためには、社会的価値と合わせて経済的価値を追求する必要があります。

今までの多くの事業活動では、社会的価値と経済的価値はトレードオフの関係がありました。企業が利益を得るためにCO2の排出や有限な資源消費によって社会的な課題が生まれていく関係があります。

しかし、SDGsやサステナビリティへの取り組みは社会的な課題を克服しながら企業が利益を上げていく=経済的価値を高めていく構造になります。

一般社団法人においても利益がなければスタッフの雇用やサービスの提供を継続できないため、SDGsやサステナビリティに取り組む上で経済的価値を追い求めて社会的価値と両立させる構造をつくりあげることは重要な要素になります。

●成果を上げる

SDGsやサステナビリティに取り組む上で最も重要なのは具体的な行動であり、目標(ゴール)に対する成果です。SDGsウオッシュなどにならないように常に留意が必要です。

SDGsウオッシュはSDGsウオッシングなどと呼ばれ、取り組みを標榜しているにも関わらず実態が伴わない、もしくは実際と異なる動きを言います。環境に配慮した経営をするとしておきながら、発展途上国の労働者を不当な低賃金で働かせるといった行為を言います。

評判と実態が異なっているとブランディングなどには大きなマイナスダメージを負う要因になります。また、SDGsやサステナビリティに取り組むと言ったからには正しく実行して成果を上げていかなければなりません。そして、取り組みや成果を継続的に社内・社外に公表していく必要があります。

4 まとめ

SDGsに取り組む一般社団法人のメリット

一般社団法人がSDGsやサステナビリティに取り組むことは、今後はより有益性や必要性が高まってきます。その内容を正しく理解して、未解決の社会的課題の解決方法を探ることで企業価値を高められ競争力の強化につなげられることができます。

SDGsやサステナビリティは、地球規模での持続可能性を高める動きになるので、できることから正しく行動していくことが大切です。

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