社団法人にかかる税金の種類は?それぞれの特徴や納税方法も
法人には、法人税などの複数の種類の納税が求められます。社団法人も当然課税対象になりますが、同じ社団法人でも「一般社団法人」と「公益社団法人」では、発生する税金の種類が異なります。
この記事では、非営利法人や公益法人の特徴や、法人税などの税金がどのように異なるかについて、社団法人の種類の特徴と税金の種類、納税方法などを解説するので、参考にしてみてください。
目次
1 非営利法人
法律上で、自然人以外で権利や義務の主体者になれるのが法人になります。法人は、最も一般的な「株式会社」や「合資会社」などの『営利法人』、「社団法人」や「財団法人」などの『非営利法人』に分けられます。
営利法人は、利益分配が目的になる法人です。つまり、法人がその事業活動で得られた利益は、法人に出資した株主などの構成員に分配されます。株式会社は、株主になることでその会社の所有者になり、所有者として利益の分配を受ける権利を有します。また、株式会社の解散をする場合、債権債務の整理を行なって残った資産を株主で分配することで解散が完了します。
非営利法人の特徴は、利益分配ができない点にあります。利益は、事業の目的に活用することが求められます。ここでは非営利法人の種類とその特徴についてポイントを解説します。
1-1 非営利法人の特徴
非営利法人は、利益の分配を目的としていない法人です。具体的には、以下の法人が非営利法人に該当します。
- ・社団法人
- ・財団法人
- ・NPO法人
- ・公益法人
- ・宗教法人
- ・学校法人
- ・社会福祉法人 など
非営利法人は、ボランティア団体と誤解されていることもありますが、法人として従業員へは給与を支払します。また、利益の分配ができないだけで、利益を目的とする事業はできます。非営利法人の最大の特徴は、非収益事業を実施している点です。
●非収益事業は非課税
税法上で、事業は収益事業と非収益事業とに分けられます。収益事業は、法人税法第2条13項、法令5条1項に規定されている34業種*が該当します。34業種には製造業や物品販売業などがあります。また、この34業種に付随して行われる事業も収益事業となります。
収益事業と判定されない事業が『非収益事業』となります。非収益事業は、課税対象外の事業となります。つまり、非収益事業で得た利益は非課税になります。ただし、同じ非収益事業であっても非課税に該当するためには、その法人が非営利型法人の要件に該当していることが必要です。
*34業種の詳細は、国税庁作成の「一般社団法人・一般財団法人と法人税」で確認できます。
●一般社団法人は「公益法人など」と「普通法人」に区分
税法上、一般社団法人や一般財団法人は課税対象外の事業を行なっている「公益法人など」と課税対象事業のみを行なっている普通法人に分けられます。
公益法人などは、以下のどちらかに該当している法人を言います。
- ①公益法人認定法に基づく公益認定を受けている
- ②非営利型法人の要件に該当している
上記のうちどちらかに該当している場合には、課税対象外の事業が認められることになります。一方で、どちらにも該当しない法人は普通法人として全ての事業は課税対象となります。
●公益認定と基準
公益認定を受けた一般社団法人や一般財団法人は、公益社団法人や公益財団法人となります。
公益認定を受けるためには、公益目的事業を実施することを目的とするなど基準を満たさなければなりません。
公益認定基準は大きく、以下の4項目で基準を設けられています。
- ①法人の目的および事業の性質と内容
- ②法人の機関
- ③法人の財務
- ④法人の財務
上記の4項目について以下のように詳細の基準が設けられています。
①法人の目的および事業の性質と内容 | ・公益目的事業を実施することが主たる目的である ・公益目的事業に必要な経理的基礎および技術的能力がある ・法人の関係者(理事や社員など)や営利事業者などに特別の利益を与えない ・社会的信用の維持に相応しくない事業や公の秩序や善良の風俗を害する恐れがある事業を実施しない ・公益目的事業に係る収入が、その事業を実施するために必要な費用を超えないと見込まれること ・公益目的事業以外の事業が、公益目的事業へ支障が発生する恐れがない |
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②法人の機関 | ・同一の親族や他の同一団体の関係が理事と監事の1/3を超えない ・会計監査人を設置する(収益や費用、損失などの勘定額が一定基準に達しない場合を除く) ・理事と監事への報酬など支給基準の定めがある ・社員への不当な取扱をしない ・理事会を設置する |
③法人の財務 | ・公益目的事業比率が50%以上になる見込みがある ・遊休財産額が一定額を超えない見込みがある・ |
④法人の財産 | ・他団体の意思決定に関与するだけの株式などを保有しない ・公益目的事業に不可欠な特定財産は、処分制限などの必要と思われる事項を定款で定めている ・公益認定が取消される場合、公益目的事業のために使用・譲渡していない財産は類似事業を実施する公益法人などに贈与することを定款で定めている ・法人を清算する場合、残余財産は類似事業を実施する公益法人などに帰属させることを定款で定めている |
●非営利型法人の要件
非営利型法人には、以下の2つのタイプがあり、それぞれに要件が定められています。
①非営利性が徹底された法人 | ・余剰金の分配をしない旨の定めが定款にある ・法人を清算する場合、残余財産は国/地方公共団体/指定法人*に帰属する旨の定めが定款にある ・上記2つの定款の定めに反する行為を行うことを決定、または行ったことがない ・各理事が、その理事およびその理事の配偶者または3親等以内の親族やその他の理事との一定の特殊関係がある理事の合計が理事全員の1/3以下である |
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②共益的活動を目的とする法人 | ・会員の相互支援や交流、連絡その他の会員への共通利益を図る活動が法人の主たる目的となっている ・会員が負担する会費金額を定めている、もしくは会費金額を社員総会や評議員会決議として定める旨の定めが定款にある ・収益事業が主たる事業である ・特定個人または団体に剰余金分配を受ける権利を与える旨の定めが定款にない ・法人が解散した場合、その残余財産は特定個人や団体**に帰属する旨の定めが定款いない ・上記並びに下記記載事項に該当する時期に、特定の個人や団体に剰余金分配やその他の方法で特別の利益を与える決定や与えた事実がない ・各理事が、その理事と理事の配偶者と3親等以内の親族やその他の理事と一定の特殊関係がある理事が一定の特殊関係がある理事の合計が理事全員の1/3以下である |
*指定法人は、「公益社団法人または公益財団法人」もしくは「公益法人認定法第5条第17号イからトまでに掲げる法人」のどちらかになります。
**国や地方公共団体、他の非営利性が徹底された要件に該当する非営利型法人などを除きます。
1-2 非営利法人の種類と違い
非営利法人には、いくつかの種類があります。「社団法人」や「財団法人」や「NPO法人」です。同じ非営利法人でも、その目的や組織の在り方が異なってきます。
●目的の違い
法人を設立・運営する上で重要になるのは、その「目的」です。社団法人と財団法人では目的が異なってきます。
社団法人は、「人」である構成員が営利活動以外を目的として事業を実施します。一方で、財団法人は「財産」を運用することが目的で事業を行います。
目的は異なりますが、社団法人も財団法人も公益認定を受ける前は一般社団法人・一般財団法人になります。公益認定を受けると、公益社団法人と公益財団法人になります。
NPO法人(特定非営利活動法人)の目的は、「保健・医療・福祉などを増進する活動」や「社会教育を推進する活動」など社会貢献活動などの特定非営利活動が目的となります。
●普通法人は全所得課税
一般社団法人や一般財団法人は法人税法上では「普通法人」に含まれます。普通法人は、株式会社や合資会社などの営利法人と医療法人や相互会社*や企業組合に加えて、一般社団法人や一般財団法人などが含まれます。
普通法人は全所得課税です。全所得課税とは、事業などで得た所得が全てもれなく課税対象となることを言います。所得とは、益金=収益から費用を差し引いたもので、利益に該当します。
この利益や所得に対して法人税は課税されるのが原則です。
*相互会社は、保険会社のみに設立が認められている会社です。相互会社は、保険業法に基づく法人で、保険契約者が社員となり社員総会が法人の最高意思決定機関となります。
●NPO法人と認定NPO法人
NPO法人は、特定非営利活動法人です。特定非営利活動法人は、不特定多数の利益を目的として活動=特定非営利活動を実施する法人となります。
具体的には、ボランティア活動や社会貢献活動を行う法人がNPO法人です。特定非営利活動は、具体的に20種類の分野に該当する活動が定められています。
NPO法人も、2年の実績判定期間を経て、一定基準を満たしていることを所轄庁が認めた場合に認定されます。その認定を受けたNPO法人を認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)と言います。
NPO法人を設立するのは、定められた書類を添付して申請を行えば、認証を受けることでNPO法人の設立が可能です*。NPO法人の認証には、約2ヶ月と2週間程度の日数が必要です。認証を受けたのちには、登記を行います。認証を受けるためには、『特定非営利活動を行うことを主たる目的とする』などの8項目の認証基準があります。
NPO法人には、普通法人と同様に法人税や消費税などの複数の税金が課せられるケースがあります。
認定NPO法人は、NPO法人の中で運営組織と事業活動が適正でありかつ特定非営利活動の健全な発展基盤を持って公益増進に資すると見込まれて一定の基準に適合した法人が所轄庁の『認定』を受けたNPO法人です。認定NPO法人になると、税制上の優遇を受けることができます。
認定NPO法人が受けられる税制上の優遇は、『寄付者への優遇』と『認定NPO法人への優遇』に分けられます。
寄付者に対する税制上の優遇 | ・個人の寄付への優遇 認定NPO法人に寄付した個人には、寄附金控除(所得控除)か税額控除のどちらかの控除を選択できます。また都道府県や市区町村が条例で指定する認定NPO法人など寄付した個人には、住民税の計算における寄付金税額控除が適用されます。 また、現物資産を個人が寄付した場合、見なし譲渡所得税が一定の要件を満たすことで非課税となります。 相続人などが相続資産などを寄付した場合には、寄付をした財産価額を相続性の課税価格計算の中に参入しないことが適用されます。 ・法人の寄付への優遇 認定NPO法人に寄付した法人には、一般寄付金の損金参入限度額とは別に、特別損金算入限度額の範囲内で損金参入ができます。 |
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認定NPO法人への税制上の優遇 | 認定NPO法人が収益事業によって得た収益や収益事業に属する資産の一部を、収益事業以外の特定非営利活動に関わる事業へ支出すると、収益事業からの寄付金として取り扱われます。そのため、一定範囲内で損金とすることができます。 |
1-3 公益法人のメリットとデメリット
過去は、社団法人や財団法人の設立と公益性の判断を一体としていました。しかし、現在は民間による公益の増進を進めるために、設立と公益性の判断を分離しています。
その結果、一般社団法人や一般財団法人を設立することは格段に簡単になりました。そして、一般社団法人や一般財団法人の中で要件を満たした法人が行政庁の公益認定を受けることで公益社団法人や公益財団法人となる現在の仕組みになっています。NPO法人を設立した後に認定を受けることで認定NPO法人となる点は同じ仕組みです。
そのため、一般社団法人のままで公益法人にならないという判断をする法人もあります。ここでは、一般社団法人で認定を受けるかどうかを判断する時に重要となるメリットとデメリットを説明します。
公益法人になる大きなメリットは以下の2つです。
- ①社会的信用が上がる
- ②税務上の優遇措置が多くなる
一方で、公益認定を受けることはデメリットもあります。
- ①自由度が下がる
- ②行政庁への報告義務・作業が発生する
●メリット:社会的信用が上がる
公益法人という名称を活用できるのは、認定を受けた社団法人や財団法人のみになります。
一般社団法人は前述の通り設立自体に簡単にできるようになっています。また、一般社団法人などでも営利事業ができるため、複数の経営者や組織運営者がいます。
株式会社などの営利法人は利益を追求しているという点でわかりやすい組織運営や事業運営になっていますが、社団法人や財団法人はその点が世間から見ると分かりにくくなっています。実際に、社団法人でも営利事業の比率が過半数を超えることも可能です。
その点で、公益認定を受けた社団法人や財団法人は事業や組織のあり方にチェックが入った上で基準を満たしているということが証明されています。基準には、法人の財務に関する事項もあり、その中で公益目的事業が50%以上であることが求められています。そのため、公益認定があるということは社会的信用が上がります。
社会的信用度が高まることは一般的には、新規顧客の獲得や取引先の確保や従業員の採用や離職率などにプラス影響します。社団法人などの場合にはこれらに加えて、寄付を受ける機会が大きく広がる点でも社会的信用度を高める大きなメリットになります。
●メリット:税務上の優遇措置が多くなる
公益法人は、前述の通り税務上の優遇措置が多くなります。社会的信用度が高まる点でも記載しましたが、寄付をする人もしくは法人にとってもメリットが大きくなるため、寄付を受ける機会が広がる点はやはり大きな影響があります。
元々一般社団法人などは株式会社などと比較すると、金融機関などからの資金調達は難しいと言われています。その理由は、営利事業の割合が少なく、利益が出にいくい事業を実施している法人も多いことに起因しています。
そのため、資金調達方法が限られている点から考えると、寄付を受けやすくしておくことは社団法人などでは重要事項と言えます。
●デメリット:自由度が下がる
公益法人は、公益認定基準を満たす組織運営や経営をしなければなりません。もし、公益認定基準に該当しなくなると認定が取消されます。すぐに取り消しになるわけではなく、勧告などの行政指導が行われ、勧告に従わなかった場合には行政命令が行われ、最終的には取消が行われます。
公益法人において、その認定の取消自体はレアケースと言えます。ただし、変化が大きく急激な現代の経済状況において認定許可を受けた時点から事業内容や運営方法が少しずつ変化することが余儀なくなっている法人も多くなっています。この変化が公益認定基準の範囲に収まることができているうちは問題ありませんが、場合によっては基準が足枷になってしまうケースも起こりえます。
公益認定を受け続けることが目的となり、法人を設立している目的を見失わないように留意が必要です。
●デメリット:行政庁への報告義務・作業が発生する
公益法人は、不特定かつ多数の者の利益増進に寄与する活動が求められるため、事業運営の透明性の確保が必要とされています。そのため、公益法人は毎事業年度開始日の前日を期限として、以下の書類の作成が求められています。
- ・事業計画書
- ・収支予算書
- ・資金調達と設備投資の見込み
これらの書類を主たる事務所に原本を、従たる事務所に写しを備えおくことが求められます。
事務所に備え付けるだけでなく、事業計画書と収支予算書と資金調達と設備投資の見込み(以下は「事業計画書等」と言う)は、毎事業年度開始の日の前日までに行政庁への提出が求められます。
また、以下の書類は、主たる事務所に5年間と従たる事務所に3年間分を備えおくが求められます。
- ・法人法で定める計算書類(損益計算書、貸借対照表、事業報告と付属明細)
- ・財産目録
- ・役員などの名簿
- ・役員などの報酬などの支給基準が記載された書類
- ・キャッシュフロー計算書
これらの書類も事業計画書等と同様に、行政庁に提出が求められます。期限は毎事業年度経過後の3ヶ月以内になります。つまり、事業年度が閉まったタイミングから3ヶ月のうちに提出までできるように収支などを作成する必要があります。
書類を毎年事業年度ごとに提出することとあわせて、行政庁による「立入検査」が行われます。立入検査は、公益法人の事業実態を直接確認する観点から行われ、概ね3年ごとに行われます。立入検査を行う概ね1ヶ月前以前に立入検査の実施日時と場所などが通知されて、公益認定を受けた法人は準備を行います。
上記定期的な立入検査の他に、基準や欠格事由に該当するような問題点が発生した場合にも適時の立入検査も実施されます。
2 社団法人と税金と計算方法
社団法人には、一般社団法人と公益社団法人があることは前述の通りです。また、公益社団法人には税制面で優遇を受けることができます。それはどの程度の優遇になるのか、ここでは具体例を出して解説します。
2-1 一般社団法人にかかる税金
一般社団法人にかかる税金は、以下の通りです。
- ①法人税
- ②法人住民税
- ③法人事業税
●法人税
法人税は、各事業年度の所得にかかる税金です。法人は、法人税を税務署に申告して納税します。所得は、益金から損金を差し引いた金額を言います。
益金とは、会計上の収益を法人税法上で調整したものを言います。同様に損金も会計上の費用を調整したものを言います。ただし、実務においては会計上の収益から費用を差し引いた利益に対して税務調整を行って、法人税法上の所得金額を算出することが一般的です。
法人税を決めるのは、所得金額がいくらかという点と税率が関わってきます。税率は、法人の種類と規模で決まります。
資本金1億円以下の中小法人 | ・年間所得800万円以下の税率は15.0% ・年間所得800万円超の税率は23.2% |
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資本金1億円超などの中小法人以外 | 年間所得に関わらず23.2% |
中小法人は、年間所得800万円を分岐に2段階になっていますが、中小法人事以外は23.2%となっています。
所得額を決める事業年度は、法人税を計算するための利益を計算する会計期間となります。法人の事業年度は、定款によって各法人が決定できます。多くの法人が4月から事業年度が開始し3月末までで終了する『3月決算』と、1月から事業年度が開始し12月末までで終了する『12月決算』の二つが一般的な会計期間になります。
法人税は、会社の本店住所もしくは主たる事務所所在地を管轄する税務署に行います。会社設立の際には、管轄する税務署に設立届けを設立した日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
社団法人は、非営利型一般社団法人=公益社団法人であれば収益事業のみ法人税が課税されます。一方で、普通法人型一般社団法人、つまり一般社団法人は収益事業であるかどうかに関わらず全ての所得に課税されます。
●法人住民税
法人住民税は、法人の本店所在地もしくは主たる事務所所在地を管轄する都道府県に納税する税金になります。法人住民税は、一般社団法人は普通法人として納税義務があります。
法人住民税は、「均等割」と「法人税割」の2種類があります。
均等割は、所得に関わらず法人区分によって発生する税金です。所得に関わらないため、赤字の場合でも納税義務が発生します。都道府県によって法人住民税の金額は異なっており、東京都などは都民税として年間2万円になります。
なお、その金額だけでなくルールも都道府県によって異なるため、非営利型法人でかつ収益事業を実施していない場合には、法人住民税が免除となる都道府県もあります。詳細は、各都道府県のホームページで確認できます。
実際に納税する場合には、市町村民税と合算して法人住民税として納税します。
法人税割は、法人税額によって法人住民税の税率も異なってくるため、法人税割と呼ばれます。法人税割の税率も、各都道府県で異なります。また、法人税割も均等割と同様に市町村民税と合算して納税します。
法人税割は、東京都であれば課税標準法人税額*に税率7.0%(都民税率1%+市町村民税率6.0%)が法人税割の法人住民税の税率になります。
都道府県と市区町村内に事務所と事業所がある法人は、均等割と法人税割の両方の納税義務があります。一方で、都道府県と市区町村に事務所や事業所がないものの寮などが存在する場合には均等割額のみ納税義務が発生します。
なお、複数の都道府県や市町村に営業所や事業所がある場合、法人税額を各営業所や事業所にいる従業員数で按分します。按分した結果、その各都道府県などの地方公共団体が定める税率を適用させた上で按分した法人税率に乗じた法人税割を計算します。
*課税標準法人税額とは、各課税事業年度の基準法人税額を言います。基準法人税額は、その法人の各事業年度の所得額について、法人税法その他の法人税の税額計算に関する法令の規定によって計算した法人税額を言います。
●法人事業税
法人事業税は、法人が事業を行うことに対して課される税金で、事業活動を実施する上で地方自治体のサービスを利用しているため課税される税金になります。そのため、事務所などがある住所の都道府県が課税を実施します。
法人事業税は、資本金と法人の種類で税率が決定します。資本金が1億円超の普通法人には付加価値割(付加価値額に応じた割合)と資本割(資本金などに応じた割合)と、所得割(所得に応じた割合)が課されます。また、資本金1億円以下の普通法人などは所得割のみが課されます。
資本金がない一般社団法人や公益社団法人などは資本金1億円以下の普通法人と同様に所得割のみが法人事業税として課されます。
●その他の税金
一般社団法人への課税される、主たる3つの税金(法人税、法人住民税、法人事業税)以外のその他の税金としては消費税などが挙げられます。消費税は、物やサービスの消費に対して課税される税金になります。
消費者が消費税を支払いする場合には消費した金額に対して消費税率(令和4年6月時点では10%など)を乗じた金額を消費税として納税します。
事業者や法人が消費税を納税する場合には、売上高に対して発生する消費税に対して仕入れなどで支払い済の消費税額を控除した金額を納税します。つまり、売上によって100万円の消費税を受け取っていたとしても、仕入れに伴って40万円の消費税支払いを既にしている場合には、60万円分の消費税を納税します。
また消費税以外にも、2019年10月から開始された「特別法人事業税」があります。特別法人事業税は、法人事業税に応じて課税されるため、法人事業税がなければ特別法人事業税も無くなります。特別法人事業税の税率は37.0%となっており、法人事業税額に乗じられます。例えば、法人事業税額が100万円の場合には、特別法人事業税は100万円掛ける37.0%の37万円になります。
これら以外に、市町村税が均等割と法人税割の2つがあります。
●納税種類のまとめ
これらをまとめると、一般社団法人が納税する主な税金は以下のようになります。
税金区分 | 税金種類 | 備考 |
---|---|---|
国税 | 法人税 | 各事業年度の所得に応じて課税されます |
特別法人事業税 | 法人事業税額に応じて課税されます | |
地方税(都道府県) | 法人事業税 | 各事業年度の所得に応じて課税されます |
法人住民税(均等割) | 一定額を課税されます | |
法人住民税(法人税割) | 法人税額に応じて課税されます | |
地方税(市町村) | 市町村民税(均等割) | 一定額を課税されます |
市町村民税(法人税割) | 法人税額に応じて課税されます |
2-2 公益社団法人にかかる税金
公益社団法人は税制の優遇があります。そのため、法人税や法人住民税や法人事業税や特別法人事業税についても、一般社団法人よりも税金額が少なくなります。
●法人税
法人税は、法人税法施行令第5条で規定されている収益事業の所得に応じてのみ課税されます。公益目的事業の所得が発生してもその分には法人税が求められません。
●法人住民税
一般社団法人では定額の均等割と法人税額に応じた法人税割がありましたが、公益社団法人では法人住民税の均等割と収益事業の所得に対する法人住民税について納税義務があります。
しかも、都道府県によっては公益目的事業のみを実施する公益社団法人については免除申請を実施することで均等割についても免除される場合もあります。
また、公益目的事業のみを行う公益社団法人は法人税が発生しないため、法人住民税も発生しません。収益事業を実施している公益社団法人にはその収益事業の所得について法人税が発生するため、その部分のみに法人住民税も発生します。
●法人事業税と特別法人事業税
法人事業税と特別法人事業税も法人税に応じて発生する税金になるため、公益社団法人が実施する公益目的事業における税金は発生しません。ただし、その他の税金と同様に収益事業で発生する所得とそれに応じた法人税が発生するため、法人事業税と特別法人事業税も発生します。
●消費税
消費税は、公益目的事業の事業活動で発生した消費の場合でも、国内の課税資産の譲渡などがある場合には、課税対象となります。
そのため、公益目的事業のみを実施している公益社団法人であっても、消費税課税対象事業者*である場合には消費税を納税する義務が発生します。
*消費税課税対象事業者は、原則として事業を営む法人全てが該当します。ただし、納税義務が免除される事業者もあります。基準期間の課税対象売上高が1,000万円以下の事業者は、その年の納税義務が免除されます。
3 社団法人と確定申告
一般社団法人は法人税などの税金の支払いが必要で、公益社団法人になると非営利目的事業のみを実施し収益事業を実施していない場合には税金の支払いが必要ないもしくは法人住民税の均等割のみになります。
では、納税の仕方について一般社団法人と公益社団法人とで、株式会社などの普通法人の納税と何が異なるのかを解説していきます。
3-1 一般社団法人の納税方法
一般社団法人は、普通法人と同様に確定申告を実施して、納税をします。確定申告の手続き内容も、普通法人と異なることはありません。そのため、一般社団法人も会社設立後に税務の届出を行い、毎期の決算終了から2ヶ月以内に確定申告を提出する必要があります。
●一般社団法人設立後の届出
一般社団法人の設立後には、法人所在地がある住所を管轄する税務署都道府県税事務所と市町村役場への設立の届出が必要です。提出先に書類がわかれるので必要書類を整理しておく必要があります。
●法人設立届出書と設立時貸借対照表、給与支払事務所等の開設届出書
法人設立届出書は、法人を設立した日から2ヶ月以内に税務署に提出が必要です。提出の添付書類は、「定款」「社員名簿」「登記簿謄本」「設立時の貸借対照表」が必要です。
設立時の貸借対照表は、法務局へ設立登記申請日時点の貸借対照表になります。この設立時の貸借対照表を「設立時貸借対照表」と呼びます。設立時貸借対照表の作成は、一般社団法人では必須の事項になります。
一般社団法人の貸借対照表で記載する部分は、普通法人と変わらずに「資産の部」と「負債の部」と「純資産の部」の3部に分けて作成します。唯一、純資産の部に資本金や資本準備金と併せて基金を記載します。
従業員を採用する場合には「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。添付書類は必要なく、事務所を開設する日から1ヶ月以内に提出が必要です。設立届出より1ヶ月提出期限が早い点に注意が必要です。
なお、給与支払事務所等の開設届出書は雇用主として給与を支払する従業員の源泉徴収(従業員の所得税を支払いする給与からあらかじめ天引きして、従業員に代わって納税する制度)を実施するためです。そのため、給与を支払いする従業員やパートなどがいない場合には、設立時でも提出不要です。
●基金とは
一般社団法人は、資本金の拠出が不要です。そのため、資本金が全くない状態でも一般社団法人であれば設立できます。一方で、資本金がない状態であっても、会社の設立やその後の事業立ち上げには資金が必要です。一般社団法人の株式会社などの営利法人と大きく異なる資金の集め方が基金制度になります。
基金は、社員や社員以外の第3者から資金調達した法人の活動資金や基礎財産となるお金になります。基金と出資の違う点は、基金には返還義務があります*。また、基金は登記事項には該当しませんので、基金の額が変動しても登記の必要はありません。基金を募集する場合には、定款に基金に関する条項を記載しておく必要がありますが、募集をすることを含めて法人の任意になります。
*事業年度で締めた貸借対照表の純資産額が基金などの合計額を超過する場合、次回の事業年度に関する定時社員総会開催日前日までの間は超過額を限度額にして基金の返還ができます。なお、基金の返還は定時社員総会の決議事項になります。基金の返還には、利息をつけることはできません。
●確定申告
確定申告は、株式会社などの普通法人と同様の手続きになります。必要な書類は以下の通りになります。
法人税確定申告書 | 納税する法人税の計算を示す書類になります |
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勘定科目内訳明細書 | 賃借対照表や損益計算書の勘定科目の内訳が記された決算書類の一つです |
事業概況説明書 | 税務署が納税する法人を理解するための説明書になります。説明する事項は、支店数や子会社数、販売形態や経理の状況、事業形態や期末の従業員数や月別の売り上げなどを記載します |
決算報告書 | 貸借対照表、損益計算書、販売費及び一般管理費の明細など |
3-2 公益社団法人の納税方法
公益社団法人は、収益事業を実施している場合と実施していない場合で、大きく納税への動きが変わってきます。
収益事業を実施している場合には、その収益事業分については法人税や法人税に応じて発生する法人事業税や法人住民税などの納税が必要になります。
一方で、収益事業を実施していない(非営利事業のみを実施している)公益社団法人は納税が法人住民税(均等割)のみになります。また、都道府県によっては、法人住民税も不要の場合もあります。そうなった場合には、公益社団法人は納税をする必要がなくなります。
なお、収益事業を実施している公益社団法人が納税する場合については原則前章で記載した手続きと同一になります。
公益社団法人の税金手続きで重要となるのは、公益社団法人になったことを届出する書類(異動届出書)と、収益事業の開始(収益事業開始届出書)と廃止の届出(収益事業廃止届出書)が重要になります。
●異動届出書
異動届出書は、非営利法人以外だった法人が非営利型法人になった場合に実施する届出になります。届出は、非営利型法人になった日になってから速やかに届出することが求められます。
添付書類はなく、国税庁のホームページに書類の記載例があります。一般社団法人などが公益社団法人になった場合には、異動届出書の『異動事項等』欄の「法人区分の変更」と記載して、移動前の記入欄に『一般社団法人』と記載します。そして、移動後の記入欄に『公益社団法人』と記載します。
なお、公益社団法人が一般社団法人になる場合にも異動届出書にて届出を行います。記載方法は、一般社団法人から公益社団法人になる場合の逆になります。
●収益事業開始届出書と収益事業廃止届出書
収益事業開始届出書は、公益社団法人などの非営利型法人が収益事業を開始したことの届出(法人税法第150条、法人税施行規則第65条)になります。株式会社や一般社団法人などの普通法人が収益事業を実施する際には届出の必要はありません。
書類の提出は、収益事業を開始した日から2ヶ月以内の提出が必要です。添付書類としては、定款と寄附行為、規則若しくは規約またはこれらに準ずるもののコピーと、収益事業の開始の日から収益事業における賃借対照表が必要です。
提出先は納税地の所轄税務署長となり、収益事業開始届出書の届出に手数料は必要ありません。書類のフォーマットや所轄の確認などは、国税庁ホームページ『公益法人等又は人格のない社団等の収益事業開始の届出』で確認できます。
収益事業の開始と同じく公益社団法人が収益事業を廃止する場合にも、『収益事業廃止届出書』の提出が求められます。届出は、公益社団法人などの公益法人などが収益事業を廃止する場合に必要な手続きになります。
提出は、収益事業を廃止してから速やかに提出が求められます。添付書類などは不要です。詳細は、国税庁ホームページ『公益法人等または人格のない社団法人等の収益事業な廃止の届出』で確認できます。
3-3 公益認定の取消し
公益社団法人であり続けることは税制の優遇などのメリットは大きいものの、自由が制限される点や公益社団法人であり続けるための手続きの負担は軽くありません。その結果、メリットよりもデメリットが大きくなる公益社団法人もあります。そのような時には、公益認定の取消を自ら選択することができます。公益認定の取消しは申請することができます(認定法第29条)。
公益認定を取消しすると、行政庁の公示が実施されます。ただし、不祥事によっての取消しとは区別されます。また、公益認定を取消しした後には、公益社団法人の名称を利用できなくなり、一般社団法人と変更する登記が必要になります。それに加えて、公益目的取得財産残額を贈与しなければなりません(認定法30条)。
●公益認定の取消し申請
公益認定の取消し申請は、まず行政庁への取消し申請から行います。
申請は公益認定取消申請書にて実施します。申請書に記載する事項は、公益認定を取消申請する理由と公益目的取得財産残額の贈与する予定の相手になります。そのため、取消申請をする時点で、公益目的取得財産残額の贈与先を決めておく必要があります。また、取消申請を決議した理事会の議事録の写しが必要です。これらの他に行政庁が求める書類がある場合には、その書類の提出も必要です。
公益目的取得財産額の算定(認定規則第50条の2第1項)では、公益認定が取り消しされた日までに公益目的財産残額を算定し、社員総会などの決議をもって金額を確定します。その上で、公益目的取得財産残額を、公益認定の取消し日から1ヶ月以内のうちに定款で定めた贈与の相手方と贈与における書面での契約(贈与契約)を締結します。そして、締結ができたかどうかは同じく公益認定の取消し日から1ヶ月以内に行政庁担当者へ連絡が必要になります。
もし、1ヶ月以内に贈与先を見つけられない、もしくは贈与契約を締結できない場合には、公益目的取得財産残額は国若しくは都道府県への贈与が成立したとみなされます(認定法第30条第1項)。
さらに公益目的取得財産残額が最終的に変動する場合には取消し日から3ヶ月以内に変動報告を実施しなければなりません。この報告をもって、行政庁側で公益目的取得財産残額が認定されます。
同じく、公益認定の取消し日から3ヶ月以内に贈与契約の成立の報告が求められます(認定規則第51条第1項)。この贈与契約成立の報告をもって行政庁が贈与契約の成立を確認します。もし、3ヶ月以内の贈与契約成立報告がなされない場合には、行政庁はみなし贈与契約が成立した通知を実施します(認定法第30条第4項)。
これらの手続きを経て贈与が実施されます。その上で、公益社団法人から一般社団法人となる定款変更に基づく登記を実施します。ここまで実施して晴れて公益社団法人は一般社団法人と変わります。
4 まとめ
社団法人における一般社団法人と公益社団法人についてその特徴や、納税について解説しました。
公益社団法人になることによって、一般社団法人や株式会社などの普通法人と比較すると税制上の優遇措置を受けることができます。また、社会的信用をより一層高めることができます。一方で、毎次年度の監督官庁への報告や3年に1度の立入検査に備えなければならないなどの事務手続きの増加などのデメリットもあります。
一般社団法人を設立して公益認定を受けるかどうかはメリットとデメリットの比較を充分検討し、決定することが必要です。