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一般社団法人の正会員、賛助会員、名誉会員の違いは?

会員や協会員といった特定個人(または法人)向けのサービスを提供したい場合に検討されるのが一般社団法人です。一般社団法人とは非営利法人の1つであり、東京商工サーチ「2019年一般社団法人の新設法人調査」によると、2019年では6,063社設立されており、株式会社と合同会社に次いで3番目の法人格となっています。

社団法人で大きな役割を担うのが会員であり、その役割も様々なので、各特徴をしっかりと押さえることが大切です。今回の記事では、一般社団法人についてその仕組みや社員や理事の役割と、正会員や賛助会員や名誉会員などの会員の種類や違いや会員制度の導入について解説するので、参考にしてみてください。

1 一般社団法人と社員

一般社団法人と社員

事業を行うことができる法人格には、いくつかの種類があります。その代表的な法人格は、営利法人の株式会社です。また、今回のテーマの法人格である一般社団法人も非営利法人の中では最もその法人数が多くなっています。

法人の分け方の1つがその目的が利益にあるかどうかで、おもに営利法人と非営利法人に分けられます。

法人の分け方

✓営利法人

営利法人とは、経済的な利益を目的として事業を行う法人です。そのため、その法人で得た利益はその会社の所有者に分配できます。例えば株式会社では、法人の所有者は株主です。営利法人には株式会社のほかに、合同会社や合名会社や合資会社があります。

✓非営利法人

非営利法人は、共益的活動を目的とする法人です。そのため、その定款において、非営利性が定められていることが必要です。非営利性とは、法人が得た利益を会社の所有者に分配できないことを指します。

非営利法人は事業で利益を上げることができますが、その利益を法人の所有者に分配せず、社会貢献活動に活用しなければなりません。

非営利法人は、身近に多くあります。特定非営利活動法人(NPO法人)、一般社団法人と公益社団法人、一般財団法人と公益財団法人、学校法人や社会福祉法人があります。

1-1 一般社団法人の仕組み

営利法人の代表格である株式会社と一般社団法人の大きな違いは、利益を配当できるかどうかですが、それ以外でも様々な異なる特徴があります。この違いを見ながら一般社団法人の仕組みを確認していきましょう。

一般社団法人の仕組み

≪大きな違い≫

  • ✓ 一般社団法人には資本金や株主がいない
  • ✓ 株式会社の最高意思決定機関である株主総会がない

一般社団法人に限らず、株主がいるのは株式会社のみです。もともと、複数の資本家から資金調達をする目的をもっているのが“株式会社”であり、その株式会社という仕組みに必要なのが資本金や株主になります。

株式会社に出資する人は、その出資金と引き換えに株式を受け取ることができて株主になります。そして出資金は資本金に分類されることになります。株主は、出資した株式会社に対して効率的に利益を稼ぎ配当を支払うことを要求します。

一般社団法人は、前述のとおり利益を分配できません。そのため、一般社団法人には資本家や出資者がその株式を購入する仕組みを持ちません。

株式会社は株主の所有物という考えに基づいて、株式会社の意思決定は株主総会で行われます。株主総会は、株式会社における最高意思決定機関です。

一方で、一般社団法人において株主に代わる立場にあるのが“社員”です。一般的に社員と言うと、会社に属するいわゆる従業員を指しますが、一般社団法人では最高意思決定を行う人や法人格を社員と言います。

そして、一般社団法人における最高意思決定機関は社員総会になります。株主総会において株主が持つように、社員総会においては社員が議決権を持ちます。但し、株主は株式数に応じた議決権があるのに対して、社員は原則1人1つの議決権を持ちます

✓基金制度

基金制度は、一般社団法人の資金調達の方法の1つです。株式会社での代表的な資金調達方法は出資を受けることであり、出資者は配当金など株主がその法人の利益の分配に期待して出資をします。

一方、一般社団法人は利益が出てもその分配はできません。そこで、基金制度を活用することで一般社団法人に資金を渡す人(拠出者)は、資金の返還を受けられる仕組みとなっています。

なお、基金制度の「返還を受けることができる点」と「返還義務がある点」は、金銭の貸付に似ていますが、以下のポイントで異なります。

基金制度

  1. ①利息をつけることができない
  2. ②返還時期は定款で決定できる

通常の金銭貸付を業として実施する場合には、得られる利息が収益になります。しかし、基金制度を利用して1,000万円を資金提供したとします。そして、10年後に返還を受ける場合であってもその返還額は1,000万円のままになります。

また、通常の金銭貸付の場合にはその返還時期はお金を貸す側が決定するのが一般的です。しかし、基金制度では金銭を借りる側の一般社団法人が事前に定款に定めておくことで、その返還時期を決めることができます。その定款での定め方も、『10年後に基金を返還する』と明示することもでき、『法人の解散まで返還しない』という定めも可能です。

1-2 一般社団法人の社員

一般社団法人の社員

一般社団法人の社員は、株式会社の株主に近い存在です。重要意思決定機関である社員総会での議案を提出でき、議決に参加し議決権を行使できます。法人の規則を定めている定款の変更や社員自体の退会などの要求ができます。

なお、一般社団法人を設立しようとする時には、2名以上の社員が必要です。設立後には、最低1名以上の社員が必要です。

●社員の資格や義務

法律上で、一般社団法人の社員になるための資格を定めていません。しかし、各法人で社員に必要な資格を定款によって定められます。定款で定める場合には、各法人に必要だと思われる資格を設定できます。

例えば、医療法人の一般社団法人の場合には医療資格を有していることが社員になるための資格に適用されるなどです。また、業界団体などの一般社団法人であれば、その業界で法人を営むことなどが資格として適用されます。

また、一般社団法人の社員には、人はもちろん法人でもなることができます。

✓社員の義務

一般社団法人では、定款で定めることで経費負担義務を社員が負うことができます。一般社団法人においても株式会社などと同じく、基本は事業であげた収益をもって事業の費用を支払います。しかし、事業が軌道に乗っていない状況やそもそも同窓会などの事業で売上をあげるようになっていないモデルの場合には、事業上で必要となる事務所家賃などの経費を会費などから負担します。

しかし、会費を含めた収入が支出を上回る場合には社員がその収入と経費の差額分を負担しても良い旨を定款に定めることができます。社員が経費の一部を賄うなど一般社団法人が必要とする資金を支援する時に役に立つのが、前述の『基金制度』になります。

●社員の資格喪失

一般社団法人の社員には、責任と共に権限があります。これらは社員の資格があるから、発生しているものになります。

社員の資格は、永続的に付与され続けるものではありません。社員の資格は『任意退職』と『法的退社』に該当する場合に喪失します。

✓任意退社*

一般社団法人の社員は、定款の定めに関わらずやむを得ない事由においてはその退社(退会)が可能です。本人の意思によって社員の辞職が任意退社に含まれます。

任意退社の時期は定款で定めることも可能ですが、法律的な定めはありません。一般的には、その役割の重要さや理事が1名しかいない場合なども考慮し、申し出から6ヶ月程度の期間を開けての退社となります。または、退社時期を事業年度の終了時点とするなどを定めておくと混乱を避けることができます。

✓法定退社*

法定退社とは、定款や法律で定められた事由が発生することで発生する社員の退社になります。その中には、『定款で定めた事由の発生』や『総社員の同意』や『死亡または解散』や『除名』などがあります。

✓定款で定めた事由の発生

定款に定められている社員になることができる条件に記されている資格を喪失した場合などが一般的です。また、定款の退社事由を定めておくことも可能です。

✓総社員の同意と除名

該当社員の意思に関わらない強制的な社員資格の喪失になります。退社を求められる社員を除く他の全ての社員が同意すれば、社員の資格を喪失させることができます。この総社員の同意は社員総会の決議事項とはなっていません。

一方、社員総会の特別決議として社員の資格を喪失させるのが除名です。社員総会の特別決議は、社員総会の総社員の過半数の出席と、総社員の議決権の3分の2以上の賛成をもって可決されます。

つまり、本人を除く社員全員が退職を望む場合には、総社員の同意をもって法的退職にできますが、少数の反対する社員がいる場合には社員総会の特別決議で除名するという流れになります。

*この場合の退社は、社員でなくなるという意味であり、従業員として残るか残らないかは別です。

1-3 一般社団法人の理事

一般社団法人には理事会を設置している法人と設置していない法人があります。理事会は、株式会社での取締役会に似ています。そして、理事は法人の業務執行をする人となるため、株式会社における取締役や執行役に似ています。

理事は、社員総会決議によって就任と解任ができます。ただし、正当な理由がなく理事の解任をしてその解任された理事に損害が発生した場合、該当の理事には損害賠償請求の権利が認められています。

また、理事の任期は選任後2年以内の事業年度のうち最終の年度の定時社員総会終結時点までとなっています。ただし、任期を社員総会決議によって短縮することも可能です。

理事が持つ権限には、『代表権限』と『業務執行権限』があります。そして、理事の持つ権限は同じでも理事会の設置/非設置によって権限範囲が異なってきます。

●代表権

代表権は、社外の法人や組織に対してその法人の代表として取引や業務遂行を行う法律上の権限を言います。株式会社では代表権を持つのは取締役になりますが、一般社団法人においては理事が代表権を持ちます。

代表権限を有した理事の行為は、法人が行った行為と同じ扱いになります。一切の裁判内外の権限に及びます。そのため、代表権限に制約を加えていたとしても、そのことを知ることができない善意の第三者には対抗できません。

✓理事会設置の一般社団法人において

理事会で選定された理事のみが代表権を有した代表理事になります。選定されていない理事には、代表権がありません。代表理事に人数の制限はないため、理事全員を代表理事に選定することも可能です。

なお、理事会において代表理事を解任もできます。代表理事は、原則3ヶ月に1度理事会へ業務報告を実施する義務があります。

✓理事会を設置していない一般社団法人において

各理事が、代表権限を持ちます。そのため、選定のプロセスは必要ありません。理事会を設置していない一般社団法人で理事が任命されると、その時点で代表権をもった理事になります。

理事が複数いる場合にも、各理事が代表権を持つためそれぞれが代表理事になります。実務上、代表権を持つ理事を限定したい場合には、社員総会決議や理事の互選で代表理事を選定します。

なお、代表理事の主な仕事は以下になります。

  1. 1 法人組織の維持管理を行ない、必要な事務全般の処理
  2. 2 理事会における招集と開催
  3. 3 社員総会における招集手続き
  4. 4 法人維持に必要な書類(定款、社員名簿、議事録など)を主たる事務所に常に最新の状態で置くこと
  5. 5 定時社員総会開催の2週間前までに、主たる事務所に決算関連書類と事業報告書を備え置くこと
  6. 6 定時社員総会における決算関係書類の提出
  7. 7 定時社員総会における承認済み貸借対照表を公告
  8. 8 定時社員総会が終了した後、税務申告の実施
  9. 9 登記事項における変更すべき事項がある場合の法務局での登記申請の実施

●業務執行権限

業務執行とは、その法人が事業や法人の継続のためなどにおこなう法律行為(他の会社との売買契約など)や法人社内の人事の決定などを行うことを言います。

理事会設置の一般社団法人の理事は、業務執行権限が『業務執行意思決定』と『業務執行』の2つにプロセスが分かれます。業務執行意思決定は理事会で行い、業務の執行は代表理事または業務執行理事が実施します。

✓理事会設置の一般社団法人において

代表理事と業務執行理事以外の理事は業務執行権限がありません。そのため、業務執行権限がない理事は理事会の構成員として業務執行意思決定を行います。

✓理事会を設置していない一般社団法人において

全ての理事は、業務執行権限をもっています。そのため、業務執行意思決定と業務執行の両方を実施します。理事が複数名いる場合には理事の過半数による決定によってその実施を決定します。

●理事の義務

理事は、一般社団法人との間に民法上の委任規定に順じます。そのため、理事は一般社団法人との間の委任契約によって『善良なる管理者としての注意義務』と『忠実義務』が発生します。これらの他にも、『競業避止義務』も負います。

✓注意義務

注意義務は、民法第644条に定められており、法令や定款を遵守し、業務の執行を適正に行い、法人における他の理事や従業員や事業に対して監督・監視を行う義務です。

✓忠実義務

忠実義務は、法令や定款や社員総会決議事項に従い、一般社団法人のために忠実に職務を実施する義務です。

✓競業避止義務

一般社団法人の行う事業と競業する事業(同業や類似事業など)を行う場合には、事前に社員総会または理事会が設置されている場合には理事会の承認を得なければいけない義務です。

理事は、発生する義務に反して一般社団法人に損害を発生させた場合には、損害賠償責任があります。また、理事個人の悪意や過大な過失を原因とする第三者に損害を発生させた場合にもその第三者への損害賠償責任があります。

そのため、責任の広さや重さから一般社団法人の規模や業務内容によっては理事になろうとする個人の責任能力を超える場合が発生してきます。そのような場合には、理事の責任の免除や制限ができます。免除や制限は、以下の方法で実施できます。

≪理事の責任の免除や制限方法≫

  1. 1.社員全員による免除に対する同意
  2. 2.社員総会による部免除の決議
  3. 3.登記された定款での“理事等による一部免除”の定め
  4. 4.登記された定款での“外部役員などの責任の制限”の定め

●監事

一般社団法人において理事の職務執行の監査を行うのが監事です。そのため、監事は理事の職務執行の監査を行う権限を有します。

一般社団法人において、監事を置くかどうかは任意になります。しかし、理事会を設置するあるいは会計監査人を置く場合には、監事を置く必要があります。また、監事は理事会へ出席する義務があります。

監事は、理事の不正行為を発見した場合や不正行為をするおそれが認めた場合には、理事会に報告する義務があります。

また、監事は理事の作成する書類(事業報告書や計算書類など)を監査し、その報告書を作成します。一般社団法人における適正な業務の遂行や財産状況を、監査を通して維持していくことが監事に求められる役割になります。

監事は業務や財産状況について調査を行い問題やリスクを発見すれば報告する立場にあるため、理事や一般社団法人が雇用している従業員は兼任できません。

監事の任期は4年となり、社員総会における特別決議によって解任できます

2 会員

会員

一般社団法人には、社員(株式会社で言う株主)や理事(株式会社で言う取締役)があります。このほかに、会員がいます。会員は株式会社で言うお客様であり、株主になります。会員が株主になる場合には、社員の権限やあり方が変化していきます。

般社団法人では、会員制度が採用できます。

一般社団法人が特定の対象の利益を目的に設立や事業展開を行う場合には会員制度を導入することが一般的です。例えば、同業者で構成された業界団体や、スポーツ団体や医療系学会や学術会や同窓会などが特定の対象の利益を目的としている団体や組織と言えます。

●会員制度とは

会員になった個人や法人に対して、サービスを提供するのが会員制度にです。会員になると、その法人が提供するサービスを利用できます。会員とそうではない者は区別されていることが一般的です。また、○○会員であるというステータスや、会員同士の交流に参加できるなどの情報交流やビジネス上のつながりを広がるメリットがあります。

一方で、会員は入会費や月会費や年会費などの継続的な費用のほかに、サービスに応じた料金を支払います。

これらの会員から支払いされる会費などが会員制度を導入している一般社団法人の収入になります。

もちろん、株式会社や個人事業主であっても会員制度は導入できます。会員制度に法人格の規制はありませんが、会員がその法人の重要事項に対して意思決定を行う仕組みにできる点が一般社団法人の会員制度と他の法人や個人事業主の会員制度の導入の違いです。

2-1 会員の役割

一般社団法人における会員とは、法律(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)上で規定されている名称ではありません。

✓会員の定義

会員の役割やそれに伴う権利や義務について、一般社団法人の定款や会員規約などで規定できます。会員は、一般社団法人が任意で置くことができ、また、会員という呼び方にこだわる必要もなく、メンバーなどの名称でも問題ありません。

会員の役割は、定款や会員規定などに定められた権利や義務に応じたものになります。つまり、会員の役割はどのような権利も義務を有するかは一般社団法人によって決定できます。

例えば、一般社団法人の会員に社員が有する役割を定めることもできます。この場合には、会員として入会した時点で社員の役割を担うことになります。逆に、会員には特段な権利や義務を担わせないこともできます。この場合、単純に一般社団法人の会員になって、会員に対して提供するサービスを受けられますが、それ以外の権利義務はありません。

また、規模の大きい一般社団法人についてはその最高意思決定機関である社員総会への出席や議決権などの権利を有するのも特徴です。

2-2 会員と社員の棲み分け

一般社団法人の中で、社員と会員は区別して共存できます。規模の大きい一般社団法人が会員制度を活用して広く会員を募っていくと、会員が多くなります。その場合、会員全員が社員総会における議決権を有する形にもできます。

議決権のある会員が増えると、社員総会の開催や運営に支障が出る場合があります。社員総会の開催にあたっては、招集通知を送付する必要があり、社員総会の開催には3分の1以上の出席が必要だからです。また、会員になる個人や法人にも議決権を持つことを望まない場合もあります。

このような場合に対応するために、広く会員を募る一般社団法人においては複数の種類の会員をおくことができます。

●定款での記載例

社員と会員を分けておく場合も社員と会員を同一にする場合も、定款で定めておくことが一般的です。

以下は、それぞれの定款の定め方の一例です。

≪社員と会員を分ける場合≫

第〇条
法人における構成員は、社員と会員とする。また、社員を一般社団法人及び一般財団法人に関する法律が定める社員とする。

≪社員と会員を同一にする場合≫

第〇条
法人における会員について、社員を一般社団法人及び一般財団法人に関する法律が定める社員とする。

3 会員の種類

会員の種類

前述のとおり、一般社団法人の会員については、一般法人法にて定めがあるわけではありません。そのため、呼び方も種類も決められているわけではありません。

しかし、一般的に使われている種類の会員を利用することで、対外的ならびに社内としても説明や理解の必要を減らせるために、概ねどの法人も会員の種類や使い方は共通しています。

一般的な会員の種類は、「正会員」「一般会員」「賛助会員」になります。それぞれ、名称の違いに応じて役割や権利や義務を定款や会員規約などで定めることで区別できます。

一般的な会員の種類

3-1 会員の種類と役割

会員の種類である、正会員や賛助会員や名誉会員の他に、一般会員と特別会員や法人会員なども利用される機会があります。この名称は任意なので、どのように設定しても良いのですが、その一般社団法人が便宜上どのように会員を分けることの適切さによって名称を付ける必要があります。

✓一般会員と特別会員

例えば、会員によって一般社団法人が提供するサービスや業を区別したい場合などには、一般会員と特別会員とで分けて権利を変えられます。サービスや業を区別するので、会費などの義務も変更することで、より広い会員を募る体制をつくることができます。

✓個人会員と法人会員

個人消費者と法人との会員の区別をしたい場合にも同様で、個人会員と法人会員とを置くことができます。一般的には、個人消費者と法人ではニーズが異なるのでサービスも異なってきますが、会員を分けることで権利も義務も分けられます。

3-2 正会員とは

一般社団法人における正会員とは、一般社団法人の理念や事業に賛同して会員となった個人や法人を言います。一般的には、正会員は社員総会の議決権を有しており、社員と同一の場合もあります。

正会員は、社員と同じようにその一般社団法人の運営の方向性や運営自体に深く関与していくことを期待されている会員と言えます。

このように、正会員は入会して正会員になった瞬間から、その一般社団法人に対して大きな権限を有することになります。特に、一般社団法人においては議決権を複数持つ社員や会員はなく、あくまで1人1議決権なので、株式会社のようにオーナーが株式の過半数を持つようなこともできません。

そのため、入会とあわせて代表理事などの承認を必要とする形の一般社団法人もあります。

≪定款例:正会員の入会における代表理事の承認の入会制限について≫

(正会員の入会)
第〇条
当法人に対して正会員として入会を希望する場合には、理事会が定める入会申込書により申込みをし、代表理事の承認を必要とします。その承認をもって正会員となります。

3-3 賛助会員とは

正会員が存在する一般社団法人には、セットで賛助会員が置かれていることが多くあります。

賛助会員とは、議決権を持たない会員を指す場合が一般的です。議決権を持って活動していくことを全ての会員が望むわけではないため、希望するサービスや会員になる自体が目的の入会の受け皿になってもいます。

そのため、正会員とは受けられるサービスに一部違いがあることや、もしくは会費自体の値段が異なる場合があります。

●一般社団法人 日本医療経営実践協会の例

一例として、病院や医療法人などの組織一丸で医療経営士育成に取り組むことを目的とする一般社団法人日本医療経営実践協会の会員募集*を取り上げます。法人正会員は、医療経営士の1~3級の正会員が所属しており、かつ日本医療経営実践協会の目的に賛同しその事業に協力する医療機関・企業・団体を対象とした会員制度です。

*参照:一般社団法人日本医療経営実践協会 入会のご案内
日本医療経営実践協会では、法人の目的に賛同し活動への協力をする会員を募集しています。募集している会員には、法人正会員と賛助会員がいます(2021年10月現在)。

法人正会員は、資本金と医療機関の規模によって区分されていて、会員になるために必要な登録料や年間費も異なっています。

正会員区分 資本金 医療機関の規模 登録料 年間費
区分1 3億円以上 企業など 40万円 1万円×
会員数
区分2 1億~3億円未満 企業など 30万円
区分3 1億円未満 医療機関(病院)と企業など 20万円
区分4 5,000万円未満 医療機関(診療所)と企業など 10万円

一方で、賛助会員についても会員区別と年会費が分かれています。賛助会員の定義は、正会員は所属していないが、日本医療経営実践協会の目的に賛同して事業に協力する医療機関や企業などを対象としている会員制度とされています。

賛助会員種別 対象 年間費
区分1 医療機関および教育・研究機関 10万円*
区分2 企業など 20万円*

*1口の年間費になり、1口5名まで利用ができます。

✓個人正会員

個人も正会員になることができます。しかし、個人の場合には医療経営士3級の試験合格者であるという資格要件があり、個人正会員の登録料10,000円、年会費10,000円となっています。

このように、正会員と賛助会員を分けることと、同じ正会員の中でも個人と法人を分けてまたその会費などの負担も変えられます。そして、会員になるための資格要件を付けることもできます。

3-4 名誉会員とは

名誉会員は、正会員や賛助会員と異なり、その名のとおり名誉のある会員に授与される称号と言えます。多くの一般社団法人において、その法人の目的の達成への多大な貢献や功績なことが社員総会などで承認された個人や法人が授与されます。

また、名誉会員について、その選定条件や街頭条件や選出方法や処遇などが申し合わせとして公平を期するためにも公開している法人もいます。例えば、日本精神保健介護学会は、精神保健介護の学術団体では最大規模を誇る団体であり、名誉会員の申し合わせは以下の通りです。

1 選定条件
以下のうちいずれかに該当すること
✓日本精神保健看護学会の学術集会会長を務めた者
✓本会の理事長または理事を通算2期以上務めた者
✓前項1または2に匹敵する働きを代議員会が認めた者
✓このほか、精神保健看護学の発展に多大な貢献をした者
2 該当条件
以下のすべてに該当すること
✓常勤における現職ではない
✓理事や代議員ではない
✓本人が同意している
3 選出方法
① 定時代議員総会の前に開催される理事会で理事長が名誉会員候補者の推薦を発議
② 理事が、名誉会員候補者の氏名と選定条件の充足状況と推薦理由を付して理事長に推薦
③ 理事会が名誉会員候補者推薦を決議したのちに、同意を得た推薦者を代議員会に推薦
④ 代議員が承認
⑤ 理事長が、承認された新名誉会員を学会総会で報告
4 処遇
✓名誉会員は、学術集会に参加するための参加費は不要とする。また、役員控室の利用が可能
✓名誉会員は、日本精神保健看護学会が主催する事業へ招待に応じて発生する諸経費は負担を必要としないものとする

4 一般社団法人への会員制度の導入

一般社団法人への会員制度の導入

一般社団法人の運営で、議決権をもつ社員の数が増加していくのに従って運営は困難になります。

社員は株主と一緒なので、代表権を有してはいません。代表社員は一般社団法人においては存在しません(代表権を有するのは理事になります)。そのため、同じ社員でもその一般社団法人において貢献度の高低を反映させることは簡単ではありません。

そこで、会員制度導入を導入すると、増えすぎた議決権を持つ社員をコントロールし、かつその一般社団法人への貢献度やロイヤリティーが高い人や法人に議決権を持たせたい、ということを両立できる可能性が高くなります

4-1 会費の設定

会員制度を導入・運用をしようとする時、会員へ請求する会費の設定が重要で。会費を求める場合には、会員規約や会費規定を定めておきます。会費について定款で定めることは禁止されていませんが、定款の変更は社員総会の特別決議事項を行い、法務局での変更登記申請が必要になります。

これらのことから、一般的には会費に係る事項は手続きが煩わしい定款へ定めるのではなく、会員規約や会費規定に別途作成します。

会費の種類は、入会の際に発生する入会金や加入金と会員であるうちは毎年発生する年間費です。

✓入会金や加入金

いわゆる会員になるときに発生する1度きりの会費です。これは、システム利用料や各資料への登録など諸経費がかかるものを実費プラスアルファで請求金額を決定します。

会員が法人の場合には、20~30万円の入会金の設定が一般的です。これも、会員になるのがどのくらいの規模の企業になるのかが大きく関わってくる部分ではありますが、この入会金も会員となる法人の規模などで変動させることも可能です。

✓年間費

年間費は、会員の規模や収益性に応じて発生することも多くなっています。例えば、貸金業界の自主規制機能を抜本的な強化をすることで、資金需要者などの利益保護と貸金業者の適正な運営に資することを目的とする日本貸金業協会*は年間費の設定を以下のように設定しています。

日本貸金業協会の会員への会費は、会員となる企業の『資本金』『貸付残高』『店舗数』のそれぞれから会費計算を行い、その合算した金額が会費になります。

資本金は資金力が分かることができ、貸付残高の大きさはそのまま収益性や事業力の強さを反映でき、店舗数は事業領域の広さを反映できます。日本貸金業協会の会費計算方法は、多面的に会員の収益性や規模に応じた会費の徴収を目指している事例と言えます。

*日本貸金業協会は一般社団法人ではありませんが、会員制度を導入しています。

会費にもともと法律上の規定はないため、設定は任意になります。会員を増やしていきながら、収益源となる会費を増やしていくためには、収益性が高く事業規模や資金力が大きい企業からはできるだけ多く会費を頂き、中小企業からの会費負担とバランスをとっていくことが有益なやり方と言えます。

なお、会費は年1回ですが、その支払い方法は2回に分けるなど分割も可能です。また、1回で支払すると負担が大きく感じる会員もいるので、監理することが煩雑にならない程度の範囲で分割して支払いする仕組みを入れておく一般社団法人もいます。

✓会費にかかる税金

一般社団法人は、公益性が高い事業なども行っていますが、法人である点に変わりはありません。そのため、収益には税金が発生し、会費にも税金がかかります。

会費にかかる税金の種類は、法人税と消費税になります。消費税は、その法人の売上が1,000万円以上になった事業年度の翌々年度から発生します。

一般社団法人の法人税については少し複雑です。詳細は国税庁のHP『一般社団法人・一般財団法人と法人税』を参照することができます。また、個人の判断で非課税や課税対象であるという判断をすることはせず、必ず税理士などの専門家に相談のうえ対応する必要があります。

4-2 会員制度導入における要点

一般社団法人の設立と同時に会員制度を導入するのと、すでに運営を行っている一般社団法人に会員制度を導入することにはその難度が大きく異なってきます。

なぜなら、すでに一般社団法人が運営を開始している場合には、既に理事や社員といった要職に就いている人や法人がいるからです。これらの人数が多ければ多いほど、利害が発生しやすく調整が必要になります。

同様に、一度導入した会員制度の会費や規則を変更するのも調整が必要になります。会費などを値上げすることは、会員の負担が増えるので相応の理由がないと摩擦が起きる可能性もあります。

一度始まった運用の変更は簡単ではないため、変更する必要がない制度や規則を目指して検討を進めていくことが大切です。会員制度をスムーズに導入させるポイントは以下の通りです。

①会費への考慮

前項にも記載しましたが、会費の設定は会員制度導入において肝になります。一般社団法人も法人であり、実施していることは事業です。会員も同様でメリットがあるので、会員になります。

会費は、一般社団法人からすると収入源で、会員からするとコストになります。会員の立場に立って充分コスト以上の意義や価値を提供することが一般社団法人には求められます。また、会員への価値提供を追求するあまり、法人全体や事業単体で赤字になってしまってはサービスの継続ができなくなります。

重要なのはバランスです。一般社団法人の活動に必要な資金が不足したので、会費を上げるというのは一般的には合意されにくい内容です。合意を得たとしても、コストを抑えることができない点で経営能力を疑問視する声が出てくる可能性があります。

一般的なビジネス同様に、提供するサービスに価値を上げていき、サービスを利用するための対価を“高い”と感じさせないことが重要になります。そして、提供するサービスについてはコストを最小化していくことが経営に求められることは営利法人も非営利法人も共通です。

会費を決める場合には、類似する一般社団法人や他の会員制度を導入している法人の研究を行い客観的な視点でチェックを行い、会員になる法人や個人とコミュニケーションを充分にとって“納得感のある”価格設定を目指します。

前述の日本貸金業協会の会費設定のように、会員の資金や事業状態に連動して増減していく計算方式は、会員からの納得も得やすくなります。同時に、会員制度を運用する側の一般社団法人からしても業界全体の適切な成長を反映できるメリットがあります。

それと同時に、一般社団法人の目的と沿っているかを考慮しないと、そもそもの一般社団法人の意義や目的とズレる形になってしまいます。

✓会費の明記

会費が存在することは、定款にも定めておくことが一般的です。ただし、具体的な金額や計算方法は前述のとおり定款には定めません。

会費があることと、その金額に誤解が生じないようにできるだけ明確な記載をするよう心がけます。もし、計算方法がどうしても複雑になってしまう場合には、新しく会員になるメンバーには説明を実施するなど運用でカバーします。

✓退会時の対応

会費を支払いするタイミングと、一度支払いをした会費は返還しない旨の記載は必須です。会員の中では、一般社団法人の目的や意向と相違した目的などをもって会員となり結果的には残念ながら退会する場合もあります。また、場合によっては一般社団法人側から会員に対して脱退処分や除名処分を行う場合もあります。

このような場合には、すでに支払をした入会金や年会費の返金についてトラブルになるケースもあります。年会費については日割り計算などを求められるケースです。そのような時に、定款や会員規則に記載があれば、すでに合意済みの内容になるため返金に応じる必要がないことが明確になります。

②情報公開の仕方

株式会社が株主に情報開示をするのと同様に、会費を支払う会員に適切な情報公開を行う必要があります。

具体的には、決算報告と資金の活用方法などを明確にします。一般社団法人は、存在意義が目的の実現にある点で株式会社と異なります。そのため、利益が出ていればよいというわけではありません。しかし、利益が出ている状況でないと存続が危ぶまれてしまいます。

必要な利益を出しながら、一般社団法人が掲げる目的の実現を図っていくことが求められます。

また、会費などの資金がどのような有効な使われ方をしているのかは、利益が出ているからよいということではありません。公明正大に資金を活用していくことと、それを明確に示す必要があります。

5 まとめ

まとめ

一般社団法人の仕組みと会員制度を中心に、正会員や賛助会員や名誉会員について解説しました。

会員制度は任意に設定できる制度であり、一般社団法人の目的や運営にそって制度設計をできる点や会員と共に法人や事業活動を構築していくという点で優れた制度です。また、情報公開などの必要はあるものの公明性を確保・維持するための仕組みとも言えます。

そして、目的に賛同して入会する会員の意見を取り入れながら事業を進めていけるという点に大きなメリットがあるので、導入を検討してみてください。

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